説明

排水用合流管継手

【課題】スリムで設置し易く排水能力の大きい排水用合流管継手を得ること、製作性もよく安価に製作でき、合成樹脂を内管とする耐火二層管継手としても製作できるようにする。
【解決手段】上下に縦管接続口3と中間部6に枝管接続口5を備え、上下部分を直筒状に形成してその管内に旋回羽根を1枚ずつ設けて流下する流体に旋回を与える形式の管継手1において、中間部の内径をやや拡大した大径部に形成すると共にその下端部に短い縮径部11を形成し、上方の旋回羽根9の陰影範囲内に枝管接続口を設け、この陰影範囲と180度対称位置が陰影範囲になるように下方の旋回羽根10を設ける。下方の旋回羽根の領域上方に誘導突条24を突設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅やホテル、オフィスビル等の建築物や構造物に設備される排水用合流管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
排水用合流管継手は、通常、高層建築物を上下に貫通する排水縦管の途中の床スラブに埋設して設けられるもので、継手の上下には排水縦管が接続される縦管接続口を備え、中間部には横枝管が接続される枝管接続口を備えている。また、継手の内部には、流下する排水に旋回を与えるための旋回羽根を設け、これにより排水を旋回させてその旋回中心に管内圧力の変動を防止するための空気コアを形成し、排水能力を向上させるようにしたものも知られている。旋回羽根は、通常は枝管接続口よりも下流の位置に設けられるが、枝管接続口の上流にも設けて排水に大きな旋回力を与えることも提案されている(特開平9−100985号公報)。
【0003】
また、枝管接続口が設けられる継手の中間部は、縦管からの排水と枝管接続口からの排水が合流するため、排水が充満しがちであり、これによって管内が塞がり空気コアが消滅するという事態を避けるために大きな容積が必要になる。継手は、前記したように床スラブに形成した貫通孔内に埋設されるので、継手の口径は小さい方が貫通孔も小さくなり施工も容易になるが、実際は縦管接続口の口径よりも50%以上大きく形成されているのでこれに伴って貫通孔も大きくなり、施工上の不便がある。また、このような中間部を拡大させた場合、中間部から下方の縦管接続口までの管内は長い漏斗状に縮径され、下方の旋回羽根はこの縮径部に設けられている(特開平6−117000号公報)。
【0004】
縦管接続口から流下する排水が枝管接続口に逆流したり、枝管接続口が複数である場合に一方の枝管接続口からの排水が管内壁で反射して他の枝管接続口内へ逆流することがあるので、これを防止するため枝管接続口の両側の管内壁に継手の長さ方向に延びる逆流防止板を突設することも行われている(特開平9−310389号公報(図1)、特開2000−144838号公報(図2、図3))。
【0005】
こうした排水用合流管継手として、合成樹脂製の内管に繊維混入モルタルで被覆した耐火二層管継手と、鋳鉄などの金属製継手のものが市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−100985号公報
【特許文献2】特開平6−117000号公報
【特許文献3】特開平9−310389号公報
【特許文献4】特開2000−144838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近時、建物が高層化しており、そのため排水管は多層階の排水を行えるように排水能力の向上が要望されている。排水縦管や継手の口径を大きくすれば排水量も大きくできるが、資材コストが高価になり、継手の設置のために床スラブに形成される貫通孔も大きくする必要が生じて施工コストも高くなるので、小口径の縦管と継手を使用することが望ましい。しかし、継手には枝管接続口が設けられこれに流入する排水も縦管の排水に合流して排水する必要があり、小口径の継手では旋回羽根が枝管接続口の上下に設けられているにも係らず空気コアが消滅して管内圧力が変動し、排水能力が低下してしまう不都合がある。
上記特許文献1のものは、旋回羽根が設けられる部位も枝管接続口が設けられる中間部も同径に構成したもので、スリムな形状になるが、枝管接続口からの排水が縦管の排水と合流したときの増大する流量を捌くために、床スラブよりやや高いレベルに位置すべき枝管接続口の開口部が下方に拡げられて旋回羽根を設けた部位よりも外径が大きくなっており、そのため床スラブの貫通孔も大きく開口形成しなければならず、施工作業の観点からはあまりスリム化のメリットがない。また、接続口の上方に逆流防止のための庇が設けられているため、排水の旋回が妨げられることになって排水能力を減殺してしまう不都合がある。更に、特許文献1のものの中間部には合流流量に対しての余裕がないため、縦管を流下してくる排水と横枝管からの排水が合流する際に空気コアが減少し、これが管内に圧力変動を生じさせて排水能力を低下させてしまう原因になっている。
【0008】
特許文献2に見られるような、合流に備えて継手の中間部を大径に形成した形式のものでは、旋回羽根を縮径するテーパ部に設けるのが一般であり、この構成で効率のよい旋回流を得るには、旋回羽根を大きく立ち上がらせてテーパ部付近の流れを旋回させるか複数枚の旋回羽根を設けねばならず、これは継手の構造が複雑になって製作性を損ないコストを高めることになって好ましくない。
【0009】
本発明は、こうした不都合等を解消し、スリムな外径を有して設置し易く内部構造も比較的簡単でしかも排水能力の大きい排水用合流管継手を提供すること、金属継手もしくは合成樹脂を内管とする耐火二層管継手としても製作可能で安価に製作できる排水用合流管継手を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、上記課題を解決すべく、上下に縦管接続口を備え、中間部に横枝管が接続される枝管接続口を備えた排水用合流管継手であって、中間部よりも上方部分及び中間部よりも下方部分の管内径を直筒状に形成して各直筒部の管内壁に管内を流下する流体に旋回を与える旋回羽根を1枚ずつ傾斜状態で設けたものにおいて、該中間部の内径を該枝管接続口の上部位置付近から下部位置付近までやや拡大した大径部に形成すると共に各旋回羽根のすぐ上流側に管内壁を伝う流れが剥離しない程度に小さく傾斜した縮径部を夫々形成し、上方の旋回羽根の陰影範囲内に枝管接続口を位置させ、この陰影範囲に対して180度前後の略対称位置が陰影範囲になるように下方の旋回羽根を設けるようにした。
【0011】
上記枝管接続口は、排水用合流管継手の中心軸に対して90度水平旋回した位置関係で複数設けることが可能であり、該枝管接続口の開口部の両脇に位置した管内壁に該継手の長さ方向に延びる逆流防止板を突設することが好ましい。この逆流防止板の管内壁から継手軸心方向へ突出する高さは、上方の旋回羽根を設けた部位の管内径の領域内へ突出しない程度の高さとする。また、製作性の向上と排水能力の向上のため、各旋回羽根の平面形状を半弓状に形成し、その羽根面を上記管内壁に向かう方向にも傾斜する平面に形成される。上方の旋回羽根を設けた直筒状の上方部分の内径を、下方の旋回羽根を設けた直筒状の下方部分の内径とほぼ同径に形成し、上記中間部の内径を、下方の旋回羽根を設けた直筒状の下方部分の内径よりも約20%以下程度大きく形成することでスリム且つ高排水能力の継手が得られる。
【0012】
好ましい構成は、上下に縦管接続口を備え、中間部に横枝管が接続される枝管接続口を備えた排水用合流管継手であって、中間部よりも上方部分及び中間部よりも下方部分の管内径を直筒状に形成して各直筒部の管内壁に管内を流下する流体に旋回を与える旋回羽根を1枚ずつ傾斜状態で設け、該枝管接続口の開口部の両脇に位置した管内壁に該継手の長さ方向に延びる逆流防止板を突設したものにおいて、該上方部分の内径を下方部分の内径とほぼ同径に形成すると共に該中間部の内径を該下方部分の内径よりも約20%程度大きく形成し、各旋回羽根のすぐ上流側に管内壁を伝う流れが剥離しない程度に小さく傾斜した縮径部を夫々形成し、上方の旋回羽根の陰影範囲内に枝管接続口を位置させ、この陰影範囲に対して180度前後の略対称位置が陰影範囲になるように下方の旋回羽根を設け、上方及び下方の旋回羽根を平面形状が半弓状でその羽根面を管内壁に向けても傾斜させた構成であり、この構成とすることで本発明の目的が的確に達成できる。
【0013】
上記排水用合流管継手を、縦管接続口、縮径部及び上方の旋回羽根を備えた直筒状の上部継手部材と、枝管接続口を備え且つ上部継手部材の下端部が嵌入される大径部に形成された中間継手部材と、該中間継手部材の下端部の嵌入口、漏斗状の縮径部及び下方の旋回羽根を備えた直筒部並びに縦管接続口を有する下部継手部材とを組立てする構成とすることで小型で排水能力が大きくしかも製作性のよい継手が得られ、上記排水用合流管継手を合成樹脂により製作し、その外周を繊維混入モルタルで被覆することで耐火二層管継手とすることも可能である。上記枝管接続口の開口部を縦長の長円形に形成すると、同一水平面上に開口面積の大きい複数本の枝管接続口を設けることができるようになる。
【0014】
上記枝管を90°水平旋回した位置関係を有する2本の枝管で構成し、下方の旋回羽根の領域と対応した位置に、管内壁に沿った流れを下方の旋回羽根上へ誘導する誘導突条を突設することで、多くの排水を下方の旋回羽根に載せて旋回させることができ、継手内に空気コアを確立して排水能力を向上させることができる。該誘導突条は、下方の旋回羽根の陰影範囲の管内壁に沿った周方向の中央位置よりも排水の旋回方向と逆方向へ多少偏位した位置の管内壁に設けると、排水能力がより一層向上する。さらに、下方部分の旋回羽根が設けられる範囲の直筒部の内径をわずかに漏斗状に形成しておくことによっても、排水能力をより一層向上できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る継手は、上方の縦管接続口から流入した排水を上方の旋回羽根で旋回させ、枝管接続口を備えた中間部を通った後に下方の旋回羽根で再び旋回を与え、下方の縦管接続口から縦管へと排出するが、該中間部の内径を該枝管接続口の上部位置付近から下部位置付近までやや拡大した大径部に形成すると共に各旋回羽根のすぐ上流側に管内壁を伝う流れが剥離しない程度に小さく傾斜した縮径部が夫夫々形成されているので、上方の縦管接続口からの排水は、上方の縮径部により減速されて管壁に沿って流れると同時に上方の旋回羽根により集められそして旋回が与えられ、続く拡径された中間部においては旋回力のため多少外方へ拡がって下方の縮径部へと流下し、この縮径部により再び減速され管内壁を伝う流れとなって下方の旋回羽根に載り、旋回されて下方の縦管接続口から縦管内へ排出される。この場合、上方の縮径部で排水が減速されるので管壁を伝う排水が多くなり、これをそのまま上方の旋回羽根で旋回させることができるから排水の旋回効果が高まって空気コアが形成され、管内圧力の変動が防止される。また、中間部は、枝管接続口からの排水が合流したときの管内閉塞防止に備えて上方部分よりも多少拡大されており、そのため旋回された排水は旋回力で拡散し、中間部の管壁を伝って流下することになるが、下方の縮径部がその流れを減速して直筒状の下方部分の管内壁に流れを伝わせ、下方の旋回羽根において再び旋回が与えられて下方の縦管接続口から縦管へ排出され、下方の管内にも排水旋回による空気コアが形成される。
【0016】
横枝管から流入した排水はやや拡大した中間部の管内壁に沿って拡がり、排水が管中央部へこぼれ落ちない程度の小さな傾斜の縮径部により減速されて下方の旋回羽根に誘導され、そのため狭幅な旋回羽根でも効率よく管壁に沿った旋回流を生じさせることができ、換言すれば横枝管からの排水を旋回させて管内に排水能力を向上させるための空気コアが確立できる。また、継手管内を流下していく排水は、まず上方の旋回羽根で旋回力が与えられ、その旋回状態を乱さない程度の緩やかな傾斜角度の縮径部を介することで排水速度が減速され、減速されているため下方の旋回羽根で旋回力を有効に付加することができ、その結果、高い旋回力により良好な空気コアが形成され、管内の圧力変動が減少して排水能力がアップする。
【0017】
更に、上方の旋回羽根の陰影範囲内に枝管接続口を位置させてあるので、枝管接続口が複数である場合でも、縦管からの旋回した排水と横枝管からの排水が同時に流入する合流状態のとき、その旋回羽根の受水面に上流側直下に位置した横枝管から流入する排水に対してはその枝管接続口径のほぼ半分以下の程度でしか縦管の排水が干渉せず、該受水面の下流側直下に位置した横枝管から流入する排水に対しては縦管の排水が衝突しない。そのため、横枝管からの排水が縦管からの排水の旋回を破壊することなくスムースに合流し、旋回力の強さが維持されて管中央に空気コアが確立するので高い排水能力が発揮される。枝管接続口が1個の場合は、旋回羽根により十分に縦管排水と横枝管排水の衝突を避けることができ、排水能力が良好になる。
【0018】
下方の旋回羽根は、上方の旋回羽根の陰影範囲と180度対称位置が陰影範囲になるように設けられおり、上方の旋回羽根で旋回されて流下する縦管排水の多くを受けると共に枝管接続口の反対側に位置するので管内を横断したのち対向面の内壁に沿って流下する横枝管からの排水の多くを受けることができ、下方の旋回羽根で排水の多くに旋回力を与えて排水能力を向上させることができる。
【0019】
管内には枝管接続口の両脇の位置に該排水用合流管継手の長さ方向に延びる逆流防止板が突設されているので、横枝管からの排水が枝管接続口の反対側の管内壁に衝突して隣接する他の枝管接続口内へ逆流することを防止できるが、この逆流防止板の高さを上方の旋回羽根を設けた部位の管内径の領域内へ突出しない程度の高さとして管内の旋回流の範囲にまで突出しないようにしたので、旋回流の破壊が防止され、排水能力が向上する。また、上下の旋回羽根を半弓状でその羽根面を管内壁に向けて傾斜させることで、排水を管内壁に沿わせて大きく旋回させることができる。
【0020】
本発明の構成によれば上記のように管継手の管径を小さくしてスリム化して排水能力を向上させることが可能になり、管継手外部には枝管接続口以外の突出部がないから、管継手を埋設するために床スラブに形成する貫通孔も小さくすることができ、配管施工が容易になり、旋回羽根が上方部分と下方部分に夫々1枚ずつ設ける構成であるから製作性も良く、管継手全体が小型で軽量化でき、搬送も便利で安価に製作できる。
【0021】
本発明の管継手を、縦管接続口、縮径部及び上方の旋回羽根を備えた直筒状の上部継手部材と、枝管接続口を備え且つ上部継手部材の下端部が嵌入される大径部に形成された中間継手部材と、該中間継手部材の下端部の嵌入口、漏斗状の縮径部及び下方の旋回羽根を備えた直筒部並びに縦管接続口を有する下部継手部材とで構成し、これらを組立てすることで管継手が構成されるようにすることで、製作が一層容易になる。
【0022】
横枝管を90°水平旋回した位置関係を有する2本の横枝管で構成し、下方の旋回羽根の領域と対応した位置に、管内壁に沿った流れを下方の旋回羽根上へ誘導する誘導突条を突設することで、多くの排水を下方の旋回羽根において旋回させることができるから、空気コアを生成が良好になり、排水能力がより一層向上する。また、下方部分の旋回羽根が設けられる範囲の直筒部の内径をわずかに漏斗状に形成しておくことによっても、空気コアの生成が良好になり、排水能力を更に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例の切断側面図
【図2】図1の2−2線部分の拡大切断平面図
【図3】横枝管が1つの場合の図2に対応した切断平面図
【図4】旋回羽根の羽根面の傾斜状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を、合成樹脂製の内管に繊維混入モルタルを被覆した耐火二層管形の排水用合流管継手に適用した場合につき説明する。図1及び図2に於いて、符号1は上下に縦管2、2が接続される縦管接続口3、3を備え、その中間部6に2本の横枝管4、4が接続される枝管接続口5、5を備えた排水用合流管継手を示し、中間部6よりも上方部分7と下方部分8の管内径を略同径の直筒状に形成してその管内壁に半弓状の受水面を有する傾斜した旋回羽根9、10を1枚ずつ設けて管内を流下する流体に旋回を与えるようにした。こうした構成は従来の排水用合流管継手も備えるところであるが、本発明のものでは、該中間部6の内径を該枝管接続口5の上部位置付近から下部位置付近までやや拡大した大径部に形成すると共に各旋回羽根9、10のすぐ上流側に排水を減速させる小さく傾斜した短い縮径部11を形成した。この縮径部11は管内壁を伝う流れが内壁から剥離することを抑制するように作用する。また、上方の旋回羽根9の半弓状の陰影範囲内に枝管接続口5、5を位置させ、この陰影範囲と180度対称位置が陰影範囲になるように下方の旋回羽根10を設けるようにした。更に該枝管接続口5の開口部の両脇に位置した管内壁15には、該管継手の長さ方向に延びる逆流防止板13を突設した。この逆流防止板13は、排水が互いに干渉して排水のない横枝管4へ逆流することを防止する作用を営む。
【0025】
複数の枝管接続口5を設ける場合は、図2に示したように、各枝管接続口の軸心12を合流管継手1の中心軸に対して90度旋回した位置関係になるように設けることが好ましく、これによって横枝管4から流入する排水同士の干渉が緩和される。
【0026】
上下に設けた各旋回羽根9、10の平面形状は半弓状であり、その羽根面14は例えば左旋回流を生じるように一端から他端へ向けて傾き、更に図4に示すように管内壁15に向けても水平から約10度程度の傾角17を有する平面の受水面16に形成し、受水した縦管排水を管内壁15に沿わせて旋回流に確実に変換できるようにした。
【0027】
該逆流防止板13の突端は、上方の旋回羽根9を設けた部位の管内径の投影面の領域を犯さない程度に突出しており、この構成とすることにより管内壁15に沿って旋回する縦管排水を妨げずに一方の横枝管4からの枝管排水が他方の横枝管4に逆流することを防止することができる。
【0028】
上記上方部分7の内径寸法と下方部分8の内径寸法をほぼ同径に形成しておくことで、横枝管4から流入した排水が内壁を伝うようになり空気コアの形成が確実になる。また、中間部6の内径を、下方の旋回羽根10を設けた直筒状の下方部分8の内径よりも約20%以下程度大きく形成しておくことでも同様に横枝管4から排水が流入するときの空気コアの形成が確実になる。尚、下方部分8の旋回羽根10が設けられる範囲の内径を、わずかに、例えば4%程度縮径する漏斗状に形成しておくことで排水がより一層内壁を伝って流下し易くなり排水性能が向上する。
【0029】
本発明の排水用合流管継手1を、縦管接続口3と上方の旋回羽根9を備えた直筒状の上部継手部材18と、枝管接続口5を備え且つ上部継手部材18の下端部が嵌入される大径部に形成された中間継手部材19と、該中間継手部材19の下端部が嵌入される漏斗状の縮径部11と下方の旋回羽根10を備えた直筒部及び縦管接続口3を有する下部継手部材20と、に分割すると製作が容易になる。そして、これらの部材を合成樹脂により成形し、これを組立てたのち外周に繊維混入モルタル21で被覆することで小型且つ高排水能力の耐火二層形の排水用集合管継手が得られる。符号22は上方の縦管接続口3に設けたゴムパッキンである。尚、枝管接続口5が中間部5内へ開口する開口部の形状を縦長の楕円形に形成すると、隣り合う枝管接続口5の管壁が接近せず、小さい口径の中間部6に複数本の比較的太い横枝管4を容易に取り付けできる。
【0030】
横枝管4として90°水平旋回した位置関係を有する2本の横枝管4を設けた場合、下方の旋回羽根10の領域と対応した位置に、管軸方向に延びる縦長の誘導突条24を突設することが好ましく、この誘導突条24により管内壁に沿った流れの多くが下方の旋回羽根10上へ誘導されるようになり、排水の旋回力が向上するため管内の圧力変動が小さくなって排水能力が向上する。この誘導突条24は、下方の旋回羽根の陰影範囲の管内壁に沿った周方向の中央位置よりも排水の旋回方向26と逆方向へ多少偏位25した位置の管内壁に設けるようにしてもよい。また、この誘導突条24は、その上端を図1に示したように、横枝管4の開口部中心よりも下方の位置に設けることが好ましく、誘導突条24の側面形状を同図に示すような板体により台形状に形成すると排水による衝撃が減少して振動が緩和されて誘導突条24の耐久性が増大する。
【0031】
図3に枝管接続口5が1つの場合の実施例を示した。この場合も逆流防止板13を枝管接続口5の開口部の両脇の位置に設けておくことで枝管排水が管内で拡散しにくくなり、旋回する縦管排水との衝突が減少して排水能力が向上する。
【0032】
図示実施例の作動を説明すると、上方の縦管接続口3から上層階からの排水が流入した場合、上方の旋回羽根9と下方の旋回羽根10で順次に旋回力が与えられ、管内には旋回を妨げる物がないので縮径部11にも余り衝突せずに効率よく管内壁に沿った旋回流となって下方の縦管接続口3から流出し、管内の中央部にはきれいな空気コアが形成されて管内の圧力変動が抑制できるので高い排水能力が発揮される。
【0033】
こうした排水中に1つの横枝管4からも枝管排水が流入してきた場合、枝管接続口5は上方の陰影範囲に設けられているので、その枝管接続口径のほぼ半分以下の程度での干渉或いは衝突しない状態になり、縦管からの排水の旋回を破壊することなく合流する。その結果、旋回力の強さが維持されて高い排水能力が発揮される。また、下方の旋回羽根10は、上方の旋回羽根9と対称位置に設けられているから、旋回されて流下する縦管排水のほかに管内を横断したのち対向面の内壁に沿って流下する横枝管4からの排水も受けて旋回力を与えることができ、合流時の排水能力が高められる。更に、逆流防止板13や誘導突条24が枝管排水の拡散防止と管内壁で反射する反射流を制限するので、管内壁に沿って下方へ枝管排水が誘導され、空気コアや旋回流の損傷が少なくなる。
【0034】
上下の直筒部の内径が100mm、中間部の内径が120mm、枝管接続口5、5の内径が77mm、全長が617mmに設計したものの排水能力を測定したところ、7.5リットル/秒であった。従来のものでは、この内径での排水能力は6.5リットル/秒であったので、大幅に性能が向上し、排水能力から見て大きくスリム化している。
【0035】
以上の説明において、合成樹脂製の継手1を繊維混入モルタル21で被覆したものについて説明したが、これに限らず継手1を鋳物等の金属製としても上記と同様の作用効果が得られる。また、縦管接続口3や枝管接続口5を受け口形の構成としたが、これらを雄形の接続口で構成しても良い。さらに、枝管接続口5にもゴムパッキンを装着しておくことが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 排水用合流管継手、3 縦管接続口、5 枝管接続口、6 中間部、7 上方部分、8 下方部分、9・10 旋回羽根、11 縮径部、12 軸心、13 逆流防止板、14 羽根面、15 管内壁、17 傾角、18 上部継手部材、19 中間部継手部材、20 下部継手部材、21 繊維混入モルタル、24 誘導突条、25 偏位、26 旋回方向、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に縦管接続口を備え、中間部に横枝管が接続される枝管接続口を備えた排水用合流管継手であって、中間部よりも上方部分及び中間部よりも下方部分の管内径を直筒状に形成して各直筒部の管内壁に管内を流下する流体に旋回を与える旋回羽根を1枚ずつ傾斜状態で設けたものにおいて、該中間部の内径を該枝管接続口の上部位置付近から下部位置付近までやや拡大した大径部に形成すると共に各旋回羽根のすぐ上流側に管内壁を伝う流れが剥離しない程度に小さく傾斜した縮径部を夫々形成し、上方の旋回羽根の陰影範囲内に枝管接続口を位置させ、この陰影範囲に対して180度前後の略対称位置が陰影範囲になるように下方の旋回羽根を設けたことを特徴とする排水用合流管継手。
【請求項2】
上記排水用合流管継手の中心軸に対して90度水平旋回した位置関係で複数の枝管接続口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の排水用合流管継手。
【請求項3】
上記枝管接続口の開口部の両脇に位置した管内壁に、該継手の長さ方向に延びる逆流防止板を突設したことを特徴とする請求項1に記載の排水用合流管継手。
【請求項4】
上記逆流防止板の管内壁から継手軸心方向への突出高さは、上記上方の旋回羽根を設けた部位の管内径の領域内へ突出しない程度の高さであることを特徴とする請求項3に記載の排水用合流管継手。
【請求項5】
上記各旋回羽根の平面形状は半弓状であり、その羽根面は上記管内壁に向かう方向にも傾斜した平面に形成したことを特徴とする請求項1に記載の排水用合流管継手。
【請求項6】
上記上方の旋回羽根を設けた直筒状の上方部分の内径を、下方の旋回羽根を設けた直筒状の下方部分の内径とほぼ同径に形成したことを特徴とする請求項1に記載の排水用合流管継手。
【請求項7】
上記中間部の内径を、下方の旋回羽根を設けた直筒状の下方部分の内径よりも約20%以下程度大きく形成したことを特徴とする請求項1に記載の排水用合流管継手。
【請求項8】
上下に縦管接続口を備え、中間部に横枝管が接続される枝管接続口を備えた排水用合流管継手であって、中間部よりも上方部分及び中間部よりも下方部分の管内径を直筒状に形成して各直筒部の管内壁に管内を流下する流体に旋回を与える旋回羽根を1枚ずつ傾斜状態で設け、該枝管接続口の開口部の両脇に位置した管内壁に該継手の長さ方向に延びる逆流防止板を突設したものにおいて、該上方部分の内径を下方部分の内径とほぼ同径に形成すると共に該中間部の内径を該下方部分の内径よりも約20%程度大きく形成し、各旋回羽根のすぐ上流側に管内壁を伝う流れが剥離しない程度に小さく傾斜した縮径部を夫々形成し、上方の旋回羽根の陰影範囲内に枝管接続口を位置させ、この陰影範囲に対して180度前後の略対称位置が陰影範囲になるように下方の旋回羽根を設け、上方及び下方の旋回羽根を平面形状が半弓状でその羽根面を管内壁に向けても傾斜させたことを特徴とする排水用合流管継手。
【請求項9】
上記排水用合流管継手を、縦管接続口、縮径部及び上方の旋回羽根を備えた直筒状の上部継手部材と、枝管接続口を備え且つ上部継手部材の下端部が嵌入される大径部に形成された中間継手部材と、該中間継手部材の下端部の嵌入口、漏斗状の縮径部及び下方の旋回羽根を備えた直筒部並びに縦管接続口を有する下部継手部材とを組立てする構成としたことを特徴とする請求項1又は8に記載の排水用合流管継手。
【請求項10】
上記排水用合流管継手を合成樹脂により製作し、その外周を繊維混入モルタルで被覆したことを特徴とする請求項1又は8に記載の排水用合流管継手。
【請求項11】
上記枝管接続口の開口部を縦長の長円形に形成したことを特徴とする請求項2に記載の排水用合流管継手。
【請求項12】
上記横枝管を90°水平旋回した位置関係を有する2本の横枝管で構成し、下方の旋回羽根の領域と対応した位置に、管内壁に沿った流れを下方の旋回羽根上へ誘導する誘導突条を突設したことを特徴とする請求項1又は8に記載の排水用合流管継手。
【請求項13】
上記誘導突条は、下方の旋回羽根の陰影範囲の管内壁に沿った周方向の中央位置よりも排水の旋回方向とは逆方向へ多少偏位した位置の管内壁に設けたことを特徴とする請求項12に記載の排水用合流管継手。
【請求項14】
上記下方部分の旋回羽根が設けられる範囲の直筒部の内径を、わずかに漏斗状に形成したことを特徴とする請求項1又は8に記載の排水用合流管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−117133(P2011−117133A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273239(P2009−273239)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(595025224)フネンアクロス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】