説明

排水処理システム

【課題】活性汚泥処理装置が大型化することやランニングコストが増大することを防止しつつ、高効率にかつ安定的に排水を処理することが可能な排水処理システムを提供する。
【解決手段】排水処理システム1Cは、排水処理装置100と、活性汚泥処理装置200と、燃焼装置300とを備える。排水処理装置100は排水中の有機化合物を吸着および脱着可能な吸着素子111、121を含み、排水を連続的に処理することで一次処理水と脱着ガスとを排出する。活性汚泥処理装置200は、有機化合物を分解する微生物が含まれた活性汚泥を有し、一次処理水を二次処理水として排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を含有する排水から有機化合物を除去することで、当該排水を清浄化する排水処理システムに関する。特に、各種工場や研究施設等から排出される有機化合物を含有する産業排水から有機化合物を効率的に除去することで、当該産業排水を清浄化する排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機化合物を含有する排水を清浄化する排水処理装置として、活性汚泥処理装置が利用されている。活性汚泥処理装置は、主としてバクテリア(細菌類)、原生動物、後生動物等の好気性微生物群を含む活性汚泥を用いて排水を清浄化させる装置であり、たとえば特許文献1等にその詳細が開示されている。
【0003】
活性汚泥処理装置は、上述した活性汚泥に排水を供給して、これを撹拌および曝気することで当該排水中に含まれる有機化合物を微生物を用いて分解して除去し、活性汚泥を分離することでクリーンな浄水に清浄化して排出する装置である。
【0004】
上述した活性汚泥処理装置においては、有機化合物の分解に微生物が利用されるため、当該微生物が有機化合物を分解するのに適した条件を連続的に安定して維持することが非常に難しくなる。そのため、活性汚泥処理装置を備えた排水処理システムとした場合には、安定的に排水の処理能力を維持することが困難になる問題があった。
【0005】
そこで、活性汚泥処理装置から排出される水は、吸着材としてカートリッジ式の活性炭を用いた交換式排水処理装置を用いて処理されることが一般的に行なわれており、その場合には、当該水に含まれる有機化合物がカートリッジ式の活性炭によって除去され、クリーンな浄水として交換式排水処理装置から排出されることになる。
【0006】
しかし、交換式排水処理装置においては、有機化合物を一定時間吸着し続けることによって吸着材の吸着能力が飽和に達すれば、それ以降吸着が実質的には行なわれず、新品への交換作業、もしくは一旦装置から吸着材を取り外して再生処理を行なう作業が必要になる。したがって、交換式排水処理装置を利用して活性汚泥処理装置から排出される水を処理する排水処理システムとした場合には、連続的に当該水を処理することができず、排水処理システム自体をその都度停止させる必要があった。
【0007】
また、水の清浄化は、空気の清浄化とは異なり、微生物の繁殖が不可避であり、吸着材の寿命は短くなってしまう。したがって、交換式排水処理装置を利用して活性汚泥処理装置から排出される水を処理する排水処理システムとした場合には、上述した吸着材の交換作業や再生処理作業を頻繁に行なう必要が生じ、その労力やランニングコストが増大するといった問題もあった。
【0008】
また、高濃度に有機化合物を含有する排水を大量に活性汚泥処理装置で処理する場合には、必要となる活性汚泥の量もこれに伴って増大することになり、装置の大型化や設置コストの増加が不可避となる。加えて、活性汚泥処理装置においては、処理すべき排水に含まれる有機化合物の量に応じて活性汚泥の量を常時調節して最適化することが必要になるが、そのためには余剰の活性汚泥を常時回収して装置から排出することが必要であり、この余剰汚泥の廃棄に手間やコストがかかる問題があった。したがって、前記のように活性汚泥の量を増加させた場合には、廃棄すべき余剰汚泥の量も増加してしまい、そのランニングコストも大幅に増加してしまう問題があった。
【0009】
かかる問題を解決するために、吸着工程と脱着工程を交互に行うことで高効率、かつ安定的に除去できる吸脱着式の水処理装置および水処理システムが検討されている(例えば、特許文献2および3参照)。この水処理システムは、水の連続浄化を実現し、基本的には吸着材の交換が必要なく、多量有機物質を高効率、かつ安定に除去することができる。
【0010】
しかし、前記特許文献2や3に記載の水処理システムにおいても、技術的な課題があった。例えば、特許文献3において、活性汚泥装置から発生する余剰汚泥は沈殿槽にて分離させているが、余剰汚泥が極微量でも分離できずに流出してしまうと、活性汚泥装置の後段に接続されている吸脱着式の水処理装置の吸着材に余剰汚泥が蓄積し、加熱ガスで吸着材から余剰汚泥が脱離しないため、吸着材の吸着能が短期間で低下する場合があり、そのような状況になった場合、交換式吸着装置と同様に、排水処理システムをその都度停止させ、吸着材の交換する必要があり、手間がかかる、コスト増大などが問題となる。
【0011】
また、排水中の有機化合物の濃度が高濃度である場合、活性汚泥への負荷を下げるために、活性汚泥装置へ排水を導入する前に工業用水等で数十倍から数百倍に希釈される場合がある。例えば1,4−ジオキサンといった微生物にとって難分解性の有機化合物や微生物にとって毒性の高い有機化合物を高濃度に含む排水を処理する場合、さらに希釈するケースもある。このような場合、活性汚泥処理後の排水量も増大するだけでなく、排水量の増大により吸着線速が増大することにより、有機化合物量が希釈なしの場合と同量であったとしても、吸着能が低下する場合もあり、後段に接続された吸脱着式の水処理装置の大型化、コスト増大などが課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−10791号公報
【特許文献2】特開2006−55712号公報
【特許文献3】特開2010−142792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の問題点を解決すべくなされたものであり、活性汚泥処理装置が大型化防止やランニングコストの増大防止が可能で、システムを停止させることなく、生分解性の低い有機化合物を含む排水においても連続的に排水の清浄化が可能で、高効率に、かつ安定的に排水を処理することが可能な排水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に基づく排水処理システムは、有機化合物を含有する排水から有機化合物を除去することで、当該排水を清浄化するものであって、排水処理装置と、活性汚泥処理装置とを備えている。
【0015】
前記排水処理装置は、有機化合物を含有する排水を接触させることで有機化合物を吸着し、ガスを接触させることで吸着した前記有機化合物を脱着する吸着材を含有した吸着素子を有し、前記吸着素子に有機化合物を含有する排水を供給することで、有機化合物を前記吸着素子に吸着させ、吸着素子を通過した水を一次処理水として排出する。その後、前記吸着素子に加熱ガスを供給することで、前記吸着素子に吸着した前記有機化合物を脱着させて、前記有機化合物を含有する脱着ガスとして排出するものである。
ここで、前記排水処理装置は、前記吸着素子の脱着処理が完了した部分を吸着処理を行なう部分に移行させるとともに、前記吸着素子の吸着処理が完了した部分を脱着処理を行なう部分に移行させることで、連続的に排水を処理可能なものである。
【0016】
前記活性汚泥処理装置は、前記排水処理装置に接続され、前記排水処理装置から排出された一次処理水中の前記有機化合物を分解する微生物が含まれた活性汚泥を有し、活性汚泥に一次処理水を接触させることで微生物によって前記有機化合物を分解させて除去し、二次処理水として排出するものである。
【0017】
本発明の排水処理装置においては、前記排水処理装置が、前記吸着素子にガスを吹き付けることで、前記吸着素子に付着した余剰の排水を吹き飛ばし、これを除去排水として排出するものであることが好ましい。その場合には、前記排水処理装置から排出された除去排水が、排水として前記排水処理装置に再度供給されるように構成されていることも好ましい。
【0018】
本発明の排水処理装置においては、前記吸着素子が、活性炭、活性炭素繊維およびゼオライトのいずれか1種を少なくとも含んでいることが好ましい。
【0019】
本発明の排水処理装置においては、燃焼装置が接続され、前記排水処理装置から排出された脱着ガスを燃焼させて酸化分解することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、活性汚泥処理装置の大型化防止やランニングコストの増大防止が可能で、システムを停止させることなく連続的に排水の清浄化が可能で、特に難分解性の有機化合物が高濃度に含有する排水を、高効率に、かつ安定的に処理することが可能な排水処理システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における排水処理システムのシステム構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における排水処理システムにおいて利用可能な他の排水処理装置の例を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1における排水処理システムにおいて利用可能な他の排水処理装置の例を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態2における排水処理システムのシステム構成図である。
【図5】本発明の実施の形態3における排水処理システムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一または対応する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さないことにする。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における排水処理システムのシステム構成図である。以下においては、この図1を参照して、本実施の形態における排水処理システム1Aの構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態における排水処理システム1Aは、排水処理装置100と、活性汚泥処理装置200とを主として備えている。
【0025】
排水処理装置100は、吸着素子111、121がそれぞれ収容された第1処理槽110および第2処理槽120を有している。吸着素子111、121は、有機化合物を含有する排水を接触させることで、前記排水に含有される有機化合物を吸着する。すなわち、排水処理装置100においては、吸着素子111、121に前記排水を供給することで、前記排水に含有されている有機化合物が、吸着素子111、121によって吸着され、これにより前記排水が清浄化されて、一次処理水として排出されることになる。
また、吸着素子111、121は、加熱ガスを接触させることで吸着した前記有機化合物を脱着する。したがって、排水処理装置100においては、吸着素子111、121に加熱ガスを供給することで、前記有機化合物が吸着素子111、121から脱着され、これにより加熱ガスが有機化合物を含有する脱着ガスとして排出されることになる。
【0026】
第1処理槽110および第2処理槽120には、配管ラインL1、L2、L3、L4がそれぞれ接続されている。配管ラインL1は、有機化合物を含有する排水を第1処理槽110および第2処理槽120に供給するための配管ラインであり、バルブV101、V102によって第1処理槽110および第2処理槽120に対する接続/非接続状態が切り替えられる。配管ラインL2は、加熱ガスを第1処理槽110および第2処理槽120に供給するための配管ラインであり、バルブV103、V104によって第1処理槽110および第2処理槽120に対する接続/非接続状態が切り替えられる。配管ラインL3は、一次処理水を第1処理槽110および第2処理槽120から排出するための配管であり、バルブV105、V106によって第1処理槽110および第2処理槽120に対する接続/非接続状態が切り替えられる。配管ラインL4は、脱着ガスを第1処理槽110および第2処理槽120から排出するための配管ラインであり、バルブV107、V108によって第1処理槽110および第2処理槽120に対する接続/非接続状態が切り替えられる。
【0027】
第1処理槽110と第2処理槽120とは、上述したバルブV101〜V108の開閉を操作することによって、交互に吸着槽および脱着槽として機能する。具体的には、第1処理槽110が吸着槽として機能している場合には、第2処理槽120が脱着槽として機能し、第1処理槽110が脱着槽として機能している場合には、第2処理槽120が吸着槽として機能する。すなわち、本実施の形態における排水処理装置100においては、吸着槽と脱着槽とが経時的に交互に切り替わるように構成されている。なお、配管ラインL1は、第1処理槽110および第2処理槽120のうち、吸着槽として機能している槽に接続されて当該吸着槽に有機化合物を含有する排水を供給し、配管ラインL2は、第1処理槽110および第2処理槽120のうち、脱着槽として機能している槽に接続されて当該脱着槽に加熱ガスを供給する。また、配管ラインL3は、第1処理槽110および第2処理槽120のうち、吸着槽として機能している槽に接続されて当該吸着槽から一次処理水を排出し、配管ラインL4は、第1処理槽110および第2処理槽120のうち、脱着槽として機能している槽に接続されて脱着ガスを排出する。
【0028】
なお、排水処理装置100から排出される一次処理水は、水中の有機化合物の含有量は減少され、特に微生物にとって分解が困難な有機化合物が大幅に除去されており、次の活性汚泥処理装置への処理の負荷が軽減されたものになる。
【0029】
吸着素子111、121は、吸着材として活性炭、活性炭素繊維またはゼオライトの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。吸着素子111、121は、吸着材として、粒状、粒体状、ハニカム状等の活性炭やゼオライトが利用されるが、より好ましくは、活性炭素繊維が利用される。活性炭素繊維は、表面にミクロ孔を有する繊維状構造を有しているため、水との接触効率が高く、特に水中の有機化合物の吸着速度が速くなり、他の吸着材に比べて極めて高い吸着効率を実現できる。
【0030】
吸着素子111、121に利用可能な活性炭素繊維の物性は、特に限定されるものではないが、BET比表面積が700〜2000m2/g、細孔容積が0.4〜0.9cm3/g、平均細孔径が17〜18Åのものが好ましい。これは、BET比表面積が700m2/g未満、細孔容積が0.4m3/g未満、平均細孔径が17Å未満のものでは、有機化合物の吸着量が低くなるためであり、またBET比表面積が2000m2/gを超え、細孔容積が0.9m3/gを超え、平均細孔径が18Åを超えるのものでは、細孔径が大きくなることで分子量の小さな物質等の吸着能力が低下したり、強度が弱くなったり、素材のコストが高くなって経済的に不利になったりするためである。
【0031】
活性汚泥処理装置200は、曝気槽210と沈殿槽220とを主として有している。曝気槽210は、曝気装置211と図示しない撹拌装置とを含んでおり、曝気槽210の内部には、バクテリア(細菌類)、原生動物、後生動物等の好気性微生物群を含む活性汚泥が充填されている。曝気槽210は、前記活性汚泥に前記排水処理装置から排出された一次処理水を供給することで、活性汚泥と一次処理水とを接触させ、これを撹拌および曝気することで一次処理水に含有される有機化合物を分解して除去するための処理槽である。
【0032】
一方、沈殿槽220は、曝気槽210にて処理された活性汚泥を含む水を固液分離することで活性汚泥と二次処理水とに分離するための処理槽である。
【0033】
活性汚泥処理装置200には、配管ラインL3、L5、L6、L7、L8、L9が接続されている。配管ラインL3は、曝気槽210に一次処理水を供給するための配管ラインであり、配管ラインL5は、曝気装置211に酸素を供給するための配管ラインである。配管ラインL6は、曝気槽210から活性汚泥を含む水を排出し、これを沈殿槽220に供給するための配管ラインである。配管ラインL7は、沈殿槽220から排出された活性汚泥のうち、余剰分を余剰汚泥として排出するための配管ラインであり、配管ラインL8は、沈殿槽220から排出された活性汚泥のうち、必要分を返送汚泥として曝気槽210に返送するための配管ラインである。また、配管ラインL9は、沈殿槽220から二次処理水を排出するための配管ラインである。
【0034】
活性汚泥処理装置200は、配管ラインL3を介して曝気槽210に供給された一次処理水が曝気槽210内において活性汚泥と混ざり合い、この混ざり合った排水と活性汚泥とが、配管ラインL5を介して曝気装置211に供給されて当該曝気装置211から排出される酸素によって、曝気されつつ撹拌されることで有機化合物の分解が行なわれる。分解後の活性汚泥を含む水は、配管ラインL6を介して沈殿槽220に送られ、沈殿槽220において固液分離され、その上澄み液が配管ラインL9を介して二次処理水として排出される。この活性汚泥処理装置200から排出される二次処理水は、活性汚泥処理装置200に供給される一次処理水に比べ、有機化合物の含有量は大幅に減少しており、河川・下水放流可能なレベルまで清浄化されているものである。
【0035】
次に、前記図1を参照して、本実施の形態における排水処理システム1Aにおいて行なわれる排水の清浄化処理の詳細について説明する。なお、以下の説明は、排水処理装置100の第1処理槽110が吸着槽として機能し、第2処理槽120が脱着槽として機能している状態に基づいたものであるが、これら吸着槽と脱着槽とが入れ替わった場合にも、同様の処理が行なわれる。
【0036】
図1に示すように、有機化合物を含有する排水は、配管ラインL1を経由して、排水処理装置100に導入される。導入された前記排水は、第1処理槽110に送られて吸着素子111と接触し、前記排水に含有される有機化合物が吸着素子111によって吸着される。有機化合物が吸着素子111によって吸着された後の水は、配管ラインL3に導入されて一次処理水として排水処理装置100から排出される。
【0037】
一方、排水処理装置100には、前記排水の導入と並行して、配管ラインL2を経由して加熱ガスが導入される。導入された加熱ガスは、第2処理槽120に送られて吸着素子121と接触し、吸着素子121に吸着されていた有機化合物を脱着させる。吸着素子121から脱着された有機化合物を含む加熱ガスは、配管ラインL4に導入されて脱着ガスとして排水処理装置100から排出される。
【0038】
排水処理装置100から排出された一次処理水は、配管ラインL3を経由して活性汚泥処理装置200に導入される。導入された一次処理水は、活性汚泥と接触させることで当該一次処理水に含有される有機化合物が分解されて除去され、有機化合物が除去された後の水は、配管ラインL9に導入されて二次処理水として活性汚泥処理装置200から排出される。排出された二次処理水は、その後、河川放流もしくは通常の下水としての処理がなされる。
【0039】
以上の如くの排水処理システム1Aとすることにより、活性汚泥処理装置200の前処理装置として排水処理装置100が機能することになり、活性汚泥処理装置のみで排水処理システムを構築した場合に比べ、活性汚泥処理装置200にて処理する排水中の有機化合物量が低減されるだけでなく、特に活性汚泥による生物分解が困難である、もしくは微生物にとって毒性の高い有機化合物が、排水処理装置100にて除去されるため、活性汚泥処理装置200を小型に構成することが可能である。さらに、生物分解困難な有機化合物を含有した排水である場合も処理可能となるため、排水処理システム1A全体としての清浄化処理の処理能力を安定化させることができる。したがって、活性汚泥処理装置200の大型化防止やランニングコストが増大防止が可能で、高効率にかつ安定的に排水を処理することが可能な排水処理システムとすることができる。
【0040】
また、上述の如くの排水処理システム1Aとすることにより、排水処理装置100から排出される排水を活性汚泥処理装置200において連続的に処理することが可能になるため、システムを停止させることなく連続的に排ガスの清浄化を行なうことが可能になる。 したがって、活性汚泥処理装置のバックアップ装置としてカートリッジ式の吸着材を備えた交換式排水処理装置を使用した場合に比べ、カートリッジ式の吸着材の新品への交換作業や取り外しての再生処理作業が不要となり、その労力やランニングコストの増大が生じないことになる。
【0041】
また、上述の如くの排水処理システム1Aとすることにより、排水処理装置100の第1処理槽110および第2処理槽120において吸着処理および脱着処理が交互に連続的に繰り返されることになる。このように吸着処理および脱着処理が交互に連続的に繰り返されるように構成することにより、低コストで安定的に高い能力で排水に含まれる有機化合物を除去することができる。したがって、前記構成を採用することにより、高効率にかつ安定的に排水を清浄化処理できる排水処理システムとすることができる。なお、特に上述の如くの排水処理装置100とすることにより、微生物の繁殖が抑制でき、そのため藻の発生等を防止することも可能になる。
【0042】
さらに、本実施の形態の如くの排水処理システム1Aは、活性汚泥処理装置のみを具備する既存の排水処理システムに対して、排水処理装置100を増設するのみで容易に実現できるものであるため、既存の設備の有効活用が可能で経済性にも優れたものとなる。
【0043】
また、上述の本実施の形態における排水処理システム1Aにおいては、第1処理槽110および第2処理槽120が吸着槽および脱着槽に交互に入れ替わる構成の排水処理装置100を採用した場合を例示して説明を行なったが、これとは異なる構成の排水処理装置を採用してもよい。以下に、その例を図2および図3を参照して説明する。
【0044】
図2および図3は、本実施の形態における排水処理システムにおいて利用可能な他の排水処理装置の例を示す模式図である。なお、これら図2および図3においては、排水処理装置に具備される吸着材および当該吸着材近傍に配置される構成要素のみを図示し、その他の構成要素の図示は省略している。
【0045】
図2は、円柱状の外形を有する吸着材150を利用した場合を示している。図2に示すように、円柱状の外形を有する吸着材150を利用する場合には、軸方向に流体が流動可能となるように構成された吸着材150の軸中心に回転軸161を設け、この回転軸161をアクチュエータ等によって回転駆動する。そして、吸着材150の軸方向の両端面に近接して図2においては示さない配管ラインL1〜L4(図1参照)を接続し、吸着材150の一部を吸着処理を行なうための部分(図2において符号151で示す部分)として利用し、吸着材150の他の一部を脱着処理を行なうための部分(図2において符号152で示す部分)として利用する。すなわち、吸着材150の符号151で示す部分には、軸方向の一方から有機化合物を含有する排水が導入され、軸方向の他方から一次処理水が導出されることになり、吸着材150の符号152で示す部分には、軸方向の一方から加熱ガスが導入され、軸方向の他方から脱着ガスが導出されることになる。
【0046】
ここで、図2に示す排水処理装置においては、吸着材150が回転軸161を回転中心として図中矢印A方向に所定の速度で回転する。これにより、吸着材150の吸着処理が完了した部分は脱着処理を行なうゾーンへと移動するとともに、吸着材150の脱着処理が完了した部分は吸着処理を行なうゾーンへと移動することになる。したがって、当該排水処理装置においては、同時に吸着処理と脱着処理とが行なわれることになり、連続的に清浄化処理を行なうことが可能となる。
【0047】
また、図3は、円筒状の外形を有する吸着材170を利用した場合を示している。図3に示すように、円筒状の外形を有する吸着材170を利用する場合には、径方向に流体が流動可能となるように、たとえば金属製の枠体185によって囲われた単位吸着ユニット175を周方向に複数並べて円筒状とし、これを図示しないアクチュエータ等によって軸中心に回転駆動する。そして、吸着材170に近接して図3においては示さない配管ラインL1〜L4(図1参照)を接続し、吸着材170の単位吸着ユニットの一部を吸着処理を行なうための部分(図3において符号171で示す部分)として利用し、単位吸着ユニットの他の一部を脱着処理を行なうための部分(図3において符号172で示す部分)として利用する。すなわち、吸着材170の符号171で示す単位吸着ユニットには、径方向外側から有機化合物を含有する排水が導入され、径方向内側に向けて一次処理水が導出されて軸方向の一方に向けて排出されることになり、吸着材170の符号172で示す単位吸着ユニットには、導入管181を介して径方向内側から加熱ガスが導入され、径方向外側に向けて脱着ガスが導出されて導出管182を介して排出されることになる。
【0048】
ここで、図3に示す排水処理装置においては、吸着材170が軸中心に図中矢印A方向に所定の速度で段階的に回転する。これにより、吸着材170の吸着処理が完了した単位吸着ユニットは脱着処理を行なうゾーンへと移動するとともに、吸着材170の脱着処理が完了した単位吸着ユニットは吸着処理を行なうゾーンへと移動することになる。したがって、当該排水処理装置においては、同時に吸着処理と脱着処理とが行なわれることになり、連続的に清浄化処理を行なうことが可能となる。
【0049】
なお、図2および図3に示す如くの形状の吸着材150、170を利用する場合には、当該吸着材150、170を、粒状物を充填したものや繊維状物を充填したもので構成することとしてもよいが、ハニカム状の構造を有するもので構成するとなお好ましい。これは、吸着材150、170をハニカム状の構造を有するもので構成することにより、圧力損失を極めて低く抑えることが可能となり、処理能力が増大するとともに、ゴミ等の固形物による目詰まりの発生も比較的低く抑えることができるためである。
【0050】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における排水処理システムの構成を示す模式図である。なお、図4においては、上述の本発明の実施の形態1における排水処理システム1Aと同様の部分の図示は省略している。以下においては、この図4を参照して本実施の形態における排水処理システム1Bの構成について説明する。
【0051】
図4に示すように、本実施の形態における排水処理システム1Bは、上述した本発明の実施の形態1における排水処理システム1Aと、排水処理装置100の構成において相違している。本実施の形態における排水処理システム1Bにおいては、排水処理装置100に加熱ガスを導入するための配管ラインL2に、排水処理装置100にガスを導入するための配管ラインL10が接続されており、これら配管ラインL2、L10の排水処理装置100に対する接続/非接続状態を切り替えるためのバルブV109、V110が、配管ラインL2、L10にそれぞれ設けられている。また、本実施の形態における排水処理システム1Bにおいては、排水処理装置100から脱着ガスを排出するための配管ラインL4に、排水処理装置100から除去排水を排出するための配管ラインL12が接続されており、これら配管ラインL4、L12の排水処理装置100に対する接続/非接続状態を切り替えるためのバルブV111、V112が、配管ラインL4、L12にそれぞれ設けられている。なお、配管ラインL12の他端は、排水処理装置100に排水を導入するための配管ラインL1に接続されている。
【0052】
本実施の形態における排水処理システム1Bの排水処理装置100においては、吸着処理と脱着処理との間に脱水処理(パージ処理)が実施される。具体的には、上述の本発明の実施の形態1における排水処理システム1Aの場合と同様に、排水処理装置100においては、バルブV101〜108の開閉が操作されることによって第1処理槽110と第2処理槽120とが交互に吸着槽および脱着槽に切り替わるが、脱着槽に切り替わった際には、まず当該脱着槽と配管ラインL10および配管ラインL12とが接続され、配管ラインL10を介して脱着槽にガスが導入されて吸着材に吹き付けられることによって吸着材の表面に付着した余剰の排水を吹き飛ばす脱水処理が行なわれ、吹き飛ばされた除去排水は、配管ラインL12および配管ラインL1を経由して排水処理装置100へと再度供給される。そして、当該脱水処理を所定時間行なった後に、脱着槽と配管ラインL10および配管ラインL12の接続が解除され、配管ラインL11および配管ラインL4が脱着槽に接続されて脱着処理が行なわれる。
なお、脱水処理の際に脱着槽に導入されるガスとしては、高温でより低湿なガスが利用されることが好ましく、たとえば所定の温度に昇温された乾燥空気を利用することが好適である。
【0053】
以上において説明した本実施の形態における排水処理システム1Bの如くの構成を採用することにより、上述した本発明の実施の形態1における排水処理システム1Aの如くの構成を採用した場合に得られる効果に加え、脱水処理を加えた効果として、吸着素子111、121からの有機化合物の脱着効率が大幅に増加するため、より高効率にかつ安定的に排水を清浄化処理できる排水処理システムとできる効果が得られる。なお、上述した本実施の形態においては、排水処理装置100から排出される除去排水が当該排水処理装置100に再度供給されるように構成した場合を例示して説明を行なったが、当該除去排水は、交換式の吸着素子を備えた排水処理装置等を別途用いて清浄化処理されるように構成してもよい。
【0054】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における排水処理システムの構成を示す模式図である。以下においては、この図5を参照して本実施の形態における排水処理システム1Cの構成について説明する。
【0055】
図5に示すように、本実施の形態における排水処理システム1Cは、排水処理装置100と、活性汚泥処理装置200と、燃焼装置300とを主として備えている。
【0056】
燃焼装置300は、排水処理装置100から排出される脱着ガスを燃焼させて酸化分解させるための装置であり、配管ラインL4、L13、L14、L15に接続されている。燃焼装置300は、熱交換器310と加熱炉320とを有しており、熱交換器310は、加熱炉320に導入される脱着ガスを予め予熱するためのものであり、加熱炉320は、電熱ヒータ321を用いて導入された脱着ガスを燃焼させるためのものである。配管ラインL4は、排水処理装置100から排出された脱着ガスを熱交換器310に供給するための配管ラインであり、配管ラインL13は、熱交換器310で予熱された脱着ガスを加熱炉320に導入するための配管ラインである。また、配管ラインL14、L15は、加熱炉320にて脱着ガスが燃焼することによって生成される分解ガスを熱交換器310を経由させて外部に排出するための配管ラインである。
【0057】
燃焼装置300としては、特にその種類が限定されるものではないが、たとえば脱着ガスを650〜800℃の高温で直接的に酸化分解させる直接燃焼装置や、白金触媒等を利用して脱着ガスを触媒酸化反応させて酸化分解する触媒燃焼装置、蓄熱体を利用して熱回収を行ないつつ経済的に直接酸化分解を行なう蓄熱式直接燃焼装置、白金触媒等と蓄熱体とを組み合わせて効率的に脱着ガスを触媒酸化反応させて酸化分解する蓄熱式触媒燃焼装置等を使用することが可能である。当該燃焼装置300を用いて脱着ガスを酸化分解させることにより、有害な有機化合物は完全に除去される。
【0058】
図5に示す通り、本実施の形態における排水処理システム1Cは、排水処理装置100から排出された脱着ガスは、配管ラインL4を経由して燃焼装置300に送られ、加熱炉320にて燃焼することで酸化分解する。加熱炉320にて生成された分解ガスは、配管ラインL14、熱交換器、配管ラインL15を経由し、燃焼装置300から排出される。この分解ガスは、主として二酸化炭素と水蒸気とを含む人体に対して無害なガスである。
【0059】
以上の如くの排水処理システム1Cとすることにより、排水処理装置100から排出される脱着ガスを無害化することが可能となり、排水処理として完結されたシステムとなる。
【0060】
以上において説明した本発明の実施の形態1から3における排水処理システム1A、1B、1Cの特徴的な構成は、相互に組み合わせることが可能である。たとえば、図2および図3に示した如くの構成の吸着材150、170を含む排水処理装置を本発明の実施の形態2および3における排水処理システム1Bおよび1Cの排水処理装置100に適用してもよい。なお、その場合には、吸着材150、170の脱着処理を行なうためのゾーンに脱水処理を行なうためのゾーンが設けられ、当該脱水処理を行なうためのゾーンに位置する部分の吸着材150、170に近接して上述した配管ラインL11、L12が接続され、吸着処理と脱着処理の間に脱水処理が行なわれるように排水処理装置100が構成されることになる。
【0061】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1から3においては、排水処理システムに具備される活性汚泥処理装置として、連続的に処理が行なわれる連続式活性汚泥処理装置を例示して説明を行なったが、回分式に処理が行なわれる回分式活性汚泥処理装置を利用することも当然に可能である。また、上述した本発明の実施の形態1から3においては、排水処理システムに具備される活性汚泥処理装置として、沈殿槽を用いて固液分離を行なうものを例示して説明を行なったが、この他にも曝気槽に設けた膜にて膜分離を行なうものなど種々の構成のものを利用できる。このように、本発明が適用可能な排水処理システムに具備される活性汚泥処理装置としては、どのような形式のものであってもよい。
【0062】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1から3においては、ポンプやファン等の流体搬送手段やストレージタンク等の流体貯留手段などの構成要素を特に示すことなく説明を行なったが、これら構成要素は必要に応じて適宜の位置に配置すればよい。
【0063】
このように、今回開示した前記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【実施例】
【0064】

以下、実施の形態3の実施例によりさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、評価は下記の方法によりおこなった。
(BET比表面積)
BET比表面積は、液体窒素の沸点(−195.8℃)雰囲気下、相対圧力0.0〜0.15の範囲で上昇させたときの試料への窒素吸着量を数点測定し、BETプロットにより試料単位質量あたりの表面積(m/g)を求めた。
(細孔容積)
細孔容積は、相対圧0.95における窒素ガスの気体吸着法により測定した。
(平均細孔径)
平均細孔径は、以下の式で求めた。
dp=40000Vp/S(ただし、dp:平均細孔径(Å))
Vp:細孔容積(cc/g)
S:BET比表面積(m/g)
(有機化合物除去効果)
エステル重合の生産設備から排出される排水を原水とした。主に1,4−ジオキサン1000mg/L、アセトアルデヒド14000mg/L、エチレングリコール5000mg/Lを含む排水である。また、排水量は10L/hrとし、各溶剤の排出量は1,4−ジオキサン10000mg/hr、140000mg/hr、50000mg/hrとなる。温度30℃の水を空間速度(SV)5で流し、500時間運転後の排水処理装置、活性汚泥処理装置、燃焼装置の入出の1,4−ジオキサン、エチレングリコール、アセトアルデヒド濃度を測定し、各溶剤排出量を算出して除去効果を確認した。
(溶剤濃度評価)
入口・出口の水濃度およびガスをガスクロマトグラフ法により分析し測定した。
【0065】
<実施例1>
排水処理装置の吸着材として平均細孔径17.1Å、BET比表面積1500m/g、全細孔容積0.47m/gの活性炭素繊維を使用した130mmφで、厚み150mmの重量200gの吸着素子を2個作成し、図2のダンパー切替方式の排水処理装置に設置して原水を処理水量10L/hrになるように導入し、一次処理水を得た。
【0066】
次に、排水処理装置の脱水工程時におけるガスとして外気を使用し、脱水の風速を50cm/secとした。脱着工程における加熱ガスとして130℃の空気を使用し、脱着の風速を50cm/secとした。吸着工程における吸着時間は60min、脱水工程における脱水時間は5min、脱着工程における脱着時間は55minとして切替サイクルとした。その際の一次処理水中の1,4−ジオキサン濃度は表1に示すとおり、300mg/hrであり、除去率は97%であった。しかし、アセトアルデヒド及びエチレングリコール濃度は、それぞれ126000mg/hr及び45000mg/hrであり、約10%の除去率であった。
また、脱着ガス中の各溶剤濃度は表3に示すように1,4−ジオキサン200ppm、アセトアルデヒド1800ppm、エチレングリコール400ppmであった。
【0067】
本実施例の排水処理装置により浄化された水は、500時間後でも約97%の効率で1,4−ジオキサンの処理が可能であった。吸着と脱着を連続して行い処理するため、性能低下がなく安定して高い効率で処理ができた。
【0068】
次に、容量が600Lの原水調整槽、容量が75Lの希釈槽容量、容量がいずれも1250Lの2つの担体流動曝気槽、容量が1250Lの2つの活性汚泥槽および容量が2500Lの沈殿槽からなる図5の活性汚泥処理装置を用いて、排水処理装置から排出された一次処理水を供給量10L/hrで導入し、二次処理水を得た。前記の担体流動曝気槽にはポリビニルアルコール架橋ゲル担体(直径約4mm)を125L投入した。また、前記の一次処理水中の有機化合物濃度は高く、微生物に対して負荷が高いため、希釈槽から供給される工業用水により20倍に希釈され、担体流動曝気槽及び活性汚泥槽には200L/hrで導入した。運転開始500時間時点での二次処理水の各濃度及び量を表2に示す。 1,4−ジオキサン濃度は難生物分解な有機溶剤であるため、二次処理水中の1,4−ジオキサン量は300mg/hrであり、低減しなかった。しかし、生物分解性の高いエチレングリコール、アセトアルデヒドに関してはそれぞれ400mg/hr、200mg/hrと大幅に低減さており、良好に処理できた。
【0069】
次に、燃焼装置の触媒として白金触媒0.4Lを図5の燃焼装置に設置して、前記排水処理装置から排出される脱着ガスを風量0.4Nm/minで供給し、熱交換器及び予熱ヒーターにより300℃に昇温した後、触媒に接触させ、脱着ガス中の溶剤が触媒にて酸化分解させ、分解ガスを得た。運転開始500hr後の分解ガス中の各溶剤の濃度を表4に示す。分解ガス中の1,4−ジオキサン、アセトアルデヒド、エチレングリコール濃度はそれぞれ1ppm以下であり、良好に処理できた。また、分解ガスの平均温度は420℃であり、図5に示す通り、熱交換器に通過させて、燃焼装置へ供給するガスの予熱に利用したところ、予熱ヒーターの使用に必要な電力量が3kWhと非常に低電力量で予熱が可能であった。
【0070】

<比較例1>
容量が600Lの原水調整槽、容量が75Lの希釈槽容量、容量がいずれも1250Lの2つの担体流動曝気槽、容量が1250Lの2つの活性汚泥槽および容量が2500Lの沈殿槽からなる図5の活性汚泥処理装置を用いて、原水を供給量10L/hrで導入し、処理水を得た。前記の担体流動曝気槽にはポリビニルアルコール架橋ゲル担体(直径約4mm)を125L投入した。また、前記の原水中の有機化合物濃度は高く、微生物に対して負荷が高いため、希釈槽から供給される工業用水により20倍に希釈され、担体流動曝気槽及び活性汚泥槽には200L/hrで導入した。運転開始500時間時点での処理水の各濃度及び量を表1に示す。生物分解性の高いエチレングリコール、アセトアルデヒドに関してはそれぞれ600mg/hr、400mg/hrと大幅に低減さており、良好に処理できた。しかし、1,4−ジオキサン濃度は難生物分解な有機化合物であるため、処理水中の1,4−ジオキサン量は10000mg/hrであり、低減しなかった。
【0071】
次に、排水処理装置の吸着材として平均細孔径17.1Å、BET比表面積1500m/g、全細孔容積0.47m/gの活性炭素繊維を使用した130mmφで、厚み150mmの重量200gの吸着素子を2個作成し、ダンパー切替方式の排水処理装置に設置して、活性汚泥装置から排出された一次処理水を処理水量200L/hrになるように導入し、二次処理水を得た。
【0072】
次に、排水処理装置の脱水工程時におけるガスとして外気を使用し、脱水の風速を50cm/secとした。脱着工程における加熱ガスとして130℃の空気を使用し、脱着の風速を50cm/secとした。吸着工程における吸着時間は60min、脱水工程における脱水時間は5min、脱着工程における脱着時間は55minとして切替サイクルとした。その際の二次処理水中の1,4−ジオキサン濃度は5000mg/hr、アセトアルデヒド550mg/hr、エチレングリコール350mg/hrであり、表2に示すように、実施例1と比較すると、特に1,4−ジオキサンの処理効率が著しく低下した。
また、脱着ガス中の各溶剤濃度は、表3に示す通り、1,4−ジオキサン100ppm、アセトアルデヒド100ppm、エチレングリコール50ppmであった。
【0073】
次に、燃焼装置の触媒として白金触媒0.4Lを図5の燃焼装置に設置して、前記排水処理装置から排出される脱着ガスを風量0.4Nm/minで供給し、熱交換器及び予熱ヒーターにより300℃に昇温した後、触媒に接触させ、脱着ガス中の溶剤が触媒にて酸化分解させ、分解ガスを得た。運転開始500hr後の分解ガス中の各溶剤の濃度を表4に示す。分解ガス中の1,4−ジオキサン、アセトアルデヒド、エチレングリコール濃度はそれぞれ1ppm以下であり、良好に処理できた。しかし、分解ガスの平均温度は320℃であり、図5に示す通り、熱交換器に通過させて、燃焼装置へ供給するガスの予熱に利用したところ、予熱ヒーターの使用に必要な電力量が15kWhとなり、実施例1と比較して予熱に5倍の電力量が必要であった。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【符号の説明】
【0078】
1A,1B,1C 排水処理システム、100 排水処理装置、110 第1処理槽、111 吸着素子、120 第2処理槽、121 吸着素子、150 吸着材、161 回転軸、170 吸着材、175 単位吸着ユニット、181 導入管、182 導出管、185 枠体、200 活性汚泥処理装置、210 曝気槽、211 曝気装置、220 沈殿槽、300 燃焼装置、310 熱交換器、320 燃焼炉、321 電熱ヒーター、L1〜L15 配管ライン、V101〜V112 バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物を含有する排水から有機化合物を除去することで当該排水を清浄化する排水処理システムであって、
有機化合物を含有する排水を接触させることで有機化合物を吸着し、加熱ガスを接触させることで吸着した有機化合物を脱着する吸着素子を含み、前記吸着素子に排水を供給することで有機化合物を前記吸着素子に吸着させて一次処理水として排出し、前記吸着素子に加熱ガスを供給することで有機化合物を前記吸着素子から脱着させて有機化合物を含有する脱着ガスとして排出する排水処理装置と、
前記排水処理装置に接続され、有機化合物を分解する微生物が含まれた活性汚泥を有し、前記排水処理装置から排出された一次処理水を当該活性汚泥に接触させることで微生物によって有機化合物を分解させて除去して二次処理水として排出する活性汚泥処理装置とを備え、
前記排水処理装置は、前記吸着素子の脱着処理が完了した部分を吸着処理を行なう部分に移行させるとともに前記吸着素子の吸着処理が完了した部分を脱着処理を行なう部分に移行させることで連続的に一次処理水を処理可能なものである、排水処理システム。
【請求項2】
前記排水処理装置は、前記吸着素子にガスを吹き付けることで前記吸着素子に付着した余剰の排水を吹き飛ばしてこれを除去排水として排出する、請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記排水処理装置から排出された除去排水が、排水として前記排水処理装置に再度供給されるように構成された、請求項2に記載の排水処理システム。
【請求項4】
前記吸着素子が、活性炭、活性炭素繊維およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1の部材を含んでいる、請求項1から3のいずれかに記載の排水処理システム。
【請求項5】
前記排水処理装置に接続され、前記排水処理装置から排出された脱着ガスを燃焼させて酸化分解して分解ガスを排出する燃焼装置を備えている請求項1から4のいずれかに記載の排水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−35232(P2012−35232A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180094(P2010−180094)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】