説明

排ガス浄化フィルタの製造方法

【課題】焼成時間を短縮して生産性の向上を図ることができると共に、高品質の排ガス浄化フィルタを得ることができる排ガス浄化フィルタの製造方法を提供すること。
【解決手段】多孔質の隔壁11をハニカム状に配して多数のセル12を設けたコーディエライトからなるハニカム構造体10に栓部13を設けてなる排ガス浄化フィルタ1の製造方法は、コーディエライト化原料を含むセラミックス材料を押出成形して、ハニカム成形体を作製する押出成形工程と、ハニカム成形体を乾燥する乾燥工程と、ハニカム成形体を焼成温度T1で焼成する仮焼成工程と、ハニカム成形体の端面におけるセルの開口部のうち、栓部13によって栓詰めすべき部分に栓詰め用スラリーを配置する栓詰め工程と、栓詰め用スラリーを配置したハニカム成形体を焼成温度T2(≧T1)で焼成して、栓詰めすべき部分に栓部13を設けたハニカム構造体10を作製する本焼成工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化フィルタが知られている。
この排ガス浄化フィルタは、多孔質の隔壁をハニカム状に配して多数のセルを設けた基材としてのハニカム構造体を有するものである(特許文献1参照)。そして、排ガスを導入する導入通路となるセルの下流端と、多孔質の隔壁を通過した排ガスを排出する排出通路となるセルの上流端とは、栓部によって閉塞されるのが一般的である。
【0003】
上記排ガス浄化フィルタを用いて排ガスを浄化する際には、導入通路となるセルに侵入した排ガスが多孔質の隔壁を通過して、隣のセルよりなる排出通路に移動する。このとき、排ガス中のパティキュレートが隔壁に形成されている多数の細孔に捕集され、排ガスが浄化される。また、隔壁に触媒を担持させておくことにより、捕集したパティキュレートを触媒反応により分解除去することができる。
【0004】
上記排ガス浄化フィルタの基材となるハニカム構造体を作製するに当たっては、セラミック材料を押出成形してハニカム成形体を作製し、乾燥する。その後、栓詰めし、焼成する。
しかしながら、栓詰めしてから焼成を行う従来の製造方法では、昇温速度を速くして急激な焼成を行うと、栓詰めがされていることによってハニカム成形体中に含まれるバインダや造孔材としてのカーボン等の有機分が分解(燃焼)し難くなる。そのため、昇温速度をゆっくりとすることで長時間の焼成が必要となり、生産性の低下を招いていた。
【0005】
このようなことから、できるだけ焼成時間を短縮して生産性の向上を図ることができ、また品質の高い排ガス浄化フィルタを得ることができる排ガス浄化フィルタの製造方法が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−145521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点を鑑みてなされたものであり、焼成時間を短縮して生産性の向上を図ることができると共に、高品質の排ガス浄化フィルタを得ることができる排ガス浄化フィルタの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多孔質の隔壁をハニカム状に配して多数のセルを設けたコーディエライトからなるハニカム構造体を有し、該ハニカム構造体の上記セルのうち、排ガスを導入する導入通路となるセルの下流端と、上記多孔質の隔壁を通過した排ガスを排出する排出通路となるセルの上流端とを栓部によって閉塞してなる排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
コーディエライト化原料を含むセラミックス材料を押出成形して、ハニカム成形体を作製する押出成形工程と、
上記ハニカム成形体を乾燥する乾燥工程と、
上記ハニカム成形体を焼成温度T1で焼成する仮焼成工程と、
上記ハニカム成形体の端面における上記セルの開口部のうち、上記栓部によって栓詰めすべき部分に栓詰め用スラリーを配置する栓詰め工程と、
上記栓詰め用スラリーを配置した上記ハニカム成形体を焼成温度T2(≧T1)で焼成して、上記栓詰めすべき部分に上記栓部を設けた上記ハニカム構造体を作製する本焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項1)。
【0009】
本発明の排ガス浄化フィルタの製造方法は、上記のごとく、押出成形工程と乾燥工程と仮焼成工程と栓詰め工程と本焼成工程とを行う。すなわち、本発明では、押出成形後の上記ハニカム成形体を焼成温度T1で仮焼成する上記仮焼成工程と、仮焼成後に上記栓詰め用スラリーを配置した上記ハニカム成形体を焼成温度T2で本焼成する上記本焼成工程との2回の焼成を行う。
【0010】
ここで、上記仮焼成工程における仮焼成は、上記セラミック材料に含まれる例えばバインダや造孔材としてのカーボン等の有機分を燃焼除去することを目的としている。本発明では、上記栓詰め用スラリーを配置する前の段階で上記ハニカム成形体を焼成するため、上記栓詰め用スラリーを配置した後に焼成する場合に比べて昇温速度を速くしても、上記有機分を安定的に燃焼除去することができる。これにより、上記有機分を燃焼させるために要する時間を大幅に短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0011】
また、上記仮焼成工程における仮焼成は、上記ハニカム成形体を焼成してコーディエライト化させ、焼成による寸法変化をほぼ完了させると共に、ある程度の強度を得ることを目的としている。これにより、その後の上記栓詰め工程における上記ハニカム成形体のハンドリング、及び該ハニカム成形体への上記栓詰め用スラリーの配置を容易にすることができる。
【0012】
また、上記本焼成工程における本焼成は、上記栓詰め用スラリーを焼成して上記栓部を形成することを目的としている。本発明では、焼成による寸法変化がほぼ完了した仮焼成後の上記ハニカム成形体に上記栓詰め用スラリーを配置して焼成するため、上記栓部を寸法精度良く形成することができる。また、上記栓部の強度も充分に高いものとなる。
【0013】
また、上記本焼成工程における本焼成は、仮焼成後の上記ハニカム成形体を仮焼成における上記焼成温度T1よりも高い上記焼成温度T2で焼成し、コーディエライトをさらに配向させ、排ガス浄化フィルタの特性を向上させることを目的としている。これにより、排ガス浄化フィルタの熱膨張係数や平均細孔径等の特性を向上させることができる。そして、所望の熱膨張係数や平均細孔径等を有する、品質の高い排ガス浄化フィルタを得ることができる。
【0014】
また、上述したように、本発明では、上記仮焼成工程における仮焼成と上記本焼成工程における本焼成との2回の焼成を行う。すなわち、上記ハニカム成形体の実質的な最初の焼成と上記栓詰め用スラリーの焼成とを別々の工程で行う。これにより、焼成前の上記ハニカム成形体に上記栓詰め用スラリーを配置して、両者を同時に焼成する場合に比べて焼成回数が1回増える。ところが、上記ハニカム成形体に含まれる上記有機分を燃焼させるために要する時間を大幅に短縮することができるため、焼成全体にかかる時間を短縮することができる。よって、生産性の向上を図ることができる。
【0015】
このように、本発明の製造方法によれば、焼成時間を短縮して生産性の向上を図ることができると共に、高品質の排ガス浄化フィルタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明においては、上記仮焼成工程では、上記焼成温度T1が1300〜1400℃であることが好ましい(請求項2)。
上記焼成温度T1が1300℃未満の場合には、上記ハニカム成形体を充分にコーディエライト化することができないおそれがある。一方、1400℃を超える場合には、焼成時間が長くなるだけであり、生産性の低下を招くおそれがある。
【0017】
よって、上記仮焼成工程では、上記焼成温度T1が1380〜1400℃であることがより好ましい(請求項3)。
この場合には、上記ハニカム成形体を充分にコーディエライト化させ、焼成による寸法変化をほぼ完了させると共に、ある程度の強度を得ることができる。そのため、上記栓詰め工程における上記ハニカム成形体のハンドリング性を充分に確保することができ、上記栓詰め用スラリーを容易に配置することができる。
【0018】
また、上記本焼成工程では、上記焼成温度T2が1400〜1450℃であることが好ましい(請求項4)。
上記焼成温度T2が1400℃未満の場合には、上記ハニカム成形体を構成するコーディエライトのさらなる配向を図ることができないおそれがある。これにより、所望の特性(熱膨張係数や平均細孔径等)を得ることができないおそれがある。一方、1450℃を超える場合には、上記ハニカム成形体を構成するコーディエライトの融点を超え、上記ハニカム成形体が溶損してしまうおそれがある。
【0019】
また、上記仮焼成工程では、上記ハニカム成形体を上記焼成温度T1まで昇温する過程において、上記セラミック材料に含まれる有機分の分解が開始されてから完了するまでは、昇温速度を100℃/h以下とすることが好ましい(請求項5)。
上記昇温速度が100℃を超える場合には、上記ハニカム成形体に含まれる上記有機分が急激に燃焼するおそれがある。この燃焼により、上記ハニカム成形体に局部的な温度上昇が発生し、上記ハニカム成形体内に熱応力が生じて割れ等が発生するおそれがある。
【0020】
また、上記仮焼成工程では、炉内雰囲気を8回/分以上循環させながら、上記ハニカム成形体を焼成することが好ましい(請求項6)。
上記炉内雰囲気の循環回数が8回/分未満の場合には、上記炉内雰囲気を均一にすることができず、温度のばらつきが大きくなるおそれがある。そのため、上記ハニカム成形体に含まれる上記有機分を安定して燃焼させることができないおそれがある。
【0021】
また、上記仮焼成工程では、炉内温度のばらつきが±5℃以内の雰囲気中で、上記ハニカム成形体を焼成することが好ましい(請求項7)。
上記炉内温度のばらつきが±5℃を超える場合には、上記ハニカム成形体に含まれる上記有機分を安定して燃焼させることができないおそれがある。
【0022】
また、上記仮焼成工程では、炉内の酸素濃度を17%以下とすることが好ましい。
上記炉内の酸素濃度が17%を超える場合には、上記ハニカム成形体に含まれる上記有機分を安定して燃焼させることができないおそれがある。
よって、上記炉内の酸素濃度は、12%以下とすることがより好ましい。
【実施例】
【0023】
本発明の実施例について、図を用いて説明する。
本例において製造する排ガス浄化フィルタ1は、図1、図2に示すごとく、多孔質の隔壁11をハニカム状に配し、断面四角形状のセル12を多数設けてなるハニカム構造体10を有する。ハニカム構造体10は、コーディエライトを主成分とするセラミックより構成されており、円筒形状を呈している。
【0024】
また、同図に示すごとく、ハニカム構造体10のセル12のうち、排ガスGを導入する導入通路121となるセル12の下流端と、多孔質の隔壁11を通過した排ガスGを排出する排出通路122となるセル12の上流端とは、栓部13によって閉塞されている。本例では、隣り合うセル12が交互に導入通路121及び排出通路122となるように、栓部13を配してある。両端面から見ると、それぞれ縦方向及び横方向に交互に、いわゆる市松模様状に栓部13が配された状態となっている。
【0025】
本例の排ガス浄化フィルタは、粘土質のセラミック材料を押出成形し(押出成形工程)、得られたハニカム成形体を乾燥し(乾燥工程)、焼成温度T1で仮焼成する(仮焼成工程)。その後、仮焼成したハニカム成形体に栓詰め用スラリーを配置し(栓詰め工程)、焼成温度T2(≧T1)で本焼成し、栓部を設けたハニカム構造体を作製する(本焼成工程)ことによって製造される。
以下、本例の製造方法について説明する。
【0026】
まず、カオリン、溶融シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、タルク等を含有し、化学組成が重量比にて最終的にSiO2:45〜55%、Al23:33〜42%、MgO:12〜18%よりなるコーディエライトを主成分とする組成となるように調整したコーディエライト化原料を水に混合し、有機バインダとしてのメチルセルロースを添加した。このとき、有機バインダの含有量は3〜10重量%とした。さらに、造孔材としてのカーボンや成形用潤滑油等の有機分を添加して混練し、粘土質のセラミック材料を得た。
【0027】
次いで、粘土質のセラミック材料を押出成形機により押出成形し、所望の長さで切断してハニカム成形体を作製した。このハニカム成形体は、最終的なハニカム構造体と略同形状を呈し、ハニカム状に設けられた隔壁と、これによって仕切られると共に軸方向を貫通する複数のセルとを有する。本例においては、粘度質のセラミック材料を直径160mm、長さ100mm、隔壁の厚み0.3mm、セル数300メッシュのハニカム成形体に成形した。なお、ハニカム成形体のサイズ等は、用途に応じて変更可能である。
【0028】
次いで、ハニカム成形体を乾燥した後、焼成炉において仮焼成を行った。
本例の仮焼成は、図3(a)に示すような焼成パターンP1で行った。すなわち、室温から600℃まで昇温速度25〜50℃/hで昇温する。このとき、ハニカム成形体に含まれる有機バインダや造孔材等の有機分をゆっくりと燃焼除去する。そして、焼成温度T1:1400℃まで昇温速度70〜100℃/hで昇温した後、4時間保持する。このとき、ハニカム成形体をコーディエライト化させ、焼成による寸法変化をほぼ完了させると共に、充分なハンドリング性を有する程度の強度を得る。その後、室温まで冷却して、仮焼成を終了する。仮焼成に要した時間は57時間であった。
【0029】
なお、本例の仮焼成では、炉内の温度のばらつきが±5℃以内となるように、また炉内の酸素濃度が16%となるように、炉内の雰囲気を調整して焼成を行った。また、炉内の雰囲気は、10回/分のペースで循環させるようにした。
【0030】
次いで、ハニカム成形体の端面におけるセルの開口部において、縦方向及び横方向に交互に、いわゆる市松模様状に栓部となる栓詰め用スラリーを配置した。その後、焼成炉において本焼成を行った。
本例の本焼成は、図3(b)に示すような焼成パターンP2で行った。すなわち、室温から焼成温度T2:1450℃まで昇温速度100℃/hで昇温した後、36時間保持する。このとき、栓詰め用スラリーを焼成して栓部を形成すると共に、コーディエライトをさらに配向させることによって所望の熱膨張係数や平均細孔径等に調整する。その後、室温まで冷却して本焼成を終了する。本焼成に要した時間は65時間であった。
【0031】
以上により、栓部を設けたハニカム構造体を有する排ガス浄化フィルタを作製した。本例において、焼成に要した時間は、仮焼成の57時間と本焼成の65時間とを合わせた122時間であった。
【0032】
次に、比較例として、従来の方法で排ガス浄化フィルタを作製した。
比較例では、作製したハニカム成形体に栓詰め用スラリーを配置した後、焼成炉において焼成を行った。比較例の焼成は、室温から450℃までを70時間かけて昇温し、焼成温度である1450℃まで45時間かけて昇温した後、36時間保持する。その後、室温まで冷却して本焼成を終了する。焼成に要した時間は165時間であった。
以上により、排ガス浄化フィルタを作製した。
【0033】
次に、本例の排ガス浄化フィルタの製造方法における作用効果について、比較例と比較しながら説明する。
本例の排ガス浄化フィルタの製造方法では、押出成形後のハニカム成形体を焼成温度T1で仮焼成する仮焼成工程と、仮焼成後に栓詰め用スラリーを配置したハニカム成形体を焼成温度T2で本焼成する本焼成工程との2回の焼成を行う。
【0034】
ここで、仮焼成工程における仮焼成は、セラミック材料に含まれる有機バインダや造孔材としてのカーボン等の有機分を燃焼除去することを目的としている。本例では、栓詰め用スラリーを配置する前の段階でハニカム成形体を焼成するため、栓詰め用スラリーを配置した後に焼成する比較例に比べて昇温速度を速くしても、有機分を安定的に燃焼除去することができる。これにより、有機分を燃焼させるために要する時間を大幅に短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0035】
また、仮焼成工程における仮焼成は、ハニカム成形体を焼成してコーディエライト化させ、焼成による寸法変化をほぼ完了させると共に、ある程度の強度を得ることを目的としている。これにより、その後の栓詰め工程におけるハニカム成形体のハンドリング、及び該ハニカム成形体への栓詰め用スラリーの配置を容易にすることができる。
【0036】
また、本焼成工程における本焼成は、栓詰め用スラリーを焼成して栓部を形成することを目的としている。本例では、焼成による寸法変化がほぼ完了した仮焼成後のハニカム成形体に栓詰め用スラリーを配置して焼成するため、栓部を寸法精度良く形成することができる。また、栓部の強度も充分に高いものとなる。
【0037】
また、本焼成工程における本焼成は、仮焼成後のハニカム成形体を仮焼成における焼成温度T1よりも高い焼成温度T2で焼成し、コーディエライトをさらに配向させ、排ガス浄化フィルタの特性を向上させることを目的としている。これにより、排ガス浄化フィルタの熱膨張係数や平均細孔径等の特性を向上させることができる。そして、所望の熱膨張係数や平均細孔径等を有する、品質の高い排ガス浄化フィルタを得ることができる。
【0038】
また、上述したように、本例では、仮焼成工程における仮焼成と本焼成工程における本焼成との2回の焼成を行う。すなわち、ハニカム成形体の実質的な最初の焼成と栓詰め用スラリーの焼成とを別々の工程で行う。これにより、焼成前のハニカム成形体に栓詰め用スラリーを配置して、両者を同時に焼成する比較例に比べて焼成回数が1回増える。ところが、焼成全体にかかる時間は、比較例が165時間であり、本例が122時間である。つまり、本例では、ハニカム成形体に含まれる有機分を燃焼させるために要する時間を大幅に短縮することができるため、焼成全体にかかる時間を短縮することができる。よって、生産性の向上を図ることができる。
【0039】
また、本例において、仮焼成工程では、ハニカム成形体を焼成温度T1まで昇温する過程において、昇温速度を100℃/h以下としている。そのため、ハニカム成形体に含まれる有機分が急激に燃焼するおそれがない。これにより、有機分の急激な燃焼熱によって生じるハニカム成形体の割れ等を抑制することができる。
【0040】
また、仮焼成工程では、炉内雰囲気を8回/分以上循環させ、さらに炉内温度のばらつきが±5℃以内の雰囲気中で、ハニカム成形体を焼成する。そのため、炉内雰囲気はより均一となり、温度のばらつきが小さくなる。これにより、ハニカム成形体に含まれる有機分を安定して燃焼させることができる。
また、仮焼成工程では、炉内の酸素濃度を16%としている。そのため、ハニカム成形体に含まれる有機分が急激に燃焼するおそれがなく、より一層安定して燃焼させることができる。
【0041】
このように、本例の製造方法によれば、焼成時間を短縮して生産性の向上を図ることができると共に、高品質の排ガス浄化フィルタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例における、排ガス浄化フィルタを示す斜視図。
【図2】実施例における、排ガス浄化フィルタを示す断面説明図。
【図3】実施例における、(a)仮焼成工程の焼成パターンを示す説明図、(b)本焼成工程の焼成パターンを示す説明図。
【符号の説明】
【0043】
1 排ガス浄化フィルタ
10 ハニカム構造体
11 隔壁
12 セル
121 導入通路
122 排出通路
13 栓部
G 排ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁をハニカム状に配して多数のセルを設けたコーディエライトからなるハニカム構造体を有し、該ハニカム構造体の上記セルのうち、排ガスを導入する導入通路となるセルの下流端と、上記多孔質の隔壁を通過した排ガスを排出する排出通路となるセルの上流端とを栓部によって閉塞してなる排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
コーディエライト化原料を含むセラミックス材料を押出成形して、ハニカム成形体を作製する押出成形工程と、
上記ハニカム成形体を乾燥する乾燥工程と、
上記ハニカム成形体を焼成温度T1で焼成する仮焼成工程と、
上記ハニカム成形体の端面における上記セルの開口部のうち、上記栓部によって栓詰めすべき部分に栓詰め用スラリーを配置する栓詰め工程と、
上記栓詰め用スラリーを配置した上記ハニカム成形体を焼成温度T2(≧T1)で焼成して、上記栓詰めすべき部分に上記栓部を設けた上記ハニカム構造体を作製する本焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、上記仮焼成工程では、上記焼成温度T1が1300〜1400℃であることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項3】
請求項2において、上記仮焼成工程では、上記焼成温度T1が1380〜1400℃であることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記本焼成工程では、上記焼成温度T2が1400〜1450℃であることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記仮焼成工程では、上記ハニカム成形体を上記焼成温度T1まで昇温する過程において、少なくとも上記セラミック材料に含まれる有機分の分解が開始されてから完了するまでは、昇温速度を100℃/h以下とすることを特徴する排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記仮焼成工程では、炉内雰囲気を8回/分以上循環させながら、上記ハニカム成形体を焼成することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、上記仮焼成工程では、炉内温度のばらつきが±5℃以内の雰囲気中で、上記ハニカム成形体を焼成することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−119666(P2008−119666A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309656(P2006−309656)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】