説明

排気ガス処理装置

【課題】
本発明の課題は、排気ガスを処理する処理液を、ポンプなどの駆動源を使用することなく、排気ガスを排出する排気管内に供給し、排気管内に流入する排気ガスを処理することができる排気ガス処理装置を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、流入管は接続管を介して貯蔵タンクと接続され、排気管は、供給管を介して貯蔵タンクと接続されているため、絞り部によって生じた差圧が供給管を介して貯蔵タンク内の処理液を供給する圧力となる。ポンプなどの駆動源を備えることなく、排気ガスを本発明の排気ガス処理装置に流入させることで排気管内に処理液を供給することができ、排気管内の排気ガスを処理液によって処理することができる。すなわち、消費エネルギーの少ない排気ガス処理装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関で燃料の燃焼によって排出される排気ガスから、排気ガス中に含まれるPMを除去する排気ガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電や自動車や船舶等、化石燃料を多く使用する場面が多くなっている。これに伴い、化石燃料を燃焼することにより発生する酸化窒素化合物(NO)、酸化硫黄化合物(SO)、粒子状物質(PM:particulat materials)が大気中に放出され、大気汚染等の問題を引き起こしている。
【0003】
このPMは、粒子状の物質の1つで、一般に粒径で分類されている。その粒径が10μm以下のPMは、SPM(suspended particulate materials)と呼ばれ、中でも粒径が2.5nmと特に小さいPMは、PM2.5と呼ばれ、人体や動物に対しても悪影響を与えることが明らかになっている。
【0004】
特にPMの発生量の多いディーゼル燃料をはじめとする種々の化石燃料を使用する装置から排出されるPMに対する対策は、緊急かつ重要な課題となっており、PMを効率よく除去する方法及び装置が開発されている。
【0005】
本発明者らは、効率的にPMを除去することができる装置を開発している(例えば、特許文献1参照)。この装置によれば、精油を含有する水溶液から発生する蒸気と気体流中のPMと接触し、形成された吸着体をスチールウール等で捕集することができる。これにより、PM等を含む排気ガス中からPM等の有害物質を効率的に除去することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−172130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、本発明の発明者らが開発した装置により、内燃機関から排出される排気ガスからPM等の有害物質を除去することができるようになった。そして、更なる研究により、排気ガスを排気する排気管内に供給し、排気ガス中のPM等の有害物質を除去するように処理することができる処理液を、ポンプ等を用いずに排気管内に供給することができる排気ガス処理装置を開発するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、排気ガスを処理する処理液を、ポンプなどの駆動源を使用することなく、排気ガスを排出する排気管内に供給し、排気管内に流入する排気ガスを処理することができる排気ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の排気ガス処理装置は、内燃機関から排出される排気ガスを処理液によって処理する排気ガス処理装置であって、前記処理液を貯蔵する貯蔵タンクと、前記排気ガスが流入する流入管と、前記流入管に接続され、前記流入管の内径よりも小さい内径を有する絞り部と、前記絞り部に接続され、前記絞り部の内径よりも大きい内径を有し、前記流入管に流入した前記排気ガスを排気する排気管と、前記流入管及び前記貯蔵タンクを接続する接続管と、前記貯蔵タンク内の前記処理液を前記排気管に供給するように、前記排気管及び前記貯蔵タンクを接続する供給管とを有することを特徴とする。
【0010】
この排気ガス処理装置は、排気ガスが流入する流入管と、排気ガスを排出する排気管との間に、流入管及び排気管よりも内径の小さい絞り部を備えることで、流入管側と排気管側とで圧力の差が生じる。そして、流入管は接続管を介して貯蔵タンクと接続され、排気管は、供給管を介して貯蔵タンクと接続されているため、絞り部によって生じた差圧が供給管を介して貯蔵タンク内の処理液を供給する圧力となる。この圧力によって、貯蔵タンク内の液面が押され、供給管を介して貯蔵タンクから排気管に処理液が供給される。
【0011】
また、本発明の排気ガス処理装置は、内燃機関から排出される排気ガスを処理液によって処理する排気ガス処理装置であって、前記処理液を貯蔵する貯蔵タンクと、前記排気ガスが流入する流入管と、前記流入管に接続され、前記流入管の内径よりも小さい内径を有する絞り部と、前記絞り部に接続され、前記絞り部の内径よりも大きい内径を有し、前記流入管に流入した前記排気ガスを排気する排気管と、前記貯蔵タンク内の前記処理液を前記排気管に供給するように、前記排気管及び前記貯蔵タンクを接続する供給管と、前記貯蔵タンクに大気を流入させる大気流入口とを有することを特徴とする。
【0012】
この排気ガス処理装置は、排気ガスが流入する流入管と、排気ガスを排出する排気管との間に、流入管及び排気管よりも内径の小さい絞り部を備えることで、大気圧に近い流入管側よりも排気管側の圧力が小さくなる。大気流入口から大気が流入する貯蔵タンク内の圧力は大気圧であるため、絞り部によって低下した排気管側の圧力との差が供給管を介して貯蔵タンク内の処理液を供給する圧力となる。この圧力によって、貯蔵タンク内の処理液を吸い上げ、供給管を介して貯蔵タンクから排気管に処理液が供給される。
【発明の効果】
【0013】
これにより、ポンプなどの駆動源を備えることなく、排気ガスを本発明の排気ガス処理装置に流入させることで排気管内に処理液を供給することができ、排気管内の排気ガスを処理液によって処理することができる。すなわち、消費エネルギーの少ない排気ガス処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の排気ガス処理装置と接続される内燃機関との関係を示すブロック図である。本発明の排気ガス処理装置1は、図1のように、内燃機関2に接続されており、内燃機関2から排出される排気ガスを流入させる。そして、その排気ガス中のPM等の有害物質を後述する処理液を使用して処理することで、PM等の有害物質を除去し、有害物質を含まない排気ガスを大気に排出することができる。以下、本発明の排気ガス処理装置1について図面を参照しながら説明する。
【0015】
内燃機関2は、ガソリン、軽油、灯油、A重油、B重油、C重油等といった化石燃料を燃焼させることで、エネルギー、動力を得ることができ、例えば、車両、船舶等の移動体や発電機(発電所を含む)やボイラーといったものである。そして、内燃機関2は、化石燃料を燃焼させることで生成する二酸化炭素をはじめとする気体と共に、例えば粒子状物質(PM)を、排気ガスとして排気している。近年、この排気ガス中のPMが人体に有害であるとして問題となっており、本発明の排ガス処理装置は、このPM等の有害物質を除去することができるものである。
【0016】
内燃機関2から排気される排気ガス中に含まれるPMは、種々の同素体炭素からなる炭素粒子を含む粒子状物質で、この炭素粒子の周囲に燃料や内燃機関2により構成成分が異なるものの、炭酸塩炭素、ベンゾピレン、アントラセン等の多環芳香族炭化水素、1−ニトロピレン、ジニトロピレン等の多環芳香族炭化水素類のニトロ化誘導体、ブタン、ブテン、ヘキサン、ヘキセン、オクタン、オクテン、デカン、ドデカン等の鎖状炭化水素、アジピン酸、グルタル酸等のカルボン酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸等が付着している。
【0017】
内燃機関2から排出される排気ガス中に含まれるこのPMは、内燃機関2や燃料や燃料の燃焼条件等により異なり、限定されるものではないが、大気等の気体中に浮遊する大凡10μm以下の大きさを有している。この大きさの粒子に下記で説明する処理液を接触させることで、PMの粒径を大きくして、PMを回収することができる。
【0018】
排気ガスを処理する処理液は、排気ガス中のPM等の有害物質と接触することで、除去、無害化することできる液体であれば特に限定するものではないが、例えば以下のような液体が挙げられる。例えば、処理液は、植物の抽出によって得られる親油性成分0.01wt%〜1wt%と、植物の抽出によって得られる親水性成分20wt%〜25wt%とを含有する。本発明において使用する親油性成分と、親水性成分を得るために使用する植物は特に限定されないが、ヒノキ科の植物、ツバキ科の植物、イチョウ科の植物、イネ科の植物およびシソ科の植物から選ばれる植物から得られるものであることが好ましい。
【0019】
親油性成分と親水性成分を得るための植物は、特に限定するものではないが、ヒノキ科の植物、スギ科の植物、ブナ科の植物、マツ科の植物、ツバキ科の植物、イチョウ科の植物、イネ科の植物、シソ科植物が挙げられ、これらは含炭素粒子の粒径の拡大に効果的である。
【0020】
また、具体的には、ヒノキ科の植物として、青森産ヒバ、ヒノキ、台湾ヒノキ、エンピツビャクシン、セイヨウヒノキ、ネズミサシ、ベニヒ、ヒバ、ヒノキアスナロ等が挙げられる。青森産ヒバは、青森県を産地とするヒバをいい、この幹や枝や葉等からは、ロジン酸α−ツヤプリシン、β−ツヤプリシン、ヒノキチオール、ツヨプセン、セドロール、カルバクロールなどのフェノール類、ジペンテン、サビネン、ボルネオール、サビノールを中心としたモノテルペノイド、酢酸サビニル、セスキテルペノイドならびにヒバエンなどのジテルペノイド等の成分が抽出できる。
【0021】
また、台湾ヒノキは、台湾を主産地し、この葉や根等からは、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、p−シメン、γ−テルピネン、d−サビネン、テルピネオール、リナロール、ツヨプセン、β−エレメン、α−セドレン、エレモール、ビドロール、セドロール、ヒノキチオール、α−ツヤプリシン、トロポロイド、ヒノキチン等の成分が抽出できる。そして、ヒノキは、日本特産種で、その根や幹や葉等からは、α−ピネン、ボルネオール、γ−カジネン、α−カジノール、ヒノキオール等の成分が抽出できる。
【0022】
スギ科の植物として、スギ、イカリスギ、セコイア、メタセコイア等が挙げられる。スギは、日本の多くを産地とし、この幹や枝や葉等から、クリプトメリオール、クリプトメリジオール、δ−カジネン、β−オイデスモール、スギオール、スギネン、セスキテルペン、β−システロール、セスキテルペン、スギオール、ジペンテン、カヤフラバノン、ソテツフラボン、d−カテロール等の成分が抽出できる。
【0023】
ブナ科の植物として、ブナ、コナラ、クヌギ、クリ、ブナ、スダジイ等が挙げられる。ブナは、日本に広く分布し、この幹や枝や葉等から、フラボノイド類を含むブナ油等が抽出できる。コナラは、ナラとも呼ばれ、日本及び朝鮮半島に広く分布し、この幹や枝や葉等から、タンニン類等を含むナラ油等の成分が抽出できる。
【0024】
マツ科の植物として、アカマツ、クロマツ、ゴヨウマツ、カラマツ、トドマツ等が挙げられる。アカマツは、日本に広く分布し、この幹や枝や葉から、種々の成分を有するマツ油が抽出できる。
【0025】
ツバキ科の植物として、茶、ツバキ、サザンカ等が挙げられる。茶は、約300種の成分が含まれ、その葉や枝等から、シス−3−ヘキセノールおよびヘキサン酸エステル、トランス−2−ヘキセン酸エステル、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、シス−ジャスモン、ジャスモン酸メチル、インドール等の成分が抽出できる。
【0026】
イチョウ科の植物として、イチョウ、Baiera、Stenophyllum、Sphaenobaiera等が挙げられる。特に、東アジアを産地とするイチョウ類イチョウ目に属するイチョウの葉は、種々の成分を有するイチョウ油が抽出できる。
【0027】
イネ科の植物として、ホウライチク、ヤダケ、スズタケ、モウソウチク、マダケ、クマザサ、チシマザサ、アズマザサ、オカメザサ等が挙げられる。主に日本を含む東アジアを主産地とするホウライチク、ヤダケ、スズタケ、モウソウチク、マダケは、葉等から種々の成分を有するタケ油が抽出できる。また、クマザサ、チシマザサは、葉等から種々の成分を有するササ油が抽出できる。
【0028】
シソ科の植物として、ラベンダー等が挙げられる。ラベンダーは、フランス、イタリア、ハンガリー、ロシア南部、イギリス、北アメリカ、オーストラリア及び北海道等を主産地とし、このラベンダーの花等から、リナロール、酢酸リナリル、ラバンジュロール、酢酸ラバンジュリル、3−オクタノール、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、シネオール、シトロネラール等の成分が抽出される。
【0029】
上述の各成分は、植物の葉、花、種子、樹皮、果肉、果皮等から抽出され、水に不溶な親油性成分と、水に可溶な親水性成分とを有している。このうち、親油性成分は、一般に精油と呼ばれ、油状から半固体状で得られる揮発性物質である。この揮発性を利用して熱をかけることで植物から親油性成分を抽出することができる。この親油性成分には、テルペン系化合物、脂肪族鎖状化合物、芳香族化合物等も含有されている。また、この親油性成分中には、親水性成分を構成する親水性物質も含まれている。
【0030】
テルペン系化合物は、(Cなる分子式をもつ鎖状および環状の炭化水素で、母体のテルペン系炭化水素と同じ炭素骨格をもつアルコール、アルデヒド、ケトンその他の誘導体も含まれる。テルペン系化合物はイソプレン単位の数によって、ヘミテルペン(C)、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)、トリテルペン(C3048)、ポリテルペン(C等に分類される。
【0031】
一方、親水性成分は、上述した植物中に含まれる親水性物質を含有する水溶液である。この親水性成分は、植物中又は親油性成分中に含まれる親水性物質を水又は親水性の液体で抽出することで親水性物質を含有する水溶液として得られる。
【0032】
親油性成分及び親水性成分の抽出方法は、特に限定するものではないが、例えば水蒸気蒸留が挙げられる。この水蒸気蒸留は、親油性成分の沸点(通常、150〜350℃)より低い温度で行われるため、親油性成分の分解が生じるおそれはほとんどないという利点がある。また、親水性成分は、植物中の水分又は植物とともに入れられた水を蒸発させ、発生した蒸気とともに親水性物質が流出する。
【0033】
以下に、一例として台湾ヒノキの水蒸気蒸留によって、薬液の製造について説明する。ヒノキは、南限が台湾の阿里山、北限が福島県といわれる分布域を有するヒノキ科の常緑高木である。単にヒノキといえば日本特産種を指し、台湾産のものを台湾ヒノキという。台湾ヒノキからは、多くのテルペン類を含み、芳香成分であるヒノキチオールを含む精油が得られる。このような芳香成分はヒノキの心材の部分に存在するが、樹齢60年以上のヒノキになると心材の割合が80%に達するため、樹齢の古いものの方が親油性成分を多く含み好適である。
【0034】
水蒸気蒸留を行う台湾ヒノキの根の部分を、クラッシャーなどを用いて0.5〜1mm角程度の大きさのチップにする。このチップ約500kgをチップに含まれる水分を利用して、所定の温度で、水蒸気蒸留を行う。具体的には、約100〜120℃の温度で2〜6時間程度蒸留し、チップに含有されている親油性成分を蒸気とともに留出させる。温度及び時間は、チップにした木の含水量などにより適宜調節する。水蒸気蒸留によって植物から発生する蒸気を冷却すると、上述のような親油性成分と植物中の親水性物質及び水により構成される親水性成分とが2層に分離し、親油性成分と親水性成分が得られる。なお、使用するヒノキのチップの量によって、抽出時間、蒸留釜の大きさ、蒸留時間などは適宜調整することができる。
【0035】
この親水性成分と親油性成分とを所定の組成となるように混合することで、本発明で使用する薬液が得られる。例えば、混合後の水溶液の組成として、親油性成分を0.01wt%〜1wt%、親水性成分を20wt%〜25wt%となるように混合し、例えば室温から60℃で、30分から2時間以上攪拌することで得られる。この溶液を使用することにより、含炭素粒子を効率的に回収できるとともに、回収した含炭素粒子の精製が容易となる。
【0036】
また、得られた薬液には、必要に応じて適宜、ワックス類を添加してもよい。ワックス類には、天然ワックスと合成ワックスとに大別され、天然ワックスには、カルナウバワックス、木ろう、サトウロウなどの植物ワックスやミツロウ、昆虫ロウ、鯨ロウ、羊毛ロウなどの動物ワックスやパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックスやモンタンワックス、オゾケライトなどの鉱物ワックスが含まれる。また、合成ワックスには、カーボワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ナフタレンワックスなどが含まれる。この薬液は、そのままで使用してもよく、さらに水を加えて適宜希釈して使用してもよい。
【0037】
このような処理液を排気ガスに接触させることで、排気ガス中のPMの粒径を大きくすることができ、本発明の排気ガス処理装置1の下流に備えられる捕捉フィルタ3によってPMを捕捉することができる。また、使用する処理液によっては、排気ガスと処理液を接触させることで、窒素酸化物などを無害化することも可能である。
【0038】
粒径を大きくしたPMを捕捉する捕捉フィルタ3は、粒径を大きくしたPMを捕捉できるものであれば特に限定するものではい。例えば、ハニカム状のフィルタや網目状の多孔質フィルタなどが挙げられ、材質としては、スチール製、セラミック製、耐熱高分子製等が挙げられる。特に、網目状の多孔質セラミックフィルタを使用することで、より効率的に気体中からPMを捕捉し、このフィルタからPMを容易に回収できる。
【0039】
本発明の排気ガス処理装置1は、図2のように、流入管10と、接続管11と、貯蔵タンク12と、供給管13と、絞り部14と、排気管15と、バルブ16と、供給タンク17とを備えている。
【0040】
流入管10は、両端面が開口し、所定の内径Dを有する筒状部材である。この流入管10の一方端面の開口には、内燃機関2と接続されており、内燃機関2から排出される排気ガスが流入する。この流入管10の他方端面の開口には、絞り部14と接続されている。流入管10の他方端面の開口の近傍には、接続管11が接続されており、流入管10内に流入する排気ガスを含む気体が接続管11に流入する。
【0041】
排気管15は、両端面が開口し、所定の内径を有する筒状部材である。この排気管15の一方端面の開口は、装置の外部と接続され、排気ガスを装置外部に排出することができるようになっている。そして、この一方端面の開口の排気方向下流には、図1に示される捕捉フィルタ3が備えられている。
【0042】
また、排気管15の他方端面の開口は、絞り部14と接続されている。さらに、排気管15の他方端面の開口の近傍には、供給管13が接続されており、供給管13から処理液が供給される。この処理液の供給方法は、排気管15内を流れる排気ガスと処理液が効率的に接触することができれば特に限定するものではなく、例えば、排気管15と供給管13との接続箇所にスプレーノズル等を備えて処理液をスプレーするようにする方法などが挙げられる。
【0043】
絞り部14は、両端面が開口した筒状部材で、一方端面の開口に流入管10が接続され、他方端面の開口に排気管15が接続されている。この絞り部14は、その最小の内径dが流入管10から排気管15の方向に向かって徐々に小さくなるテーパー形状を有している。すなわち、絞り部14の最小の内径dは、流入管10の内径Dよりも小さい。
【0044】
例えば図2では、流入管10の最小の内径dは、排気管15との接続箇所の直前となっているが、例えば、絞り部14の中央近傍が最小の内径dとなるように、流入管10から絞り部14の中央近傍に向かって内径を徐々に小さくし、中央近傍から排気管15に向かって内径を徐々に大きくするようになっていても良い。
【0045】
接続管11は、両端面が開口した筒状部材で、流入管10の内径よりも十分に小さい内径を有している。この接続管11の一方端面の開口は、流入管10と接続されている。また、接続管11の他方端面の開口は、貯蔵タンク12の上面に接続されており、接続管11を介して、流入管10内の気体が貯蔵タンク12に流入可能になっている。
【0046】
貯蔵タンク12の上面に接続管11の他方端面の開口が接続されていることで、処理液が接続管11を介して流入管10に供給されることがなくなる。また、排気ガスが直接貯蔵タンク12に流入したいため、処理液と接触して粒径を大きくしたPMが供給管13に流入する量も少なくなり、供給管13が詰まることがなくなる。したがって、排気管15に供給するための圧力が少なくても、円滑に排気管15に処理液を供給することができる。
【0047】
貯蔵タンク12は、所定の内容積を有し、排気ガスを処理する後述する処理液を貯蔵する容器状の部材である。この貯蔵タンク12の形状は特に限定するものではないが、その上面には、接続管11の他方端面の開口が接続され、流入管10内の気体が流入するようになっている。また、貯蔵タンク12には、排気管15と接続されている供給管13の一方端面の開口が、貯蔵タンク12内に貯蔵されている処理液内に存在するように、供給管13が接続されている。
【0048】
供給管13は、両端面が開口した筒状部材で、排気管15の内径よりも十分に小さい内径を有している。この供給管13は、その一方端面の開口が貯蔵タンク12内の処理液の中に存在するように貯蔵タンク12と接続されている。例えば、この供給管13は、一方端面の開口が貯蔵タンク12内の内側底面に接触せずに、その底面の近傍に配置されるように、備えられるのが好ましい。また、供給管13の他方端面の開口は、排気管15と接続されており、貯蔵タンク12内の処理液を排気管15に供給可能となっている。
【0049】
貯蔵タンク12内には、接続管11を介して、流入管10から流入してきた排気ガスが存在するが、供給管13の開口の一端が貯蔵タンク12内の処理液内に存在するようにすることで、処理液のみを排気管15に供給することができる。これにより、供給管13内で、排気管15に供給する処理液とPMが接触することがない。したがって、供給管13内で粒径を大きくしたPMが溜まってしまい供給管13が詰まることがなくなり、排気管15に供給するための圧力が少なくても、円滑に排気管15に処理液を供給することができる。
【0050】
また、供給管13には、制御部としてのバルブ16が備えられており、排気管15に供給する処理液の量をバルブ16で調節することができる。これによって、排気ガス中のPM等の有害物質の量に応じて適宜調節することができる。したがって、排気ガスの処理効率を向上させることも可能となる。
【0051】
供給タンク17は、貯蔵タンク12と接続されており、上述した処理液を貯蔵タンク12に供給する容器状の部材である。この供給タンク17には、例えば図示しないバルブ等が備えられており、供給管13の一方端面の開口が処理液外に露出しないように、貯蔵タンク12内の処理液の量に応じて、供給タンク17内の処理液を貯蔵タンク12に供給する。
【0052】
例えば、貯蔵タンク12内に処理液の液面の高さを検知するセンサーなどを備え付け、そのセンサーの検知に基づいて図示しないバルブを開け閉めし、貯蔵タンク12内の処理液の量を制御することができる。これにより、常に貯蔵タンク12内の処理液の量が一定となるため、供給管13の一方端面の開口が常に処理液内に存在することになる。したがって、排気管15に処理液を連続的に供給することが可能となり、排気ガスの処理能力が向上する。
【0053】
このような構成を有する本発明の排気ガス処理装置1は、以下のように動作する。まず、例えばディーゼルエンジンといった内燃機関2が稼動すると、軽油といった燃料が消費され、内燃機関2から本発明の排気ガス処理装置1に向かって、排気ガスが排出される。内燃機関2には、排気ガス処理装置1の流入管10が接続されているため、内燃機関2から排出された排気ガスは、流入管10に流入する。このとき、貯蔵タンク12内の処理液が排気管15に供給可能となるように、供給管13に備えられるバルブ16が調整される。
【0054】
流入管10に流入した排気ガスは、所定の流量Qと、所定の密度ρとを有し、絞り部14を介して排気管15に向かって流れる。この排気ガスが流入管10から排気管15に向かって流れる際、その圧力は、絞り部14の近傍で変化する。これは、流入管10の内径Dよりも絞り部14の最小の内径dの方が小さいことにより、絞り部14の最小の内径dとなっている箇所の前後で、排気ガスの流速が早くなる。ベルヌーイの定理より、排気ガスの流速が速くなることで、絞り部14の最小の内径dとなっている箇所の圧力が低下し、絞り部14の前後で圧力に差が生じる。
【0055】
したがって、絞り部14の上流側にある接続管11の近傍の圧力Piと、絞り部14の下流側にある供給管13の近傍の圧力Poとを比較すると、Pi>Poという関係となる。したがって、接続管11の近傍の圧力Piと、供給管13の近傍の圧力Poとの差圧Pdは、下記式1のように示される。
【0056】
【数1】

【0057】
内燃機関2から排気ガスが排気されることで絞り部14の前後で生じた圧力の差によって、接続管11の近傍の圧力Piが供給管13の近傍の圧力Poより大きくなるため、流入管10に流入した排気ガスの一部が接続管11に流入する。このとき、接続管11内の圧力は、上述した差圧Pdと理論的に等しい。
【0058】
接続管11は、貯蔵タンク12の上面と接続されていることで、接続管11を流れる排気ガスが流入可能となり、貯蔵タンク12内の処理液に対して圧力Pがかかる。すなわち、この圧力Pで、貯蔵タンク12内に貯蔵されている処理液の液面を押すことになる。
【0059】
液面を押された処理液は、開口が処理液内に配置されるように貯蔵タンク12と接続された供給管13に流入する。供給管13に流入した処理液は、供給管13の他端から排気管15に供給される。すなわち、絞り部14によって生じた差圧Pdが、処理液を排気管15に供給する圧力Pとなる。この圧力Pは、接続管11が備えられている近傍の流入管10の内径Dと、絞り部14の最小の内径dと、排気ガスの流量Q及び密度ρとによって下記式2のように示される。
【0060】
【数2】

【0061】
以上のように、排気管15を流れる排気ガス中のPM等の有害物質を除去する処理液は、本発明の排気ガス処理装置1に排気ガスが流入することで、特別な駆動源を備えることなく、排気管内の排気ガスに処理液を供給することができる。
【0062】
供給管13から排気管15に供給される処理液は、バルブ16を介して、排気ガスの流量、内燃機関2の種類、燃料の種類などによって調整される。処理液が排気管15から供給されると、処理液と排気ガス中のPMとが接触する。これにより、上述のように、周囲のPM同士が集合し、その粒径を大きくする。処理液との接触により粒径を大きくしたPMは、排気ガスとともに排気管15の下流側に流され、捕捉フィルタ3によって捕捉される。
【0063】
したがって、排気ガス中のPMが捕捉フィルタ3によって捕捉されることで、排気ガスと、PMとを完全に分離することができる。排気ガス中のPM以外の有害物質も、PMと同様に処理液と接触することで、処理される。これにより、内燃機関2から排出されるPM等の有害物質を供給管13から排出された処理液で処理することができる。
【0064】
排気管15への処理液の供給により貯蔵タンク12内の処理液が所定量以下となった場合、供給タンク17から貯蔵タンク12に処理液が供給される。これにより、貯蔵タンク12内の処理液が常に一定量以上存在するため、供給管13の一方端面の開口が常に処理液内に存在することになる。したがって、排気管15に処理液を連続的に供給することが可能となり、排気ガスの処理能力が向上する。
【0065】
このように、本発明の排気ガス処理装置1は、ポンプなどの駆動源を備えることなく、排気ガスを流入させることで排気管15内に処理液を供給することができ、排気管15内の排気ガスを処理液によって処理することができる。すなわち、消費エネルギーの少ない排気ガス処理装置を提供することができる。
【0066】
また、本発明の排気ガス処理装置1は、絞り部14を流入管10から排気管15の方向に向かって徐々に小さくすることで、絞り部14で排気ガスが滞ることなく流れる。これにより、排気ガスが流入管10から排気管15に円滑に流れる。したがって、絞り部14での流速が十分に変化しやすくなり、絞り部14の上流側にある接続管11の近傍の圧力Piと、絞り部14の下流側にある供給管13の近傍の圧力Poとの差圧Pdが大きくなりやすい。したがって、排気管15に処理液を供給する圧力Pが大きくなりやすくなり、駆動源がなくても十分に処理液を供給することができる。
【0067】
本発明の排気ガス処理装置は、上述のものに限られず、例えば、図3のような排気ガス処理装置であってもよい。以下、別の形態の排気ガス処理装置について説明するが、上述した形態と同様の部材に関しては説明を省略する。
【0068】
排気ガス処理装置5は、上述した排気ガス処理装置1と同様に、内燃機関2と接続されており、排気ガス処理装置5の下流に捕捉フィルタ3を備えている。この排気ガス処理装置5は、図3のように、流入管10と、貯蔵タンク12と、大気流入口51と、供給管13と、大気供給管52と、液溜め部53と、バルブ54と、絞り部14と、排気管15と、供給タンク17とを備えている。
【0069】
大気流入口51は、上述で説明した接続管11に代わって貯蔵タンク12に備えられており、排気ガス処理装置5の外の大気を貯蔵タンク12内に流入させる開口である。この大気流入口51によって、貯蔵タンク12内は常に大気圧となる。この大気流入口51は、大気を貯蔵タンク12内に流入させることができれば特に限定するものではなく、例えば一端開口を貯蔵タンク12に接続した管状の部材であってもよい。
【0070】
大気供給管52は、両端面が開口した筒状部材で、一方端面の開口に供給管13が接続されている。さらに大気供給管52の他方端面の開口は、排気ガス処理装置5の外部にあり、外部の大気が流入するようになっている。この大気供給管52の一方端面と他方端面との間に、液溜め部53と、バルブ54が備えられている。そして、この大気供給管52は、バルブ54によって大気の流入量が調節される。例えば、排気管15側が大気圧よりも低い圧力であるため、バルブ54が開かれると、大気供給管52を介して供給管13に大気が供給され、供給管13内の処理液量が減少する。これを利用して、大気供給管52及び、バルブ54は、排気管15への処理液の供給量を制御することができる。
【0071】
液溜め部53は、大気供給管52に備えられ、例えば水や上述した処理液といった所望の液体が溜められており、排気ガス処理装置5の起動時に供給管13への大気の流入を防止する。この液溜め部53は、起動時に装置外部と供給管13とを液体によって遮断することができるものであればよい。例えば、図3のように、大気供給管52の一部を下方にクランク状に屈曲させた形状とすることで、大気供給管52に液溜め部53を形成することができる。これにより、排気ガス処理装置5の起動時に、供給管13に大気が流入することがなくなり、排気管15側の圧力が大気圧にならない。排気ガス処理装置5の起動後は、バルブ54を調整することで、液溜め部53内の液体が供給管13に流入し、大気が供給管13に流入可能となり、上述のように、排気管15の処理液の供給量を制御することができる。
【0072】
別の形態の本発明の排気ガス処理装置5は、上述した排気ガス処理装置1と同様に、内燃機関2の稼動により排気ガスが排気ガス処理装置1の流入管10に流入する。流入管10に流入した排気ガスは、絞り部14を介して排気管15に向かって流れる。この排気ガスが流入管10から排気管15に向かって流れる際、上述した排気ガス処理装置1と同様に、排気管15側の圧力が流入管10側の圧力よりも低下する。このとき、流入管10側の圧力は、大気圧に近いため、排気管15の圧力は大気圧よりも低下する。
【0073】
ここで、貯蔵タンク12は、大気流入口51が備えられているため、貯蔵タンク12内の圧力は大気圧となっている。したがって、供給管13を介して貯蔵タンク12と接続されている排気管15と貯蔵タンク12とに圧力の差が生じる。このとき、大気供給管52の液溜め部53には、液体が存在するため、大気供給管52を介して大気が供給管13に流入しない。
【0074】
内燃機関2から排気ガスが排気されることで生じた排気管15と貯蔵タンク12との圧力の差によって、大気が貯蔵タンク12内に流入可能となり、貯蔵タンク12内の処理液を供給管13に吸い上げられる。
【0075】
供給管13に吸い上げられた処理液は、供給管13の他端から排気管15に供給される。供給された処理液は、上述の排気ガス処理装置1と同様に、排気ガスを処理する。このとき、バルブ54を調整することで、供給管13内に大気を供給させて、供給管13内の処理液の供給量を減少させることができる。すなわち、バルブ54を調整することによって、排気管15に供給する処理液の供給量を制御することができる。
【0076】
このように、本発明の排気ガス処理装置5は、ポンプなどの駆動源を備えることなく、排気ガスを流入させることで排気管15内に処理液を供給することができ、排気管15内の排気ガスを処理液によって処理することができる。すなわち、消費エネルギーの少ない排気ガス処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の排気ガス処理装置と接続される内燃機関との関係を示すブロック図である。
【図2】本発明の排気ガス処理装置の構成を説明する図である。
【図3】本発明の別の排気ガス処理装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0078】
1、5 排気ガス処理装置
2 内燃機関
3 捕捉フィルタ
10 流入管
11 接続管
12 貯蔵タンク
13 供給管
14 絞り部
15 排気管
16、54 バルブ
17 供給タンク
51 大気流入口
52 大気供給管
53 液溜め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスを処理液によって処理する排気ガス処理装置であって、
前記処理液を貯蔵する貯蔵タンクと、
前記排気ガスが流入する流入管と、
前記流入管に接続され、前記流入管の内径よりも小さい内径を有する絞り部と、
前記絞り部に接続され、前記絞り部の内径よりも大きい内径を有し、前記流入管に流入した前記排気ガスを排気する排気管と、
前記流入管及び前記貯蔵タンクを接続する接続管と、
前記貯蔵タンク内の前記処理液を前記排気管に供給するように、前記排気管及び前記貯蔵タンクを接続する供給管とを有することを特徴とする排気ガス処理装置。
【請求項2】
前記接続管は、
前記接続管から前記貯蔵タンク内に前記流入内の気体が流入可能なように、前記接続管の前記貯蔵タンク側の一端が前記貯蔵タンクの上面に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス処理装置。
【請求項3】
前記供給管は、
該供給管の前記貯蔵タンク側の一端が前記貯蔵タンク内の前記処理液内に存在するように、前記貯蔵タンクに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス処理装置。
【請求項4】
内燃機関から排出される排気ガスを処理液によって処理する排気ガス処理装置であって、
前記処理液を貯蔵する貯蔵タンクと、
前記排気ガスが流入する流入管と、
前記流入管に接続され、前記流入管の内径よりも小さい内径を有する絞り部と、
前記絞り部に接続され、前記絞り部の内径よりも大きい内径を有し、前記流入管に流入した前記排気ガスを排気する排気管と、
前記貯蔵タンク内の前記処理液を前記排気管に供給するように、前記排気管及び前記貯蔵タンクを接続する供給管と、
前記貯蔵タンクに大気を流入させる大気流入口とを有することを特徴とする排気ガス処理装置。
【請求項5】
前記供給管は、大気が供給される大気供給管と接続され、
前記大気供給管には、液体が溜められる液溜め部が備えられていることを特徴とする請求項4に記載の排気ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−202583(P2008−202583A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42532(P2007−42532)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(598112453)株式会社ジュオン (11)
【Fターム(参考)】