説明

排水の処理機構

【課題】従来のような大掛かりな装置とすることなく残留塩素を低減することができる排水の処理機構を提供しようとするもの。
【解決手段】排水中の汚れ成分を有効塩素によって処理する機構であって、排水を処理した後に残留する有効塩素を塩素ガスとして揮発せしめる塩素ガス分離槽8を有すると共に、前記槽内では排水が酸性となるように制御するようにした。塩素ガス分離槽8において排水が酸性となるように制御することにより、含有される残留塩素を塩素ガスとして揮発せしめるようにしたので、従来のような熱分解槽や冷却器を使用することなく残留塩素を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水中の残留塩素を低減することができる排水の処理機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、次亜塩素酸塩水溶液に含まれる次亜塩素酸塩を分解するための装置として次の提案があった(特許文献1)。
すなわち、次亜塩素酸塩水溶液に含まれる次亜塩素酸塩を分解するための装置としては、還元分解槽単独からなり、該槽で次亜塩素酸塩水溶液をそのまま硫黄系還元剤と混合することにより、次亜塩素酸塩の全量を硫黄系還元剤で還元分解する分解装置が知られている。かかる次亜塩素酸塩の分解装置によれば、次亜塩素酸塩が還元分解されて塩化物と酸素(O2)とが生成すると共に、硫黄系還元剤は酸化されてその酸化物が生成する。
そして、かかる次亜塩素酸塩の分解装置では、次亜塩素酸塩水溶液に含まれる次亜塩素酸塩の全量を還元するに必要な量の硫黄系還元剤が必要であり、高い濃度で含まれた次亜塩素酸塩を分解しようとすると、多くの硫黄系還元剤が必要で、硫黄系還元剤の酸化物が多く生成するという不具合に鑑み、より少ない硫黄系還元剤で、高濃度で次亜塩素酸塩を含有する次亜塩素酸塩水溶液に含まれる次亜塩素酸塩を分解し得る次亜塩素酸塩の分解装置を開発すべく検討した結果、熱分解槽および冷却器をさらに備え、熱分解槽で次亜塩素酸水溶液を加熱して次亜塩素酸塩を熱分解し、熱分解されたのちの熱分解液を冷却器で冷却したのち還元槽で硫黄系還元剤と混合して未分解の次亜塩素酸塩を還元分解するように構成した次亜塩素酸塩の分解装置は、比較的少ない硫黄系還元剤の使用量で、高濃度で次亜塩素酸水溶液に含まれる次亜塩素酸塩を分解できることを見出した、というものである。
しかし、この提案では熱分解槽や冷却器が必要であり処理装置がかなり大掛かりになってしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2003−236367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこでこの発明は、従来のような大掛かりな装置とすることなく残留塩素を低減することができる排水の処理機構を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の排水の処理機構は、排水中の汚れ成分を有効塩素によって処理する機構であって、排水を処理した後に残留する有効塩素を塩素ガスとして揮発せしめる塩素ガス分離槽を有すると共に、前記槽内では排水が酸性となるように制御するようにしたことを特徴とする。
ここで、排水とは汚れ成分を含有する水をいい、浄化後に河川に放流(廃棄)するもののみならず、再利用するもの(工場廃水など)や循環して再利用するもの(プール水など)などをいう。また、汚染土壌の滲出水などを例示することもできる。有効塩素とは分解能を有する塩素であって(溶存)塩素ガスの形態のもの、次亜塩素酸の形態のもの、次亜塩素酸イオンの形態のものがある。残留塩素とは、排水処理後に残留している有効塩素をいう。
有効塩素によって汚れ成分を処理した排水は、COD(化学的酸素要求量)やTOC(全有機炭素)が低減されるが、有効塩素が残留している場合が多い。この残留塩素は酸化分解作用を有しているので、そのままでは河川等に放流したり(自然環境に悪影響を及ぼす)再利用したりすることはできない。
槽内の排水が酸性となるように制御するため、塩酸(酸)や硫酸を添加することができる。また槽内の排水が酸性となるように制御するため、次述のように排水を有隔膜電気分解機構の陽極側領域に通液してから塩素ガス分離槽に供給することもできる。
この排水の処理機構では、塩素ガス分離槽において排水が酸性となるように制御することにより、含有される残留塩素を塩素ガスとして揮発せしめるようにしたので、従来のような熱分解槽や冷却器を使用することなく残留塩素を低減することができる。前記塩素ガス分離槽内の液温を向上させると塩素ガスの揮発を促進させることができる。
ところで該処理機構は、有効塩素は酸性雰囲気では塩素ガスの形態となって揮発し易い状態となる現象を、排水中の残留塩素の分離に利用したものである。そして、pHが小さいほど有効塩素は次亜塩素酸の形態から塩素ガスの形態へと変化して塩素ガスの濃度が高まる傾向があるので、塩素ガス分離槽のpHは2以下となるように調整することが好ましい。
上記のようにして、塩素ガスを揮発せしめた後の該分離槽内の排水は残留塩素濃度が低減しており、次工程に送って水酸化ナトリウム(塩基)を添加することにより、前記分離槽内では酸性(例えばpH2以下)に制御した水素イオン濃度が中性領域(pH6〜8)となるようにpH調整し、必要に応じて、活性炭による吸着処理(COD等がさらに低減される)やRO膜による濾過を行った後、後工程(河川放流や再利用など)へと送る。
【0005】
(2) 前記塩素ガス分離槽で揮発せしめた塩素ガスを液中に溶解させる気液混合槽を有すると共に、前記槽内の液はアルカリ性に設定するようにしてもよい。
このように構成すると、アルカリ性に設定された気液混合槽(例えば水酸化ナトリウム水溶液を貯留しておくことができる)で塩素ガスを効率的に溶解させて回収することができる。前記気液混合槽内の液は例えばpH13以上とすると塩素ガスをより効率的に溶解・回収して再利用に供することできる。
前記気液混合槽から取り出した有効塩素含有水と排水とを一定流量で合流させ、排水中の汚れ成分を有効塩素で分解するようにすることができる。例えば気液混合槽内の残留塩素濃度が3000ppmとなるように設定し、排水のCODが500ppm程度となるように設定し、これらを合流させるとCODはほぼ5ppm以下に低減されると共に残留塩素濃度は1000ppm程度となった。
【0006】
(3)前記気液混合槽から取り出した有効塩素含有水と排水とを一定流量で合流させて電気分解を行う無隔膜電気分解槽を有するようにしてもよい。
このように構成すると、排水を直接陽極酸化すると共に、活性度の高い・OHラジカルによる酸化作用を及ぼすことができる。ここで、前記無隔膜電気分解槽には排水のpHが5.5程度となるようにして供給することが好ましく、このようにすると有効塩素の酸化力が最も高い状態で排水を分解処理することができる。また、排水に臭素イオン(臭化ナトリウムや臭化カリウムなどを使用できる)を添加して電気分解すると、活性度の最も高いpH5.5の状態がpH8.6程度まで拡張することとなる。これは次亜塩素酸から変化した次亜臭素酸の特性によるものと考えられる。
無隔膜電気分解槽を通過した後は(pH5.5〜8.6程度が好ましい)、塩酸などの酸を添加することによりpHを酸性(pH2以下が好ましい)にして塩素ガス分離槽へと供給することができる。
【0007】
(4)前記排水を陽極側領域に通液させる有隔膜電気分解機構を有し、次いで塩素ガス分離槽に供給するようにしてもよい。
このように構成すると、有隔膜電気分解機構の陽極側では水素イオンが発生してpHが酸性側に移行するので、塩素ガスが揮発し易い雰囲気となる。したがって、塩素ガス分離槽に供給した際に塩素ガスを多く発生させることができる。
【0008】
(5)前記塩素ガス分離槽で揮発せしめた塩素ガスをエジェクター機構により気液混合槽に供給するようにしてもよい。
このように構成すると、塩素ガスと液との混合をエジェクター機構で行わせ加圧作用を及ぼすことによって液中への塩素ガスの溶解度を向上させることができると共に、塩素ガス分離槽から気液混合槽への塩素ガスの供給を気体移送手段(真空ポンプなど)を導入せずに行うことができる。
【0009】
(6)前記気液混合槽の槽内の循環水でエジェクター機構を機能させるようにしてもよい。
このように構成すると、槽内の液を循環して撹拌作用を及ぼしつつこの循環水を利用してエジェクター機構を機能させることができる。なお、槽内の液は循環ポンプなどで循環することができる。
【0010】
(7)
前記塩素ガス分離槽にコンプレッサー等により下方からエアーをバブリングするようにしてもよい。このように構成すると、該分離槽の液相からの塩素ガスの揮発性を向上させることができる。
【0011】
(8)
前記塩素ガス分離槽の貯留液を引き出して該槽内にシャワーしつつ循環するようにしてもよい。このように構成すると、槽内の液が液滴(ミスト)となって該液滴に溶存する塩素ガスが揮発し易い状態となり、前記塩素ガス分離槽の液相からの塩素ガスの揮発性を向上させることができる。
そして、前記バブリングとシャワーの相乗効果により塩素ガスの揮発性を著しく向上させることができる。
【0012】
(9)前記排水に電解作用を及ぼすようにしてもよい。
このように構成すると、排水が異臭や悪臭を発する成分を含有するものであったとしても、電気分解作用に起因して生成する次亜塩素酸や・OHラジカルの酸化力により臭気成分を分解して軽減ないし消去することができる。
具体的には、前記排水に電解水を添加したり或いは排水自体を電気分解すると、次亜塩素酸や・OHラジカルの酸化力によって汚れ成分が細分化し臭気成分が分解していくこととなり、異臭の発生を抑制乃至防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
熱分解槽や冷却器を使用することないので、従来のような大掛かりな装置とすることなく残留塩素を低減することができる排水の処理機構を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
〔実施形態1〕
(1)図1に示すように、この実施形態の排水の処理機構は、排水中の汚れ成分を主として有効塩素によって処理する機構であって、工場排水原水1に次亜塩素酸ソーダ2を添加して(図中Pはポンプを示す)汚水原水調整槽3へと一定流量で送るようにしている。この汚水原水調整槽3ではブロワーBroでばっ気して該槽内を十分に攪拌することにより、次亜塩素酸が液中に均一に分散して汚れ成分と万遍なく遭遇するようにしている。前記汚水原水調整槽3から砂濾過装置4へと送ってss成分を除去し、次いで反応槽Rへと送り次亜塩素酸による汚れ成分の一定の分解時間を確保している。その後、次亜塩素酸ソーダを再び添加して無隔膜電気分解槽6で直接酸化分解を行い(後述)、次いで反応槽Rへと送り汚れ成分の一定の分解時間を確保している。
そして、塩素ガス分離槽8に送って前記無隔膜電気分解槽6と反応槽Rで処理した後に残留する有効塩素(3000ppm程度であった)を塩素ガス(Cl2)として揮発せしめると共に、前記分離槽内では排水が酸性となるように制御するようにしている。ここで、塩素ガス分離槽8では貯留液をブロワーBroでばっ気することにより塩素ガスの離脱の促進を図っている。また、前記塩素ガス分離槽8内の液温を向上させると塩素ガスの揮発を促進させることができる。
【0015】
前記排水とは汚れ成分(多くは有機成分)を含有する水をいい、浄化後に河川に放流(廃棄)するもののみならず、再利用するもの(工場廃水など)や循環して再利用するもの(プール水など)などをいう。また、事業所の構内の重油タンクや連結パイプから漏洩した油分を含む汚染土壌、化学工場の跡地の有害な有機成分を含む汚染土壌、ガソリン・スタンドの敷地の油分による汚染土壌の土壌滲出水(或いはその地下水)などを例示することもできる。ここで、重油に汚染された土壌のように水に対して難溶解性の汚れ成分を処理したい場合は、両親媒性の有機溶媒(例えばDMSO、DMAc、IPA)で親水化して抽出し水中に移行せしめると土壌排水として浄化処理を遂行することができる。
【0016】
有効塩素とは分解能を有する塩素であって(溶存)塩素ガス(Cl2)の形態のもの、次亜塩素酸(HOCl)の形態のもの、次亜塩素酸イオン(ClO)の形態のものがある。残留塩素とは、排水処理後に残留している有効塩素をいう。
そして、有効塩素によって汚れ成分を分解処理した排水は、COD(化学的酸素要求量)やTOC(全有機炭素)が低減されるが、有効塩素が残留している場合が多い。この残留塩素は酸化分解作用を有しているので、そのままでは河川等に放流したり(自然環境に悪影響を及ぼす)再利用(例えば工場で超純水にして再利用)したりすることはできないものである。
【0017】
塩素ガス分離槽8内の排水が酸性となるように制御(好ましくはpH2以下)するため、塩酸9(酸)を添加するようにしている。なお、塩素ガス分離槽8内の排水が酸性となるように制御するため、実施形態2のように排水を有隔膜電気分解機構10(図2)の陽極側領域11に通液してから塩素ガス分離槽8に供給することもできる。
塩素ガスを揮発せしめた後の塩素ガス分離槽8内の処理済み排水(CODはその前に有効塩素によって低減されている)はその揮発した分残留塩素濃度が低減しており(塩素ガス分離槽8への供給前の3000ppmが20ppm以下となった)、前記分離槽内では酸性(pH2以下)に制御した水素イオン濃度が中性領域(pH6〜8)となるように水酸化ナトリウム(塩基)を添加しpH調整して活性炭による吸着濾過機構12(残留塩素濃度やCODがさらに低減される)に送り、次いで最終的に処理済みの排水の処理水槽13に送り、必要に応じてRO膜による濾過(図示せず)を行った後、河川放流したり再利用に供したりする。
【0018】
(2)前記塩素ガス分離槽8で揮発せしめた塩素ガスを液中に溶解させる気液混合槽14(水酸化ナトリウム5重量%水溶液を貯留)を有すると共に、前記分離槽内の液はアルカリ性に設定(pH13以上)するようにしている。この気液混合槽14には水酸化ナトリウムの貯留槽15を添設しており、気液混合槽14内から送り出した分に相当する量を補充していくようにしている。そして、ファンFanで下流側から吸引することにより、前記塩素ガス分離槽8で揮発せしめた塩素ガスを気体の状態で気液混合槽14へと誘引して液中に溶解させるようにしている。
前記気液分離槽14では、貯留している水酸化ナトリウムを槽内で循環して噴霧することにより塩素ガスと遭遇率を高めて液中に溶解させ易くするようにしている。前記気液混合槽14内の液はpH13以上とすると塩素ガスをより効率的に溶解・回収して再利用に供することできる。塩素ガス分離槽8と気液混合槽14との間では排水自体の行き来はない。
そして、前記気液混合槽14から取り出した有効塩素含有水(塩素ガスが溶解することにより残留塩素濃度が15000ppmに向上した)に次亜塩素酸16と排水の原水(工場排水原水1)とを一定流量で合流させ、排水中の汚れ成分を有効塩素で分解しつつ前記汚水原水調製槽3へと送るようにしている。
【0019】
(3)前記気液混合槽14から取り出した有効塩素含有水と排水(工場排水原水1)とを一定流量で合流させて後に電気分解を行う無隔膜電気分解槽6を有するが、排水に次亜塩素酸と共に臭素イオン(臭化物として臭化ナトリウムや臭化カリウム等を使用できる)も添加すると、活性度が最も高いpH5.5の状態がpH8.0程度まで拡張することとなる。すなわち、排水のpHが8.0まで変化してもpH5.5と同程度の酸化力を有していることとなり(通常pH8.0では有効塩素が殆ど次亜塩素酸イオン《OCl》の形態となって酸化力が極端に低下する)、排水処理時のpH調整の許容範囲が大きく拡大することとなり(これは次亜塩素酸から変化した次亜臭素酸の特性によるものと考えられる)、いわゆる綱渡り的処理条件ではなく余裕を持った幅のある排水処理が可能となり、処理時の不測のpH変動(排水には種々のpHのものが存在しまた予想外のpHとなっている場合がある)に対する安定性が増大することとなる。
無隔膜電気分解槽6を通過した後は(pHは5.5〜8.0程度が好ましい)、既述の通り塩酸9を添加することによりpHを酸性(pH2以下が好ましい)にして気密状態で(塩素ガスを処理系外に漏洩させることなく)塩素ガス分離槽8へと供給するようにしている。
【0020】
次に、この実施形態の排水の処理機構の使用状態を説明する。
(1)この排水の処理機構では、塩素ガス分離槽8において排水が酸性(好ましくはpH2以下)となるように制御することにより、含有される残留塩素を塩素ガスとして揮発せしめるようにしたので、従来のような熱分解槽や冷却器のような大掛かりな装置を使用することなく残留塩素を低減することができるという利点がある。
本処理機構は、中性領域では排水中から分離が不能(困難)な有効塩素は酸性雰囲気では塩素ガスの形態となって揮発し易い状態となる現象を排水中の残留塩素の分離に利用し、処理後の排水をpH調整して酸性雰囲気として有効塩素を塩素ガスの形態に変化させることにより液相中から気相として分離するようにしたものである。
ここで、pHが小さいほど有効塩素は次亜塩素酸の形態から塩素ガスの形態へと変化して塩素ガスの濃度が高まる傾向があるので、塩素ガス分離槽8のpHは2以下となるように調整することが好ましい。
【0021】
(2)前記塩素ガス分離槽8で揮発せしめた塩素ガスを液中に溶解させる気液混合槽14を有すると共に、前記槽内の液はアルカリ性(好ましくはpH13以上)に設定するようにしており、塩素ガスを効率的に溶解させて回収することができるという利点がある。
また、排水のpHを各処理槽の意義に応じて変化させることにより、処理後に残留する有効塩素を(還元剤で無為に潰すことなく)循環して再利用することができるという利点がある。
【0022】
(3)前記気液混合槽14から取り出した有効塩素含有水と排水とを一定流量で合流させて電気分解を行う無隔膜電気分解槽6を有するようにしており、(有効塩素による酸化処理だけではなく)排水を直接陽極酸化すると共に活性度の高い・OHラジカルによる酸化作用を及ぼすことができ、汚れ成分のCODやTOCの低下能が高いという利点がある。
ここで、前記無隔膜電気分解槽6には排水のpHが5.5程度(臭素イオンを添加した場合はpH5.5〜8.0)となるようにして供給することが好ましく、このようにすると有効塩素の酸化力が最も高い状態で排水を分解処理することができるという利点がある。
【0023】
〔実施形態2〕
図2に示すように、この実施形態では、砂濾過装置4と反応槽Rで処理後の排水について、その陽極側領域11を通液させる有隔膜電気分解機構10を有し、次いで塩素ガス分離槽8に供給するようにしており、有隔膜電気分解機構10の陽極側では水素イオンが発生してpHが酸性側に移行するので、次の塩素ガス分離槽8で塩素ガスが揮発し易い雰囲気となり、塩素ガス分離槽8内で塩素ガスを多く発生させることができるという利点がある。
ここで、排水に塩酸を添加して陽極側領域11に通液させるようにすると、排水に添加した塩酸の塩素イオンが有隔膜電気分解機構11の陽極側領域11で電子を放出して塩素ガスに変化するので、塩素ガス分離槽8における塩素ガスの発生量が増加することとなるという利点がある。
【0024】
〔実施形態3〕
この実施形態では(図1、図2参照)、前記塩素ガス分離槽8で揮発せしめた塩素ガスをエジェクター機構により気液混合槽14に供給するようにした。具体的には、前記エジェクター機構は気液混合槽14の槽内の循環水で機能させるようにしており(図示せず)、槽内の液を循環ポンプPで循環して撹拌作用を及ぼしつつこの循環水を利用してエジェクター機構を機能させるようしている。
このように、塩素ガスと液との混合をエジェクター機構で行わせて且つ槽14内に加圧作用を及ぼすことによって液中への塩素ガスの溶解度を向上させることができると共に、塩素ガス分離槽8から気液混合槽14への塩素ガスの供給を気体移送手段(ファンFanや真空ポンプなど)を導入せずに行うことができるという利点がある。
【0025】
また上記実施形態と同様に、塩素ガス分離槽8ではブロワーBroによって下方からエアーをばっ気(バブリング)するようにしており、該分離槽8の液相からの塩素ガスの揮発性を向上させている。さらに、前記塩素ガス分離槽8の貯留液を引き出して該槽内にシャワーしつつ循環するようにしており、槽内の液が液滴(ミスト)となって該液滴に溶存する塩素ガスが揮発し易い状態となり、前記塩素ガス分離槽8の液相からの塩素ガスの揮発性を向上させることができ、前記バブリングとシャワーの相乗効果により塩素ガスの揮発性を著しく向上させることができる。
【0026】
そして、前記排水は無隔膜電気分解槽6や有隔膜電気分解機構10で電解作用を及ぼしたものであり、排水が異臭や悪臭を発する成分を含有するものであったとしても、電気分解作用に起因して生成する次亜塩素酸や・OHラジカルの酸化力により臭気成分を分解して軽減ないし消去することができる。具体的には、前記排水に電解水を添加したり或いは排水自体を電気分解すると、次亜塩素酸や・OHラジカルの酸化力によって汚れ成分が細分化し臭気成分が分解していくこととなり、異臭の発生を抑制乃至防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
従来のような大掛かりな装置とすることなく残留塩素を低減することができることによって、種々の排水の処理機構の用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の排水の処理機構の実施形態1を説明するシステム・フロー図。
【図2】この発明の排水の処理機構の実施形態2を説明するシステム・フロー図。
【符号の説明】
【0029】
6 無隔膜電気分解槽
8 塩素ガス分離槽
10 有隔膜電気分解機構
11 陽極側領域
14 気液混合槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水中の汚れ成分を有効塩素によって処理する機構であって、排水を処理した後に残留する有効塩素を塩素ガスとして揮発せしめる塩素ガス分離槽(8)を有すると共に、前記槽内では排水が酸性となるように制御するようにしたことを特徴とする排水の処理機構。
【請求項2】
前記塩素ガス分離槽(8)で揮発せしめた塩素ガスを液中に溶解させる気液混合槽(14)を有すると共に、前記槽内の液はアルカリ性に設定するようにした請求項1記載の排水の処理機構。
【請求項3】
前記気液混合槽(14)から取り出した有効塩素含有水と排水とを一定流量で合流させて電気分解を行う無隔膜電気分解槽(6)を有する請求項1又は2記載の排水の処理機構。
【請求項4】
前記排水を陽極側領域(11)に通液させる有隔膜電気分解機構(10)を有し、次いで塩素ガス分離槽(8)に供給するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の排水の処理機構。
【請求項5】
前記塩素ガス分離槽(8)で揮発せしめた塩素ガスをエジェクター機構により気液混合槽(14)に供給するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の排水の処理機構。
【請求項6】
前記気液混合槽(14)の槽内の循環水でエジェクター機構を機能させるようにした請求項5記載の排水の処理機構。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−5482(P2011−5482A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114833(P2010−114833)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(399049981)株式会社オメガ (70)
【Fターム(参考)】