説明

排ガス浄化用金属酸化物触媒担体粒子、及び排ガス浄化触媒

【課題】白金の再分散処理を良好に行うことができる排ガス浄化触媒、このような排ガス浄化触媒の白金再分散処理方法、並びにこのような排ガス浄化触媒を得ることができる金属酸化物触媒担体粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1及び第2の金属酸化物を含有し、且つ中心部と外皮部とで異なる組成を有する、金属酸化物触媒担体粒子であって、中心部における第1の金属酸化物を構成する金属のモル分率が、外皮部における第1の金属酸化物を構成する金属のモル分率よりも高く、且つ外皮部における第2の金属酸化物を構成する金属のモル分率が、中心部における第2の金属酸化物を構成する金属のモル分率よりも高く、且つ第2の金属酸化物が、セリアを除く希土類及びアルカリ土類金属の酸化物からなる群より選択される、金属酸化物触媒担体粒子とする。また、金属酸化物触媒担体粒子に白金を担持してなる排ガス浄化触媒とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物触媒担体粒子及びその製造方法、この金属酸化物触媒担体粒子から製造される排ガス浄化触媒、並びにこの排ガス浄化触媒の再生処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関からの排ガス中には、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等が含まれるが、これらの物質は、CO及びHCを酸化すると同時に、NOを還元できる排ガス浄化触媒によって除去できる。排ガス浄化触媒の代表的なものとしては、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の貴金属をγ−アルミナ等の多孔質金属酸化物担体に担持させた三元触媒が知られている。
【0003】
ここで使用される貴金属としては、白金を用いることが一般的である。しかしながら白金は、高温の排ガスに長時間にわたって晒されると、粒成長が生じて比表面積が減少し、それによって触媒活性が低下するという問題を有する。従って、白金の粒成長を抑制するための手段が種々開発されている。
【0004】
例えば、セリアを担体として使用する場合、その上に担持される貴金属、特に白金との親和性が強いために、この貴金属の粒成長(シンタリング)を抑制できることが見出されている。従って耐熱性が比較的小さいセリアの欠点を補いつつこの特性を利用するために、特許文献1〜4では、触媒金属である白金のための触媒担体として、セリア等に富む外皮部と耐熱性金属酸化物であるアルミナ等に富む中心部とを有する金属酸化物粒子を用いることを開示している。
【0005】
またこのような中心部と外皮部とで組成が異なる金属酸化物粒子を得るための方法に関し、特許文献2では、互いに異なる等電点を有する第1の金属酸化物のコロイド粒子と第2の金属酸化物のコロイド粒子とを少なくとも含有するゾルを提供し;このゾルのpHを、第2の金属酸化物のコロイド粒子の等電点よりも第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点に近づけて、第1の金属酸化物のコロイド粒子を凝集させ;このゾルのpHを、第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点よりも第2の金属酸化物のコロイド粒子の等電点に近づけて、凝集した第1の金属酸化物のコロイド粒子の周囲に、第2の金属酸化物のコロイド粒子を凝集させ;そして得られた凝集物を乾燥及び焼成することを含む方法を開示している。
【0006】
また、特許文献5及び6では、使用中に粒成長した白金粒子を、担体上において再び分散させる処理を行うことを開示している。特許文献5によれば、この白金の再分散処理は、アルカリ土類金属酸化物、希土類酸化物等の担体に白金を担持した排ガス浄化用触媒を、白金の担持モル数以上の酸素原子を含む酸化性雰囲気下で、500℃〜1000℃の高温に加熱する処理である。
【0007】
このように酸化雰囲気において白金を加熱すると、使用中に粒成長した金属白金粒子表面に酸化白金が生成する。この酸化白金は、希土類酸化物等の担体との相互作用が強いので、金属白金粒子表面から担体表面に移動し、それによって金属白金粒子表面には金属白金が表出する。この金属白金は酸素により酸化されて酸化白金となり、この酸化白金が再び担体表面に移動する。このような現象を繰り返すことによって、希土類酸化物等に担持されている金属白金粒子は、次第に担体表面に分散され、粒径が小さくなる。これによって、担体に酸化白金が高分散担持された状態となる。その後、担体に酸化白金が高分散担持された状態となった触媒に、ストイキ雰囲気又は還元雰囲気の排ガスが接触することによって、酸化白金が還元されて金属白金となり、金属白金が高分散担持された排ガス浄化用触媒が再生される。尚、酸化白金は還元されやすく、この還元反応はきわめて容易に起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−313024号公報
【特許文献2】特開2005−314133号公報
【特許文献3】特開2004−141833号公報
【特許文献4】特開2005−254047号公報
【特許文献5】特開2000−202309号公報
【特許文献6】特開2003−74334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明では、白金の再分散処理を良好に行うことができる排ガス浄化触媒、このような排ガス浄化触媒の白金再分散処理方法、並びにこのような排ガス浄化触媒を得ることができる金属酸化物触媒担体粒子及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の金属酸化物触媒担体粒子は、第1及び第2の金属酸化物を含有し、且つ中心部と外皮部とで異なる組成を有する。ここでこの本発明の金属酸化物触媒担体粒子は、中心部における第1の金属酸化物を構成する金属のモル分率が、外皮部における第1の金属酸化物を構成する金属のモル分率よりも高く、外皮部における第2の金属酸化物を構成する金属のモル分率が、中心部における第2の金属酸化物を構成する金属のモル分率よりも高く、且つ第2の金属酸化物が、セリアを除く希土類及びアルカリ土類金属の酸化物からなる群より選択される。
【0011】
本発明の金属酸化物触媒担体粒子によれば、白金を担持させて貴金属担持触媒としたときに、中心部の第1の金属酸化物によって提供される特性、特に耐熱性と、外皮部の第2の金属酸化物によって達成される白金の再分散性とを組み合わせて達成できる。すなわち、本発明の金属酸化物触媒担体粒子によれば、白金を担持させて貴金属担持触媒としたときに、中心部の第1の金属酸化物の耐熱性によって、金属酸化物触媒担体粒子の大きな比表面積を維持し、それによって外皮部の第2の金属酸化物による白金の再分散を予想外に良好に達成することができる。
【0012】
本発明の金属酸化物触媒担体粒子の第1の金属酸化物としては、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア及びそれらの組み合わせからなる群より選択される金属酸化物、特にアルミナを挙げることができる。
【0013】
本発明の金属酸化物触媒担体粒子の第2の金属酸化物としては、セリアを除く希土類の酸化物からなる群より選択される金属酸化物、例えばネオジム、プラセオジム、ランタン、スカンジウム、及びイットリウムの酸化物からなる群より選択される金属酸化物、特にネオジム、プラセオジム、及びイットリウムの酸化物からなる群より選択される金属酸化物を挙げることができる。
【0014】
本発明の金属酸化物触媒担体粒子の1つの態様では、下記のリッチガス及びリーンガスをそれぞれ1分間ごとに切り替えて流通させて1000℃において5時間にわたる耐久を行った後で、15m/g超、特に20m/g超、より特に30m/g超、更により特に40m/g超の比表面積を有する:
リッチガス: 一酸化炭素(2体積%) + 窒素(残部)
リーンガス: 酸素(2体積%) + 窒素(残部)。
【0015】
また、本発明の金属酸化物触媒担体粒子の1つの態様では、第1の金属酸化物がアルミナであり、第2の金属酸化物が、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムの酸化物からなる群より選択され、且つ下記のリッチガス及びリーンガスをそれぞれ1分間ごとに切り替えて流通させて1000℃において5時間にわたる耐久を行った後で、40m/g超の比表面積を有する:
リッチガス: 一酸化炭素(2体積%) + 窒素(残部)
リーンガス: 酸素(2体積%) + 窒素(残部)。
【0016】
本発明の排ガス浄化触媒は、本発明の金属酸化物触媒担体粒子が白金を担持してなる。
【0017】
本発明の排ガス浄化触媒の再生処理方法は、本発明の排ガス浄化触媒を、酸素含有酸化雰囲気において500℃〜1000℃の温度に加熱することを含む。
【0018】
この本発明の排ガス浄化触媒の再生処理方法は、酸素含有酸化雰囲気における加熱の後で、白金の還元処理を行うことを更に含むことができる。
【0019】
第1及び第2の金属酸化物を含有し、且つ中心部と外皮部とで異なる組成を有する金属酸化物触媒担体粒子を製造する本発明の方法は、下記の工程を含む:
第1の金属酸化物のコロイド粒子と、第2の金属酸化物を構成する金属の塩とを少なくとも含有する原料溶液、特に原料塩水溶液を提供し;
原料溶液のpHを、第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点に近づけることによって、特に第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点±1.0、より特に等電点±0.5の範囲内にすることによって、更により特に第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点を通過するように変動させることによって、最も特に第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点を通過するように増加させることによって、第1の金属酸化物のコロイド粒子を凝集させ;
原料溶液のpHを増加させることによって、金属塩から、第2の金属酸化物のコロイド粒子を析出させ、またこの第2の金属酸化物のコロイド粒子を、凝集した第1の金属酸化物のコロイド粒子の周囲に凝集させ、ここで第2の金属酸化物のコロイド粒子は、第1の金属酸化物のコロイド粒子よりも大きい等電点を有し;そして
得られた凝集物を乾燥及び焼成すること。
【0020】
金属酸化物触媒担体粒子を製造する本発明の方法では、第1の金属酸化物として、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア及びそれらの組み合わせからなる群より選択される金属酸化物を用いることができ、また第2の金属酸化物として、セリアを除く希土類及びアルカリ土類金属の酸化物からなる群より選択される金属酸化物を用いることができる。
【0021】
尚、本明細書の記載において、用語「コロイド粒子」は、液体である分散媒に分散している金属酸化物又は酸素に結合した金属を有する粒子であって、分散媒を除去し、焼成することによって金属酸化物を生成するものを意味している。ここでこの分散媒は、水であることが一般的であるが、必要に応じてアルコール、アセチルアセトン等の有機分散媒を含むこともできる。「コロイド粒子」は、一般には1〜1000nm、特に1〜500nmの直径を有するものとして理解され、例えば100nm未満又は50nm未満の直径を有するものを入手できる。コロイド粒子を液体である分散媒に分散させてなる分散系は、ゾル又はコロイド溶液として一般に言及される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の金属酸化物触媒担体粒子の1つの態様を表す断面図である。
【図2】本発明の金属酸化物触媒担体粒子の製造方法で用いられる第1及び第2の金属酸化物のコロイド粒子のゼータ電位の変動を表す図である。
【図3】実施例及び比較例の排ガス浄化での、白金粒子の再生率を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔金属酸化物触媒担体粒子〕
本発明について図1を用いて説明する。ここで図1は、本発明の金属酸化物触媒担体粒子の断面図である。
【0024】
この図1で示されるように、本発明の金属酸化物触媒担体粒子は、アルミナ等の第1の金属酸化物を比較的多く含む中心部1と、希土類酸化物等の第2の金属酸化物を比較的多く含む外皮部2とを有する。
【0025】
本発明の金属酸化物触媒担体粒子では、中心部1と外皮部2との境界は必ずしも明確なものではなく、中心部1と外皮部2との境界の組成が徐々に変化していてもよく、これは、耐熱性に関して好ましい。また、中心部1と外皮部2との境界部が第1の金属酸化物と第2の金属酸化物との混合物、特に固溶体であってもよい。尚、図1では外皮部2が連続であるように示されているが、これは不連続であってもよい。
【0026】
本発明の金属酸化物触媒担体粒子の中心部1と外皮部2は、それぞれ複数の一次粒子からなっていてもよい。本発明の金属酸化物触媒担体粒子をコロイド粒子から形成する場合、中心部と外皮部とを構成する一次粒子は、そのコロイド粒子に対応するものである。但し、それぞれの一次粒子の間に明確な境界を有さないこともある。
【0027】
この金属酸化物触媒担体粒子は、例えば10μm未満、5μm未満、1μm未満、500nm未満、200nm未満、100nm未満、又は50nm未満の平均粒子径を有することができる。例えば実際に原料として用いたコロイド粒子が5nm程度の平均粒子径を有する場合、本発明の金属酸化物触媒担体粒子の平均粒子径は、50nm以下にできる。
【0028】
本発明の金属酸化物触媒担体粒子の第1の金属酸化物としては、任意の金属酸化物を使用することができる。この第1の金属酸化物としては、触媒担体粒子の製造において一般に使用される金属酸化物、例えばアルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア及びそれらの組み合わせを挙げることができ、アルミナ及びジルコニア、特にアルミナが、耐熱性及び比表面積に関して好ましい。
【0029】
本発明の金属酸化物触媒担体粒子の第2の金属酸化物は、セリアを除く希土類及びアルカリ土類金属の酸化物からなる群より選択され、セリアを除く希土類の酸化物の使用が耐熱性に関して好ましい。これらの金属酸化物は、特許文献5にも記載のように、金属白金及び酸化白金に対して比較的大きい親和性を有する。希土類酸化物に属するセリアは、金属白金及び酸化白金に対して比較的大きい親和性を有する。しかしながら、本発明の金属酸化物触媒担体粒子においては、セリア以外の希土類金属酸化物を用いることによって、予想外に大きい白金の再分散性を達成することができる。これは、セリアが、その酸素吸蔵放出能(OSC能)のために酸化雰囲気において酸素を吸蔵して、酸化白金の生成を抑制すること、及び/又はOSC能によって吸蔵された不安定な表面酸素が、金属白金及び酸化白金と単体との親和性を弱めること等によると考えられる。
【0030】
外皮部及び中心部は、上記の第1及び第2の金属酸化物以外の金属酸化物を、例えば金属原子に関して50mol%未満の量で含有することもできる。特に中心部がジルコニア又はアルミナを含有する場合、中心部は更に、例えばアルカリ土類金属及び希土類元素からなる群より選択される金属を、1〜50mol%未満、特に1〜10mol%の量で含有することができる。これらのアルカリ土類金属及び希土類元素の酸化物、特に酸化イットリウムの添加は、ジルコニア又はアルミナに優れた耐熱性を提供するので好ましい。
【0031】
〔排ガス浄化触媒〕
本発明の排ガス浄化触媒は、本発明の金属酸化物触媒担体粒子に、白金を担持して製造できる。
【0032】
金属酸化物触媒担体粒子への白金の担持は、公知の方法を任意に使用して行うことができ、例えばジニトロジアンミン白金溶液のような白金の塩及び/又は錯塩を含有する溶液を吸水担持し、乾燥及び焼成する方法が挙げられる。金属酸化物触媒担体粒子への白金の担持量は、金属酸化物触媒担体粒子に対して0.01〜5質量%、特に0.1〜2質量%であってよい。尚、本発明の排ガス浄化触媒は、白金に加えてパラジウム、ロジウムなどの貴金属、及び/又は銅、鉄、ニッケル、コバルトなどの卑金属、及び/又はアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれるいわゆるNO吸蔵元素を更に担持していてもよい。
【0033】
本発明の排ガス浄化触媒は、それ自体を成形して用いるだけでなく、モノリス担体、例えばセラミック製ハニカムにコートして用いることもできる。
【0034】
〔排ガス浄化触媒の再生処理方法〕
排ガス浄化触媒を再生する本発明の処理方法は、本発明の排ガス浄化触媒を、酸素含有酸化雰囲気において500℃以上の温度、例えば600℃〜1000℃、特に600℃〜800℃に加熱することを含む。具体的な処理温度は、酸素含有酸化雰囲気の組成、再生処理時間等に依存するが、この処理温度が低すぎると、白金の酸化及び再分散が十分に進行しないことがあり、またこの処理温度が高すぎると、熱による金属酸化物触媒担体粒子の焼結等によって触媒活性が低下することがある。
【0035】
特許文献5に記載のように、この酸化雰囲気における白金の再分散方法によれば、使用中に粒成長した金属白金粒子表面に酸化白金が生成し、酸化白金が再び担体表面に移動することを繰り返すことによって、金属白金粒子は、担体表面に分散され、次第に粒径が小さくなり、担体に酸化白金が高分散担持された状態となる。
【0036】
本発明の再生処理方法において用いる酸素含有酸化雰囲気は、金属酸化物触媒担体粒子に担持されている白金を酸化させて酸化白金を得るのに十分に酸化性の雰囲気である。この酸素含有酸化雰囲気としては、酸素を10体積%以上含有する窒素雰囲気、特に空気を挙げることができる。またこの酸素含有酸化雰囲気での焼成は例えば、1〜5時間、特に2〜4時間にわたって行うことができる。
【0037】
本発明の排ガス浄化触媒の再生処理方法は、排ガス浄化触媒を排気系から取り出して所定の処理装置内で行ってもよいが、排気系に装着した状態で処理することが望ましい。排気系に装着した状態で酸化処理する場合、例えば触媒の上流側に設けられた空気弁から空気を多量に導入したり、混合気の空燃比(A/F)をきわめて高くしたり、燃料の供給量を大幅に減らしたりして、混合気の空燃比(A/F)をきわめて高くすることで行うことができる。また加熱手段としては、加熱手段によって触媒を加熱してもよいし、触媒上における反応熱を利用することもできる。
【0038】
上記のように排気系に装着した状態で酸化処理を行う場合、触媒性能の劣化に応じてリアルタイムで酸化処理を行うことが可能となる。例えば自動車の運転時間や走行距離に応じて定期的に再生処理を行ってもよいし、触媒の下流にNOセンサーやCOセンサーを設けて触媒性能を検出し、その値が基準値を超えたときに再生処理を行うことも好ましい。
【0039】
白金の再分散処理の後の還元処理は、水素、一酸化炭素などの還元性ガスの存在下で加熱することで行うことができる。例えば自動車の排ガス浄化用触媒の場合には、ストイキ雰囲気又はリッチ雰囲気の排ガスを排ガス浄化用触媒に接触させることで行うことが望ましい。これにより排ガス浄化用触媒を排気系に装着したまま酸化処理と還元処理を行うことができ、空燃比制御の一環として再生処理を行うことができる。還元処理における加熱温度は、酸化白金が還元される温度であればよく、例えば300℃以上とすることができる。
【0040】
〔金属酸化物触媒担体粒子の製造方法〕
本発明の金属酸化物触媒担体粒子は、任意の方法で製造でき、例えば中心部と外皮部とで異なる組成を有する金属酸化物粒子を製造する特許文献2に記載の方法を参照して製造できる。
【0041】
また本発明の金属酸化物触媒担体粒子は、金属酸化物触媒担体粒子を製造する本発明の方法によっても製造できる。
【0042】
従って例えば、第1及び第2の金属酸化物を含有し、且つ中心部と外皮部とで異なる組成を有する、本発明の金属酸化物触媒担体粒子は、下記の工程を含む方法によって製造することができる:
第1の金属酸化物のコロイド粒子と、第2の金属酸化物を構成する金属の塩とを少なくとも含有する原料溶液を提供し;
原料溶液のpHを、第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点に近づけることによって、第1の金属酸化物のコロイド粒子を凝集させ;
原料溶液のpHを増加させることによって、金属塩から、第2の金属酸化物のコロイド粒子を析出させ、またこの第2の金属酸化物のコロイド粒子を、凝集した第1の金属酸化物のコロイド粒子の周囲に凝集させ、ここで第2の金属酸化物のコロイド粒子は、第1の金属酸化物のコロイド粒子よりも大きい等電点を有し;そして
得られた凝集物を乾燥及び焼成すること。
【0043】
以下では金属酸化物触媒担体粒子を製造するこの本発明の方法の各工程について説明する。
【0044】
−原料溶液の提供
この本発明の方法では、始めに、第1の金属酸化物のコロイド粒子と、第2の金属酸化物を構成する金属の塩とを少なくとも含有する原料溶液を提供する。
【0045】
ここで提供される具体的な第1の金属酸化物のコロイド粒子としては、第1の金属のアルコキシド、アセチルアセトナート、酢酸塩、及び硝酸塩などを加水分解及び縮合して得られた物質を挙げることができる。またアルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル及びセリアゾルのようなゾルは、公知の材料であり、市販されているものを入手することもできる。
【0046】
一般に販売されている金属酸化物のゾルは、含有されるコロイド粒子の等電点と離れたpHを有し、それによって含有されるコロイド粒子が互いに静電気的に反発して凝集を防ぐようにされている。すなわち等電点がアルカリ側にあるコロイド粒子を含有するゾルでは、ゾルを酸性にすることによって安定化している(酸性安定化ゾル)。また等電点が酸性側にあるコロイド粒子を含有するゾルでは、ゾルをアルカリ性にすることによって安定化している(アルカリ安定化ゾル)。
【0047】
ここでこのコロイド粒子の等電点は粒子を構成する酸化物のような材料自体によって限定されるものではなく、コロイド粒子の表面改質、特に有機化合物によるコロイド粒子の表面改質によって任意に設定できるものである。
【0048】
尚、本発明の方法の実施に関して必要なコロイド粒子の等電点は、任意の方法によって得ることができるが、例えば電気泳動光散乱法で測定できる。
【0049】
ここで提供される具体的な第2の金属酸化物を構成する金属の塩としては、酢酸塩のようなカルボン酸塩、並びに硝酸塩、硫酸塩のような無機酸塩を挙げることができる。
【0050】
第1の金属酸化物のコロイド粒子と、第2の金属酸化物を構成する金属の塩とを少なくとも含有する溶液は、任意の方法で得ることができ、例えば第1の金属酸化物のコロイド粒子を含有するゾルに、第2の金属酸化物を構成する金属の塩を溶解させること、第1の金属酸化物のコロイド粒子を含有するゾルと、第2の金属酸化物を構成する金属の塩の溶液とを混合することによって得ることができる。また第1の金属酸化物のコロイド粒子と、第2の金属酸化物を構成する金属の塩との混合比は、所望とされる金属酸化物粒子の性質に依存して任意に決定できる。
【0051】
本発明の方法において、第1及び第2の金属酸化物以外の、金属酸化物触媒担体粒子に含有させることが好ましい金属酸化物は、コロイド粒子として、及び/又は金属塩、例えば硝酸塩として、原料溶液に含有させることができる。
【0052】
−第1の金属酸化物コロイド粒子の凝集
この本発明の方法では、次に、原料溶液のpHを、第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点(図2の点a)に近づけることによって、第1の金属酸化物のコロイド粒子を凝集させる。ここで、図2は、第1及び第2の金属酸化物のコロイド粒子のゼータ電位の変動を表す図である。
【0053】
上述のように、一般に販売されている金属酸化物のゾルは、含有されるコロイド粒子の等電点と離れたpHを有し、それによってコロイド粒子が互いに静電気的に反発して凝集を防ぐようにされている。従ってこの工程でのように、原料溶液のpHを、第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点に近づけると、この第1の金属酸化物のコロイド粒子のゼータ電位が小さくなって粒子間の電気的な反発が小さくなり、それによって第1の金属酸化物のコロイド粒子の凝集が促進される。
【0054】
原料溶液のpHの調節は、アンモニア水、水酸化ナトリウムのようなアルカリ、又は酢酸、硝酸、塩酸のような酸を添加することによって行うことができる。また、原料溶液のpHの調節は単に、第1の金属酸化物のコロイド粒子を含有するゾルと、第2の金属酸化物を構成する金属の塩を含有する溶液を混合することによって達成することもできる。
【0055】
この原料溶液のpHの調節は、pHメーターで原料溶液のpHを測定しながら、酸又はアルカリを原料溶液に添加して達成できる。またこれは、予めサンプリングした原料溶液を用いてpH調節に必要な酸又はアルカリの量を測定し、それに基づいて原料溶液全体のために必要とされる酸又はアルカリの量を決定し、原料溶液全体に添加することによっても達成できる。
【0056】
−第2の金属酸化物のコロイド粒子の析出及び凝集
この本発明の方法では、次に、原料溶液のpHを増加させることによって、金属塩から、第2の金属酸化物のコロイド粒子を析出(図2の点b)させ、またこの第2の金属酸化物のコロイド粒子を、凝集した第1の金属酸化物のコロイド粒子の周囲に凝集(図2の点c)させる。
【0057】
金属酢酸塩、金属硝酸塩等の塩溶液、特に塩水溶液は、比較的アルカリ性のpHにおいて、金属酸化物のコロイド粒子を析出させる。従ってこの工程でのように、第2の金属酸化物を構成する金属の塩を含有する原料溶液のpHを増加させると、この金属塩から、第2の金属酸化物のコロイド粒子が析出する。
【0058】
尚、本発明のこの方法では、析出する第2の金属酸化物のコロイド粒子は、第1の金属酸化物のコロイド粒子よりも大きい等電点を有する。上述のように、コロイド粒子の等電点は粒子を構成する酸化物のような材料自体によって限定されるものではなく、コロイド粒子の表面改質、特に有機化合物によるコロイド粒子の表面改質によって任意に設定できるものである。
【0059】
従って例えば、この工程において析出する第2の金属酸化物のコロイド粒子が、第1の金属酸化物のコロイド粒子よりも大きい等電点を有するようにするためには、第1の金属酸化物のコロイド粒子が比較的小さい等電点を有するように、第1の金属酸化物のコロイド粒子を選択することができる。より具体的には例えば、第2の金属酸化物のコロイド粒子の等電点のpHと第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点のpHとの差(図2の点aと点cとの差)が、3以上、特に4以上、より特に5以上であるように、第1の金属酸化物のコロイド粒子と、第2の金属酸化物を構成する金属の塩とを選択することができる。
【0060】
この工程でのように、析出する第2の金属酸化物のコロイド粒子の等電点が、第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点よりも大きい場合、第1の金属酸化物のコロイド粒子のゼータ電位が小さくなって凝集するときに、第2の金属酸化物は、原料溶液中に塩の状態で溶解しており、又は比較的大きいゼータ電位を有する第2の金属酸化物のコロイド粒子であり、それによって第2の金属酸化物のコロイド粒子の凝集は抑制される。
【0061】
また、凝集した第1の金属酸化物のコロイド粒子を含有する原料溶液のpHを、第2の金属酸化物のコロイド粒子の等電点付近まで変動させると、この第2の金属酸化物のコロイド粒子のゼータ電位が小さくなって粒子間の電気的な反発が小さくなり、それによって第2の金属酸化物のコロイド粒子の凝集が促進される。ここでは原料溶液のpHが、第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点からは比較的離れているので、第1の金属酸化物のコロイド粒子同士の凝集が抑制されて、第1の金属酸化物のコロイド粒子の周囲に第2の金属酸化物のコロイド粒子が堆積する。
【0062】
原料溶液のpHの調節については上記第1の金属酸化物の凝集の場合と同様である。
【0063】
〔凝集物の乾燥及び焼成〕
このようにして得られる凝集体を乾燥及び焼成することによって、第1の金属酸化物のコロイド粒子に由来する成分で主に構成される中心部と、第2の金属酸化物のコロイド粒子に由来する成分で主に構成される外皮部とを有する金属酸化物粒子を製造できる。
【0064】
原料溶液からの分散媒の除去及び乾燥は、任意の方法及び任意の温度で行うことができる。これは例えば、原料溶液を120℃のオーブンに入れて達成できる。このようにして原料溶液から分散媒を除去及び乾燥して得られた原料を焼成して、金属酸化物粒子を得ることができる。この焼成は、金属酸化物合成において一般的に用いられる温度、例えば500〜1100℃の温度で行うことができる。
【0065】
以下、本発明を実施例に基づき更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
以下の実験における溶液のpHの測定は、pHメーターを使用し、pHメーター電極を溶液に直接に浸漬して行った。
【0067】
〔実施例1〕
この実施例では、以下のようにして、中心部が主としてジルコニアから構成され、且つ外皮部が主として酸化スカンジウムから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得て、これに白金を担持した。
【0068】
10質量%アルカリ安定化ジルコニアゾル(すなわち比較的酸性の等電点を有するジルコニアゾル)に硝酸を加えてpHを1に調整した。更に、硝酸スカンジウム・四水和物を重量にして6倍の蒸留水に加え、この溶液を、ジルコニアゾル中のジルコニウムに対してスカンジウムが30mol%になる量で、ジルコニアゾルに加えて、混合溶液を得、1時間にわたってこの混合溶液を撹拌した。その後、28%アンモニア水を混合溶液に加えてpHを9に調整し、120℃で乾燥して水分を除去し、600℃で5時間にわたって焼成した。得られた焼成物を乳鉢で粉砕して、実施例1の金属酸化物触媒担体粒子を得た。
【0069】
このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子を、重量にして6倍の蒸留水に分散させ、白金が金属酸化物触媒担体粒子に対して1.0重量%となるようにして、ジニトロジアンミン白金溶液を添加し、1時間にわたって撹拌した。更に120℃で乾燥して水分を除去し、500℃で2時間にわたって焼成した。
【0070】
〔実施例2〕
この実施例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸イットリウム・六水和物を用いたことを除いて実施例1と同様にして、中心部が主としてジルコニアから構成され、且つ外皮部が主として酸化イットリウムから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0071】
〔実施例3〕
この実施例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸ネオジム・六水和物を用いたことを除いて実施例1と同様にして、中心部が主としてジルコニアから構成され、且つ外皮部が主として酸化ネオジムから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0072】
〔実施例4〕
この実施例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸プラセオジウム・六水和物を用いたことを除いて実施例1と同様にして、中心部が主としてジルコニアから構成され、且つ外皮部が主として酸化プラセオジウムから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0073】
〔実施例5〕
この実施例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸ランタン・六水和物を用いたことを除いて実施例1と同様にして、中心部が主としてジルコニアから構成され、且つ外皮部が主として酸化ランタンから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0074】
〔実施例6〕
この実施例では、アルカリ安定化ジルコニアゾルの代わりにアルカリ安定化アルミナゾルを用いたことを除いて実施例1と同様にして、中心部が主としてアルミナから構成され、且つ外皮部が主として酸化スカンジウムから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0075】
〔実施例7〕
この実施例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸イットリウム・六水和物を用いたこと、アルカリ安定化ジルコニアゾルの代わりにアルカリ安定化アルミナゾルを用いたことを除いて実施例1と同様にして、中心部が主としてアルミナから構成され、且つ外皮部が主として酸化イットリウムから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0076】
〔実施例8〕
この実施例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸ネオジム・六水和物を用いたこと、アルカリ安定化ジルコニアゾルの代わりにアルカリ安定化アルミナゾルを用いたことを除いて実施例1と同様にして、中心部が主としてアルミナから構成され、且つ外皮部が主として酸化ネオジムから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0077】
〔実施例9〕
この実施例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸プラセオジウム・六水和物を用いたこと、アルカリ安定化ジルコニアゾルの代わりにアルカリ安定化アルミナゾルを用いたことを除いて実施例1と同様にして、中心部が主としてアルミナから構成され、且つ外皮部が主として酸化プラセオジウムから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0078】
〔実施例10〕
この実施例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸ランタン・六水和物を用いたこと、アルカリ安定化ジルコニアゾルの代わりにアルカリ安定化アルミナゾルを用いたことを除いて実施例1と同様にして、中心部が主としてアルミナから構成され、且つ外皮部が主として酸化ランタンから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0079】
〔比較例1〕
この比較例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸二アンモニアセリウムを用いたことを用いたことを除いて実施例1と同様にして、中心部が主としてジルコニアから構成され、且つ外皮部が主としてセリアから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0080】
〔比較例2〕
この比較例では、以下のようにして、セリア−ジルコニア固溶体からなる金属酸化物粒子を得て、これに白金を担持した。
【0081】
得られる金属酸化物触媒担体粒子の組成が全体として比較例1の金属酸化物触媒担体粒子と同じになる量で、硝酸二アンモニウムセリウム及びオキシ硝酸ジルコニウムを蒸留水に加え、撹拌して溶解させた。その後、28%アンモニア水を混合溶液に加えてpHを9に調整して沈殿を生じさせ、120℃で乾燥して水分を除去し、600℃で5時間にわたって焼成した。得られた焼成物を乳鉢で粉砕して、実施例1の金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0082】
〔比較例3〕
この比較例では、以下のようにして、アルミナのみから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得て、これに白金を担持した。
【0083】
10質量%アルカリ安定化アルミナゾルに、28%アンモニア水を混合溶液に加えてpHを9に調整し、120℃で乾燥して水分を除去し、600℃で5時間にわたって焼成した。得られた焼成物を乳鉢で粉砕して、アルミナのみからなる金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0084】
〔比較例4〕
この比較例では、アルカリ安定化アルミナゾルの代わりにアルカリ安定化ジルコニアゾルを用いたことを除いて比較例3と同様にして、ジルコニアのみからなる金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0085】
〔比較例5〕
この比較例では、以下のようにして、酸化スカンジウムのみから構成されている金属酸化物触媒担体粒子を得て、これに白金を担持した。
【0086】
硝酸スカンジウム・四水和物を重量にして6倍の蒸留水に加え、得られた溶液に、28%アンモニア水を混合溶液に加えてpHを9に調整し、120℃で乾燥して水分を除去し、600℃で5時間にわたって焼成した。得られた焼成物を乳鉢で粉砕して、酸化スカンジウムのみからなる金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0087】
〔比較例6〕
この比較例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸イットリウム・六水和物を用いたことを除いて比較例5と同様にして、酸化イットリウムのみからなる金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0088】
〔比較例7〕
この比較例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸ネオジム・六水和物を用いたことを除いて比較例5と同様にして、酸化ネオジムのみからなる金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0089】
〔比較例8〕
この比較例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸プラセオジウム・六水和物を用いたことを除いて比較例5と同様にして、酸化プラセオジウムのみからなる金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0090】
〔比較例9〕
この比較例では、硝酸スカンジウム・四水和物の代わりに硝酸ランタン・六水和物を用いたことを除いて比較例5と同様にして、酸化ランタンのみからなる金属酸化物触媒担体粒子を得た。また、このようにして得た金属酸化物触媒担体粒子に、実施例1と同様にして、白金を担持した。
【0091】
〔等電点〕
実施例及び比較例の金属酸化物触媒担体粒子の等電点を測定した。結果を表1に示している。またこの表1では、比較のために、実施例及び比較例の金属酸化物触媒担体粒子で外皮部を構成している酸化物単体の等電点、及びこれらの触媒担体粒子で中心部を構成している酸化物単体の等電点も示している。
【0092】
【表1】

【0093】
表1からは、実施例及び比較例1の金属酸化物触媒担体粒子の等電点は、これらの触媒担体粒子で外皮部を構成している酸化物単体の等電点にほぼ等しいことが明らかである。すなわち、表1からは、実施例及び比較例1の金属酸化物触媒担体粒子が、主としてジルコニア又はアルミナから構成されている中心部と、主として酸化スカンジウム、酸化イットリウム等から構成されている外皮部とを有することが明らかである。
【0094】
〔評価〕
評価のためには、実施例及び比較例の触媒を1mm角のペレット状に成形して用いた。
【0095】
−耐久
毎分5リットルのガス流量で、下記に示すリッチガス及びリーンガスを、1,000℃で5時間にわたって、1分間間隔で切り替えて流通させて、耐久を行った。
リッチガス: 一酸化炭素(2体積%) + 窒素(残部)
リーンガス: 酸素(2体積%) + 窒素(残部)
【0096】
−再分散(再生)処理
空気雰囲気の電気炉において、600℃で2時間にわたって、実施例及び比較例の触媒を加熱した。
【0097】
−白金再分散性
耐久後であって再分散処理前の白金粒子径、及び再分散処理後の白金粒子径を、−80℃における一酸化炭素パルス吸着法を用いて測定した。下記の式によって、白金の再分散率を求めた。再分散率の値が比較的大きいことは、再分散処理による白金の再分散が比較的良好に達成されていることを意味する。結果を表2及び図3に示す。
再分散率(%)=
{1−(再分散処理後の白金粒子径)/(再分散処理前の白金粒子径)}×100
【0098】
【表2】

【0099】
表2からは、実施例の排ガス浄化触媒では、酸化スカンジウム、酸化イットリウム等のみから構成される比較例5〜9の排ガス浄化触媒と比較して、有意に大きい比表面積が維持されていることが理解される。表2及び図3からは、比較例1及び2の排ガス浄化触媒と比較して、実施例の排ガス浄化触媒では有意に大きい白金粒子再生率が達成されていることが理解される。
【符号の説明】
【0100】
1 中心部
2 外皮部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の金属酸化物を含有し、且つ中心部と外皮部とで異なる組成を有する、金属酸化物触媒担体粒子であって、
前記中心部における前記第1の金属酸化物を構成する金属のモル分率が、前記外皮部における前記第1の金属酸化物を構成する金属のモル分率よりも高く、且つ
前記外皮部における前記第2の金属酸化物を構成する金属のモル分率が、前記中心部における第2の金属酸化物を構成する金属のモル分率よりも高く、且つ前記第2の金属酸化物が、セリアを除く希土類及びアルカリ土類金属の酸化物からなる群より選択される、
金属酸化物触媒担体粒子。
【請求項2】
前記第1の金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の金属酸化物触媒担体粒子。
【請求項3】
前記第1の金属酸化物が、アルミナである、請求項1又は2に記載の金属酸化物触媒担体粒子。
【請求項4】
前記第2の金属酸化物が、セリアを除く希土類の酸化物からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物触媒担体粒子。
【請求項5】
前記第2の金属酸化物が、ネオジム、プラセオジム、ランタン、スカンジウム、及びイットリウムの酸化物からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の金属酸化物触媒担体粒子。
【請求項6】
下記のリッチガス及びリーンガスをそれぞれ1分間ごとに切り替えて流通させて1000℃において5時間にわたる耐久を行った後で、15m/g超の比表面積を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の金属酸化物触媒担体粒子:
リッチガス: 一酸化炭素(2体積%) + 窒素(残部)
リーンガス: 酸素(2体積%) + 窒素(残部)。
【請求項7】
前記第1の金属酸化物がアルミナであり、前記第2の金属酸化物が、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムの酸化物からなる群より選択され、且つ下記のリッチガス及びリーンガスをそれぞれ1分間ごとに切り替えて流通させて1000℃において5時間にわたる耐久を行った後で、40m/g超の比表面積を有する、請求項1に記載の金属酸化物触媒担体粒子:
リッチガス: 一酸化炭素(2体積%) + 窒素(残部)
リーンガス: 酸素(2体積%) + 窒素(残部)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の金属酸化物触媒担体粒子が白金を担持してなる、排ガス浄化触媒。
【請求項9】
前記排ガス浄化触媒を、酸素含有酸化雰囲気において500℃以上の温度に加熱することを含む、請求項8に記載の排ガス浄化触媒の再生処理方法。
【請求項10】
前記酸素含有酸化雰囲気における加熱の後で、白金の還元処理を行うことを更に含む、請求項9に記載の排ガス浄化触媒の再生処理方法。
【請求項11】
第1及び第2の金属酸化物を含有し、且つ中心部と外皮部とで異なる組成を有する、金属酸化物触媒担体粒子の製造方法であって、
前記第1の金属酸化物のコロイド粒子と、前記第2の金属酸化物を構成する金属の塩とを少なくとも含有する原料溶液を提供し;
前記原料溶液のpHを、前記第1の金属酸化物のコロイド粒子の等電点に近づけることによって、前記第1の金属酸化物のコロイド粒子を凝集させ;
前記原料溶液のpHを増加させることによって、前記金属塩から、前記第2の金属酸化物のコロイド粒子を析出させ、またこの第2の金属酸化物のコロイド粒子を、凝集した前記第1の金属酸化物のコロイド粒子の周囲に凝集させ、ここで前記第2の金属酸化物のコロイド粒子は、前記第1の金属酸化物のコロイド粒子よりも大きい等電点を有し:そして
得られた凝集物を乾燥及び焼成すること
を含む、金属酸化物触媒担体粒子の製造方法。
【請求項12】
前記第1の金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11に記載の金属酸化物触媒担体粒子の製造方法。
【請求項13】
前記第2の金属酸化物が、セリアを除く希土類及びアルカリ土類金属の酸化物からなる群より選択される、請求項11又は12に記載の金属酸化物触媒担体粒子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−125862(P2011−125862A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20875(P2011−20875)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【分割の表示】特願2006−98730(P2006−98730)の分割
【原出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】