説明

排尿状況記録装置

【課題】 特に専門知識を持たない排尿障害を持つ患者が、家庭だけでなく出先のトイレであっても、簡便かつ衛生的に排尿量を継続的に測定し、合わせて患者にもたらす経済的な負担が小さな排尿情報記録装置量を提供するものである。
【解決手段】 本発明では、被験者の排尿状況を記録する排尿状況記録装置において、被験者が携帯可能な大きさの筐体と、前記被験者の一回の排尿行為を排尿行為単位として認識して記録する排尿行為単位記録手段と、前記被験者の排尿時刻と排尿が継続した時間である尿流時間とを含む排尿時間情報を入力するために前記被験者が操作する排尿時間情報入力手段と、少なくとも前記排尿時間情報を含む排尿状況情報を前記排尿行為単位に関連付けて排尿状況記録として記憶する排尿状況記録手段と、を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排尿情報記録装置を被験者が携帯可能とすることに係り、特に専門知識を持たない被験者であっても、家庭や職場などに限らずあらゆる場所において、トイレに限定されること無く、簡便に排尿情報の記録を残すことに好適な、排尿状態を把握するための排尿状況記録装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
排尿障害のある患者に対して、排尿時刻と排尿量とをある程度の長期間にわたって継続して記録した排尿記録は排尿日誌と称され、泌尿器科や婦人科の医師が患者の排尿障害状態を把握するために有益な情報とされている。そのため、患者はビーカー等で排尿量を測定して排尿時刻とともに、所定の記録帳票に記録していた。
【0003】
この場合、健康な場合の排尿は5〜6回/日程度とされているが、排尿障害を持つ患者の場合は排尿回数が多くなることも多い。例えば1週間程度の期間継続して排尿記録を取得しようとすると、測定自体が大変な手間となり、加えて、尿こぼれ等による測定場所の汚れや、使用するビーカーの排尿後との洗浄等、使用器具の後始末も必要であるという問題があった。
【0004】
ここで、前述したような排尿障害を持つ患者の中には、症状が入院を必要としない比較的軽度のため、定期的な通院による治療を行なう患者も多い。このような場合には、測定の継続のため患者の家庭での測定が必要となる。しかしながら、この場合は患者自身だけで測定・記録だけでなく、使用器具の後始末まで行なうことになり、患者自身だけでは大きな負担となる。そのため、家族や介護者の協力を求めることも考えられるが、その協力を行なうだけの時間的な余裕が家族や介護者にない等の問題もあった。
【0005】
またこのように、家庭等で被験者自身が排尿時刻と排尿量とをある程度の長期間にわたって継続して記録をとるためには、当然のことながら、測定機器が必要となる。
【0006】
衛生的に尿量を測定するものとして、洋風大便器に併設され、排泄しただけで排尿時刻情報だけでなく、排尿量を含めた排尿情報を自動測定できる装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
この装置は、普段通りのトイレで排泄するだけで排尿情報を測定することができ、かつ、排泄物を処理するための作業が不要という利点があり、排尿記録をとって普段通りの排尿状態を知るという点では最も推奨される方式である。しかし家庭に設置されたトイレを排尿情報測定機能付きトイレに交換する必要があることから、患者の費用負担が大きく、疾病が改善された後はトイレから尿量測定機能が不要になることを鑑みると、その導入には経済的な問題があった。仮に経済的な問題を克服して装置を家庭に導入したと仮定しても、疾病を持つ患者は測定値を得るために常に所定の便器で排泄することを強いられ、家庭から外出することができないという問題もあった。即ち、排尿行為は被験者の日常において不定期に起こるものであり、それを継続してトイレの便器に併設された装置でのみ行なうようにすることは、被験者の日々の行動を制約することとなる。
【0008】
また、マイクロ波帯の波長の電波のドップラー効果を利用した電波センサーで尿流を検出して、その尿流検知時間から排尿量を推定して洗浄水量を制御するものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
しかし、この場合に用いられている技術は、排尿時間と尿量との関係を一定と見做して排尿量を推定するものであり、実際の排尿時間と尿量との関係は個人によって異なるため性能的な限界があり、個人を対象とする医療用の目的に使用するような高精度の尿量情報を測定することはできない。仮に前記マイクロ波の波長のドップラー効果を利用した電波センサーを被験者に対してチューニングして、所定の精度で尿量が測定できるようになったとしても、当該装置を取り付けた便器から離れることができないという意味では、前述と同じく、疾病を持つ患者が家庭から外出することを妨げるという意味では同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3876919号公報
【特許文献2】特開2004−100357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、特に専門知識を持たない排尿障害を持つ患者が、家庭だけでなく出先のトイレであっても、簡便かつ衛生的に排尿量を継続的に測定し、合わせて患者にもたらす経済的な負担が小さな排尿情報記録装置量を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、被験者の排尿状況を記録する排尿状況記録装置において、被験者が携帯可能な大きさの筐体と、前記被験者の一回の排尿行為を排尿行為単位として認識して記録する排尿行為単位記録手段と、前記被験者の排尿時刻と排尿が継続した時間である尿流時間とを含む排尿時間情報を入力するために前記被験者が操作する排尿時間情報入力手段と、少なくとも前記排尿時間情報を含む排尿状況情報を前記排尿行為単位に関連付けて排尿状況記録として記憶する排尿状況記録手段と、を有していることを特徴とすることにより、
特に専門知識を持たない排尿障害を持つ患者が、家庭だけでなく出先のトイレであっても不定期に起こる尿意に応じて、簡便かつ衛生的に排尿量を継続的に測定し、合わせてストップウォッチに類似した簡略な携帯機器で所定の機能を得ることができるため、患者にもたらす経済的な負担を小さくすることを可能とした。
【0013】
また、請求項2記載の発明のよれば、前記被験者の単位時間当たりの排尿量である尿流率と前記尿流時間とから、排泄された前記被験者の尿量を算出する尿量算出手段を有することを特徴とすることにより、被験者が受信している医療機関で医療関係者が確認した情報によって、排尿に関する相関情報である平均尿流率を利用して、より医学的に有用性の高い尿量を推定することを可能とした。測定結果は定期的に医療関係者の確認を受けるため、被験者が誤った使い方をしたとしても、直ぐに使用方法の誤りを修正する方法を指導することも可能である。
【0014】
また、請求項3記載の発明のよれば、被験者の排尿時の感覚情報または就寝情報を含む被験者の排尿行為に付帯する情報を排尿付帯情報として被験者の操作によって入力する排尿付帯情報入力手段を有し、前記排尿状況記録に前記排尿付帯情報を含むことを特徴とすることにより、被験者が忘れがちな情報を都度記録することで、医療関係者が病状に関する理解を誤らないようにすることを可能とした。
【0015】
また、請求項4記載の発明のよれば、前記排尿状況記録を外部に排尿状況記録出力として出力する外部出力手段を有することを特徴とすることにより、被験者が測定したデータに対してコンピュータを使用した各種解析に供することを可能とした。特に被験者のデータに対して長期間に渡って動向を把握する場合、電子データとして外部出力できることは有益である。
【0016】
また、請求項5記載の発明のよれば、前記排尿状況記録出力が前記排尿状況記録を所定期間の一覧リスト形式であることを特徴とすることにより、日々の経時的な排尿動向を一目で把握できるだけでなく、従来から記録されてきた臨床情報との比較も一目で実施できるようにすることを可能とした。
【0017】
また、請求項6記載の発明のよれば、前記外部出力手段は、前記排尿時間情報入力手段の入力経緯を排尿経過時間に対する尿流有無のパターンチャートとして出力することを特徴とすることにより、医療関係者は被験者の尿流途絶状態を一目で確認できるようになり、病状診断をより短時間で実現できるようにすることを可能とした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特に専門知識を持たない排尿障害を持つ患者が、排尿する時に、ストップウォッチのような簡便な操作を実施するだけで、トイレ装置に限定なく排尿量の記録を得ることができるため、家庭だけでなく出先のトイレでも測定が可能となり、患者の行動を制限することが無く、かつ測定にかかる費用も低廉なものとすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の排尿情報記録装置の外観を示す平面図である。
【図2】本発明の排尿情報記録装置の第一の実施形態における装置構成を示すシステムブロック図である。
【図3】本発明の排尿情報記録装置の第ニの実施形態における装置構成を示すシステムブロック図である。
【図4】本発明の排尿情報記録装置で排尿状況記録を作成する場合における被験者の動作のフローチャートである。
【図5】本発明の排尿情報記録装置で得られた排尿状況記録に基づいて作成された排尿日誌の1出力事例である。
【図6】本発明の排尿情報記録装置で得られた排尿状況記録に基づいて作成された排尿日誌における尿流パターンチャートの1出力事例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の排尿情報記録装置の外観を示す平面図である。図1を使用して、被験者が自身の排尿に合わせて排尿日誌を記録する方法を詳説する。
【0021】
携帯排尿日誌記録装置100の本発明における筐体となる本体1は、被験者が携帯することを想定したものであり、その大きさは携帯電話や携帯電子ゲーム機器と同等のサイズである。ストラップ2を付設して、紛失や落下の防止に配慮されている。便器に付属されたものであったり、測定後に洗浄・清掃を伴うものでなく、カバンに入れて持ち運び可能とすることにより、被験者が排尿日誌を記録する必要があっても外出に関わる行動を制限しないよう配慮されている。また外観は携帯電話やゲーム機などのように見せることで、他人に見られても違和感が生じないようになっている。
【0022】
本体1の下部はスイッチ類が開閉可能なカバー3で覆われており、非定常操作のスイッチと定常的に使用するスイッチを区別している。上部には例えば液晶の表示手段4が設けられており、排尿日誌のベースとなる年月日時刻、排尿時刻・尿流時間が少なくとも表示されるようになっている。さらに、推定尿量、感覚情報、起床・就寝情報などを、カバー3内に配置されたカーソルスイッチ5を使用してスクロール表示できるようになっている。メニュースイッチ6、決定スイッチ7、およびカーソルスイッチ5は、年月日時刻や平均尿流率など普段使用することの無い操作を実施するためのものである。
【0023】
本体1の右肩には尿流時刻入力スイッチ8が配置されている。1回目の操作で排尿時刻を記録すると共に、尿流時間の計時を開始し、2回目の操作で計時を終了して尿流時間を記録するようになっている。感覚情報記録スイッチ9は、排尿の度に感じた感覚を被験者が記録するために操作するスイッチである。カバー3内に配置されている行動情報記録スイッチ10は、被験者の起床や就寝といった生活パターンを入力するスイッチである。排尿スイッチ15は一回の排尿を排尿行為単位として登録するためのものであり、排尿を開始するに際と排尿を終えた際に操作する。
【0024】
図2は、本発明を適用した排尿情報記録装置の第一の実施形態における装置構成を示すシステムブロック図である。図2を使用して、排尿情報記録装置使用した排尿記録作成システムにおける各部の働きを詳説する。
【0025】
各部の動作は、制御手段20がコントロールを行い、制御手段20は設定や入力内容や測定結果などを報知するための表示手段21、排状況記録を記憶する排尿情報記憶手段22、および結果を外部に伝送するための外部出力手段23で構成されている。
【0026】
時刻演算手段30は、排尿日誌のベースとなる年月日時刻と尿流時間演算のベースとなる排尿時刻を演算する。尿流時間演算手段40は排尿開始と排尿終了を入力するスイッチであり、その入力結果によって、尿流演算手段41は被験者の排尿毎の尿流時間を演算する。平均尿流率入力手段42によって医療機関で測定された平均尿流率(mL/s、単位時間当たりの排尿量の平均)が入力された場合、尿量演算手段43は尿流時間に平均尿流率を乗じて尿量に換算するようになっている。
【0027】
排尿付帯情報入力手段50は被験者の排尿に対して感覚情報と起床・就寝情報を入力するものであり、感覚情報51と行動情報52が入力される。感覚情報51としては、排尿毎の「切迫感(我慢するのが難しかったか?)」、「漏れ(下着を汚すことなく排尿できたか?)」、「排尿有無(尿意を感じて本当に排尿できたか?)」が臨床的に必要な情報とされている。
【0028】
行動情報52としては、起床と就寝の時刻が入力される。朝、起きた時と夜、寝る前にトイレに行くのが一般的な行動パターンであり、朝一回目の排尿時に起床スイッチ、夜就寝前に就寝スイッチを押す。通常、1日の排尿回数は8回、就寝中の排尿は0〜1回とされているが、被験者の行動スケジュールが分かることで、被験者の排尿障害が患者の生活の質にどれだけ影響を与えているかが分かるようになっている。
【0029】
本事例では、記憶された測定結果情報は外部出力手段23から半導体記憶装置としてのメモリーカードなどの記憶媒体60に移されて、医療機関のコンピューター70から排尿日誌80として取り出せるようになっている。
【0030】
図3は、本発明を適用した排尿情報記録装置の第ニの実施形態における装置構成を示すシステムブロック図である。図3を使用して、排尿情報記録装置を使用した排尿記録作成システムにおける各部の働きを、第一の実施形態との違いに主眼を置いて詳説する。
【0031】
本図では、尿量算出に必要な平均尿流率の入力を医療機関で実施することを想定している。排尿情報記録装置100で測定されるのは、測定日の行動パターン、排尿毎の尿流時間と感覚情報であり、それらの測定結果情報を外部出力手段23から記憶媒体60を介して医療機関のコンピューター70に移される。コンピューター70に入力された平均尿流率71を使用して、排尿日誌80が取り出されようになっている。
【0032】
平均尿流率が安定している患者の場合は平均尿流率を予め排尿情報記録装置100に入力しておく図2のシステムで運用した方が簡便であるが、診察を受ける間隔で改善や悪化が見られる場合は、医療機関で被験者の平均尿流率を確認しながら平均尿流率の入替が可能な図3のシステムの方が効率的である。
【0033】
図4は、本発明の排尿情報記録装置で排尿状況記録を作成する場合における被験者の動作のフローチャートである。図4を使用して、被験者の動作と操作の関係を詳説する。ここで、(a)は使用開始前に行なう初期設定操作の動作フローであり、(b)は尿流時間入力手段40で行なう動作フローであり、(c)は排尿付帯情報入力手段50で行なう動作フローである。
【0034】
初期設定操作は図4(a)で示すように、S101は装置内の時計の時刻設定操作であり、排尿情報のベースとなる年月日時刻が設定され、計時を開始する。S102は平均尿流率を入力するステップである。平均尿流率は各被験者毎に入力される値である。平均尿流率が入力されない場合、一覧出力されるのは尿流時間のみであり、図3のシステムブロック図で示されたように別途医療機関で入力される平均尿流率によって尿量は別途演算されることになる。
【0035】
尿流時間情報入力操作は図4(b)で示すように、被験者がトイレに排尿開始に際して、まず排尿スイッチ15を押して排尿開始操作S201を行なう。すると、そのときの時刻Tが排尿時刻としてS202で記憶される。
その後、排尿を開始して尿流が放出され始めたときに、S203で尿流時刻入力スイッチ8を押して尿流開始時刻t1の入力が行なわれる。そして、尿流が途切れると再び尿流時刻入力スイッチ8を押して尿流終了時刻t2の入力が行なわれる(S204)。次に尿流開始時刻t1と尿流終了時刻t2からt2−t1として尿流時間が算出され積算記憶される(S205)。
【0036】
この尿流時刻入力スイッチ8の操作を排尿行為が終了するまで繰り返し(S206)、排尿がすべて終了すると、再び、排尿スイッチ15を押して排尿終了操作を行なう(S207)。次に、感覚情報記録スイッチ9で排尿したときの排尿感覚を入力する(S208)。以上の操作で一回の排尿時の操作が終わると得られた入力情報を含むすべての測定情報が排尿情報算出手段22によって記憶される(S209)。
【0037】
このとき、制御手段20は、S206で排尿終了操作が行なわれると、制御手段20は、積算されたt2−t1を一回の排尿行為における尿流時間として記憶する。また、この尿流時間に平均尿流率を乗じて尿量を算出して記憶する。
【0038】
ここで、S201及びS207での排尿スイッチ15の2回の操作によって、被験者のこの間の排尿行為が一回の排尿行為単位として認識され、その間の排尿情報が一回の排尿行為単位に関係付けられて記憶される。従って、排尿スイッチ15は、本発明における排尿行為単位記録手段を構成している。
【0039】
なお、以上の説明では、尿流が途中で何度も途切れる症例の被験者を想定して、排尿開始操作と排尿終了操作を繰返しても、分断された尿流時間が積算されるように構成されているが、途切れない被験者場合は尿流時間の積算処理は行なわれないようになっている。
【0040】
排尿付帯情報入力操作は図4(c)で示すように、被験者は、朝起床してトイレに行ったときにS301で起床を入力し、起床時刻がS302で記録される。夜就寝する前にトイレに行ったときにS303で就寝を尿力し、就寝時刻がS304で記録され、動作フローは終了する。これを日毎に繰り返すことで、排尿日誌作成に必要な排尿状況記録が日単位に記録されるようになっている。
【0041】
図5は、本発明の排尿情報記録装置で記録された排尿情報に基づいて、外部に設置されているコンピュータ70によって作成された排尿日誌80の1出力事例である。本事例では24時間制によって夜間排尿量を積算し、その比率を総排尿量と比較して夜間排尿量率を演算している。排尿量は尿流時間に平均尿流率を乗じることで各排尿回数毎に演算され、各排尿毎の感覚情報と共に1行で表示されている。図5を使用して、出力された排尿日誌の内容と臨床活用方法について詳説する。
【0042】
本図において、排尿日誌は2009年1月10日11時42分に出力され、尿量推定のために使用された平均尿流率は5.7mL/sとなっている。その下からが日毎の排尿状況記録であり、1番上に2009年1月3日の排尿状況記録が出力されている。被験者はこの日は1日に9回排尿し、総排尿量は1165mLである。
【0043】
そして、この欄の最左欄には夜間排尿マークが付されている。この日、起床を入力したのは6時11分であり、起床時の排尿は就寝中に膀胱に溜まったのだから夜間排尿として記録される。また、就寝を入力したのは21時11分であり、それより後の時間帯が夜間排尿である。
【0044】
この事例を臨床的に検討すると、排尿回数は多くないものの、各排尿に切迫感があり、夜間に排尿のために離床することが多く、生活の質が大きく低下しているものと推測され、特に総排尿量が少ないことから排尿回数を減らすために飲む水の量を節制している可能性があると推測される。
【0045】
図6は、本発明の排尿情報記録装置で作成された排尿日誌における尿流パターンチャートの1出力事例である。図6を使用して、出力された排尿日誌における尿流パターンチャートの内容と臨床活用方法について詳説する。
【0046】
本発明において、被験者は自らの排尿に合わせて尿流時刻入力スイッチ8を操作することになるため、尿流の途絶状態が判別できることになる。下段は医療機関で使用される尿流率(単位時間当たりの排尿量)の経時変動を測定したグラフであるが、尿流途絶状態が簡便に識別できるため、医療関係者は患者の状態をより簡便に認識できることになる。また、今まで医療機関でしか尿流の途絶状態が測定できなかったのに対して、家庭でも測定できることから患者QOLの低下状態を医師は認識することができ、より診断精度を向上させることができるようになる。
【符号の説明】
【0047】
1…本体
2…ストラップ
3…カバー
4…表示部
5…カーソルスイッチ
6…メニュースイッチ
7…決定スイッチ
8…尿流時刻入力スイッチ
9…感覚情報記録スイッチ
10…行動情報記録スイッチ
15…排尿スイッチ
20…制御手段
21…表示手段
22…排尿情報記憶手段
23…外部出力手段
30…時刻演算手段
40…尿流時間演算手段
41…尿流演算手段
42…平均尿流率演算手段
43…尿量演算手段
50…排尿付帯情報入力手段
51…感覚情報
52…行動情報
60…記憶媒体
70…コンピューター
80…排尿日誌
90…排尿行為単位記録手段
100…排尿状況記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の排尿状況を記録する排尿状況記録装置において、
被験者が携帯可能な大きさの筐体と、
前記被験者の一回の排尿行為を排尿行為単位として認識して記録する排尿行為単位記録手段と、
前記被験者の排尿時刻と排尿が継続した時間である尿流時間とを含む排尿時間情報を入力するために前記被験者が操作する排尿時間情報入力手段と、
少なくとも前記排尿時間情報を含む排尿状況情報を前記排尿行為単位に関連付けて排尿状況記録として記憶する排尿状況記録手段と、
を有することを特徴とする排尿状況記録装置。
【請求項2】
さらに、前記被験者の単位時間当たりの排尿量である尿流率と前記尿流時間とから、
排泄された前記被験者の尿量を算出する尿量算出手段を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の排尿状況記録装置。
【請求項3】
さらに、被験者の排尿時の感覚情報または就寝情報を含む被験者の排尿行為に付帯する情報を排尿付帯情報として被験者の操作によって入力する排尿付帯情報入力手段を有し、
前記排尿状況記録に前記排尿付帯情報を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の排尿状況記録装置。
【請求項4】
さらに、前記排尿状況記録を外部に排尿状況記録出力として出力する外部出力手段を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいづれか1項に記載の排尿状況記録装置。
【請求項5】
さらに、前記外部出力手段の出力する排尿状況記録出力が所定期間の一覧リスト形式であることを特徴とする請求項4に記載の排尿状況記録装置。
【請求項6】
さらに、前記外部出力手段は、前記排尿時間情報入力手段の入力経緯を排尿経過時間に対する尿流有無のパターンチャートとして出力する、
ことを特徴とする請求項4に記載の排尿状況記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−223673(P2010−223673A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69662(P2009−69662)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】