排気微粒子の測定装置
【課題】排気微粒子の測定装置において、排気ガス中の微粒子を精度良く測定可能とする。
【解決手段】排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62を設け、このPMセンサ62を、酸化触媒71と電気ヒータ72を重ね合わせるように固定し、両者の間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73を介装して構成すると共に、この酸化触媒71に排気ガス中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵剤としてのセリアを担持し、ECU51は、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱したときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて排気微粒子の堆積量を算出する。
【解決手段】排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62を設け、このPMセンサ62を、酸化触媒71と電気ヒータ72を重ね合わせるように固定し、両者の間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73を介装して構成すると共に、この酸化触媒71に排気ガス中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵剤としてのセリアを担持し、ECU51は、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱したときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて排気微粒子の堆積量を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス中に含まれる排気微粒子を測定する排気微粒子の測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料を吸気ポートではなく、燃焼室に直接噴射する筒内噴射式内燃機関が従来から知られている。この筒内噴射式内燃機関では、吸気弁の開放時に、空気が吸気ポートから燃焼室に吸入されてピストンにより圧縮され、この高圧空気に対してインジェクタから燃料が直接噴射され、燃焼室内の高圧空気と霧状の燃料とが混合し、この混合気が点火プラグに導かれて着火して爆発することで駆動力を得ることができ、排気弁の開放時に、燃焼後の排気ガスが排気ポートから排出される。
【0003】
このような内燃機関では、燃焼室から排出される排気ガスは、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)などの有害物質を含有することから、排気通路に有害物質を浄化処理する三元触媒が設けられている。また、上述した筒内噴射式内燃機関では、燃焼室にて、高圧縮によって高温となった空気に直接燃料を噴射して着火させるものであり、特に、高負荷時にエンジン出力を上昇させるために燃焼室に大量の燃料を噴射することから、燃焼室が酸欠状態となって排気ガス中に黒煙などの微粒子(PM:Particulate matter)が含まれることがある。
【0004】
このように排気ガスに含まれる排気微粒子の量を測定する技術として、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された煤煙濃度を決定するためのセンサは、多孔性化された成形部材に電気的加熱部材と電気的温度プローブを設けて煤煙センサを構成し、電気的加熱部材により成形部材に堆積した煤煙粒子を燃焼し、この燃焼に起因して起こる熱の発生を電気的温度プローブで測定し、温度上昇を煤煙粒子の燃焼量についての直接の尺度として評価し、この評価から煤煙量を決定するものである。
【0005】
【特許文献1】特開2001−221759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1では、電気的加熱部材により成形部材に堆積した煤煙粒子を燃焼し、電気的温度プローブによりこのときの温度上昇を測定し、この温度上昇に基づいて煤煙量を決定するものである。この場合、電気的加熱部材により成形部材に堆積した煤煙粒子を燃焼するためには、周辺に十分な酸素量が必要となる。ところが、一般的な内燃機関では、空燃比が一定値となるように吸入空気量に基づいて燃料噴射量が決定されており、この空燃比は、通常、ストイキ(理論空燃比)となるように制御される。そのため、煤煙センサの周辺に十分な酸素量がないときには、電気的加熱部材により成形部材を加熱しても、この成形部材に堆積した煤煙粒子を適正に燃焼することができず、煤煙量を高精度に測定することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、排気ガス中の微粒子を精度良く測定可能とした排気微粒子の測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の排気微粒子の測定装置は、排気通路に配設された酸化触媒と、該酸化触媒に担持された酸素吸蔵剤と、前記酸化触媒を加熱する加熱手段と、前記酸化触媒の温度を計測する温度センサと、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱したときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する堆積量算出手段とを具えたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の排気微粒子の測定装置では、前記酸化触媒は、前記排気通路に配設された三元触媒より排気ガスの流動方向の下流側で、且つ、消音器より上流側に配置されたことを特徴としている。
【0010】
本発明の排気微粒子の測定装置では、前記堆積量算出手段は、燃料カット継続時間及び吸入空気量に基づいて前記酸素吸蔵剤による酸素吸蔵量を推定し、この酸素吸蔵量が予め設定された所定値以上であるときに前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴としている。
【0011】
本発明の排気微粒子の測定装置では、前記排気通路における前記酸化触媒の近傍に酸素センサが配設され、前記堆積量算出手段は、該酸素センサの検出結果に基づいて前記酸素吸蔵剤による酸素吸蔵量を推定し、この酸素吸蔵量が予め設定された所定値以上であるときに前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の排気微粒子の測定装置は、排気通路に配設された酸化触媒と、該酸化触媒を加熱する加熱手段と、前記酸化触媒の温度を計測する温度センサと、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱したときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する堆積量算出手段とを具え、該堆積量算出手段は、燃料カット中に前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の排気微粒子の測定装置では、前記堆積量算出手段は、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子を燃焼し、前記酸化触媒が排気微粒子を燃焼不能な温度以下に低下してから吸入空気量の積算を開始し、この吸入空気量の積算値が予め設定された所定値より大きくなったときに前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴としている。
【0014】
本発明の排気微粒子の測定装置では、前記排気通路における前記酸化触媒の近傍に排気温度センサが配設され、前記堆積量算出手段は、該排気温度センサにより検出された排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上になったときに、吸入空気量の積算値をキャンセルして再度吸入空気量の積算を開始することを特徴としている。
【0015】
本発明の排気微粒子の測定装置では、前記堆積量算出手段は、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出するとき、リッチ運転を禁止することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の排気微粒子の測定装置によれば、排気通路に配設された酸化触媒に酸素吸蔵剤を担持し、この酸化触媒を加熱する加熱手段と、酸化触媒の温度を計測する温度センサを設けると共に、加熱手段により酸化触媒を加熱したときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する堆積量算出手段を設けたので、酸化触媒の酸素吸蔵剤は、常時、排気ガス中に存在するが酸素を吸蔵しており、加熱手段により酸化触媒を加熱すると、酸化触媒に捕集された排気微粒子は、酸素吸蔵剤に吸蔵されている酸素を伴って適正に燃焼することとなり、堆積量算出手段は、このときの温度上昇度合に応じて精度良く排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る排気微粒子の測定装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係る排気微粒子の測定装置が適用された内燃機関を表す概略構成図、図2は、実施例1の排気微粒子の測定装置を表す概略図、図3は、実施例1の排気微粒子の測定装置におけるセリア添加量に対するセンサ表面積を表すグラフ、図4は、実施例1の排気微粒子の測定装置におけるセリア添加量に対する排気量を表すグラフ、図5は、実施例1の排気微粒子の測定装置におけるヒータ温度に対するセンサ温度を表すグラフ、図6は、実施例1の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。
【0019】
実施例1の排気微粒子の測定装置が適用された内燃機関において、図1に示すように、内燃機関としてのエンジン10は4気筒筒内噴射式であって、シリンダブロック11上にシリンダヘッド12が締結されており、このシリンダブロック11に形成された複数のシリンダボア13にピストン14がそれぞれ上下移動自在に嵌合している。そして、シリンダブロック11の下部にクランクケース15が締結され、このクランクケース15内にクランクシャフト16が回転自在に支持されており、各ピストン14はコネクティングロッド17を介してこのクランクシャフト16にそれぞれ連結されている。
【0020】
燃焼室18は、シリンダブロック11におけるシリンダボア13の壁面とシリンダヘッド12の下面とピストン14の頂面により構成されており、この燃焼室18は、上部(シリンダヘッド12の下面)の中央部が高くなるように傾斜したペントルーフ形状をなしている。そして、この燃焼室18の上部、つまり、シリンダヘッド12の下面に吸気ポート19及び排気ポート20が対向して形成されており、この吸気ポート19及び排気ポート20に対して吸気弁21及び排気弁22の下端部がそれぞれ位置している。この吸気弁21及び排気弁22は、シリンダヘッド12に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート19及び排気ポート20を閉止する方向(図1にて上方)に付勢支持されている。また、シリンダヘッド12には、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転自在に支持されており、吸気カム25及び排気カム26が吸気弁21及び排気弁22の上端部に接触している。
【0021】
なお、図示しないが、クランクシャフト16に固結されたクランクシャフトスプロケットと、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24にそれぞれ固結された各カムシャフトシャフトスプロケットとは、無端のタイミングチェーンが掛け回されており、クランクシャフト16と吸気カムシャフト23と排気カムシャフト24が連動可能となっている。
【0022】
従って、クランクシャフト16に同期して吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転すると、吸気カム25及び排気カム26が吸気弁21及び排気弁22を所定のタイミングで上下移動することで、吸気ポート19及び排気ポート20を開閉し、吸気ポート19と燃焼室18、燃焼室18と排気ポート20とをそれぞれ連通することができる。この場合この吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24は、クランクシャフト16が2回転(720度)する間に1回転(360度)するように設定されている。そのため、エンジン10は、クランクシャフト16が2回転する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の4行程を実行することとなり、このとき、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が1回転することとなる。
【0023】
また、このエンジン10の動弁機構は、運転状態に応じて吸気弁21及び排気弁22を最適な開閉タイミングに制御する吸気・排気可変動弁機構(VVT:Variable Valve Timing-intelligent)27,28となっている。この吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24の軸端部にVVTコントローラ29,30が設けられて構成され、オイルコントロールバルブ31,32からの油圧をこのVVTコントローラ29,30の図示しない進角室及び遅角室に作用させることによりカムスプロケットに対するカムシャフト23,24の位相を変更し、吸気弁21及び排気弁22の開閉時期を進角または遅角することができるものである。この場合、吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気弁21及び排気弁22の作用角(開放期間)を一定としてその開閉時期を進角または遅角する。また、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24には、その回転位相を検出するカムポジションセンサ33,34が設けられている。
【0024】
吸気ポート19には、吸気マニホールド35を介してサージタンク36が連結され、このサージタンク36に吸気管37が連結されており、この吸気管37の空気取入口にはエアクリーナ38が取付けられている。そして、このエアクリーナ38の下流側にスロットル弁39を有する電子スロットル装置40が設けられている。また、シリンダヘッド12には、燃焼室18に直接燃料を噴射するインジェクタ41が装着されており、このインジェクタ41は、吸気ポート19側に位置して上下方向に所定角度傾斜して配置されている。各気筒に装着されるインジェクタ41はデリバリパイプ42に連結され、このデリバリパイプ42には高圧燃料供給管43を介して高圧燃料ポンプ44が連結されている。更に、シリンダヘッド12には、燃焼室18の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ45が装着されている。
【0025】
一方、排気ポート20には、排気マニホールド46を介して排気管(排気通路)47が連結されており、この排気管47には排気ガス中に含まれるHC、CO、NOxなどの有害物質を浄化処理する三元触媒48,49が装着されると共に、この三元触媒49よりも下流側にマフラ(消音器)50が装着されている。
【0026】
ところで、車両には電子制御ユニット(ECU)51が搭載されており、このECU51は、インジェクタ41や点火プラグ45などを制御可能となっている。即ち、吸気管37の上流側にはエアフローセンサ52及び吸気温センサ53が装着され、また、サージタンク36には吸気圧センサ54が設けられており、計測した吸入空気量、吸気温度、吸気圧(吸気管負圧)をECU51に出力している。また、電子スロットル装置40にはスロットルポジションセンサ55が装着されており、現在のスロットル開度をECU51に出力しており、アクセルポジションセンサ56は、現在のアクセル開度をECU51に出力している。更に、クランク角センサ57は、検出した各気筒のクランク角度をECU51に出力し、このECU51は検出したクランク角度に基づいて各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、エンジン回転数を算出している。また、シリンダブロック11にはエンジン冷却水温を検出する水温センサ58が設けられており、検出したエンジン冷却水温をECU51に出力している。更に、各インジェクタ41に連通するデリバリパイプ42には燃料圧力を検出する燃圧センサ59が設けられており、検出した燃料圧力をECU51に出力している。一方、排気管47には、三元触媒48の上流側及び下流側に位置して排気ガスの酸素濃度を検出する酸素センサ60,61が設けられており、検出した酸素濃度をECU51に出力している。
【0027】
従って、ECU51は、検出した燃料圧力に基づいてこの燃料圧力が所定圧力となるように高圧ポンプ44を駆動すると共に、検出した吸入空気量、吸気温度、吸気圧、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、エンジン冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量(燃料噴射時間)、噴射時期、点火時期などを決定し、インジェクタ41及び点火プラグ45を駆動して燃料噴射及び点火を実行する。また、ECU51は、検出した排気ガスの酸素濃度をフィードバックして空燃比がストイキ(理論空燃比)となるように燃料噴射量を補正している。
【0028】
また、ECU51は、エンジン運転状態に基づいて吸気・排気可変動弁機構27,28を制御可能となっている。即ち、低温時、エンジン始動時、アイドル運転時や軽負荷時には、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップをなくすことで、排気ガスが吸気ポート19または燃焼室18に吹き返す量を少なくし、燃焼安定及び燃費向上を可能とする。また、中負荷時には、このオーバーラップを大きくすることで、内部EGR率を高めて排ガス浄化効率を向上させると共に、ポンピングロスを低減して燃費向上を可能とする。更に、高負荷低中回転時には、吸気弁21の閉止時期を進角することで、吸気が吸気ポート19に吹き返す量を少なくし、体積効率を向上させる。そして、高負荷高回転時には、吸気弁21の閉止時期を回転数にあわせて遅角することで、吸入空気の慣性力に合わせたタイミングとし、体積効率を向上させる。
【0029】
本実施例のエンジン10にて、排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子、具体的には、黒煙などの微粒子(PM:Particulate matter)の量を計測するPMセンサ62が設けられている。このPMセンサ62は、図2に示すように、箱型形状をなし、酸化触媒71とこの酸化触媒71を加熱する加熱手段としての電気ヒータ72が重ね合わされるように密着して固定され、酸化触媒71と電気ヒータ72との間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73が介装されて構成されている。
【0030】
この酸化触媒71は、例えば、セラミックスの多孔部材により多数の排気流路を形成し、酸化触媒としての白金やパラジウムなどの金属が担持されている。また、酸化触媒71には、排気ガス中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵剤としてのセリアが担持されている。この場合、セリアの添加量は、図3に示すように、PMセンサ62(酸化触媒71)の表面積に応じて設定されると共に、図4に示すように、エンジン10の排気量に応じて設定される。
【0031】
従って、PMセンサ62は、酸化触媒71が排気ガス中のHC、CO成分を酸化(酸素と反応)してCO2、H2Oに変換することができると共に、排気ガスが多孔部材を通過することで、この排気ガス中の微粒子、特に、黒煙粒子を捕集することができる。また、酸化触媒71は、セリアが担持されているため、排気ガス中の酸素を吸蔵することができる。そして、PMセンサ62に排気微粒子が捕集されて所定量堆積した状態で、且つ、酸化触媒71における酸素吸蔵量が十分であるときに、電気ヒータ72に通電すると、酸化触媒71が加熱されることで、堆積している排気微粒子がセリアに吸蔵されている酸素を利用して燃焼することとなり、堆積量算出手段としてのECU51は、このときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【0032】
即ち、電気ヒータ72に通電すると、酸化触媒71が加熱されるため、図5に実線で示すように、ヒータ温度が上昇するのに伴って温度センサが検出した酸化触媒71の温度(センサ温度)が比例して上昇する。このとき、酸化触媒71に排気微粒子が堆積していると、酸化触媒71の温度が排気微粒子を燃焼可能な温度まで上昇した時点で、この排気微粒子が燃焼することで、図5に一点鎖線で示すように、温度センサが検出した酸化触媒71の温度(センサ温度)が急激に上昇する。そして、酸化触媒71の排気微粒子が全て燃焼すると、センサ温度が急激に低下する。従って、PMセンサ62の酸化触媒71が排気微粒子を捕集する期間の吸入空気量と、このときの温度上昇量とに基づいて所定のマップを用いて排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【0033】
なお、PMセンサ62は、排気管47に配設された三元触媒49よりも排気ガスの流動方向の下流側で、且つ、マフラ50よりも排気ガスの流動方向の上流側に配置されている。この場合、エンジン10の高負荷運転状態では、排気ガス温度が排気微粒子を燃焼してしまう650℃以上まで上昇するため、高温の排気ガスによりPMセンサ62に堆積している排気微粒子までも燃焼し、堆積量の測定ができなくなってしまう。そこで、PMセンサ62を、排気ガス温度が排気微粒子を燃焼できない温度、例えば、600℃まで低下する、三元触媒49から排気ガスの流動方向に所定距離だけ離れた下流位置に配置する。また、排気管47の下流側の端部が大気に開放されていることから、エンジン10の冷間始動時には、凝縮水がPMセンサ62に到達して破損などが発生するおそれがあるため、PMセンサ62を、排気管47の端部に装着されたマフラ50から排気ガスの流動方向に所定距離だけ離れた上流位置に配置する。
【0034】
ここで、本実施例の排気微粒子の測定装置における排気微粒子の測定方法について、図6のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0035】
ステップS11にて、ECU51は、エンジン10が完全に暖機されたかどうかを判定する。即ち、ECU51は、水温センサ58により検出されたエンジン冷却水温が予め設定されたエンジン暖機水温以上になったかどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温がエンジン暖機水温に到達していないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、エンジン冷却水温がエンジン暖機水温以上になったと判定されたら、ステップS12に移行する。
【0036】
ステップS12にて、ECU51は、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS13にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼したかどうかを判定する。この場合、電気ヒータ72に通電すると、図5に一点鎖線示すように、酸化触媒71に堆積している排気微粒子が燃焼して酸化触媒71の温度(センサ温度)が急激に上昇するが、全ての排気微粒子が燃焼すると、センサ温度が急激に低下し、図5に実線で示す変化に戻る。ECU51は、このセンサ温度変化に基づいて排気微粒子が完全に燃焼したかどうかを判定する。そして、ステップS13にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼するまで、ステップS12,S13の処理を繰り返す。
【0037】
ステップS13にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼されたと判定されたら、ステップS14にて、ECU51は、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止する。そして、ステップS15にて、温度センサ73が酸化触媒71の温度を計測し、ステップS16にて、温度センサ73により計測された酸化触媒71の温度tPMが、排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したかどうかを判定する。このステップS16で、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下するまで、ステップS15,S16の処理を繰り返す。
【0038】
ステップS16にて、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したと判定されたら、ステップS17にて、吸入空気量の積算を開始する。この場合、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下してから、エアフローセンサ52により検出された吸入空気量を積算していく。そして、ステップS18にて、この吸入空気量の積算値Σgaが予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定する。このステップS18で、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなるまで、ステップS17,S18の処理を繰り返す。
【0039】
ステップS18にて、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなったと判定されたら、ステップS19にて、ECU51は、PMセンサ62の周辺に酸素が存在しているかどうかを判定する。本実施例では、PMセンサ62の酸化触媒71にセリアが担持されているため、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下し、エアフローセンサ52により検出された吸入空気量の積算処理を開始してからの所定の空気量積算期間に、酸化触媒71のセリアの周辺環境が酸素を吸蔵可能な環境にあったかどうかを判定する。即ち、この空気量積算期間にて、燃料カット制御の継続時間または積算時間が予め設定された所定時間以上で、且つ、吸入空気量の積算値が予め設定された所定積算値以上であるかを判定することで、セリアによる酸素吸蔵量を推定する。
【0040】
このステップS19で、燃料カット制御の継続時間または積算時間が所定時間以上でなかったり、吸入空気量の積算値が所定積算値以上でなかったときには、酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵していないと判定し、ステップS17〜S19の処理を繰り返す。一方、ステップS19にて、燃料カット制御の継続時間または積算時間が所定時間以上で、且つ、吸入空気量の積算値が所定積算値以上であるときには、酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵していると判定し、ステップS20に移行する。
【0041】
そして、ステップS20にて、ECU51は、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS21にて、このときの酸化触媒71の温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する。即ち、上述した空気量積算期間に計測した吸入空気量の積算値と、温度センサ73が検出した酸化触媒71の温度上昇量とに基づいて所定のマップを用いて排気微粒子の堆積量を算出する。
【0042】
ステップS22では、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼することで、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したかどうかを判定する。この場合、酸化触媒71に堆積した排気微粒子が燃焼することで急激に上昇した酸化触媒71の温度(センサ温度)が低下し、図5に実線で示す変化に戻ることで判定する。そして、ステップS22にて、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了するまで、ステップS20〜S22の処理を繰り返す。
【0043】
従って、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼し、このときの温度変化に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するとき、酸化触媒71の周囲を流れる排気ガス中に酸素が存在しなくても、セリアに吸蔵されている酸素を用いて排気微粒子を確実に燃焼することができ、排気微粒子の堆積量が適正に算出されることとなる。
【0044】
その後、ステップS22にて、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したと判定されたら、ステップS23にて、ECU51は、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止し、全ての処理を終了する。
【0045】
このように実施例1の排気微粒子の測定装置にあっては、排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62を設け、このPMセンサ62を、酸化触媒71と電気ヒータ72を重ね合わせるように固定し、両者の間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73を介装して構成すると共に、この酸化触媒71に排気ガス中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵剤としてのセリアを担持し、ECU51は、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱したときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するようにしている。
【0046】
従って、酸化触媒71のセリアは、常時、排気ガス中に存在するが酸素を吸蔵しており、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱すると、酸化触媒71に捕集された排気微粒子は、セリアに吸蔵されている酸素を伴って適正に燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて精度良く排気微粒子の堆積量を算出することができる。その結果、エンジン10がストイキ(理論空燃比)で運転していても、酸化触媒71のセリアが燃料カット制御中などに排気ガスに混入する酸素を確実に吸蔵するため、確実に排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【0047】
また、ECU51は、事前に、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼し、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したら、エアフローセンサ52により検出された吸入空気量の積算処理を開始するようにしている。従って、測定前に、酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼すると共に、酸化触媒71の温度を排気微粒子が燃焼しない温度まで低下させることで、測定誤差をなくすことができる。
【0048】
更に、ECU51は、エアフローセンサ52により検出された吸入空気量の積算処理を開始してからの所定の空気量積算期間に、燃料カット制御の継続時間または積算時間が予め設定された所定時間以上で、且つ、吸入空気量の積算値が予め設定された所定積算値以上であるかを判定することで、セリアによる酸素吸蔵量を推定している。従って、燃料カット制御と吸入空気量に基づいてセリアの酸素吸蔵量を推定することで、既存の設備で高精度に酸素量を計測し、排気微粒子の堆積量の算出処理を適正に実行することができる。
【0049】
そして、本実施例では、PMセンサ62を、排気管47に配設された三元触媒49よりも排気ガスの流動方向の下流側で、且つ、マフラ50よりも排気ガスの流動方向の上流側に配置している。従って、エンジン10を高負荷運転して排気ガス温度が排気微粒子を燃焼してしまう650℃以上まで上昇しても、排気ガスがPMセンサ62に至るまでにその温度が排気微粒子を燃焼できない温度まで低下することとなり、適正に排気微粒子の堆積量を算出することができる。また、エンジン10の冷間始動であっても、凝縮水がPMセンサ62に到達することはなく、破損などの発生を防止することができる。
【実施例2】
【0050】
図7は、本発明の実施例2に係る排気微粒子の測定装置が適用された内燃機関を表す概略構成図、図8は、実施例2の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0051】
実施例2の排気微粒子の測定装置において、図7に示すように、エンジン10の基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様であるため、説明は省略する。本実施例では、排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62が設けられている。このPMセンサ62は、図2に示すように、酸化触媒71と電気ヒータ72と温度センサ73とから構成されており、酸化触媒71には、排気ガス中の酸素を吸蔵するセリアが担持されている。また、本実施例では、排気管47におけるPMセンサ62の近傍に酸素センサ(O2センサ)63が配設されている。
【0052】
従って、PMセンサ62は、排気管47を流動する排気ガス中の微粒子、特に、黒煙粒子を捕集することができ、酸化触媒71に担持されたセリアが排気ガス中の酸素を吸蔵することができる。そして、PMセンサ62に排気微粒子が捕集されて所定量堆積した状態で、且つ、酸素センサ63の検出結果に基づいて酸化触媒71における酸素吸蔵量が十分であるときに、電気ヒータ72に通電すると、酸化触媒71が加熱されることで、堆積している排気微粒子がセリアに吸蔵されている酸素を利用して燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【0053】
ここで、本実施例の排気微粒子の測定装置における排気微粒子の測定方法について、図8のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0054】
ステップS31にて、エンジン10が完全に暖機されたかどうか、即ち、水温センサ58により検出されたエンジン冷却水温が予め設定されたエンジン暖機水温以上になったかどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温がエンジン暖機水温に到達したら、ステップS32にて、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS33にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼したかどうかを、酸化触媒71の温度変化に基づいて判定する。
【0055】
このステップS33にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼されたと判定されたら、ステップS34にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止する。そして、ステップS35にて、温度センサ73が酸化触媒71の温度を計測し、ステップS36にて、温度センサ73により計測された酸化触媒71の温度tPMが、排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したかどうかを判定する。ここで、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したと判定されたら、ステップS37にて、吸入空気量の積算を開始する。そして、ステップS38にて、この吸入空気量の積算値Σgaが予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定する。
【0056】
このステップS38にて、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなったと判定されたら、ステップS39にて、PMセンサ62の周辺に酸素が存在しているかどうかを判定する。本実施例では、PMセンサ62の酸化触媒71にセリアが担持されているため、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下し、エアフローセンサ52により検出された吸入空気量の積算処理を開始してからの所定の空気量積算期間に、酸化触媒71のセリアの周辺環境が酸素を吸蔵可能な環境にあったかどうかを判定する。即ち、この空気量積算期間にて、酸素センサ63が酸素を検出した検出履歴に基づいてセリアによる酸素吸蔵量を推定する。
【0057】
酸素センサ63は、一般的に、排気ガス中の酸素の濃度に応じて発生する起電力に基づいて酸素濃度を検出するものである。つまり、排気ガスが内部の検出素子に導入されると、内側白金電極と外側白金電極との間に酸素濃度の差が生じ、酸素濃度の高い内側白金電極から酸素濃度の低い外側白金電極へジルコニア固体電解質を通って酸素イオンが流れて起電力が発生する。この場合、リッチ混合気で燃焼すると、排気ガス中に残存する酸素が少ないため、外側白金電極の触媒作用により微量の酸素が排気ガス中の一酸化炭素や炭化水素と反応し、外側白金電極の表面に酸素がほとんどなくなり、内側白金電極との酸素濃度差が最大となって大きな起電力が発生する。一方、リーン混合気で燃焼すると、排気ガス中に残存する酸素が多いため、外側白金電極の触媒作用により多量の酸素が排気ガス中の微量の一酸化炭素や炭化水素と反応し、外側白金電極の表面に余剰の酸素が残存することとなり、内側白金電極との酸素濃度差が小さくなって起電力がほとんど発生しない。そのため、理論空燃比を境として起電力の大きな変化をえることができ、この起電力に基づいて酸素濃度を検出することができる。
【0058】
従って、このステップS39では、空気量積算期間にて、酸素センサ63で発生した起電力に基づいて、排気ガスがリーン状態である期間が予め設定された所定期間以上あったときに、酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵していると判定する。そして、このステップS39で、酸素センサ63の検出結果に基づいて酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵していると判定したときには、ステップS40に移行する。
【0059】
そして、ステップS40にて、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS41にて、このときの酸化触媒71の温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する。即ち、上述した空気量積算期間に計測した吸入空気量の積算値と、温度センサ73が検出した酸化触媒71の温度上昇量とに基づいて所定のマップを用いて排気微粒子の堆積量を算出する。ステップS42では、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼することで、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したかどうかを判定する。
【0060】
従って、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼し、このときの温度変化に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するとき、酸化触媒71の周囲を流れる排気ガス中に酸素が存在しなくても、セリアに吸蔵されている酸素を用いて排気微粒子を確実に燃焼することができ、排気微粒子の堆積量が適正に算出されることとなる。
【0061】
その後、ステップS42にて、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したと判定されたら、ステップS43にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止し、ECU51は、全ての処理を終了する。
【0062】
このように実施例2の排気微粒子の測定装置にあっては、排気管47に排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62を設け、このPMセンサ62を、酸化触媒71と電気ヒータ72を重ね合わせるように固定し、両者の間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73を介装して構成すると共に、この酸化触媒71に排気ガス中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵剤としてのセリアを担持し、ECU51は、酸素センサ63の検出結果に基づいてセリアが十分な酸素量を吸蔵しているかを判定し、セリアが十分な酸素量を吸蔵していると判定したときには、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱し、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するようにしている。
【0063】
従って、酸化触媒71のセリアは、常時、排気ガス中に存在するが酸素を吸蔵することができ、酸素センサ63の検出結果に基づいてセリアが十分な酸素量を吸蔵していることを確認することができ、このとき、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱すると、酸化触媒71に捕集された排気微粒子は、セリアに吸蔵されている酸素を伴って適正に燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて精度良く排気微粒子の堆積量を算出することができる。その結果、エンジン10がストイキ(理論空燃比)で運転していても、酸化触媒71のセリアが燃料カット制御中などに排気ガスに混入する酸素を確実に吸蔵するため、確実に排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【実施例3】
【0064】
図9は、本発明の実施例3の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。なお、本実施例の排気微粒子の測定装置における全体構成は、上述した実施例1とほぼ同様であり、図1及び図2を用いて説明すると共に、この実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0065】
実施例3の排気微粒子の測定装置において、図1及び図2に示すように、エンジン10の基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様であるため、説明は省略する。本実施例では、排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62が設けられている。このPMセンサ62は、図2に示すように、酸化触媒71と電気ヒータ72と温度センサ73とから構成されており、酸化触媒71には、排気ガス中の酸素を吸蔵するセリアが担持されている。そして、本実施例では、排気ガス温度を計測する排気温度センサとして、PMセンサ62内の温度センサ73を適用している。
【0066】
従って、PMセンサ62は、排気管47を流動する排気ガス中の微粒子、特に、黒煙粒子を捕集することができ、酸化触媒71に担持されたセリアが排気ガス中の酸素を吸蔵することができる。そして、PMセンサ62に排気微粒子が捕集されて所定量堆積した状態で、且つ、酸化触媒71における酸素吸蔵量が十分であるときに、電気ヒータ72に通電すると、酸化触媒71が加熱されることで、堆積している排気微粒子がセリアに吸蔵されている酸素を利用して燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出することができる。そして、本実施例では、温度センサ73により検出された排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上になったときには、吸入空気量の積算値をキャンセルして再度吸入空気量の積算を開始するようにしている。
【0067】
ここで、本実施例の排気微粒子の測定装置における排気微粒子の測定方法について、図9のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0068】
ステップS51にて、エンジン10が完全に暖機されたかどうか、即ち、水温センサ58により検出されたエンジン冷却水温が予め設定されたエンジン暖機水温以上になったかどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温がエンジン暖機水温に到達したら、ステップS52にて、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS53にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼したかどうかを、酸化触媒71の温度変化に基づいて判定する。
【0069】
このステップS53にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼されたと判定されたら、ステップS54にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止する。そして、ステップS55にて、温度センサ73が酸化触媒71の温度を計測し、ステップS56にて、温度センサ73により計測された酸化触媒71の温度tPMが、排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したかどうかを判定する。ここで、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したと判定されたら、ステップS57にて、吸入空気量の積算を開始する。そして、ステップS58にて、この吸入空気量の積算値Σgaが予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定する。
【0070】
このステップS58にて、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなったと判定されたら、ステップS59にて、PMセンサ62の周辺に酸素が存在しているかどうかを判定する。本実施例では、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下し、エアフローセンサ52により検出された吸入空気量の積算処理を開始してからの所定の空気量積算期間にて、燃料カット制御の継続時間または積算時間が予め設定された所定時間以上で、且つ、吸入空気量の積算値が予め設定された所定積算値以上であるかを判定することで、セリアによる酸素吸蔵量を推定する。
【0071】
このステップS59で、燃料カット制御の継続時間または積算時間が所定時間以上で、且つ、吸入空気量の積算値が所定積算値以上であるときには、酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵していると判定し、ステップS60に移行する。ステップS60では、温度センサ73により検出された排気ガス温度が所定値以上、つまり、PMセンサ62の周辺を通過する排気ガス温度が酸化触媒71に堆積する排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上であるかどうかを判定する。ここで、温度センサ73により検出されたPMセンサ62の周辺を通過する排気ガス温度が、排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上であると判定されたら、ステップS61にて、ステップS57の処理で算出した吸入空気量の積算値をキャンセルし、ステップS55に戻り、ステップS55以降の処理で、再度、吸入空気量の積算をやり直す。
【0072】
即ち、温度センサ73により検出された排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上であると、この高温の排気ガスにより酸化触媒71に堆積している排気微粒子が燃焼してしまい、吸入空気量の積算値と排気微粒子の堆積量とが不適合となり、正確な排気微粒子の堆積量の測定ができなくなってしまう。そのため、このときには、保持している吸入空気量の積算値をキャンセルし、吸入空気量の積算をやり直すようにしている。
【0073】
一方、ステップS60で、温度センサ73により検出されたPMセンサ62の周辺を通過する排気ガス温度が、排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上ではないと判定されたら、ステップS62にて、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS63にて、このときの酸化触媒71の温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する。ステップS64では、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼することで、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したかどうかを判定する。
【0074】
従って、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼し、このときの温度変化に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するとき、温度センサ73により検出された排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上であるときには、既に算出した吸入空気量の積算値をキャンセルし、新たに吸入空気量の積算を実行することで、排気微粒子の堆積量が適正に算出されることとなる。
【0075】
その後、ステップS64にて、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したと判定されたら、ステップS65にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止し、ECU51は、全ての処理を終了する。
【0076】
このように実施例3の排気微粒子の測定装置にあっては、排気管47に排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62を設け、このPMセンサ62を、酸化触媒71と電気ヒータ72を重ね合わせるように固定し、両者の間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73を介装して構成すると共に、この酸化触媒71に排気ガス中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵剤としてのセリアを担持し、ECU51は、セリアが十分な酸素量を吸蔵していると共に、PMセンサ62を通過する排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上でないときには、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱し、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するようにしている。
【0077】
従って、酸化触媒71のセリアは、常時、排気ガス中に存在するが酸素を吸蔵することができ、セリアが十分な酸素量を吸蔵していることを確認し、酸化触媒71を通過する排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上でないときに、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱すると、酸化触媒71に捕集された排気微粒子は、セリアに吸蔵されている酸素を伴って適正に燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて精度良く排気微粒子の堆積量を算出することができる。一方、酸化触媒71を通過する排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上であるときには、保持している吸入空気量の積算値をキャンセルし、吸入空気量の積算をやり直すことで、吸入空気量の積算値に対して適正な排気微粒子の堆積量を求めることができる。その結果、エンジン10がストイキ(理論空燃比)で運転していても、酸化触媒71のセリアが燃料カット制御中などに排気ガスに混入する酸素を確実に吸蔵するため、確実に排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【実施例4】
【0078】
図10は、本発明の実施例4の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。なお、本実施例の排気微粒子の測定装置における全体構成は、上述した実施例1とほぼ同様であり、図1及び図2を用いて説明すると共に、この実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0079】
実施例4の排気微粒子の測定装置において、図1及び図2に示すように、エンジン10の基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様であるため、説明は省略する。本実施例では、排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62が設けられている。このPMセンサ62は、図2に示すように、酸化触媒71と電気ヒータ72と温度センサ73とから構成されているが、酸化触媒71には、酸素吸蔵剤としてのセリアは担持されていない。
【0080】
従って、PMセンサ62は、排気管47を流動する排気ガス中の微粒子、特に、黒煙粒子を捕集することができる。そして、PMセンサ62に排気微粒子が捕集されて所定量堆積した状態で、且つ、排気ガス中に酸素が十分に含まれているときに、電気ヒータ72に通電すると、酸化触媒71が加熱されることで、堆積している排気微粒子が排気ガス中のる酸素を利用して燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【0081】
ここで、本実施例の排気微粒子の測定装置における排気微粒子の測定方法について、図10のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0082】
ステップS71にて、エンジン10が完全に暖機されたかどうか、即ち、水温センサ58により検出されたエンジン冷却水温が予め設定されたエンジン暖機水温以上になったかどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温がエンジン暖機水温に到達したら、ステップS72にて、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS73にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼したかどうかを、酸化触媒71の温度変化に基づいて判定する。
【0083】
このステップS73にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼されたと判定されたら、ステップS74にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止する。そして、ステップS75にて、温度センサ73が酸化触媒71の温度を計測し、ステップS76にて、温度センサ73により計測された酸化触媒71の温度tPMが、排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したかどうかを判定する。ここで、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したと判定されたら、ステップS77にて、吸入空気量の積算を開始する。そして、ステップS78にて、この吸入空気量の積算値Σgaが予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定する。
【0084】
このステップS78にて、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなったと判定されたら、ステップS79にて、PMセンサ62の周辺に酸素が存在しているかどうかを判定する。本実施例では、現在、燃料カット制御の実行中であるかを判定することで、排気ガス中に酸素が存在するかどうかを推定する。
【0085】
このステップS79で、燃料カット制御の実行中であるときには、酸化触媒71の周辺に十分な酸素量が存在していると判定し、ステップS80に移行する。ステップS80では、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS81にて、このときの酸化触媒71の温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する。ステップS82では、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼することで、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したかどうかを判定する。
【0086】
従って、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼し、このときの温度変化に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するとき、排気ガス中に存在する酸素を用いて排気微粒子を確実に燃焼することができ、排気微粒子の堆積量が適正に算出されることとなる。
【0087】
その後、ステップS82にて、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したと判定されたら、ステップS83にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止し、ECU51は、全ての処理を終了する。
【0088】
このように実施例4の排気微粒子の測定装置にあっては、排気管47に排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62を設け、このPMセンサ62を、酸化触媒71と電気ヒータ72を重ね合わせるように固定し、両者の間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73を介装して構成し、ECU51は、燃料カット制御を実行中であるときに排気ガス中に十分な酸素量が存在するとし、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱し、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するようにしている。
【0089】
従って、燃料カット制御を実行しているときは、排気ガスがリーン雰囲気となって排気ガス中に十分な酸素量が存在することとなり、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱すると、酸化触媒71に捕集された排気微粒子は、排気ガス中の酸素を伴って適正に燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて精度良く排気微粒子の堆積量を算出することができる。その結果、エンジン10がストイキ(理論空燃比)で運転していても、酸化触媒71のセリアが燃料カット制御中などに排気ガスに混入する酸素を確実に吸蔵するため、確実に排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【実施例5】
【0090】
図11は、本発明の実施例5の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。なお、本実施例の排気微粒子の測定装置における全体構成は、上述した実施例1とほぼ同様であり、図1及び図2を用いて説明すると共に、この実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0091】
実施例5の排気微粒子の測定装置において、図1及び図2に示すように、エンジン10の基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様であるため、説明は省略する。本実施例では、排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62が設けられている。このPMセンサ62は、図2に示すように、酸化触媒71と電気ヒータ72と温度センサ73とから構成されている。
【0092】
従って、PMセンサ62は、排気管47を流動する排気ガス中の微粒子、特に、黒煙粒子を捕集することができる。そして、PMセンサ62に排気微粒子が捕集されて所定量堆積した状態で、且つ、PMセンサ62の周辺に酸素が十分に存在しているときに、電気ヒータ72に通電すると、酸化触媒71が加熱されることで、堆積している排気微粒子が周辺の酸素を利用して燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出することができる。本実施例では、この排気微粒子の堆積量を算出する間、エンジン10のリッチ運転を禁止するようにしている。
【0093】
ここで、本実施例の排気微粒子の測定装置における排気微粒子の測定方法について、図11のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0094】
ステップS91にて、エンジン10が完全に暖機されたかどうか、即ち、水温センサ58により検出されたエンジン冷却水温が予め設定されたエンジン暖機水温以上になったかどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温がエンジン暖機水温に到達したら、ステップS92にて、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS93にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼したかどうかを、酸化触媒71の温度変化に基づいて判定する。
【0095】
このステップS93にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼されたと判定されたら、ステップS94にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止する。そして、ステップS95にて、温度センサ73が酸化触媒71の温度を計測し、ステップS96にて、温度センサ73により計測された酸化触媒71の温度tPMが、排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したかどうかを判定する。ここで、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したと判定されたら、ステップS97にて、吸入空気量の積算を開始する。そして、ステップS98にて、この吸入空気量の積算値Σgaが予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定する。
【0096】
このステップS98にて、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなったと判定されたら、ステップS99にて、PMセンサ62の周辺に酸素が存在しているかどうかを判定する。ここで、酸化触媒71に酸素吸蔵剤としてのセリアが担持されているときには、上述した実施例1、2、3と同様に、燃料カット制御の継続時間または積算時間に基づいて酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵しているかどうかを判定したり、酸素センサ63の検出結果に基づいて酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵しているかどうかを判定すればよい。また、酸化触媒71に酸素吸蔵剤としてのセリアが担持されていないときには、燃料カット制御の実行中であるかを判定することで、排気ガス中に酸素が存在することを推定し、PMセンサ62の周辺に酸素が存在するかどうかを推定すればよい。
【0097】
このステップS99で、酸化触媒71の周辺に十分な酸素量が存在していると判定したときには、ステップS100に移行し、ここで、ECU51は、エンジン10のリッチ運転を禁止する。即ち、PMセンサ62が排気微粒子の堆積量を算出するとき、エンジン10がリッチ運転を行って排気ガスがリッチ雰囲気になると、酸化触媒71の周辺に存在する酸素がリッチ雰囲気の排気ガスの酸化処理に使用されてしまい、酸化触媒71に堆積した排気微粒子を燃焼するための酸素量が減少してしまう。
【0098】
そして、ステップS100で、エンジン10のリッチ運転を禁止した後、ステップS101では、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS102にて、このときの酸化触媒71の温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する。ステップS103では、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼することで、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したかどうかを判定する。
【0099】
従って、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼し、このときの温度変化に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するとき、エンジン10のリッチ運転を禁止することで、酸化触媒71の周辺に存在する酸素を用いて排気微粒子を確実に燃焼することができ、排気微粒子の堆積量が適正に算出されることとなる。
【0100】
その後、ステップS103にて、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したと判定されたら、ステップS104にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止し、ステップS105で、エンジン10のリッチ運転の禁止を解除し、ECU51は、全ての処理を終了する。
【0101】
このように実施例5の排気微粒子の測定装置にあっては、排気管47に排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62を設け、このPMセンサ62を、酸化触媒71と電気ヒータ72を重ね合わせるように固定し、両者の間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73を介装して構成し、ECU51は、酸化触媒71の周辺に十分な酸素量が存在するとき、エンジン10のリッチ運転を禁止した後、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱し、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するようにしている。
【0102】
従って、酸化触媒71の周辺に十分な酸素量が存在するとき、エンジン10のリッチ運転を禁止することで、酸化触媒71の周辺に存在する酸素がリッチ雰囲気の排気ガスの酸化処理に使用されることはなく、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱すると、酸化触媒71に捕集された排気微粒子は、周辺に存在する酸素を伴って適正に燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて精度良く排気微粒子の堆積量を算出することができる。その結果、エンジン10がストイキ(理論空燃比)で運転していても、酸化触媒71のセリアが燃料カット制御中などに排気ガスに混入する酸素を確実に吸蔵するため、確実に排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【0103】
なお、上述した各実施例では、筒内噴射式エンジン10において、排気管47に配設したPMセンサ62により酸化触媒71に堆積した排気微粒子を燃焼し、その温度変化に基づいて排気ガス中の排気微粒子の排出量を推定するようにしたが、この推定した排気微粒子の排出量に基づいてこの排出量が減少するように、燃料噴射量や空燃比を変更してエンジン10を制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上のように、本発明に係る排気微粒子の測定装置は、十分な酸素量を確保して捕集した排気微粒子を燃焼することで、その温度変化により排気ガス中の微粒子量を精度良く測定可能とするものであり、いずれの種類の内燃機関に用いても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施例1に係る排気微粒子の測定装置が適用された内燃機関を表す概略構成図である。
【図2】実施例1の排気微粒子の測定装置を表す概略図である。
【図3】実施例1の排気微粒子の測定装置におけるセリア添加量に対するセンサ表面積を表すグラフである。
【図4】実施例1の排気微粒子の測定装置におけるセリア添加量に対する排気量を表すグラフである。
【図5】実施例1の排気微粒子の測定装置におけるヒータ温度に対するセンサ温度を表すグラフである。
【図6】実施例1の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例2に係る排気微粒子の測定装置が適用された内燃機関を表す概略構成図である。
【図8】実施例2の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。
【図9】実施例3の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。
【図10】実施例4の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。
【図11】実施例5の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0106】
10 エンジン
47 排気管(排気通路)
48,49 三元触媒
50 マフラ(消音器)
51 電子制御ユニット、ECU(堆積量算出手段)
52 エアフローセンサ
58 水温センサ
62 PMセンサ
63 酸素センサ
71 酸化触媒(酸素吸蔵剤)
72 電気ヒータ(加熱手段)
73 温度センサ(排気温度センサ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス中に含まれる排気微粒子を測定する排気微粒子の測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料を吸気ポートではなく、燃焼室に直接噴射する筒内噴射式内燃機関が従来から知られている。この筒内噴射式内燃機関では、吸気弁の開放時に、空気が吸気ポートから燃焼室に吸入されてピストンにより圧縮され、この高圧空気に対してインジェクタから燃料が直接噴射され、燃焼室内の高圧空気と霧状の燃料とが混合し、この混合気が点火プラグに導かれて着火して爆発することで駆動力を得ることができ、排気弁の開放時に、燃焼後の排気ガスが排気ポートから排出される。
【0003】
このような内燃機関では、燃焼室から排出される排気ガスは、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)などの有害物質を含有することから、排気通路に有害物質を浄化処理する三元触媒が設けられている。また、上述した筒内噴射式内燃機関では、燃焼室にて、高圧縮によって高温となった空気に直接燃料を噴射して着火させるものであり、特に、高負荷時にエンジン出力を上昇させるために燃焼室に大量の燃料を噴射することから、燃焼室が酸欠状態となって排気ガス中に黒煙などの微粒子(PM:Particulate matter)が含まれることがある。
【0004】
このように排気ガスに含まれる排気微粒子の量を測定する技術として、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された煤煙濃度を決定するためのセンサは、多孔性化された成形部材に電気的加熱部材と電気的温度プローブを設けて煤煙センサを構成し、電気的加熱部材により成形部材に堆積した煤煙粒子を燃焼し、この燃焼に起因して起こる熱の発生を電気的温度プローブで測定し、温度上昇を煤煙粒子の燃焼量についての直接の尺度として評価し、この評価から煤煙量を決定するものである。
【0005】
【特許文献1】特開2001−221759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1では、電気的加熱部材により成形部材に堆積した煤煙粒子を燃焼し、電気的温度プローブによりこのときの温度上昇を測定し、この温度上昇に基づいて煤煙量を決定するものである。この場合、電気的加熱部材により成形部材に堆積した煤煙粒子を燃焼するためには、周辺に十分な酸素量が必要となる。ところが、一般的な内燃機関では、空燃比が一定値となるように吸入空気量に基づいて燃料噴射量が決定されており、この空燃比は、通常、ストイキ(理論空燃比)となるように制御される。そのため、煤煙センサの周辺に十分な酸素量がないときには、電気的加熱部材により成形部材を加熱しても、この成形部材に堆積した煤煙粒子を適正に燃焼することができず、煤煙量を高精度に測定することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、排気ガス中の微粒子を精度良く測定可能とした排気微粒子の測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の排気微粒子の測定装置は、排気通路に配設された酸化触媒と、該酸化触媒に担持された酸素吸蔵剤と、前記酸化触媒を加熱する加熱手段と、前記酸化触媒の温度を計測する温度センサと、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱したときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する堆積量算出手段とを具えたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の排気微粒子の測定装置では、前記酸化触媒は、前記排気通路に配設された三元触媒より排気ガスの流動方向の下流側で、且つ、消音器より上流側に配置されたことを特徴としている。
【0010】
本発明の排気微粒子の測定装置では、前記堆積量算出手段は、燃料カット継続時間及び吸入空気量に基づいて前記酸素吸蔵剤による酸素吸蔵量を推定し、この酸素吸蔵量が予め設定された所定値以上であるときに前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴としている。
【0011】
本発明の排気微粒子の測定装置では、前記排気通路における前記酸化触媒の近傍に酸素センサが配設され、前記堆積量算出手段は、該酸素センサの検出結果に基づいて前記酸素吸蔵剤による酸素吸蔵量を推定し、この酸素吸蔵量が予め設定された所定値以上であるときに前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の排気微粒子の測定装置は、排気通路に配設された酸化触媒と、該酸化触媒を加熱する加熱手段と、前記酸化触媒の温度を計測する温度センサと、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱したときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する堆積量算出手段とを具え、該堆積量算出手段は、燃料カット中に前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の排気微粒子の測定装置では、前記堆積量算出手段は、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子を燃焼し、前記酸化触媒が排気微粒子を燃焼不能な温度以下に低下してから吸入空気量の積算を開始し、この吸入空気量の積算値が予め設定された所定値より大きくなったときに前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴としている。
【0014】
本発明の排気微粒子の測定装置では、前記排気通路における前記酸化触媒の近傍に排気温度センサが配設され、前記堆積量算出手段は、該排気温度センサにより検出された排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上になったときに、吸入空気量の積算値をキャンセルして再度吸入空気量の積算を開始することを特徴としている。
【0015】
本発明の排気微粒子の測定装置では、前記堆積量算出手段は、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出するとき、リッチ運転を禁止することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の排気微粒子の測定装置によれば、排気通路に配設された酸化触媒に酸素吸蔵剤を担持し、この酸化触媒を加熱する加熱手段と、酸化触媒の温度を計測する温度センサを設けると共に、加熱手段により酸化触媒を加熱したときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する堆積量算出手段を設けたので、酸化触媒の酸素吸蔵剤は、常時、排気ガス中に存在するが酸素を吸蔵しており、加熱手段により酸化触媒を加熱すると、酸化触媒に捕集された排気微粒子は、酸素吸蔵剤に吸蔵されている酸素を伴って適正に燃焼することとなり、堆積量算出手段は、このときの温度上昇度合に応じて精度良く排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る排気微粒子の測定装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係る排気微粒子の測定装置が適用された内燃機関を表す概略構成図、図2は、実施例1の排気微粒子の測定装置を表す概略図、図3は、実施例1の排気微粒子の測定装置におけるセリア添加量に対するセンサ表面積を表すグラフ、図4は、実施例1の排気微粒子の測定装置におけるセリア添加量に対する排気量を表すグラフ、図5は、実施例1の排気微粒子の測定装置におけるヒータ温度に対するセンサ温度を表すグラフ、図6は、実施例1の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。
【0019】
実施例1の排気微粒子の測定装置が適用された内燃機関において、図1に示すように、内燃機関としてのエンジン10は4気筒筒内噴射式であって、シリンダブロック11上にシリンダヘッド12が締結されており、このシリンダブロック11に形成された複数のシリンダボア13にピストン14がそれぞれ上下移動自在に嵌合している。そして、シリンダブロック11の下部にクランクケース15が締結され、このクランクケース15内にクランクシャフト16が回転自在に支持されており、各ピストン14はコネクティングロッド17を介してこのクランクシャフト16にそれぞれ連結されている。
【0020】
燃焼室18は、シリンダブロック11におけるシリンダボア13の壁面とシリンダヘッド12の下面とピストン14の頂面により構成されており、この燃焼室18は、上部(シリンダヘッド12の下面)の中央部が高くなるように傾斜したペントルーフ形状をなしている。そして、この燃焼室18の上部、つまり、シリンダヘッド12の下面に吸気ポート19及び排気ポート20が対向して形成されており、この吸気ポート19及び排気ポート20に対して吸気弁21及び排気弁22の下端部がそれぞれ位置している。この吸気弁21及び排気弁22は、シリンダヘッド12に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート19及び排気ポート20を閉止する方向(図1にて上方)に付勢支持されている。また、シリンダヘッド12には、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転自在に支持されており、吸気カム25及び排気カム26が吸気弁21及び排気弁22の上端部に接触している。
【0021】
なお、図示しないが、クランクシャフト16に固結されたクランクシャフトスプロケットと、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24にそれぞれ固結された各カムシャフトシャフトスプロケットとは、無端のタイミングチェーンが掛け回されており、クランクシャフト16と吸気カムシャフト23と排気カムシャフト24が連動可能となっている。
【0022】
従って、クランクシャフト16に同期して吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転すると、吸気カム25及び排気カム26が吸気弁21及び排気弁22を所定のタイミングで上下移動することで、吸気ポート19及び排気ポート20を開閉し、吸気ポート19と燃焼室18、燃焼室18と排気ポート20とをそれぞれ連通することができる。この場合この吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24は、クランクシャフト16が2回転(720度)する間に1回転(360度)するように設定されている。そのため、エンジン10は、クランクシャフト16が2回転する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の4行程を実行することとなり、このとき、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が1回転することとなる。
【0023】
また、このエンジン10の動弁機構は、運転状態に応じて吸気弁21及び排気弁22を最適な開閉タイミングに制御する吸気・排気可変動弁機構(VVT:Variable Valve Timing-intelligent)27,28となっている。この吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24の軸端部にVVTコントローラ29,30が設けられて構成され、オイルコントロールバルブ31,32からの油圧をこのVVTコントローラ29,30の図示しない進角室及び遅角室に作用させることによりカムスプロケットに対するカムシャフト23,24の位相を変更し、吸気弁21及び排気弁22の開閉時期を進角または遅角することができるものである。この場合、吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気弁21及び排気弁22の作用角(開放期間)を一定としてその開閉時期を進角または遅角する。また、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24には、その回転位相を検出するカムポジションセンサ33,34が設けられている。
【0024】
吸気ポート19には、吸気マニホールド35を介してサージタンク36が連結され、このサージタンク36に吸気管37が連結されており、この吸気管37の空気取入口にはエアクリーナ38が取付けられている。そして、このエアクリーナ38の下流側にスロットル弁39を有する電子スロットル装置40が設けられている。また、シリンダヘッド12には、燃焼室18に直接燃料を噴射するインジェクタ41が装着されており、このインジェクタ41は、吸気ポート19側に位置して上下方向に所定角度傾斜して配置されている。各気筒に装着されるインジェクタ41はデリバリパイプ42に連結され、このデリバリパイプ42には高圧燃料供給管43を介して高圧燃料ポンプ44が連結されている。更に、シリンダヘッド12には、燃焼室18の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ45が装着されている。
【0025】
一方、排気ポート20には、排気マニホールド46を介して排気管(排気通路)47が連結されており、この排気管47には排気ガス中に含まれるHC、CO、NOxなどの有害物質を浄化処理する三元触媒48,49が装着されると共に、この三元触媒49よりも下流側にマフラ(消音器)50が装着されている。
【0026】
ところで、車両には電子制御ユニット(ECU)51が搭載されており、このECU51は、インジェクタ41や点火プラグ45などを制御可能となっている。即ち、吸気管37の上流側にはエアフローセンサ52及び吸気温センサ53が装着され、また、サージタンク36には吸気圧センサ54が設けられており、計測した吸入空気量、吸気温度、吸気圧(吸気管負圧)をECU51に出力している。また、電子スロットル装置40にはスロットルポジションセンサ55が装着されており、現在のスロットル開度をECU51に出力しており、アクセルポジションセンサ56は、現在のアクセル開度をECU51に出力している。更に、クランク角センサ57は、検出した各気筒のクランク角度をECU51に出力し、このECU51は検出したクランク角度に基づいて各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、エンジン回転数を算出している。また、シリンダブロック11にはエンジン冷却水温を検出する水温センサ58が設けられており、検出したエンジン冷却水温をECU51に出力している。更に、各インジェクタ41に連通するデリバリパイプ42には燃料圧力を検出する燃圧センサ59が設けられており、検出した燃料圧力をECU51に出力している。一方、排気管47には、三元触媒48の上流側及び下流側に位置して排気ガスの酸素濃度を検出する酸素センサ60,61が設けられており、検出した酸素濃度をECU51に出力している。
【0027】
従って、ECU51は、検出した燃料圧力に基づいてこの燃料圧力が所定圧力となるように高圧ポンプ44を駆動すると共に、検出した吸入空気量、吸気温度、吸気圧、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、エンジン冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量(燃料噴射時間)、噴射時期、点火時期などを決定し、インジェクタ41及び点火プラグ45を駆動して燃料噴射及び点火を実行する。また、ECU51は、検出した排気ガスの酸素濃度をフィードバックして空燃比がストイキ(理論空燃比)となるように燃料噴射量を補正している。
【0028】
また、ECU51は、エンジン運転状態に基づいて吸気・排気可変動弁機構27,28を制御可能となっている。即ち、低温時、エンジン始動時、アイドル運転時や軽負荷時には、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップをなくすことで、排気ガスが吸気ポート19または燃焼室18に吹き返す量を少なくし、燃焼安定及び燃費向上を可能とする。また、中負荷時には、このオーバーラップを大きくすることで、内部EGR率を高めて排ガス浄化効率を向上させると共に、ポンピングロスを低減して燃費向上を可能とする。更に、高負荷低中回転時には、吸気弁21の閉止時期を進角することで、吸気が吸気ポート19に吹き返す量を少なくし、体積効率を向上させる。そして、高負荷高回転時には、吸気弁21の閉止時期を回転数にあわせて遅角することで、吸入空気の慣性力に合わせたタイミングとし、体積効率を向上させる。
【0029】
本実施例のエンジン10にて、排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子、具体的には、黒煙などの微粒子(PM:Particulate matter)の量を計測するPMセンサ62が設けられている。このPMセンサ62は、図2に示すように、箱型形状をなし、酸化触媒71とこの酸化触媒71を加熱する加熱手段としての電気ヒータ72が重ね合わされるように密着して固定され、酸化触媒71と電気ヒータ72との間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73が介装されて構成されている。
【0030】
この酸化触媒71は、例えば、セラミックスの多孔部材により多数の排気流路を形成し、酸化触媒としての白金やパラジウムなどの金属が担持されている。また、酸化触媒71には、排気ガス中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵剤としてのセリアが担持されている。この場合、セリアの添加量は、図3に示すように、PMセンサ62(酸化触媒71)の表面積に応じて設定されると共に、図4に示すように、エンジン10の排気量に応じて設定される。
【0031】
従って、PMセンサ62は、酸化触媒71が排気ガス中のHC、CO成分を酸化(酸素と反応)してCO2、H2Oに変換することができると共に、排気ガスが多孔部材を通過することで、この排気ガス中の微粒子、特に、黒煙粒子を捕集することができる。また、酸化触媒71は、セリアが担持されているため、排気ガス中の酸素を吸蔵することができる。そして、PMセンサ62に排気微粒子が捕集されて所定量堆積した状態で、且つ、酸化触媒71における酸素吸蔵量が十分であるときに、電気ヒータ72に通電すると、酸化触媒71が加熱されることで、堆積している排気微粒子がセリアに吸蔵されている酸素を利用して燃焼することとなり、堆積量算出手段としてのECU51は、このときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【0032】
即ち、電気ヒータ72に通電すると、酸化触媒71が加熱されるため、図5に実線で示すように、ヒータ温度が上昇するのに伴って温度センサが検出した酸化触媒71の温度(センサ温度)が比例して上昇する。このとき、酸化触媒71に排気微粒子が堆積していると、酸化触媒71の温度が排気微粒子を燃焼可能な温度まで上昇した時点で、この排気微粒子が燃焼することで、図5に一点鎖線で示すように、温度センサが検出した酸化触媒71の温度(センサ温度)が急激に上昇する。そして、酸化触媒71の排気微粒子が全て燃焼すると、センサ温度が急激に低下する。従って、PMセンサ62の酸化触媒71が排気微粒子を捕集する期間の吸入空気量と、このときの温度上昇量とに基づいて所定のマップを用いて排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【0033】
なお、PMセンサ62は、排気管47に配設された三元触媒49よりも排気ガスの流動方向の下流側で、且つ、マフラ50よりも排気ガスの流動方向の上流側に配置されている。この場合、エンジン10の高負荷運転状態では、排気ガス温度が排気微粒子を燃焼してしまう650℃以上まで上昇するため、高温の排気ガスによりPMセンサ62に堆積している排気微粒子までも燃焼し、堆積量の測定ができなくなってしまう。そこで、PMセンサ62を、排気ガス温度が排気微粒子を燃焼できない温度、例えば、600℃まで低下する、三元触媒49から排気ガスの流動方向に所定距離だけ離れた下流位置に配置する。また、排気管47の下流側の端部が大気に開放されていることから、エンジン10の冷間始動時には、凝縮水がPMセンサ62に到達して破損などが発生するおそれがあるため、PMセンサ62を、排気管47の端部に装着されたマフラ50から排気ガスの流動方向に所定距離だけ離れた上流位置に配置する。
【0034】
ここで、本実施例の排気微粒子の測定装置における排気微粒子の測定方法について、図6のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0035】
ステップS11にて、ECU51は、エンジン10が完全に暖機されたかどうかを判定する。即ち、ECU51は、水温センサ58により検出されたエンジン冷却水温が予め設定されたエンジン暖機水温以上になったかどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温がエンジン暖機水温に到達していないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、エンジン冷却水温がエンジン暖機水温以上になったと判定されたら、ステップS12に移行する。
【0036】
ステップS12にて、ECU51は、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS13にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼したかどうかを判定する。この場合、電気ヒータ72に通電すると、図5に一点鎖線示すように、酸化触媒71に堆積している排気微粒子が燃焼して酸化触媒71の温度(センサ温度)が急激に上昇するが、全ての排気微粒子が燃焼すると、センサ温度が急激に低下し、図5に実線で示す変化に戻る。ECU51は、このセンサ温度変化に基づいて排気微粒子が完全に燃焼したかどうかを判定する。そして、ステップS13にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼するまで、ステップS12,S13の処理を繰り返す。
【0037】
ステップS13にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼されたと判定されたら、ステップS14にて、ECU51は、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止する。そして、ステップS15にて、温度センサ73が酸化触媒71の温度を計測し、ステップS16にて、温度センサ73により計測された酸化触媒71の温度tPMが、排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したかどうかを判定する。このステップS16で、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下するまで、ステップS15,S16の処理を繰り返す。
【0038】
ステップS16にて、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したと判定されたら、ステップS17にて、吸入空気量の積算を開始する。この場合、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下してから、エアフローセンサ52により検出された吸入空気量を積算していく。そして、ステップS18にて、この吸入空気量の積算値Σgaが予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定する。このステップS18で、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなるまで、ステップS17,S18の処理を繰り返す。
【0039】
ステップS18にて、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなったと判定されたら、ステップS19にて、ECU51は、PMセンサ62の周辺に酸素が存在しているかどうかを判定する。本実施例では、PMセンサ62の酸化触媒71にセリアが担持されているため、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下し、エアフローセンサ52により検出された吸入空気量の積算処理を開始してからの所定の空気量積算期間に、酸化触媒71のセリアの周辺環境が酸素を吸蔵可能な環境にあったかどうかを判定する。即ち、この空気量積算期間にて、燃料カット制御の継続時間または積算時間が予め設定された所定時間以上で、且つ、吸入空気量の積算値が予め設定された所定積算値以上であるかを判定することで、セリアによる酸素吸蔵量を推定する。
【0040】
このステップS19で、燃料カット制御の継続時間または積算時間が所定時間以上でなかったり、吸入空気量の積算値が所定積算値以上でなかったときには、酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵していないと判定し、ステップS17〜S19の処理を繰り返す。一方、ステップS19にて、燃料カット制御の継続時間または積算時間が所定時間以上で、且つ、吸入空気量の積算値が所定積算値以上であるときには、酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵していると判定し、ステップS20に移行する。
【0041】
そして、ステップS20にて、ECU51は、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS21にて、このときの酸化触媒71の温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する。即ち、上述した空気量積算期間に計測した吸入空気量の積算値と、温度センサ73が検出した酸化触媒71の温度上昇量とに基づいて所定のマップを用いて排気微粒子の堆積量を算出する。
【0042】
ステップS22では、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼することで、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したかどうかを判定する。この場合、酸化触媒71に堆積した排気微粒子が燃焼することで急激に上昇した酸化触媒71の温度(センサ温度)が低下し、図5に実線で示す変化に戻ることで判定する。そして、ステップS22にて、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了するまで、ステップS20〜S22の処理を繰り返す。
【0043】
従って、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼し、このときの温度変化に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するとき、酸化触媒71の周囲を流れる排気ガス中に酸素が存在しなくても、セリアに吸蔵されている酸素を用いて排気微粒子を確実に燃焼することができ、排気微粒子の堆積量が適正に算出されることとなる。
【0044】
その後、ステップS22にて、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したと判定されたら、ステップS23にて、ECU51は、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止し、全ての処理を終了する。
【0045】
このように実施例1の排気微粒子の測定装置にあっては、排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62を設け、このPMセンサ62を、酸化触媒71と電気ヒータ72を重ね合わせるように固定し、両者の間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73を介装して構成すると共に、この酸化触媒71に排気ガス中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵剤としてのセリアを担持し、ECU51は、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱したときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するようにしている。
【0046】
従って、酸化触媒71のセリアは、常時、排気ガス中に存在するが酸素を吸蔵しており、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱すると、酸化触媒71に捕集された排気微粒子は、セリアに吸蔵されている酸素を伴って適正に燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて精度良く排気微粒子の堆積量を算出することができる。その結果、エンジン10がストイキ(理論空燃比)で運転していても、酸化触媒71のセリアが燃料カット制御中などに排気ガスに混入する酸素を確実に吸蔵するため、確実に排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【0047】
また、ECU51は、事前に、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼し、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したら、エアフローセンサ52により検出された吸入空気量の積算処理を開始するようにしている。従って、測定前に、酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼すると共に、酸化触媒71の温度を排気微粒子が燃焼しない温度まで低下させることで、測定誤差をなくすことができる。
【0048】
更に、ECU51は、エアフローセンサ52により検出された吸入空気量の積算処理を開始してからの所定の空気量積算期間に、燃料カット制御の継続時間または積算時間が予め設定された所定時間以上で、且つ、吸入空気量の積算値が予め設定された所定積算値以上であるかを判定することで、セリアによる酸素吸蔵量を推定している。従って、燃料カット制御と吸入空気量に基づいてセリアの酸素吸蔵量を推定することで、既存の設備で高精度に酸素量を計測し、排気微粒子の堆積量の算出処理を適正に実行することができる。
【0049】
そして、本実施例では、PMセンサ62を、排気管47に配設された三元触媒49よりも排気ガスの流動方向の下流側で、且つ、マフラ50よりも排気ガスの流動方向の上流側に配置している。従って、エンジン10を高負荷運転して排気ガス温度が排気微粒子を燃焼してしまう650℃以上まで上昇しても、排気ガスがPMセンサ62に至るまでにその温度が排気微粒子を燃焼できない温度まで低下することとなり、適正に排気微粒子の堆積量を算出することができる。また、エンジン10の冷間始動であっても、凝縮水がPMセンサ62に到達することはなく、破損などの発生を防止することができる。
【実施例2】
【0050】
図7は、本発明の実施例2に係る排気微粒子の測定装置が適用された内燃機関を表す概略構成図、図8は、実施例2の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0051】
実施例2の排気微粒子の測定装置において、図7に示すように、エンジン10の基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様であるため、説明は省略する。本実施例では、排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62が設けられている。このPMセンサ62は、図2に示すように、酸化触媒71と電気ヒータ72と温度センサ73とから構成されており、酸化触媒71には、排気ガス中の酸素を吸蔵するセリアが担持されている。また、本実施例では、排気管47におけるPMセンサ62の近傍に酸素センサ(O2センサ)63が配設されている。
【0052】
従って、PMセンサ62は、排気管47を流動する排気ガス中の微粒子、特に、黒煙粒子を捕集することができ、酸化触媒71に担持されたセリアが排気ガス中の酸素を吸蔵することができる。そして、PMセンサ62に排気微粒子が捕集されて所定量堆積した状態で、且つ、酸素センサ63の検出結果に基づいて酸化触媒71における酸素吸蔵量が十分であるときに、電気ヒータ72に通電すると、酸化触媒71が加熱されることで、堆積している排気微粒子がセリアに吸蔵されている酸素を利用して燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【0053】
ここで、本実施例の排気微粒子の測定装置における排気微粒子の測定方法について、図8のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0054】
ステップS31にて、エンジン10が完全に暖機されたかどうか、即ち、水温センサ58により検出されたエンジン冷却水温が予め設定されたエンジン暖機水温以上になったかどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温がエンジン暖機水温に到達したら、ステップS32にて、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS33にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼したかどうかを、酸化触媒71の温度変化に基づいて判定する。
【0055】
このステップS33にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼されたと判定されたら、ステップS34にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止する。そして、ステップS35にて、温度センサ73が酸化触媒71の温度を計測し、ステップS36にて、温度センサ73により計測された酸化触媒71の温度tPMが、排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したかどうかを判定する。ここで、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したと判定されたら、ステップS37にて、吸入空気量の積算を開始する。そして、ステップS38にて、この吸入空気量の積算値Σgaが予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定する。
【0056】
このステップS38にて、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなったと判定されたら、ステップS39にて、PMセンサ62の周辺に酸素が存在しているかどうかを判定する。本実施例では、PMセンサ62の酸化触媒71にセリアが担持されているため、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下し、エアフローセンサ52により検出された吸入空気量の積算処理を開始してからの所定の空気量積算期間に、酸化触媒71のセリアの周辺環境が酸素を吸蔵可能な環境にあったかどうかを判定する。即ち、この空気量積算期間にて、酸素センサ63が酸素を検出した検出履歴に基づいてセリアによる酸素吸蔵量を推定する。
【0057】
酸素センサ63は、一般的に、排気ガス中の酸素の濃度に応じて発生する起電力に基づいて酸素濃度を検出するものである。つまり、排気ガスが内部の検出素子に導入されると、内側白金電極と外側白金電極との間に酸素濃度の差が生じ、酸素濃度の高い内側白金電極から酸素濃度の低い外側白金電極へジルコニア固体電解質を通って酸素イオンが流れて起電力が発生する。この場合、リッチ混合気で燃焼すると、排気ガス中に残存する酸素が少ないため、外側白金電極の触媒作用により微量の酸素が排気ガス中の一酸化炭素や炭化水素と反応し、外側白金電極の表面に酸素がほとんどなくなり、内側白金電極との酸素濃度差が最大となって大きな起電力が発生する。一方、リーン混合気で燃焼すると、排気ガス中に残存する酸素が多いため、外側白金電極の触媒作用により多量の酸素が排気ガス中の微量の一酸化炭素や炭化水素と反応し、外側白金電極の表面に余剰の酸素が残存することとなり、内側白金電極との酸素濃度差が小さくなって起電力がほとんど発生しない。そのため、理論空燃比を境として起電力の大きな変化をえることができ、この起電力に基づいて酸素濃度を検出することができる。
【0058】
従って、このステップS39では、空気量積算期間にて、酸素センサ63で発生した起電力に基づいて、排気ガスがリーン状態である期間が予め設定された所定期間以上あったときに、酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵していると判定する。そして、このステップS39で、酸素センサ63の検出結果に基づいて酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵していると判定したときには、ステップS40に移行する。
【0059】
そして、ステップS40にて、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS41にて、このときの酸化触媒71の温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する。即ち、上述した空気量積算期間に計測した吸入空気量の積算値と、温度センサ73が検出した酸化触媒71の温度上昇量とに基づいて所定のマップを用いて排気微粒子の堆積量を算出する。ステップS42では、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼することで、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したかどうかを判定する。
【0060】
従って、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼し、このときの温度変化に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するとき、酸化触媒71の周囲を流れる排気ガス中に酸素が存在しなくても、セリアに吸蔵されている酸素を用いて排気微粒子を確実に燃焼することができ、排気微粒子の堆積量が適正に算出されることとなる。
【0061】
その後、ステップS42にて、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したと判定されたら、ステップS43にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止し、ECU51は、全ての処理を終了する。
【0062】
このように実施例2の排気微粒子の測定装置にあっては、排気管47に排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62を設け、このPMセンサ62を、酸化触媒71と電気ヒータ72を重ね合わせるように固定し、両者の間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73を介装して構成すると共に、この酸化触媒71に排気ガス中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵剤としてのセリアを担持し、ECU51は、酸素センサ63の検出結果に基づいてセリアが十分な酸素量を吸蔵しているかを判定し、セリアが十分な酸素量を吸蔵していると判定したときには、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱し、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するようにしている。
【0063】
従って、酸化触媒71のセリアは、常時、排気ガス中に存在するが酸素を吸蔵することができ、酸素センサ63の検出結果に基づいてセリアが十分な酸素量を吸蔵していることを確認することができ、このとき、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱すると、酸化触媒71に捕集された排気微粒子は、セリアに吸蔵されている酸素を伴って適正に燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて精度良く排気微粒子の堆積量を算出することができる。その結果、エンジン10がストイキ(理論空燃比)で運転していても、酸化触媒71のセリアが燃料カット制御中などに排気ガスに混入する酸素を確実に吸蔵するため、確実に排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【実施例3】
【0064】
図9は、本発明の実施例3の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。なお、本実施例の排気微粒子の測定装置における全体構成は、上述した実施例1とほぼ同様であり、図1及び図2を用いて説明すると共に、この実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0065】
実施例3の排気微粒子の測定装置において、図1及び図2に示すように、エンジン10の基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様であるため、説明は省略する。本実施例では、排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62が設けられている。このPMセンサ62は、図2に示すように、酸化触媒71と電気ヒータ72と温度センサ73とから構成されており、酸化触媒71には、排気ガス中の酸素を吸蔵するセリアが担持されている。そして、本実施例では、排気ガス温度を計測する排気温度センサとして、PMセンサ62内の温度センサ73を適用している。
【0066】
従って、PMセンサ62は、排気管47を流動する排気ガス中の微粒子、特に、黒煙粒子を捕集することができ、酸化触媒71に担持されたセリアが排気ガス中の酸素を吸蔵することができる。そして、PMセンサ62に排気微粒子が捕集されて所定量堆積した状態で、且つ、酸化触媒71における酸素吸蔵量が十分であるときに、電気ヒータ72に通電すると、酸化触媒71が加熱されることで、堆積している排気微粒子がセリアに吸蔵されている酸素を利用して燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出することができる。そして、本実施例では、温度センサ73により検出された排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上になったときには、吸入空気量の積算値をキャンセルして再度吸入空気量の積算を開始するようにしている。
【0067】
ここで、本実施例の排気微粒子の測定装置における排気微粒子の測定方法について、図9のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0068】
ステップS51にて、エンジン10が完全に暖機されたかどうか、即ち、水温センサ58により検出されたエンジン冷却水温が予め設定されたエンジン暖機水温以上になったかどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温がエンジン暖機水温に到達したら、ステップS52にて、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS53にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼したかどうかを、酸化触媒71の温度変化に基づいて判定する。
【0069】
このステップS53にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼されたと判定されたら、ステップS54にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止する。そして、ステップS55にて、温度センサ73が酸化触媒71の温度を計測し、ステップS56にて、温度センサ73により計測された酸化触媒71の温度tPMが、排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したかどうかを判定する。ここで、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したと判定されたら、ステップS57にて、吸入空気量の積算を開始する。そして、ステップS58にて、この吸入空気量の積算値Σgaが予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定する。
【0070】
このステップS58にて、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなったと判定されたら、ステップS59にて、PMセンサ62の周辺に酸素が存在しているかどうかを判定する。本実施例では、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下し、エアフローセンサ52により検出された吸入空気量の積算処理を開始してからの所定の空気量積算期間にて、燃料カット制御の継続時間または積算時間が予め設定された所定時間以上で、且つ、吸入空気量の積算値が予め設定された所定積算値以上であるかを判定することで、セリアによる酸素吸蔵量を推定する。
【0071】
このステップS59で、燃料カット制御の継続時間または積算時間が所定時間以上で、且つ、吸入空気量の積算値が所定積算値以上であるときには、酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵していると判定し、ステップS60に移行する。ステップS60では、温度センサ73により検出された排気ガス温度が所定値以上、つまり、PMセンサ62の周辺を通過する排気ガス温度が酸化触媒71に堆積する排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上であるかどうかを判定する。ここで、温度センサ73により検出されたPMセンサ62の周辺を通過する排気ガス温度が、排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上であると判定されたら、ステップS61にて、ステップS57の処理で算出した吸入空気量の積算値をキャンセルし、ステップS55に戻り、ステップS55以降の処理で、再度、吸入空気量の積算をやり直す。
【0072】
即ち、温度センサ73により検出された排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上であると、この高温の排気ガスにより酸化触媒71に堆積している排気微粒子が燃焼してしまい、吸入空気量の積算値と排気微粒子の堆積量とが不適合となり、正確な排気微粒子の堆積量の測定ができなくなってしまう。そのため、このときには、保持している吸入空気量の積算値をキャンセルし、吸入空気量の積算をやり直すようにしている。
【0073】
一方、ステップS60で、温度センサ73により検出されたPMセンサ62の周辺を通過する排気ガス温度が、排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上ではないと判定されたら、ステップS62にて、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS63にて、このときの酸化触媒71の温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する。ステップS64では、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼することで、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したかどうかを判定する。
【0074】
従って、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼し、このときの温度変化に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するとき、温度センサ73により検出された排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上であるときには、既に算出した吸入空気量の積算値をキャンセルし、新たに吸入空気量の積算を実行することで、排気微粒子の堆積量が適正に算出されることとなる。
【0075】
その後、ステップS64にて、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したと判定されたら、ステップS65にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止し、ECU51は、全ての処理を終了する。
【0076】
このように実施例3の排気微粒子の測定装置にあっては、排気管47に排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62を設け、このPMセンサ62を、酸化触媒71と電気ヒータ72を重ね合わせるように固定し、両者の間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73を介装して構成すると共に、この酸化触媒71に排気ガス中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵剤としてのセリアを担持し、ECU51は、セリアが十分な酸素量を吸蔵していると共に、PMセンサ62を通過する排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上でないときには、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱し、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するようにしている。
【0077】
従って、酸化触媒71のセリアは、常時、排気ガス中に存在するが酸素を吸蔵することができ、セリアが十分な酸素量を吸蔵していることを確認し、酸化触媒71を通過する排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上でないときに、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱すると、酸化触媒71に捕集された排気微粒子は、セリアに吸蔵されている酸素を伴って適正に燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて精度良く排気微粒子の堆積量を算出することができる。一方、酸化触媒71を通過する排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上であるときには、保持している吸入空気量の積算値をキャンセルし、吸入空気量の積算をやり直すことで、吸入空気量の積算値に対して適正な排気微粒子の堆積量を求めることができる。その結果、エンジン10がストイキ(理論空燃比)で運転していても、酸化触媒71のセリアが燃料カット制御中などに排気ガスに混入する酸素を確実に吸蔵するため、確実に排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【実施例4】
【0078】
図10は、本発明の実施例4の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。なお、本実施例の排気微粒子の測定装置における全体構成は、上述した実施例1とほぼ同様であり、図1及び図2を用いて説明すると共に、この実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0079】
実施例4の排気微粒子の測定装置において、図1及び図2に示すように、エンジン10の基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様であるため、説明は省略する。本実施例では、排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62が設けられている。このPMセンサ62は、図2に示すように、酸化触媒71と電気ヒータ72と温度センサ73とから構成されているが、酸化触媒71には、酸素吸蔵剤としてのセリアは担持されていない。
【0080】
従って、PMセンサ62は、排気管47を流動する排気ガス中の微粒子、特に、黒煙粒子を捕集することができる。そして、PMセンサ62に排気微粒子が捕集されて所定量堆積した状態で、且つ、排気ガス中に酸素が十分に含まれているときに、電気ヒータ72に通電すると、酸化触媒71が加熱されることで、堆積している排気微粒子が排気ガス中のる酸素を利用して燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【0081】
ここで、本実施例の排気微粒子の測定装置における排気微粒子の測定方法について、図10のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0082】
ステップS71にて、エンジン10が完全に暖機されたかどうか、即ち、水温センサ58により検出されたエンジン冷却水温が予め設定されたエンジン暖機水温以上になったかどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温がエンジン暖機水温に到達したら、ステップS72にて、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS73にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼したかどうかを、酸化触媒71の温度変化に基づいて判定する。
【0083】
このステップS73にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼されたと判定されたら、ステップS74にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止する。そして、ステップS75にて、温度センサ73が酸化触媒71の温度を計測し、ステップS76にて、温度センサ73により計測された酸化触媒71の温度tPMが、排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したかどうかを判定する。ここで、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したと判定されたら、ステップS77にて、吸入空気量の積算を開始する。そして、ステップS78にて、この吸入空気量の積算値Σgaが予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定する。
【0084】
このステップS78にて、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなったと判定されたら、ステップS79にて、PMセンサ62の周辺に酸素が存在しているかどうかを判定する。本実施例では、現在、燃料カット制御の実行中であるかを判定することで、排気ガス中に酸素が存在するかどうかを推定する。
【0085】
このステップS79で、燃料カット制御の実行中であるときには、酸化触媒71の周辺に十分な酸素量が存在していると判定し、ステップS80に移行する。ステップS80では、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS81にて、このときの酸化触媒71の温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する。ステップS82では、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼することで、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したかどうかを判定する。
【0086】
従って、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼し、このときの温度変化に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するとき、排気ガス中に存在する酸素を用いて排気微粒子を確実に燃焼することができ、排気微粒子の堆積量が適正に算出されることとなる。
【0087】
その後、ステップS82にて、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したと判定されたら、ステップS83にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止し、ECU51は、全ての処理を終了する。
【0088】
このように実施例4の排気微粒子の測定装置にあっては、排気管47に排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62を設け、このPMセンサ62を、酸化触媒71と電気ヒータ72を重ね合わせるように固定し、両者の間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73を介装して構成し、ECU51は、燃料カット制御を実行中であるときに排気ガス中に十分な酸素量が存在するとし、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱し、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するようにしている。
【0089】
従って、燃料カット制御を実行しているときは、排気ガスがリーン雰囲気となって排気ガス中に十分な酸素量が存在することとなり、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱すると、酸化触媒71に捕集された排気微粒子は、排気ガス中の酸素を伴って適正に燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて精度良く排気微粒子の堆積量を算出することができる。その結果、エンジン10がストイキ(理論空燃比)で運転していても、酸化触媒71のセリアが燃料カット制御中などに排気ガスに混入する酸素を確実に吸蔵するため、確実に排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【実施例5】
【0090】
図11は、本発明の実施例5の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。なお、本実施例の排気微粒子の測定装置における全体構成は、上述した実施例1とほぼ同様であり、図1及び図2を用いて説明すると共に、この実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0091】
実施例5の排気微粒子の測定装置において、図1及び図2に示すように、エンジン10の基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様であるため、説明は省略する。本実施例では、排気管47における三元触媒49とマフラ50との間に、排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62が設けられている。このPMセンサ62は、図2に示すように、酸化触媒71と電気ヒータ72と温度センサ73とから構成されている。
【0092】
従って、PMセンサ62は、排気管47を流動する排気ガス中の微粒子、特に、黒煙粒子を捕集することができる。そして、PMセンサ62に排気微粒子が捕集されて所定量堆積した状態で、且つ、PMセンサ62の周辺に酸素が十分に存在しているときに、電気ヒータ72に通電すると、酸化触媒71が加熱されることで、堆積している排気微粒子が周辺の酸素を利用して燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出することができる。本実施例では、この排気微粒子の堆積量を算出する間、エンジン10のリッチ運転を禁止するようにしている。
【0093】
ここで、本実施例の排気微粒子の測定装置における排気微粒子の測定方法について、図11のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0094】
ステップS91にて、エンジン10が完全に暖機されたかどうか、即ち、水温センサ58により検出されたエンジン冷却水温が予め設定されたエンジン暖機水温以上になったかどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温がエンジン暖機水温に到達したら、ステップS92にて、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS93にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼したかどうかを、酸化触媒71の温度変化に基づいて判定する。
【0095】
このステップS93にて、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼されたと判定されたら、ステップS94にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止する。そして、ステップS95にて、温度センサ73が酸化触媒71の温度を計測し、ステップS96にて、温度センサ73により計測された酸化触媒71の温度tPMが、排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したかどうかを判定する。ここで、酸化触媒71の温度tPMが排気微粒子を燃焼不能な温度tA以下に低下したと判定されたら、ステップS97にて、吸入空気量の積算を開始する。そして、ステップS98にて、この吸入空気量の積算値Σgaが予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定する。
【0096】
このステップS98にて、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなったと判定されたら、ステップS99にて、PMセンサ62の周辺に酸素が存在しているかどうかを判定する。ここで、酸化触媒71に酸素吸蔵剤としてのセリアが担持されているときには、上述した実施例1、2、3と同様に、燃料カット制御の継続時間または積算時間に基づいて酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵しているかどうかを判定したり、酸素センサ63の検出結果に基づいて酸化触媒71のセリアが十分な酸素量を吸蔵しているかどうかを判定すればよい。また、酸化触媒71に酸素吸蔵剤としてのセリアが担持されていないときには、燃料カット制御の実行中であるかを判定することで、排気ガス中に酸素が存在することを推定し、PMセンサ62の周辺に酸素が存在するかどうかを推定すればよい。
【0097】
このステップS99で、酸化触媒71の周辺に十分な酸素量が存在していると判定したときには、ステップS100に移行し、ここで、ECU51は、エンジン10のリッチ運転を禁止する。即ち、PMセンサ62が排気微粒子の堆積量を算出するとき、エンジン10がリッチ運転を行って排気ガスがリッチ雰囲気になると、酸化触媒71の周辺に存在する酸素がリッチ雰囲気の排気ガスの酸化処理に使用されてしまい、酸化触媒71に堆積した排気微粒子を燃焼するための酸素量が減少してしまう。
【0098】
そして、ステップS100で、エンジン10のリッチ運転を禁止した後、ステップS101では、PMセンサ62における電気ヒータ72に通電して酸化触媒71を加熱することで、この酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼する。そして、ステップS102にて、このときの酸化触媒71の温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する。ステップS103では、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子が完全に燃焼することで、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したかどうかを判定する。
【0099】
従って、PMセンサ62の酸化触媒71に堆積している排気微粒子を燃焼し、このときの温度変化に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するとき、エンジン10のリッチ運転を禁止することで、酸化触媒71の周辺に存在する酸素を用いて排気微粒子を確実に燃焼することができ、排気微粒子の堆積量が適正に算出されることとなる。
【0100】
その後、ステップS103にて、排気微粒子の堆積量の算出処理が終了したと判定されたら、ステップS104にて、PMセンサ62における電気ヒータ72への通電を停止し、ステップS105で、エンジン10のリッチ運転の禁止を解除し、ECU51は、全ての処理を終了する。
【0101】
このように実施例5の排気微粒子の測定装置にあっては、排気管47に排気ガス中の微粒子の量を計測するPMセンサ62を設け、このPMセンサ62を、酸化触媒71と電気ヒータ72を重ね合わせるように固定し、両者の間に酸化触媒71の温度を計測する温度センサ73を介装して構成し、ECU51は、酸化触媒71の周辺に十分な酸素量が存在するとき、エンジン10のリッチ運転を禁止した後、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱し、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて排気微粒子の堆積量を算出するようにしている。
【0102】
従って、酸化触媒71の周辺に十分な酸素量が存在するとき、エンジン10のリッチ運転を禁止することで、酸化触媒71の周辺に存在する酸素がリッチ雰囲気の排気ガスの酸化処理に使用されることはなく、電気ヒータ72により酸化触媒71を加熱すると、酸化触媒71に捕集された排気微粒子は、周辺に存在する酸素を伴って適正に燃焼することとなり、ECU51は、このときの温度上昇量と吸入空気量の積算値に基づいて精度良く排気微粒子の堆積量を算出することができる。その結果、エンジン10がストイキ(理論空燃比)で運転していても、酸化触媒71のセリアが燃料カット制御中などに排気ガスに混入する酸素を確実に吸蔵するため、確実に排気微粒子の堆積量を算出することができる。
【0103】
なお、上述した各実施例では、筒内噴射式エンジン10において、排気管47に配設したPMセンサ62により酸化触媒71に堆積した排気微粒子を燃焼し、その温度変化に基づいて排気ガス中の排気微粒子の排出量を推定するようにしたが、この推定した排気微粒子の排出量に基づいてこの排出量が減少するように、燃料噴射量や空燃比を変更してエンジン10を制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上のように、本発明に係る排気微粒子の測定装置は、十分な酸素量を確保して捕集した排気微粒子を燃焼することで、その温度変化により排気ガス中の微粒子量を精度良く測定可能とするものであり、いずれの種類の内燃機関に用いても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施例1に係る排気微粒子の測定装置が適用された内燃機関を表す概略構成図である。
【図2】実施例1の排気微粒子の測定装置を表す概略図である。
【図3】実施例1の排気微粒子の測定装置におけるセリア添加量に対するセンサ表面積を表すグラフである。
【図4】実施例1の排気微粒子の測定装置におけるセリア添加量に対する排気量を表すグラフである。
【図5】実施例1の排気微粒子の測定装置におけるヒータ温度に対するセンサ温度を表すグラフである。
【図6】実施例1の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例2に係る排気微粒子の測定装置が適用された内燃機関を表す概略構成図である。
【図8】実施例2の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。
【図9】実施例3の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。
【図10】実施例4の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。
【図11】実施例5の排気微粒子の測定装置における測定制御を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0106】
10 エンジン
47 排気管(排気通路)
48,49 三元触媒
50 マフラ(消音器)
51 電子制御ユニット、ECU(堆積量算出手段)
52 エアフローセンサ
58 水温センサ
62 PMセンサ
63 酸素センサ
71 酸化触媒(酸素吸蔵剤)
72 電気ヒータ(加熱手段)
73 温度センサ(排気温度センサ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に配設された酸化触媒と、該酸化触媒に担持された酸素吸蔵剤と、前記酸化触媒を加熱する加熱手段と、前記酸化触媒の温度を計測する温度センサと、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱したときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する堆積量算出手段とを具えたことを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気微粒子の測定装置において、前記酸化触媒は、前記排気通路に配設された三元触媒より排気ガスの流動方向の下流側で、且つ、消音器より上流側に配置されたことを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排気微粒子の測定装置において、前記堆積量算出手段は、燃料カット継続時間及び吸入空気量に基づいて前記酸素吸蔵剤による酸素吸蔵量を推定し、この酸素吸蔵量が予め設定された所定値以上であるときに前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の排気微粒子の測定装置において、前記排気通路における前記酸化触媒の近傍に酸素センサが配設され、前記堆積量算出手段は、該酸素センサの検出結果に基づいて前記酸素吸蔵剤による酸素吸蔵量を推定し、この酸素吸蔵量が予め設定された所定値以上であるときに前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項5】
排気通路に配設された酸化触媒と、該酸化触媒を加熱する加熱手段と、前記酸化触媒の温度を計測する温度センサと、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱したときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する堆積量算出手段とを具え、該堆積量算出手段は、燃料カット中に前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の排気微粒子の測定装置において、前記堆積量算出手段は、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子を燃焼し、前記酸化触媒が排気微粒子を燃焼不能な温度以下に低下してから吸入空気量の積算を開始し、この吸入空気量の積算値が予め設定された所定値より大きくなったときに前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の排気微粒子の測定装置において、前記排気通路における前記酸化触媒の近傍に排気温度センサが配設され、前記堆積量算出手段は、該排気温度センサにより検出された排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上になったときに、吸入空気量の積算値をキャンセルして再度吸入空気量の積算を開始することを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の排気微粒子の測定装置において、前記堆積量算出手段は、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出するとき、リッチ運転を禁止することを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項1】
排気通路に配設された酸化触媒と、該酸化触媒に担持された酸素吸蔵剤と、前記酸化触媒を加熱する加熱手段と、前記酸化触媒の温度を計測する温度センサと、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱したときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する堆積量算出手段とを具えたことを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気微粒子の測定装置において、前記酸化触媒は、前記排気通路に配設された三元触媒より排気ガスの流動方向の下流側で、且つ、消音器より上流側に配置されたことを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排気微粒子の測定装置において、前記堆積量算出手段は、燃料カット継続時間及び吸入空気量に基づいて前記酸素吸蔵剤による酸素吸蔵量を推定し、この酸素吸蔵量が予め設定された所定値以上であるときに前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の排気微粒子の測定装置において、前記排気通路における前記酸化触媒の近傍に酸素センサが配設され、前記堆積量算出手段は、該酸素センサの検出結果に基づいて前記酸素吸蔵剤による酸素吸蔵量を推定し、この酸素吸蔵量が予め設定された所定値以上であるときに前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項5】
排気通路に配設された酸化触媒と、該酸化触媒を加熱する加熱手段と、前記酸化触媒の温度を計測する温度センサと、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱したときの温度上昇度合に応じて排気微粒子の堆積量を算出する堆積量算出手段とを具え、該堆積量算出手段は、燃料カット中に前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の排気微粒子の測定装置において、前記堆積量算出手段は、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子を燃焼し、前記酸化触媒が排気微粒子を燃焼不能な温度以下に低下してから吸入空気量の積算を開始し、この吸入空気量の積算値が予め設定された所定値より大きくなったときに前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出することを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の排気微粒子の測定装置において、前記排気通路における前記酸化触媒の近傍に排気温度センサが配設され、前記堆積量算出手段は、該排気温度センサにより検出された排気ガス温度が排気微粒子を燃焼可能な燃焼温度以上になったときに、吸入空気量の積算値をキャンセルして再度吸入空気量の積算を開始することを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の排気微粒子の測定装置において、前記堆積量算出手段は、前記加熱手段により前記酸化触媒を加熱して排気微粒子の堆積量を算出するとき、リッチ運転を禁止することを特徴とする排気微粒子の測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−304068(P2007−304068A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135602(P2006−135602)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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