説明

排気系部品

【課題】外部から熱的に遮断する排気系部品を提供する。
【解決手段】内燃機関、特に自動車のもの、の排気系に用いる排気系部品5が、排気の通る内部領域7を区画する内殻6と、内殻6の、内部領域7とは反対側を向く外面に配置された外殻8と、内殻6と外殻8との間に形成される空隙9と、空隙9に配置された断熱材10とを備える。部品5の外部から熱的分離の改善のため、断熱材10に少なくとも1つの微細多孔質の形状体11を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関、特に自動車のもの、の排気系に用いる排気系部品に関する。本発明はまたそのような排気系部品を少なくとも1つ備えた排気系に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで排気系部品とは例えば、触媒器,粒子フィルタ,消音機などの排気処理装置のほか、吸気マニホルド,終端管、さらには排気処理装置,マニホルド,終端管間の接続用のパイプ部材のことをいう。内燃機関からの有害物質の放出を抑えるためには、内燃機関の低温始動の際であっても排気系の排気浄化装置ができる限り早く動作温度に達することが重要である。そのために特に効果があるのは、排気系あるいはその部品を外部から熱的に遮断し、熱の外界への放射を抑えることである。そうすることでまた、車の使用の際には、排気系の近くに配置された車の部品を過熱から守ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上に鑑み、本発明の目的は排気系部品および排気系のための改良された構成、特に熱的分離の改善により実現されるもの、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、本発明によれば、独立請求項に記載の構成により達せられる。より好ましい構成は従属請求項に記載のとおりである。
【0005】
本発明の基本となる技術思想は次のとおりである。熱的分離の実現に少なくとも1つの形状安定な形状体を用い、この形状体を多孔質に構成するか、または多孔質断熱材料で形成する。形状体は、排気の通る内部領域を区画する内殻と、内殻の外側に配置される外殻との間に配置される。このような断熱形状体は従来のマット状の繊維質の断熱材料と比べて熱伝導係数が著しく低い。これだけでも多孔質の形状体により各排気系部品の熱的分離が効果的に実現できる。形状体はさらに耐荷重性と形状安定性を有し、このため形状体によって各排気系部品の剛性がある程度高められる。形状体を介して内殻が外殻に支えられるからである。
【0006】
好ましくは、各形状体を剛体として形成する。これにより形状体に支持機能を持たせる。それに加えてまたは代えて、形状体の形状を、内殻と外殻との間に形成される空隙の形状に合わせてもよい。これにより各形状体がほぼ自立し、取り扱いやすくなる。特に好ましくは、形状体を微細多孔質に構成するか、または微細多孔質断熱材料で形成する。このような形状体の製造に適した微細多孔性材料の例として、焼成ケイ酸またはエアロゲルの発泡体(フォーム)が挙げられる。微細多孔質断熱材料が有する細孔の大きさは、好ましくは約10nm〜50nm、より好ましくは約20nmである。これにより特に気体分子の平均自由行程を減少させ、形状体の微細多孔質構造内における対流による熱伝達を著しく低減できる。それに加えてまたは代えて、多孔質の形状体を形成する断熱材料の粒子を球状にするとよい。これにより、隣り合う材料粒子同士を極めて小さな点で接触させることができ、形状体の多孔質構造内における伝導による熱伝達を大幅に低減できる。それに加えてまたは代えて、形状体の多孔質断熱材料に赤外領域の光を吸収する材料または物質を混ぜてもよい。これにより多孔質の形状体内における放射による熱伝達を著しく低減できる。
【0007】
好ましくは、断熱材を複数の微細多孔質の形状体で構成し、そのうち少なくとも2つの形状体を堅固に係合させる。これにより形状体相互の位置決めが、高価な固定手段を用いることなく可能となる。ここで堅固な係合を実現するために、例えば、形状体に嵌め合わせ構造または実接ぎ(さねつぎ)構造を形成する。形状体を断片化するとなおよい。これが特に好ましいのは、内殻が溝状または管状に構成され、排気の通る内部領域を取り囲んでいる場合である。この場合、外殻が内殻を環状に取り囲むので空隙が環状に形成され、その中に断熱材が収容される。断片化された形状体は空隙に格別嵌め込みやすい。
【0008】
好ましくは、空隙を排気系の設置環境に対して防滴性と気体透過性を有するよう形成する。これにより、外界からの跳ね水が空隙に達するのを防ぐことができる。同時に圧力平衡を得るために、外殻には少なくとも1つの開口を設け、この開口を、たとえば微細孔を形成した金属箔などの防滴性と気体透過性を有する膜で塞ぐ。それに加えてまたは代えて、脱気装置を空隙に、好ましくは外殻に、接続すれば、それによって圧力平衡を得ることができる。あるいは、空隙を排気系部品の設置環境に対して防滴性と気体不透過性を有するよう形成する。例えば外殻に少なくとも1つの開口を形成し、この開口をフードで覆い、このフードと外殻で、外殻の開口から隔たった位置に外界に臨む開口を形成する。これにより、跳ね水からの十分な保護を実現しつつ圧力平衡を得ることができる。
【0009】
好ましくは、内殻と外殻とを管状に形成する一方、空隙と断熱材とを環状に形成する。そうすれば、各形状体を同様に環状または環片状に構成して、排気系部品の組み立ての際に空隙に嵌め込むだけでよい。
【0010】
好ましくは、管状の内殻の長さ方向沿いの一部を蛇腹に形成する。これにより内殻を長さ方向の端部で外殻に固定することができる。熱に起因する膨張は蛇腹によって吸収される。蛇腹の壁は一層でも多層でもよい。より好ましくは、蛇腹を内部領域に臨む側からガイドチューブで覆う。これにより、管状の内殻の、その内面形状が蛇腹によって乱されていることに起因する流れ抵抗を、蛇腹の領域において低減することができる。ここで、内殻が長さ方向沿いに蛇腹と接続する箇所においてそれとほぼ面一になるようにガイドチューブは蛇腹を覆う。こうすれば内殻の内面形状が蛇腹の領域において全くまたは殆ど乱されない。好ましくは、蛇腹は内殻から専ら半径方向に外側へ、すなわち空隙内へ突出する。特に好ましくは、ガイドチューブは、蛇腹の長さ方向の一端で内殻または蛇腹に軸方向に固定され、それ以外のいかなる箇所においても内殻および蛇腹に固定されていない。これにより、ガイドチューブと蛇腹との間の、または、ガイドチューブと内殻との間の、熱に起因する相対運動が可能になる。
【0011】
好ましくは、圧力調整装置を設け、これにより空隙内の圧力をパラメータに基づいて調節可能とする。内殻と外殻との間の、特に対流による、熱伝達は、空隙内の圧力に強く依存する。よって例えば、熱的分離の改善には、空隙内の圧力を外界気圧より低くしてある程度の減圧状態にするのがよい。これは例えば低温始動時に有利である。特に高度の熱的分離の必要がなくなった時点で、空隙内の圧力を、例えば外界気圧またはそれより少し高い圧力まで、上げればよい。これにより部品に対する熱負荷を低減できる。
【0012】
それに加えてまたは代えて、導入/排出装置を設け、これによりパラメータに基づいて空隙に熱媒液を導入、また空隙から熱媒液を排出することを可能とする。例えば排気系部品の過熱を防ぐ目的で熱的分離をさらに抑えたいときには、導入/排出装置により、空隙に熱媒液を導入する。こうすると外殻と内殻との間の熱伝達が著しく高まる。これにより特に、各形状体の熱的分離作用をある程度抑制することができる。逆に、熱的分離を再び良くしたいときには、導入/排出装置により、空隙から熱媒液を排出する。言うまでもなく、熱媒液の導入が可能であるためには、形状体の製造に用いられる材質が、実際に使用される熱媒液に対して、十分に安定であることが前提となる。適切な熱媒体として、例えば水,グリコール等が挙げられる。熱媒体の導入/排出のための配管は、好ましくは空隙の、組み立てた状態において下部、特に最下部、に接続される。これにより可能な限り完全な排出が可能となる。必須ではないが、空隙の、組み立てた状態において上部、特に最上部、に空隙の通気/脱気のための開口をさらに設けてもよい。ここでも異物、特に跳ね水、の侵入を防ぐために、適切な弁装置を設けてもよい。例えば導入/排出装置を通気/脱気配管を介して貯蔵タンクに接続する;空隙から熱媒液を排出するときにはタンクに熱媒液を溜め、空隙に熱媒液を導入するときにはタンクから熱媒液を引き出す。熱媒液の移動に伴い、熱媒液が流れ込んでゆく行先の空間から追い出される空気その他気体の量は、熱媒液が流れ出してくる源の空間に継ぎ足される空気その他気体の量と等しい。このように両空間を直接接続する配管を、空気その他気体もが流通する。そこで熱媒液ではなく気体のほうを、それ用の供給装置を用いて流通させてもよい。この場合熱媒液は自動的に追従する。
【0013】
前述の圧力調整装置および/または導入/排出装置は、空隙に接続されたポンプと、このポンプをパラメータに基づいて制御するコントローラからなる。そのような装置を制御するための適切なパラメータとは例えば車両パラメータや、内燃機関の状態パラメータであり、特に内燃機関や排気系やその部品の温度である。
【0014】
各形状体は、特に空隙に熱媒液を導入可能かつ/または空隙内の圧力が制御可能な場合には、好ましくは開放多孔質構造を有する。
【0015】
好ましくは、外殻を支持部材として構成する一方、内殻を非支持部材として構成する。この構成により、外殻を専ら各部品の排気系への組み込みのために利用する一方で、内殻を主として排気の流通のために利用することができる。この構成においては、外殻を内殻に比べて肉厚にする、つまり内殻を外殻に比べて肉薄にするとよい。外殻は、例えばフェライト材料を用いて比較的安価に作製できる。外殻が曝される熱負荷は比較的小さいからである。これに対して内殻は比較的高価で腐食に強い材料、例えばオーステナイト材料、で作製される。それでも内殻を外殻より薄く作製できるので、これらを組み合わせた構成は全体として比較的安価なものとなる。
【0016】
このような、内殻,少なくとも1つの形状体,外殻で形成される排気系部品とは、例えば特には排気処理装置用のパイプ部材やハウジング部材である。そのような部品として例えば吸気マニホルドや終端管が挙げられる。
【0017】
本発明の他の重要な特徴や効果は、従属請求項、図面、および図面に基づいた本明細書内の記載の該当箇所から理解されるとおりである。
【0018】
上に述べた、また下にこれから述べるいずれの特徴も、具体的に言及されている組み合わせ以外のどのような組み合わせでも、あるいは単独でも、本発明の範囲を逸脱しない限り実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】排気系の一部の概略側面図である。
【図2】図1のII部の拡大図であり、一排気系部品の一部を示す図である。
【図3】図2の線IIIに沿う断面図である。
【図4】他の実施形態における図2と同様の詳細図である。
【図5】図4の線Vに沿う断面図である。
【図6】さらに他の実施形態における図2および図4と同様の詳細図である。
【図7】図6の線VIIに沿う断面図である。
【図8】排気系部品の縦断面図である。
【図9】図8の線IXに沿う横断面図である。
【図10】さらに他の実施形態における図8と同様の断面図である。
【図11】さらに他の実施形態における図8と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。同一、類似、または機能上同等の部材は同一の参照符号で示す。
【0021】
図面は全て模式図であり、各図の内容は以下のとおりである。図1は排気系の一部の概略側面図である。図2は図1のII部の拡大図であり、一排気系部品の一部を示す。図3は図2の線IIIに沿う断面図である。図4は他の実施形態における図2と同様の詳細図である。図5は図4の線Vに沿う断面図である。図6はさらに他の実施形態における図2および図4と同様の詳細図である。図7は図6の線VIIに沿う断面図である。図8は排気系部品の縦断面図である。図9は図8の線IXに沿う横断面図である。図10および図11はさらに他の実施形態における図8と同様の断面図である。
【0022】
図1に本発明による排気系1を示す。排気系1は図示しない内燃機関からの燃焼排気の排出を行うものであって、特にその内燃機関とともに車両に搭載され得るものである。排気系1は例えば、酸化触媒器2と、消音機3と、酸化触媒器2と消音機3とを接続する排気管4とを含む。ここで酸化触媒器2,消音機3,排気管4はいずれも本発明で言う排気系部品5の例である。排気系部品5の他の例として、吸気マニホルド,排気ターボチャージャーのタービン,粒子フィルター,SCR(選択的接触還元)触媒器,NOx吸蔵触媒器,終端管などが挙げられる。
【0023】
以下の本発明の説明においては排気管4を排気系部品5の例として取り上げるが、言うまでもなく、本発明は他の任意の排気系部品にもそれに応じた形で適用可能である。
【0024】
図3,図5,図7〜図11に示すように、排気系部品5、つまり本例における排気管4は内殻6を有し、この内殻6により内部領域7が区画されている。排気系1の稼働時には、内部領域7が排気として機能する。排気系部品5が管状の場合には、内殻6も管状に構成され、内部領域7を取り囲む。排気系部品5はさらに外殻8を有する。外殻8は、内殻6の外面、つまり内部領域7とは反対側を向いた面、に配置され、その結果内殻6と外殻8との間に空隙9が形成される。排気系部品5が管状の場合には、外殻8も管状に構成され、内殻6を同軸に取り囲む。空隙9内には断熱材10が配置される。本発明において、断熱材10は少なくとも1つの微細多孔質の形状体(形状維持部材)11からなる。各形状体11は形状安定な剛体である。形状体11はまたおおよそ空隙9の形状に合わせた形状に形成される。
【0025】
例えば図8,図9,図11に示すように、断熱材10は好ましくは複数の形状体11からなる。複数の形状体11は例えば、隣り合うまたは接し合う形状体11同士が堅固に係合するように構成するとよい。図8,図11の縦断面図には嵌め合わせ構造または実接ぎ(さねつぎ)構造を有する周縁12が描かれている。これにより隣り合う形状体11同士が軸方向に係合し、半径方向に部分的に重なり合う。図9の横断面図にも同様の嵌め合わせ構造または実接ぎ構造を有する周縁13が描かれている。これにより断片状の形状体11同士が周方向に係合し、半径方向に部分的に重なり合う。図9が示すのは凸部14を通る平面に沿う断面である。凸部14は外殻8上に点状に形成され、外殻8から内側へ、内殻6に向かって、つまり空隙9に向かって、突出している。これに合わせて各形状体11には凹部15が形成されている。よって外殻8の凸部14は凹部15と、半径方向に堅固に係合する。これにより、個々の形状体11の位置決めを効率的に行うことができる。
【0026】
図2,図3に示す実施形態においては、空隙9に防滴機構16が設けられている。これにより空隙9は排気系1の設置環境に対して防滴性と気体透過性を有する。気体透過性を得るために、開口17が外殻8に形成されている。開口17はフード18で覆われている。フード18は外殻8と共に、外界に臨む更なる開口19を形成している。この開口19は外殻8の開口17から離れた位置にある。このようにフード18により防滴機構16が構成されている。図から理解されるように、フード18は外殻8に密に固定されていて、平面視U字状の輪郭で接する。
【0027】
一方、図4,図5に示す実施形態においては、空隙9自体が排気系部品5の設置環境に対して防滴性と気体透過性を有するように構成されている。そのために例えば、外殻8は少なくとも1つの開口20を有し、開口20は膜21で塞がれている。この膜21が防滴性と気体透過性を有するように構成されている。
【0028】
また、図6,図7に示す実施形態においては、外殻8に開口17,20が形成され、この開口17,20に管状体22が接続されている。管状体22は防滴機構16として機能するが、図8に示すように配管23の接続にも利用できる。配管23は例えば空隙9の脱気の際に利用する。
【0029】
この構成の利点として、図10に示すように、圧力調整装置24を配管23を介して空隙9に接続することができる。圧力調整装置24により、空隙9内の圧力をパラメータに基づいて調節することが可能になる。本例において圧力調整装置24は、吸入側で空隙9と連通する排気ポンプ25と、パラメータに基づいて排気ポンプ25を制御するコントローラ26からなる。パラメータとして適切なのは例えば車両パラメータや、内燃機関の状態パラメータである。例えば低温始動時に、空隙9を脱気することにより断熱性の向上が図られる。各排気系部品5あるいは排気系1が通常の動作温度に達したら、もはや控えめな断熱性で十分なので、脱気を終了する。
【0030】
あるいは図11に示すように、空隙9に導入/排出装置27を接続してもよい。導入/排出装置27は、例えば、供給方向を正逆に切り替え可能な供給装置28と、水,グリコール等の熱媒液30を貯蔵するタンク29とを含む。導入/排出装置27により、パラメータに基づいて任意の量の熱媒液30を空隙9に導入することができる。同様に、導入/排出装置27により熱媒液30を空隙9から排出することができる。空隙9に導入される熱媒液30の量に応じて、各形状体11の断熱性が変化する。このように、導入/排出装置27により、断熱材10を必要に応じて調節することができる。このような導入/排出装置27を利用する前提として、形状体11を形成している多孔質材料が、用いられる熱媒液30に対して十分な耐性を有していなければならない。導入/排出装置27は、好ましくは、圧力調整装置24と同様、コントローラ26を備える。これにより供給装置28を、入力されたパラメータに基づいて制御することができる。ここでのパラメータは、先に圧力調整装置24を備えた実施形態に関して述べたパラメータと同様のものである。
【0031】
熱媒液30の導入・排出のための配管38が、空隙9の、組み立てた状態において好ましくは下部、特に最下部、に接続される。これにより可能な限り完全な排出が可能となる。そのためにここにも開口17,20が外殻を貫通するように設けられる。必須ではないが、空隙9の、組み立てた状態において上部、特に最上部、に空隙9の通気/脱気のための開口17,20をさらに設けてもよい。ここでも異物、特に跳ね水、の侵入を防ぐために、適切な弁装置(図示せず)を設けてもよい。図11に示す実施形態においては、上部に設けた通気/脱気開口17,20は通気/脱気配管23を介して貯蔵タンク29に接続されている。空隙9に熱媒液30を導入する際には、下部の開口17,20を介して熱媒液30がタンク29から供給される。これに伴い、タンク内の熱媒液30の上方の気体体積39が増加する。同時に、つまり空隙9に熱媒液30を導入する際には、気体が上部の開口17・20を介し、通気/脱気配管23を通って、タンク29へ逃げる。空隙9から熱媒液30を排出する際には、上述とは逆の経過を辿って気体がタンク29から空隙9へ還流する。熱媒液30の移動に伴い、熱媒液30が流れ込んでゆく行先の空間、つまり導入時には空隙9、排出時にはタンク29、から追い出される空気その他気体の量は、熱媒液30が流れ出してくる源の空間、つまり導入時にはタンク29、排出時には空隙9、に継ぎ足される空気その他気体の量と等しい。このように、両空間(9と29)を直接接続する配管を、空気その他気体もが流通する。そこで熱媒液30ではなく気体のほうを、図11では破線で示した供給装置28’を用いて流通させてもよい。この場合熱媒液30は自動的に追従する。
【0032】
図10,図11に示す圧力調整装置24または導入/排出装置27を備えた実施形態において、形状体11は、好ましくは、開放多孔質構造、特に微細多孔質構造を有する。
【0033】
図10に示す実施形態と図11に示す実施形態を組み合わせて、前者の圧力調整装置24と後者の導入/排出装置27の両方を備えた実施形態とすることも可能である。
【0034】
図8,図11に示す実施形態において、管状の内殻6の長さ方向沿いの一部が蛇腹31(断面波型)に形成されている。図示のとおり、蛇腹31は内殻6と一体に形成することができる。あるいは蛇腹31を別体として形成し、内殻6の長さ方向沿いの対応箇所、つまり蛇腹3と接続する箇所、に例えば溶接やはんだ付けにより組み付けてもよい。蛇腹の壁は一層でも多層でもよい。蛇腹31はここでは内殻6から専ら半径方向に外側へ突出している、つまり空隙9内に突出している、が外殻8には達しない。結果、蛇腹31と外殻8との間に環状の空間32あるいは半径方向の間隔32が形成される。この蛇腹31により、外殻8をその長さ方向の両端において内殻6に、例えば溶接やはんだ付けにより固定することができる。その際、内殻6と外殻8との間の、熱に起因する相対的な運動が、蛇腹31によって吸収される。蛇腹31の領域における内殻6の流れ抵抗を抑えるために、図8,図11に示す実施形態においては、蛇腹31の内部領域7に臨む側にガイドチューブ35が設けられる。ガイドチューブ35は蛇腹31の領域に亘って延び、蛇腹31を内部領域7から遮っている。ガイドチューブ35は内部領域7の内面から僅かに突出するのみで、その内面とは実質的に面一に接続する。ガイドチューブ35は例えばその長手方向の両端36,37の一方において内殻6および/または蛇腹31に、固定される。それ以外のいかなる箇所においてもガイドチューブ35は内殻6や蛇腹31に対して固定されない。これによりガイドチューブ35と内殻6との間の、またはガイドチューブ35と蛇腹31との間の、熱に起因する相対的な運動が可能になる。
【0035】
管状部材として構成された上記排気系部品5において、少なくとも図8,図11に示す実施形態では、好ましくは、外殻8を支持部材とし、内殻6を非支持部材として構成する。この場合外殻8の肉厚を内殻6の肉厚より大きくする。
【符号の説明】
【0036】
1 排気系
2 酸化触媒器
3 消音機
4 排気管
5 排気系部品
6 内殻
7 内部領域
8 外殻
9 空隙
10 断熱材
11 形状体
12、13 周縁
14 凸部
15 凹部
16 防滴機構
17、19、20 開口
18 フード
21 膜
22 管状体
23、38 配管
24 圧力調整装置
25 排気ポンプ
26 コントローラ
27 導入/排出装置
28、28’ 供給装置
29 タンク
30 熱媒液
31 蛇腹
32 環状の空間、半径方向の間隔
33、34 外殻の長さ方向の端部
35 ガイドチューブ
36,37 ガイドチューブの長さ方向の端部
39 気体体積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気系(1)用の排気系部品であって、
排気の通る内部領域(7)を区画する内殻(6)と、
前記内殻(6)の、前記内部領域(7)とは反対側を向いた外面に配置された外殻(8)と、
前記内殻(6)と前記外殻(8)との間に形成された空隙(9)と、
前記空隙(9)内に配置された断熱材(10)と
を備え、
前記断熱材(10)が少なくとも1つの多孔質で形状安定な形状体(11)からなることを特徴とする排気系部品。
【請求項2】
請求項1に記載の排気系部品において、
各前記形状体(11)が微細多孔質で構成される、または微細多孔質の素材からなる。
【請求項3】
請求項2に記載の排気系部品において、
前記形状体(11)が細孔を有し、前記細孔の大きさが50nm未満または20nm未満である。
【請求項4】
請求項1に記載の排気系部品において、
前記断熱材(10)が複数の前記形状体(11)からなり、複数の前記形状体(11)が堅固に係合する。
【請求項5】
請求項1に記載の排気系部品において、
前記空隙(9)が前記排気系部品(5)の設置環境に対して防滴性と気体透過性を有するよう構成され、
前記外殻(8)が少なくとも1つの開口(20)を有し、前記開口(20)が防滴性と気体透過性を有する膜(21)で塞がれ、および/または、通気/脱気配管(23)が前記空隙(9)に連通接続される。
【請求項6】
請求項1に記載の排気系部品において、
前記空隙(9)が前記排気系部品(5)の設置環境に対して防滴性と気体透過性を有するよう構成され、
前記外殻(8)が少なくとも1つの開口(17)を有し、前記開口(17)に管状体(22)が接続されるかまたは前記開口(17)がフード(18)によって覆われ、前記開口(17)が前記外殻(8)とともに、前記外殻(8)の前記開口(17)から離れた位置に前記開口とは別の開口(19)を形成する。
【請求項7】
請求項1に記載の排気系部品において、
前記内殻(6)と前記外殻(8)とが管状に構成され、前記空隙(9)と前記断熱材(10)とが環状に構成され、
前記内殻(6)の長さ方向沿いの一部が蛇腹(31)に形成され、
前記蛇腹(31)が、前記内部領域(7)に臨む側においてガイドチューブ(35)に覆われている。
【請求項8】
請求項7に記載の排気系部品において、
前記ガイドチューブ(35)が長さ方向の一端(36、37)において前記内殻(6)または前記蛇腹(31)に対して軸方向に固定されるが、それ以外のいかなる箇所においても前記内殻(6)および前記蛇腹(31)に対して固定されない。
【請求項9】
請求項7に記載の排気系部品において、
前記蛇腹(31)による前記内殻(6)の中断部分が、前記ガイドチューブ(35)によって隙間なくかつほぼ半径方向の段差なく覆われている。
【請求項10】
請求項1に記載の排気系部品において、
圧力調整装置(24)が設けられ、前記圧力調整装置(24)により前記空隙(9)内の圧力がパラメータに基づいて調節可能であり、
前記圧力調整装置(24)が、吸気側で前記空隙(9)に連通接続された排気ポンプ(25)と、前記排気ポンプ(25)をパラメータに基づいて制御するためのコントローラ(26)とを含む。
【請求項11】
請求項1に記載の排気系部品において、
導入/排出装置(27)が設けられ、前記導入/排出装置(27)により前記空隙(9)に熱媒液を導入すること、および、前記空隙(9)から前記熱媒液を排出することが可能であり、
前記導入/排出装置(27)が、前記空隙(9)に連通接続された供給装置(28)と、タンク(29)と、前記供給装置(28)をパラメータに基づいて制御するためのコントローラとを含む。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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