説明

排ガス分析装置

【課題】 簡易な構成で反射鏡の表面を清浄に保つことができ、測定精度を安定させた排ガス分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 エンジン20の排ガスを排出する排気経路3中の排ガスにレーザ光を照射し、排ガスを透過したレーザ光を検出することで排ガス中の成分濃度を測定する測定部5を有する排ガス分析装置1において、測定部5は、排気経路3中の排ガスが通過する排ガス通過孔50aが穿設され、排ガス通過孔50a内に向けて照射されたレーザ光を多重反射させる反射鏡52が配設される本体部50と、排ガス通過孔50aを通過する排ガスとは別に、排気経路3から排ガスを分流し、分流した排ガスを反射鏡52の表面に向けて吹き付けるパージ経路55とを具備してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス分析装置の技術に関し、より詳細には、内燃機関の排ガスを排出する排気経路中の排ガスにレーザ光を照射し、排ガスを透過したレーザ光を検出することで排ガス中の成分濃度を測定する測定部を有する排ガス分析装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中の成分濃度や温度を測定し、分析するための装置として、排気経路に光源や検出器部等からなる測定部(排ガス分析用センサ)を直接に配設し、排気経路を流れる排ガス中を透過したレーザ光を検出する等して排ガス中の成分濃度等をリアルタイムで測定するように構成された排ガス分析装置の構成が公知である。
【0003】
具体的には、従来の排ガス分析装置の構成としては、内燃機関より排出された排ガスが通過する排ガス通過孔に向けてレーザ光を照射し、反射鏡によりレーザ光を多重反射させた後に、排ガス中を透過したレーザ光を検出するように構成されている。このように、排ガス分析装置は、測定部の排ガス通過孔内で対向する一対の反射鏡によってレーザ光を多重反射させて、レーザ光が排ガス中を透過する距離(測定長)をより長く確保することで、その測定精度を向上するように構成されている。
【0004】
ところで、上述した従来の排ガス分析装置は、例えば、内燃機関としてガソリンエンジンの性能特性を排ガス中の成分濃度から評価する試験などにも用いられる。その際、エンジンを異常燃焼状態で動作させる場合などには、異常燃焼により排ガス中に大量のススやカーボンスーツなどの排ガス汚れが大量に含まれる。そして、このように多量の排ガス汚れを含んだ排ガスを排ガス分析装置にて測定すると、排ガス通過孔を排ガスが通過する際に、排ガス通過孔に露出した反射鏡の表面に排ガス汚れが付着してしまう場合があった。
【0005】
特に、上述した排ガス分析装置の構成では、反射鏡によってレーザ光を正確に多重反射させる必要があるため、このように反射鏡の表面に排ガス汚れが付着すると、レーザ光の反射率が低下し、その結果、排ガス中の成分濃度の測定精度が低下して正確な分析ができないという課題があった。また、長時間に渡って測定が継続されると、反射鏡によるレーザ光の反射率が徐々に低下するため、測定初期と後期とで精度が一定しないという課題があった。
【0006】
そのため、従来の排ガス分析装置の構成において、例えば、特許文献1に示すように、反射鏡の表面に光触媒層と、光触媒層を照射する光触媒用の光線を発生させるレーザダイオードとを備え、光触媒用の光線を光ファイバを通して反射鏡に照射することで光触媒層を活性化させて、反射鏡の表面に付着した排ガス汚れを除去するようにした構成が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される排ガス分析装置の構成では、表面に光触媒層が別途設けられた反射鏡と、光触媒用の光線を発生させるレーザダイオードとがそれぞれ設けられる必要があるため、装置構成が複雑になるとともに、製造コストが増加してしまうという問題があった。そのため、従来より、排ガス分析装置としては、より簡易な構成で反射鏡の表面を清浄に保つことができる構造が希求されていた。
【0008】
一方、これまでに、経路中に付着した排ガス汚れを除去するという観点から、分析経路中にパージガスを流す構成を備えた排ガス分析装置が幾つか提案されている。例えば、特許文献2には、排ガスを分析計にまで導入するためのサンプリングラインを備えた排ガス測定装置において、サンプリングライン内の汚れを取るために、サンプリングラインの下流側に不活性ガスをパージガスとして供給するためのパージラインが設けられた構成が開示されている(特許文献2参照)。
【0009】
確かに、特許文献2に開示された構成を上述した構成の排ガス分析装置に適用して、排ガス分析装置における反射鏡の表面にパージガスを供給する構成とすると、パージガスにより反射鏡の表面に排ガス汚れが付着するのを防止し、また反射鏡の表面に付着した排ガス汚れが除去されることが期待できる。しかしながら、計測対象となる排ガス中にパージガスが混入することで排ガスの濃度や流量が変化してしまい、その結果、排ガス中の成分濃度を安定して測定することができず、正確な分析ができないという課題があった。
【特許文献1】特開2006−343293号公報
【特許文献2】特開2003−75309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明においては、排ガス分析装置に関し、前記従来の課題を解決するもので、簡易な構成で反射鏡の表面を清浄に保つことができ、測定精度を安定させた排ガス分析装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
すなわち、請求項1においては、内燃機関の排ガスを排出する排気経路中の排ガスにレーザ光を照射し、排ガスを透過したレーザ光を検出することで排ガス中の成分濃度を測定する測定部を有する排ガス分析装置において、前記測定部は、前記排気経路中の排ガスが通過する排ガス通過孔が穿設され、該排ガス通過孔内に向けて照射されたレーザ光を多重反射させる反射鏡が配設される本体部と、前記排ガス通過孔を通過する排ガスとは別に、前記排気経路から排ガスを分流し、分流した排ガスを前記反射鏡の表面に向けて吹き付けるパージ経路とを具備してなるものである。
【0013】
請求項2においては、前記パージ経路は、内部中空の管部材より構成され、一端が前記排気経路を構成する配管に接続され、他端が前記本体部に接続されるものである。
【0014】
請求項3においては、前記パージ経路は、経路内の排ガス中の排ガス汚れを除去するフィルタ部材が設けられるものである。
【0015】
請求項4においては、前記パージ経路の他端は、前記本体部における前記反射鏡の長手方向の一端側に接続されるものである。
【0016】
請求項5においては、前記測定部は、前記パージ経路から前記反射鏡に向けて吹き付けられた排ガスを前記排気経路に還流させる還流経路を具備してなるものである。
【0017】
請求項6においては、前記パージ経路は、分流されなかった前記排気経路中の排ガスが前記排ガス通過孔を通過するタイミングに合わせて、分流された排ガスを前記反射鏡の表面に向けて吹き付ける排ガス流量調整手段が設けられるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1に示す構成としたので、簡易な構成で反射鏡の表面を清浄に保つことができ、反射鏡表面でのレーザ光の反射ロスを低減して排ガスの成分濃度の測定精度を安定させることができる。
【0020】
請求項2に示す構成としたので、既存の排ガス分析装置の測定部に対してパージ経路を容易に設けることができる。
【0021】
請求項3に示す構成としたので、反射鏡に向けて吹き付けられるパージ経路中の排ガスをクリーンに変換することで、反射鏡の表面を確実に清浄にすることができる。
【0022】
請求項4に示す構成としたので、反射鏡に向けて吹き付けられたパージ経路からの排ガスを、反射鏡の長さ方向に沿って効果的に全面に行き渡らせることができ、反射鏡の表面を確実に清浄にすることができる。
【0023】
請求項5に示す構成としたので、排ガスを排気経路に還流させることで排気経路中の排ガス濃度を略一定に保つことができ、排気経路の複数箇所に測定部を設置した場合であっても、連続して排ガス中の成分濃度を測定することができる。
【0024】
請求項6に示す構成としたので、排気経路中の排ガス流量などの測定条件が経時変化した場合であっても、測定条件の変化に応じて反射鏡へ供給される排ガスの流量を適宜調整することができるため、排ガスの濃度変化等に起因する測定結果への影響を低減して、測定の安定性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る排ガス分析装置を車輌に搭載した状態を示した側面図、図2は第一実施例の排ガス分析装置の測定部の側面図、図3は同じく図2の測定部の斜視図、図4は図2における反射鏡の近傍位置の垂直断面図、図5は図2における反射鏡の近傍位置の水平断面図、図6は図2に示した測定部において排ガスが流れる様子を示した側面図、図7は第二実施例の排ガス分析装置の測定部の側面図、図8は第三実施例の排ガス分析装置の測定部の側面図、図9は第四実施例の排ガス分析装置の測定部の側面図、図10は第五実施例の排ガス分析装置の測定部の反射鏡の近傍位置の垂直断面図である。
なお、以下の本実施例では、図4に示すように本体部50の長手方向としての長さ方向をX方向とし、短手方向としての幅方向をY方向とする。
【0026】
まず、第一実施例の排ガス分析装置1の全体構成について、以下に概説する。
図1に示すように、本実施例の排ガス分析装置1は、自動車2に配置された内燃機関であるエンジン20から排出される排ガス中の成分濃度や温度を測定して分析するものである。具体的には、排ガス分析装置1は、上述した排気経路3の複数箇所に配設された複数の測定部5・5・・・と、測定部5に接続されたレーザ発振・受光用のコントローラ6と、コントローラ6に接続されたコンピュータ装置7等とで構成されている。
【0027】
自動車2には、エンジン20からの排ガスを機外に排出する排気経路3が敷設されており、排気経路3は、エキゾーストマニホールド30、排気管31、第一触媒装置32、第二触媒装置33、マフラー34、及び排気パイプ35等とから構成されている。また、排気経路3の各構成機器は、断面円形状の配管3aによって連結されている。
【0028】
排気経路3においては、エンジン20の排ガスが、まずエキゾーストマニホールド30で合流され、排気管31を通じて第一触媒装置32及び第二触媒装置33に導入され、その後マフラー34を通じて排気パイプ35から大気中に放出される。このような排気経路3が形成されることによって、エンジン20からの排ガスは、二つの触媒装置32・33によって浄化され、マフラー34によって消音・減圧されて大気中に放出される。
【0029】
本実施例の測定部5・5・・・は、排気経路3において4箇所に配置されており、具体的には、第一触媒装置32の上流側のエンジン20と排気管31との間、第一触媒装置32と第二触媒装置33との間、第二触媒装置33とマフラー34との間、マフラー34の下流側の排気パイプ35の末端部にそれぞれ配置されている。
【0030】
排ガス分析装置1では、各測定部5において、コントローラ6によって赤外線レーザ光が照射され、かつ排ガスを透過した後のレーザ光が受光されることで、排気経路3を流れる排ガスの成分濃度が連続的にリアルタイムで測定される。そして、得られたデータが、コントローラ6からコンピュータ装置7に送られて排ガス中の成分が分析される。
【0031】
コントローラ6は、複数の波長の赤外線レーザ光を照射する照射装置であり、レーザ光の波長は、検出する排ガスの成分に合わせて設定される。また、コントローラ6には、測定部5に接続された図示せぬ差分型光検出器等が設けられており、測定部5により受光された信号光が導光され、排ガス中を透過して減衰したレーザ光と排ガス中を透過していないレーザ光との信号光が接続されたコンピュータ装置7に出力される。コンピュータ装置7では、コントローラ6からの出力信号が解析されて、排ガスの成分濃度や排ガスの温度を算出する等して、排ガスの分析が行われる。
【0032】
このように、本実施例の排ガス分析装置1では、各測定部5による排気経路3の一断面におけるスポット的な排ガスの測定が可能となっている。特に、本実施例のように、測定部5が排気経路3の複数箇所に設けられることで、排ガスが排気経路3の所定断面でどのように変化するかを瞬時に測定することができ、排ガスの状態をリアルタイムに連続して測定することができる。
【0033】
次に、測定部5の構成について、以下に詳述する。
なお、本実施例の排ガス分析装置1は、排気経路3に取り付けられた各測定部5・5・・・がそれぞれ略同一に構成されている。以下、その一例として、第一触媒装置32と第二触媒装置33との間に配置された測定部5について説明する。
【0034】
図2に示すように、本実施例の測定部5は、エンジン20の排ガスを排出する排気経路3中の排ガスにレーザ光を照射し、排ガスを透過したレーザ光を検出することで排ガス中の成分濃度を測定するものであって、排気経路3を構成する配管3a・3aの連結部に設けられた管継手36・36によって本体部50が前後方向から挟まれた状態で排気経路3の所定の箇所に取り付けられる。
【0035】
管継手36・36は、断面円形の貫通孔36aが穿設された筒状に形成され、一方の開口縁部にフランジ部36bが設けられている。測定部5(の本体部50)は、一対の管継手36・36のフランジ部36bが設けられた側の開口端の離間に、図示せぬガスケットを介して挟み込まれ、フランジ部36b・36bがボルト38・38によって締結されることで固定される。
【0036】
管継手36の貫通孔36aは、配管3aと同じ直径の円形に形成され、排ガスの流れが妨げられないように構成されている。また、図示せぬガスケットは、貫通孔36a等と略同じ直径の孔が開口され、管継手36・36の間に測定部5を挟んで配管3aと接続しても、排ガスが途中で漏れることはなく、排気経路3の長さの増加も少ないように構成されている。
【0037】
このようにして、測定部5は、上述した管継手36・36を介して排気経路3の各配管3aと接続されており、排気経路3を流れる排ガスが、一方の管継手36の貫通孔36aを介して本体部50に送られた後に、本体部50の排ガス通過孔50aを通過して、他方の管継手36の貫通孔36aより排気経路3の下流側に送られる。
【0038】
なお、本実施例の管継手36には、後述するパージ経路55及び還流経路56が接続されており、排気経路3中の排ガスが排気経路3から管継手36を介してパージ経路55に分流され、一方で、測定部5に設けられた反射鏡52に向けて吹き付けられた排ガスが還流経路56から管継手36を介して排気経路3に還流させる(図5参照)。このパージ経路55及び還流経路56の詳細は、後述する。
【0039】
図2乃至図5に示すように、本実施例の測定部5の構成としては、矩形状の薄板材から形成され、略中心部に排気経路3中の排ガスが通過する円形の排ガス通過孔50aが貫通された本体部50と、分析用のレーザ光を排ガス通過孔50a内に向けて照射する照射部51と、照射部51より排ガス通過孔50a内に照射されたレーザ光を多重反射させる一対の反射鏡52・52と、排ガス中を透過したレーザ光を検出する受光部53と、排ガス通過孔50a内に配設されたスリーブ形状のカバーリング54と、排ガス通過孔50aを通過する排ガスとは別に排気経路3から排ガスを分流し、分流した排ガスを反射鏡52・52の表面に向けて吹き付けるパージ経路55と、反射鏡52に向けて吹き付けられた排ガスを排気経路3に還流させる還流経路56等とで構成されている。
【0040】
本体部50には、照射部51及び受光部53が投光面と受光面とがそれぞれ排ガス通過孔50aの中心方向に向くようにして組み付けられるとともに、一対の反射鏡52・52が、排ガス通過孔50aに面するように上下位置に対向して配設され、照射部51より照射されたレーザ光が排ガス通過孔50a内を排気経路3に対して直交して横切るように平行状態に固定されている(図3参照)。
【0041】
照射部51からは、排気経路3と直交する一断面に沿ってレーザ光が照射され、照射部51から照射されたレーザ光が受光部53にて受光される。本実施例では、照射部51及び受光部53は、上述したコントローラ6に接続されており、コントローラ6から射出された赤外レーザ光が照射部51を介して排ガス通過孔50aに照射され、排ガス中を透過したレーザ光が受光部53で受光されてコントローラ6に受光信号が入力される。
【0042】
反射鏡52・52は、平面視長板形状に形成され、本体部50の長さ方向(図5においてX方向)に沿って排ガス通過孔50aを挟んで略平行となるように配設されている。この反射鏡52・52によって、照射部51より照射されたレーザ光は、一方の反射鏡52により他方の反射鏡52に向けて反射され、一対の反射鏡52・52により交互に反射されて受光側の受光部53に到達される(図3及び図5参照)。このように本実施例の測定部5では、一対の反射鏡52・52によって、照射部51により照射されたレーザ光が排気経路3に直交する一断面内を複数回反射してから受光部53で受光される。
【0043】
カバーリング54は、通過孔54aを有する円筒状部材であって、通過孔54aの外径が排ガス通過孔50aの内径よりも小さくなるように形成されている(図3及び図4参照)。また、カバーリング54の幅は、本体部50の幅と略同じに形成されている。このカバーリング54の周面には、一対の長穴のレーザ光通過小孔(図略)が穿設されており、各レーザ光通過小孔は、照射部51より排ガス通過孔50a内に向けて照射されたレーザ光が、反射鏡52・52間で複数回反射されて受光部53に受光されるように、レーザ光の光路上に設けられている。
【0044】
また、図4及び図5に示すように、本実施例の本体部50には、外部空間と排ガス通過孔50aの内部空間とを連通する複数の取付孔50b・50b・・・が穿設されており、後述するパージ経路55の管部材55a及び還流経路56の管部材56aが各取付孔50b・50b・・・に嵌入されて取り付けられる。本実施例の取付孔50bは、本体部50に設けられた反射鏡52の表面に対して略水平状態に本体部50の長さ方向(図5においてX方向)に沿って穿設され、一端が外部空間に開口されるとともに、他端が排ガス通過孔50aに向けて開口されている。本実施例では、一の本体部50に四つの取付孔50b・50b・・・が穿設され、各取付孔50bにパージ経路55の接続端55b及び還流経路56の接続端56bがそれぞれ嵌入される。
【0045】
取付孔50bは、排ガス通過孔50a側の開口部が本体部50において反射鏡52の長さ方向(図5においてX方向)端側の表面側に開口されており、パージ経路55の接続端55bより排出された排ガスが反射鏡52の表面に向けて吹き付けられるとともに、還流経路56の接続端56bより反射鏡52に吹き付けられた排ガスが還流経路56に導入されて、排ガス通過孔50aより排出される。
【0046】
次に、パージ経路55及び還流経路56の構成について、以下に詳述する。
なお、本実施例では、パージ経路55及び還流経路56は本体部50に対してそれぞれ一対ずつ設けられており、以下の実施例では特に断りのない限り、一方のパージ経路55及び還流経路56の構成について説明するが、他方についても同様に構成されるものとする。
【0047】
図4乃至図6に示すように、パージ経路55は、本体部50の排ガス通過孔50aを通過する排ガスとは別に排気経路3から排ガスを分流して、分流した排ガスを反射鏡52・52の表面に向けて吹き付けるために設けられた分流経路である。具体的には、本実施例のパージ経路55は、内部中空に形成された管部材55aより構成されおり、パージ経路55を構成する管部材55aは、一端が排気経路3を構成する配管3aに接続された一方の管継手36に接続され、他端の接続端55bが本体部50に接続されている。
【0048】
管部材55aの一端は、管継手36に接続されて、管継手36の貫通孔36aに開口されている。そのため、排気経路3から管継手36の貫通孔36aを通過する排ガスの一部が、管部材55aの一端を介して管部材55aの内部に分流される(図6参照)。
【0049】
接続端55bは、本体部50に穿設された取付孔50bに嵌入されている。上述したように、この取付孔50bは、一端が外部空間に開口されるとともに、他端が排ガス通過孔50aに向けて開口されているため、取付孔50bに嵌入された接続端55bから分流された排ガスが排ガス通過孔50aに向けて排出される。そして、取付孔50bは、反射鏡52の長さ方向(図4においてX方向)の一端側に開口されるように穿設されているため、接続端55bから排出された排ガスが排ガス通過孔50aに露出された反射鏡52の表面に向けて吹き付けられる。
【0050】
本実施例のパージ経路55では、反射鏡52の長さ方向(図5においてX方向)の一端側から他端側に向けて反射鏡52の表面に向けて排ガスが吹き付けられる。換言すると、パージ経路55よって、排ガス通過孔50aを通過する排ガスの流れと直交する方向であって、照射部51より照射されたレーザ光が一対の反射鏡52・52により交互に反射されて受光側の受光部53に到達されるまでの光路を横切るようにして排ガスが吹き付けられる。
【0051】
また、パージ経路55には、管部材55aの中途部であって接続端55bに至る間にフィルタ部材55cが設けられており、パージ経路55内の排ガスがフィルタ部材55cを通過することで排ガス中のススやカーボンスーツなどの排ガス汚れが除去される。すなわち、排気経路3からパージ経路55に分流された排ガスは、パージ経路55の接続端55bまでの間にススやカーボンスーツなどの排ガス汚れが除去されてクリーンな状態に変換され、接続端55bより反射鏡52に向けて吹き付けられるのである。
【0052】
フィルタ部材55cの素材としては特に限定されず、例えば、ススやカーボンスーツなどの排ガス汚れをろ過する積層金属メッシュフィルタや積層金属不織不フィルタなどの積層金属フィルタ、耐熱性セラミックより形成された微細孔フィルタなどを用いることができる。
【0053】
排気経路3からパージ経路55に分流される排気ガスの流量は、排気経路3から排ガス通過孔50aを通過する排ガスの流量に影響を及ぼすため、パージ経路55(管部材55a)の長さや口径は、そのような影響を最小限に留めるように適宜設定される。好ましくは、排気経路3からパージ経路55に分流された排ガスを、排気経路3より分流されなかった排ガスが排ガス通過孔50aを通過するタイミングに合わせて、反射鏡52の表面に吹き付けられるように適宜設定される(例えば、図8参照)。
【0054】
このように、本実施例の測定部5では、パージ経路55が設けられることで、排気経路3中の排ガスは、管継手36→パージ経路55(管部材55a→→フィルタ部材55c→接続端55b)→取付孔50b→排ガス通過孔50a→反射鏡52と流れて、反射鏡52の表面に向けて吹き付けられるように構成されている(図6参照)。
【0055】
一方で、図4乃至図6に示すように、還流経路56は、パージ経路55から反射鏡52に向けて吹き付けられた排ガスを排気経路3に還流させる経路であって、具体的には、本実施例の還流経路56は、内部中空に形成された管部材56aより構成されおり、還流経路56を構成する管部材56aは、一端が排気経路3を構成する配管3aに接続された他方の管継手36に接続され、他端の接続端56bが本体部50に接続されている。
【0056】
接続端56bは、本体部50に穿設された取付孔50bであって、上述したパージ経路55の接続端55bが嵌入された取付孔50bと反射鏡52を挟んで対向する位置にある取付孔50bに嵌入されている。取付孔50bに嵌入された接続端56bから、パージ経路55から反射鏡52の長さ方向に沿って吹き付けられた排ガスが管部材56aの内部へと導入される。すなわち、パージ経路55に分流された排ガスは、排ガス通過孔50a内の反射鏡52の表面に向けて吹き付けられると、一部はそのまま排ガス通過孔50aの下流側へと送られるが、かかる排ガスの多くは接続端56bを介して還流経路56(の管部材56a)内へと導入される。
【0057】
管部材56aの一端は、管継手36に接続されて、管継手36の貫通孔36aに開口されている。そのため、還流経路56の管部材56a内の排ガスは、管部材56aの一端を介して管継手36の貫通孔36aへと送られて、排気経路3に還流される。
【0058】
このように、本実施例の測定部5では、還流経路56が設けられることで、反射鏡52の表面に向けて突きつけられた排ガスは、排ガス通過孔50a→取付孔50b→還流経路56(接続端56b→管部材56a)→管継手36と流れて、排気経路3に還流されるように構成されている(図6参照)。
【0059】
以上のように、本実施例の排ガス分析装置1は、エンジン20の排ガスを排出する排気経路3中の排ガスにレーザ光を照射し、排ガスを透過したレーザ光を検出することで排ガス中の成分濃度を測定する測定部5を有する排ガス分析装置1において、測定部5は、排気経路3中の排ガスが通過する排ガス通過孔50aが穿設され、排ガス通過孔50a内に向けて照射されたレーザ光を多重反射させる反射鏡52が配設される本体部50と、排ガス通過孔50aを通過する排ガスとは別に排気経路3から排ガスを分流し、分流した排ガスを反射鏡52の表面に向けて吹き付けるパージ経路55とを具備してなるため、簡易な構成で反射鏡52の表面を清浄に保つことができ、反射鏡52表面でのレーザ光の反射ロスを低減して排ガスの成分濃度の測定精度を安定させることができる。
【0060】
すなわち、排ガス分析装置1では、測定部5に排ガス通過孔50aを通過する排ガスとは別に排気経路3から排ガスを分流し、分流した排ガスを反射鏡52の表面に向けて吹き付けるパージ経路55が設けられているため、パージ経路55から供給される排ガス(パージガス)によって、反射鏡52の表面に排ガス中に含まれるススやカーボンスーツなどの排ガス汚れが付着するのを防止することができ、また、反射鏡52の表面に付着した排ガス汚れを除去することができ、反射鏡52の表面を清浄に保つことができるのである。また、このようにパージ経路55を設けるだけで、反射鏡52の表面に排ガス(パージガス)を供給することができるため、測定部5を簡易に構成することができる。
【0061】
さらに、本実施例の排ガス分析装置1では、測定部5において測定対象となる排ガス中に含まれる成分毎に対応する吸収量から排ガス中の成分濃度等が測定され、排ガスの成分濃度等はレーザ光路上における排ガス濃度の影響を受ける。本実施例のように、排気経路3中の排ガスをパージ経路55により分流してこれを反射鏡52の表面に吹き付けるように構成することで、排気経路3より分流された排ガスが反射鏡52の表面近傍のレーザ光路を横切るため、レーザ光路上における排ガス濃度の影響を低減することができ、排ガス中の成分濃度の分析精度を向上できる。
【0062】
特に、本実施例のパージ経路55は、内部中空の管部材55aより構成され、一端が排気経路3を構成する配管3a(管継手36)に接続され、他端が本体部50に接続されるため、既存の測定部5に対して管部材55aよりなるパージ経路55を容易に設けることができる。
【0063】
また、本実施例のパージ経路55には、パージ経路55内の排ガス中のススやカーボンスーツなどの排ガス汚れを除去するフィルタ部材55cが設けられるため、パージ経路55より反射鏡52に吹き付けられる排ガス(パージガス)をクリーンに変換することで、反射鏡52の表面を確実に清浄にすることができる。
【0064】
また、本実施例のパージ経路55には、反射鏡52の長さ方向の一端側に接続されるため、反射鏡52の表面に向けて吹き付けられたパージ経路55からの排ガスを、反射鏡52の長さ方向に沿って効果的に全面に行き渡らせることができ、反射鏡52の表面を確実に清浄にすることができる。
【0065】
さらに、本実施例の測定部5は、パージ経路55から反射鏡52に向けて吹き付けられた排ガスを排気経路3に還流させる還流経路56を具備してなるため、反射鏡52の表面に吹き付けられたパージ経路55からの排ガスを反射鏡52の表面に滞留させることなく、排ガス通過孔50a外に送り出すことができるため、排ガスの成分濃度の測定精度をより安定させることができる。特に、かかる排ガスを排気経路3に還流させることで、排気経路3中の排ガス濃度を略一定に保つことができ、例えば、排気経路3の複数箇所に測定部5を設置した場合であっても、連続して排ガス中の成分濃度を測定することができる。
【0066】
なお、排ガス分析装置1の構成としては、上述した実施例に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0067】
すなわち、測定部5の構成としては、上述した第一実施例の排ガス分析装置1ではパージ経路55及び還流経路56が設けられるが(図2参照)、その内還流経路56は必ずしも設けられる必要はない。具体的には、図7に示す第二実施例のように、測定部5においてパージ経路55のみが設けられ、還流経路56が省略されるように構成してもよい。かかる構成の場合には、パージ経路55より反射鏡52に吹き付けられた排ガスは、排ガス通過孔50aより排気経路3の下流方向へと送られる。このように構成することで、測定部5をより簡易かつコンパクトに構成することができる。
【0068】
また、パージ経路55の構成としては、図8に示す第三実施例のように、分流されなかった排気経路3中の排ガスが排ガス通過孔50aを通過するタイミングに合わせて、分流された排ガスを反射鏡52の表面に向けて吹き付ける排ガス流量調整手段としてのポンプ部材55dが別途設けられてもよい。具体的には、ポンプ部材55dは、上述したコントローラ6に接続され、パージ経路55中の排ガスの内、反射鏡52に吹き付けられる排ガスの流量を調整可能に構成され、コントローラ6によってポンプ部材55dの図示せぬバルブ等が開閉制御されることで、パージ経路55から反射鏡52に吹き付けられる排ガスの流量が制御される。
【0069】
ポンプ部材55dによる排ガス流量の調整方法としては、まず、排気経路3の上流側の排ガスF1が一方の管継手36に到達すると、排気経路3中の排ガスF1の一部の排ガスF2がパージ経路55内に分流される。そして、パージ経路55に分流されなかった排ガスF3は、やがて一方の管継手36から排ガス通過孔50aに到達される。一方で、ポンプ部材55dによりパージ経路55内に分流された排ガスF2が流量が制御されて、パージ経路55に分流されなかった排ガスF3が排ガス通過孔50aに到達するタイミングと同期するようにして、反射鏡52の表面に排ガスF4が吹き付けられる。
【0070】
上述した実施例(例えば、図2等参照)では、分流されなかった排気経路3中の排ガスが排ガス通過孔50aを通過するタイミングに合わせて、分流された排ガスが反射鏡52の表面に向けて吹き付けられるように、パージ経路55の管部材55aの長さや口径などが適宜設定されるところ、排気経路3中の排ガス流量などの測定条件が経時変化した場合には対応することができず、測定の安定性に劣るという課題がある。本実施例のようにパージ経路55に別途ポンプ部材55dを設けることで、排気経路3中の排ガス流量などの測定条件が経時変化した場合であっても、測定条件の変化に応じて反射鏡52へ供給される排ガスの流量を適宜調整することができるため、排ガスの濃度変化等に起因する測定結果への影響を低減して、測定の安定性を向上することができる。
【0071】
また、パージ経路55の構成としては、図9に示す第四実施例のように、パージ経路155として、管部材155aの一端が、排気経路3を構成する配管3aに接続された管継手36の内、排気経路3の下流側に接続される他方の管継手36に接続され、他端が、本体部50に接続されるように構成されてもよい。具体的には、かかるパージ経路155の構成では、排気経路3中の排ガスの内排ガス通過孔50aを通過した排ガスの一部をパージ経路155内に分流して、反射鏡52の表面に吹き付けるように構成される。
【0072】
また、パージ経路55の構成としては、上述した第一実施例では、本体部50に対して反射鏡52の長さ方向(図5においてX方向)の一端側に接続されるが、パージ経路55と本体部50との接続位置は特に限定されず、例えば、本体部50に対して反射鏡52の幅方向(図5においてY方向)の一端側に接続されてもよい。
【0073】
さらに、本体部50の構成としては、上述した第一実施例の排ガス分析装置1では、反射鏡52の表面に対して略水平状態に本体部50の長さ方向に沿って取付孔50bが穿設されるが(図4参照)、例えば、図10に示す第五実施例のように、反射鏡52の表面に対して鋭角方向に傾斜された状態に本体部50の長さ方向に沿って穿設されてもよい。すなわち、かかる本体部50の構成のように、取付孔50bが反射鏡52の表面に対して傾斜された状態で穿設されることで、取付孔50bに嵌入されたパージ経路55の接続端55bから反射鏡52の表面に対して斜め方向から排ガスが吹き付けられるため、反射鏡52の長さ方向に沿ってより効果的に全面に行き渡らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施例に係る排ガス分析装置を車輌に搭載した状態を示した側面図。
【図2】第一実施例の排ガス分析装置の測定部の側面図。
【図3】同じく図2の測定部の斜視図。
【図4】図2における反射鏡の近傍位置の垂直断面図。
【図5】図2における反射鏡の近傍位置の水平断面図。
【図6】図2に示した測定部において排ガスが流れる様子を示した側面図。
【図7】第二実施例の排ガス分析装置の測定部の側面図。
【図8】第三実施例の排ガス分析装置の測定部の側面図。
【図9】第四実施例の排ガス分析装置の測定部の側面図。
【図10】第五実施例の排ガス分析装置の測定部の反射鏡の近傍位置の垂直断面図。
【符号の説明】
【0075】
1 排ガス分析装置
3 排気経路
3a 配管
5 測定部
20 エンジン
36 管継手
50 本体部
50a 排ガス通過孔
51 照射部
52 反射鏡
53 受光部
55 パージ経路
55a 管部材
55b 接続部
55c フィルタ部材
56 還流経路
56a 管部材
56b 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガスを排出する排気経路中の排ガスにレーザ光を照射し、排ガスを透過したレーザ光を検出することで排ガス中の成分濃度を測定する測定部を有する排ガス分析装置において、
前記測定部は、
前記排気経路中の排ガスが通過する排ガス通過孔が穿設され、該排ガス通過孔内に向けて照射されたレーザ光を多重反射させる反射鏡が配設される本体部と、
前記排ガス通過孔を通過する排ガスとは別に、前記排気経路から排ガスを分流し、分流した排ガスを前記反射鏡の表面に向けて吹き付けるパージ経路とを具備してなることを特徴とする排ガス分析装置。
【請求項2】
前記パージ経路は、内部中空の管部材より構成され、一端が前記排気経路を構成する配管に接続され、他端が前記本体部に接続されることを特徴とする請求項1に記載の排ガス分析装置。
【請求項3】
前記パージ経路は、経路内の排ガス中の排ガス汚れを除去するフィルタ部材が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排ガス分析装置。
【請求項4】
前記パージ経路の他端は、前記本体部における前記反射鏡の長手方向の一端側に接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の排ガス分析装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記パージ経路から前記反射鏡に向けて吹き付けられた排ガスを前記排気経路に還流させる還流経路を具備してなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の排ガス分析装置。
【請求項6】
前記パージ経路は、分流されなかった前記排気経路中の排ガスが前記排ガス通過孔を通過するタイミングに合わせて、分流された排ガスを前記反射鏡の表面に向けて吹き付ける排ガス流量調整手段が設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の排ガス分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−175058(P2009−175058A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15473(P2008−15473)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】