説明

排気ガス再循環装置

【課題】EGRガス流量センサが故障してもEGRバルブの制御が正しく続けられる排気ガス再循環装置を提供する。
【解決手段】排気マニホールド3と吸気マニホールド4が複数のEGR配管5で接続され、各EGR配管5にそれぞれEGRガス流量を検出するEGRガス流量センサ8とEGRバルブ6とが設置され、制御部7は、いずれかひとつのEGRガス流量センサ8が故障のとき、健全なEGRガス流量センサ8が検出するEGRガス流量を故障したEGRガス流量センサ8の検出値に代用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR配管に設置したEGRガス流量センサでEGRガス流量を検出する排気ガス再循環装置に係り、EGRガス流量センサが故障してもEGRバルブの制御が正しく続けられる排気ガス再循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス対策として、排気ガス再循環装置(Exhaust Gas Recirculation;EGR)は必須である。エンジンの運転状態(以下、エンジン状態という)や環境によりEGR配管を流れるEGRガス流量(=EGR量)の適切な値や吸気マニホールドに吸気されるガス全体中に含まれる排気ガスの割合であるEGR率の適切な値は変化するので、EGRガス流量を制御する必要がある。
【0003】
従来は、EGRガス流量を直接検出することは行われていない。このため、EGRガス流量を適切に制御するには、吸気管に設置された空気流量センサ(Mass Airflow sensor;MAFセンサ)が検出する吸入空気流量を利用してフィードバック制御を行う。すなわち、エンジン状態に応じて望ましいEGRガス流量となるように、エンジン状態ごとに目標吸入空気流量を設定しておき、エンジン状態で読み出した目標吸入空気流量と空気流量センサが検出する吸入空気流量との偏差が小さくなるように、EGRバルブと吸気スロットル(Intake Throttle)バルブをPIDフィードバック制御器でフィードバック制御する。PIDとは、比例制御(Proportional Control)と積分制御(Integral Control)と微分制御(Derivative Control)とを組み合わせたものである。
【0004】
排気ガス中の汚染物質低減のためには、吸気の状態、例えば、シリンダに吸入されたガス中の酸素濃度(吸気酸素濃度)を精度よく制御する必要があるが、従来の空気流量センサが検出する吸入空気流量のみを利用した制御では、吸気の状態を十分に精度よく制御できない。具体的には、吸気温度や吸気圧力の変化、エンジン状態や環境の変化により、EGRガス流量及びシリンダ吸入ガスの酸素濃度が変化するため、吸入空気流量のみを利用した制御では、吸気酸素濃度を精度よく保つことができない。
【0005】
また、エンジン状態が急変化する過渡時には、吸気経路の遅れ、EGR経路の遅れ、過給器の遅れなどにより、空気流量センサで検出される吸入空気流量の変化と吸気酸素濃度の変化との間に時間差が生じる。このため、空気流量センサで検出される吸入空気流量によるフィードバック制御でEGRガス流量を制御しても、エンジンを排気ガス中の汚染物質低減に適切な燃焼状態に保つことはできない。
【0006】
そこで、吸気温度、吸気圧力、排気酸素濃度などのセンサで検出される量を利用して吸気酸素濃度を推定計算し、その推定計算された吸気酸素濃度をフィードバック制御することによりEGRガス流量を制御することが提案されている。このとき、吸気酸素濃度の推定計算は、実験的に得られたデータからパラメータを決定して計算が行われる。そして、吸入空気量と吸気酸素濃度との関係からEGRガス流量が計算される。しかし、排気圧力変化などの外乱によりパラメータが変化するため、外乱に適合したパラメータを得るためのパラメータテーブルが膨大になる。
【0007】
また、エンジンのシリンダの吸排気を行う吸気バルブや排気バルブの開閉時期を調節できる可変バルブ機構が採用された場合には、さらにダイナミックにパラメータが変化してしまい、適合ができない。
【0008】
これに対し、本出願人は、EGRガス流量を直接検出することを提案している。例えば、空気流量センサと同じ原理を利用したEGRガス流量センサをEGR配管に設置することで、EGRガス流量を直接検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4457815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
EGRガス流量センサをEGR配管に設置することにより、検出されたEGRガス流量とエンジン状態ごとに設定してある目標EGRガス流量とを比較しながらエンジン状態に応じてEGRバルブを開度制御することが可能になる。
【0011】
しかし、このような制御を行うと、EGRガス流量センサが故障したときにEGRバルブの制御が異常になる。EGRガス流量センサは、高温高圧となるEGR配管に設置されるため、低温低圧の吸気管に設置される空気流量センサに比べて故障率が高いと予想される。したがって、EGRガス流量センサが故障したときの対策が必要である。
【0012】
また、EGR配管におけるEGRガス流量は、エンジンの各シリンダにおける燃焼サイクル動作に伴い脈動する。このため、EGRガス流量センサの出力も脈動する。これに対して電子制御装置(Electronical Control Unit;ECU)が一定時間ごとにサンプリングを行うと、値にバラツキが生じる。一定個数のサンプリングデータを平均することで、個々のデータ間のバラツキは解消されるように思えるが、回転数が変わると平均期間におけるクランク角度が異なってくるため、脈動によるバラツキは解消されない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、EGRガス流量センサが故障してもEGRバルブの制御が正しく続けられる排気ガス再循環装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、エンジンの排気マニホールドと吸気マニホールドがEGR配管で接続され、前記EGR配管にEGRガス流量を調節するEGRバルブが設置され、EGRガス流量が目標EGRガス流量となるように前記EGRバルブを制御する制御部が設けられた排気ガス再循環装置において、前記排気マニホールドと前記吸気マニホールドが複数のEGR配管で接続され、各EGR配管にそれぞれEGRガス流量を検出するEGRガス流量センサと前記EGRバルブとが設置され、前記制御部は、いずれかひとつのEGRガス流量センサが故障のとき、健全なEGRガス流量センサが検出するEGRガス流量を故障したEGRガス流量センサの検出値に代用するものである。
【0015】
前記制御部は、前記吸気マニホールドにおける吸気圧力と前記吸気マニホールドにおける吸気温度とからシリンダへの吸入ガス流量を演算し、前記シリンダへの吸入ガス流量から吸気管への吸入空気量を差し引いてEGRガス流量理論値を演算し、EGRガス流量センサが検出するEGRガス流量がEGRガス流量理論値より閾値以上異なるとき、当該EGRガス流量センサが故障と判定してもよい。
【0016】
前記制御部は、全てのEGRガス流量センサが故障のとき、EGRガス流量理論値を全てのEGRガス流量センサの検出値に代用してもよい。
【0017】
前記制御部は、EGRガス流量センサの出力を繰り返し読み取り、所定のクランク角度間に読み取られた値を平均してEGRガス流量としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0019】
(1)EGRガス流量センサが故障してもEGRバルブの制御が正しく続けられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態を示す排気ガス再循環装置を適用したエンジンの構成図である。
【図2】本発明の排気ガス再循環装置におけるEGRガス流量センサ出力の平均処理を説明する特性図であり、(a)は6気筒1系統の場合、(b)は6気筒2系統の場合を示す。
【図3】本発明に用いるEGRガス流量センサの特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0022】
図1に示されるように、本発明に係る排気ガス再循環装置1は、エンジン2の排気マニホールド3と吸気マニホールド4がEGR配管5で接続され、EGR配管5にEGRガス流量を調節するEGRバルブ6が設置され、EGRガス流量が目標EGRガス流量となるようにEGRバルブ6を制御する制御部7が設けられた排気ガス再循環装置1である。
【0023】
排気ガス再循環装置1は、排気マニホールド3と吸気マニホールド4が複数のEGR配管5(5a,5b)で接続され、各EGR配管5a,5bにそれぞれEGRガス流量を検出するEGRガス流量センサ8(8a,8b)とEGRバルブ6(6a,6b)とが設置されている。EGRガス流量センサ8は、図示のように、クーラとEGRバルブ6との間に設置してもよいし、EGRバルブ6と吸気マニホールド4との間に設置してもよい。
【0024】
本実施形態では、エンジン2の吸排気系が2系統に分割形成されている。すなわち、排気マニホールド3は互いに独立した排気マニホールド3a,3bからなり、吸気マニホールド4は互いに独立した吸気マニホールド4a,4bからなる。エンジン2の吸排気系が1系統のみの場合、あるいは3系統以上の場合でも本発明は適用できる。
【0025】
本実施形態では、エンジン2は6気筒である。エンジン2が6気筒以下の場合、あるいは6気筒以上の場合でも本発明は適用できる。
【0026】
6気筒で吸排気系が2系統のエンジン2において、6つのシリンダ9のうち、#1〜#3に対して排気マニホールド3aと吸気マニホールド4aが設けられ、#4〜#6に対して排気マニホールド3bと吸気マニホールド4bが設けられる。EGR配管5aは、排気マニホールド3aと吸気マニホールド4bを接続し、EGR配管5bは、排気マニホールド3bと吸気マニホールド4aを接続する。この構成により、#1〜#3のシリンダ9の排気は#4〜#6のシリンダ9に再循環され、#4〜#6のシリンダ9の排気は#1〜#3のシリンダ9に再循環されることになる。
【0027】
EGRガス流量センサ8a,8bは、空気流量センサと同じ原理、すなわち流体流路に電熱線と温度センサを挿入し、電熱線に一定の電流を流したときに温度センサが検出する温度の単位時間における上昇の度合いから単位時間に単位断面積を流れる流体の質量が測定できるようにしたものである。EGR配管5の断面積は既知であるから、EGR配管5を流れるEGRガス流量が検出できる。EGRガス流量センサ8a,8bは、空気流量センサよりも温度に対する耐久性を高めたものである。
【0028】
制御部7は、ECU10内に設けられる。
【0029】
制御部7は、EGR配管5におけるEGRガス流量の脈動によるバラツキを排除するために、EGRガス流量センサ8の出力を繰り返し読み取り、クランク軸が所定のクランク角度回転する間に読み取られた複数個の値を平均してEGRガス流量とするようになっている。クランク角度はクランク軸回転センサ、カム軸回転センサなどにより検出される。平均を行うクランク角度は、脈動の周期を考慮して設定する。例えば、図2(a)に示されるように、エンジン2が6気筒で吸排気系が1系統であれば、脈動の周期は120°であるから、120°とするのが好ましく、図2(b)に示されるように、エンジン2が6気筒で吸排気系が2系統であれば、脈動の周期は240°であるから、240°とするのが好ましい。エンジン2が4気筒で吸排気系が1系統であれば180°とするのが好ましい。
【0030】
制御部7は、EGRガス流量センサ8の故障を判定するために、吸気マニホールド4における吸気圧力PINMと吸気マニホールド4における吸気温度TINMとからシリンダ9への吸入ガス流量MCYLを式(1)により演算し、式(2)によりシリンダ9への吸入ガス流量MCYLから吸気管への吸入空気量MAIRを差し引いてEGRガス流量理論値MTEOを演算することができる。
【0031】
【数1】

【0032】
ここで、吸気圧力PINMは、吸気マニホールド4に設置された圧力センサで検出される。シリンダ9の容積(排気量とも言う)VCYLは、既知で固定の値である。空気のガス定数RAIRは、287.1J/(kg・K)である。吸気温度TINMは、吸気マニホールド4に設置された温度センサで検出される。
【0033】
体積効率(体積効率係数とも言う)ηは、シリンダ9の容積に対するシリンダ9に吸入できるガス流量を示す係数である。シリンダ9に吸入できるガス流量は、シリンダ9の容積いっぱいに達するとは限らず、エンジン状態によって異なる。よって、体積効率ηは、1以下の値であり、エンジン状態によって0.9、0.8などの値となる。演算に用いる体積効率ηは、吸気マニホールド4における吸気圧力PINMとエンジン回転数Neとをパラメータとするテーブルに設定され、吸気圧力PINMとエンジン回転数Neとによって参照される。排気圧力PEXMも計測し、吸気圧力PINMの代わりに、排気圧力PEXM/吸気圧力PINMとエンジン回転数Neとによって参照してもよい。
【0034】
【数2】

【0035】
ここで、シリンダ9への吸入ガス流量MCYLは、式(1)により演算して求めたものである。吸気管への吸入空気量MAIRは、空気流量センサで検出される。吸入ガス流量MCYLから吸入空気量MAIRを差し引くとEGRガス流量理論値MTEOとなる。
【0036】
制御部7は、EGRガス流量センサ8が検出するEGRガス流量MEGRが式(2)により演算して求めたEGRガス流量理論値MTEOより閾値以上異なるとき、当該EGRガス流量センサ8が正しい値を示さない故障であると判定するようになっている。このための閾値は、実験結果に基づき設定し、EGRガス流量センサ8が極端な異常値を出力しているとき、故障と判定するようにする。
【0037】
さらに制御部7は、図3に示されるように、EGRガス流量センサ8の出力電圧がEGR配管5によって可能な最大流量に相当する値から最小流量=0に相当する値までの範囲内にあれば、その出力電圧を検出したEGRガス流量MEGRを表すものと判定するが、EGRガス流量センサ8の出力電圧が範囲外にあるとき、例えば、電源電圧5Voltにクランプされているとき、あるいはグランド電圧0Voltにクランプされているときは、断線、短絡等の電気的故障であると判定するようになっている。
【0038】
制御部7は、いずれかひとつのEGRガス流量センサ8が故障のとき、健全なEGRガス流量センサ8が検出するEGRガス流量を故障したEGRガス流量センサ8の検出値に代用するようになっている。
【0039】
制御部7は、全てのEGRガス流量センサ8a,8bが故障のとき、EGRガス流量理論値MTEOを全てのEGRガス流量センサ8a,8bの検出値に代用するようになっている。EGRガス流量センサ8が1つのみのエンジン2においては、そのEGRガス流量センサ8が故障のとき、EGRガス流量理論値MTEOをEGRガス流量センサ8の検出値に代用することになる。
【0040】
制御部7は、EGRガス流量を利用する演算処理として、排気マニホールド3のガス中に含まれる空気の質量割合である排気ガス空気質量割合AREXHを式(3)により演算するようになっている。
【0041】
【数3】

【0042】
ここで分子の第1項は、空気流量センサが検出する吸気管への吸入空気量MAIRである。第2項は、EGRガス流量センサ8が検出するEGRガス流量MEGRにEGR配管5における空気質量割合AREXMをかけて得られるEGRガス中の空気量である。第3項は、燃料噴射量MFUELに理論空燃比AFSをかけて得られる消費された空気量である。理論空燃比AFSは、単位量の燃料を酸素の過不足なく燃焼させる空気の量で表され、例えば、14.6である。分母の第1項は、式(1)で演算されたシリンダ9への吸入ガス流量MCYLである。第2項は、燃料噴射量MFUELである。
【0043】
制御部7は、EGRガス流量を利用する演算処理として、吸気マニホールド4のガス中に含まれる空気の質量割合である吸気空気質量割合ARINMを式(4)により演算するようになっている。
【0044】
【数4】

【0045】
ここで分子の第1項は、空気流量センサが検出する吸気管への吸入空気量MAIRである。第2項は、EGRガス流量センサ8が検出するEGRガス流量MEGRにEGR配管5における空気質量割合AREXMをかけて得られるEGRガス中の空気量である。分母は、式(1)で演算されたシリンダ9への吸入ガス流量MCYLである。吸気マニホールド4における吸気酸素濃度O2INMは式(5)により演算することができる。
【0046】
【数5】

【0047】
制御部7は、式(5)により演算した吸気酸素濃度O2INMを利用して、EGRバルブと吸気スロットルバルブをフィードバック制御するようになっている。すなわち、制御部7は、エンジン回転数と燃料噴射量と水温とにより、あらかじめ設定された目標吸気酸素濃度テーブルから目標吸気酸素濃度TO2INMを読み取る。また、制御部7は、吸気マニホールド4に設置された圧力センサで検出される吸気圧力PINMと、吸気マニホールド4に設置された温度センサで検出される吸気温度TINMと、空気流量センサで検出される吸気管への吸入空気量MAIRと、EGRガス流量センサ8が検出するEGRガス流量MEGRとから、式(1)〜(5)により吸気酸素濃度O2INMを演算する。制御部7は、目標吸気酸素濃度TO2INMに対して演算した吸気酸素濃度O2INMが近づくように、目標吸気酸素濃度TO2INMと吸気酸素濃度O2INMの偏差Eがゼロとなるよう、PIDフィードバック制御器でEGRバルブと吸気スロットルバルブをフィードバック制御する。
【0048】
制御部7は、式(6)によっても吸気酸素濃度O2INMを演算することができる。
【0049】
【数6】

【0050】
ここで、分子の第1項は、空気流量センサが検出する吸気管への吸入空気量MAIRに大気中酸素濃度O2AIRをかけたものである。第2項は、EGRガス流量センサ8が検出するEGRガス流量MEGRに排気中酸素濃度O2EXをかけたものである。排気中酸素濃度O2EXは、排気管に設置した酸素濃度センサ(O2センサ)で検出するか、又は、吸入空気量MAIRと燃料噴射量から算出することができる。分母の第1項は吸入空気量MAIRであり、第2項はEGRガス流量MEGRである。
【0051】
なお、エンジン状態が急変している過渡時には、EGRガス流量センサ8でEGRガス流量MEGRが検出されたEGR配管5のEGRガスが吸気マニホールド4に流れ込み吸入空気と混合されるまでの遅れを考慮するのが望ましい。例えば、あらかじめ時定数を設定しておき、EGRガス流量MEGRに対して時定数を用いたフィルタを適用する。エンジン状態が定常的な場合には、遅れは考慮しなくても問題ない。
【0052】
以下、本発明の排気ガス再循環装置1の動作を説明する。
【0053】
排気ガス再循環装置1の制御部7は、目標吸気酸素濃度TO2INMに対して吸気酸素濃度O2INMが近づくように、EGRバルブと吸気スロットルバルブをフィードバック制御する。このとき、制御部7は、EGRガス流量センサ8が検出するEGRガス流量MEGRを吸気酸素濃度O2INMを求める演算に使用する。
【0054】
制御部7は、EGRガス流量センサ8のうちのひとつ、例えば、EGRガス流量センサ8aが検出するEGRガス流量MEGRがEGRガス流量理論値MTEOより閾値以上異なるとき、当該EGRガス流量センサ8aが故障と判定する。この場合、制御部7は、健全なEGRガス流量センサ8bが検出するEGRガス流量MEGRを故障したEGRガス流量センサ8aの検出値に代用することで、吸気酸素濃度O2INMを求める演算を継続する。2系統の吸排気系は均等に構成されているので、EGRガス流量はほぼ同じであるから、EGRガス流量センサ8bが検出するEGRガス流量MEGRをEGRガス流量センサ8aの検出値に代用しても、全てのEGRガス流量センサ8a,8bが健全なときとほぼ同じような制御が達成できる。
【0055】
制御部7は、全てのEGRガス流量センサ8a,8bが故障のとき、EGRガス流量理論値MTEOを全てのEGRガス流量センサ8a,8bの検出値に代用する。式(1)、式(2)によって演算されるEGRガス流量理論値MTEOは、健全なEGRガス流量センサ8が検出するEGRガス流量MEGRに比べて正確さに劣るが、制御が破綻しない程度であるので、修理までの期間、EGRガス流量センサ8a,8bの検出値に代用しても、極端に排気ガス性能が悪化することはなく、問題はない。
【0056】
以上説明したように、本発明の排気ガス再循環装置1によれば、複数のEGR配管5にそれぞれ設置されたEGRガス流量センサ8のうち、いずれかひとつのEGRガス流量センサ8が故障のとき、健全なEGRガス流量センサ8が検出するEGRガス流量を故障したEGRガス流量センサ8の検出値に代用するので、複数のEGRバルブ6の制御が正しく続けられる。
【0057】
本発明の排気ガス再循環装置1によれば、ECU10が所定のサンプリングインターバルでEGRガス流量センサ8の出力を繰り返し読み取り、所定のクランク角度間に読み取られた値を平均してEGRガス流量MEGRとするので、ノイズ等による個々のサンプリングデータのバラツキはもとより、脈動によるバラツキが好適に排除される。
【符号の説明】
【0058】
1 排気ガス再循環装置
2 エンジン
3 排気マニホールド
4 吸気マニホールド
5 EGR配管
6 EGRバルブ
7 制御部
8 EGRガス流量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気マニホールドと吸気マニホールドがEGR配管で接続され、
前記EGR配管にEGRガス流量を調節するEGRバルブが設置され、
EGRガス流量が目標EGRガス流量となるように前記EGRバルブを制御する制御部が設けられた排気ガス再循環装置において、
前記排気マニホールドと前記吸気マニホールドが複数のEGR配管で接続され、
各EGR配管にそれぞれEGRガス流量を検出するEGRガス流量センサと前記EGRバルブとが設置され、
前記制御部は、いずれかひとつのEGRガス流量センサが故障のとき、健全なEGRガス流量センサが検出するEGRガス流量を故障したEGRガス流量センサの検出値に代用することを特徴とする排気ガス再循環装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記吸気マニホールドにおける吸気圧力と前記吸気マニホールドにおける吸気温度とからシリンダへの吸入ガス流量を演算し、前記シリンダへの吸入ガス流量から吸気管への吸入空気量を差し引いてEGRガス流量理論値を演算し、EGRガス流量センサが検出するEGRガス流量がEGRガス流量理論値より閾値以上異なるとき、当該EGRガス流量センサが故障と判定することを特徴とする請求項1記載の排気ガス再循環装置。
【請求項3】
前記制御部は、全てのEGRガス流量センサが故障のとき、EGRガス流量理論値を全てのEGRガス流量センサの検出値に代用することを特徴とする請求項2記載の排気ガス再循環装置。
【請求項4】
前記制御部は、EGRガス流量センサの出力を繰り返し読み取り、所定のクランク角度間に読み取られた値を平均してEGRガス流量とすることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の排気ガス再循環装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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