説明

排水処理装置

【課題】排水中の有機物の除去性能を維持しつつ、より簡単に未分解の有機物を処理することができる排水処理装置を提供する。
【解決手段】本実施例に係る排水処理装置10Aは、排水11中の有機物12を分解処理する排水処理装置において、ゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔13が形成されたゼオライト14が充填される反応容器15と、反応容器15内にオゾン16を導入するオゾン供給部17と、を有する。ゼオライト14の空孔13は、ゼオライト原料にセルロースを加えずに所定形状に成形した成形体を焼成して得られるゼオライトの空孔よりも細孔容積が増大し、ゼオライト14の表面積が増加することで、ゼオライト14表面に吸着されるオゾン16と有機物12の吸着量を増大させることができ、オゾン16により有機物12の酸化分解反応を更に促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を含んだ排水の処理を行う排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上水や下水・し尿の二次処理水などを安定して良好に処理するため、光触媒の存在下で紫外線及び/又は可視光線を照射して、有機物を含有する排水を酸化分解処理する処理方法、活性炭吸着法など吸着剤を用いて有機物等を吸着除去する方法などが行われている。これらの処理方法は、排水の有効な排水処理技術として従来より排水処理設備において活性汚泥法や物理化学的処理方法の補完装置として用いられている。
【0003】
排水中の有機物を光触媒を用いて酸化分解処理する排水処理装置の一例を図9に示す。図9に示すように、従来の排水処理装置100は、上水や下水・し尿の二次処理水などの被処理水101を貯留する流量調整槽102と、流量調整槽102より供給される被処理水101を活性炭吸着処理する反応槽103と、反応槽103内で処理された処理水104を受け入れて貯留する貯水槽105とを備えている。光触媒として酸化チタン(TiO2)を表面に担持させた活性炭106を吸着剤として投入した反応槽103に被処理水101を被処理水供給管107を通じて供給している。被処理水101中のCOD成分等の有機物などが活性炭106に吸着され、有機物などが除去された処理水104は処理水管108を通じて貯水槽105へ送られ、貯水槽105から系外に放流される。
【0004】
また、活性炭106の吸着性能が低下したとき、反応槽103に処理水104を供給するのを停止し、貯水槽105の処理水104を返送管109より反応槽103に供給し、紫外線ランプ110より活性炭106に紫外線を照射してTiO2を活性化し、TiO2の酸化触媒作用により活性炭106に吸着した有機物などを酸化分解する。このように、反応槽103内では、活性炭106による有機物などの吸着除去とTiO2を用いて有機物を酸化分解して活性炭106を再生する操作とが交互に繰り返し行われる。そして、反応槽103内上部に達した処理水104は排水管112を通じて系外に流出される(特許文献1、参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−10136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光触媒として用いられるTiO2は活性炭106の表面のみにしか担持されていないため、活性炭106の吸着剤としての耐久性は乏しい、という問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、排水中の有機物の除去性能を維持しつつ、より簡単に未分解の有機物を処理することができる排水処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、排水中の有機物を分解処理する排水処理装置において、ゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔が形成されたゼオライトが充填される反応容器と、前記反応容器内にオゾンを導入するオゾン導入手段と、を有することを特徴とする排水処理装置にある。
【0009】
第2の発明は、排水中の有機物を分解処理する排水処理装置において、内筒と外筒とからなる二重管と、前記二重管の収容部内に紫外線を照射する紫外線照射手段とを有すると共に、ゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔が形成されたゼオライトに光触媒を担持したコート型の光触媒担持ゼオライト、又はゼオライト原料にセルロース及び光触媒を加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔が形成されたソリッド型の光触媒担持ゼオライトの何れか一方又は両方が、前記収容部内に充填されてなるものであることを特徴とする排水処理装置にある。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記二重管内にオゾンを導入するオゾン導入手段を有することを特徴とする排水処理装置にある。
【0011】
第4の発明は、第2又は3の発明において、前記光触媒が酸化チタンであることを特徴とする排水処理装置にある。
【0012】
第5の発明は、第2乃至4の何れか一つの発明において、前記ゼオライトが、成形時にガラス繊維、ガラス粉、蛍光試料の少なくとも一つを加えて形成されることを特徴とする排水処理装置にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔が形成されたゼオライトが充填される反応容器と、前記反応容器内にオゾンを導入するオゾン導入手段とを有している。このため、前記ゼオライト原料に前記セルロースを加えて所定形状に成形した成形体を焼成して得られるゼオライトの空孔の細孔容積は増大し、前記ゼオライト表面に吸着されるオゾンと有機物の量を増大させ、前記オゾンと前記有機物とが反応する活性点を増加させることができるため、前記有機物の酸化分解反応を更に促進することができる。
【0014】
また、本発明によれば、内筒と外筒とからなる二重管と、前記二重管の収容部内に紫外線を照射する紫外線照射手段とを有すると共に、ゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔が形成されたゼオライトに光触媒を担持したコート型の光触媒担持ゼオライト、又はゼオライト原料にセルロース及び光触媒を加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔が形成されたソリッド型の光触媒担持ゼオライトの何れか一方又は両方が、前記収容部内に充填されている。このため、前記ゼオライト原料に前記セルロースを加えて所定形状に成形した成形体を焼成して得られるゼオライトの空孔は増大し、担持される酸化チタンの量を増加させることができると共に、前記二重管内側と外側の両方から紫外線を照射することで、多量の紫外線を前記光触媒に照射することができるため、前記有機物の酸化分解反応を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1に係る排水処理装置について、図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る排水処理装置の概略図であり、図2は、セルロースを加えて形成した後、焼成し前記セルロースが除去されたゼオライトの空孔を模式的に示す図であり、図3は、ゼオライト表面での酸化分解反応を簡略に示す図であり、図4は、セルロースを加えずに形成されたゼオライトの空孔を模式的に示す図である。
図1、2に示すように、本実施例に係る排水処理装置10Aは、排水11中の有機物12を分解処理する排水処理装置において、ゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔13が形成されたゼオライト14が充填される反応容器15と、反応容器15内にオゾン(O3)16を導入するオゾン供給部(オゾン導入手段)17と、を有するものである。
また、反応容器15内に供給される排水11の供給量は、調整弁V11により調整され、オゾン供給部17より反応容器15内に供給されるオゾン16の供給量は、調整弁V12により調整される。
【0017】
図3に示すように、ゼオライト14の表面にオゾン16や有機物12が吸着して濃縮することで、有機物12はオゾン16により酸化分解される。
【0018】
また、前記ゼオライト原料に前記セルロースを加えて所定形状に成形した成形体を焼成して得られるゼオライト14の空孔13は、図4に示すような前記ゼオライト原料にセルロースを加えず所定形状に成形した成形体を焼成して得られるゼオライト121の空孔122よりも大きくすることができる。ゼオライト14に形成される空孔13の細孔容積が増大することで、ゼオライト14の表面積が増加し、ゼオライト14表面に吸着されるオゾン16と有機物12との吸着量が増大するため、オゾン16と有機物12とが反応する活性点を増大させることができる。このゼオライト14の空孔13は、図4に示すようなゼオライト121の空孔132に比べ、細孔容積を例えば20%程度増大させることができる。よって、ゼオライト14の細孔容積を増大し、空孔13に吸着されるオゾン16や有機物12の吸着量を増大することで、オゾン16により吸着された有機物12の酸化分解反応を更に促進することができる。
【0019】
前記空孔13を有するゼオライト14の作成方法としては、空孔付与材として繊維状セルロース、結晶セルロース(アビセル)などのセルロース、焼結材としてカオリン、増粘材としてメチルセルロースをゼオライトなどの吸着剤となる基材に加えて、ペレットを形成し、混練りした後、焼成することにより、セルロースが下記式(1)のように加熱分解してゼオライト14に大きな空孔13を形成し、表面積を増大させることができる。
(C6105)n → CO2 + H2O ・・・(1)
【0020】
また、セルロースは安価に入手可能であり、反応容器15内には前記ゼオライト原料に前記セルロースを加えて所定形状に成形した成形体を焼成して得られるゼオライト14を充填するだけで従来と操作方法などが変わるものではないため、特別な装置を用いることなく、簡単、かつ、低コストで排水11中の有機物12を分解処理することができる。
【0021】
オゾン16により有機物12が酸化分解処理された排水11は、反応容器15の側面の底部側より処理水18として排出される。排出される処理水18の排出量は調整弁V13により調整される。また、処理水18は反応容器15の底部側より排出するようにしてもよい。
【0022】
また、本実施例では、排水11を反応容器15の上側から反応容器15内に供給し、オゾン16は反応容器15の下側から反応容器15内に供給し、反応容器15内で排水11とオゾン16とが対向するようにし、排水11とオゾン16とが効率良く接触するようにしている。排水11とオゾン16との供給方向は、これに限定されるものではなく、オゾン16を排水11と同様に反応容器15の上側から反応容器15内に供給し、反応容器15内で排水11とオゾン16とが同一方向に流れるようにしてもよい。また、排水11をオゾン16と同様に反応容器15の下側から反応容器15内に供給し、反応容器15内で排水11とオゾン16とが同一方向に流れるようにしてもよい。
【0023】
また、本実施例では、吸着剤としては、ゼオライト14を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、多孔質で形成される吸着剤であればよく、ゼオライトの他に、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、あるいは活性白土等のセラミックス系吸着剤などを使用することができる。
【0024】
よって、本実施例によれば、前記ゼオライト原料に前記セルロースを加えて所定形状に成形した成形体を焼成して得られるゼオライト14が充填された反応容器15と、反応容器15内にオゾン16を導入するオゾン供給部17とを有することで、ゼオライト14の細孔容積は増加し、ゼオライト14の表面に吸着されるオゾン16と有機物12の吸着量を増大させ、オゾン16と有機物12とが反応する活性点を増加させることができるため、排水11中の有機物12の酸化分解反応を更に促進することができる。
【実施例2】
【0025】
本発明の実施例2に係る排水処理装置について、図面を参照して説明する。
図5は、本発明の実施例2に係る排水処理装置の概略図であり、図6は、排水処理装置の構成の一部の部分拡大図である。なお、実施例1と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図5、6に示すように、本実施例に係る排水処理装置10Bは、排水11中の有機物12を分解処理する排水処理装置において、内筒21と外筒22とからなる紫外線透過性を有する二重管23と、二重管23の収容部24内に紫外線を照射する紫外線(UV)ランプ(紫外線照射手段)25とを有すると共に、ゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔13が形成されたゼオライト14(図1、2参照)に光触媒として酸化チタン(TiO2)を担持したコート型の光触媒担持ゼオライト26が、収容部24内に充填されてなるものである。
また、本実施例では、二重管23が5つ配置されているが、設置される二重管23の本数はこれに限定されるものではない。また、二重管23内に供給される排水11の供給量は、調整弁V21〜V25により調整される。なお、図5においては、紫外線(UV)ランプ(紫外線照射手段)25について、他の部材と区別するために着色している。
【0026】
二重管23の内筒21と外筒22との間に排水11を供給することで、光触媒担持ゼオライト26に排水11中の有機物12が吸着される。そして、二重管23の内側と外側の両側に設けたUVランプ25から紫外線を照射することにより、光触媒担持ゼオライト26に担持されたTiO2に多量の紫外線を照射することができる。
【0027】
また、TiO2に約388nm以下の波長の光を照射することで、空気に由来する酸素と、排水に由来する水とが、下記式(2)及び(3)により酸化剤を発生し、有機物12を強力に酸化分解する。
2 → O2- ・・・(2)
2O → OH- ・・・(3)
【0028】
また、本実施例で用いられる排水処理装置10Bの光触媒担持ゼオライト26は、実施例1と同様に、図2に示すようなゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形した後、成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔13が形成されたゼオライト14にTiO2を担持させているだけであるため、環境に負荷をかけることなく低コストで、排水11中の有機物12を分解処理することができる。また、TiO2は、抗菌性、防カビ性、防汚に優れているため、手入れをすることなく使用することができる。
【0029】
TiO2により有機物12が酸化分解処理された処理水18は、二重管23の側面の底部側より排出される。排出される処理水18の排出量は調整弁V26〜V30により調整される。また、処理水18は二重管23の底部側より排出するようにしてもよい。
【0030】
また、内筒21と外筒22との間に所定間隔ごとに例えば網などを設け、光触媒担持ゼオライト26が二重管23の下に詰まらないようにして、二重管23内に光触媒担持ゼオライト26が均等に充填されるようにしてもよい。
【0031】
また、光触媒としてTiO2を用いる場合、触媒性能に優れたアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタンを用いるのが好ましい。また、本実施例では、光触媒としてTiO2を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、酸化亜鉛(ZnO)、硫化カドミウム(CdS)、酸化鉄なども用いることができる。また、光触媒を吸着剤に担持させる場合、光触媒を分散させた分散液中にゼオライト14(図1、2参照)などの吸着剤を含浸し、光触媒の分散液が付着した吸着剤を乾燥および/または高温焼成するなどすればよい。
【0032】
光触媒担持ゼオライト26はゼオライト14にTiO2を担持したコート型のものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、光触媒担持ゼオライト26は、ゼオライト原料にセルロース及び光触媒としてTiO2を加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔13が形成されたソリッド型のものでもよい。光触媒担持ゼオライト26がゼオライト14表面にTiO2を担持したコート型のものである場合、TiO2がゼオライト14の表面に多数存在するため、有機物の分解が促進されるが、ゼオライト14の表面が摩擦等により削られると、TiO2がその分失われる。一方、光触媒担持ゼオライト26が前記ゼオライト原料に前記セルロース及びTiO2を加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔13が形成されたソリッド型のものである場合、ゼオライト14の表面に存在するTiO2の量は少ないが、ゼオライト14内部にもTiO2がほぼ同比率で存在するため、ゼオライト14の表面が摩擦等により削られてもTiO2による光触媒機能を維持することができる。
【0033】
また、光触媒担持ゼオライト26として、空孔13が形成されたゼオライト14にTiO2を担持したコート型のものと、前記ゼオライト原料に前記セルロース及びTiO2を加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔13が形成されたソリッド型のものとを両方混合して収容部24内に充填してもよい。これにより、コート型の光触媒担持ゼオライトとソリッド型の光触媒担持ゼオライトとの両方の効果を得ることができる。
【0034】
また、紫外線の効果を強め、光触媒担持ゼオライト26内部のTiO2を効率良く作用させる方法として、ゼオライト14(図1、2参照)を形成する際に、ゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形する時に、ガラス繊維、ガラス粉を加える方法、蛍光材料等を加える方法がある。
【0035】
これは、TiO2を作用させるためには光が照射される必要があるが、通常ペレット状にした光触媒担持ゼオライト26など光触媒材料では内部まで光が到達しないため光触媒担持ゼオライト26の内部のTiO2などの光触媒は作用しない。そのため、光触媒担持ゼオライト26の作成時にガラス繊維、ガラス粉などを光触媒担持ゼオライト26に混ぜて混練り後、焼成する。これにより、光触媒担持ゼオライト26にガラス質成分を加えることができ、光の照射効率を向上させることができる。
【0036】
光触媒担持ゼオライト26などのペレット中に存在するガラスの中を光が通って光触媒担持ゼオライト26の内部まで届くため、光触媒担持ゼオライト26の内部に存在するTiO2も作用することができ、酸化分解反応を更に促進することができる。また、光触媒担持ゼオライト26にガラス質を加えることで強度も増大させることができる。また、光触媒担持ゼオライト26の内部への光の照射効率が向上しているため、酸化分解反応の反応時間を早めることができる。また、光触媒担持ゼオライト26の内部でも効率よく酸化分解反応を行うことができるため、二重管23内に担持するゼオライト量も減らすことができる。
【0037】
よって、ゼオライト14(図1、2参照)を形成する際にゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形する時に、ガラス繊維、ガラス粉を加えることで、紫外線を光触媒担持ゼオライト26の内部にまで照射可能とし、光触媒担持ゼオライト26の内部のTiO2を効率良く作用させることができると共に、光触媒担持ゼオライト26の強度を増大させることができる。
【0038】
また、光触媒担持ゼオライト26の作成時に蛍光試料として光が照射されると発光する物質(モリン)を加えて形成してもよい。これにより光触媒担持ゼオライト26の内部にまで届いたわずかな光でも蛍光試料であるモリンが光を発生させ、光触媒担持ゼオライト26の内部のTiO2が作用するため、有機物12の酸化分解反応を促進することができる。また、蛍光試料としてモリンを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、光が照射されると発光する物質であればよい。
【0039】
よって、本実施例によれば、内筒21と外筒22とからなる二重管23と、二重管23の収容部24内に紫外線を照射するUVランプ25とを有すると共に、ゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形した成形体を焼成して得られるゼオライト14(図1、2参照)にTiO2を担持したコート型の光触媒担持ゼオライト26が、収容部24内に充填している。このため、光触媒担持ゼオライト26の空孔13は増加し、担持されるTiO2の量を増加させることができると共に、二重管23の収容部24内に紫外線を照射することで、多量の紫外線をTiO2に照射することができるため、有機物12の酸化分解反応を更に効率良く行うことができる。
【実施例3】
【0040】
本発明の実施例3に係る排水処理装置について、図7を参照して説明する。
図7は、本発明の実施例3に係る排水処理装置を示す概念図である。なお、実施例1、2と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図7に示すように、本実施例に係る排水処理装置10Cは、実施例2に係る排水処理装置10Bの二重管23内にオゾン16を導入するためのオゾン供給部(オゾン導入手段)17を設けてなるものである。
また、二重管23内に供給されるオゾン16の供給量は、調整弁V31により調整され、TiO2により有機物12が酸化分解処理された処理水18は、二重管23の側面の底部側より排出され、処理水18の排出量は調整弁V32により調整される。
【0041】
光触媒担持ゼオライト26中のTiO2に約388nm以下の波長の光を照射しながら二重管23内にオゾン16を供給することで、空気に由来する酸素と、排水に由来する水とが、下記式(2)、(3)により発生する酸化剤の他に、オゾン16が下記式(4)のように反応することで酸素ラジカル(O)を発生する。発生した酸素ラジカル(O)は強力な酸化剤であり、有機物12の分解が格段に増強され、中間副生成物も完全に分解することができる。
2 → O2- ・・・(2)
2O → OH- ・・・(3)
3 → O+O2- ・・・(4)
【0042】
[試験例]
次に、本実施例を用いた場合における有機物分解性能の試験結果を示す。
光触媒担持ゼオライト26とオゾン16を用いて1000ppmグルコースの分解を行ったときの結果を図8に示す。
1000ppmグルコース100mlに対し、光触媒担持ゼオライト26を40g、800ppmオゾン16を300ml/minの割合で供給した。
図8に示すように、時間経過と共に、グルコース濃度が低下しているのが確認された。
よって、本実施例に係る排水処理装置を用いることにより、有機物の酸化分解反応を行うことができる。
【0043】
よって、本実施例によれば、内筒21と外筒22とからなる二重管23と、二重管23の収容部24内に紫外線を照射するUVランプ25とを有すると共に、ゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形した成形体を焼成して得られるゼオライト14(図1、2参照)にTiO2を担持したコート型の光触媒担持ゼオライト26を収容部24内に充填していることに加えて、二重管23内にオゾン16を導入するためのオゾン供給部17を設けている。このため、光触媒担持ゼオライト26に紫外線を照射しつつ二重管23内にオゾン16を供給することで、有機物12の酸化分解反応を更に促進し、効率良く行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明に係る排水処理装置は、吸着剤に吸着された排水中の有機物を効率的に分解することができるため、二次処理水などに含まれる有機物を分解処理するのに用いて適している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例1に係る排水処理装置の概略図である。
【図2】セルロースを加えて形成した後、焼成し前記セルロースが除去されたゼオライトの空孔を模式的に示す図である。
【図3】ゼオライト表面での酸化分解反応を簡略に示す図である。
【図4】セルロースを加えずに形成されたゼオライトの空孔を模式的に示す図である。
【図5】本発明の実施例2に係る排水処理装置の概略図である。
【図6】排水処理装置の構成の一部の部分拡大図である。
【図7】本発明の実施例3に係る排水処理装置を示す概念図である。
【図8】実施例3に係る排水処理装置を用いて行なった有機物分解性能の試験結果を示す図である。
【図9】排水中の有機物を光触媒を用いて酸化分解処理する排水処理装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
10A〜10C 排水処理装置
11 排水
12 有機物
13 空孔
14 ゼオライト
15 反応容器
16 オゾン(O3
17 オゾン供給部(オゾン導入手段)
18 処理水
21 内筒
22 外筒
23 二重管
24 収容部
25 紫外線(UV)ランプ(紫外線照射手段)
26 光触媒担持ゼオライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水中の有機物を分解処理する排水処理装置において、
ゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔が形成されたゼオライトが充填される反応容器と、
前記反応容器内にオゾンを導入するオゾン導入手段と、
を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
排水中の有機物を分解処理する排水処理装置において、
内筒と外筒とからなる二重管と、
前記二重管の収容部内に紫外線を照射する紫外線照射手段とを有すると共に、
ゼオライト原料にセルロースを加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔が形成されたゼオライトに光触媒を担持したコート型の光触媒担持ゼオライト、
又はゼオライト原料にセルロース及び光触媒を加えて所定形状に成形した後、得られた成形体を焼成して前記セルロースが除去され、空孔が形成されたソリッド型の光触媒担持ゼオライトの何れか一方又は両方が、前記収容部内に充填されてなるものであることを特徴とする排水処理装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記二重管の前記収容部内にオゾンを導入するオゾン導入手段を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記光触媒が酸化チタンであることを特徴とする排水処理装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか一つにおいて、
前記ゼオライトが、成形時にガラス繊維、ガラス粉、蛍光試料の少なくとも一つを加えて形成されることを特徴とする排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−131557(P2010−131557A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311501(P2008−311501)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】