説明

排ガス浄化用触媒

【課題】高い排ガス浄化効率を達成する。
【解決手段】本発明の排ガス浄化用触媒1は、基材2と、前記基材2を被覆すると共に酸素貯蔵材料とパラジウムとを含み、ロジウムを含んでいない下層3と、前記下層3を被覆すると共にロジウムとこれを担持した担体と含み、前記下層3と比較して酸素貯蔵能がより低い上層4とを具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素貯蔵材料を含んだ排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の排ガスを処理する排ガス浄化用触媒としては、アルミナなどの無機酸化物からなる耐熱性担体に貴金属を担持させた三元触媒が広く使用されている。この三元触媒では、貴金属は、窒素酸化物(NOx)の還元反応並びに一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化反応を促進する役割を担っている。また、耐熱性担体は、貴金属の比表面積を増大させると共に、反応による発熱を消散させて貴金属のシンタリングを抑制する役割を担っている。
【0003】
特許文献1乃至3には、酸化セリウム又はセリウムと他の金属元素とを含有した酸化物を使用した排ガス浄化用触媒が記載されている。これら酸化物は、酸素貯蔵能を有している酸素貯蔵材料である。酸素貯蔵材料を三元触媒で使用すると、先の還元反応及び酸化反応を最適化し得る。しかしながら、以下に説明するように、酸素貯蔵材料を使用した三元触媒であっても、エンジンを始動した直後の状態とエンジンを継続的に稼動した状態との双方において、良好な性能を達成することは難しい。
【0004】
エンジンを始動した直後の状態では、触媒の温度は低い。低温条件のもとで貴金属が排ガスを浄化する能力は、高温条件のもとで貴金属が排ガスを浄化する能力と比較してより低い。それゆえ、エンジンを始動した直後における性能を考慮した場合、排ガス浄化用触媒の熱容量を小さくすることが有利である。
【0005】
他方、エンジンを継続的に稼動した状態では、触媒の温度は十分に高い。この場合、貴金属が排ガスを浄化する能力は高いため、排ガス浄化用触媒は、排ガス組成の変動に対応すべく、より多くの酸素貯蔵材料を含んでいることが有利である。
【0006】
このように、エンジンを始動した直後における性能とエンジンを継続的に稼動した状態における性能とは、二律背反の関係にある。そのため、エンジンを始動した直後の状態とエンジンを継続的に稼動した状態との双方において良好な性能を達成することは難しく、それゆえ、常に高い排ガス浄化効率を達成することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−281144号公報
【特許文献2】特開平9−155192号公報
【特許文献3】特開平9−221304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高い排ガス浄化効率を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によると、基材と、前記基材を被覆すると共に酸素貯蔵材料とパラジウムとを含み、ロジウムを含んでいない下層と、前記下層を被覆すると共にロジウムとこれを担持した担体と含み、前記下層と比較して酸素貯蔵能がより低い上層とを具備したことを特徴とする排ガス浄化用触媒が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、高い排ガス浄化効率を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一態様に係る排ガス浄化用触媒を概略的に示す斜視図。
【図2】図1に示す排ガス浄化用触媒に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の態様について説明する。
図1は、本発明の一態様に係る排ガス浄化用触媒を概略的に示す斜視図である。図2は、図1に示す排ガス浄化用触媒に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【0013】
図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1は、モノリス触媒である。この排ガス浄化用触媒1は、モノリスハニカム基材などの基材2を含んでいる。基材2は、典型的には、コージェライトなどのセラミックス製である。
【0014】
基材2の隔壁上には、下層3が形成されている。下層3は、第1耐熱性担体と第1酸素貯蔵材料とパラジウムとを含んでいる。下層3は、排ガス浄化用触媒1に酸素貯蔵能を与える主要な役割を果たすと共に、排ガス浄化用触媒1にパラジウムによる排ガス浄化能を与える主要な又は補助的な役割を果たす。
【0015】
下層3は、ロジウムを含んでいない。なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「層L1が元素Eを含んでいない」ことを言及した場合、層L1中に不可避量の元素Eが混入していることは排除していない。例えば、層L1は、これと隣接する層L2からの拡散によって混入した元素Eを含み得る。
【0016】
第1耐熱性担体は、第1酸素貯蔵材料と比較して熱安定に優れている。第1耐熱性担体の材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、又はチタニアを使用することができる。
【0017】
第1酸素貯蔵材料は、例えば、セリア、セリアと他の金属酸化物との複合酸化物、又はそれらの混合物である。複合酸化物としては、例えば、セリアとジルコニアとの複合酸化物を使用することができる。
【0018】
第1酸素貯蔵材料は、白金族元素などの貴金属を担持していてもよい。一般に、酸素貯蔵材料に微量の貴金属を担持させると、酸素貯蔵能が向上する。例えば、第1酸素貯蔵材料として、セリアとジルコニアとの複合酸化物に白金を担持させてなる材料を使用してもよい。
【0019】
基材2の容積1L当りの下層3のコート量は、例えば20g/L乃至200g/Lの範囲内とする。このコート量が少ない場合、十分な酸素貯蔵能を達成することが難しい。また、このコート量が多い場合、排ガス浄化用触媒1の熱容量が大きくなる。
【0020】
第1酸素貯蔵材料に使用する酸化物の第1耐熱性担体に対する質量比は、例えば10質量%乃至90質量%の範囲内とする。
【0021】
第1酸素貯蔵材料として、セリアとジルコニアとの複合酸化物を使用する場合、セリウムのジルコニウムに対する原子比は、例えば3原子%乃至97原子%の範囲内とする。
【0022】
下層3上には、上層4が形成されている。上層4は、第2耐熱性担体とロジウムとを含んでいる。上層4は、排ガス浄化用触媒1にロジウムによる排ガス浄化能を与える主要な役割を果たす。
【0023】
第2耐熱性担体は、第1酸素貯蔵材料と比較して耐熱性に優れている。第2耐熱性担体の材料としては、例えば、第1耐熱性担体について例示した材料を使用することができる。
【0024】
基材2の容積1L当りの上層4のコート量は、例えば10g/L乃至200g/Lの範囲内とする。このコート量が少ない場合、上層4の排ガス浄化能が不十分となることがある。また、このコート量が多い場合、排ガス浄化用触媒1の熱容量が大きくなる。
【0025】
上層4は、パラジウム及び/又は白金をさらに含んでいてもよい。また、上層4は、第2酸素貯蔵材料をさらに含むことができる。第2酸素貯蔵材料としては、例えば、第1酸素貯蔵材料について例示した材料を使用することができる。
【0026】
この排ガス浄化用触媒1から下層3を省略した場合、上層4に、NOxの還元反応並びにCO及びHCの酸化反応を促進させる役割と、酸素を貯蔵する役割との双方を担わせなければならない。しかしながら、この場合、排ガス浄化用触媒1の熱容量を小さくすべく上層4のコート量を小さくし、且つ、NOxの還元反応並びにCO及びHCの酸化反応の効率を最大化すべく貴金属の密度を高めると、酸素貯蔵材料の量が減少するのに加え、酸素貯蔵材料の酸素貯蔵能が低下する。
【0027】
これに対し、上層4と基材2との間に下層3を介在させた場合、例えば、NOxの還元反応並びにCO及びHCの酸化反応を促進させる役割を、主に上層4に担わせるか、又は、下層3と上層4とに分担させることができる。そして、酸素を貯蔵する役割を、主に下層3に担わせることができる。そのため、下層3に、酸素貯蔵材料の酸素貯蔵能を最大化する設計を採用することができる。それゆえ、下層3のコート量を小さくした場合であっても、十分に大きな酸素貯蔵能を達成することができる。したがって、例えば、上層4のコート量を小さくし且つ上層4におけるパラジウム及びロジウムの密度を高めた場合であっても、この排ガス浄化用触媒1の酸素貯蔵能が不十分となることはない。しかも、下層3は上層4と基材2との間に介在しているので、下層3が上層4と排ガスとの接触を妨げない。
【0028】
また、排ガス浄化性能に優れ且つ低コストの排ガス浄化用触媒を得るには、パラジウム含量をロジウム含量と比較してより多くすることが有利である。しかしながら、パラジウムを上層4のみに含有させた場合、その層のコート量を多くするか又はその層におけるパラジウムの密度を高くする必要がある。コート量を多くすると、排ガス浄化用触媒の熱容量が増加し、パラジウムの密度を過剰に高くすると、その層の酸素貯蔵能が低下する。
【0029】
この排ガス浄化用触媒1では、下層3がパラジウムを含有しているのに加え、上層3もパラジウムを含有することができる。それゆえ、下層3及び上層3の双方にパラジウムを含有させれば、コート量を多くすること及びパラジウム密度を過剰に高くすることなしに、パラジウム含量を多くすることができる。そして、パラジウム密度が過剰に高くなければ、酸素貯蔵材料の酸素貯蔵能は、パラジウムの添加により向上する。すなわち、優れた酸素貯蔵能及び排ガス浄化性能と低コストとを達成できる。
【0030】
それゆえ、この構造を採用すると、エンジンを始動した直後の状態とエンジンを継続的に稼動した状態との双方において、高い排ガス浄化効率を達成することが可能となると共に、低コストを達成することができる。
【0031】
この排ガス浄化用触媒1には、様々な変形が可能である。
例えば、下層3のうち、上層4側の部分は、基材2側の部分と比較してパラジウム含量がより大きくてもよい。この場合、下層3の基材2側の部分は、下層3の上層4側の部分と比較して酸素貯蔵能がより高く(例えばセリウム含量がより大きく)てもよい。このとき、下層3の基材2側の部分は、パラジウムを含んでいなくてもよい。また、下層3の基材2側の部分は、白金をさらに含んでいてもよい。
【0032】
上層4のうち、下層3側の部分は、表面側の部分と比較してロジウム含量がより大きてもよい。この場合、下層3側の部分は、表面側の部分と比較してパラジウム含量がより小さくてもよい。
【0033】
下層3及び/又は上層4は、バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物、ランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムなどの希土類元素の酸化物、又はそれらの混合物をさらに含んでいてもよい。これら酸化物は、セリアなどの他の酸化物と複合酸化物及び/又は固溶体を形成していてもよい。
【0034】
この排ガス浄化用触媒1は、基材2と下層3との間に介在した炭化水素吸着層をさらに含んでいてもよい。炭化水素吸着層は、ゼオライトなどの炭化水素吸着材料を含んだ層である。この構造を採用すると、図2に示す構造を採用した場合と比較して、HCエミッションを低減することができる。
【0035】
或いは、下層3がゼオライトなどの炭化水素吸着材料をさらに含んでいてもよい。この構造を採用した場合も、図2に示す構造を採用した場合と比較して、HCエミッションを低減することができる。また、下層3に炭化水素吸着材料をさらに含有させた場合、基材2と下層3との間に炭化水素吸着層を介在させた場合と比較して、排ガス浄化用触媒1の製造を簡略化することができる。
【0036】
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。
【0037】
<触媒Aの製造>
本例では、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。なお、本例では、下層3に、第1層と第2層とからなる二層構造を採用した。
【0038】
まず、セリウムとジルコニウムとの原子比が5:4であるセリウムジルコニウム酸化物粉末を準備した。以下、このセリウムジルコニウム酸化物粉末を、酸化物粉末CZ1と呼ぶ。
【0039】
次いで、30gのアルミナ粉末と30gの酸化物粉末CZ1とパラジウムを0.5g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS1と呼ぶ。
【0040】
続いて、このスラリーS1の全量を、コージェライトからなるモノリスハニカム基材2にコートした。ここでは、長さが100mmであり、容積が1.0Lであり、1平方インチ当たり900個のセルが設けられたモノリスハニカム基材を使用した。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、モノリスハニカム基材2上に、下層3の第1層を形成した。
【0041】
次に、セリウムとジルコニウムとの原子比が2:7であるセリウムジルコニウム酸化物粉末を準備した。以下、このセリウムジルコニウム酸化物粉末を、酸化物粉末CZ2と呼ぶ。
【0042】
次いで、30gのアルミナ粉末と30gの酸化物粉末CZ2とパラジウムを1.0g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS2と呼ぶ。
【0043】
続いて、このスラリーS2の全量を、先のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、第1層上に第2層を形成した。このようにして、第1層と第2層との二層構造からなる下層3を得た。
【0044】
その後、30gのアルミナ粉末と30gの酸化物粉末CZ2とロジウムを0.5g含有した硝酸ロジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS3と呼ぶ。
【0045】
次に、このスラリーS3の全量を、先のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、下層3上に上層4を形成した。
【0046】
以上のようにして、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Aと呼ぶ。
【0047】
<触媒Bの製造>
本例では、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。なお、本例では、下層3に、第1層と第2層とからなる二層構造を採用した。
【0048】
まず、30gのアルミナ粉末と30gの酸化物粉末CZ1とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS4と呼ぶ。
【0049】
続いて、このスラリーS4の全量を、触媒Aの製造で使用したのと同様のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、モノリスハニカム基材2上に、下層3の第1層を形成した。
【0050】
次に、30gのアルミナ粉末と30gの酸化物粉末CZ2とパラジウムを1.5g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS5と呼ぶ。
【0051】
続いて、このスラリーS5の全量を、先のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、第1層上に第2層を形成した。このようにして、第1層と第2層との二層構造からなる下層3を得た。
【0052】
その後、触媒Aについて説明したのと同様の方法により、下層3上に上層4を形成した。以上のようにして、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Bと呼ぶ。
【0053】
<触媒Cの製造>
本例では、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。なお、本例では、下層3に、第1層と第2層とからなる二層構造を採用した。
【0054】
まず、30gのアルミナ粉末と30gの酸化物粉末CZ2とパラジウムを0.5g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS6と呼ぶ。
【0055】
続いて、このスラリーS6の全量を、触媒Aの製造で使用したのと同様のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、モノリスハニカム基材2上に、下層3の第1層を形成した。
【0056】
その後、触媒Aについて説明したのと同様の方法により、下層3の第2層と上層4とを順次形成した。
以上のようにして、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Cと呼ぶ。
【0057】
<触媒Dの製造>
本例では、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
まず、触媒Aについて説明したのと同様の方法により、モノリスハニカム基材2上に下層3を形成した。
【0058】
次に、60gのアルミナ粉末と60gの酸化物粉末CZ2とパラジウムを1.0g含有した硝酸パラジウム水溶液とロジウムを0.5g含有した硝酸ロジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS7と呼ぶ。
【0059】
続いて、このスラリーS7の全量を、先のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、下層3上に上層4を形成した。
【0060】
以上のようにして、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Dと呼ぶ。
【0061】
<触媒Eの製造>
本例では、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。なお、本例では、上層4に、第3層と第4層との二層構造を採用した。
【0062】
まず、触媒Aについて説明したのと同様の方法により、モノリスハニカム基材2上に第1層を形成した。本例では、この第1層を下層3とした。
【0063】
次に、触媒Aの上層4について説明したのと同様の方法により、スラリーS3を用いて、下層3上に上層4の第3層を形成した。さらに、触媒Aの第2層について説明したのと同様の方法により、スラリーS2を用いて、第3層上に第4層を形成した。これにより、第3層と第4層との二層構造からなる上層4を得た。
【0064】
以上のようにして、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Eと呼ぶ。
【0065】
<触媒Fの製造>
本例では、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。なお、本例では、下層3に、第1層と第2層との二層構造を採用した。
【0066】
まず、30gのアルミナ粉末と30gの酸化物粉末CZ1と白金を0.5g含有した硝酸白金水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS8と呼ぶ。
【0067】
本例では、下層3の第1層の形成にスラリーS1を使用する代わりにスラリーS8を使用したこと以外は、触媒Aについて説明したのと同様の方法により、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Fと呼ぶ。
【0068】
<触媒Gの製造>
本例では、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
まず、60gのアルミナ粉末と30gの酸化物粉末CZ1と30gの酸化物粉末CZ2とパラジウムを1.5g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS9と呼ぶ。
【0069】
続いて、このスラリーS9の全量を、触媒Aの製造で使用したのと同様のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、モノリスハニカム基材2上に、下層3を形成した。
【0070】
その後、触媒Aについて説明したのと同様の方法により、上層4を形成した。
以上のようにして、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Gと呼ぶ。
【0071】
<触媒Hの製造>
本例では、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
まず、30gの酸化物粉末とパラジウムを0.5g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合した。この混合物を250℃で8時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。以下、これにより得られた粉末を、粉末P1と呼ぶ。
【0072】
次に、60gのアルミナ粉末と30.5gの粉末P1と30gの酸化物粉末CZ2とパラジウムを1.0g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS10と呼ぶ。
【0073】
続いて、このスラリーS9の全量を、触媒Aの製造で使用したのと同様のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、モノリスハニカム基材2上に、下層3を形成した。
【0074】
その後、触媒Aについて説明したのと同様の方法により、上層4を形成した。
以上のようにして、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Hと呼ぶ。
【0075】
<触媒Iの製造>
本例では、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。なお、本例では、下層3に、第1層と第2層との二層構造を採用した。
【0076】
まず、30gのアルミナ粉末と30gの酸化物粉末CZ1と6gの硫酸バリウムと3gの炭酸ランタンとパラジウムを0.5g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS11と呼ぶ。
【0077】
続いて、このスラリーS11の全量を、触媒Aの製造で使用したのと同様のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、モノリスハニカム基材2上に、下層3の第1層を形成した。
【0078】
次に、30gのアルミナ粉末と30gの酸化物粉末CZ2と6gの硫酸バリウムと3gの炭酸ランタンとパラジウムを1.0g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS12と呼ぶ。
【0079】
続いて、このスラリーS12の全量を、先のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、第1層上に第2層を形成した。以上のようにして、第1層と第2層との二層構造からなる下層3を得た。
【0080】
その後、30gのアルミナ粉末と30gの酸化物粉末CZ2と6gの硫酸バリウムと3gの炭酸ランタンとロジウムを0.5g含有した硝酸ロジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS13と呼ぶ。
【0081】
続いて、このスラリーS13の全量を、先のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、下層3上に上層4を形成した。
【0082】
以上のようにして、図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Iと呼ぶ。
【0083】
<触媒Jの製造>
本例では、排ガス浄化用触媒を、以下の方法で製造した。
まず、30gのアルミナ粉末と30gの酸化物粉末CZ2とパラジウムを1.5g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS14と呼ぶ。
【0084】
続いて、このスラリーS14の全量を、触媒Aの製造で使用したのと同様のモノリスハニカム基材にコートした。このモノリスハニカム基材は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、モノリスハニカム基材上に、下層を形成した。
【0085】
次に、スラリーS3の全量を、先のモノリスハニカム基材にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、下層上に上層を形成した。
【0086】
以上のようにして、排ガス浄化用触媒を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒を触媒Jと呼ぶ。
【0087】
<試験>
触媒A乃至Jの各々を、排気量が0.7Lのエンジンを有する自動車に搭載した。次いで、各自動車に、60000kmの耐久走行距離を走行させた。その後、10・15モード法及び11モード法により、非メタン炭化水素(NMHC)、CO及びNOxの各々について走行距離1km当たりの排出量を測定した。なお、NMHCの排出量は、炭素数等量による容量比で表した値をグラムに換算した値である。また、10・15モード法で得られた測定値には88/100を乗じ、11モード法で得られた測定値には12/100を乗じ、それらの合算値を求めた。その結果を、以下の表に纏める。
【表1】

【0088】
上記表に示すように、触媒A乃至Iを使用した場合、触媒Jを使用した場合と比較してNMHC、CO及びNOx排出量の各々が少なかった。
【符号の説明】
【0089】
1…排ガス浄化用触媒、2…基材、3…下層、4…上層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材を被覆すると共に酸素貯蔵材料とパラジウムとを含み、ロジウムを含んでいない下層と、
前記下層を被覆すると共にロジウムとこれを担持した担体と含み、前記下層と比較して酸素貯蔵能がより低い上層とを具備したことを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記下層のうち、前記上層側の部分は、前記基材側の部分と比較してパラジウム含量がより大きいことを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記基材側の部分は、前記上層側の部分と比較してセリウム含量がより大きいことを特徴とする請求項2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記基材側の部分はパラジウムを含んでいないことを特徴とする請求項3に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記基材側の部分は白金をさらに含んでいることを特徴とする請求項4に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記下層及び前記上層の少なくとも一方は、アルカリ土類金属及び/又は希土類元素をさらに含んだことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記上層はパラジウムをさらに含んだことを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記上層のうち、前記下層側の部分は、表面側の部分と比較してロジウム含量がより大きく且つパラジウム含量がより小さいことを特徴とする請求項7に記載の排ガス浄化用触媒。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−27876(P2013−27876A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−243496(P2012−243496)
【出願日】平成24年11月5日(2012.11.5)
【分割の表示】特願2007−176602(P2007−176602)の分割
【原出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000104607)株式会社キャタラー (161)
【Fターム(参考)】