説明

排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法

【課題】排ガス中のパティキュレートを酸化し浄化する温度を低くし、排ガスの圧損を小さくできる排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法を提供する。
【解決手段】Y、Mn、Ag及びRuの塩を水に溶解して触媒原料水溶液を作成し、流入セル4、流出セル5及びセル隔壁6を有する多孔質フィルタ基材2に該触媒原料水溶液を導入して、該多孔質フィルタ基材を構成する粒子表面に該触媒原料水溶液を塗布し、焼成して、該粒子表面にY、Mn、Ag及びRuを含む複合金属酸化物からなる触媒を均一に担持させる。前記複合金属酸化物は、組成式がY1−xAgMn1−yRuで表され、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガスに含まれるパティキュレートを、複合金属酸化物からなる触媒を用いて酸化して浄化する排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排ガスに含まれるパティキュレートや炭化水素を酸化して浄化するために、軸方向に貫通して形成された複数の貫通孔のうち、排ガス流入部が開放されると共に排ガス流出部が閉塞された複数の流入セルと、該複数の貫通孔の排ガス流入部が閉塞されると共に排ガス流出部が開放された複数の流出セルとを備え、該流入セル及び該流出セルを交互に配設して各セル境界部をセル隔壁とするウォールフロー構造を有する多孔質フィルタ基材の該セル隔壁に、ペロブスカイト型複合金属酸化物からなる触媒を担持した排ガス浄化用酸化触媒装置が知られている。
【0003】
前記触媒として用いられるペロブスカイト型複合金属酸化物として、例えば、一般式AMOで表され、AとしてYを用い、MとしてMnを用いる複合金属酸化物が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
前記排ガス浄化用酸化触媒装置は、例えば次のようにして製造することが考えられる。まず、硝酸イットリウム、硝酸マンガン、リンゴ酸及び水を混合し、一次焼成する。前記一次焼成で得られた結果物を再度混合し、二次焼成する。次に、前記二次焼成で得られた結果物と、水と、バインダーとを破砕混合し、ペロブスカイト型複合金属酸化物を合成するための複合金属酸化物前駆体のスラリー(以下、前駆体スラリーという。)を得る。
【0005】
次に、前記前駆体スラリーを、多孔質フィルタ基材のセル隔壁表面に塗布し、焼成することにより、該多孔質フィルタ基材のセル隔壁表面に、ペロブスカイト型複合金属酸化物であるYMnOからなる触媒が担持された前記排ガス浄化用酸化触媒装置を得る。
【0006】
しかしながら、前記複合金属酸化物前駆体のスラリーを用いた製造方法では、担持された前記触媒により形成される触媒層において、前記パティキュレートを酸化する温度を十分に低くすることが困難になることがあり、排ガスの圧力損失(圧損)を低減することも困難になることがあるという不都合がある。
【特許文献1】特開2007−237012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、内燃機関の排ガス中のパティキュレートを酸化し浄化する温度を低くすることができ、しかも排ガスを通過させる際の圧損を小さくすることができる排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法は、内燃機関の排ガス中のパティキュレートを、複合金属酸化物からなる触媒を用いて酸化して浄化する排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法であって、Y、Mn、Ag及びRuの塩を水に溶解して触媒原料水溶液を作成する工程と、軸方向に貫通して形成された複数の貫通孔のうち、排ガス流入部が開放されると共に排ガス流出部が閉塞された複数の流入セルと、該複数の貫通孔の排ガス流入部が閉塞されると共に排ガス流出部が開放された複数の流出セルとを備え、該流入セル及び該流出セルを交互に配設して各セル境界部をセル隔壁とするウォールフロー構造を有する多孔質フィルタ基材に該触媒原料水溶液を導入して、該多孔質フィルタ基材を構成する粒子表面に該触媒原料水溶液を塗布する工程と、該触媒原料水溶液が塗布された該多孔質フィルタ基材を焼成して、該粒子表面にY、Mn、Ag及びRuを含む複合金属酸化物からなる触媒を均一に担持させる工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法においては、まず、Y、Mn、Ag及びRuの塩を水に溶解して、触媒原料水溶液を作成する。次に軸方向に貫通して形成された複数の貫通孔のうち、排ガス流入部が開放されると共に排ガス流出部が閉塞された複数の流入セルと、該複数の貫通孔の排ガス流入部が閉塞されると共に排ガス流出部が開放された複数の流出セルとを備え、該流入セル及び該流出セルを交互に配設して各セル境界部をセル隔壁とするウォールフロー構造を有する多孔質フィルタ基材に該触媒原料水溶液を導入する。前記触媒原料水溶液は、前記多孔質フィルタ基材を構成する粒子間の空隙によって形成される細孔の内部にまで浸透することができるので、該粒子表面に均一に塗布される。次に、前記粒子表面に前記触媒原料水溶液が塗布された前記多孔質フィルタ基材を焼成する。これにより、前記粒子表面に塗布された前記触媒原料水溶液が酸化され、該粒子表面に、Y、Mn、Ag及びRuを含む複合金属酸化物からなる触媒が担持される。
【0010】
この結果、本発明の製造方法で製造された排ガス浄化用酸化触媒装置によれば、前記排ガスが、前記多孔質フィルタ基材のセル隔壁を通過する際に、前記粒子表面に担持された前記触媒の触媒作用により該排ガス中の前記パティキュレートを酸化し浄化する温度を低くすることができる。
【0011】
また、本発明の製造方法で製造された排ガス浄化用酸化触媒装置によれば、前記多孔質フィルタ基材を構成する粒子表面に前記触媒が担持されているので、該多孔質フィルタ基材のセル隔壁表面に触媒層を形成する場合と比較して、排ガスを通過させる際の圧損を低減することができる。
【0012】
また、本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法において、前記複合金属酸化物は、組成式がY1−xAgMn1−yRuで表され、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2であることが好ましい。
【0013】
前記複合金属酸化物は、一般式YMnOで表される複合金属酸化物において、第1の金属であるYの一部を第3の金属であるAgで置換するとともに、第2の金属であるMnを第4の金属であるRuで置換したものである。この置換により、Y1−xAgMn1−yRuは、その結晶構造が六方晶とペロブスカイト構造との混晶となり、高い触媒活性を有することとなる。したがって、本発明によれば、前記排ガスが、前記複合金属酸化物が担持された前記多孔質フィルタ基材を通過する際に、担持された前記触媒の触媒作用により該排ガス中の前記パティキュレートを酸化し浄化する温度を低くすることができる。
【0014】
このとき、xが0.01未満である場合には、触媒活性を高める効果が不十分になることがある。一方、xが0.15を超える場合には、混晶を維持することが困難になることがある。
【0015】
また、yが0.005未満である場合には、触媒活性を高める効果が不十分になることがある。一方、yが0.2を超える場合には、混晶を維持することが困難になることがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の排ガス浄化用酸化触媒装置の説明的断面図である。図2は本実施形態の排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法を説明するための説明的断面図である。図3は本実施形態の排ガス浄化用酸化触媒装置によるパティキュレートの燃焼温度を示すグラフである。図4は本実施形態の排ガス浄化用酸化触媒装置による圧力損失を示すグラフである。
【0017】
図1に示す本実施形態の排ガス浄化用酸化触媒装置1は、ウォールフロー構造を備える多孔質フィルタ基材2と、多孔質フィルタ基材2を構成する粒子表面に担持された触媒層(図示せず)とを備える。
【0018】
多孔質フィルタ基材2は、SiC粒子の成形体を焼結して得たSiC多孔質体である。多孔質フィルタ基材2は、軸方向に貫通する複数の貫通孔が断面格子状に配設された略直方体であり、該貫通孔からなる複数の流入セル4と複数の流出セル5とを備えている。流入セル4は、排ガス流入部4aが開放されると共に排ガス流出部4bが閉塞されている。一方、流出セル5は、排ガス流入部5aが閉塞されると共に排ガス流出部5bが開放されている。流入セル4及び流出セル5は、断面市松格子状となるように交互に配設されていて、各セル4,5の境界部をセル隔壁6とする構造となっている。また、図示しないが、最外層のセル隔壁6の外周部には、排ガスの流出を規制する金属からなる規制部材が設けられている。
【0019】
前記触媒層は、一般式Y1−xAgMn1−yRuで表され、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2である複合金属酸化物からなる。
【0020】
また、本実施形態では多孔質フィルタ基材2として、SiC多孔質体からなるものを用いているが、Si−SiC多孔質体からなるものを用いてもよい。
【0021】
前記構成を備えた排ガス浄化用酸化触媒装置1は、次のようにして製造することができる。まず、硝酸イットリウム、硝酸銀、硝酸マンガン及び硝酸ルテニウムを混合し、水に溶解して、触媒原料水溶液を調製する。
【0022】
次に、図2に示す、軸方向に貫通して形成された複数の貫通孔のうち、排ガス流入部4aが開放されると共に排ガス流出部4bが閉塞された複数の流入セル4と、該複数の貫通孔の排ガス流入部5aが閉塞されると共に排ガス流出部5bが開放された複数の流出セル5と、各セル4,5の境界部であるセル隔壁6とを備えるSiC多孔質体を用意する。前記SiC多孔質体は、流入セル4及び流出セル5を断面市松格子状に交互に配設したウォールフロー構造を有する。SiC多孔質体として、例えば表1に示すイビデン株式会社製の商品名SD031を用いることができる。
【表1】

【0023】
次に、前記SiC多孔質体に、排ガス流入部4a側から前記触媒原料水溶液を導入することにより、該触媒原料水溶液は、該SiC多孔質体の細孔に浸透して、該SiC多孔質体を構成する粒子表面に均一に塗布される。続いて、前記SiC多孔質体から過剰な前記触媒原料水溶液を除去する。
【0024】
次に、前記粒子表面に前記触媒原料水溶液が塗布されたSiC多孔質体を、800〜1000℃の範囲の温度で1〜10時間の範囲で焼成することにより、該SiC多孔質体を構成する粒子表面に、複合金属酸化物Y1−xAgMn1−yRu(ただし、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2)からなる触媒層を形成する。この結果、排ガス浄化用酸化触媒装置1が製造される。
【0025】
次に、図1を参照して本実施形態の製造方法により製造される排ガス浄化用酸化触媒装置1の作動について説明する。まず、排ガス浄化用酸化触媒装置1を、流入セル4及び流出セル5の排ガス流入部4a,5aが内燃機関の排ガスの流路に対して上流側となるように設置する。前記排ガスは、流入セル4の排ガス流入部4aから流入セル4内へ導入される。このとき、流出セル5は排ガス流入部5aが閉塞されているので、流出セル5内へ前記排ガスが導入されることはない。
【0026】
続いて、流入セル4内へ導入された前記排ガスは、流入セル4の排ガス流出部4bが閉塞されているので、多孔質フィルタ基材2のセル隔壁6を通過して、流出セル5内へ移動する。前記排ガスがセル隔壁6を通過する際、該排ガス中のパティキュレートは、前記多孔質フィルタ基材2を構成する粒子表面に担持された前記触媒層の表面に接触し、該触媒層の触媒作用により燃焼除去される。
【0027】
そして、流出セル5内へ移動した前記排ガスは、流出セル5の排ガス流入部5aが閉塞されているので、開放されている排ガス流出部5bから排出されることとなる。以上により、排ガス浄化用酸化触媒装置1は、内燃機関の排ガス中のパティキュレートを、該排ガスの圧損を低減しつつ、酸化し浄化することができる。
【0028】
また、本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置1においては、前記触媒層は、一般式Y1−xAgMn1−yRuで表され、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2である複合金属酸化物からなっている。前記複合金属酸化物は、一般式YMnOで表される複合金属酸化物において、第1の金属であるYの一部を第3の金属であるAgで置換するとともに、第2の金属であるMnの一部を第4の金属であるRuで置換したものである。この置換により、Y1−xAgMn1−yRuは、その結晶構造が六方晶とペロブスカイト構造との混晶となり、高い触媒活性を有することとなる。したがって、排ガス浄化用酸化触媒装置1によれば、前記排ガスが前記触媒層の表面に接触する際に、該触媒層の触媒作用により該排ガス中のパティキュレートを十分に燃焼除去することができる。
【0029】
次に本発明の実施例と比較例とを示す。
【実施例1】
【0030】
本実施例では、まず硝酸イットリウム、硝酸銀、硝酸マンガン及び硝酸ルテニウムを0.95:0.05:0.95:0.05のモル比となるように混合し、25℃の温度で15分間乳鉢で粉砕し、均一化した後、イオン交換水を添加して、イットリウム濃度が0.1mol/Lとなるように調整し、触媒原料水溶液を作製した。
【0031】
次に、軸方向に貫通する複数の貫通孔のうち、排ガス流入部4aが開放されると共に排ガス流出部4bが閉塞された複数の流入セル4と、該複数の貫通孔の排ガス流入部5aが閉塞されると共に排ガス流出部5bが開放された複数の流出セル5とを備え、該流入セル4及び該流出セル5を交互に配設して各セル境界部をセル隔壁6とするウォールフロー構造を有するSiC多孔質体(イビデン株式会社製、商品名:SD031、寸法:36mm×36mm×50mm)を用意した。次に、前記SiC多孔質体に、前記触媒原料水溶液を導入した。そして、前記触媒原料水溶液を、前記多孔質フィルタ基材を構成する粒子間の空隙によって形成される細孔の内部にまで浸透させることにより、該粒子表面に塗布した。続いて、前記SiC多孔質体から過剰な前記触媒原料水溶液を除去した。
【0032】
次に、前記SiC多孔質体を850℃の温度で1時間焼成し、該SiC多孔質体を構成する粒子表面に、該SiC多孔質体の見かけ体積1L当たりの担持量が10gとなるように、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05からなる触媒層を形成し、本実施例の排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。
【0033】
次に、本実施例の排ガス浄化用酸化触媒装置1に対して、次のようにして触媒性能評価を行った。排ガス浄化用酸化触媒装置1を、排気量が2400ccであるディーゼルエンジンを搭載したエンジンベンチの排気系に搭載した。次に、排ガス浄化用酸化触媒装置1への入りガス温度が180℃であり、エンジン回転数が1500回転/分であり、トルクが70N/mであるようにして、前記ディーゼルエンジンを20分間運転することにより、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりパティキュレートを2g捕集させた。
【0034】
次に、パティキュレートが捕集された排ガス浄化用酸化触媒装置1を前記排気系から取り出し、流通型昇温度装置内の石英管内に固定した。次に、石英管の一端部(供給口)から、酸素及び窒素の体積比が10:90である雰囲気ガスを空間速度20000/時間で供給し、石英管の他端部(排出口)から排出させながら、流通型昇温度装置の管状マッフル炉により、排ガス浄化用酸化触媒装置1を、室温から700℃の温度まで3℃/分で昇温するように加熱した。このとき、石英管からの排出ガスのCO濃度を質量分析計を用いて計測し、CO濃度のピークからパティキュレートの燃焼温度を求めた。結果を図3に示す。また、石英管の供給口と排出口とにおける圧力差を計測することにより、排ガス浄化用酸化触媒装置1の圧力損失を求めた。結果を図4に示す。
【実施例2】
【0035】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が20gとなるように、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05からなる触媒層を形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。
【0036】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、パティキュレートの燃焼温度と排ガス浄化用酸化触媒装置の圧力損失とを求めた。結果を図3及び図4に示す。
【実施例3】
【0037】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が30gとなるように、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05からなる触媒層を形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。
【0038】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、パティキュレートの燃焼温度と排ガス浄化用酸化触媒装置の圧力損失とを求めた。結果を図3及び図4に示す。
【実施例4】
【0039】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が40gとなるように、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05からなる触媒層を形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。
【0040】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、パティキュレートの燃焼温度と排ガス浄化用酸化触媒装置の圧力損失とを求めた。結果を図3及び図4に示す。
【実施例5】
【0041】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が50gとなるように、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05からなる触媒層を形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。
【0042】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、パティキュレートの燃焼温度と排ガス浄化用酸化触媒装置の圧力損失とを求めた。結果を図3及び図4に示す。
【実施例6】
【0043】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が60gとなるように、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05からなる触媒層を形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。
【0044】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、パティキュレートの燃焼温度と排ガス浄化用酸化触媒装置の圧力損失とを求めた。結果を図3及び図4に示す。
【実施例7】
【0045】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が70gとなるように、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05からなる触媒層を形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。
【0046】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、パティキュレートの燃焼温度と排ガス浄化用酸化触媒装置の圧力損失とを求めた。結果を図3及び図4に示す。
【実施例8】
【0047】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が80gとなるように、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05からなる触媒層を形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。
【0048】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、パティキュレートの燃焼温度と排ガス浄化用酸化触媒装置の圧力損失とを求めた。結果を図3及び図4に示す。
[比較例]
本比較例では、まず、硝酸銀及び硝酸ルテニウムを全く用いずに、硝酸イットリウム、硝酸マンガン、リンゴ酸及び水を、1:1:6:40のモル比となるように調製し、25℃の温度で15分間乳鉢で混合した後、350℃の温度で1時間の一次焼成を行った。次に、前記一次焼成で得られた結果物を25℃の温度で15分間乳鉢で混合した後、900℃の温度で二次焼成を行った。次に、前記二次焼成で得られた結果物と水とバインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:100:10の重量比となるように秤量し、回転式ボールミルにて100回転/分で5時間混合粉砕し、触媒前駆体スラリーを作製した。
【0049】
次に、前記触媒前駆体スラリーを用いたこと以外は実施例1と全く同一にして、SiC多孔質体(イビデン株式会社製、商品名SD031)内に前記触媒前駆体スラリーを導入し、該SiC多孔質体のセル隔壁表面に該触媒前駆体スラリーを塗布した。続いて、前記SiC多孔質体から過剰な前記触媒前駆体スラリーを除去した。
【0050】
次に、前記SiC多孔質体を800℃の温度で1時間の二次焼成を行い、前記端部が閉塞されていない前記貫通孔の表面に、該SiC多孔質体の見かけ体積1L当たりの担持量が40gとなるように、複合金属酸化物YMnOからなる触媒層を形成した。以上により本比較例の排ガス浄化用酸化触媒装置を製造した。
【0051】
次に、本比較例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、パティキュレートの燃焼温度と排ガス浄化用酸化触媒装置の圧力損失とを求めた。結果を図3及び図4に示す。
【0052】
図3から、実施例1〜8の製造方法により製造された排ガス浄化用酸化触媒装置1によれば、比較例の製造方法により製造された排ガス浄化用酸化触媒装置に対して、パティキュレートをより低温で酸化(燃焼)できることが明らかである。
【0053】
また、図4から、実施例1〜8の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置1によれば、比較例の製造方法により製造された排ガス浄化用酸化触媒装置に対して、圧力損失が小さいことが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の製造方法により製造された排ガス浄化用酸化触媒装置の説明的断面図。
【図2】本発明の製造方法を説明するための説明的断面図。
【図3】本発明の製造方法により製造された排ガス浄化用酸化触媒装置によるパティキュレートの燃焼温度を示すグラフ。
【図4】本発明の製造方法により製造された排ガス浄化用酸化触媒装置の圧力損失を示すグラフ。
【符号の説明】
【0055】
1…排ガス浄化用酸化触媒装置、 2…多孔質フィルタ基材、 4…流入セル, 5…流出セル、 6…セル隔壁。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス中のパティキュレートを、複合金属酸化物からなる触媒を用いて酸化して浄化する排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法であって、
Y、Mn、Ag及びRuの塩を水に溶解して触媒原料水溶液を作成する工程と、
軸方向に貫通して形成された複数の貫通孔のうち、排ガス流入部が開放されると共に排ガス流出部が閉塞された複数の流入セルと、該複数の貫通孔の排ガス流入部が閉塞されると共に排ガス流出部が開放された複数の流出セルとを備え、該流入セル及び該流出セルを交互に配設して各セル境界部をセル隔壁とするウォールフロー構造を有する多孔質フィルタ基材に該触媒原料水溶液を導入して、該多孔質フィルタ基材を構成する粒子表面に該触媒原料水溶液を塗布する工程と、
該触媒原料水溶液が塗布された該多孔質フィルタ基材を焼成して、該粒子表面にY、Mn、Ag及びRuを含む複合金属酸化物からなる触媒を均一に担持させる工程とを含むことを特徴とする排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法。
【請求項2】
前記複合金属酸化物は、組成式がY1−xAgMn1−yRuで表され、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2であることを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−136786(P2009−136786A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316336(P2007−316336)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】