説明

排水処理方法及び排水処理装置

【課題】 活性汚泥法など一般的な排水処理方法を採用しない簡易的な排水処理方法及び排水処理装置を提供すること。
【解決手段】 外径8mm以下1mm以上の球形状の微生物固定化ゲル担体が充填された籠を水面部で回転させることを特徴とする排水処理方法と排水処理装置により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水処理方法及び排水処理装置に関する。さらに詳しくは、外径8mm以下1mm以上の球形状の微生物固定化ゲル担体を充填した籠を水面部で回転させる排水処理方法及び排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、池や湖沼において冨栄養化による水質の悪化が進み、アオコの発生、異臭など環境、衛生上の問題を引き起こしている。それを解決するため種々の水の浄化方法が試みられており、一部は実施に移されているが、建設費やランニングコストが大きいため改善が進んでいない。とくに大きな湖沼ではBOD負荷が小さいにも関わらず水量が多いため従来技術では対応が困難であるのが実情である。また、都市部における池や堀について見ても、排水処理設備の設置場所が美観上の制約により限られるという状況にもある。
【0003】
このような状況下における水の浄化方法として、担体を充填した籠を水面部で回転させる方法は実用性が高いものと想定されるが、いまだ実用化に至っていない。この大きな理由は、処理能力の向上が技術的に実現できなかったことにある。すなわち、活性汚泥設備を用いたBOD処理能力は、処理水中の汚泥の濃度に左右され、汚泥濃度を上げるために担体が使用されている。しかしながら、担体を籠に充填して籠を水面部で回転させても、担体表面に付着する汚泥が籠の回転に伴って剥離、脱落するため、汚泥濃度を上げることができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、汚泥が剥離、脱離することなく処理能力を維持することのできる排水処理方法及び排水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討した結果、微生物固定化ゲル担体を籠に充填して排水処理を行えば、上記課題を達成することができることを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明は、外径8mm以下1mm以上の球形状の微生物固定化ゲル担体を充填した籠を水面部で回転させることを特徴とする排水処理方法である。そして、本発明ももう一つの発明は、外径8mm以下1mm以上の球形状の微生物固定化ゲル担体を充填するための回転可能な籠を備えることを特徴とする排水処理装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、外径8mm以下1mm以上の球形状の微生物固定化ゲル担体を充填した籠を水面部で回転させる排水処理方法を提供することができる。このような排水処理方法によれば、活性汚泥法など一般的な排水処理方法を採用することなく、小さな設備投資、かつ小さなランニングコストで排水負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の排水処理方法においては、球状の微生物固定化ゲル担体(以下、単にゲル担体と略称する)を用いる必要がある。一般的にゲル担体の形状は製造方法からサイコロ型(角型)になる場合が多いが、形状が角型の場合はゲル担体の回転が悪くなり、処理水の循環が悪くなるので充填率を上げることができない。したがって、処理水の循環を良好にするためにはゲル担体の形状は球形状とする必要がある。
【0008】
すなわち、本発明の特徴は、球形状のゲル担体を用いることにあり、かかるゲル担体を籠に充填して水面部で回転させることによって水の浄化を図ることにある。本発明において球形状とは厳密な球形状だけを意味するのではなく、球形に近いものも球形状に含まれる。
【0009】
微生物を固定化するための担体としては、ポリビニルアルコール(PVA)系、ポリエチレングリコール系、ポリアクリルアミド系の高分子含水ゲル、アルギン酸カルシウム、カラギーナン、寒天などの高分子ゲルなどを例示することができるが、菌を付着させた場合、BOD除去能力の点で高分子含水ゲルが好ましい。なかでも、PVA系含水ゲルは、担体表面および内部に網目構造を有しているため微生物が生息しやすく、かつ有機化合物の捕捉性に優れており、しかも機械的強度にも優れているので、好ましい。
【0010】
PVAの平均重合度および/又はケン化度は高い方がPVAの濃度を低下することができるので、ゲルの含水率を上げることができ、したがって、微生物の生息性がよくなり好ましい。かかる点から、PVAの平均重合度は1000以上のものが好ましく、とくに1500以上のものがさらに好ましい。また、PVAのケン化度は95モル%以上のものが好ましく、とくに98モル%以上のものがさらに好ましい。
【0011】
PVAの溶出や劣化を防止するために、PVAをアセタ−ル化するのが望ましい。アセタ−ル化度は、あまり低いと耐水性が低くなり、またあまり高いと疎水化されて微生物の生息が悪くなるので、10〜60モル%が好ましく、20〜55モル%がさらに好ましい。PVA系含水ゲルの具体例としては株式会社クラレ製の商品名クラゲールを挙げることができる。
【0012】
籠が回転することによって、ゲル担体及び処理水が籠内を循環すると同時にゲル担体が空気中の酸素と接触し、ゲル担体中の微生物により水はBOD処理される。したがって、ゲル担体と空中酸素の接触面積を大きくする点からゲル担体は小さい方がよいが、あまり小さいと籠の開き目を小さくする必要があり、籠の目詰まりの発生が激しくなって処理水の循環が不充分となり結果として処理能力が低下するので、ゲル担体の大きさは外径8mm以下1mm以上とする必要がある。外径3mm〜5mmのものが好ましい。
【0013】
水浄化能力アップのためには多量のゲル担体を籠に充填する方がよいが、あまり充填率を上げると処理水の循環が悪くなり、またあまり充填率を下げると処理能力が小さくなるので籠容積の70〜90容量%とするのが好ましい。
【0014】
籠の材質はとくに限定されるものではないが、ゲル担体が抜け出さないよう、また処理水とよく接触するように例えば耐腐食性の金網で作製するのがよい。大きさは処理水の規模に応じて適宜決められる。籠の形状もとくに限定されないが、円筒状のものを作製するのが実用的である。円筒状の直径と長さの比率もとくに限定はなく、実際の処理水の規模に合わせて適宜決めればよい。
【0015】
籠はモーター駆動により回転させればよいが、籠の位置と水面の関係は、籠の回転速度に依存するので一義的には設定できない。すなわち、籠の回転数を大きくすると籠の水面上部分は減少させることができるが、回転動力が大きくなり運転コスト面から得策ではない。一方、1rpm以下程度の低速回転数で運転する場合は消費電力は小さくなり、籠の水面上の容積は50%程度となり処理能力も高くなる。
【0016】
以下、本発明の排水処理方法を図によって詳細に説明する。図1及び図2は本発明の排水処理方法を実施するための排水処理装置の概略図である。図1は、回転可能な籠部分の平面図であり、1は籠、2はフレーム、3はゲル担体である。4は籠を回転させるための動力を与える駆動機であり、5は駆動側タイミングベルトプーリー、6は被駆動側タイミングベルトプーリー、7はベルト、8は籠の回転軸である。
【0017】
駆動機としては通常のモーターを使用すればよいが、太陽電池をモーターの動力源とすると省エネを図ることができる。また、籠は浮子で水面に浮かせて使用することも可能であり、浮子の浮力を調節することによって籠の水面上部分を調整することが可能である。9〜12はこのような浮子であり、13、14は係留ロープである。図2は図1の正面図であり、籠の水面上の容積が50%程度である状態を示す。なお、駆動機のカバー、電源線など通常必要に応じて設置される付属装置は図示省略している。
【0018】
実施例1
直径0.8m、長さ0.5mの円筒状金網で籠を作製し、外径4mmのPVAゲル担体(株式会社クラレ製商品名クラゲール)を80容量%の充填率で充填した。図に示すような排水処理装置を構成し、籠を1rpmで回転させてBOD100mg/L以下の排水を3ケ月連続処理したところ、BOD処理能力は約0.1kg/日以上であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によれば、外径8mm以下1mm以上の球形状の微生物固定化ゲル担体を充填した籠を水面部で回転させる排水処理方法を提供することができ、このような排水処理方法によれば、活性汚泥法など一般的な排水処理方法を採用することなく、小さな設備投資、かつ小さなランニングコストで排水負荷を軽減することができるので産業上の有用性が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の排水処理方法を実施するための装置の一例(平面図)である。
【図2】図1の正面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 籠
2 フレーム
3 ゲル担体
4 駆動機
5 駆動側タイミングベルトプーリー
6 被駆動側タイミングベルトプーリー
7 ベルト
8 回転軸
9 浮子
10 浮子
11 浮子
12 浮子
13 係留ロープ
14 係留ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径8mm以下1mm以上の球形状の微生物固定化ゲル担体が充填された籠を水面部で回転させることを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
該微生物固定化ゲル担体がポリビニルアルコール系含水ゲルである請求項1記載の排水処理方法。
【請求項3】
該微生物固定化ゲル担体の充填率が50〜90容量%である請求項1又は2記載の排水処理方法。
【請求項4】
外径8mm以下1mm以上の球形状の微生物固定化ゲル担体を充填するための回転可能な籠を備えることを特徴とする排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−245046(P2007−245046A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74025(P2006−74025)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(305039909)クラレ機工株式会社 (23)
【Fターム(参考)】