説明

排ガス浄化用触媒の製造方法

【課題】貴金属系微粒子が金属化合物担体全体に高度に分散した状態あるいは金属化合物担体内部の制御された位置に高度に分散した状態で配置された排ガス浄化用触媒の製造方法を提供すること。
【解決手段】(M1)金属化合物微粒子と所定の分子量のポリアルキレンイミンとを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液中に分散している微粒子が所定の粒子径および粒度分布を有する前記金属化合物微粒子である、金属化合物コロイド溶液、および
(M2)金属化合物微粒子とポリアルキレンイミン以外の高分子分散剤とを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液中に分散している微粒子が所定の粒子径および粒度分布を有する前記金属化合物微粒子である、金属化合物コロイド溶液、
のうちのいずれか一方の金属化合物コロイド溶液、あるいは
前記金属化合物コロイド溶液(M1)または(M2)のpHを調整することにより、該コロイド溶液中の金属化合物微粒子に吸着した前記ポリアルキレンイミンまたは前記高分子分散剤を脱着させて調製した金属化合物サスペンジョンと、
貴金属系微粒子を含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液中に分散している微粒子が所定の粒子径を有する貴金属系微粒子である、貴金属系コロイド溶液と、
を均質混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物に熱処理を施す加熱工程と、
を含むことを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒の製造方法に関し、より詳しくは、金属酸化物などの金属化合物に貴金属触媒を担持させた排ガス浄化用触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のような内燃機関から排出される有害物質を浄化するための排ガス浄化用触媒などとして様々な触媒が開発されており、例えば、排ガス中のCOおよびHCの酸化とNOxの還元とを同時に行って浄化する三元触媒として、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニアなどからなる触媒担体に白金やロジウムなどの貴金属を担持させたものが広く知られている。
【0003】
このような触媒においては、従来、原子状の貴金属が触媒担体に担持されていた。しかしながら、原子状の貴金属は揮発しやすく、触媒活性が低下するという問題があった。そこで、国際公開第99/32223号(特許文献1)には、複合貴金属コロイドを多孔質酸化物担体に担持させた排ガス浄化用触媒が開示されている。この多孔質酸化物担体は数μmから数十μmの粉末(三次粒子)であり、数nmから数十nmの一次粒子が凝集したサブミクロンオーダーの二次粒子により形成されている。この触媒では、コロイド粒子を担体(三次粒子の表層部)に担持させているため、従来の原子状の貴金属を担持させた場合に比べて、貴金属が揮発しにくいという利点はある。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、多孔質酸化物担体が三次粒子であるため、コロイド粒子は担体(三次粒子)の表面には担持されるが、一次細孔内や二次細孔内には貴金属微粒子は導入されておらず、未だ、この排ガス浄化用触媒における貴金属の分散度を向上させる余地があった。
【0004】
また、貴金属の分散度が低い触媒においては、近接した貴金属が粒成長を起こしやすく、触媒劣化が発生しやすいという問題があり、貴金属が高度に分散した触媒が求められていた。
【0005】
さらに、特開2005−133135号公報(特許文献2)には、反応液を瞬時に混合し、配管内で反応を進行させて金属微粒子を形成させる方法が開示されており、この方法は、特に、界面活性剤を用いた逆ミセル法による金属微粒子形成に好適な方法であることが開示されている。そして、上記特許文献2には、混合方法として、高速撹拌混合方式、微小ギャップ混合方式、高圧混合方式が開示されている。しかしながら、前記高速撹拌混合方式に用いられる混合装置においては、反応液は反応場に滴下した後、混合されており、高い剪断力が付与された反応場に直接導入されて混合されるものではない。また、前記微小ギャップ混合方式に用いられる混合装置においては、狭小な反応場で剪断力を付与しながら反応液が供給されて混合されているが、反応液の供給口が離れており、瞬時の混合という観点においては十分なものではなかった。さらに、上記特許文献2には、高圧混合方式に用いられる混合装置としてY字型やT字型のものが開示されているが、これらにおいては反応液を配管内で衝突させて混合するものであり、剪断力を考慮したものではない。このため、上記特許文献2に記載の方法では、粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散している貴金属系コロイド溶液を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第99/32223号
【特許文献2】特開2005−133135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、貴金属系微粒子が金属化合物担体全体に高度に分散した状態あるいは金属化合物担体内部の制御された位置に高度に分散した状態で配置された排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、粒子径が小さく且つ均一な金属化合物微粒子が均一且つ高度に分散している金属化合物コロイド溶液と、粒子径が小さく且つ均一な貴金属系微粒子が均一且つ高度に分散している貴金属系コロイド溶液とを混合することによって、前記貴金属系微粒子と前記金属化合物微粒子とが高度に分散した状態で配置された排ガス浄化用触媒が得られること、また、前記金属化合物コロイドのpHを調整して金属化合物微粒子に吸着した高分子分散剤(ポリアルキレンイミンを含む)を脱着させて形成した金属化合物二次粒子を含有する金属化合物サスペンジョンと、前記貴金属系コロイド溶液とを混合することによって、前記貴金属系微粒子が高度に分散した状態で配置された排ガス浄化用触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、
(M1)金属化合物微粒子と重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液のpHが1.0〜6.0であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜70nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記金属化合物微粒子である、金属化合物コロイド溶液、および
(M2)金属化合物微粒子とポリアルキレンイミン以外の高分子分散剤とを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜70nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記金属化合物微粒子である、金属化合物コロイド溶液、
のうちのいずれか一方の金属化合物コロイド溶液、あるいは
(M3)前記金属化合物コロイド溶液(M1)のpHを調整することにより、該コロイド溶液中の金属化合物微粒子に吸着した前記ポリアルキレンイミンを脱着させて調製した金属化合物サスペンジョン、および
(M4)前記金属化合物コロイド溶液(M2)のpHを調整することにより、該コロイド溶液中の金属化合物微粒子に吸着したポリアルキレンイミン以外の前記高分子分散剤を脱着させて調製した金属化合物サスペンジョン、
のうちのいずれか一方の金属化合物サスペンジョンと、
貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子を含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜20nmである貴金属系微粒子である、貴金属系コロイド溶液と、
を均質混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物に熱処理を施す加熱工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0010】
前記混合工程において、前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物コロイド溶液とを混合する場合には剪断速度が7500sec−1以下となっている領域に前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物コロイド溶液とを独立に直接導入し、前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物サスペンジョンとを混合する場合には剪断速度が2000sec−1以下となっている領域に前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物サスペンジョンとを独立に直接導入して、均質混合することが好ましい。
【0011】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法においては、前記金属化合物コロイド溶液が2種類以上の原料溶液を混合することにより製造されたものであり、
前記金属化合物コロイド溶液が前記金属化合物コロイド溶液(M1)の場合には、該金属化合物コロイド溶液は、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属化合物の原料である金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものであり、1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することにより得られたものであり、
前記金属化合物コロイド溶液が前記金属化合物コロイド溶液(M2)の場合には、該金属化合物コロイド溶液は、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属化合物の原料である金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記高分子分散剤を含有するものであり、3000sec−1以上の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することにより得られたものである、
ことが好ましい。
【0012】
また、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記金属イオンを含有するものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類は、前記金属化合物コロイド溶液が金属化合物コロイド溶液(M1)の場合には前記ポリアルキレンイミンを含有するものであり、前記金属化合物コロイド溶液が金属化合物コロイド溶液(M2)の場合には前記高分子分散剤を含有するものである、ことがより好ましい。
【0013】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法において、前記貴金属系コロイド溶液は、
(N1)前記貴金属系微粒子と重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液のpHが2.5〜6.0であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、前記粒子径D50が0.8〜10.0nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、貴金属系コロイド溶液、および
(N2)前記貴金属系微粒子とポリアルキレンイミン以外の高分子分散剤とを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、前記粒子径D50が0.8〜5nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、貴金属系コロイド溶液
のうちのいずれか一方の貴金属系コロイド溶液であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法においては、前記貴金属系コロイド溶液が2種類以上の原料溶液を混合することにより製造されたものであり、
前記貴金属系コロイド溶液が前記貴金属系コロイド溶液(N1)の場合には、該貴金属系コロイド溶液は、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものであり、1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することにより得られたものであり、
前記貴金属系コロイド溶液が前記貴金属系コロイド溶液(N2)の場合には、該貴金属系コロイド溶液は、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記高分子分散剤を含有するものであり、3000sec−1以上の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することにより得られたものである、
ことがより好ましい。
【0015】
さらに、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記貴金属イオンを含有するものであり、
残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類は、前記貴金属系コロイド溶液が前記貴金属系コロイド溶液(N1)の場合には前記ポリアルキレンイミンを含有するものであり、前記貴金属系コロイド溶液が前記貴金属系コロイド溶液(N2)の場合には前記高分子分散剤を含有するものである、
ことが特に好ましい。
【0016】
なお、本発明の製造方法によって、金属化合物微粒子と貴金属系微粒子とが均一且つ高度に分散した状態で配置された排ガス浄化用触媒が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、金属化合物結晶子などのナノ粒子は水などの水性溶液中では凝集しやすく、通常、高分子分散剤を添加してナノ粒子に吸着させて凝集を抑制している。本発明に用いられるポリアルキレンイミンもナノ粒子に吸着して凝集を抑制する高分子分散剤と推察される。このとき、剪断速度が7500sec−1を超えるような非常に高い剪断力を反応場に付与すると粒子径の大きな凝集体が形成される傾向にある。これは、過剰な剪断力によってポリアルキレンイミンが破壊されるため、破壊されたポリアルキレンイミンがナノ粒子に吸着しても液中で十分な斥力を付与することができず、ナノ粒子やその凝集体が凝集するためであると推察される。また、本発明に用いられるポリアルキレンイミン以外の高分子分散剤もナノ粒子に吸着して凝集を抑制するものと推察されるが、高分子分散剤を添加して通常の攪拌を行なっただけでは粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。これは、通常、高分子分散剤が一次粒子よりも大きく、架橋構造を形成しやすいため、高分子分散剤の架橋反応に伴って高分子分散剤が吸着したナノ粒子が凝集するため、また、高分子分散剤が複数の金属化合物微粒子または貴金属系微粒子に同時に吸着するためであると推察される。
【0017】
そして、このような金属化合物微粒子と貴金属系微粒子はそれぞれが凝集した状態で互いに凝集し、金属化合物微粒子と貴金属系微粒子とを含有する凝集体が形成される。このような凝集体においては、金属化合物微粒子同士および貴金属系微粒子同士が凝集しているため、分散性は低いものとなると推察される。
【0018】
一方、本発明の製造方法に用いられる金属化合物コロイド溶液は、高分子分散剤(ポリアルキレンイミンを含む)を添加して反応場に所定の剪断力を付与しているため、金属化合物微粒子が析出するのと同時に前記高分子分散剤がナノ粒子に吸着し、ナノ粒子は、そのままの状態、または粒子径が比較的小さい凝集体の状態でコロイド溶液中に存在するものと推察される。また、前記高分子分散剤(ポリアルキレンイミンを含む)はコロイド溶液中で安定に存在するため、粒子径が大きな凝集体が形成されにくく、ナノ粒子は、そのままの状態、または粒子径が比較的小さい凝集体の状態でコロイド溶液中に安定して分散しているものと推察される。
【0019】
そして、本発明の製造方法においては、このように金属化合物微粒子が液中で高度に且つ安定に分散しているコロイド溶液と、貴金属系微粒子が液中で安定に分散しているコロイド溶液とを混合するため、金属化合物微粒子と貴金属系微粒子とが極めて高い分散性で均一に混合され、この分散状態を維持したまま、これらの微粒子を凝集させているため、このような凝集体を熱処理することによって、金属化合物微粒子と貴金属系微粒子とが極めて高い分散性で均一に混合されている排ガス浄化用触媒が得られると本発明者らは推察する。
【0020】
また、本発明の製造方法においては、前記金属化合物コロイド溶液のpHを調整して作製した金属化合物サスペンジョンと貴金属系微粒子が液中で安定に分散しているコロイド溶液とを混合した場合にも、貴金属系微粒子が高度に分散した状態で配置された排ガス浄化用触媒が得られる。この理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、前記金属化合物コロイド溶液のpHを調整すると金属化合物微粒子に吸着した前記高分子分散剤(ポリアルキレンイミンを含む)が脱着され、金属化合物微粒子は二次粒子を形成する。本発明の製造方法においては、この金属化合物二次粒子を含有する金属化合物サスペンジョンと、貴金属系微粒子が液中で安定に分散しているコロイド溶液とを混合するため、金属化合物二次粒子と貴金属系微粒子とが極めて高い分散性で均一に混合され、この分散状態を維持したまま、金属化合物二次粒子と貴金属系微粒子とを凝集させているため、このような凝集体を熱処理することによって、金属化合物二次粒子と貴金属系微粒子とが極めて高い分散性で均一に混合されている排ガス浄化用触媒が得られると推察される。そして、このような排ガス浄化用触媒においては金属化合物二次粒子の表層部に貴金属系微粒子が極めて高い分散性で均一に配置されていると推察され、前記排ガス浄化用触媒は、貴金属系微粒子が高度に分散した状態で配置されたものとなると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、貴金属系微粒子が金属化合物担体全体に高度に分散した状態あるいは金属化合物担体内部の制御された位置に高度に分散した状態で配置された排ガス浄化用触媒を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に用いられる貴金属系コロイド溶液の製造装置の好適な一実施形態を示す模式縦断面図である。
【図2】図1に示すホモジナイザー10の先端部(攪拌部)を示す拡大縦断面図である。
【図3】図1に示す内側ステータ13の側面図である。
【図4】図1に示す内側ステータ13の横断面図である。
【図5】実施例1で得られた金属化合物コロイド溶液中の金属化合物微粒子の粒度分布(累積質量)を測定した結果を示すグラフである。
【図6】実施例1で得られたPt微粒子の高分解能走査透過型電子顕微鏡写真(高分解能STEM写真)である。
【図7】実施例1で得られたPtコロイド溶液中のPt微粒子の粒度分布(累積質量)を測定した結果を示すグラフである。
【図8】実施例1で得られた混合溶液中の微粒子の粒度分布(累積質量)を測定した結果を示すグラフである。
【図9】実施例3で得られたPd微粒子の高分解能走査透過型電子顕微鏡写真(高分解能STEM写真)である。
【図10】実施例3で得られたPd微粒子の粒度分布(累積個数)を測定した結果を示すグラフである。
【図11】実施例3で得られたPdコロイド溶液中の微粒子の粒度分布(累積質量)を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0024】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、金属化合物コロイド溶液または金属化合物サスペンジョンと貴金属系コロイド溶液とを均質混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合物に熱処理を施す加熱工程とを含む方法である。先ず、本発明に用いられる金属化合物コロイド溶液、金属化合物サスペンジョンおよび貴金属系コロイド溶液について説明する。
【0025】
(金属化合物コロイド溶液)
本発明において用いられる金属化合物コロイド溶液は、
(M1)金属化合物微粒子と重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液のpHが1.0〜6.0であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜70nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記金属化合物微粒子である、金属化合物コロイド溶液、または、
(M2)金属化合物微粒子とポリアルキレンイミン以外の高分子分散剤とを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜70nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記金属化合物微粒子である、金属化合物コロイド溶液、
である。
【0026】
これらの金属化合物コロイド溶液中に分散している微粒子の粒度分布は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。前記コロイド溶液中の微粒子は、このようにして測定された粒度分布において累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜70nm(好ましくは0.8〜30nm、より好ましくは0.8〜9nm)であり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下(好ましくは2.0倍以下)の金属化合物微粒子である。このような粒子径D50およびD90を有する前記金属化合物微粒子は比表面積と耐熱性とのバランスに優れた触媒担体として有用である。また、前記金属化合物微粒子をアルミナ骨格を有する粒子と混合した場合、アルミナ骨格を有する粒子の細孔径を変化させることによって、前記金属化合物微粒子の細孔径分布を任意に制御することが可能となる。また、前記金属化合物微粒子が金属化合物結晶子の凝集体である場合、この凝集体を熱処理することによってこの凝集体の粒子径に対応する大きさの結晶子を形成することができる。したがって、触媒担体の調製の際に金属化合物コロイド溶液を用いることによって、触媒の使用温度領域に応じて理想的な形状の触媒担体を設計することが可能となり、例えば、ガス拡散性に最適な細孔径を有し、拡散律速領域で理想的な触媒活性を有する高耐熱性の触媒を得ることが可能となる。
【0027】
また、本発明にかかる金属化合物微粒子は、金属化合物の結晶子および/またはその凝集体であることが好ましい。このような金属化合物の結晶子の粒度分布は、例えば、金属化合物の透過型電子顕微鏡観察において50個の金属化合物結晶子を抽出して結晶子径を直接測定することによって求めることができる。本発明にかかる金属化合物コロイド溶液に含まれる金属化合物結晶子は、このようにして測定された粒度分布において累積個数が50%となる結晶子径d50が0.8〜3nm(より好ましくは1.0〜2.0nm)であることが好ましく且つ累積個数が90%となる結晶子径d90が前記結晶子径d50の1.5倍以下(より好ましくは1.3倍以下)のものが好ましい。このような結晶子径d50およびd90を有する金属化合物結晶子は比表面積が大きく、例えば高活性且つ高耐久性の触媒の出発原料として有用である。
【0028】
本発明にかかる金属化合物に含まれる金属としては特に制限はないが、Ti、Zr、Al、Si、希土類金属(La、Ce、Pr、Y、Scなど)、アルカリ土類金属(Sr、Ca、Baなど)、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、V、Mnなどが挙げられる。これらの金属は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、酸素ストレージ能と耐熱性を有するという観点からZr、Ce、Y、Al、Laが好ましい。
【0029】
また、本発明にかかる金属化合物としては特に制限はないが、前記金属の酸化物、水酸化物、塩、炭化物、窒化物、硫化物、これらの中間生成物などが挙げられる。前記金属酸化物としては、前記金属を1種含有する酸化物、前記金属を2種以上含有する複合酸化物、前記金属を1種含有する酸化物の混合物などが挙げられる。具体的な金属酸化物としては、CeO、ZrO、Y、TiO、Al、Fe、これらの複合酸化物、および混合物などが挙げられ、中でも、酸素ストレージ能と耐熱性を有するという観点から、CeOまたはZrOを主成分とする複合酸化物が好ましく、CeO−ZrO−Y3元系複合酸化物がより好ましい。
【0030】
また、前記金属水酸化物としては、前記金属を1種または2種以上含有する水酸化物、およびこれらの混合物などが挙げられる。具体的な金属水酸化物としては、Ce(OH)、Zr(OH)、Al(OH)、Ti(OH)、Fe(OH)などが挙げられる。さらに、前記金属塩としては、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、BaSO、CaCO、シュウ酸カルシウム、リン酸チタニウムなどが挙げられる。また、炭化物、窒化物、硫化物等についても同様である。
【0031】
本発明にかかる金属化合物コロイド溶液には、所定の分子量のポリアルキレンイミンまたはポリアルキレンイミン以外の高分子分散剤が含まれている。コロイド溶液中に前記ポリアルキレンイミンまたは前記高分子分散剤が存在することによって、前記金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または前記粒子径および前記粒度分布を有する凝集体の状態で安定してコロイド溶液中に分散することが可能となる。
【0032】
<金属化合物コロイド溶液(M1)>
金属化合物コロイド溶液(M1)は、前記金属化合物微粒子と前記ポリアルキレンイミンとを含有するものである。このようなポリアルキレンイミンの重量平均分子量は3000〜15000であり、8000〜12000であることが好ましい。ポリアルキレンイミンの重量平均分子量が前記範囲にあると金属化合物結晶子がそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散した金属化合物コロイド溶液(M1)を得ることができる。一方、ポリアルキレンイミンの重量平均分子量が前記下限未満になるとポリアルキレンイミンが金属化合物微粒子に吸着しても立体障害による斥力が十分に発現せず、金属化合物微粒子が凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリアルキレンイミンが架橋構造を形成し、大きな凝集体が形成する傾向にある。なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定され、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0033】
本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M1)において、ポリアルキレンイミンの含有量としては、前記金属化合物の結晶子の単位表面積に対して10〜35mg/mが好ましく、15〜25mg/mがより好ましい。ポリアルキレンイミンの含有量が前記範囲にあると金属化合物結晶子がそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散した金属化合物コロイド溶液(M1)を得ることができる。一方、前記ポリアルキレンイミンの含有量が前記下限未満になると金属化合物微粒子の表面をポリアルキレンイミンが十分に被覆することができず、金属化合物微粒子が凝集してより大きな凝集体が形成される傾向にあり、他方、前記上限を超えるとコロイド溶液中に遊離のポリアルキレンイミンが多く存在するため、ポリアルキレンイミンの架橋反応が著しく進行し、粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。
【0034】
また、本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M1)のpHは1.0〜6.0であり、3.0〜5.0であることが好ましい。コロイド溶液(M1)のpHが前記範囲にあるとポリアルキレンイミンは解離してNH基が形成され、金属化合物結晶子の負に帯電したサイトまたはニュートラルなサイトに吸着して分散効果を付与する。その結果、金属化合物結晶子がそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散したコロイド溶液(M1)を得ることができる。一方、pHが前記下限未満になると金属化合物結晶子の表面が大きく正に帯電するため、解離してNH基が形成したポリアルキレンイミンは金属化合物微粒子に吸着しにくく、金属化合物微粒子間に十分な斥力が発現せず、金属化合物微粒子が凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリアルキレンイミンの解離度が小さく、金属化合物微粒子へのポリアルキレンイミンの吸着量が減少し、金属化合物微粒子間に十分な斥力が発現せず、金属化合物微粒子が凝集する傾向にある。
【0035】
このような金属化合物コロイド溶液(M1)に用いられる溶媒としては、水、水溶性有機溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトンなど)、水と前記水溶性有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。本発明にかかるポリアルキレンイミンはこのような溶媒を用いた場合に優れた分散効果を発揮する傾向にある。
【0036】
本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M1)は、例えば、前記金属イオンを含有する原料溶液と前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液とを、反応場に高い剪断力を付与しないような条件でプロペラ撹拌などにより均質混合することによって製造することができる。また、本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M1)は、2種類以上の原料溶液を混合する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記金属イオンを含有するものを使用し、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記ポリアルキレンイミンを含有するものを使用し、これら原料溶液を剪断速度1100sec−1以上7500sec−1以下となっている領域に独立に直接導入して均質混合する方法によって製造することも可能である。特に、後者の方法によれば、水などの金属化合物結晶子が凝集しやすい溶媒においても、金属化合物結晶子をそのままの状態、または径がより小さく均一な凝集体の状態で分散させることが可能となる。
【0037】
後者の製造方法に用いられる装置としては、例えば、図1に示すものが挙げられる。なお、図1に示す装置を用いた金属化合物コロイド溶液(M1)の製造方法については後述する。
【0038】
<金属化合物コロイド溶液(M2)>
金属化合物コロイド溶液(M2)は、前記金属化合物微粒子と前記ポリアルキレンイミン以外の高分子分散剤とを含有するものである。このような金属化合物コロイド溶液(M2)において、前記高分子分散剤の含有量としては、前記金属化合物結晶子の単位表面積に対して9〜21mg/mが好ましく、9〜15mg/mがより好ましい。高分子分散剤の含有量が前記範囲にあると金属化合物結晶子がそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散した金属化合物コロイド溶液(M2)を得ることができる。また、このような金属化合物コロイド溶液(M2)を用いて触媒担体を調製する場合、この高分子分散剤の含有量(添加量)を変化させることによって触媒担体の細孔径分布を任意に制御することができる。一方、前記高分子分散剤の含有量が前記下限未満になると金属化合物微粒子の表面を高分子分散剤が十分に被覆することができず、金属化合物微粒子が凝集してより大きな凝集体が形成される傾向にあり、他方、前記上限を超えるとコロイド溶液中に遊離の高分子分散剤が多く存在するため、高分子分散剤の架橋反応が著しく進行し、より大きな凝集体が残存する傾向にある。
【0039】
このような高分子分散剤の重量平均分子量としては特に制限はないが、800〜8000が好ましく、800〜3000がより好ましい。高分子分散剤の重量平均分子量が前記範囲にあると金属化合物結晶子がそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散した金属化合物コロイド溶液(M2)を得ることができる。一方、高分子分散剤の重量平均分子量が前記下限未満になると高分子分散剤が金属化合物微粒子に吸着しても立体障害や静電反発による斥力が十分に発現せず、金属化合物微粒子が凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えると高分子分散剤が金属化合物微粒子に比べて極端に大きくなり、より大きな凝集体が残存する傾向にある。なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定され、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0040】
本発明に用いられる高分子分散剤としては、(メタ)アクリル酸の単独重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と他のビニルモノマーとの共重合体といった(メタ)アクリル酸系重合体などが挙げられ、中でも、水溶性を保持するという観点から、(メタ)アクリル酸系重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸の単独重合体および(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体がより好ましい。
【0041】
また、高分子分散剤として(メタ)アクリル酸系重合体を用いた場合、本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M2)のpHは5.0〜10.0であることが好ましく、6.0〜9.0であることがより好ましい。コロイド溶液(M2)のpHが前記範囲にあると金属化合物結晶子がそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散した金属化合物コロイド溶液(M2)を得ることができる。一方、pHが前記下限未満になると(メタ)アクリル酸系重合体中のカルボキシル基が解離しないため、(メタ)アクリル酸系重合体の金属化合物微粒子への吸着量が少なくなり、金属化合物微粒子が凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、金属化合物の種類にも依るが、金属化合物微粒子の表面が負にチャージしやすく、カルボキシル基が解離した(メタ)アクリル酸系重合体の吸着量が少なくなり、金属化合物微粒子が凝集する傾向にある。
【0042】
また、前記(メタ)アクリル酸系重合体中の全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合としては、得られるコロイド溶液(M2)のpHが5.0以上7.0未満の場合には90%以上100%以下が好ましい。また、コロイド溶液(M2)のpHが7.0以上10.0以下の場合には親水基を有する繰り返し単位の割合は50%以上100%以下が好ましく、75%以上100%以下がより好ましい。親水基を有する繰り返し単位の割合が前記範囲にあると(メタ)アクリル酸系重合体が金属化合物微粒子にループトレイン型で吸着するため、立体障害による斥力が作用して金属化合物微粒子の凝集が効果的に抑制され、金属化合物結晶子がそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散した金属化合物コロイド溶液(M2)を得ることができる。一方、親水基を有する繰り返し単位の割合が前記下限未満になると(メタ)アクリル酸系重合体中の解離したカルボキシル基が不足し、(メタ)アクリル酸系重合体の金属化合物微粒子への吸着量が少なくなり、金属化合物微粒子が凝集する傾向にある。
【0043】
このような金属化合物コロイド溶液(M2)に用いられる溶媒としては、水が好ましい。したがって、本発明にかかるコロイド溶液(M2)としてはコロイド水溶液が好ましい。
【0044】
本発明にかかる金属化合物のコロイド溶液(M2)は、例えば、2種類以上の原料溶液(好ましくは原料水溶液。以下、同様である。)を混合する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記金属イオンを含有するものを使用し、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記高分子分散剤を含有するものを使用し、これら原料溶液を剪断速度が3000sec−1以上となっている領域に独立に直接導入して均質混合する方法によって製造することができる。この方法によれば、金属化合物結晶子が凝集しやすい水中においても、径が小さく均一な凝集体の状態で金属化合物結晶子を分散させることが可能となる。
【0045】
このような金属化合物コロイド溶液(M2)の製造に用いられる装置としては、例えば、図1に示すものが挙げられる。なお、図1に示す装置を用いた金属化合物コロイド溶液(M2)の製造方法については後述する。
【0046】
(貴金属系コロイド溶液)
本発明において用いられる貴金属系コロイド溶液は、貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子を含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜20nmである貴金属系微粒子である、貴金属系コロイド溶液である。
【0047】
前記貴金属系微粒子は、貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子である。このような貴金属系微粒子を形成する貴金属としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)が挙げられる。これらの貴金属は、1種を単独で貴金属微粒子を形成していてもよいし、2種以上で貴金属合金微粒子を形成していてもよい。これらの貴金属系微粒子の中でも、優れた触媒活性を示すという観点から、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、またはこれらの合金からなる微粒子が好ましい。
【0048】
また、本発明にかかる貴金属系コロイド溶液においては、前記貴金属と貴金属以外の金属との貴金属合金の微粒子を貴金属系微粒子として使用することも可能である。この貴金属以外の金属としては、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、クロム、亜鉛、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステンなどが挙げられる。これらの金属は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0049】
さらに、本発明にかかる貴金属系微粒子としては、前記貴金属の酸化物、水酸化物、塩、炭化物、窒化物、硫化物などの貴金属化合物の微粒子;前記貴金属合金の酸化物、水酸化物、塩、炭化物、窒化物、硫化物などの貴金属合金化合物の微粒子も使用することができる。なお、貴金属合金化合物とは、少なくとも1種の貴金属を含有する複合金属酸化物などの複合金属化合物を意味する。
【0050】
本発明にかかる貴金属系コロイド溶液は、このような貴金属系微粒子が分散したものである。この貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。前記コロイド溶液中の微粒子は、このようにして測定された粒度分布において累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜20nmの貴金属系微粒子である。
【0051】
本発明において、このような貴金属系コロイド溶液としては公知のものを使用することができるが、貴金属系微粒子がより高度に分散して配置された排ガス浄化用触媒が得られるという観点から、
(N1)前記貴金属系微粒子と重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液のpHが2.5〜6.0であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、前記粒子径D50が0.8〜10.0nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、貴金属系コロイド溶液、または
(N2)前記貴金属系微粒子とポリアルキレンイミン以外の高分子分散剤とを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、前記粒子径D50が0.8〜5nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、貴金属系コロイド溶液
を使用することが好ましい。
【0052】
これらの貴金属系コロイド溶液(N1)および(N2)中に分散している微粒子は、例えば、動的光散乱法により測定された粒度分布において累積質量が50%となる粒子径D50が、コロイド溶液(N1)においては0.8〜10.0nm(好ましくは0.8〜5.0nm、より好ましくは0.8〜3.0nm)であり、コロイド溶液(N2)においては0.8〜5nm(好ましくは0.8〜3.0nm)であり、且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下(好ましくは2.0倍以下)のものである。このような粒子径D50およびD90を有する貴金属系微粒子はコロイド溶液中において均一に分散している。このような貴金属系コロイド溶液を用いることにより、粒子径が小さく均一な貴金属系触媒粒子を得ることができ、しかも、この貴金属系触媒粒子は触媒として使用する際に粒成長しにくく、触媒活性の低下を抑制することが可能となる。また、前記貴金属系微粒子をアルミナ骨格を有する複合酸化物凝集粒子に担持させた場合、アルミナ骨格を有する複合酸化物凝集粒子の細孔径を変化させることによって、前記複合酸化物凝集粒子(触媒担体)の細孔径分布を任意に制御することが可能となる。したがって、触媒担体の調製の際にこのような貴金属系コロイド溶液(N1)または(N2)を用いることによって、触媒の使用温度領域に応じて理想的な形状の触媒を設計することが可能となり、例えば、ガス拡散性に最適な細孔径を有し、貴金属系微粒子を均一に触媒担体の細孔内に配置させ、拡散律速領域で理想的な触媒活性を有する高耐熱性の触媒を得ることが可能となる。
【0053】
<貴金属系コロイド溶液(N1)>
貴金属系コロイド溶液(N1)は、前記貴金属系微粒子と前記ポリアルキレンイミンとを含有するものである。コロイド溶液中にこのようなポリアルキレンイミンが存在することによって、前記貴金属系微粒子は、その表面が正に帯電するため、凝集しにくくなり、均一な状態で安定してコロイド溶液中に分散することが可能となる。また、貴金属系微粒子の表面が正に帯電することによって、負に帯電した担体との間では静電引力が作用し、正に帯電した担体との間では斥力が作用することから、所定の担体に貴金属系微粒子を吸着させることが可能となる。例えば、アルミナとセリアとの複合酸化物担体に貴金属を吸着させる場合、従来の方法では、アルミナに吸着した貴金属が表面移動しやすいため、貴金属の粒成長により触媒活性が低下する傾向にあったが、本発明にかかる貴金属系コロイド溶液(N1)を用いると、ポリアルキレンイミンの作用により貴金属系微粒子の表面が正に帯電するため、セリア微粒子の表面を負に帯電させ且つアルミナ微粒子の表面を正に帯電させることにより選択的にセリア微粒子に吸着させることができ、貴金属の粒成長が起こりにくくなり、触媒活性の低下が抑制される。
【0054】
このようなポリアルキレンイミンの重量平均分子量は3000〜15000である。ポリアルキレンイミンの重量平均分子量が前記範囲にあると貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくくなり、その結果、貴金属系微粒子が均一に分散した貴金属系コロイド溶液(N1)を得ることができる。一方、ポリアルキレンイミンの重量平均分子量が前記下限未満になるとポリアルキレンイミンが貴金属系微粒子に吸着しても立体障害による斥力が十分に発現せず、貴金属系微粒子が凝集し、他方、前記上限を超えるとポリアルキレンイミンが架橋構造を形成し、貴金属系微粒子が凝集して大きな凝集体が形成する。したがって、このような観点から、ポリアルキレンイミンの重量平均分子量としては、8000〜12000が好ましい。なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定され、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0055】
本発明にかかる貴金属系コロイド溶液(N1)において、ポリアルキレンイミンの含有量としては、前記貴金属系微粒子の単位表面積に対して2〜20mg/mが好ましく、6〜15mg/mがより好ましい。ポリアルキレンイミンの含有量が前記範囲にあると貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくくなり、その結果、貴金属系微粒子が均一に分散した貴金属系コロイド溶液(N1)を得ることができる。一方、前記ポリアルキレンイミンの含有量が前記下限未満になると貴金属系微粒子の表面をポリアルキレンイミンが十分に被覆することができず、貴金属系微粒子が凝集してより大きな凝集体が形成される傾向にあり、他方、前記上限を超えると貴金属系コロイド溶液中に遊離のポリアルキレンイミンが多く存在するため、ポリアルキレンイミンの架橋反応が著しく進行し、貴金属系微粒子が凝集して粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。
【0056】
また、本発明にかかる貴金属系コロイド溶液(N1)のpHは2.5〜6.0である。前記貴金属系コロイド溶液(N1)のpHが前記範囲にあるとポリアルキレンイミンは解離してNH基が形成され、貴金属系微粒子の負に帯電したサイトまたはニュートラルなサイトに吸着して分散効果を付与する。これにより、貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくくなり、その結果、貴金属系微粒子が均一に分散した貴金属系コロイド溶液(N1)を得ることができる。一方、pHが前記下限未満になると還元反応速度が低下し、反応途中の中間生成物にポリアルキレンイミンが吸着し、その後、逐次反応が生ずるため、凝集が進行する。他方、前記上限を超えると、ポリアルキレンイミンの解離度が小さく、貴金属系微粒子へのポリアルキレンイミンの吸着量が減少し、貴金属系微粒子間に十分な斥力が発現せず、貴金属系微粒子が凝集する。
【0057】
このような貴金属系コロイド溶液(N1)に用いられる溶媒としては、水、水溶性有機溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトンなど)、水と前記水溶性有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。本発明にかかるポリアルキレンイミンはこのような溶媒を用いた場合に優れた分散効果を発揮する傾向にある。
【0058】
このような貴金属系コロイド溶液(N1)は、例えば、前記貴金属イオンを含有する原料溶液と前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液とを、剪断速度が1100sec−1以上となるような剪断力が付与された反応場で均質混合することによって製造することができる。本発明にかかる貴金属系コロイド溶液(N1)は、2種類以上の原料溶液を混合する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記貴金属イオンを含有するものを使用し、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記ポリアルキレンイミンを含有するものを使用し、これら原料溶液を1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に独立に直接導入して均質混合する方法によって製造することが可能である。特に、許容剪断速度の中で比較的高い範囲(1800sec−1以上7500sec−1以下)においてコロイド溶液を作製すれば、水などの貴金属系微粒子が凝集しやすい溶媒においても、貴金属系微粒子を凝集させずに、均一に分散させることが可能となる。
【0059】
後者の製造方法に用いられる装置としては、例えば、図1に示すものが挙げられる。なお、図1に示す装置を用いた貴金属系コロイド溶液(N1)の製造方法については後述する。
【0060】
<貴金属系コロイド溶液(N2)>
貴金属系コロイド溶液(N2)は、前記貴金属系微粒子と前記ポリアルキレンイミン以外の高分子分散剤とを含有するものである。コロイド溶液中に高分子分散剤が存在することによって、前記貴金属系微粒子は、その表面が負に帯電するため、凝集しにくくなり、均一な状態で安定してコロイド溶液中に分散することが可能となる。また、貴金属系微粒子の表面が負に帯電することによって、正に帯電した担体との間では静電引力が作用し、負に帯電した担体との間では斥力が作用することから、所定の担体に貴金属系微粒子を吸着させることが可能となる。
【0061】
本発明にかかる貴金属系コロイド溶液(N2)において、前記高分子分散剤の含有量としては、前記貴金属系微粒子の単位表面積に対して30〜500mg/mが好ましく、50〜250mg/mがより好ましい。高分子分散剤の含有量が前記範囲にあると貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくくなり、その結果、貴金属系微粒子が均一に分散した貴金属系コロイド溶液(N2)を得ることができる。一方、前記高分子分散剤の含有量が前記下限未満になると貴金属系微粒子の表面を高分子分散剤が十分に被覆することができず、貴金属系微粒子が凝集してより大きな凝集体が形成される傾向にあり、他方、前記上限を超えると貴金属系コロイド溶液中に遊離の高分子分散剤が多く存在するため、高分子分散剤の架橋反応が著しく進行し、貴金属系微粒子が凝集して粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。
【0062】
このような高分子分散剤の重量平均分子量としては特に制限はないが、800〜4000が好ましく、800〜3000がより好ましい。高分子分散剤の重量平均分子量が前記範囲にあると貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくくなり、その結果、貴金属系微粒子が均一に分散した貴金属系コロイド溶液(N2)を得ることができる。一方、高分子分散剤の重量平均分子量が前記下限未満になると高分子分散剤が貴金属系微粒子に吸着しても立体障害や静電反発による斥力が十分に発現せず、貴金属系微粒子が凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えると高分子分散剤が貴金属系微粒子に比べて極端に大きくなり、貴金属系微粒子が凝集して大きな凝集体が形成する傾向にある。なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定され、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0063】
本発明に用いられる高分子分散剤としては、(メタ)アクリル酸の単独重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と他のビニルモノマーとの共重合体といった(メタ)アクリル酸系重合体などが挙げられ、中でも、水溶性を保持するという観点から、(メタ)アクリル酸系重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸の単独重合体および(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体がより好ましい。
【0064】
また、高分子分散剤として(メタ)アクリル酸系重合体を用いた場合、本発明にかかる貴金属系コロイド溶液(N2)のpHは5.0〜10.0であることが好ましく、6.0〜9.0であることがより好ましい。前記コロイド溶液(N2)のpHが前記範囲にあると貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくくなり、その結果、貴金属系微粒子が均一に分散した貴金属系コロイド溶液(N2)を得ることができる。一方、pHが前記下限未満になると(メタ)アクリル酸系重合体中のカルボキシル基が解離しないため、(メタ)アクリル酸系重合体の貴金属系微粒子への吸着量が少なくなり、貴金属系微粒子が凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貴金属系微粒子の種類にも依るが、貴金属系微粒子の表面が負にチャージしやすく、カルボキシル基が解離した(メタ)アクリル酸系重合体の吸着量が少なくなり、貴金属系微粒子が凝集する傾向にある。
【0065】
また、前記(メタ)アクリル酸系重合体中の全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合としては、得られる貴金属系コロイド溶液(N2)のpHが5.0以上7.0未満の場合には90%以上100%以下が好ましい。また、貴金属系コロイド溶液(N2)のpHが7.0以上10.0以下の場合には親水基を有する繰り返し単位の割合は50%以上100%以下が好ましく、75%以上100%以下がより好ましい。親水基を有する繰り返し単位の割合が前記範囲にあると(メタ)アクリル酸系重合体が貴金属系微粒子にループトレイン型で吸着するため、立体障害による斥力が作用して貴金属系微粒子の凝集が効果的に抑制され、貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくくなり、その結果、貴金属系微粒子が均一に分散した貴金属系コロイド溶液を得ることができる。一方、親水基を有する繰り返し単位の割合が前記下限未満になると(メタ)アクリル酸系重合体中の解離したカルボキシル基が不足し、(メタ)アクリル酸系重合体の貴金属系微粒子への吸着量が少なくなり、貴金属系微粒子が凝集する傾向にある。
【0066】
このような貴金属系コロイド溶液(N2)に用いられる溶媒としては、水が好ましい。したがって、本発明にかかるコロイド溶液(N2)としてはコロイド水溶液が好ましい。
【0067】
本発明にかかる貴金属系コロイド溶液(N2)は、例えば、2種類以上の原料溶液(好ましくは原料水溶液。以下、同様である。)を混合する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記貴金属イオンを含有するものを使用し、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記高分子分散剤を含有するものを使用し、これら原料溶液を剪断速度が3000sec−1以上となっている領域に独立に直接導入して均質混合する方法によって製造することができる。この方法によれば、貴金属系微粒子が凝集しやすい水中においても、貴金属系微粒子を凝集させずに均一に分散させることが可能となる。
【0068】
このような貴金属系コロイド溶液(N2)の製造に用いられる装置としては、例えば、図1に示すものが挙げられる。なお、図1に示す装置を用いた貴金属系コロイド溶液(N2)の製造方法については後述する。
【0069】
(金属化合物コロイド溶液および貴金属系コロイド溶液の製造方法)
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる金属化合物コロイド溶液および貴金属系コロイド溶液を製造するための好適な装置ついて詳細に説明する。なお、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0070】
図1に示す製造装置は、攪拌装置としてホモジナイザー10を備えており、ホモジナイザー10の先端部(攪拌部)が反応容器20内に配置されている。ホモジナイザー10の先端部は、図2に示すように、凹型のローター11と、ローター11の外周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された凹型の外側ステータ12と、ローター11の内周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された凸型の内側ステータ13とを備えている。さらに、ローター11は、回転シャフト14を介してモーター15に接続されており、回転することが可能な構造となっている。
【0071】
そして、図1に示す製造装置においては、複数のノズル、すなわち、原料溶液Aを導入するためのノズル16Aと原料溶液Bを導入するためのノズル16Bとが、それぞれ内側ステータ13におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられている。また、ノズル16Aには流路17Aを介して原料溶液Aの供給装置(図示せず)が、ノズル16Bには流路17Bを介して原料溶液Bの供給装置(図示せず)がそれぞれ接続されており、ローター11と内側ステータ13との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能な構造となっている。
【0072】
さらに、図1に示す製造装置においては、図3および図4に示すように、ノズル16Aおよびノズル16Bが、内側ステータ13におけるローター11に対向する面において、ローター11の回転軸Xに対して直交する所定の面Yの外周方向に交互に設けられている。
【0073】
なお、図3および図4においては、ノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ12個ずつ設けられているが(24孔タイプ)、ノズル16Aおよびノズル16Bの数は特に限定されるものではない。したがって、ノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ1個ずつ設けられていればよいが(2孔タイプ)、原料溶液Aおよび原料溶液Bが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間をより短縮できるという観点から、ノズル16Aおよびノズル16Bの数はそれぞれ10個以上であることが好ましく、20個以上であることがより好ましい。一方、ノズル16Aおよびノズル16Bのそれぞれの数の上限は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、ノズルの詰まりをより確実に防止するという観点から、交互に配置されたノズル16Aおよびノズル16Bの開口部の直径が0.1mm程度以上の寸法を取り得るようにすることが好ましい。このようにノズルの開口部の直径は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、ノズルの詰まりをより確実に防止するという観点から、0.1〜1mm程度であることが好ましい。
【0074】
また、図3および図4においては、ノズル16Aおよびノズル16Bが、ローター11の回転軸Xに対して直交する一つの面Yの外周方向に一列に交互に設けられているが、複数の面の外周方向に複数の列において交互に設けられていてもよい。
【0075】
以上説明した図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとから原料溶液Aおよび原料溶液Bがそれぞれ導入される領域、すなわち図1および図2においてはローター11の内周と内側ステータ13の外周との間の領域において、剪断速度を所定の値に設定する。
【0076】
<コロイド溶液がポリアルキレンイミンを含有するものの場合>
ポリアルキレンイミンを含有する金属化合物コロイド溶液(M1)または貴金属系コロイド溶液(N1)を製造する場合には、前記領域における剪断速度は1100sec−1以上であることが好ましく、1800sec−1以上であることがより好ましい。前記剪断速度が前記下限未満になると反応場に十分な剪断力が付与されず、凝集した金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)が分離されず、大きな凝集体が形成する傾向にある。また、前記領域における剪断速度は7500sec−1以下であることが好ましく、6500sec−1以下であることが特に好ましい。前記剪断速度が前記上限を超えるとポリアルキレンイミンが破壊されて、前記金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)に十分な斥力を付与することができず、より大きな凝集体が形成する傾向にある。
【0077】
このような範囲の剪断速度を達成するための条件としては、ローターの回転速度およびローターとステータとの間のギャップの大きさが影響するため、前記領域の剪断速度が前記条件を満たすようにそれらを設定する必要がある。具体的なローター11の回転速度は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、例えば、内側ステータ13の外径12.2mm、ローター11と外側ステータ12との間のギャップ0.5mm、およびローター11と内側ステータ13との間のギャップ0.5mmの場合にはローター11の回転速度を好ましくは600〜4000rpm、より好ましくは1000〜3500rpmに設定することによって前記剪断速度を達成することが可能となる。
【0078】
また、ローター11と内側ステータ13との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましい。さらに、ローター11と外側ステータ12との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましい。このギャップの大きさの変化に対応してローター11の回転速度を調整することにより前記範囲の剪断速度を達成することが可能となる。これらのギャップが前記下限未満になるとギャップの詰まりが発生し易くなる傾向にあり、前記上限を超えると効果的な剪断力を付与できない傾向にある。
【0079】
また、図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとからそれぞれ供給された原料溶液Aおよび原料溶液Bが、前記領域に導入されてから1msec以内(特に好ましくは0.5msec以内)に均質混合されるようにノズル16Aおよびノズル16Bが配置されていることが好ましい。なお、ここでいう原料溶液が前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間とは、ノズル16A(またはノズル16B)から導入された原料溶液A(または原料溶液B)が隣接するノズル16B(またはノズル16A)の位置に到達し、ノズル16B(またはノズル16A)から導入された原料溶液B(または原料溶液A)と混合されるまでの時間をいう。
【0080】
以上、本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M1)および貴金属系コロイド溶液(N1)の製造に好適に用いられる装置について説明したが、本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M1)および貴金属系コロイド溶液(N1)の製造方法は、図1に示す製造装置を用いる方法に限定されるものではない。例えば、図1に示す製造装置においては、2種類の原料溶液が導入できるように構成されているが、3種類以上の原料溶液が導入できるようにノズルや原料溶液供給装置等を構成してもよい。
【0081】
また、図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとがそれぞれ内側ステータ13におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられているが、ノズル16Aとノズル16Bとがそれぞれ外側ステータ12におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられていてもよい。そのように構成すれば、ローター11と外側ステータ12との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能となる。なお、その領域における剪断速度は前記条件を満たすように設定する必要がある。
【0082】
さらに、上述したように、剪断速度が所定の値となるような剪断力が反応場に付与できる方法であれば、例えば、プロペラ撹拌などにより2種類以上の原料溶液を均質混合してもよい。
【0083】
次に、本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M1)および貴金属系コロイド溶液(N1)の製造方法の好適な一実施形態について説明する。本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M1)および貴金属系コロイド溶液(N1)の製造方法においては、原料溶液を導入する領域の剪断速度を前記範囲に設定し、前記各原料溶液を前記領域に独立して直接的に導入することが好ましい。例えば、図1に示す製造装置を用いる場合には、ノズル16Aとノズル16Bとから原料溶液Aおよび原料溶液Bがそれぞれ導入される領域、すなわち図1および図2においてはローター11と内側ステータ13との間の領域の剪断速度が前記範囲となるようにローター11を回転させ、原料溶液Aおよび原料溶液Bをそれぞれノズル16Aおよびノズル16Bから前記領域に独立して直接的に導入する。このように剪断速度が所定の値となっている領域に直接導入された各原料溶液は、極めて短時間の間に均質混合されて反応が終了し、前記原料溶液中の原料に由来する金属化合物の結晶子やその凝集体からなる微粒子(または貴金属系微粒子)が得られる。このような方法により得られた金属化合物結晶子(または貴金属系微粒子)は、結晶子径(または粒子径)がより小さく且つ粒度分布がより狭いものとなる。また、金属化合物結晶子の凝集体も、粒子径がより小さく且つ粒度分布がより狭いものとなる。
【0084】
また、各原料溶液の送液速度としては特に制限はないが、1.0〜30ml/minが好ましい。原料溶液の送液速度が前記下限未満になると金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)の製造効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)の液中における凝集粒子径が大きくなる傾向にある。
【0085】
本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M1)の製造方法においてはコロイド溶液のpHを1.0〜6.0に調整し、貴金属系コロイド溶液(N1)の製造方法においてはコロイド溶液のpHを2.5〜6.0に調整する。コロイド溶液のpHを前記範囲にするとポリアルキレンイミンは解離してNH基が形成され、金属化合物結晶子(または貴金属系微粒子)の負に帯電したサイトまたはニュートラルなサイトに吸着して分散効果を付与する。これにより、金属化合物結晶子がそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散した金属化合物コロイド溶液(M1)を得ることができる(貴金属系微粒子においては、粒子径が小さく均一で、凝集しにくくなり、その結果、貴金属系微粒子が均一に分散した貴金属系コロイド溶液(N1)を得ることができる)。一方、pHが前記下限未満になると還元反応速度が低下し、反応途中の中間生成物にポリアルキレンイミンが吸着し、その後、逐次反応が生ずるため、凝集が進行する。他方、前記上限を超えると、ポリアルキレンイミンの解離度が小さく、金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)へのポリアルキレンイミンの吸着量が減少し、金属化合物微粒子間(または貴金属系微粒子間)に十分な斥力が発現せず、金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)が凝集する。また、このような観点から、コロイド溶液(M1)のpHを3.0〜5.0に調整することが好ましい。
【0086】
本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M1)または貴金属系コロイド溶液(N1)を製造する場合、前記金属イオン(または貴金属イオン)と前記ポリアルキレンイミンは、同じ原料溶液に含まれていてもよいし、各々別の原料溶液に含まれていてもよいが、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属イオン(または貴金属イオン)を含むものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含むものであることが好ましい。さらに、ヒドラジンおよび水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤は前記金属イオン(または貴金属イオン)と同一の原料溶液には含まれず、ポリアルキレンイミンと同一の原料溶液には含まれていてもよい。例えば、図1に示す製造装置を用いる場合には、前記金属イオン(または貴金属イオン)と前記ポリアルキレンイミンがともに原料溶液Aに含まれていてもよいし、原料溶液Aに前記金属イオン(または貴金属イオン)が含まれ、原料溶液Bに前記ポリアルキレンイミンが含まれていてもよいが、後者が好ましい。
【0087】
また、前記金属イオンを含む原料溶液(例えば前記原料溶液A)の陽イオン濃度としては0.005〜0.5mol/Lが好ましく、0.01〜0.2mol/Lがより好ましく、前記貴金属イオンを含む原料溶液)の陽イオン濃度としては0.0001〜0.5mol/Lが好ましく、0.0001〜0.2mol/Lがより好ましい。陽イオン濃度が前記範囲にあると金属化合物結晶子がそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散したコロイド溶液を得ることができる(貴金属系微粒子においては、粒子径が小さく均一で、凝集しにくくなり、その結果、貴金属系微粒子が均一に分散した貴金属系コロイド溶液を得ることができる)。一方、陽イオン濃度が前記下限未満になると金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)の収率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとコロイド溶液中の金属化合物微粒子間(または貴金属系微粒子間)の距離が短くなるため、ポリアルキレンイミンが効果的な形態で金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)に吸着できず、金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)が凝集する傾向にある。
【0088】
<コロイド溶液がポリアルキレンイミン以外の高分子分散剤を含有するものの場合>
前記高分子分散剤を含有する金属化合物コロイド溶液(M2)または貴金属系コロイド溶液(N2)を製造する場合には、剪断速度は3000sec−1以上であることが好ましく、6000sec−1以上であることが特に好ましい。この領域の剪断速度が前記下限未満になると金属化合物結晶子(または貴金属系微粒子)の凝集と複数の結晶子(または微粒子)に高分子分散剤が吸着した構造が分離されず、より大きな凝集体が残存する傾向にある。
【0089】
このような範囲の剪断速度を達成するための条件としては、ローターの回転速度およびローターとステータとの間のギャップの大きさが影響するため、前記領域の剪断速度が前記条件を満たすようにそれらを設定する必要がある。具体的なローター11の回転速度は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、例えば、内側ステータ13の外径12.2mm、ローター11と外側ステータ12との間のギャップ0.5mm、およびローター11と内側ステータ13との間のギャップ0.5mmの場合にはローター11の回転速度を好ましくは3000〜30000rpm、より好ましくは3000〜20000rpmに設定することによって前記範囲の剪断速度を達成することが可能となる。
【0090】
また、ローター11と内側ステータ13との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであることがより好ましい。さらに、ローター11と外側ステータ12との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであることがより好ましい。このギャップの大きさの変化に対応してローター11の回転速度を調整することにより前記範囲の剪断速度を達成することが可能となる。これらのギャップが前記下限未満になるとギャップの詰まりが発生し易くなる傾向にあり、前記上限を超えると高い剪断速度を達成できなくなる傾向にある。
【0091】
また、図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとからそれぞれ供給された原料溶液Aおよび原料溶液Bが、前記領域に導入されてから1msec以内(特に好ましくは0.5msec以内)に均質混合されるようにノズル16Aおよびノズル16Bが配置されていることが好ましい。なお、ここでいう原料溶液が前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間とは、ノズル16A(またはノズル16B)から導入された原料溶液A(または原料溶液B)がローター11の回転につれて移動し、隣接するノズル16B(またはノズル16A)の位置に到達してノズル16B(またはノズル16A)から導入された原料溶液B(または原料溶液A)と混合されるまでの時間をいう。
【0092】
以上、本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M2)および貴金属系コロイド溶液(N2)の製造に用いられる装置について説明したが、本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M2)および貴金属系コロイド溶液(N2)の製造方法は、図1に示す製造装置を用いる方法に限定されるものではない。例えば、図1に示す製造装置においては、2種類の原料溶液が導入できるように構成されているが、3種類以上の原料溶液が導入できるようにノズルや原料溶液供給装置等を構成してもよい。
【0093】
また、図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとがそれぞれ内側ステータ13におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられているが、ノズル16Aとノズル16Bとがそれぞれ外側ステータ12におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられていてもよい。そのように構成すれば、ローター11と外側ステータ12との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能となる。なお、その領域における剪断速度は前記条件を満たすように設定する必要がある。
【0094】
次に、本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M2)および貴金属系コロイド溶液(N2)の製造方法の好適な一実施形態について説明する。本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M2)および貴金属系コロイド溶液(N2)の製造方法においては、原料溶液を導入する領域の剪断速度を前記範囲に設定し、前記各原料溶液を前記領域に独立して直接的に導入する。例えば、図1に示す製造装置を用いる場合には、ノズル16Aとノズル16Bとから原料溶液Aおよび原料溶液Bがそれぞれ導入される領域、すなわち図1および図2においてはローター11と内側ステータ13との間の領域の剪断速度が前記範囲となるようにローター11を高速回転させ、原料溶液Aおよび原料溶液Bをそれぞれノズル16Aおよびノズル16Bから前記領域に独立して直接的に導入する。このように極めて高剪断速度となっている領域に直接導入された各原料溶液は、極めて短時間の間に均質混合されて反応が終了し、金属化合物の結晶子(または貴金属系微粒子)が形成される。これと同時に、高分子分散剤が、極めて高い剪断速度となった反応場において瞬時に効果的に結晶子の表面(または貴金属系微粒子の表面)に吸着する。その結果、結晶子(または微粒子)が高分散したコロイド溶液を得ることができる。
【0095】
本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M2)および貴金属系コロイド溶液(N2)の製造方法においては、前記金属イオン(または貴金属イオン)と前記高分子分散剤は、同じ原料溶液に含まれていてもよいし、各々別の原料溶液に含まれていてもよいが、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属イオン(または貴金属イオン)を含むものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記高分子分散剤を含むものであることが好ましい。さらに、ヒドラジンおよび水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤は前記金属イオン(または貴金属イオン)と同一の原料溶液には含まれず、ポリアルキレンイミンと同一の原料溶液には含まれていてもよい。例えば、図1に示す製造装置を用いる場合には、前記金属イオン(または貴金属イオン)と前記高分子分散剤がともに原料溶液Aに含まれていてもよいし、原料溶液Aに前記金属イオン(または貴金属イオン)が含まれ、原料溶液Bに前記高分子分散剤が含まれていてもよいが、後者が好ましい。
【0096】
また、本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M2)および貴金属系コロイド溶液(N2)の製造方法においては、前記金属イオンを含む原料溶液(例えば前記原料溶液A)の陽イオン濃度としては0.01〜0.5mol/Lが好ましく、0.05〜0.2mol/Lがより好ましく、前記貴金属イオンを含む原料溶液の陽イオン濃度としては0.0001〜0.5mol/Lが好ましく、0.001〜0.2mol/Lがより好ましい。陽イオン濃度が前記範囲にあると金属化合物結晶子がそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散したコロイド溶液を得ることができる(貴金属系微粒子においては、粒子径が小さく均一で、凝集しにくくなり、その結果、貴金属系微粒子が均一に分散した貴金属系コロイド溶液を得ることができる)。一方、陽イオン濃度が前記下限未満になると金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)の収率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとコロイド溶液中の金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)の粒子間距離が短くなるため、結晶子(または微粒子)に吸着した高分子分散剤が多数の結晶子(または微粒子)に吸着しやすくなり、結晶子や凝集体同士(または貴金属系微粒子同士)がさらに凝集する傾向にある。
【0097】
本発明にかかる金属化合物コロイド溶液(M2)および貴金属系コロイド溶液(N2)の製造方法において高分子分散剤として(メタ)アクリル酸系重合体を用いた場合には、コロイド溶液のpHを5.0〜10.0に調整することが好ましく、6.0〜9.0に調整することがより好ましい。特に、前記(メタ)アクリル酸系重合体として全繰り返し単位のうちの親水基を有するものの割合が90%以上100%以下のものを用いる場合には、コロイド溶液のpHを5.0以上10.0以下に調整することがさらに好ましい。また、親水基を有する繰り返し単位の割合が50%以上90%未満(より好ましくは75%以上90%未満)のものを用いる場合には、コロイド溶液のpHを7.0以上10.0以下に調整することがさらに好ましい。コロイド溶液のpHを前記範囲に調整することにより金属化合物結晶子がそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散した金属化合物コロイド溶液(M2)を得ることができる(貴金属系微粒子においては、粒子径が小さく均一で、凝集しにくくなり、その結果、貴金属系微粒子が均一に分散した貴金属系コロイド溶液(N2)を得ることができる)。一方、pHが前記下限未満になると(メタ)アクリル酸系重合体中のカルボキシル基が解離しないため、(メタ)アクリル酸系重合体の金属化合物結晶子(または貴金属系微粒子)への吸着量が少なくなり、結晶子同士(または微粒子同士)がさらに凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、金属化合物(または貴金属系微粒子)の種類にも依るが、金属化合物結晶子(または貴金属系微粒子)の表面が負にチャージしやすく、カルボキシル基が解離した(メタ)アクリル酸系重合体の吸着量が少なくなり、結晶子同士(または微粒子同士)がさらに凝集する傾向にある。
【0098】
各原料溶液の送液速度としては特に制限はないが、1.0〜30ml/minが好ましい。原料溶液の送液速度が前記下限未満になると金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)の製造効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)の液中における凝集粒子径が大きくなる傾向にある。
【0099】
このような金属化合物コロイド溶液(M1)および(M2)または貴金属系コロイド溶液(N1)および(N2)を製造する場合に適用できる反応系は特に制限されず、アルコキシドの加水分解反応や貧溶媒を用いた溶解度変化を利用する析出反応などが挙げられるが、中和反応や酸化還元反応といった核生成速度や反応速度が極めて早い反応においても前記製造方法によれば金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)は粒子径が小さく均一なものとなり、金属化合物微粒子(または貴金属系微粒子)が均一に分散したコロイド溶液が得られる。
【0100】
このような中和反応、酸化還元反応などにおける具体的な反応系は特に制限されるものではないが、例えば、2種類の原料溶液を用いて前記金属化合物コロイド溶液を製造する場合には以下のような反応系が好ましい。
【0101】
(i)中和反応I
原料溶液A(金属イオン含有溶液):金属化合物の原料である前記金属の酢酸塩、脂肪酸塩(例えばシュウ酸塩)、無機酸の塩(例えば硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩)を含有する溶液
原料溶液B(中和剤):アンモニア水、脂肪酸(例えばシュウ酸)もしくは無機酸(例えば硝酸、硫酸、塩酸)のアンモニウム塩を含有する溶液、またはアルカリ金属水酸化物溶液(水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液など)。
【0102】
(ii)中和反応II
原料溶液A(アルカリ性原料液):酢酸バリウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウムなどを含有する溶液
原料溶液B(酸性原料液):硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどを含有する溶液。
【0103】
(iii)酸化還元反応
原料溶液A:硝酸銀、塩化白金酸などを含有する溶液
原料溶液B:アセトアルデヒド溶液、水素化ホウ素ナトリウム溶液、ヒドラジン、エタノールなど。
【0104】
また、2種類の原料溶液を用いて前記貴金属系コロイド溶液を製造する場合には以下の酸化還元反応が好ましい。
【0105】
酸化還元反応
原料溶液A:硝酸銀、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、塩化白金酸、ジニトロジアンミン白金硝酸(以下、「硝酸白金」という)などを含有する溶液
原料溶液B:アセトアルデヒド溶液、水素化ホウ素ナトリウム溶液、ヒドラジン、エタノールなど。
【0106】
なお、ポリアルキレンイミン(または高分子分散剤)は、上記いずれの反応においても原料溶液Aおよび原料溶液Bの少なくとも一方に含まれていればよいが、原料溶液Bに含まれていることが好ましい。例えば、前記中和反応Iにおいては、金属化合物(または貴金属系微粒子)の原料である前記金属(または貴金属)の塩を含有する原料溶液Aと、中和剤とポリアルキレンイミン(または高分子分散剤)とを含有する原料溶液Bとを用いることが好ましい。また、前記酸化還元反応においては、金属化合物(または貴金属系微粒子)の原料である金属イオン(または貴金属イオン)を含有する原料溶液Aと、還元剤と高分子分散剤(またはポリアルキレンイミン)とを含有する原料溶液Bとを用いることが好ましい。
【0107】
このような原料溶液の組成や組み合わせは、目的とする金属化合物コロイド溶液(または貴金属系コロイド溶液)の種類や使用する原料の種類などに応じて適宜設定することができる。例えば、CeOを含有する金属酸化物のコロイド溶液を製造する場合、原料溶液Aとして4価のセリウムイオンを含むもの、および3価のセリウムイオンを含むもののいずれの原料溶液も使用することもできるが、後者の原料溶液Aを使用する場合には、酸化させて4価のセリウムイオンとするために、原料溶液Bとして中和剤の他に、原料溶液A中のセリウムイオンに対して当量以上の過酸化水素を含むものを使用することが好ましい。
【0108】
(金属化合物サスペンジョン)
本発明において用いられる金属化合物サスペンジョンは、
(M3)前記金属化合物コロイド溶液(M1)のpHを調整することにより、該コロイド溶液中の金属化合物微粒子に吸着した前記ポリアルキレンイミンを脱着させて調製した金属化合物サスペンジョン、または
(M4)前記金属化合物コロイド溶液(M2)のpHを調整することにより、該コロイド溶液中の金属化合物微粒子に吸着したポリアルキレンイミン以外の前記高分子分散剤を脱着させて調製した金属化合物サスペンジョン、
である。
【0109】
このような金属化合物サスペンジョン(M3)および(M4)は、前記金属化合物コロイド溶液(M1)または(M2)のpHを、金属化合物微粒子が一次粒子として分散している状態を維持できないようなpH条件に調整することによって作製することができる。例えば、前記金属化合物コロイド溶液(M1)においては、pHを9.0〜12.0に調整することが好ましく、9.5〜10.5に調整することがより好ましい。また、前記金属化合物コロイド溶液(M2)においては、高分子分散剤をして(メタ)アクリル酸系重合体を含有する場合には、pHを0.5〜4.0に調整することが好ましく、3.0〜4.0に調整することがより好ましい。なお、ここでいう金属化合物微粒子がコロイド溶液中で一次粒子として分散している状態を維持できない状態とは、コロイド溶液中の微粒子やその凝集体の凝集が瞬時に進行する状態をいう。
【0110】
このようにして、前記金属化合物コロイド溶液(M1)および(M2)のpHを調整することによって、金属化合物微粒子から前記ポリアルキレンイミンまたは前記高分子分散剤が脱着され、金属化合物微粒子が凝集して金属化合物二次粒子が形成される。本発明の製造方法においては、このような金属化合物二次粒子は、前記金属化合物サスペンジョン(M3)および(M4)中において均一且つ高度に分散していることが好ましい。これにより、金属化合物二次粒子と貴金属系微粒子とが高度に分散した状態で配置された凝集体(三次粒子)を得ることができる。
【0111】
このようなpH調整は、金属化合物コロイド溶液(M1)または(M2)に、アンモニア水、トリメチルアミンなどの有機アルカリ性物質を添加することによって調整することができる。中でも、アンモニア水を用いてpH調整することが好ましい。
【0112】
(混合工程)
次に、本発明にかかる混合工程について説明する。本発明にかかる混合工程は、前記金属化合物コロイド溶液または前記金属化合物サスペンジョンと前記貴金属系コロイド溶液とを均質に混合する工程である。このとき、金属化合物コロイド溶液および貴金属系コロイド溶液においては、金属化合物微粒子および貴金属系微粒子が各コロイド溶液中で分散状態を維持できるように、所定のpH条件に調整する。例えば、ポリアルキレンイミンを含有するコロイド溶液の場合には、pHを0.5〜5.5に調整することが好ましく、(メタ)アクリル酸系重合体を含有するコロイド溶液の場合には、pHを5.0〜10.0に調整することが好ましく、6.0〜9.0に調整することがより好ましい。なお、ここでいう微粒子がコロイド溶液中で分散状態を維持し得る状態とは、コロイド溶液中の微粒子やその凝集体の凝集が実質的に進行しない状態をいう。一方、金属化合物サスペンジョンは、上述したpH条件に調整されたものである。
【0113】
本発明にかかるコロイド溶液中やサスペンジョン中では、各微粒子または二次粒子が均一且つ高度に分散しているため、均質に混合されやすいことから、この工程における混合方法は特に制限はなく、5〜12時間程度のプロペラ撹拌など公知の方法により混合することができる。しかしながら、金属化合物微粒子または金属化合物二次粒子と貴金属系微粒子とを均一且つより高度に分散させることが可能であるという観点から、所定の剪断速度下に前記金属化合物コロイド溶液または前記金属化合物サスペンジョンと前記貴金属系コロイド溶液とを独立に直接導入して均質混合する方法が好ましい。
【0114】
具体的には、前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物コロイド溶液とを混合する場合には、剪断速度が7500sec−1以下となっている領域に前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物コロイド溶液とを独立に直接導入して均質混合することが好ましい。剪断速度が前記上限を超えると、例えば、コロイド溶液にポリアルキレンイミンが含まれる場合、ポリアルキレンイミンが破壊されて均質な状態で混合することが困難となる傾向にある。また、前記剪断速度の下限値としては、1100sec−1以上が好ましく、1800sec−1以上がより好ましい。前記剪断速度が前記下限未満になると均質な状態で混合することが困難となる傾向にある。
【0115】
一方、前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物サスペンジョンとを混合する場合には、剪断速度が2000sec−1以下となっている領域に前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物サスペンジョンとを独立に直接導入して均質混合することが好ましい。剪断速度が前記上限を超えると金属化合物二次粒子の均質な状態が破壊される傾向にある。また、前記剪断速度の下限値としては、50sec−1以上が好ましく、200sec−1以上がより好ましい。前記剪断速度が前記下限未満になると貴金属系微粒子を均一な状態で分散配置させることが困難となる傾向にある。
【0116】
このような所定の剪断速度下で混合するために用いられる装置としては図1に示すものが挙げられるが、これに限定されるものではなく、例えば、3種類以上の原料溶液が導入できるようにノズルや原料溶液供給装置等を備えるものでもよい。
【0117】
図1に示す装置を用いて前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物コロイド溶液または前記金属化合物サスペンジョンとを混合する場合には、これらを原料溶液AおよびBとして使用する以外は、上述したコロイド溶液の製造の場合と同様の操作を行うことによって混合することができる。
【0118】
このようにして得られた混合溶液のpHを、金属化合物微粒子または金属化合物二次粒子と貴金属系微粒子とが混合溶液中で分散状態を維持できないようなpH条件に調整する。例えば、ポリアルキレンイミンを含有する混合溶液の場合には、pHを9.0〜12.0に調整することが好ましく、9.5〜10.5に調整することがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸系重合体を含有する混合溶液の場合には、pHを0.5〜4.0に調整することが好ましく、3.0〜4.0に調整することがより好ましい。なお、ここでいう微粒子が混合溶液中で分散状態を維持できない状態とは、混合溶液中の微粒子(または二次粒子)やその凝集体の凝集が瞬時に進行する状態をいう。
【0119】
このpH調整によってポリアルキレンイミンや高分子分散剤が金属化合物微粒子または金属化合物二次粒子と貴金属系微粒子とから脱離し、これらが凝集する。このとき、金属化合物微粒子または金属化合物二次粒子と貴金属系微粒子の均一分散状態が維持された凝集体が得られる。
【0120】
(加熱工程)
本発明にかかる加熱工程では、前記混合工程で得られた金属化合物微粒子または金属化合物二次粒子と貴金属系微粒子との凝集体に熱処理を施して本発明の排ガス浄化用触媒を得る。
【0121】
この工程における熱処理条件としては、特に制限されないが、酸化雰囲気(例えば、空気)中において、80〜90℃で1〜10時間乾燥し、その後、350〜400℃で3〜5時間加熱して脱脂し、さらにその後、500〜600℃で3〜5時間程度加熱するという条件が好ましい。この熱処理条件が上記下限未満では、凝集体を構成する金属化合物微粒子が十分に焼成されない傾向にあり、他方、上記上限を超えると、高温・酸化雰囲気によりシンタリングなどの性能低下が起こりやすくなる傾向にある。
【0122】
このようにして得られた排ガス浄化用触媒は、金属化合物微粒子または金属化合物二次粒子と貴金属系微粒子とが均一且つ高度に分散した状態で凝集したものであるから、触媒の一次細孔内、二次細孔内または2次粒子表面の制御された位置に貴金属系微粒子が均一に配置されており、貴金属の分散度が高い値を示すものとなる。
【実施例】
【0123】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0124】
(実施例1)
<金属化合物コロイド溶液の調製>
先ず、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)7.13g、オキシ硝酸ジルコニウム二水和物(硝酸ジルコニル二水和物)5.35g、硝酸イットリウム0.77gおよび硝酸アルミニウム24.4gをイオン交換水500gに溶解し、陽イオン濃度が0.1mol/Lであり、アルミニウムとセリウムとジルコニウムとイットリウムのモル比がAl:Ce:Zr:Y=1:0.95:1.43:0.13である金属イオン含有原料水溶液(原料溶液A)を調製した。また、硝酸アンモニウム24.4g、下記式(1):
【0125】
【化1】

【0126】
で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン62.5gおよび硝酸115gをイオン交換水307gに溶解し、ポリエチレンイミン水溶液(原料溶液B)を調製した。
【0127】
次に、図1に示す製造装置(スーパーアジテーションリアクター)を用いて金属化合物コロイド溶液を作製した。なお、ステータ13としてはノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ24個ずつ設けられている48孔タイプのものを使用した。
【0128】
図1に示すように、ホモジナイザー10の先端を100mlビーカー20の中に浸るようにセットし、ホモジナイザー10におけるローター11を3400rpmの回転速度で回転させながら、前記原料溶液Aと前記原料溶液Bとをそれぞれ12.5ml/minの供給速度でチューブポンプ(図示せず)を用いてノズル16Aおよびノズル16Bからローター11と内側ステータ13との間の領域に送液して混合し、金属化合物コロイド溶液を作製した。
【0129】
なお、ローター11の内径は13mm、内側ステータ13の外径は12mm、ローター11と内側ステータ13との間のギャップは0.5mmであり、それらの間の領域における剪断速度は6000sec−1であった。また、ローター11の外径は18.4mm、外側ステータ12の内径は18.8mm、ローター11と外側ステータ12との間のギャップは0.2mmであり、それらの間の領域における剪断速度は6000sec−1であった。さらに、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は0.394msecであった。ここで、均質混合されるまでの時間とは、ノズル16Aまたはノズル16Bから吐出された原料溶液Aまたは原料溶液Bがローター11の回転によって隣接するノズル16Bまたはノズル16Aに到達するまでの時間と定義されるものである。
【0130】
ビーカー20からあふれて出てくる中和反応後のコロイド溶液を、上記ビーカー20のさらに下に1Lビーカー(図示せず)をセットして受け止めた。
【0131】
得られた金属化合物コロイド溶液のpHは1.0であった。また、コロイド溶液の一部を80℃で24時間乾燥させ、粉末状の試料を作製した。この試料について高分解能走査透過型電子顕微鏡(高分解能STEM)の電子線回折測定を行い、得られた電子線回折パターンから、前記金属化合物コロイド溶液はCeO−ZrO−Y3元系複合金属酸化物微粒子(以下、「CZY微粒子」と略す)とアルミナの前駆体である水酸化アルミニウム微粒子が均一に分散したものであることが確認された。
【0132】
次に、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を動的光散乱法(日機装(株)製「Nanotrac250」を使用)により測定したところ、図5に示すような粒度分布が得られた。このコロイド溶液中の微粒子の粒度分布から累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めたところ、D50=1.0nm、D90=1.2nmであった。これらの結果から、CZY微粒子および水酸化アルミニウム微粒子はいずれも前記金属化合物コロイド溶液中で結晶子(結晶子径d50=1.0nm)の状態で分散していると推察される。
【0133】
<貴金属系コロイド溶液の調製>
先ず、Pt含有量が4.565質量%の硝酸白金溶液4.85gにイオン交換水を添加して、陽イオン(Ptイオン)濃度が0.0025mol/LのPtイオン含有原料水溶液125mlを調製した。また、また、ヒドラジン一水和物0.95gおよび前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン0.2gの混合物にイオン交換水を添加してこれらを溶解させ、ポリエチレンイミン水溶液125mlを調製した。このポリエチレンイミン水溶液には、Ptイオン含有原料水溶液と混合した後のpHが3.0となるように微量の硝酸を添加した。
【0134】
次に、前記Ptイオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液をそれぞれ原料溶液AおよびBとして使用した以外は、前記金属化合物コロイド溶液の調製の場合と同様にして図1に示す製造装置(スーパーアジテーションリアクター)を用いてPtコロイド溶液を作製した。
【0135】
得られたPtコロイド溶液のpHは3.0であった。このPtコロイド溶液を数滴、カーボン支持膜に滴下して高分解能走査透過型電子顕微鏡(高分解能STEM)による観察を行い、Pt微粒子の一次粒子径を測定したところ、約1nmであった(図6参照)。
【0136】
次に、Ptコロイド溶液中の微粒子の粒度分布を動的光散乱法(日機装(株)製「Nanotrac250」を使用)により測定したところ、図7に示すような粒度分布が得られた。このPtコロイド溶液中の微粒子の粒度分布から累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めたところ、D50=1nm、D90=1.1nmであった。この結果から明らかなように、得られたPtコロイド溶液は、Pt微粒子が凝集せずに一次粒子の状態で水中に分散したものであることが確認された。
【0137】
<混合工程>
先ず、目的とする排ガス浄化用触媒中のAl−CeO−ZrO−Y複合金属酸化物微粒子(以下、「ACZY微粒子」と略す)100質量部に対してPt微粒子が0.2質量部となるように、前記Ptコロイド溶液および前記金属化合物コロイド溶液をそれぞれ秤量し、さらに、前記Ptコロイド溶液には、前記金属化合物コロイド溶液と同量となるように、pH1.0の硝酸水溶液を添加した。
【0138】
次に、図1に示す製造装置(スーパーアジテーションリアクター)を用いて前記Ptコロイド溶液(原料溶液A)と前記金属化合物コロイド溶液(原料溶液B)とを混合した。なお、ステータ13としてはノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ24個ずつ設けられている48孔タイプのものを使用した。
【0139】
図1に示すように、ホモジナイザー10の先端を100mlビーカー20の中に浸るようにセットし、ホモジナイザー10におけるローター11を3400rpmの回転速度で回転させながら、前記原料溶液Aと前記原料溶液Bとをそれぞれ2.5ml/minの供給速度でチューブポンプ(図示せず)を用いてノズル16Aおよびノズル16Bからローター11と内側ステータ13との間の領域に送液して均質に混合した。
【0140】
なお、ローター11の内径は13mm、内側ステータ13の外径は12mm、ローター11と内側ステータ13との間のギャップは0.5mmであり、それらの間の領域における剪断速度は6000sec−1であった。また、ローター11の外径は18.4mm、外側ステータ12の内径は18.8mm、ローター11と外側ステータ12との間のギャップは0.2mmであり、それらの間の領域における剪断速度は6000sec−1であった。さらに、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は0.394msecであった。ここで、均質混合されるまでの時間とは、ノズル16Aまたはノズル16Bから吐出された原料溶液Aと原料溶液Bがローター11の回転によって隣接するノズル16Bまたはノズル16Aに到達するまでの時間と定義されるものである。
【0141】
ビーカー20からあふれて出てくる混合溶液を、上記ビーカー20のさらに下に1Lビーカー(図示せず)をセットして受け止めた。混合溶液中の微粒子の粒度分布を動的光散乱法(日機装(株)製「Nanotrac250」を使用)により測定した。その結果を図8に示す。
【0142】
次に、得られた混合溶液に撹拌しながらアンモニア水を添加してpHを9.5に調整することにより、Pt微粒子がACZY微粒子に均一に配置された状態で瞬時に担持され、Pt−ACZY微粒子が得られた。
【0143】
<加熱工程>
前記Pt−ACZY微粒子を熱風循環炉中、350℃で3時間加熱して脱脂処理を施し、さらに、500℃で5時間加熱してPt−ACZY排ガス浄化用触媒を得た。
【0144】
<物性測定>
(1)比表面積および細孔径分布
前記加熱処理後のPt−ACZY排ガス浄化用触媒について、BET法(窒素吸着)により比表面積を測定し、窒素吸着法により細孔径分布を測定した。その結果を表1に示す。
【0145】
(2)貴金属分散度
前記加熱処理後のPt−ACZY排ガス浄化用触媒約0.05gを反応管に仕込み、Oガス(容量100%)雰囲気下で室温から400℃まで40分かけて昇温した後、400℃で15分間保持した。次に、ガス雰囲気をHeガス(容量100%)雰囲気に変更して400℃で40分間保持した後、ガス雰囲気をHガス(容量100%)雰囲気に変更して400℃で15分間保持した。さらに、ガス雰囲気をHeガス(容量100%)雰囲気に変更して400℃で15分間保持した後、Heガス(容量100%)雰囲気下で50℃まで自然冷却した。
【0146】
次に、Heガスを30ml/分の流量で流通させながらドライアイス/エタノール冷媒を用いて反応管を−78℃まで冷却した。温度が一定となった後、Heガス(100容量%)雰囲気下において、前記Pt−ACZY排ガス浄化用触媒に1.0μmol/パルスでCOをパルス導入し、これをCO吸着が飽和するまで継続した。このとき、パルス導入したCOのうちの触媒に吸着されなかったCOの量を熱伝導検出器により測定した。また、吸着が飽和した時のTCD面積(1パルスのCO導入量に相当)とパルス回数からCOの全導入量を算出し、CO吸着量(Pt分散度)を求めた。その結果を表1に示す。なお、このCO吸着量を比較することによって触媒中の貴金属系微粒子の分散性を評価することができる。すなわち、担持貴金属量が同程度の触媒を比較した場合、CO吸着量が多い触媒ほど貴金属系微粒子が均一且つ高度に分散された状態で配置されたものであることを意味する。
【0147】
(実施例2)
<金属化合物コロイド溶液および貴金属系コロイド溶液の調製>
実施例1と同様にして、CZY微粒子および水酸化アルミニウム微粒子が均一に分散している金属化合物コロイド溶液、ならびにPtコロイド溶液を調製した。
【0148】
<混合工程>
先ず、前記金属化合物コロイド溶液に撹拌しながらアンモニア水を添加してpHを9.5に調整して金属化合物サスペンジョンを作製した。次に、目的とする排ガス浄化用触媒中のACZY微粒子100質量部に対してPt微粒子が0.2質量部となるように、前記Ptコロイド溶液および前記金属化合物サスペンジョンをそれぞれ秤量し、さらに、前記Ptコロイド溶液には、前記金属化合物サスペンジョンと同量となるように、pH1.0の硝酸水溶液を添加した。
【0149】
このようにして得られた前記Ptコロイド溶液および前記金属化合物サスペンジョンをそれぞれ独立にチューブポンプを用いて12.5ml/minの供給速度で反応容器に供給して混合し、さらに、得られた混合溶液を300rpmで24時間プロペラ撹拌して均一に混合した。
【0150】
次に、得られた混合溶液に撹拌しながらアンモニア水を添加してpHを9.5に調整することにより、Pt微粒子がACZY微粒子に均一に配置された状態で瞬時に担持され、Pt−ACZY微粒子が得られた。
【0151】
<加熱工程>
前記Pt−ACZY微粒子を熱風循環炉中、350℃で3時間加熱して脱脂処理を施し、さらに、500℃で5時間加熱してPd−ACZY排ガス浄化用触媒を得た。
【0152】
得られたPt−ACZY排ガス浄化用触媒の比表面積、細孔径分布、CO吸着量(Pt分散度)を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0153】
(比較例1)
実施例1と同様にして金属化合物コロイド溶液を調製した。この金属化合物コロイド溶液に撹拌しながらアンモニア水を添加してpHを9.5に調整して、アルミナ微粒子とCZY微粒子とが均一に配置された状態の凝集物を調製した。この凝集物を熱風循環炉中、350℃で3時間加熱して脱脂処理を施し、さらに、1000℃で5時間加熱処理を施した。加熱処理後の凝集物を粒子径が75μmになるまで粉砕し、ACZY粒子を得た。なお、このACZY粒子は三次粒子であると推察される。
【0154】
このACZY粒子5gに対してPt微粒子が0.01g(0.2質量%)となるように、Pt含有量が4.565質量%の硝酸白金溶液を秤量し、これにイオン交換水を添加して容量を50mlに調整した。この硝酸白金水溶液を80℃で加熱し、撹拌しながらACZY粒子5gを徐々に添加してACZY粒子にPtを担持させ、Pt−ACZY粒子を得た。
【0155】
その後、水を完全に蒸発させ、さらに前記Pt−ACZY粒子を空気中、300℃で3時間加熱した。次いで、得られたPt−ACZY粒子に冷間静水圧法による処理(CIP処理:1000kgf/cm)を施して圧粉体を得た。この圧粉体を粉砕して粒子径が0.5〜1.0mmのペレット状のPt−ACZY排ガス浄化用触媒5gを得た。
【0156】
得られたPt−ACZY排ガス浄化用触媒の比表面積、細孔径分布、CO吸着量(Pt分散度)を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0157】
【表1】

【0158】
表1に示した結果から明らかなように、平均粒子径D50が1.0nmの金属化合物微粒子が凝集せずに分散している金属化合物コロイド溶液と、平均粒子径D50が1nmのPt一次粒子が凝集せずに分散しているPtコロイド溶液とを均質混合した場合(実施例1)には、得られたPt−ACZY排ガス浄化用触媒のPt分散度は非常に高いものであった。これは、本発明の方法では、金属化合物微粒子とPt一次粒子が均一に配置された状態でPt−ACZY排ガス浄化用触媒が形成されるため、触媒の一次細孔内にもPt一次粒子が均一に配置されるためと推察される。
【0159】
一方、粒子径が75μmのACZY粒子(三次粒子)をPt錯体水溶液に添加してPt−ACZY粒子にPtを担持させた場合(比較例1)には、得られたPt−ACZY排ガス浄化用触媒は、実施例1のPt−ACZY排ガス浄化用触媒に比べてPt分散度に劣るものであった。これは、比較例1の方法では、Pt錯体が凝集した状態でACZY粒子(三次粒子)に担持されるため、凝集したPt錯体はACZY粒子(三次粒子)の表面には担持されるものの、一次細孔内または二次細孔内に入り込めず、あるいは2次粒子表面に吸着できず、Ptが高度に分散した状態では担持されにくいためと推察される。
【0160】
(実施例3)
<金属化合物コロイド溶液の調製>
実施例1と同様にしてCZY微粒子および水酸化アルミニウム微粒子が均一に分散している金属化合物コロイド溶液を調製した。
【0161】
<貴金属系コロイド溶液の調製>
塩化パラジウム3.54g、重量平均分子量10000のポリビニルピロリドン2.75g、イオン交換水375mLおよびエタノール375mLを混合し、2時間加熱還流した。冷却後、溶液量が50gになるまでロータリーエバポレータを用いて濃縮し、1.05質量%のPdコロイド溶液を作製した。
【0162】
得られたPdコロイド溶液を数滴、カーボン支持膜に滴下して乾燥した後、高分解能走査透過型電子顕微鏡(高分解能STEM)による観察を行なった。その結果を図9に示す。このTEM写真中の50個のPd微粒子を抽出して粒子径を直接測定して粒度分布を求めた。その結果を図10に示す。この粒度分布からPd微粒子の累積個数が50%となる一次粒子径d50(平均一次粒子径)を求めたところ、d50=3nmであった、
次に、Pdコロイド溶液中の微粒子の粒度分布を実施例1と同様にして動的光散乱法により測定したところ、図11に示すような粒度分布が得られた。このPdコロイド溶液中の微粒子の粒度分布から累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めたところ、D50=17nm、D90=51nmであった。この結果から明らかなように、得られたPdコロイド溶液は、Pd微粒子が凝集して二次粒子の状態で水中に分散したものであることが確認された。
【0163】
<混合工程>
先ず、目的とする排ガス浄化用触媒中のACZY微粒子100質量部に対してPd微粒子が0.42質量部となるように、前記Pdコロイド溶液と前記金属化合物コロイド溶液とをそれぞれ秤量し、さらに、前記Pdコロイド溶液には、前記金属化合物コロイド溶液と同量となるように、イオン交換水を添加した。
【0164】
次に、前記Pdコロイド溶液および前記金属化合物コロイド溶液をそれぞれ原料溶液AおよびBとして使用した以外は、実施例1と同様にして図1に示す製造装置(スーパーアジテーションリアクター)を用いてPdコロイド溶液と金属化合物コロイド溶液とを均質に混合した。
【0165】
その後、得られた混合溶液に撹拌しながらアンモニア水を添加してpHを9.5に調整することにより、Pd二次粒子がACZY微粒子に均一に配置された状態で瞬時に担持され、Pd−ACZY微粒子が得られた。
【0166】
<加熱工程>
前記Pd−ACZY微粒子を熱風循環炉中、350℃で3時間加熱して脱脂処理を施し、さらに、500℃で5時間加熱してPd−ACZY排ガス浄化用触媒を得た。
【0167】
<耐久試験>
前記加熱処理後のPd−ACZY排ガス浄化用触媒に冷間静水圧法による処理(CIP処理:1000kgf/cm)を施して圧粉体を得た。この圧粉体を粉砕して粒子径が0.5〜1.0mmのペレット状のPd−ACZY排ガス浄化用触媒を得た。
【0168】
得られたペレット状のPd−ACZY排ガス浄化用触媒2gを内径1.1cm、長さ100cmの試験用反応管のガス流の上流から下流側に向かって長さ54.5cmの領域(中間部)に設置した。次いで、このPd−ACZY排ガス浄化用触媒に、温度1000℃および空間速度10000h−1の条件下で、CO(2%)、CO(10%)、O(0%)、HO(3%)およびN(残部)からなるリッチガスと、CO(0%)、CO(10%)、O(1%)、HO(3%)およびN(残部)からなるリーンガスとを5分ずつ交互に供給し、これを5時間継続して耐久試験を行なった。
【0169】
耐久試験後のPd−ACZY排ガス浄化用触媒の比表面積、細孔径分布、CO吸着量(Pd分散度)を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
【0170】
(比較例2)
比較例1と同様にして粒子径が75μmのACZY粒子(三次粒子)を作製した。このACZY粒子5gに対してPd微粒子が0.021g(0.42質量%)となるように、Pd含有量が4.536質量%の硝酸パラジウム溶液を秤量し、これにイオン交換水を添加して容量を50mlに調整した。この硝酸パラジウム水溶液を80℃で加熱し、撹拌しながらACZY粒子5gを徐々に添加してACZY粒子にPdを担持させ、Pd−ACZY粒子を得た。
【0171】
その後、水を完全に蒸発させ、さらに前記Pd−ACZY粒子を空気中、300℃で3時間加熱した。次いで、得られたPd−ACZY粒子に冷間静水圧法による処理(CIP処理:1000kgf/cm)を施して圧粉体を得た。この圧粉体を粉砕して粒子径が0.5〜1.0mmのペレット状のPd−ACZY排ガス浄化用触媒5gを得た。
【0172】
得られたペレット状のPd−ACZY排ガス浄化用触媒の比表面積、細孔径分布、CO吸着量(Pd分散度)を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
【0173】
【表2】

【0174】
表2に示した結果から明らかなように、平均粒子径D50が1.0nmの金属化合物微粒子が凝集せずに分散している金属化合物コロイド溶液と、平均一次粒子径d50が3nmのPd一次粒子が凝集して平均粒子径D50が17nmの凝集粒子の状態で分散しているPdコロイド溶液とを均質混合した場合(実施例3)と、粒子径が75μmのACZY粒子(三次粒子)をPd錯体水溶液に添加してPd−ACZY粒子にPdを担持させた場合(比較例2)とを比較すると、実施例3で得られたPd−ACZY排ガス浄化用触媒のCO吸着量(Pd分散度)は、比較例2で得られたPd−ACZY排ガス浄化用触媒に比べて高い値を示した。これは、本発明の方法では、金属化合物微粒子とPd一次粒子が均一に配置された状態でPd−ACZY排ガス浄化用触媒が形成されるため、触媒の一次細孔内にもPd一次粒子が均一に配置され、耐熱性が向上するのに対して、比較例1の方法では、Pd錯体が凝集した状態でACZY粒子(三次粒子)の表層部に担持されるため、凝集したPd錯体がACZY粒子の一次細孔内または二次細孔内には入り込めず、あるいは2次粒子表面に吸着できず、三次粒子表面に担持され、耐熱性が向上しにくいためと推察される。
【0175】
(実施例4)
<金属化合物コロイド溶液の調製>
先ず、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)20.8g、オキシ硝酸ジルコニウム二水和物(硝酸ジルコニル二水和物15.2g、硝酸イットリウム1.9gをイオン交換水500gに溶解し、陽イオン濃度が0.1mol/Lであり、セリウムとジルコニウムとイットリウムのモル比がCe:Zr:Y=0.95:1.43:0.13である金属イオン含有原料水溶液を調製した。また、硝酸アンモニウム30.1g、前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン62.5gおよび硝酸115gをイオン交換水307gに溶解し、ポリエチレンイミン水溶液を調製した。
【0176】
次に、前記金属イオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液をそれぞれ原料溶液AおよびBとして使用した以外は、実施例1と同様にして図1に示す製造装置(スーパーアジテーションリアクター)を用いて金属化合物コロイド溶液を作製した。
【0177】
得られた金属化合物コロイド溶液のpHは1.0であった。また、この金属化合物コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を実施例1と同様にして動的光散乱法により測定した。得られた粒度分布から累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めたところ、D50=1.0nm、D90=1.1nmであった。
【0178】
<アルミナコロイド溶液の調製>
先ず、硝酸アルミニウム37.6gをイオン交換水500gに溶解し、陽イオン濃度が0.1mol/LのAlイオン含有原料水溶液を調製した。また、前記金属化合物コロイド溶液の調製の場合と同様にしてポリエチレンイミン水溶液を調製した。
【0179】
次に、前記Alイオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液をそれぞれ原料溶液AおよびBとして使用した以外は、前記金属化合物コロイド溶液の調製の場合と同様にして図1に示す製造装置(スーパーアジテーションリアクター)を用いてアルミナコロイド溶液を作製した。
【0180】
得られたアルミナコロイド溶液のpHは3.8であった。このアルミナコロイド溶液中の微粒子の粒度分布を実施例1と同様にして動的光散乱法により測定した。得られた粒度分布から累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めたところ、D50=1.0nm、D90=1.1nmであった。
【0181】
<貴金属系コロイド溶液の調製>
実施例3と同様にしてPdコロイド溶液を作製した。
【0182】
<混合工程>
先ず、目的とする排ガス浄化用触媒において、ACZY微粒子中のアルミニウムとセリウムとジルコニウムとイットリウムのモル比がAl:Ce:Zr:Y=1:0.95:1.43:0.13となるように前記金属化合物コロイド溶液および前記アルミナコロイド溶液をそれぞれ秤量し、さらに、ACZY微粒子100質量部に対してPd微粒子が0.42質量部となるように前記Pdコロイド溶液を秤量した。また、前記Pdコロイド溶液には、前記金属化合物コロイド溶液と同量となるように、pH1.0の硝酸水溶液を添加してマグネチックスターラで撹拌した。
【0183】
次に、前記金属化合物コロイド溶液および前記Pdコロイド溶液を原料溶液AおよびBとして使用した以外は、実施例1と同様にして図1に示す製造装置(スーパーアジテーションリアクター)を用いてPdコロイド溶液と金属化合物コロイド溶液とを均質に混合した。次いで、得られた混合溶液にアルミナコロイド溶液を添加し、300rpmで24時間プロペラ撹拌して、Pd微粒子がACZY微粒子に均一に配置されたPd−ACZY微粒子を得た。
【0184】
<加熱工程>
前記Pd−ACZY微粒子を熱風循環炉中、350℃で3時間加熱して脱脂処理を施し、さらに、500℃で5時間加熱してPd−ACZY排ガス浄化用触媒を得た。
【0185】
<耐久試験>
前記加熱処理後のPd−ACZY排ガス浄化用触媒を用いた以外は、実施例3と同様にして耐久試験を実施し、耐久試験後のPd−ACZY排ガス浄化用触媒の比表面積、細孔径分布、CO吸着量(Pd分散度)を実施例1と同様にして測定した。その結果を表3に示す。
【0186】
(実施例5)
<各コロイド溶液の調製>
実施例4と同様にして、金属化合物コロイド溶液、アルミナコロイド溶液およびPdコロイド溶液を作製した。
【0187】
<混合工程>
先ず、実施例4と同じ混合比率となるように各コロイド溶液を秤量し、Pdコロイド溶液についてはpH1.0の硝酸水溶液を添加して混合量を調整した。
【0188】
次に、金属化合物コロイド溶液とPdコロイド溶液とを300rpmで24時間プロペラ撹拌した。得られた混合溶液と前記アルミナコロイド溶液を300rpmで24時間プロペラ撹拌し、Pd微粒子がACZY微粒子に均一に配置されたPd−ACZY微粒子を得た。
【0189】
<加熱工程>
前記Pd−ACZY微粒子を熱風循環炉中、350℃で3時間加熱して脱脂処理を施し、さらに、500℃で5時間加熱してPd−ACZY排ガス浄化用触媒を得た。
【0190】
<耐久試験>
前記加熱処理後のPd−ACZY排ガス浄化用触媒を用いた以外は、実施例3と同様にして耐久試験を実施し、耐久試験後のPd−ACZY排ガス浄化用触媒の比表面積、細孔径分布、CO吸着量(Pd分散度)を実施例1と同様にして測定した。その結果を表3に示す。
【0191】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0192】
以上説明したように、本発明によれば、貴金属系微粒子が金属化合物担体に均一且つ高度に分散した状態で配置された排ガス浄化用触媒を得ることが可能となる。
【0193】
したがって、本発明の製造方法によって得られた排ガス浄化用触媒は、貴金属の粒成長が抑制され、耐熱性に優れているため、高温環境下においても触媒活性の劣化が起こりにくく、自動車用排ガス浄化用触媒などとして有用である。
【符号の説明】
【0194】
10…ホモジナイザー、11…ローター、12…外側ステータ、13…内側ステータ、14…回転シャフト、15…モーター、16A,16B…ノズル、17A,17B…流路(供給管)、20…反応容器、A,B…反応溶液、X…回転軸、Y…回転軸Xに対して直交する面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(M1)金属化合物微粒子と重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液のpHが1.0〜6.0であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜70nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記金属化合物微粒子である、金属化合物コロイド溶液、および
(M2)金属化合物微粒子とポリアルキレンイミン以外の高分子分散剤とを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜70nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記金属化合物微粒子である、金属化合物コロイド溶液、
のうちのいずれか一方の金属化合物コロイド溶液、あるいは
(M3)前記金属化合物コロイド溶液(M1)のpHを調整することにより、該コロイド溶液中の金属化合物微粒子に吸着した前記ポリアルキレンイミンを脱着させて調製した金属化合物サスペンジョン、および
(M4)前記金属化合物コロイド溶液(M2)のpHを調整することにより、該コロイド溶液中の金属化合物微粒子に吸着したポリアルキレンイミン以外の前記高分子分散剤を脱着させて調製した金属化合物サスペンジョン、
のうちのいずれか一方の金属化合物サスペンジョンと、
貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子を含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜20nmである貴金属系微粒子である、貴金属系コロイド溶液と、
を均質混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物に熱処理を施す加熱工程と、
を含むことを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項2】
前記混合工程において、前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物コロイド溶液とを混合する場合には剪断速度が7500sec−1以下となっている領域に前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物コロイド溶液とを独立に直接導入し、前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物サスペンジョンとを混合する場合には剪断速度が2000sec−1以下となっている領域に前記貴金属系コロイド溶液と前記金属化合物サスペンジョンとを独立に直接導入して、均質混合することを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項3】
前記金属化合物コロイド溶液は2種類以上の原料溶液を混合することにより製造されたものであり、
前記金属化合物コロイド溶液が前記金属化合物コロイド溶液(M1)の場合には、該金属化合物コロイド溶液は、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属化合物の原料である金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものであり、1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することにより得られたものであり、
前記金属化合物コロイド溶液が前記金属化合物コロイド溶液(M2)の場合には、該金属化合物コロイド溶液は、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属化合物の原料である金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記高分子分散剤を含有するものであり、3000sec−1以上の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することにより得られたものである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項4】
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記金属イオンを含有するものであり、
残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類は、前記金属化合物コロイド溶液が金属化合物コロイド溶液(M1)の場合には前記ポリアルキレンイミンを含有するものであり、前記金属化合物コロイド溶液が金属化合物コロイド溶液(M2)の場合には前記高分子分散剤を含有するものである、
ことを特徴とする請求項3に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項5】
前記貴金属系コロイド溶液が、
(N1)前記貴金属系微粒子と重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液のpHが2.5〜6.0であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、前記粒子径D50が0.8〜10.0nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、貴金属系コロイド溶液、および
(N2)前記貴金属系微粒子とポリアルキレンイミン以外の高分子分散剤とを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、前記粒子径D50が0.8〜5nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、貴金属系コロイド溶液
のうちのいずれか一方の貴金属系コロイド溶液であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項6】
前記貴金属系コロイド溶液は2種類以上の原料溶液を混合することにより製造されたものであり、
前記貴金属系コロイド溶液が前記貴金属系コロイド溶液(N1)の場合には、該貴金属系コロイド溶液は、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものであり、1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することにより得られたものであり、
前記貴金属系コロイド溶液が前記貴金属系コロイド溶液(N2)の場合には、該貴金属系コロイド溶液は、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記高分子分散剤を含有するものであり、3000sec−1以上の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することにより得られたものである、
ことを特徴とする請求項5に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項7】
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記貴金属イオンを含有するものであり、
残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類は、前記貴金属系コロイド溶液が前記貴金属系コロイド溶液(N1)の場合には前記ポリアルキレンイミンを含有するものであり、前記貴金属系コロイド溶液が前記貴金属系コロイド溶液(N2)の場合には前記高分子分散剤を含有するものである、
ことを特徴とする請求項6に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−143339(P2011−143339A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5635(P2010−5635)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】