排出物質浄化用途のための強化されたレドックスOS材料のための塩基性交換
酸素イオン伝導体(OIC)/酸素貯蔵(OS)材料、より詳しくは安定な立方晶結晶構造を有するOIC/OSが開示され、塩基性(アルカリ性)の交換法による非貴金属の後合成的な導入によるOIC/OSの触媒的性質を促進する方法及び車排気浄化のための前記材料の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論及び背景
酸素貯蔵(OS)材料は、例えば、セリア−ジルコニア(CeO2−ZrO2)固溶体をベースとする周知の固体電解質である。それらは、ガソリン車用の後処理触媒の普遍的な成分であって、それらは局所的な燃料リッチ(還元)又は燃料リーン(酸化)条件に対し、前記触媒中の活性成分を緩衝することができる。OS材料はこの緩衝を、酸素の減損した過渡状態(transients)下にそれらの3D構造から活性酸素を急速かつ再現性のある手法で放出し、酸素に富む条件が生じる際に気相からの吸着によるこの‘失われた’酸素を再生することにより、行う。この還元−酸化(以下、レドックス)化学は、Ce4+←→Ce3+レドックス対に起因するものであり、その際に、Ceの酸化状態は局所的なO2含量に依存している。酸素のこの高い利用可能性は、包括的な酸化/還元化学、例えばガソリン三元触媒のためのCO/NO化学の促進にとって、又はより最近には、例えばUS2005 0282698 A1の触媒ディーゼル微粒子捕集フィルター(CDPF)における粒子状物質(すす)の直接接触酸化にとって重要である。
【0002】
従って、Ce−ZrをベースとするOS材料の化学、合成、修飾(modification)及び最適化について広範に研究されている。例えば、排出物質浄化用途(emission control applications)のためのより低い原子価のイオンでドープされたセリア−ジルコニア材料の使用は、例えばUS 6,468,941、US 6,585,944及びUS2005 0282698 A1において広範に研究されている。これらの研究は、より低い原子価のドーパントイオン、例えば希土類金属、例えばY、La、Nd、Pr等、遷移金属、例えばFe、Co、Cu等又はアルカリ土類金属、例えばSr、Ca及びMgが全て、酸素イオン伝導率に有利な影響を及ぼすことができることを証明している。これは、前記固溶体の立方晶格子内部での酸素空位の形成から生じることが提唱され、前記固溶体は前記結晶バルクから前記表面への酸素イオン輸送に対するエネルギー障壁を低下させ、それにより、前記固溶体の、典型的なガソリン(三元)触媒用途の排気流中に生じる空気燃料過渡状態を緩衝する能力を高める。
【0003】
加えて、上記のドーパントの特殊な例の使用が、セリア−ジルコニア固溶体の好ましい立方晶蛍石格子構造の完全な安定化を提供できることが示されており(US 6,468,941及びUS 6,585,944)、その際にYが特別な利点を有することが確認されている。好ましい立方晶蛍石構造の存在は、前記結晶の表面及びバルクの双方からの、Ce4+←→Ce3+についての最も平易なレドックス化学と相関することが見出されており、故に、バルクCeO2と比較して、酸素貯蔵及び放出容量を劇的に増加させる。この利点は特に強調される、それというのも、前記材料は、典型的な排気環境中に存在する極端な水熱状態のために結晶成長/焼結を受けるからである。殊にY及びより少ない程度でのLa及びPrの組み込みは、単一の立方晶相セリア−ジルコニアをよりCeに富む立方晶相及びよりZrに富む正方晶相からなる複合体へ不均化するのを制限するか又は特定の場合には回避する(circumvent)ことも証明されており、前記固溶体のレドックス機能、表面積等の顕著な減少をまねく方法である。
【0004】
最後に、US 6,468,941及びUS 6,585,944には、Ceのレドックス化学を促進するための選択的な手段として、塩基、すなわち非貴金属族(non-precious group)(Pt、Pd、Rh、Au等)のドーパント金属を前記固溶体の立方晶蛍石格子中へ使用する可能性が教示されており、その際にFe、Ni、Co、Cu、Ag、Mn、Bi及びこれらの元素の混合物が、特に興味深いことが確認されている。従って、促進されないOS材料は典型的には、H2温度プログラムされた還元(TPR)により測定される、約600℃でレドックス極大値を示すのに対し、前記格子内部での卑金属の混入は、貴金属の使用によりコストを一部被るだけで、この温度を>200℃又はそれ以上減少させることができる。
【0005】
しかしながら、これらの卑金属は、前記CeZrOx格子中に有利に組み込まれることができ、かつこの組み込みが、新鮮な材料の低温レドックス機能を有意に促進することができる一方で、これらの元素の添加はまた、新鮮な相純度及びエージングされた相純度を減少させることができ、かつ水熱耐久性を有意に減少させることができ(結晶焼結及び材料緻密化を促進することができる)、その際に付加的な卑金属なしでのベース組成物に比べて、エージングされたものの性能の損失をまねく。そのうえ、通常のエージングサイクルの間に、気相とCeZr材料との間で反応が起こるかも知れず、これはこれらの付加的なベース元素の、立方晶蛍石格子からの抽出をまねきうる。これはそしてまた、低い固有触媒活性を有する別個の(複数の)バルク相の形成をまねきうるか、又は最悪のシナリオの場合に、前記OS又は他の触媒成分と直接相互作用する相が、前記触媒の直接又は間接の被毒をまねく。
【0006】
故に、前記の材料は、それらの範囲が潜在的に制限される。例えば、より低い原子価のイオンは、固溶体の合成において成功裏に組み込まれうる一方で、これは、前記合成の注意深い制御によりかつ最終組成の特殊な制限内で達成されることができるに過ぎない。これは、生じた化合物の電気的中性及び好ましい立方晶蛍石単相構造の保存の双方を保証するのに必要である。従って、例えば、高いCe(>50mol%)及び/又は低いZr(<30mol%)含量を有する立方晶蛍石構造中へ‘ドープされた’特殊な低い価数の卑金属助触媒を含有するOS材料の合成は、平易ではなく、かつ前記合成が、性能の顕著な減少を伴う、Ceに富みかつCeに乏しいドメインへ不均化する材料をまねく有意な可能性がある。
【0007】
類似して、前記固溶体の最終的な電気的‘チャージ’を釣り合わせることが大いに配慮されなければならず、従って、前記立方晶格子中のNb5+の組み込みは達成されうるかも知れないが、しかし4+の全カチオンチャージの釣り合いを保存するために等モル量のY3+の導入によってのみ可能である。また、局所的な結晶構造内部でのNb/Y含量のいずれの不釣り合い又は不均一性は、望ましくなく、かつUS 6,605,264に概説されたように、必要とされるレドックス機能の最終的な損失を伴う、相安定性及び純度問題をまねきうる。
【0008】
低い価数の卑金属イオンを立方晶蛍石格子内部に導入することのさらに及びことによるとより有意な欠点は、前記イオンが前記結晶構造のバルクを通して分散されることであり、ひいては前記イオンの表面濃度が極めて低いかも知れないことである。これはそしてまた、排気環境と直接相互作用するドーパントイオンの程度を制限する。故に、Sr、Ca及びMg等を前記立方晶格子中へドープすることが可能である一方で、付加的な化学的官能性を、例えばNO及びNO2の一時的な吸着を提供するためのNOxトラップとして、提供するこれらのイオンの能力は、前記結晶の表面及び内層面(subsurface)のそばの中の前記イオンの利用可能な濃度により制限される。
【0009】
当工業界において必要とされるのは、いずれの実際のCe含量について平易でかつ高い酸素貯蔵及び酸素イオン伝導率の性質を有する安定なOIC/OS材料である。さらに、組成のより大きな自由度は、耐久性及び活性が減少されるという現在のペナルティーなしで、必要とされる。最後に、これらの強化が実現される手法は、最大処理量について最小限の処理段階を用いて、平易であり、かつ堅牢(robust)であるべきである。
【0010】
発明の要約
実質的に純相の(phase pure)立方晶蛍石構造を含有するZrO2/CeO2固溶体をベースとする酸素貯蔵(OS)材料の性能の有意な改善は、塩基、すなわち非貴金属族の金属の特殊なイオン交換により達成されることができる。本明細書に記載されるイオン交換法は、化学的に塩基性の、すなわち高いpHの条件、いわゆる高いOH-/低いヒドロニウム(H3O+)又はプロトン(H+)含量下に、実施される。前記塩基性イオン交換法は、ばらばらの後合成的な修飾であり、ひいては以前の研究(US 6,468,941及びUS 6,585,944)に記載された従来の直接合成法に比較して、組成、ドーパントイオンタイプ及び濃度の顕著により高い自由度を提供する。生じた材料は、試験されて全てのエージング条件下で、高い活性及び水熱耐久性を証明している。これは、酸性金属、例えば金属硝酸塩の通常の含浸により実現されうる促進とは異なっており、通常の場合に新鮮な材料中のバルク酸化物相の形成及びそのような酸化物相の生じる失活を伴う急速焼結が普通である。故に、開発された方法は、安定でかつ高度に活性なOS材料の幅広くかつ新規な範囲の材料を提供し、前記材料は、ガソリン車及びディーゼル車の双方のための排出物質浄化用途の幅広い範囲に有利に適用されることができる。さらに、本発明の方法は、付加的な触媒機能、例えばリーンNOx制御を組み込む又は高めるための特殊な化学的相乗効果を導入する卑金属促進剤(promotant)の選択及びテーラー化を可能にする。
【0011】
とりわけ、高いレドックス活性は、提唱されるが、理論により結びつけられることが望まれているものではない、全てのOS材料内部に存在する既存のCe−OHヒドロキシル欠陥サイトの塩基性/アルカリ性の交換を包含する機構による、Ce−ZrOxをベースとする固溶体の修飾により得られることができる。前記Ce−OHサイトは、前記格子内部でのCe3+欠陥サイトで生じると考えられており、その際に前記ヒドロキシル基のプロトンの存在は、前記格子の電気的中性の要件である。金属イオンによる前記H+原子の提唱される交換は、前記酸化物マトリックス内部での極めて高い分散(原子レベルの分散に近づくことができる)の特殊な一価の(例えばK+)、二価の(例えばCu2+)、三価の(例えばFe3+)及びより高い原子価のイオンの組み込み及び安定化を可能にする。このようにして前記混合酸化物内部で組み込まれるべき卑金属の選択は付加的に、殊に興味深いか又は触媒的に重要である反応にとって活性であることが知られた酸化物をベースとすることができる。例は、これらに限定されるものではないが、すすの直接接触酸化、低温SCR(尿素、NH3又は炭化水素による選択接触還元)、NOxトラップ、低温CO−NO又はCO−O2反応助触媒、炭化水素クラッキング機能(例えば前記OSの酸性度を増加させることによる)等を含む。これらの例に適切な金属は、Ag、Cu、Co、Mn、Fe、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属、又は車排気の通常の操作窓内の条件下でその後の分解及びN2還元を受けることができる安定な硝酸塩を形成することが知られた他の金属又はメタロイドを含む。"遷移金属"という用語は、元素の周期表の3〜12族の38元素を意味する。
【0012】
この分野の以前の開発は、米国特許第6,585,944号及び同6,468,941号明細書に記載されているが、けれどもこれらの特許において、Ce−ZrO2系は、他の触媒活性イオンが通常の合成法の意図的な修飾において導入されるホストマトリックスとして、使用される。このようにして活性イオンの組み込みは、成功する一方で、導入されうるドーパントのタイプ並びに前記格子内部でのそれらの濃度、すなわち前記OS材料の最適なレドックス特性を提供することが知られた実質的に純相の好ましい立方晶蛍石構造をなお提供する固体中の最大‘溶解度’に特殊な制限を課する。対照的に本発明において、前記促進剤の会合は、後合成を、理論により結びつけられることが望まれるものではないが、特殊なイオン交換機構を介して起こし、その際に前記イオンは、いずれの十分定義され、かつ特有のカチオン位置ではなく、前記Ce3+−OH欠陥に付随されるサイトの範囲内で、こうして導入され、かつ組み込まれる。従って、本発明の方法は、卑金属イオン/酸化物成分のより高い濃度の導入を可能にする、それというのも、負荷(loading)は、相純度の十分定義された混合酸化物マトリックス内部でのその溶解度により制限されないからである。逆に、効果的な促進剤の負荷は、前記格子内部での構造的ヒドロキシルの濃度により制限される、それというのも、これらのヒドロキシルは典型的には、初晶の点欠陥又は表面終端に付随されるからである。
【0013】
本明細書において、ZrOx、Zr−CeOx及びZr−Ce−REOx(RE=希土類)の、それらの証明された水熱耐久性を有する結晶構造の好都合な構造的なマトリックスが利用され、それらの結晶構造中へ(レドックス)活性な金属イオンが、高い(原子)分散を有して、それらのレドックス機能に不利な影響を及ぼすことなく、分散されることができる。実際に、本方法による含まれる例に示されているように、OS材料の通常のレドックス特性の劇的でかつ耐久性の促進を達成することができる。この思想への類似は、前記ZrO2マトリックスへのCe4+の添加である。例えば、COの接触酸化におけるCeの役割は次のようにそのレドックス活性に基づいている:Ce3++O2→O2-+Ce4+、引き続き前記O2-アニオンがCO(NO)と反応してCO3(NO3)を得て、その後CO2(NO2)及びO-に分解し、かつ最終的にCe3+を再生する。この反応サイクルは、純CeO2上で起こることができ、かつCe4+←→Ce3+レドックスサイクルの性質/エネルギー障壁は、TPR(温度プログラムされた還元)を用いて350〜600℃での表面CeO2についての還元ピークで調べることができる。バルクCeO2は、これらの温度で還元されず、前記CeO2の結晶格子は、より大きなCe3+イオンの形成を受け入れることができず、ひいては電気的中性を保存するための前記バルクから離れるO移動は起こることができない。しかしながら、Ce4+イオンがZrO2格子中へ分散される場合に、Ce4+のレドックス活性は、不利な影響を受けないが、しかし実際に、主にCe4+イオン自体の固有の化学/還元能の修飾を通じてではなく、しかしより幾何学的な機構により大いに高められ、その場合に上記で注目したように全てのCe4+イオンが目下近づくことができる。さらに、ZrO2マトリックスの存在は、前記材料を表面積損失、クリスタリット成長及び多孔度の損失から大いに安定化させる。ZrO2は、Ce4+を、CO2及びSO2のような酸性排気成分を有する望ましくない安定な化合物の形成から、CeO2に対するZrO2の固有酸性度のために、阻害するか又は保護することもできる。
【0014】
これらの通常のCeO2対Ce−ZrO2系への類似により、(レドックス)活性な元素を用いて、イオン交換による特殊な強い会合を通じて構成されることができる類似した有利でかつ相乗的な系を目下提供する。故に、本発明は、排ガスの処理用のOIC/OSホスト材料を製造する方法に関するものであり、前記方法は、通常のXRDにより測定される実質的に立方晶の蛍石Ce−ZrOx材料の固溶体を形成させ、卑金属元素を前記材料へ、前記のCe−ZrOx材料中の既存のヒドロキシルサイトを交換することにより高いpH条件下で導入して、それにより前記の卑金属元素を前記Ce−ZrOx材料内部で高分散で組み込み、かつ安定化させることを特徴とする。
【0015】
本発明のCe−ZrOx材料は、前記材料中の金属成分100mol%を基準として、ジルコニウム約0.5〜約95mol%、セリウム約0.5〜約90mol%、及び場合によりR 約0.1〜約20mol%を有するOIC/OS材料であり、ここでRは、(複数の)希土類金属、(複数の)アルカリ土類金属、及び前記のものの少なくとも1つを含んでなる組合せからなる群から選択される。
【0016】
さらなる態様において、前記Ce−ZrOx材料は、前記材料100mol%を基準として、ジルコニウム約95mol%まで;セリウム約90mol%まで;標準的な周期表において希土類として定義される群から選択される安定剤、及び前記安定剤の少なくとも1つを含んでなるその組合せ約25mol%までを含んでなるOIC/OS材料である。
【0017】
本発明の方法を実施するにあたり、前記塩基、すなわち非貴金属族の金属元素は、例えば8.0〜9.5のような高いpHを有する、アルカリ性溶液として、例えばアンモニア性溶液(水酸化アンモニウムベースの溶液)として調製される。前記卑金属は、遷移金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択されるメンバーであることができる。選択的に、前記卑金属元素は、安定なアンモニア性卑金属溶液が調製されることができない場合にも、有機アミンとの卑金属錯体として導入されることもできる。
【0018】
本明細書で定義される前記卑金属の溶液及びCe−ZrOx固体材料は、一緒に混合されて湿った粉末又はペーストが形成される。乾燥後に、前記混合物はついでか焼される。
【0019】
任意の工程として、白金/貴金属族金属は、前記OIC/OS材料に常法で添加されることができる。
【0020】
本発明の利点及び特徴は、次のものを含む:
a)高められた低温反応性及び卓越した水熱耐久性を有するOS材料を提供する;
b)例えばNOxトラップ/SCR等のようなイオン交換された吸着原子の活性及び補助的な触媒機能を損なわない;
c)高められた安定性、より高い分散、ひいては前記レドックス活性な元素にガス状反応物がより近寄りやすくなることによる、改善された性能;
d)所望の構造的な及び組織的な性質、例えば単相の立方晶系、高くかつ耐久性の細孔容積及びSA(表面積)のメソ孔系を有する予備形成されたOS材料の利点、ひいては後修飾の付随された性能の利点をさらに高める;
e)格子パラメーター、相純度、欠陥密度、表面酸性度、塩基性度、等の最小限の損傷を伴う、化学修飾のより大きな自由度
f)特殊な用途に"合わせられた"特性及び性質を有する仕立てられたテーラー化されかつ約束された(bespoke)材料の範囲を製造するための、包括的な既存の商業的な材料のための特殊な後修飾法を提供する。
【0021】
この戦略は、上記で概説された目標の範囲を達成することを試みるために高価な貴金属ドープを典型的には使用する、従来のOS材料合成において使用されるものとは、対照的である。
【0022】
この戦略は殊に有利である、それというのも、従来のOS材料は、多様な制限を有することが知られているからである。
【0023】
第一に、二元系、三元系又はそれどころか四元系のCe−Zr−REOx系を用いて通常得られるものよりも、より低い温度での増加されたセリア還元能の要件がある。これらの材料は典型的には、約600℃でH2温度プログラムされた還元(TPR)により測定されるレドックス極大値を示す。これは、前記OS材料が、極大の"緩衝作用"又は酸素供与の利点を提供するように、本明細書において高い排ガス/反応温度のための要件を課する。この温度の問題を取り扱うために、OS材料は、貴金属族金属(PGM)成分、例えばPt、Pd又はRhの添加により典型的には"促進される"。しかしながら、これらの金属による促進は、排出物質浄化装置の価格に極めて有意な付加的コストを付与する。
【0024】
第二に、これまで使用される典型的なOS材料は、それらの全酸素貯蔵容量、いわゆるTPRにより測定される利用可能な酸素の量に関して制限が存在し、前記OS材料の全Ce IV含量の考慮から期待されるものよりも典型的に低い。これまで利用可能な多くのデータは、還元を受ける利用可能な全Ce IVの約50%に過ぎない少なさで一致している。この時点で、これが、基本的な問題のためかどうか、又は混合Ce IV/Ce III原子価をもたらす前記OS材料の製造において使用される現行の(複数の)合成法を用いる制限のためかどうか、又は付加的な、化学的、構造的又は組織的な制限の組合せが原因となるかどうかは、不確実である。
【0025】
最後に、典型的なOS材料は、前記排出物質浄化装置への付加的な相乗効果があるにしても、制限されて提供されるに過ぎない。他でも記載されるように、理想的な材料成分は、付加的な一体化された化学的な機構を提供して、排出物質浄化、例えばNOx捕捉を強化し、かつN2への還元をさらに高める。
【0026】
従って、OS材料が、高度に活性でかつ耐久性の車排気排出物質系を実現する鍵成分であるのに対し、既存の合成法及び材料は、より新しくかつそれどころかより厳重な排出物質照準に従うことが必要とされる次世代の排気触媒の開発に有意な限定が存在する。必要とされることは、より低い温度、殊に車の用途のコールドスタート部分で触媒機能を促進するために活性である新しい種類のOS材料である。これらのOS材料は、高い水熱耐久性も示すべきであり、かつ要求の厳しい排気環境の幅広い範囲内でのそれらの使用を可能にするために潜在的な排気毒に対して耐性があるべきである。
【0027】
前記の及び他の特徴は、当業者により、次の詳細な説明、図面、及び添付された特許請求の範囲から認識され、かつ理解される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】新規に合成されたOS材料からの正規化された質量損失応答対その、H2 TPRからのその後のH2取込み(uptake)応答を比較する図。データは、レドックス活性の開始時の質量損失特徴(約450℃でのピーク)間の相関を示している。
【図2】検出器として質量分析計を用いて実施されるCO TPR実験を示す図。温度上昇の間に、前記OSの活性酸素によるCOの酸化からのCO2の製造の開始は、前記OSからの水発生/脱着のピークと相関することがわかる。水発生は、2×Ce3+−OH欠陥サイトの脱ヒドロキシル化に起因するものであり、その際にH2O及び前記OS格子内部の酸素空位のその後の発生を伴う。これらの酸素空位の形成は、前記OSがレドックス活性であることを可能にするためにバルクから表面への酸素イオン輸送を可能にするのに必要とされる。
【図3】2%銀(Ag)の塩基性イオン交換による後合成修飾によるCeZrLaPrO2 OS(OS1)のH2 TPR特性の劇的な促進を示す図。理論により結びつけられることが望まれるものではないが、この利点が、AgによるCe3+−OHのプロトンの交換から、前記材料の酸素イオン伝導率の生じた促進を伴って、生じることが論じられる。これは、図1及び2に図示された脱ヒドロキシル化(及び格子空位のその後の発生)現象の脱離に起因するものであり、この現象はレドックス活性になるための前記結晶格子のバルクの活性化の要件であるように思われる。この促進の程度は、PGM、例えばPtの含浸について、しかしコストの一部で注目されるものに匹敵しうる。
【図4】1%Cuの後合成の塩基性交換の前後の第二のCeZrLaPrO2混合酸化物(OS2)のH2 TPR性能を比較する図。銅(Cu)の組み込みは、前記OSのレドックスの性質の劇的な促進をもたらし、その際に約575℃でレドックス極大値を示す交換されない材料と比較して、交換された材料はT<300℃で高いレドックス機能を示す。
【図5】前記OS2のレドックス性能への交換されたCu 負荷対2.21% CuO−SiO2参考粉末との活性の影響を図示する図。全ての場合に、レドックス活性の劇的な強化が観察され、その際にCuの増加しているレベルは、225〜250℃で中心となる大きなレドックス特徴の増加をもたらす。このより高い温度ピークは、CuO−SiO2との比較によりわかるように、バルクCuOにより類似しているレドックス特徴を有するCuO集合(ensembles)に起因する。しかしながら、データはまた、前記OS及び前記ドーパントイオンのレドックス化学の相乗的な結合を確認する。
【図6】OS2のレドックス性能への、低いが、しかし増加しているレベルのコバルト(Co)イオン交換の影響を証明する図。利点/低下されたレドックス温度は、Coレベルについて0.02%質量%の低さであることがわかり、かつ前記促進は、0.1及び1%で続き、その際に後者はピークレドックスについての温度の約150℃の低下を示している。
【図7】レドックスの性質の強化が、鉄(Fe)を使用して達成されることもできることを確認する図(7a)。この場合に、CeZrLaYO2(OS3)の性能は、2.5又は5%のいずれかでのFeの組み込みにより劇的な促進を受ける。この例において、しかしながら、ばらばらのFe2O3の形成についてのいくつかの証拠がある(>650℃でのレドックスピーク)。2.5%交換Fe−OS3対、US 6,585,944 B1に記載されたのと類似の手法で商業的な供給業者により調製された類似の組成物の比較が、交換されたOS3について匹敵しうる性能をさらに示す(図7b)。むしろ、有意により簡素な方法により調製された、交換された試料は、レドックス特性の小さな改善を示し、その際に意図的な合成法により調製された試料についてのそれよりも約40℃低いCe還元極大値を有する。
【図8】2.5%Cu交換OS2材料の水熱耐久性を表す図。この試料は、2つのエージングサイクル、第一が800℃/10%蒸気/空気で6h(ディーゼル後処理用途に関連したエージング条件)及び第二が1100℃/乾燥空気で6h(ガソリンエージングを模倣するため)にかけられた。双方のエージングサイクル後に、低温レドックス特徴は、極めて過酷な1100℃エージング後でさえも、維持される。これは、交換されたカチオンと前記OS格子との間の強い相互作用と一致している。
【図9】Cu交換OS2の詳細なX線回折(XRD)キャラクタリゼーション研究を、Cu負荷の関数として及びエージングサイクルの関数として要約する図。データは、1及び2.5% Cu交換については、提唱された高分散と一致している、ばらばらのCuOが形成されないことを確認する。5%Cuでのみ、前記OSの‘過剰交換’と一致している、CuOの存在が記録される。さらに、XRDデータは、図8中のTPRデータにより示唆された水熱耐久性を確証し、その際に単に構造の有意な変化が、800℃/10%蒸気/空気/6hでのエージングについて見られる。過酷な1100℃エージング後にのみ、構造変化が明らかであるが、しかしこれらの変化は、‘母体となる’OSの相不均化と、より一致しており、また1及び2.5% Cu試料については、XRDについてばらばらのCuを含有している相の証拠はない。
【図10】2.5%Fe−OS3のレドックス活性への典型的な‘ディーゼル’エージングサイクル(800℃/10%蒸気/空気、6h)への影響を示す図。また、前記材料は、エージング後に高いレドックス機能を維持し、むしろエージング後にピークレドックス温度は、より低い温度で(325℃対425℃新鮮)目下見られ、かつバルクFe2O3に付随されたレドックス特徴は、前記エージングサイクルの間にカチオンの増加された相互作用及び再分散を顕著に弱められて示唆している。
【図11】Fe負荷の関数として及びエージングサイクルの関数としての、Fe交換OS3の詳細なX線回折(XRD)キャラクタリゼーション研究を要約する図。この例においてトリエタノールアミン(TEA)は、塩基性/アルカリ性の前駆物質錯体を発生させるのに使用された。この例において、データは、ばらばらの金属酸化物(Fe2O3)が試験される範囲内で形成されず、また提案された高分散と一致していることを示唆している。類似した結果は、空気及び蒸気中での800℃でのエージング後に記録されるが、けれども前記立方晶相結晶の有意な焼結が記録される。また、過酷な1100℃エージング後にのみ、粗大な構造変化が明らかである。第一に、前記立方晶相の粗大な焼結は、>1000Åの結晶直径で明らかである。第二に、多重相のそれらの存在が記録され、その際に‘母体となる’OSの相不均化の組合せから生じ、分散されたドーパントが焼結してバルクFe2O3相及びFe及びCeの間での固相反応を形成する。これは、前記OS格子の表面領域中で濃縮されたFe種の極めて高い濃度に起因する。
【図12】交換経路によるか又は標準の沈殿合成経路によるかのいずれかで到達された2Ag−OS1組成の間での比較を図示する図。
【図13】交換経路によるか又は標準の沈殿合成経路によるかのいずれかで到達された2Ag−OS1組成の間での比較を図示する図。これらのデータは、OS促進のための前記交換法の強度の1つ、すなわち直接合成により達成することが通常困難である活性でかつ純相の組成に到達するために本方法の自由度を表す。従って、交換により製造された2Ag−OS1試料が、相純度及び卓越した低温レドックスの双方を証明するのに対し、同じことは、直接合成により製造される試料にあてはまらない。後者の材料は、前記新鮮な試料についてのレドックス活性の約50%を示し、かつ前記レドックスピークについての温度の約50℃+のシフトを有する。800℃での水熱エージング後に、双方の材料についてのレドックス機能のさらなる損失があるが、しかしまた、前記交換法により製造された試料は、直接合成試料中に組み込まれたAgに比べて顕著なレドックス利点を示す。より低い活性は、相純度の損失と相関することがわかり、その際に合成による2Ag−OS試料は、新鮮な及びエージングされた試料の双方とも、また試験された全ての条件下で相純度を維持する交換された試料とは異なり、二対の相を示す。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、排出物質処理触媒のための修飾されたホスト及び前記ホストを製造する方法に関する。前記ホストは、当工業界に周知のCe−ZrOxタイプの実質的に純相の立方晶蛍石(XRD法により測定される)である。前記修飾は、提唱されるが、理論により結びつけられることが望まれるものではないが、このために選択される卑金属元素/イオンによる前記結晶の表面中及びより少ない程度でバルク中の双方に存在するCe3+−OHヒドロキシルのイオン交換から生じる。
【0030】
修飾されたホスト材料は、ガソリン(化学量論的)及びディーゼル(又は他の燃料リーン)用途の双方に利用される幅広い範囲の排出物質浄化触媒に有利に適用されることができる。これらの材料の用途のために本明細書に記載される1つの特別な例は、常用のウォールフローフィルタ上に捕捉及び‘貯蔵される’ディーゼル粒子状物質の接触酸化/再生の分野にある。この新世代の修飾されたOS材料は、修飾されないOS材料と比較して、すすのより低い温度の再生/酸化又は‘常用の’温度での増加された再生効率のいずれかに影響を及ぼす点で特別な利点を有するものとして証明されている。この例は、除外するものではなく、単にこの新規な後合成修飾法により製造される活性な材料を使用することにより実現されることができる潜在的な利点の例示に過ぎない。
【0031】
さらに、"第一"、"第二"等の用語が本明細書において、いずれの順序の重要性を表すものではなく、しかしむしろ1つの要素を互いから区別するために使用されるものであり、かつ"a"及び"an"の用語が本明細書において、量の限定を表すものではなく、しかしむしろ参照された事項の少なくとも1つの存在を表すことに注意されるべきである。さらに、本明細書に開示された全ての範囲は、包括的であり、かつ組み合わせ可能である(例えば、"約25質量パーセント(質量%)まで、その際に約5質量%〜約20質量%が望ましく、かつ約10質量%〜約15質量%がより望ましい"の範囲は、端点及び前記範囲の全ての中間値、例えば"約5質量%〜約25質量%、約5質量%〜約15質量%"等を含んでいる)。
【0032】
高められたレドックス方法のための塩基性交換は、酸素貯蔵材料(OSM)としても知られる、常用のセリウム−ジルコニウムベースの混合酸化物を修飾する方法を説明する。本方法は、塩基性の、可能な場合には好ましくはアンモニア性金属溶液でのOSMの処理を包含する。この方法において現在使用される、卑金属、すなわち普通金属は、しかしこれらに限定されるものではないが、遷移金属、例えば銀、銅及びコバルト、アルカリ金属、例えばカリウム、アルカリ土類金属、例えばカルシウム、ストロンチウム、バリウムを含む。交換に必要とされる卑金属が空気安定なアンモニア性錯体を形成しないそれらの例、例えばアルミニウム及び鉄において、有機アミンの安定な塩基性錯体が使用されることができる。本明細書において使用される"遷移金属"という用語は、元素の周期表の3〜12族の38元素を意味する。
【0033】
本方法における変数は、(1)選択されるOSM/混合酸化物、(2)使用される金属、及び(3)その金属の濃度を含む。成功裏に使用される金属濃度は、0.02〜5.0質量パーセントにわたっていた。しかしながら、より高い金属交換レベルで、バルク金属酸化物は形成されることができ、これらは前記OSMとの相乗的な結合を維持しない。従って、イオン交換の最も好ましい範囲は、0.1〜2.5質量パーセントである。
【0034】
前記卑金属は典型的には、塩、例えば硝酸塩の金属塩又は溶液として受け入れられる。示されているように、たいていの卑金属は、水酸化アンモニウムと水溶性錯体を形成する。そのアンモニア性錯体が不安定である場合には、有機アミン、例えばトリエタノールアミンが、代わりに使用されることができる。本方法において、酸性金属溶液の溶液は、アンモニア性塩基の添加により化学的に塩基性の形に変換される。使用される塩基の化学及び量は、使用される金属で変わる。生じた溶液はついで前記混合酸化物粉末を含浸するのに使用され、それにより表面及び内層面Ce−OHヒドロキシルをイオン交換する(合成条件下で酸性中心として作用する表面終端及びバルク欠陥)。この交換方法は、故に修飾された混合酸化物のレドックス挙動の改善の原因であると考えられる。交換機構の証拠は、洗浄研究からさらに誘導され、その中で、新鮮に促進された材料は、その後のか焼なしで、水で繰り返し洗浄され、かつ上澄み液は可溶性金属種について分析され、しかしその際に可溶性金属数(<10)ppmが検出される。本方法における最終段階として、含浸された混合酸化物は、ついで無機アニオン(例えば硝酸イオン及びアンモニウムイオン)を追い出すのに十分な温度、典型的に>350℃でか焼される。か焼後に、添加された金属は、前者のCe−OH中心に結合されることが提唱される。
【0035】
本発明の混合酸化物/OSM材料は、いずれの知られた又は予測されたセリウム含有の又はCe−Zrベースの安定な固溶体を含んでなる。好ましくは、前記固溶体は、標準的なX線回折法により測定される単相を有するカチオン性格子を含有する。より好ましくはこの単相は立方晶構造を有し、その際に立方晶蛍石構造が最も好ましい。加えて、イオン交換方法が、XRDにより測定される付加的なバルク相の形成なしで、実施されることができ、その際に交換されたカチオンの濃度が立方晶蛍石格子のCe−OH‘濃度’を超えないことに注目される。多様な実施態様において、前記OS材料は、米国特許第6,585,944号、同第6,468,941号、同第6,387,338号及び同第6,605,264号明細書に開示されたOS材料を含むことができ、これらは参照により本明細書に全面的に取り入れられる。しかしながら、前記塩基性交換の自由度は、現在知られた全ての酸化セリウム及びCe−Zrベースの固溶体材料の修飾のために提供されて、こうして修飾され、かつ高められる。
【0036】
塩基性交換法により修飾されるOS材料は、Ce4+の還元エネルギー及び格子内部での‘O’の移動についての活性化エネルギーを低下させるのに十分な量のジルコニウム及び所望の酸素貯蔵容量を提供するのに十分な量のセリウムの釣り合いを有する組成を含んでなる。他の実施態様において、前記OSは、前記固溶体を好ましい立方晶の結晶相中で安定化させるのに十分な量の安定剤、例えばイットリウム、希土類(La/Pr等)又はその組合せを含有しうる。
【0037】
塩基性交換法により修飾されるOS材料は、好ましくは、常用のXRD法により決定される実質的に立方晶蛍石構造により特徴付けられるべきである。立方晶構造を有するOS材料の百分率は、交換の前後双方とも、好ましくは約95%を超えており、その際に典型的には約99%を超えており、かつ本質的に100%の立方晶構造が一般的に得られる(すなわち、現在の測定技術に基づいて測定できない量の正方晶相)。交換されるOS材料は、例えば常用の温度プログラムされた還元(TPR)法により測定される、平易な酸素貯蔵及び増加された放出容量に関する耐久性のレドックス活性の大きな改善を有することによりさらに特徴付けられている。故に、Cu交換された固溶体については、例えば、Ce+Cuの還元は、Cuドーパントの不在で起こるよりも低い、約300〜約350℃の温度で起こることが観察される(図4)。鉄の場合に、Ce+Fe還元は、約100〜約200℃だけより低い温度にシフトされる。
【0038】
例示的な実施態様において、前記OS材料は、前記材料100mol%を基準として、好ましくは、ジルコニウム約95mol%まで;セリウム約95mol%まで;イットリウム、希土類からなる群から選択される1つの安定剤又は複数の安定剤及び前記安定剤の少なくとも1つを含んでなる組合せ約20mol%までを含んでなる。
【0039】
他の実施態様において、交換前の前記OS材料は、Ce−Zr−R−Nbの固溶体であり、ここで"R"は、希土類金属又は次の金属:イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジムを含んでなる少なくとも1つの組合せであり、かつこれらの金属の少なくとも1つを含んでなる組合せが好ましい。
【実施例】
【0040】
2%Ag(NH3)2 OS1(酸素貯蔵材料#1)100グラムを製造する手順は、次のとおりである:
1.OS1 100gを秤量し、含水量について校正する(水約1.5%)。
2.硝酸銀結晶3.15gを秤量する。使用される硝酸塩又は溶液中の金属の百分率について補償されなければならない。硝酸銀は銀63.52%である。
3.硝酸銀を脱イオン水50g中に溶解させる。使用される水の量は、使用される混合酸化物の水吸着容量により決定される。これは、混合酸化物1グラムあたり一般的に水0.5〜0.6gである。
4.濃NH4OHaq(約30%アンモニア)を前記硝酸銀溶液に、澄明な銀ジアンモニア性溶液が得られるまで滴加する。溶液は、最初に黒褐色に変わり、ついで水酸化アンモニウムの過剰の添加の際に澄明になる。
5.銀ジアンモニア性溶液を混合酸化物粉末に添加する。十分に混合して、均質でかつむらなく着色した湿った粉末を生じさせる。
6.粉末を室温で1時間放置する。
7.乾燥器中で約110℃で、約2時間又は乾燥するまで乾燥させる。
8.炉中で空気中540℃で4時間か焼する。
【0041】
100グラムの2.5% Cu(NH3)4交換OS2 −
硝酸銅(II)三水和物10.86gを秤量し、脱イオン水50g中に溶解させる。30質量%水酸化アンモニウム溶液(約8.0g)を銅溶液に、ブルーブラックの銅テトラアンモニア性溶液が得られるまで添加する。ついで、銅テトラミン溶液をOS2 100g(乾燥量基準)に添加して、その際に均質な粉末が得られるまで混合する。乾燥させ、540℃で4時間か焼する。
【0042】
100グラムの1%Co(NH3)x交換OS2 −
硝酸コバルト(II)六水和物4.94gを脱イオン水50g中に溶解させる。30質量%水酸化アンモニウム溶液(約6.5g)を、鮮やかな青色のアンモニア性コバルト溶液が得られるまで添加する。pHを8.0〜9.5に維持する。過剰の水酸化アンモニウムを添加することに配慮する必要はない、なぜならこれは水酸化物形成のために前記溶液のゲル化をもたらすからである。アンモニア性コバルト溶液をOS2(乾燥) 100gに添加し、その際に均質な粉末が得られるまで混合する。乾燥させ、540℃で4時間か焼する。
【0043】
100グラムの1% Cu(NH3)4交換OS3 −
硝酸銅(II)三水和物3.80gを秤量し、脱イオン水50g中に溶解させる。30質量パーセントの水酸化アンモニウム溶液(約3.0g)を銅溶液に、ブルーブラックの銅テトラミン溶液が得られるまで添加する。ついで、銅テトラミン溶液をOS2(乾燥) 100gに添加して、その際に均質な粉末が得られるまで混合する。乾燥させ、540℃で4時間か焼する。
【0044】
100グラムの2.5% Fe−トリエタノールアミン交換OS3 −
硝酸鉄(III)九水和物18.08gを秤量し、脱イオン水400g中に溶解させる。トリエタノールアミン43.4を秤量する。前記硝酸鉄溶液をトリエタノールアミン溶液中へ、激しく撹拌しながらゆっくりと注ぐ。鉄溶解度は、アンモニアの形で限定される。正確な比は、硝酸鉄九水和物1gあたり水22g及びトリエタノールアミン2.4gである。鉄−トリエタノールアミン溶液が調製されると、それをOS3(乾燥) 100gに添加する。生じたスラリーは、低い粘度を有する流体になる。スラリー混合物を回転蒸気蒸発器中で乾燥させる。ついで540℃で4時間か焼する。
【0045】
OS1=44%CeO2;42%ZrO2/HfO2;9.5%La2O3;4.5%Pr6O11
OS2=40%CeO2;50%ZrO2/HfO2;5%La2O3;5%Pr6O11
OS3=31.5%CeO2;58.5%ZrO2/HfO2;5%La2O3;5%Y2O3
全ての組成は質量%として引用される
【技術分野】
【0001】
序論及び背景
酸素貯蔵(OS)材料は、例えば、セリア−ジルコニア(CeO2−ZrO2)固溶体をベースとする周知の固体電解質である。それらは、ガソリン車用の後処理触媒の普遍的な成分であって、それらは局所的な燃料リッチ(還元)又は燃料リーン(酸化)条件に対し、前記触媒中の活性成分を緩衝することができる。OS材料はこの緩衝を、酸素の減損した過渡状態(transients)下にそれらの3D構造から活性酸素を急速かつ再現性のある手法で放出し、酸素に富む条件が生じる際に気相からの吸着によるこの‘失われた’酸素を再生することにより、行う。この還元−酸化(以下、レドックス)化学は、Ce4+←→Ce3+レドックス対に起因するものであり、その際に、Ceの酸化状態は局所的なO2含量に依存している。酸素のこの高い利用可能性は、包括的な酸化/還元化学、例えばガソリン三元触媒のためのCO/NO化学の促進にとって、又はより最近には、例えばUS2005 0282698 A1の触媒ディーゼル微粒子捕集フィルター(CDPF)における粒子状物質(すす)の直接接触酸化にとって重要である。
【0002】
従って、Ce−ZrをベースとするOS材料の化学、合成、修飾(modification)及び最適化について広範に研究されている。例えば、排出物質浄化用途(emission control applications)のためのより低い原子価のイオンでドープされたセリア−ジルコニア材料の使用は、例えばUS 6,468,941、US 6,585,944及びUS2005 0282698 A1において広範に研究されている。これらの研究は、より低い原子価のドーパントイオン、例えば希土類金属、例えばY、La、Nd、Pr等、遷移金属、例えばFe、Co、Cu等又はアルカリ土類金属、例えばSr、Ca及びMgが全て、酸素イオン伝導率に有利な影響を及ぼすことができることを証明している。これは、前記固溶体の立方晶格子内部での酸素空位の形成から生じることが提唱され、前記固溶体は前記結晶バルクから前記表面への酸素イオン輸送に対するエネルギー障壁を低下させ、それにより、前記固溶体の、典型的なガソリン(三元)触媒用途の排気流中に生じる空気燃料過渡状態を緩衝する能力を高める。
【0003】
加えて、上記のドーパントの特殊な例の使用が、セリア−ジルコニア固溶体の好ましい立方晶蛍石格子構造の完全な安定化を提供できることが示されており(US 6,468,941及びUS 6,585,944)、その際にYが特別な利点を有することが確認されている。好ましい立方晶蛍石構造の存在は、前記結晶の表面及びバルクの双方からの、Ce4+←→Ce3+についての最も平易なレドックス化学と相関することが見出されており、故に、バルクCeO2と比較して、酸素貯蔵及び放出容量を劇的に増加させる。この利点は特に強調される、それというのも、前記材料は、典型的な排気環境中に存在する極端な水熱状態のために結晶成長/焼結を受けるからである。殊にY及びより少ない程度でのLa及びPrの組み込みは、単一の立方晶相セリア−ジルコニアをよりCeに富む立方晶相及びよりZrに富む正方晶相からなる複合体へ不均化するのを制限するか又は特定の場合には回避する(circumvent)ことも証明されており、前記固溶体のレドックス機能、表面積等の顕著な減少をまねく方法である。
【0004】
最後に、US 6,468,941及びUS 6,585,944には、Ceのレドックス化学を促進するための選択的な手段として、塩基、すなわち非貴金属族(non-precious group)(Pt、Pd、Rh、Au等)のドーパント金属を前記固溶体の立方晶蛍石格子中へ使用する可能性が教示されており、その際にFe、Ni、Co、Cu、Ag、Mn、Bi及びこれらの元素の混合物が、特に興味深いことが確認されている。従って、促進されないOS材料は典型的には、H2温度プログラムされた還元(TPR)により測定される、約600℃でレドックス極大値を示すのに対し、前記格子内部での卑金属の混入は、貴金属の使用によりコストを一部被るだけで、この温度を>200℃又はそれ以上減少させることができる。
【0005】
しかしながら、これらの卑金属は、前記CeZrOx格子中に有利に組み込まれることができ、かつこの組み込みが、新鮮な材料の低温レドックス機能を有意に促進することができる一方で、これらの元素の添加はまた、新鮮な相純度及びエージングされた相純度を減少させることができ、かつ水熱耐久性を有意に減少させることができ(結晶焼結及び材料緻密化を促進することができる)、その際に付加的な卑金属なしでのベース組成物に比べて、エージングされたものの性能の損失をまねく。そのうえ、通常のエージングサイクルの間に、気相とCeZr材料との間で反応が起こるかも知れず、これはこれらの付加的なベース元素の、立方晶蛍石格子からの抽出をまねきうる。これはそしてまた、低い固有触媒活性を有する別個の(複数の)バルク相の形成をまねきうるか、又は最悪のシナリオの場合に、前記OS又は他の触媒成分と直接相互作用する相が、前記触媒の直接又は間接の被毒をまねく。
【0006】
故に、前記の材料は、それらの範囲が潜在的に制限される。例えば、より低い原子価のイオンは、固溶体の合成において成功裏に組み込まれうる一方で、これは、前記合成の注意深い制御によりかつ最終組成の特殊な制限内で達成されることができるに過ぎない。これは、生じた化合物の電気的中性及び好ましい立方晶蛍石単相構造の保存の双方を保証するのに必要である。従って、例えば、高いCe(>50mol%)及び/又は低いZr(<30mol%)含量を有する立方晶蛍石構造中へ‘ドープされた’特殊な低い価数の卑金属助触媒を含有するOS材料の合成は、平易ではなく、かつ前記合成が、性能の顕著な減少を伴う、Ceに富みかつCeに乏しいドメインへ不均化する材料をまねく有意な可能性がある。
【0007】
類似して、前記固溶体の最終的な電気的‘チャージ’を釣り合わせることが大いに配慮されなければならず、従って、前記立方晶格子中のNb5+の組み込みは達成されうるかも知れないが、しかし4+の全カチオンチャージの釣り合いを保存するために等モル量のY3+の導入によってのみ可能である。また、局所的な結晶構造内部でのNb/Y含量のいずれの不釣り合い又は不均一性は、望ましくなく、かつUS 6,605,264に概説されたように、必要とされるレドックス機能の最終的な損失を伴う、相安定性及び純度問題をまねきうる。
【0008】
低い価数の卑金属イオンを立方晶蛍石格子内部に導入することのさらに及びことによるとより有意な欠点は、前記イオンが前記結晶構造のバルクを通して分散されることであり、ひいては前記イオンの表面濃度が極めて低いかも知れないことである。これはそしてまた、排気環境と直接相互作用するドーパントイオンの程度を制限する。故に、Sr、Ca及びMg等を前記立方晶格子中へドープすることが可能である一方で、付加的な化学的官能性を、例えばNO及びNO2の一時的な吸着を提供するためのNOxトラップとして、提供するこれらのイオンの能力は、前記結晶の表面及び内層面(subsurface)のそばの中の前記イオンの利用可能な濃度により制限される。
【0009】
当工業界において必要とされるのは、いずれの実際のCe含量について平易でかつ高い酸素貯蔵及び酸素イオン伝導率の性質を有する安定なOIC/OS材料である。さらに、組成のより大きな自由度は、耐久性及び活性が減少されるという現在のペナルティーなしで、必要とされる。最後に、これらの強化が実現される手法は、最大処理量について最小限の処理段階を用いて、平易であり、かつ堅牢(robust)であるべきである。
【0010】
発明の要約
実質的に純相の(phase pure)立方晶蛍石構造を含有するZrO2/CeO2固溶体をベースとする酸素貯蔵(OS)材料の性能の有意な改善は、塩基、すなわち非貴金属族の金属の特殊なイオン交換により達成されることができる。本明細書に記載されるイオン交換法は、化学的に塩基性の、すなわち高いpHの条件、いわゆる高いOH-/低いヒドロニウム(H3O+)又はプロトン(H+)含量下に、実施される。前記塩基性イオン交換法は、ばらばらの後合成的な修飾であり、ひいては以前の研究(US 6,468,941及びUS 6,585,944)に記載された従来の直接合成法に比較して、組成、ドーパントイオンタイプ及び濃度の顕著により高い自由度を提供する。生じた材料は、試験されて全てのエージング条件下で、高い活性及び水熱耐久性を証明している。これは、酸性金属、例えば金属硝酸塩の通常の含浸により実現されうる促進とは異なっており、通常の場合に新鮮な材料中のバルク酸化物相の形成及びそのような酸化物相の生じる失活を伴う急速焼結が普通である。故に、開発された方法は、安定でかつ高度に活性なOS材料の幅広くかつ新規な範囲の材料を提供し、前記材料は、ガソリン車及びディーゼル車の双方のための排出物質浄化用途の幅広い範囲に有利に適用されることができる。さらに、本発明の方法は、付加的な触媒機能、例えばリーンNOx制御を組み込む又は高めるための特殊な化学的相乗効果を導入する卑金属促進剤(promotant)の選択及びテーラー化を可能にする。
【0011】
とりわけ、高いレドックス活性は、提唱されるが、理論により結びつけられることが望まれているものではない、全てのOS材料内部に存在する既存のCe−OHヒドロキシル欠陥サイトの塩基性/アルカリ性の交換を包含する機構による、Ce−ZrOxをベースとする固溶体の修飾により得られることができる。前記Ce−OHサイトは、前記格子内部でのCe3+欠陥サイトで生じると考えられており、その際に前記ヒドロキシル基のプロトンの存在は、前記格子の電気的中性の要件である。金属イオンによる前記H+原子の提唱される交換は、前記酸化物マトリックス内部での極めて高い分散(原子レベルの分散に近づくことができる)の特殊な一価の(例えばK+)、二価の(例えばCu2+)、三価の(例えばFe3+)及びより高い原子価のイオンの組み込み及び安定化を可能にする。このようにして前記混合酸化物内部で組み込まれるべき卑金属の選択は付加的に、殊に興味深いか又は触媒的に重要である反応にとって活性であることが知られた酸化物をベースとすることができる。例は、これらに限定されるものではないが、すすの直接接触酸化、低温SCR(尿素、NH3又は炭化水素による選択接触還元)、NOxトラップ、低温CO−NO又はCO−O2反応助触媒、炭化水素クラッキング機能(例えば前記OSの酸性度を増加させることによる)等を含む。これらの例に適切な金属は、Ag、Cu、Co、Mn、Fe、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属、又は車排気の通常の操作窓内の条件下でその後の分解及びN2還元を受けることができる安定な硝酸塩を形成することが知られた他の金属又はメタロイドを含む。"遷移金属"という用語は、元素の周期表の3〜12族の38元素を意味する。
【0012】
この分野の以前の開発は、米国特許第6,585,944号及び同6,468,941号明細書に記載されているが、けれどもこれらの特許において、Ce−ZrO2系は、他の触媒活性イオンが通常の合成法の意図的な修飾において導入されるホストマトリックスとして、使用される。このようにして活性イオンの組み込みは、成功する一方で、導入されうるドーパントのタイプ並びに前記格子内部でのそれらの濃度、すなわち前記OS材料の最適なレドックス特性を提供することが知られた実質的に純相の好ましい立方晶蛍石構造をなお提供する固体中の最大‘溶解度’に特殊な制限を課する。対照的に本発明において、前記促進剤の会合は、後合成を、理論により結びつけられることが望まれるものではないが、特殊なイオン交換機構を介して起こし、その際に前記イオンは、いずれの十分定義され、かつ特有のカチオン位置ではなく、前記Ce3+−OH欠陥に付随されるサイトの範囲内で、こうして導入され、かつ組み込まれる。従って、本発明の方法は、卑金属イオン/酸化物成分のより高い濃度の導入を可能にする、それというのも、負荷(loading)は、相純度の十分定義された混合酸化物マトリックス内部でのその溶解度により制限されないからである。逆に、効果的な促進剤の負荷は、前記格子内部での構造的ヒドロキシルの濃度により制限される、それというのも、これらのヒドロキシルは典型的には、初晶の点欠陥又は表面終端に付随されるからである。
【0013】
本明細書において、ZrOx、Zr−CeOx及びZr−Ce−REOx(RE=希土類)の、それらの証明された水熱耐久性を有する結晶構造の好都合な構造的なマトリックスが利用され、それらの結晶構造中へ(レドックス)活性な金属イオンが、高い(原子)分散を有して、それらのレドックス機能に不利な影響を及ぼすことなく、分散されることができる。実際に、本方法による含まれる例に示されているように、OS材料の通常のレドックス特性の劇的でかつ耐久性の促進を達成することができる。この思想への類似は、前記ZrO2マトリックスへのCe4+の添加である。例えば、COの接触酸化におけるCeの役割は次のようにそのレドックス活性に基づいている:Ce3++O2→O2-+Ce4+、引き続き前記O2-アニオンがCO(NO)と反応してCO3(NO3)を得て、その後CO2(NO2)及びO-に分解し、かつ最終的にCe3+を再生する。この反応サイクルは、純CeO2上で起こることができ、かつCe4+←→Ce3+レドックスサイクルの性質/エネルギー障壁は、TPR(温度プログラムされた還元)を用いて350〜600℃での表面CeO2についての還元ピークで調べることができる。バルクCeO2は、これらの温度で還元されず、前記CeO2の結晶格子は、より大きなCe3+イオンの形成を受け入れることができず、ひいては電気的中性を保存するための前記バルクから離れるO移動は起こることができない。しかしながら、Ce4+イオンがZrO2格子中へ分散される場合に、Ce4+のレドックス活性は、不利な影響を受けないが、しかし実際に、主にCe4+イオン自体の固有の化学/還元能の修飾を通じてではなく、しかしより幾何学的な機構により大いに高められ、その場合に上記で注目したように全てのCe4+イオンが目下近づくことができる。さらに、ZrO2マトリックスの存在は、前記材料を表面積損失、クリスタリット成長及び多孔度の損失から大いに安定化させる。ZrO2は、Ce4+を、CO2及びSO2のような酸性排気成分を有する望ましくない安定な化合物の形成から、CeO2に対するZrO2の固有酸性度のために、阻害するか又は保護することもできる。
【0014】
これらの通常のCeO2対Ce−ZrO2系への類似により、(レドックス)活性な元素を用いて、イオン交換による特殊な強い会合を通じて構成されることができる類似した有利でかつ相乗的な系を目下提供する。故に、本発明は、排ガスの処理用のOIC/OSホスト材料を製造する方法に関するものであり、前記方法は、通常のXRDにより測定される実質的に立方晶の蛍石Ce−ZrOx材料の固溶体を形成させ、卑金属元素を前記材料へ、前記のCe−ZrOx材料中の既存のヒドロキシルサイトを交換することにより高いpH条件下で導入して、それにより前記の卑金属元素を前記Ce−ZrOx材料内部で高分散で組み込み、かつ安定化させることを特徴とする。
【0015】
本発明のCe−ZrOx材料は、前記材料中の金属成分100mol%を基準として、ジルコニウム約0.5〜約95mol%、セリウム約0.5〜約90mol%、及び場合によりR 約0.1〜約20mol%を有するOIC/OS材料であり、ここでRは、(複数の)希土類金属、(複数の)アルカリ土類金属、及び前記のものの少なくとも1つを含んでなる組合せからなる群から選択される。
【0016】
さらなる態様において、前記Ce−ZrOx材料は、前記材料100mol%を基準として、ジルコニウム約95mol%まで;セリウム約90mol%まで;標準的な周期表において希土類として定義される群から選択される安定剤、及び前記安定剤の少なくとも1つを含んでなるその組合せ約25mol%までを含んでなるOIC/OS材料である。
【0017】
本発明の方法を実施するにあたり、前記塩基、すなわち非貴金属族の金属元素は、例えば8.0〜9.5のような高いpHを有する、アルカリ性溶液として、例えばアンモニア性溶液(水酸化アンモニウムベースの溶液)として調製される。前記卑金属は、遷移金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択されるメンバーであることができる。選択的に、前記卑金属元素は、安定なアンモニア性卑金属溶液が調製されることができない場合にも、有機アミンとの卑金属錯体として導入されることもできる。
【0018】
本明細書で定義される前記卑金属の溶液及びCe−ZrOx固体材料は、一緒に混合されて湿った粉末又はペーストが形成される。乾燥後に、前記混合物はついでか焼される。
【0019】
任意の工程として、白金/貴金属族金属は、前記OIC/OS材料に常法で添加されることができる。
【0020】
本発明の利点及び特徴は、次のものを含む:
a)高められた低温反応性及び卓越した水熱耐久性を有するOS材料を提供する;
b)例えばNOxトラップ/SCR等のようなイオン交換された吸着原子の活性及び補助的な触媒機能を損なわない;
c)高められた安定性、より高い分散、ひいては前記レドックス活性な元素にガス状反応物がより近寄りやすくなることによる、改善された性能;
d)所望の構造的な及び組織的な性質、例えば単相の立方晶系、高くかつ耐久性の細孔容積及びSA(表面積)のメソ孔系を有する予備形成されたOS材料の利点、ひいては後修飾の付随された性能の利点をさらに高める;
e)格子パラメーター、相純度、欠陥密度、表面酸性度、塩基性度、等の最小限の損傷を伴う、化学修飾のより大きな自由度
f)特殊な用途に"合わせられた"特性及び性質を有する仕立てられたテーラー化されかつ約束された(bespoke)材料の範囲を製造するための、包括的な既存の商業的な材料のための特殊な後修飾法を提供する。
【0021】
この戦略は、上記で概説された目標の範囲を達成することを試みるために高価な貴金属ドープを典型的には使用する、従来のOS材料合成において使用されるものとは、対照的である。
【0022】
この戦略は殊に有利である、それというのも、従来のOS材料は、多様な制限を有することが知られているからである。
【0023】
第一に、二元系、三元系又はそれどころか四元系のCe−Zr−REOx系を用いて通常得られるものよりも、より低い温度での増加されたセリア還元能の要件がある。これらの材料は典型的には、約600℃でH2温度プログラムされた還元(TPR)により測定されるレドックス極大値を示す。これは、前記OS材料が、極大の"緩衝作用"又は酸素供与の利点を提供するように、本明細書において高い排ガス/反応温度のための要件を課する。この温度の問題を取り扱うために、OS材料は、貴金属族金属(PGM)成分、例えばPt、Pd又はRhの添加により典型的には"促進される"。しかしながら、これらの金属による促進は、排出物質浄化装置の価格に極めて有意な付加的コストを付与する。
【0024】
第二に、これまで使用される典型的なOS材料は、それらの全酸素貯蔵容量、いわゆるTPRにより測定される利用可能な酸素の量に関して制限が存在し、前記OS材料の全Ce IV含量の考慮から期待されるものよりも典型的に低い。これまで利用可能な多くのデータは、還元を受ける利用可能な全Ce IVの約50%に過ぎない少なさで一致している。この時点で、これが、基本的な問題のためかどうか、又は混合Ce IV/Ce III原子価をもたらす前記OS材料の製造において使用される現行の(複数の)合成法を用いる制限のためかどうか、又は付加的な、化学的、構造的又は組織的な制限の組合せが原因となるかどうかは、不確実である。
【0025】
最後に、典型的なOS材料は、前記排出物質浄化装置への付加的な相乗効果があるにしても、制限されて提供されるに過ぎない。他でも記載されるように、理想的な材料成分は、付加的な一体化された化学的な機構を提供して、排出物質浄化、例えばNOx捕捉を強化し、かつN2への還元をさらに高める。
【0026】
従って、OS材料が、高度に活性でかつ耐久性の車排気排出物質系を実現する鍵成分であるのに対し、既存の合成法及び材料は、より新しくかつそれどころかより厳重な排出物質照準に従うことが必要とされる次世代の排気触媒の開発に有意な限定が存在する。必要とされることは、より低い温度、殊に車の用途のコールドスタート部分で触媒機能を促進するために活性である新しい種類のOS材料である。これらのOS材料は、高い水熱耐久性も示すべきであり、かつ要求の厳しい排気環境の幅広い範囲内でのそれらの使用を可能にするために潜在的な排気毒に対して耐性があるべきである。
【0027】
前記の及び他の特徴は、当業者により、次の詳細な説明、図面、及び添付された特許請求の範囲から認識され、かつ理解される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】新規に合成されたOS材料からの正規化された質量損失応答対その、H2 TPRからのその後のH2取込み(uptake)応答を比較する図。データは、レドックス活性の開始時の質量損失特徴(約450℃でのピーク)間の相関を示している。
【図2】検出器として質量分析計を用いて実施されるCO TPR実験を示す図。温度上昇の間に、前記OSの活性酸素によるCOの酸化からのCO2の製造の開始は、前記OSからの水発生/脱着のピークと相関することがわかる。水発生は、2×Ce3+−OH欠陥サイトの脱ヒドロキシル化に起因するものであり、その際にH2O及び前記OS格子内部の酸素空位のその後の発生を伴う。これらの酸素空位の形成は、前記OSがレドックス活性であることを可能にするためにバルクから表面への酸素イオン輸送を可能にするのに必要とされる。
【図3】2%銀(Ag)の塩基性イオン交換による後合成修飾によるCeZrLaPrO2 OS(OS1)のH2 TPR特性の劇的な促進を示す図。理論により結びつけられることが望まれるものではないが、この利点が、AgによるCe3+−OHのプロトンの交換から、前記材料の酸素イオン伝導率の生じた促進を伴って、生じることが論じられる。これは、図1及び2に図示された脱ヒドロキシル化(及び格子空位のその後の発生)現象の脱離に起因するものであり、この現象はレドックス活性になるための前記結晶格子のバルクの活性化の要件であるように思われる。この促進の程度は、PGM、例えばPtの含浸について、しかしコストの一部で注目されるものに匹敵しうる。
【図4】1%Cuの後合成の塩基性交換の前後の第二のCeZrLaPrO2混合酸化物(OS2)のH2 TPR性能を比較する図。銅(Cu)の組み込みは、前記OSのレドックスの性質の劇的な促進をもたらし、その際に約575℃でレドックス極大値を示す交換されない材料と比較して、交換された材料はT<300℃で高いレドックス機能を示す。
【図5】前記OS2のレドックス性能への交換されたCu 負荷対2.21% CuO−SiO2参考粉末との活性の影響を図示する図。全ての場合に、レドックス活性の劇的な強化が観察され、その際にCuの増加しているレベルは、225〜250℃で中心となる大きなレドックス特徴の増加をもたらす。このより高い温度ピークは、CuO−SiO2との比較によりわかるように、バルクCuOにより類似しているレドックス特徴を有するCuO集合(ensembles)に起因する。しかしながら、データはまた、前記OS及び前記ドーパントイオンのレドックス化学の相乗的な結合を確認する。
【図6】OS2のレドックス性能への、低いが、しかし増加しているレベルのコバルト(Co)イオン交換の影響を証明する図。利点/低下されたレドックス温度は、Coレベルについて0.02%質量%の低さであることがわかり、かつ前記促進は、0.1及び1%で続き、その際に後者はピークレドックスについての温度の約150℃の低下を示している。
【図7】レドックスの性質の強化が、鉄(Fe)を使用して達成されることもできることを確認する図(7a)。この場合に、CeZrLaYO2(OS3)の性能は、2.5又は5%のいずれかでのFeの組み込みにより劇的な促進を受ける。この例において、しかしながら、ばらばらのFe2O3の形成についてのいくつかの証拠がある(>650℃でのレドックスピーク)。2.5%交換Fe−OS3対、US 6,585,944 B1に記載されたのと類似の手法で商業的な供給業者により調製された類似の組成物の比較が、交換されたOS3について匹敵しうる性能をさらに示す(図7b)。むしろ、有意により簡素な方法により調製された、交換された試料は、レドックス特性の小さな改善を示し、その際に意図的な合成法により調製された試料についてのそれよりも約40℃低いCe還元極大値を有する。
【図8】2.5%Cu交換OS2材料の水熱耐久性を表す図。この試料は、2つのエージングサイクル、第一が800℃/10%蒸気/空気で6h(ディーゼル後処理用途に関連したエージング条件)及び第二が1100℃/乾燥空気で6h(ガソリンエージングを模倣するため)にかけられた。双方のエージングサイクル後に、低温レドックス特徴は、極めて過酷な1100℃エージング後でさえも、維持される。これは、交換されたカチオンと前記OS格子との間の強い相互作用と一致している。
【図9】Cu交換OS2の詳細なX線回折(XRD)キャラクタリゼーション研究を、Cu負荷の関数として及びエージングサイクルの関数として要約する図。データは、1及び2.5% Cu交換については、提唱された高分散と一致している、ばらばらのCuOが形成されないことを確認する。5%Cuでのみ、前記OSの‘過剰交換’と一致している、CuOの存在が記録される。さらに、XRDデータは、図8中のTPRデータにより示唆された水熱耐久性を確証し、その際に単に構造の有意な変化が、800℃/10%蒸気/空気/6hでのエージングについて見られる。過酷な1100℃エージング後にのみ、構造変化が明らかであるが、しかしこれらの変化は、‘母体となる’OSの相不均化と、より一致しており、また1及び2.5% Cu試料については、XRDについてばらばらのCuを含有している相の証拠はない。
【図10】2.5%Fe−OS3のレドックス活性への典型的な‘ディーゼル’エージングサイクル(800℃/10%蒸気/空気、6h)への影響を示す図。また、前記材料は、エージング後に高いレドックス機能を維持し、むしろエージング後にピークレドックス温度は、より低い温度で(325℃対425℃新鮮)目下見られ、かつバルクFe2O3に付随されたレドックス特徴は、前記エージングサイクルの間にカチオンの増加された相互作用及び再分散を顕著に弱められて示唆している。
【図11】Fe負荷の関数として及びエージングサイクルの関数としての、Fe交換OS3の詳細なX線回折(XRD)キャラクタリゼーション研究を要約する図。この例においてトリエタノールアミン(TEA)は、塩基性/アルカリ性の前駆物質錯体を発生させるのに使用された。この例において、データは、ばらばらの金属酸化物(Fe2O3)が試験される範囲内で形成されず、また提案された高分散と一致していることを示唆している。類似した結果は、空気及び蒸気中での800℃でのエージング後に記録されるが、けれども前記立方晶相結晶の有意な焼結が記録される。また、過酷な1100℃エージング後にのみ、粗大な構造変化が明らかである。第一に、前記立方晶相の粗大な焼結は、>1000Åの結晶直径で明らかである。第二に、多重相のそれらの存在が記録され、その際に‘母体となる’OSの相不均化の組合せから生じ、分散されたドーパントが焼結してバルクFe2O3相及びFe及びCeの間での固相反応を形成する。これは、前記OS格子の表面領域中で濃縮されたFe種の極めて高い濃度に起因する。
【図12】交換経路によるか又は標準の沈殿合成経路によるかのいずれかで到達された2Ag−OS1組成の間での比較を図示する図。
【図13】交換経路によるか又は標準の沈殿合成経路によるかのいずれかで到達された2Ag−OS1組成の間での比較を図示する図。これらのデータは、OS促進のための前記交換法の強度の1つ、すなわち直接合成により達成することが通常困難である活性でかつ純相の組成に到達するために本方法の自由度を表す。従って、交換により製造された2Ag−OS1試料が、相純度及び卓越した低温レドックスの双方を証明するのに対し、同じことは、直接合成により製造される試料にあてはまらない。後者の材料は、前記新鮮な試料についてのレドックス活性の約50%を示し、かつ前記レドックスピークについての温度の約50℃+のシフトを有する。800℃での水熱エージング後に、双方の材料についてのレドックス機能のさらなる損失があるが、しかしまた、前記交換法により製造された試料は、直接合成試料中に組み込まれたAgに比べて顕著なレドックス利点を示す。より低い活性は、相純度の損失と相関することがわかり、その際に合成による2Ag−OS試料は、新鮮な及びエージングされた試料の双方とも、また試験された全ての条件下で相純度を維持する交換された試料とは異なり、二対の相を示す。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、排出物質処理触媒のための修飾されたホスト及び前記ホストを製造する方法に関する。前記ホストは、当工業界に周知のCe−ZrOxタイプの実質的に純相の立方晶蛍石(XRD法により測定される)である。前記修飾は、提唱されるが、理論により結びつけられることが望まれるものではないが、このために選択される卑金属元素/イオンによる前記結晶の表面中及びより少ない程度でバルク中の双方に存在するCe3+−OHヒドロキシルのイオン交換から生じる。
【0030】
修飾されたホスト材料は、ガソリン(化学量論的)及びディーゼル(又は他の燃料リーン)用途の双方に利用される幅広い範囲の排出物質浄化触媒に有利に適用されることができる。これらの材料の用途のために本明細書に記載される1つの特別な例は、常用のウォールフローフィルタ上に捕捉及び‘貯蔵される’ディーゼル粒子状物質の接触酸化/再生の分野にある。この新世代の修飾されたOS材料は、修飾されないOS材料と比較して、すすのより低い温度の再生/酸化又は‘常用の’温度での増加された再生効率のいずれかに影響を及ぼす点で特別な利点を有するものとして証明されている。この例は、除外するものではなく、単にこの新規な後合成修飾法により製造される活性な材料を使用することにより実現されることができる潜在的な利点の例示に過ぎない。
【0031】
さらに、"第一"、"第二"等の用語が本明細書において、いずれの順序の重要性を表すものではなく、しかしむしろ1つの要素を互いから区別するために使用されるものであり、かつ"a"及び"an"の用語が本明細書において、量の限定を表すものではなく、しかしむしろ参照された事項の少なくとも1つの存在を表すことに注意されるべきである。さらに、本明細書に開示された全ての範囲は、包括的であり、かつ組み合わせ可能である(例えば、"約25質量パーセント(質量%)まで、その際に約5質量%〜約20質量%が望ましく、かつ約10質量%〜約15質量%がより望ましい"の範囲は、端点及び前記範囲の全ての中間値、例えば"約5質量%〜約25質量%、約5質量%〜約15質量%"等を含んでいる)。
【0032】
高められたレドックス方法のための塩基性交換は、酸素貯蔵材料(OSM)としても知られる、常用のセリウム−ジルコニウムベースの混合酸化物を修飾する方法を説明する。本方法は、塩基性の、可能な場合には好ましくはアンモニア性金属溶液でのOSMの処理を包含する。この方法において現在使用される、卑金属、すなわち普通金属は、しかしこれらに限定されるものではないが、遷移金属、例えば銀、銅及びコバルト、アルカリ金属、例えばカリウム、アルカリ土類金属、例えばカルシウム、ストロンチウム、バリウムを含む。交換に必要とされる卑金属が空気安定なアンモニア性錯体を形成しないそれらの例、例えばアルミニウム及び鉄において、有機アミンの安定な塩基性錯体が使用されることができる。本明細書において使用される"遷移金属"という用語は、元素の周期表の3〜12族の38元素を意味する。
【0033】
本方法における変数は、(1)選択されるOSM/混合酸化物、(2)使用される金属、及び(3)その金属の濃度を含む。成功裏に使用される金属濃度は、0.02〜5.0質量パーセントにわたっていた。しかしながら、より高い金属交換レベルで、バルク金属酸化物は形成されることができ、これらは前記OSMとの相乗的な結合を維持しない。従って、イオン交換の最も好ましい範囲は、0.1〜2.5質量パーセントである。
【0034】
前記卑金属は典型的には、塩、例えば硝酸塩の金属塩又は溶液として受け入れられる。示されているように、たいていの卑金属は、水酸化アンモニウムと水溶性錯体を形成する。そのアンモニア性錯体が不安定である場合には、有機アミン、例えばトリエタノールアミンが、代わりに使用されることができる。本方法において、酸性金属溶液の溶液は、アンモニア性塩基の添加により化学的に塩基性の形に変換される。使用される塩基の化学及び量は、使用される金属で変わる。生じた溶液はついで前記混合酸化物粉末を含浸するのに使用され、それにより表面及び内層面Ce−OHヒドロキシルをイオン交換する(合成条件下で酸性中心として作用する表面終端及びバルク欠陥)。この交換方法は、故に修飾された混合酸化物のレドックス挙動の改善の原因であると考えられる。交換機構の証拠は、洗浄研究からさらに誘導され、その中で、新鮮に促進された材料は、その後のか焼なしで、水で繰り返し洗浄され、かつ上澄み液は可溶性金属種について分析され、しかしその際に可溶性金属数(<10)ppmが検出される。本方法における最終段階として、含浸された混合酸化物は、ついで無機アニオン(例えば硝酸イオン及びアンモニウムイオン)を追い出すのに十分な温度、典型的に>350℃でか焼される。か焼後に、添加された金属は、前者のCe−OH中心に結合されることが提唱される。
【0035】
本発明の混合酸化物/OSM材料は、いずれの知られた又は予測されたセリウム含有の又はCe−Zrベースの安定な固溶体を含んでなる。好ましくは、前記固溶体は、標準的なX線回折法により測定される単相を有するカチオン性格子を含有する。より好ましくはこの単相は立方晶構造を有し、その際に立方晶蛍石構造が最も好ましい。加えて、イオン交換方法が、XRDにより測定される付加的なバルク相の形成なしで、実施されることができ、その際に交換されたカチオンの濃度が立方晶蛍石格子のCe−OH‘濃度’を超えないことに注目される。多様な実施態様において、前記OS材料は、米国特許第6,585,944号、同第6,468,941号、同第6,387,338号及び同第6,605,264号明細書に開示されたOS材料を含むことができ、これらは参照により本明細書に全面的に取り入れられる。しかしながら、前記塩基性交換の自由度は、現在知られた全ての酸化セリウム及びCe−Zrベースの固溶体材料の修飾のために提供されて、こうして修飾され、かつ高められる。
【0036】
塩基性交換法により修飾されるOS材料は、Ce4+の還元エネルギー及び格子内部での‘O’の移動についての活性化エネルギーを低下させるのに十分な量のジルコニウム及び所望の酸素貯蔵容量を提供するのに十分な量のセリウムの釣り合いを有する組成を含んでなる。他の実施態様において、前記OSは、前記固溶体を好ましい立方晶の結晶相中で安定化させるのに十分な量の安定剤、例えばイットリウム、希土類(La/Pr等)又はその組合せを含有しうる。
【0037】
塩基性交換法により修飾されるOS材料は、好ましくは、常用のXRD法により決定される実質的に立方晶蛍石構造により特徴付けられるべきである。立方晶構造を有するOS材料の百分率は、交換の前後双方とも、好ましくは約95%を超えており、その際に典型的には約99%を超えており、かつ本質的に100%の立方晶構造が一般的に得られる(すなわち、現在の測定技術に基づいて測定できない量の正方晶相)。交換されるOS材料は、例えば常用の温度プログラムされた還元(TPR)法により測定される、平易な酸素貯蔵及び増加された放出容量に関する耐久性のレドックス活性の大きな改善を有することによりさらに特徴付けられている。故に、Cu交換された固溶体については、例えば、Ce+Cuの還元は、Cuドーパントの不在で起こるよりも低い、約300〜約350℃の温度で起こることが観察される(図4)。鉄の場合に、Ce+Fe還元は、約100〜約200℃だけより低い温度にシフトされる。
【0038】
例示的な実施態様において、前記OS材料は、前記材料100mol%を基準として、好ましくは、ジルコニウム約95mol%まで;セリウム約95mol%まで;イットリウム、希土類からなる群から選択される1つの安定剤又は複数の安定剤及び前記安定剤の少なくとも1つを含んでなる組合せ約20mol%までを含んでなる。
【0039】
他の実施態様において、交換前の前記OS材料は、Ce−Zr−R−Nbの固溶体であり、ここで"R"は、希土類金属又は次の金属:イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジムを含んでなる少なくとも1つの組合せであり、かつこれらの金属の少なくとも1つを含んでなる組合せが好ましい。
【実施例】
【0040】
2%Ag(NH3)2 OS1(酸素貯蔵材料#1)100グラムを製造する手順は、次のとおりである:
1.OS1 100gを秤量し、含水量について校正する(水約1.5%)。
2.硝酸銀結晶3.15gを秤量する。使用される硝酸塩又は溶液中の金属の百分率について補償されなければならない。硝酸銀は銀63.52%である。
3.硝酸銀を脱イオン水50g中に溶解させる。使用される水の量は、使用される混合酸化物の水吸着容量により決定される。これは、混合酸化物1グラムあたり一般的に水0.5〜0.6gである。
4.濃NH4OHaq(約30%アンモニア)を前記硝酸銀溶液に、澄明な銀ジアンモニア性溶液が得られるまで滴加する。溶液は、最初に黒褐色に変わり、ついで水酸化アンモニウムの過剰の添加の際に澄明になる。
5.銀ジアンモニア性溶液を混合酸化物粉末に添加する。十分に混合して、均質でかつむらなく着色した湿った粉末を生じさせる。
6.粉末を室温で1時間放置する。
7.乾燥器中で約110℃で、約2時間又は乾燥するまで乾燥させる。
8.炉中で空気中540℃で4時間か焼する。
【0041】
100グラムの2.5% Cu(NH3)4交換OS2 −
硝酸銅(II)三水和物10.86gを秤量し、脱イオン水50g中に溶解させる。30質量%水酸化アンモニウム溶液(約8.0g)を銅溶液に、ブルーブラックの銅テトラアンモニア性溶液が得られるまで添加する。ついで、銅テトラミン溶液をOS2 100g(乾燥量基準)に添加して、その際に均質な粉末が得られるまで混合する。乾燥させ、540℃で4時間か焼する。
【0042】
100グラムの1%Co(NH3)x交換OS2 −
硝酸コバルト(II)六水和物4.94gを脱イオン水50g中に溶解させる。30質量%水酸化アンモニウム溶液(約6.5g)を、鮮やかな青色のアンモニア性コバルト溶液が得られるまで添加する。pHを8.0〜9.5に維持する。過剰の水酸化アンモニウムを添加することに配慮する必要はない、なぜならこれは水酸化物形成のために前記溶液のゲル化をもたらすからである。アンモニア性コバルト溶液をOS2(乾燥) 100gに添加し、その際に均質な粉末が得られるまで混合する。乾燥させ、540℃で4時間か焼する。
【0043】
100グラムの1% Cu(NH3)4交換OS3 −
硝酸銅(II)三水和物3.80gを秤量し、脱イオン水50g中に溶解させる。30質量パーセントの水酸化アンモニウム溶液(約3.0g)を銅溶液に、ブルーブラックの銅テトラミン溶液が得られるまで添加する。ついで、銅テトラミン溶液をOS2(乾燥) 100gに添加して、その際に均質な粉末が得られるまで混合する。乾燥させ、540℃で4時間か焼する。
【0044】
100グラムの2.5% Fe−トリエタノールアミン交換OS3 −
硝酸鉄(III)九水和物18.08gを秤量し、脱イオン水400g中に溶解させる。トリエタノールアミン43.4を秤量する。前記硝酸鉄溶液をトリエタノールアミン溶液中へ、激しく撹拌しながらゆっくりと注ぐ。鉄溶解度は、アンモニアの形で限定される。正確な比は、硝酸鉄九水和物1gあたり水22g及びトリエタノールアミン2.4gである。鉄−トリエタノールアミン溶液が調製されると、それをOS3(乾燥) 100gに添加する。生じたスラリーは、低い粘度を有する流体になる。スラリー混合物を回転蒸気蒸発器中で乾燥させる。ついで540℃で4時間か焼する。
【0045】
OS1=44%CeO2;42%ZrO2/HfO2;9.5%La2O3;4.5%Pr6O11
OS2=40%CeO2;50%ZrO2/HfO2;5%La2O3;5%Pr6O11
OS3=31.5%CeO2;58.5%ZrO2/HfO2;5%La2O3;5%Y2O3
全ての組成は質量%として引用される
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化セリウムを含有する金属酸化物担体材料を溶解されたカチオンの前駆物質溶液と、高いpH/低いヒドロニウムイオン(H3O+)/低いプロトン(H+)含量の条件下で接触させ、ここで高いpHは約8.0〜約9.5の値を指す、引き続きこうして交換/促進されたセリウムを含有する酸化物を乾燥及びか焼して、いずれの溶剤を除去し、かつカチオンを高度に分散された金属の又は金属酸化物集合又はクラスターへ変換することに基づく、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びIIIb族金属からなる群から選択される高度に分散された金属原子又は金属イオンを含有する触媒材料を製造する方法。
【請求項2】
使用されるカチオン溶液が、前記金属カチオンのアンモニア性錯体を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カチオン溶液が、前記金属カチオンの有機アミン錯体を含有する、請求項1及び/又は2記載の方法。
【請求項4】
前記カチオン溶液が、前記金属カチオンの水酸化物化合物を含有する、請求項1から3までの1つ又はそれ以上に記載の方法。
【請求項5】
前記材料を、350℃を超える温度でか焼して、金属前駆物質を最終的に分散された金属/金属酸化物状態へ変換する、請求項1から4までの1つ又はそれ以上に記載の方法。
【請求項6】
こうして導入された金属種の濃度は、約0.01質量%〜約10質量%である、請求項1から5までの1つ又はそれ以上に記載の方法。
【請求項7】
酸化セリウムが、セリウム及びジルコニウム酸化物(Ce−Zr酸化物)の固溶体である、請求項1から6までの1つ又はそれ以上に記載の方法。
【請求項8】
Ce−Zr酸化物が、酸素イオン伝導性を有する実質的に純相の固溶体であり、かつ
a.ジルコニウム約95%まで
b.セリウム約95%まで
c.希土類、イットリウム及び前記安定剤の少なくとも1つを含んでなる組合せからなる群から選択される安定剤約20%まで
を含んでなる、請求項1から7までの1つ又はそれ以上に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8までの1つ又はそれ以上に記載の方法により製造された材料であって、前記担体は、XRDによる相分析が、促進された材料が1100℃での水熱酸化エージング後に少なくとも95%の立方晶蛍石相を維持していることを示し、かつ常用の温度プログラムされた還元(TPR)により測定される低温で高められる酸素イオン伝導率を示す分散の高いレベルで金属を含有し、ドープされていない担体と比較した場合に、促進の程度は、金属助触媒のタイプ及び濃度に関係しているが、しかし母体となる材料に比較して、TPR極大値を約50℃〜約500℃に低下させる、材料。
【請求項10】
請求項1から8までの1つ又はそれ以上に記載の方法により製造された材料であって、前記担体は、XRDによる相分析が、促進された材料が1100℃での水熱酸化エージング後に少なくとも95%の立方晶蛍石相を維持していることを示す分散の高いレベルで金属を含有し、かつTPRにより測定されるレドックスの促進が、1100℃での水熱酸化エージング後に実質的に維持される、材料。
【請求項11】
請求項1から8までの1つ又はそれ以上に記載の方法により得られた材料であって、こうして導入された金属種の濃度が0.1質量%〜約2.5質量%である、材料。
【請求項12】
生じた生成物は、常用のX線回折法による相分析が実質的に純相の立方晶蛍石相(>95%)を表す分散の高いレベルで金属を含有し、その際にバルク金属酸化物ドーパント相が<5%で記録され、かつ線幅の広がり/シェーラーの式測定により測定されるドーパント金属酸化物粒度が、約30Å〜約100Åである、請求項11記載の材料。
【請求項13】
生じた生成物は、XRDによる相分析が、促進された材料が1100℃での水熱酸化エージング後に少なくとも95%の立方晶蛍石相を維持することを示す分散の高いレベルで金属を含有する、請求項11及び/又は12の1又はそれ以上に記載の材料。
【請求項1】
酸化セリウムを含有する金属酸化物担体材料を溶解されたカチオンの前駆物質溶液と、高いpH/低いヒドロニウムイオン(H3O+)/低いプロトン(H+)含量の条件下で接触させ、ここで高いpHは約8.0〜約9.5の値を指す、引き続きこうして交換/促進されたセリウムを含有する酸化物を乾燥及びか焼して、いずれの溶剤を除去し、かつカチオンを高度に分散された金属の又は金属酸化物集合又はクラスターへ変換することに基づく、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びIIIb族金属からなる群から選択される高度に分散された金属原子又は金属イオンを含有する触媒材料を製造する方法。
【請求項2】
使用されるカチオン溶液が、前記金属カチオンのアンモニア性錯体を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カチオン溶液が、前記金属カチオンの有機アミン錯体を含有する、請求項1及び/又は2記載の方法。
【請求項4】
前記カチオン溶液が、前記金属カチオンの水酸化物化合物を含有する、請求項1から3までの1つ又はそれ以上に記載の方法。
【請求項5】
前記材料を、350℃を超える温度でか焼して、金属前駆物質を最終的に分散された金属/金属酸化物状態へ変換する、請求項1から4までの1つ又はそれ以上に記載の方法。
【請求項6】
こうして導入された金属種の濃度は、約0.01質量%〜約10質量%である、請求項1から5までの1つ又はそれ以上に記載の方法。
【請求項7】
酸化セリウムが、セリウム及びジルコニウム酸化物(Ce−Zr酸化物)の固溶体である、請求項1から6までの1つ又はそれ以上に記載の方法。
【請求項8】
Ce−Zr酸化物が、酸素イオン伝導性を有する実質的に純相の固溶体であり、かつ
a.ジルコニウム約95%まで
b.セリウム約95%まで
c.希土類、イットリウム及び前記安定剤の少なくとも1つを含んでなる組合せからなる群から選択される安定剤約20%まで
を含んでなる、請求項1から7までの1つ又はそれ以上に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8までの1つ又はそれ以上に記載の方法により製造された材料であって、前記担体は、XRDによる相分析が、促進された材料が1100℃での水熱酸化エージング後に少なくとも95%の立方晶蛍石相を維持していることを示し、かつ常用の温度プログラムされた還元(TPR)により測定される低温で高められる酸素イオン伝導率を示す分散の高いレベルで金属を含有し、ドープされていない担体と比較した場合に、促進の程度は、金属助触媒のタイプ及び濃度に関係しているが、しかし母体となる材料に比較して、TPR極大値を約50℃〜約500℃に低下させる、材料。
【請求項10】
請求項1から8までの1つ又はそれ以上に記載の方法により製造された材料であって、前記担体は、XRDによる相分析が、促進された材料が1100℃での水熱酸化エージング後に少なくとも95%の立方晶蛍石相を維持していることを示す分散の高いレベルで金属を含有し、かつTPRにより測定されるレドックスの促進が、1100℃での水熱酸化エージング後に実質的に維持される、材料。
【請求項11】
請求項1から8までの1つ又はそれ以上に記載の方法により得られた材料であって、こうして導入された金属種の濃度が0.1質量%〜約2.5質量%である、材料。
【請求項12】
生じた生成物は、常用のX線回折法による相分析が実質的に純相の立方晶蛍石相(>95%)を表す分散の高いレベルで金属を含有し、その際にバルク金属酸化物ドーパント相が<5%で記録され、かつ線幅の広がり/シェーラーの式測定により測定されるドーパント金属酸化物粒度が、約30Å〜約100Åである、請求項11記載の材料。
【請求項13】
生じた生成物は、XRDによる相分析が、促進された材料が1100℃での水熱酸化エージング後に少なくとも95%の立方晶蛍石相を維持することを示す分散の高いレベルで金属を含有する、請求項11及び/又は12の1又はそれ以上に記載の材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2011−526197(P2011−526197A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501154(P2011−501154)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002262
【国際公開番号】WO2009/118189
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002262
【国際公開番号】WO2009/118189
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】
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