説明

排ガス濃度計測装置

【課題】レーザー光を照射する濃度計測部の流路断面において配管中を流れる高温な排ガスの温度分布を均一にでき、排ガス濃度を精度良く計測することができる排ガス濃度計測装置を提供する。
【解決手段】排ガスを流すための配管と、配管を流れる排ガスにレーザー光を照射する濃度計測部と、濃度計測部よりも排ガスの流れ方向上流側の配管内に設けられて排ガスを混合する排ガス混合手段と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジン等の内燃機関から排出された排ガスに含まれる窒素酸化物、硫黄酸化物、一酸化炭素等の濃度を計測する排ガス濃度計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりとともに自動車のガソリンエンジン等から排出される排ガス中の窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)等の低減が求められている。排ガス中の窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)等を低減するためには排ガスの濃度を精度良く計測してその対策を行うことが必要である。以下、窒素酸化物をNOx、硫黄酸化物をSOx、一酸化炭素をCO、二酸化炭素をCO、メタンをCHという。
【0003】
特許文献1には、配管を流れる流体の流量を微少流量から大流量まで精度良く計測できるマルチ渦流量計が提案されている。これは配管中を流れる被測定流体の流量を計測するため、流体の流れの中に渦発生体を配設して流体の流れを制御し、下流側の渦検出器により流体の流量を計測する方式と、流体温度検出センサと加熱側温度センサとを流体の流れの適切な位置に配置した熱式流量計方式とを組み合わせたマルチ渦流量計である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4158980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のマルチ渦流量計は、配管の流路に被測定流体を通過させる測定管を設け、測定管には感温センサ及び加熱感温センサを保持する温度センサ保持部を一体化したもので流体の流れを制御できるものではあるが、配管の流路断面で流体を均一な温度分布状態にできるものではない。
【0006】
また、排ガス中のCOやCO等の排ガス濃度計測にレーザー光を用いる場合、配管中を流れる均一な温度分布状態の排ガス中にレーザー光を照射する必要がある。
【0007】
一方、配管中を流れる排ガスは高温であり配管壁を通じて外部へ放熱されるために、配管中の任意の流路断面では、排ガスは均一な温度分布状態とはなっていない。このため排ガスの濃度を精度良く計測することが難しいという問題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、レーザー光を照射する濃度計測部の流路断面において配管中を流れる高温な排ガスの温度分布を均一にでき、排ガス濃度を精度良く計測することができる排ガス濃度計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の排ガス濃度計測装置は、排ガスを流すための配管と、配管を流れる排ガスにレーザー光を照射する濃度計測部と、濃度計測部よりも排ガスの流れ方向上流側の配管内に設けられて排ガスを混合する排ガス混合手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、排ガス混合手段により、配管中央部を流れる高温の排ガスと外周部を流れる低温の排ガスとを混合することで、レーザー光を照射する濃度計測部の流路断面において配管を流れる排ガスの温度分布を均一にすることができる。これにより、排ガス中のCOやCO等の排ガス濃度計測にレーザー光を用いる場合、配管中を流れる均一な温度分布状態の排ガス中にレーザー光を照射することが可能となり、排ガス濃度を精度良く計測することができる。
【0011】
本発明の排ガス濃度計測装置の排ガス混合手段は、配管内の中央部を流れる排ガスを遮るように配管中央に設けられた部材であり、部材の中央部は閉じた形状で部材と配管の内壁との間には少なくとも一部分に排ガスを通過させるための隙間を設けることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、配管中央に設けられた部材によって配管中央部を流れる高温の排ガスと外周部を流れる排ガスとを混合することができ、排ガス配管の濃度計測部領域の流路断面の排ガスの温度分布を均一にすることができる。
【0013】
本発明の排ガス濃度計測装置の排ガス混合手段は、円錐形状の部材であり、頂点が排ガスの流れ方向の上流側に向かうことが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、配管中央に設けられた円錐形状の部材によって配管中央部を流れる高温の排ガスと外周部を流れる排ガスとを効率よく混合することができ、排ガス配管の濃度計測部領域の流路断面の排ガスの温度分布を均一にすることができる。
【0015】
本発明の排ガス濃度計測装置の排ガス混合手段の円錐形状の部材は、配管の内径をDとした場合、円錐形状の部材の底面から頂点までの高さHが0以上5×D以下であり、底面と円錐形状の部材の側面とのなす狭角θが0度以上45度以下であり、隙間は0.01×D以上0.2×D以下であることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、配管中央に設けられた円錐形状の部材によって配管中央部を流れる高温の排ガスと外周部を流れる排ガスとを効率よく混合することができ、排ガス配管の濃度計測部領域の流路断面の排ガスの温度分布を均一にすることができる。
【0017】
本発明の排ガス濃度計測装置の排ガス混合手段は、配管の断面内に少なくとも一層以上球状体を並べたものであり、少なくとも一部分に排ガスを通過させるための隙間を設けることが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、配管断面内に並べた球状体によって、配管の内壁近傍を通過する排ガスの温度が加熱されるので、排ガス混合手段を通過した後の排ガスの温度分布を均一にすることができる。
【0019】
本発明の排ガス濃度計測装置の排ガス混合手段の球状体の熱伝導率は、配管の材料の熱伝導率以上であることが、好ましい。
【0020】
この構成によれば、中央部の球状体の温度と外周部の球状体の温度とを同じ温度にすることができるため、排ガス混合手段を通過した後の排ガスの温度分布を均一にすることができる。
【0021】
本発明の排ガス濃度計測装置の排ガス混合手段は、濃度計測部の上流側配管内に少なくとも2つ以上配置されることが、好ましい。
【0022】
この構成によれば、配管中央に設けられた部材や配管断面内に並べた球状体によって、配管中央部を流れる高温の排ガスと外周部を流れる排ガスとを効率よく混合することができ、排ガス配管の濃度計測部領域の流路断面の排ガスの温度分布を均一にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の排ガス濃度計測装置によれば、レーザー光を照射する濃度計測部の流路断面において配管中を流れる高温な排ガスの温度分布を均一にでき、排ガス濃度を精度良く計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本実施例に係る排ガス濃度計測装置の概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例に係る排ガス濃度計測装置の排ガス混合手段を設けた場合の温度分布を説明する図である。
【図3】図3は、従来の排ガス混合手段を設けない場合の温度分布を説明する図である。
【図4】図4は、本実施例に係る排ガス混合手段を複数設けた場合の温度分布を説明する図である。
【図5】図5は、本実施例に係る排ガス混合手段を排ガスの流れの上流側から見た図である。
【図6】図6は、図5のX−X断面図である。
【図7】図7は、本実施例に係る排ガス混合手段を排ガスの流れの上流側から見た図である。
【図8】図8は、図7のX−X断面図である。
【図9】図9は、本実施例に係る排ガス混合手段を排ガスの流れの上流側から見た図である。
【図10】図10は、図9のX−X断面図である。
【図11】図11は、本実施例に係る排ガス混合手段を横から見た図である。
【図12】図12は、本実施例に係る排ガス混合手段の温度計測位置を示す図である。
【図13】図13は、本実施例に係る排ガス混合手段の温度計測の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る排ガス濃度計測装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0026】
以下の実施例では、車両に搭載されたエンジンの排ガス配管中を流れる排ガスを計測する排ガス濃度計測装置を例にして説明するが、これに限ることではない。
【0027】
図1は、本発明の実施例に係る排ガス濃度計測装置の概略構成図である。排ガス濃度計測装置100は、内径Dの排ガス配管2内を排ガスが流体の流れ方向(矢印Yの方向)で流通している排ガス配管2に設置される。この排ガス配管2の濃度計測部50には排ガスの流れ方向に直交して一対のレーザー光透過窓5,6が設けられている。レーザー光透過窓5,6が設けられた濃度計測部50の上流側の配管2内には、排ガスの流れを遮るように排ガス混合手段1が設けられている。レーザー光透過窓5,6の一方側にレーザー光源3を設置し、レーザー光源3の前面のレーザー光路上にコリメータ4を配置し、レーザー光源3に対向する他方側に受光器8を設置し、受光器8の前面のレーザー光路上にコリメータ7を配置している。排ガス濃度計測装置100は、上記の構成となっている。レーザー光は矢印Xの向きでレーザー光源3から受光器8に向けて照射される。レーザー光源3には、レーザー光の波長や強さを変えたりする制御部101と電源103とが接続されている。受光器8側には、レーザー光の強度から排ガス中のNOx、SOx、CO、CO、CH等の濃度を求める演算部102と、排ガス中のNOx、SOx、CO、CO、CH等の濃度を表示するLCDなどの表示部104とが接続されている。制御部101と演算部102とはデータのやり取りをするために接続されている。排ガス配管2の上流側から導入された排ガスは、濃度計測部50を通過して下流側に排出される。上述したように本実施例の排ガス濃度計測装置100は構成されている。以下、排ガス配管2を配管2ということがある。
【0028】
排ガス混合手段1は、図1に示すように、濃度計測部50の上流側の配管2内に設置される部材である。以下、排ガス混合手段1を部材1ともいう。排ガス混合手段である部材1は、中央部は閉じた形状で配管2の内壁との間には少なくとも一部分に排ガスを通過させるための隙間Lを設けてある。部材1は、配管2の中央部に設置され、配管2の中央部を流れる排ガスを遮って配管外周部を流れる排ガスと混合させるものである。図1に示す排ガス混合手段の部材1は、底面から頂角までの高さがH、底面と直交し、かつ頂点を通る平面で切ったときの断面において底面と側面とのなす狭角がθで、排ガスの流れの上流側に向かって錐状にとがった円錐形状をしている。排ガス混合手段である部材1は、排ガス配管2の中央部を遮るように配置される。円錐形状の底面の外周部と配管2内壁との間には隙間Lが設けられている。
【0029】
レーザー光源3は、レーザー発振器により光を増幅してレーザー光を発生させるものである。レーザー光透過窓5,6は排ガス濃度計測に使用する波長のレーザー光が透過するものであれば良く、好ましくは透明であれば良いが、これに限ることではない。
【0030】
コリメータ4、7は、光源を焦点において平行光線を得られるように収差補正するレンズ等である。
【0031】
制御部101は、排ガス濃度計測装置100全体を制御するものである。例えば、制御部101は、レーザー光源3にレーザー光を発生させて排ガスに照射させ、受光器8でレーザー光を受光させるように制御する。制御部101は、受光器8で取得したデータを演算部102へ受け渡すように制御する。
【0032】
演算部102は、レーザー光源3から照射されたレーザー光の受光状態から配管2内を流れる排ガスの濃度データを計測して排ガスの濃度を求める演算部である。電源部103は、排ガス濃度計測装置100全体を駆動するための電源を供給する。表示部104は、演算部102で求められた排ガスの濃度を表示出力する表示部である。
【0033】
図2は、本実施例に係る排ガス濃度計測装置の排ガス混合手段を設けた場合の温度分布を説明する図である。図3は、従来の排ガス混合手段を設けない場合の温度分布を説明する図である。図4は、本実施例に係る排ガス混合手段を複数設けた場合の温度分布を説明する図である。なお図3及び図4は、図2と同様な部分には同じ符号を付し詳細な説明は省略する。
【0034】
本実施例の排ガス混合手段1は、図1に示したように、濃度計測部50の上流側の配管2内に設置される部材1である。排ガス混合手段である部材1は、中央部は閉じた形状で配管2の内壁との間には少なくとも一部分に排ガスを通過させるための隙間Lを設けて配管中央部に固定設置されている。本実施例の部材1は、円錐形状の部材1であり、頂点が排ガスの流れ方向の上流側に向かって設置される。部材1は、配管2の中央部に設置されるので、配管2の中央部を流れる排ガスを遮って配管2外周部を流れる排ガスと混合させるものである。部材1により配管2中央部を流れる高温の排ガスと外周部を流れる排ガスとを効率よく混合することができ、排ガス配管の濃度計測部領域の流路断面の排ガスの温度分布を均一にすることができる。
【0035】
図2及び図3を参照して本実施例の排ガス配管2中を流れる排ガスの流路断面の温度分布について説明する。排ガス配管2は内径Dで、排ガスは矢印Yの方向に流れている。図3において、排ガス配管2内の排ガスの温度分布の概念図を半円10で示すものとする。このとき排ガス配管2の中心Aから径r方向の内壁に向かう軸を径r、中心Aから垂直に上流方向に向かう軸を温度tとする。図3に示すように、排ガス配管2の中央部11を流れる排ガスの温度が一番高く、中央部外側12R,12Lを流れる排ガスの温度は中央部11よりも低くなる。そして外周部13R,13Lを流れる排ガスの温度が最も低くなる。排ガス配管2中を流れる排ガスは、排ガス配管2中心部の温度が最も高く、排ガス配管2内壁に近づくほど配管2内壁を通じて外部へ放熱される。そのために、排ガス配管2の任意の流路断面では、排ガスは均一な温度分布状態とはならないのである。
【0036】
本実施例では、図2に示すように、濃度計測部50の配管2内の上流側には、排ガスの流れを遮るように排ガス混合手段の部材1が設けられている。排ガス配管2中を流れる高温の排ガスは、排ガス混合手段の部材1の上流側では、図3で説明したように、排ガス配管2の中央部11を流れる排ガスの温度が一番高く、中央部外側12R,12Lを流れる排ガスの温度は中央部11よりも低くなる。そして外周部13R,13Lを流れる排ガスの温度が最も低くなっている。この状態で中央部11の高温の排ガスは、排ガス混合手段の部材1により流れの向きを矢印15R,15Lのように変えられる。同じく中央部外側12R,12Lの排ガスも排ガス混合手段の部材1により流れの向きを矢印16R,16Lのように変えられる。この時、中央部11及び中央部外側12R,12Lの排ガスは、外周部13R,13Lを流れる温度が最も低い排ガスと混合されて均一な温度の排ガスとなる。そして均一な温度の排ガスは排ガス混合手段の部材1の下流側にある濃度計測部50を通過することになる。図2において、図3と同様に、排ガス配管2内の排ガスの温度分布の概念図を略半楕円10で示すものとする。このとき排ガス配管2の中心Aから径r方向の内壁に向かう軸を径r、中心Aから垂直に上流方向に向かう軸を温度tとする。図2に示すように、中央部11と中央部外側12R,12Lを流れる排ガスに温度差はほぼ無くなる。外周部13R,13Lを流れる排ガスは排ガス配管2内壁を通じて外部へ放熱されるために中央部11及び中央部外側12R,12Lを流れる排ガスよりも若干温度は低くなるが、排ガス混合手段1のない図3と比較した場合、流路断面の温度分布10は均一に近づくことになる。排ガス混合手段の部材1を濃度計測部50の上流側直近に配置した場合は、排ガス配管2内壁を通じて排ガスの熱が外部へ放熱されることは無視できるほどであるため、濃度計測部50領域において排ガスの流路断面の温度分布10は均一とみなすことができる。
【0037】
このように、本実施例では、排ガス混合手段の部材1を濃度計測部50の上流側の配管2内に排ガス配管2の中央部を遮るように設置するため、排ガス配管2の濃度計測部50領域の流路断面の排ガスの温度分布を均一にすることができる。
【0038】
図4を参照して本実施例の排ガス混合手段を複数設けた場合の温度分布について説明する。排ガス配管2は内径Dで、排ガスは矢印Yの方向に流れている。図4において、排ガス配管2内の排ガスの温度分布の概念図を略長方形10A,10B,10Cで示すものとする。このとき排ガス配管2の中心から径r方向の内壁に向かう軸を径r、中心から垂直に上流方向に向かう軸を温度tとする。図2で説明したように、上流側一番目の排ガス混合手段の部材1aにより、中央部分を流れる排ガスは、外周部分を流れる温度が低い排ガスと混合されてほぼ均一な温度分布10Aとなるが、排ガス配管2内壁近傍は温度が若干低い状態である。二番目の排ガス混合手段の部材1bにより、さらに中央部分を流れる排ガスと外周部分を流れる排ガスとが混合されてさらに均一な温度分布10Bとなるが、排ガス配管2内壁近傍はまだ温度が若干低い状態である。三番目の排ガス混合手段の部材1cにより、さらに中央部分を流れる排ガスと外周部分を流れる排ガスとが混合されるので均一な温度分布10Cとなる。このように、本実施例の排ガス混合手段の部材1を複数設けた場合、濃度計測部50領域において排ガスの流路断面の温度分布を均一とすることが可能となる。
【0039】
次に、図5〜図11を参照して本実施例の排ガス混合手段について詳細に説明する。図5は、本実施例に係る排ガス混合手段1Aを排ガスの流れの上流側から見た図である。図6は、図5のX−X断面図である。図7は、本実施例に係る排ガス混合手段1Bを排ガスの流れの上流側から見た図である。図8は、図7のX−X断面図である。図9は、本実施例に係る排ガス混合手段20を排ガスの流れの上流側から見た図である。図10は、図9のX−X断面図である。図11は、本実施例に係る排ガス濃度計測装置の排ガス混合手段30を横から見た図である。
【0040】
(排ガス混合手段1A)
排ガス混合手段1Aは、図5に示すように、排ガス配管2内壁に少なくとも2つ以上の保持具9を介して、例えば、溶接などにより排ガス配管2内壁に固定設置される。排ガス混合手段1Aの固定方法は排ガス混合手段1A及び保持具9の材質により適宜選択することができる。本実施例の排ガス混合手段1Aは、3つの保持具9により排ガス配管2の内壁に保持されている例を示している。なお保持具9は、排ガスが隙間Lを通過する際に圧力損失(圧損)とならないように上流側から見て幅が狭い方が良い。排ガス混合手段の部材1Aは、図6に示すように、中央部が閉じた、高さがH、底面52と直交し、かつ頂点を通る平面で切ったときの断面において底面52と側面51とのなす狭角がθである円錐形状で、閉じた形状の底面がない傘形状をしたものである。排ガス混合手段の部材1Aと排ガス配管2の内壁との間には少なくとも一部分に排ガスを通過させるための隙間Lを設けてある。例えば、排ガス配管2の内径をDとした場合、排ガス混合手段の部材1Aの高さHは、0×D以上5×D以下であることが好ましい。底面52と側面51とのなす狭角θは、0度以上45度以下であることが好ましい。隙間Lは、0.01×D以上0.2×D以下であることが好ましい。このように排ガス混合手段1Aを構成することで、排ガス配管2中央部11を流れる温度の高い排ガスは、円錐形状の排ガス混合手段の部材1Aにより排ガス配管2内壁側の方向に流れて温度の低い排ガスと混合され、排ガスの温度分布10は均一となる。排ガス混合手段の部材1Aを構成する材料は、例えば、600度程度になる排ガス温度に耐えられる材料であれば良い。好ましくは排ガス成分に腐食されない材料であれば良い。
【0041】
(排ガス混合手段1B)
図7は、図5と同様であるため同じ部分には図5と同様の符号を付し詳細な説明は省略する。排ガス混合手段の部材1Bは、図8に示すように、中央部が閉じた、高さがH、底面54と直交し、かつ頂点を通る平面で切ったときの断面において底面54と側面53とのなす狭角がθである円錐形状をしたもので、底面54が閉じた形状である。排ガス混合手段の部材1Bと排ガス配管2の内壁との間には少なくとも一部分に排ガスを通過させるための隙間Lを設けてある。例えば、排ガス配管2の内径をDとした場合、排ガス混合手段の部材1Bの高さHは、0×D以上5×D以下であることが好ましい。底面54と側面53とのなす狭角θは、0度以上45度以下であることが好ましい。隙間Lは、0.01×D以上0.2×D以下であることが好ましい。このように排ガス混合手段1Aを構成することで、排ガス配管2中央部11を流れる温度の高い排ガスは、円錐形状の排ガス混合手段1Bにより排ガス配管2内壁側の方向に流れて温度の低い排ガスと混合され、排ガスの温度分布10は均一となる。排ガス混合手段の部材1Bを構成する材料は、例えば、600度程度になる排ガス温度に耐えられる材料であれば良い。好ましくは排ガス成分に腐食されない材料であれば良い。
【0042】
(排ガス混合手段20)
排ガス混合手段20は、図9に示すように、排ガス配管2内壁に少なくとも2つ以上の保持具9を介して、例えば、溶接などにより排ガス配管2内壁に固定設置される。排ガス混合手段20の固定方法は排ガス混合手段の部材20及び保持具9の材質により適宜選択することができる。本実施例の排ガス混合手段20は、3つの保持具9により排ガス配管2の内壁に保持されている例が示されている。排ガス混合手段の部材1Aとの違いは、排ガス混合手段20の円錐形状の外周部が排ガス配管2内壁まで延びていることである。排ガス混合手段の部材20は、さらに排ガスを通過させるための隙間Lが多数の直径Lの円21で構成されている。なお隙間Lを構成するのは直径Lの円に限ることはなく、辺の長さLの多角形等、スリット状、メッシュ状など各々の開口形状が適用できる。図10に示すように、排ガス混合手段の部材20の形状は、図6に示した排ガス混合手段1Aと同様であり、中央部が閉じた、高さがH、底面56と直交し、かつ頂点を通る平面で切ったときの断面において底面56と側面55とのなす狭角がθである円錐形状で、閉じた形状の底面がない傘形状をしたものである。例えば、排ガス配管2の内径をDとした場合、排ガス混合手段の部材20の高さHは、0×D以上5×D以下であることが好ましい。底面56と側面55とのなす狭角θは、0度以上45度以下であることが好ましい。隙間L(円の直径L)は、0.01×D以上0.2×D以下であることが好ましい。このように排ガス混合手段20を構成することで、排ガス配管2中央部11を流れる温度の高い排ガスは、円錐形状の排ガス混合手段の部材20により排ガス配管2内壁側の方向に流れて温度の低い排ガスと混合され、排ガスの温度分布10は均一となる。排ガス混合手段の部材20を構成する材料は、例えば、600度程度になる排ガス温度に耐えられる材料であれば良い。好ましくは排ガス成分に腐食されない材料であれば良い。
【0043】
(排ガス混合手段30)
排ガス混合手段30は、図11に示すように、排ガス配管2内に排ガスの流れを遮るように排ガス配管2の径r方向に少なくとも1層以上球状体36を密に並べたものであり、例えば、球状体36Rと球状体36Lとの間を排ガスが通過できるようになっている。図11では、球状体36を4層並べて充填した例を示している。排ガス混合手段30は、球状体36を保持具35、例えば、円筒形状で上下面がメッシュ状のカゴ35に充填して保持し、球状体36を充填した円筒形状で上下面がメッシュ状のカゴ35は少なくとも2カ所以上溶接などにより排ガス配管2内壁に固定設置される。排ガス混合手段30の固定方法は排ガス混合手段30の球状体36及び保持具35の材質により適宜選択することができる。球状体36が多層に並べられた球状体36充填層の高さはHである。例えば、排ガス配管2の内径をDとした場合、排ガス混合手段30の高さHは、0×D以上5×D以下であることが好ましい。球状体の直径は排ガスが充填層を通過する際の圧力損失(圧損)が高くならないように排ガス配管2の内径Dに対して適宜選択することができる。球状体36及び保持具35の材料は、例えば、600度程度になる排ガス温度に耐えられる材料であれば良い。また好ましくは排ガス成分に腐食されない材料であれば良い。球状体36の熱伝導率は、排ガスの熱を効率よく吸収するために排ガス配管2の材料と同等もしくは、それ以上であることが好ましい。
【0044】
次に、本実施例の排ガス混合手段30の作用について説明する。排ガス配管2は内径Dで、排ガスは流体の流れ方向(矢印Yの方向)に流れている。図11において、本実施例の排ガス配管2内の排ガスの温度分布の概念図は略長方形10で示される。このとき排ガス配管2の中心Aから径r方向の内壁に向かう軸を径r、中心Aから垂直に上流方向に向かう軸を温度tとする。図3で説明したように、排ガス混合手段30の上流側では、排ガス配管2の中央部11を流れる排ガスの温度が一番高く、中央部外側12R,12Lを流れる排ガスの温度は中央部11よりも低くなる。そして外周部13R,13Lを流れる排ガスの温度が最も低くなっている。この状態で、本実施例の排ガス混合手段30の1層目の球状体36の層に排ガスが接触すると、例えば中央部11の球状体36R,36Lは一番高い温度に加熱される。中央部外側12R,12Lの球状体36の温度は中央部11よりも低く、外周部13R,13Lの球状体36の温度が最も低くなっている。球状体36の熱伝導率は、排ガス配管2の熱伝導率と同等もしくは、それ以上の材料であるので、排ガスの熱を効率よく吸収すると共に、例えば、中央部11の球状体36R,36Lと接している隣の球状体36に矢印31R,31Lで示すように熱が順次伝わっていく。そして中央部11の球状体36の温度と外周部13R,13Lの球状体36の温度とが同じとなる。同様に2層目の球状体36も矢印32R,32Lで示すように熱が順次、外周部の球状体36に伝わっていき、2層目の球状体36の温度は同じとなる。3層目、4層目も同様である。中央部11から外周部13R,13Lまでの球状体36は同じ温度となり、球状体36の外周部13R,13Lの位置を通過する排ガスの温度は球状体36によって加熱されるので、本実施例の排ガス混合手段30を通過した後の排ガスの温度分布10は均一となる。このように排ガス混合手段30を構成することで、濃度計測部50領域において排ガスの流路断面の温度分布10を均一とすることが可能となる。
【0045】
次に、図12および図13を参照して、本実施例の排ガス混合手段を適用して温度分布を計測した結果について説明する。図12は、温度計測位置を示す図である。図13は、温度計測の結果を示す図である。
【0046】
図12において、無設置は、従来の排ガス混合手段を設けない場合の温度計測位置である。温度計測位置は、排ガス配管2の径r方向の中心位置41、中心位置41から内壁方向に向かって約半分の位置42、内壁近傍の位置43の3カ所である。円錐形状は、本実施例の排ガス混合手段1Aの場合の温度計測位置である。温度計測位置は、排ガス配管2の径r方向の中心位置44、中心位置44から内壁方向に向かって約半分の位置45、内壁近傍の位置46の3カ所である。充填層は、本実施例の排ガス混合手段30の場合の温度計測位置である。温度計測位置は、排ガス配管2の径r方向の中心位置47、中心位置47から内壁方向に向かって約半分の位置48、内壁近傍の位置49の3カ所である。
【0047】
図13は、横軸は図12で示した温度計測位置を排ガス配管2の径r方向の中心位置から配管2内壁までの距離を1.0とした場合の相対比で表している。縦軸は各中心位置41,44,47で計測された温度を1.0とした場合の各計測位置での温度を相対比で表している。従来の排ガス混合手段を設けない無設置では、内壁近傍の位置43の温度は、中心位置41と比較して約40%程度温度が低下している。円錐形状の排ガス混合手段1Aを設けた場合では、位置45では温度の低下がほとんどなく、内壁近傍46では約10%程度の温度の低下である。充填層の排ガス混合手段30では、位置48では若干温度の低下があるが、内壁近傍46では逆に温度が若干高くなっている。以上の温度計測結果から、本実施例の排ガス濃度計測装置の排ガス混合手段は、濃度計測部50領域において排ガスの流路断面の温度分布10を均一とする効果があることが明らかとなった。
【0048】
以上、上述したように本実施例によれば、排ガス混合手段を設けることにより、レーザー光を照射する濃度計測部領域の流路断面において配管中を流れる高温な排ガスの温度分布を均一にすることができる。これにより、排ガス中のNOx、SOx、CO、CO、CH等の排ガス濃度計測にレーザー光を用いる場合、配管中を流れる均一な温度分布状態の排ガス中にレーザー光を照射することが可能となり、排ガス濃度を精度良く計測することができる。
【0049】
なお上述した排ガス濃度計測装置は、車両に搭載されたエンジンの排ガス配管中を流れる排ガスを計測する例で説明したが、これに限ることはなく、ガソリンエンジン等の内燃機関の排ガスに対して適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1、20、30 排ガス混合手段(部材)
2 排ガス配管
3 レーザー光源
4、7 コリメータ
5、6 レーザー光透過窓
8 受光器
9 保持具
10 温度分布
11 中央部
12R、12L 中央部外側
13R、13L 外周部
36 球状体
41、42、43 温度計測位置
50 濃度計測部
51、53、55 側面
52、54、56 底面
100 排ガス濃度計測装置
101 制御部
102 演算部
103 電源
104 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを流すための配管と、
前記配管を流れる排ガスにレーザー光を照射する濃度計測部と、
前記濃度計測部よりも前記排ガスの流れ方向上流側の前記配管内に設けられて前記排ガスを混合する排ガス混合手段と、
を含むことを特徴とする排ガス濃度計測装置。
【請求項2】
前記排ガス混合手段は、前記配管内の中央部を流れる前記排ガスを遮るように前記配管中央に設けられた部材であり、前記部材の中央部は閉じた形状で前記部材と前記配管の内壁との間には少なくとも一部分に前記排ガスを通過させるための隙間を設けることを特徴とする請求項1に記載の排ガス濃度計測装置。
【請求項3】
前記排ガス混合手段は、円錐形状の部材であり、頂点が前記排ガスの流れ方向の上流側に向かうことを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス濃度計測装置。
【請求項4】
前記排ガス混合手段は、前記配管の内径をDとした場合、前記円錐形状の部材の底面から頂点までの高さHが0以上5×D以下であり、前記底面と前記円錐形状の部材の側面とのなす狭角θが0度以上45度以下であり、前記隙間は0.01×D以上0.2×D以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の排ガス濃度計測装置。
【請求項5】
前記排ガス混合手段は、前記配管の断面内に少なくとも一層以上球状体を並べたものであり、少なくとも一部分に前記排ガスを通過させるための隙間を設けることを特徴とする請求項1に記載の排ガス濃度計測装置。
【請求項6】
前記球状体の熱伝導率は、前記配管の材料の熱伝導率以上であることを特徴とする請求項5に記載の排ガス濃度計測装置。
【請求項7】
前記排ガス混合手段は、前記濃度計測部の上流側配管内に少なくとも2つ以上配置されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の排ガス濃度計測装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−168131(P2012−168131A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31452(P2011−31452)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】