説明

排気浄化装置

【課題】コンパクトな構成により搭載性が良く、還元剤の拡散効果を得ながら排気温度の低下を抑制することができるようにする。
【解決手段】フィルタ23を第一ケーシング21内に備えた上流側排気浄化装置20と、選択還元型触媒32を第二ケーシング31内に備えた下流側排気浄化装置30とを備えた排気浄化装置2において、第一ケーシング21の周壁に設けられた排気出口27と第二ケーシング31の周壁に設けられた排気入口36とに接続され、第一ケーシング21と第二ケーシング31とを連通する連通パイプ29と、排気出口27に対向する第一ケーシング21の周壁に設けられ還元剤を添加する添加ノズル28とを備え、上流側排気浄化装置20及び下流側排気浄化装置30が、排気出口27と排気入口36とを隣接させた状態で間隔をあけて並列配置され、連通パイプ29の一端が、排気出口27から添加ノズル28に向けて第一ケーシング21内に延設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気浄化装置に関し、特に排気中のパティキュレート及び窒素酸化物を除去する排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン、中でもディーゼルエンジンの排気中には、大気汚染物質である粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMと略称する)や窒素酸化物(以下、NOxという)等が含まれている。そこで、エンジンの排気通路に、PMを捕集するためのパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPFと略称する)を設置し、大気中にPMが放出されないようにした技術が知られている。また、エンジンの排気通路に、NOxを除去するための選択還元型触媒(Selective Catalytic Reduction、以下、SCRと略称する)を設置し、還元剤としての尿素水をSCRに流入する排気中に添加することにより、SCRにおいて排気中のNOxを還元して排気を浄化するようにした技術が知られている。
【0003】
このようなPMの捕集及びNOxの還元を効率的に行うため、DPF及びSCRを組み合わせ、排気浄化装置として用いるようにしたものが、例えば特許文献1などに提案されている。特許文献1に記載の排気浄化装置は、前段酸化触媒及びフィルタ(DPF)が収容された上流側後処理装置と、NOx触媒(SCR)及び後段酸化触媒が収容された下流側後処理装置とが、1つのケーシング内に並列に収容されて構成されている。
【0004】
これら上流側後処理装置及び下流側後処理装置の端部には、ケーシング内で排気をUターンさせる折返室が形成されており、折返室内にはフィルタを流通後の排気の移送方向を変更する第1ガイド板と、NOx触媒へ直接的に排気が流れることを規制する第2ガイド板とが配設されている。また、折返室内の一側には、尿素水溶液を噴射する噴射ノズルが備えられ、ケーシングの折返室内において、第1ガイド板及び第2ガイド板により、噴射ノズルからNOx触媒までの排気の経路長を延長化して尿素水溶液の拡散時間を十分に確保できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−103034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の排気浄化装置は、上流側後処理装置及び下流側後処理装置を1つの四角箱状のケーシング内に収容して車両に設置されるため、装置全体が大型化してしまい、コストも増大する。また、ケーシング内に上流側後処理装置と下流側後処理装置とを並列配置し、ケーシングの一端に折返室を形成し、さらにこの折返室内に第1ガイド板及び第2ガイド板を配設する必要があるため、装置が複雑で製作コストもかかる。
【0007】
このような課題に対し、図3に示すように、上流側排気浄化装置50として円筒ケーシング51内に前段酸化触媒52とDPF53とを収容し、下流側排気浄化装置60として円筒ケーシング61内にSCR62と後段酸化触媒63とを収容し、これらのケーシング51,61を並列配置して、その間に、両端に屈曲部59a,59bを有する連通パイプ59を接続した排気浄化装置も知られている。この排気浄化装置では、連通パイプ59が上流側排気浄化装置50と下流側排気浄化装置60との間に配設され、尿素水溶液を噴射する噴射ノズル58が連通パイプ59の上流側に設けられている。
【0008】
しかしながら、図3に示す排気浄化装置は、連通パイプ59の全長が長いことから、噴射ノズル58から噴射された尿素水溶液を排気中に拡散させる点では有利であるが、その表面での放熱により連通パイプ59内を流通する排気の温度が低下してしまうため、却って、下流側排気浄化装置60のSCR63でのNOx浄化率が低下してしまう場合がある。
【0009】
本件はこのような課題に鑑み案出されたもので、コンパクトな構成により搭載性が良く、還元剤の拡散効果を得ながら排気温度の低下を抑制することができるようにした排気浄化装置を提供することを目的とする。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)ここで開示する排気浄化装置は、ディーゼルエンジンの排気に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するフィルタ(DPF)を筒状の第一ケーシング内に備えた上流側排気浄化装置と、前記排気に含まれる窒素酸化物(NOx)を還元し浄化する選択還元型触媒(SCR)を前記第一ケーシングとは別個の筒状の第二ケーシング内に備えた下流側排気浄化装置と、を備えた排気浄化装置において、前記第一ケーシングの一端の周壁に設けられ、前記第一ケーシング内を流通した排気が流出する排気出口と、前記第二ケーシングの一端の周壁に設けられ、前記第二ケーシング内を流通する排気が流入する排気入口と、前記排気出口と前記排気入口とに接続されて前記第一ケーシングと前記第二ケーシングとを連通する連通パイプと、前記排気出口に対向する前記第一ケーシングの周壁に設けられ、前記連通パイプへ流入する排気に還元剤を添加する還元剤添加ノズルと、を備える。
【0011】
また、前記上流側排気浄化装置及び前記下流側排気浄化装置が、前記排気出口と前記排気入口とを隣接させた状態で間隔をあけて、前記第一ケーシング内を流通する排気流と前記第二ケーシング内を流通する排気流とが逆向きに流れるように並列配置され、前記連通パイプの前記排気出口側の一端が、前記排気出口から前記還元剤添加ノズルに向けて前記第一ケーシング内に延設されることを特徴としている。
【0012】
(2)また、前記連通パイプが直線状のパイプであり、前記還元剤添加ノズルの先端から排気下流側へ向かって、前記連通パイプの前記一端の開口,前記排気出口及び前記排気入口がこの順に一直線に設けられることが好ましい。
【0013】
(3)或いは、前記連通パイプが曲線状のパイプであり、前記排気入口が、前記第二ケーシングの中心軸から偏心して設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
開示の排気浄化装置によれば、上流側排気浄化装置及び下流側排気浄化装置が、排気出口と排気入口とを隣接させた状態で間隔をあけて、第一ケーシング内を流通する排気流と第二ケーシング内を流通する排気流とが逆向きに流れるように並列配置されるため、装置全体としての構成が簡素化され、全体としてコンパクトになり、車両や船舶等への搭載性も向上する。
【0015】
また、連通パイプが、隣接して設けられた排気出口と排気入口とに接続されるため、連通パイプの外部に露出する部分の長さを短くすることができ、連通パイプ表面での放熱による連通パイプ内を流通する排気の温度低下を抑制することができ、下流側排気浄化装置における排気中のNOxの浄化率の低下を抑制することができる。
また、第一ケーシングの周壁に還元剤添加ノズルが設けられ、連通パイプの排気出口側の一端が、排気出口から還元剤添加ノズルに向けて第一ケーシング内に延設されているため、上流側排気浄化装置と下流側排気浄化装置とを隣接させて並列配置しても、連通パイプの長さを確保することができ、還元剤の排気中への拡散効果を確保することができる。
【0016】
また、連通パイプが直線状のパイプであり、還元剤添加ノズルの先端から排気下流側へ向かって、連通パイプの一端の開口,排気出口及び排気入口がこの順に一直線に設けられる場合、連通パイプ内へ還元剤を確実に添加することができ、連通パイプ内で排気中へ拡散させることができる。また、連通パイプの長さを最短にすることができ、構成をより簡素化することができる。
【0017】
また、連通パイプが曲線状のパイプの場合、第一ケーシングと第二ケーシングとをより隣接し配置することができ、装置全体をよりコンパクトにすることができる。また、排気入口が第二ケーシングの中心軸から偏心して設けられている場合、排気を旋回させながら第二ケーシング内へ流入させることができ、還元剤をより拡散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態にかかる排気浄化装置の構成を示す模式的な図であり、図1(a)はその軸方向断面図、図1(b)はその側面図〔図1(a)のA方向矢視図〕である。
【図2】第一実施形態にかかる排気浄化装置を説明する全体構成図である。
【図3】第二実施形態にかかる排気浄化装置の構成を示す模式的な図であり、図3(a)はその平面図、図3(b)はその側面図〔図3(a)のB方向矢視図〕である。
【図4】従来の課題を説明する排気浄化装置の構成を示す模式的な図であり、図4(a)はその軸方向断面図、図4(b)はその側面図〔図4(a)のC方向矢視図〕である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1.第一実施形態]
[1−1.全体構成]
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0020】
本実施形態にかかる排気浄化装置について、図1(a),図1(b)及び図2を用いて説明する。本排気浄化装置は、車両だけでなくエンジンを搭載した乗り物、例えば船舶等に適用することも可能であるが、ここでは、一般的な乗用車やトラック,バス等の車両に適用した例で説明する。
図2に示すように、エンジン1は、ここでは直列6気筒機関のディーゼルエンジンとして構成されている。エンジン1の各気筒には燃料噴射弁11が設けられ、各燃料噴射弁11はコモンレール12から加圧燃料を供給され、開弁に伴って対応する気筒の筒内に燃料を噴射する。なお、気筒数はこれに限定されない。
【0021】
エンジン1の吸気側には吸気マニホールド13が装着され、吸気マニホールド13の上流端に接続された吸気通路14には、上流側よりエアクリーナ15,ターボチャージャ16のコンプレッサ16a及びインタークーラ17が設けられている。また、エンジン1の排気側には排気マニホールド18が装着され、排気マニホールド18の下流端には、コンプレッサ16aと同軸上に連結されたターボチャージャ16のタービン16bが接続されている。タービン16bには排気通路19が接続されている。この排気通路19の途中に、排気浄化装置2が設けられている。
【0022】
排気浄化装置2は、排気上流側に設けられた上流側排気浄化装置20と、上流側排気浄化装置20の排気下流側に設けられた下流側排気浄化装置30とから構成され、上流側排気浄化装置20と下流側排気浄化装置30とは、連通パイプ29により接続されている。
上流側排気浄化装置20は、円筒状の筒状ケーシング(第一ケーシング)21内に、上流側に配置される前段酸化触媒22と、下流側に配置されるパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPFと略称する)23とが内蔵されて構成されている。なお、以下、上流側排気浄化装置20をDPF装置20といい、筒状ケーシング21をDPFケーシング21という。
【0023】
下流側排気浄化装置30は、円筒状の筒状ケーシング(第二ケーシング)31内に、上流側に配置される選択還元型触媒(Selective Catalytic Reduction、以下、SCRと略称する)32と、下流側に配置される後段酸化触媒33とが内蔵されて構成されている。なお、以下、下流側排気浄化装置30をSCR装置30といい、筒状ケーシング31をSCRケーシング31という。
【0024】
また、DPF23の排気下流側であって、連通パイプ29の上流側には、還元剤としての尿素水を添加する添加ノズル(還元剤添加ノズル)28が設けられ、添加ノズル28は、図示しないタンクから圧送される尿素水をSCR装置30に向かう排気中に噴射し添加する。この尿素水の添加量や添加のタイミングは、コントローラ40により制御される。
コントローラ(ECU,Engine (electronic) Control Unit)40は、エンジン制御や排気浄化制御等にかかる各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート等を備えて構成されている。
【0025】
[1−2.排気浄化装置の構成]
次に、図1(a)及び図1(b)を用いて、DPF装置20及びSCR装置30について詳述する。
DPF装置20は、排気中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMと略称する)を捕集する機能と、捕集したPMを連続的に酸化させて除去する機能とを併せ持つ。なお、PMとは、炭素からなる黒煙(すす)の周囲に燃え残った燃料や潤滑油の成分,硫黄化合物等が付着した粒子状の物質である。
【0026】
前段酸化触媒22は、排気中の成分に対する酸化性能を持った酸化触媒であり、金属,セラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒物質を担持したものである。前段酸化触媒22によって酸化される排気中の成分には、NOや未燃燃料中の炭化水素等及び一酸化炭素が挙げられる。例えば、NOが前段酸化触媒22で酸化されるとNO2が生成される。
【0027】
DPF23は、PMを捕集する多孔質フィルタ(例えば、セラミックフィルタ)である。DPF23の内部は、多孔質の壁体によって排気の流通方向に沿って複数に分割されている。この壁体には、PMの微粒子に見合った大きさの多数の細孔が形成される。排気が壁体の近傍や内部を通過する際に壁体内,壁体表面にPMが捕集され、排気が濾過される。このようなDPF23の再生制御は、コントローラ40によって制御される。
【0028】
DPF装置20は、筒状のDPFケーシング21内に、その軸方向に直列に前段酸化触媒22とDPF23とが内蔵されて構成されている。DPFケーシング21には、前段酸化触媒22の排気上流側にDPF入口空間24が設けられ、DPF23の排気下流側に混合室と称される空間25が設けられている。DPF入口空間24には、排気通路19からDPFケーシング21内へ排気が流入するための入口であるDPF入口26が形成され、混合室25には、DPFケーシング21内を流通した排気が流出するための出口であるDPF出口(排気出口)27が形成されている。なお、本実施形態では、図1(b)に示すように、DPF入口26及びDPF出口27は、DPFケーシング21の両端の周壁であって、周方向に180度ずれた位置にそれぞれ形成されている。
【0029】
添加ノズル28は、DPF出口27に対向するDPFケーシング21の周壁に設けられ、その先端を連通パイプ29の開口29aに向けて配設されている。
連通パイプ29は、DPF装置20のDPFケーシング21に接続される一端が、DPFケーシング21の周壁に形成されたDPF出口27からDPFケーシング21内へ貫通して配設されており、DPFケーシング21の周壁に片持ち支持されるように、その開口29aを添加ノズル28に向けて延設されている。すなわち、連通パイプ29の排気上流側の端部は、DPFケーシング21の周壁に形成されたDPF出口27から混合室25内に突出して設けられている。連通パイプ29は、排気通路19の一部を構成し、最も一般的な円筒状パイプであり、本実施形態では、直線状のパイプである。なお、連通パイプ29は一般的な円筒状パイプに限られず、その他の筒状のパイプであってもよい。
【0030】
SCR装置30におけるSCR32は、軸方向に互いに平行な微小な穴が複数連通したハニカム構造の担体に、触媒が担持されて構成された尿素添加型の窒素酸化物選択還元型触媒であり、上流側に設けられた添加ノズル28から供給される尿素水をアンモニアに加水分解するとともにアンモニアを吸着する機能を持ち、さらに吸着したアンモニアを還元剤として排気中のNOxをN2へと還元するものである。なお、SCR32に担持される触媒の種類は任意であり、例えばゼオライト系,バナジウム系等の触媒を用いることが考えられる。また、還元剤として尿素水以外を用いるものでもよい。
【0031】
後段酸化触媒33は、SCR32での還元反応における余剰分のアンモニアを除去するための酸化触媒である。
SCR装置30は、筒状のSCRケーシング31内に、その軸方向に直列にSCR32と後段酸化触媒33とが内蔵されて構成されている。SCRケーシング31には、SCR32の排気上流側にSCR入口空間34が設けられ、後段酸化触媒33の排気下流側にSCR出口空間35が設けられている。SCR入口空間34には、連通パイプ29からSCRケーシング31内へ排気が流入するための入口であるSCR入口(排気入口)36が形成され、SCR出口空間35には、SCRケーシング31内を流通した排気が流出するための出口であるSCR出口37が形成されている。なお、本実施形態では、図1(b)に示すように、SCR入口36及びSCR出口37は、SCRケーシング31の両端の周壁であって、周方向に180度ずれた位置にそれぞれ形成されている。
【0032】
本実施形態にかかる排気浄化装置2は、このように構成されたDPF装置20及びSCR装置30が、DPF出口27とSCR入口36とを隣接させた状態で間隔をあけて、DPFケーシング21内を流通する排気流とSCRケーシング31内を流通する排気流とが逆向きに流れるように並列配置されて構成されている。さらに、DPFケーシング21とSCRケーシング31は、同形状(同サイズ)のケーシングであり、DPF出口27とSCR入口36とを対向させて面対称に配置されている。
【0033】
言い換えると、DPF入口空間24とSCR出口空間35とが隣り合い、混合室25とSCR入口空間34とが隣り合うように、同形状のDPFケーシング21とSCRケーシング31とが並列配置され、このとき、DPF出口27とSCR入口36とが向き合うように設けられている。
なお、DPF出口27とSCR入口36との間の間隔は、尿素水拡散のための連通パイプ29の長さ,周囲の部材や装置等との配置関係により適宜設定可能である。連通パイプ29は、この隣接したDPF出口27とSCR入口36とを接続することにより、DPFケーシング21とSCRケーシング31とを連通する。
【0034】
[1−3.作用,効果]
本実施形態にかかる排気浄化装置2は、上述のように構成されているので、以下のようにして排気は浄化される。
エンジン1の運転中において、エンジン1から排出された排気は、排気通路19の上流部を経てDPF装置20内に導入され、前段酸化触媒22及びDPF23を通過した後に混合室25内に移送され、連通パイプ29内に導入される。このとき、連通パイプ29の上流側に設けられた添加ノズル28から、還元剤としての尿素水がSCR装置30に向かう排気中に添加される。
【0035】
添加された尿素水は、連通パイプ29内で排気と混合されながら、排気熱により加水分解されてアンモニアを生じ、連通パイプ29の内部を流通してSCR入口36からSCR入口空間34に導入され、SCR32及び後段酸化触媒33を通過した後にSCR出口37から排気パイプ39を通過し大気中に排出される。このとき、DPF23では排気中のPMが捕集され、SCR32では排気中のNOxが還元され、これらの作用により大気中への有害成分の排出が防止される。
【0036】
したがって、本実施形態にかかる排気浄化装置2によれば、DPF装置20及びSCR装置30が、DPF出口27とSCR入口36とを隣接させた状態で間隔をあけて、DPFケーシング21内を流通する排気流とSCRケーシング31内を流通する排気流とが逆向きに流れるように並列配置されるため、排気浄化装置2全体の構成が簡素化され、全体としてコンパクトになり、車両への搭載性も向上する。さらに、2つのケーシングが同形状であり、面対称に配置されているため、排気浄化装置2全体の構成がより簡素化される。
【0037】
また、連通パイプ29が、隣接して設けられたDPF出口27とSCR入口36とに接続されるため、連通パイプ29の外部に露出する部分の長さを短くできる。そのため、連通パイプ29表面での放熱による連通パイプ29内を流通する排気の温度低下を抑制することができ、SCR装置30のSCR32における排気中のNOxの浄化率の低下を抑制することができる。
【0038】
また、DPFケーシング21の周壁に添加ノズル28が設けられ、DPF出口27側の連通パイプ29の一端が、DPF出口27から添加ノズル28に向けてDPFケーシング21内に延設されているため、DPFケーシング21とSCRケーシング31とを隣接させて並列配置しても、連通パイプ29の長さを確保することができ、尿素水を連通パイプ29内において排気中に拡散させることができる。
【0039】
また、本実施形態では、連通パイプ29が直線状のパイプであり、添加ノズル28の先端から排気下流側に向かって、連通パイプ29の一端の開口29a,DPF出口27及びSCR入口36がこの順に一直線に設けられているため、添加ノズル28から添加される尿素水が、連通パイプ29内へ確実に流入し、連通パイプ29内で排気中へと拡散させることができ、SCR32へアンモニアを送給することができる。また、連通パイプ29の長さを最短にすることができ、構成をより簡素化することができる。
【0040】
[2.第二実施形態]
[2−1.排気浄化装置の構成]
次に、第二実施形態にかかる排気浄化装置について、図3(a)及び図3(b)を用いて説明する。なお、第一実施形態と同じ部材等は、第一実施形態のものと同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0041】
図3(a)及び図3(b)に示すように、本実施形態にかかる排気浄化装置2は、連通パイプ29′の形状,SCR装置30のSCR入口36及びSCR出口37の位置、及び、DPF装置20に対するSCR装置30の配置を除いて、第一実施形態のものと同様に構成されている。
本実施形態では、DPF装置20及びSCR装置30が、DPF出口27とSCR入口36とを隣接させた状態で、間隔をあけて配置されており、DPF装置20に対してSCR装置30が側面視において斜め下方に位置している。また、SCR入口36が、図3(b)に示すように、SCRケーシング31の中心軸からDPF装置20から離隔する方向に長さXだけ偏心した位置に形成されている。また、SCR出口37も、SCRケーシング31の中心軸から偏心して設けられている。
【0042】
また、連通パイプ29′は、DPFケーシング21に接続される一端が、DPFケーシング21の周壁に形成されたDPF出口27からDPFケーシング21内へ貫通して配設された曲線状のパイプであり、DPF装置20のDPF出口27とSCR装置30のSCR入口36とを接続している。
【0043】
[2−2.作用,効果]
本実施形態にかかる排気浄化装置2は、上述のように構成されているので、DPF装置20を通過した排気は、DPF出口27から連通パイプ29′内へを流入し、連通パイプ29′を通ってSCR入口36からSCR装置30へ流入する。このとき、SCR入口36がSCRケーシング31の中心軸から偏心して設けられているため、SCR入口空間34において旋回流が形成される。
【0044】
したがって、本排気浄化装置2によれば、排気浄化装置2全体の構成をコンパクトにできる。また、連通パイプ29′の外部へ露出する部分の長さは、第一実施形態のものよりも多少長くなるとともに、SCR入口空間34において旋回流を発生させることができるため、尿素水を排気中により拡散させることができる。
【0045】
[3.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0046】
上記のいずれの実施形態においても、DPF装置20のDPF入口26とDPF出口27とが周方向に180度ずれた位置に設けられているが、DPF入口26及びDPF出口27の位置はこれに限られない。例えば、DPF入口26がDPF出口27と周方向に90度ずれた位置に設けられていてもよい。また、DPF入口26は、DPFケーシング21の周壁ではなく、DPFケーシング21の軸方向の端壁に設けられていてもよい。また、SCR出口37は、SCRケーシング31の周壁ではなく、SCRケーシング31の軸方向の端壁に設けられていてもよい。
【0047】
また、DPFケーシング21及びSCRケーシング31は円筒状の筒状ケーシングに限られるものではなく、DPFケーシング21とSCRケーシング31は同形状のものでなくてもよい。
また、第二実施形態において、SCR入口36をSCRケーシング31の中心軸から偏心させずに、SCRケーシング31の中心軸上に設けてもよい。この場合、旋回流による効果は得られないが、連通パイプ29′の外部に露出する長さを短くすることができるため、排気温度の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 エンジン(ディーゼルエンジン)
2 排気浄化装置
20 DPF装置(上流側排気浄化装置)
21 DPFケーシング(第一ケーシング)
22 前段酸化触媒
23 DPF(フィルタ,パティキュレートフィルタ)
26 DPF入口
27 DPF出口(排気出口)
28 添加ノズル(還元剤添加ノズル)
29 連通パイプ
30 SCR装置(下流側排気浄化装置)
31 SCRケーシング(第二ケーシング)
32 SCR(選択還元型触媒)
33 後段酸化触媒
36 SCR入口(排気入口)
37 SCR出口
40 コントローラ(ECU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するフィルタ(DPF)を筒状の第一ケーシング内に備えた上流側排気浄化装置と、前記排気に含まれる窒素酸化物(NOx)を還元し浄化する選択還元型触媒(SCR)を前記第一ケーシングとは別個の筒状の第二ケーシング内に備えた下流側排気浄化装置と、を備えた排気浄化装置において、
前記第一ケーシングの一端の周壁に設けられ、前記第一ケーシング内を流通した排気が流出する排気出口と、
前記第二ケーシングの一端の周壁に設けられ、前記第二ケーシング内を流通する排気が流入する排気入口と、
前記排気出口と前記排気入口とに接続されて前記第一ケーシングと前記第二ケーシングとを連通する連通パイプと、
前記排気出口に対向する前記第一ケーシングの周壁に設けられ、前記連通パイプへ流入する排気に還元剤を添加する還元剤添加ノズルと、を備え、
前記上流側排気浄化装置及び前記下流側排気浄化装置が、前記排気出口と前記排気入口とを隣接させた状態で間隔をあけて、前記第一ケーシング内を流通する排気流と前記第二ケーシング内を流通する排気流とが逆向きに流れるように並列配置され、
前記連通パイプの前記排気出口側の一端が、前記排気出口から前記還元剤添加ノズルに向けて前記第一ケーシング内に延設される
ことを特徴とする、排気浄化装置。
【請求項2】
前記連通パイプが直線状のパイプであり、前記還元剤添加ノズルの先端から排気下流側へ向かって、前記連通パイプの前記一端の開口,前記排気出口及び前記排気入口がこの順に一直線に設けられる
ことを特徴とする、請求項1記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記連通パイプが曲線状のパイプであり、前記排気入口が、前記第二ケーシングの中心軸から偏心して設けられる
ことを特徴とする、請求項1記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−92746(P2012−92746A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240784(P2010−240784)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】