説明

排水竪管の支持構造

【課題】スラブ下面に対する排水竪管の固定を容易に行うことができて作業性が良く、安価にて製造できる簡素な構成の排水竪管の支持構造を提供する。
【解決手段】排水竪管2を両側から挟み込む一対の支持体3,3と、この支持体3,3によって排水竪管2を挟み込んだ状態で両支持体3,3に係合し前記挟み込み状態を保持するクリップ4と、スラブ5下面に垂下するように取付けられ下部が前記支持体3に連結される略棒状の吊し具6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水竪管をスラブ下面に対して吊すように支持し、その堅牢性を高めることができる排水竪管の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄筋コンクリートの建築物では、スラブに開設した貫通孔を通して排水竪管を配置する。このとき、排水竪管を両側から挟み込むように支持する支持体を用いる。特許文献1(特開2001−348926号公報)には、支持体(支持バンド)によって直接排水管を支持した場合にも、排水時の騒音が容易にスラブ面に伝達することがないように、支持バンドに振動吸収性と耐火性を併せ持った素材で形成した防振材を介装する排水管支持バンド用の防振材が記載されている。
【特許文献1】特開2001−348926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1に記載の排水管支持バンドは、これによって配管を挟み込むために両端にターンバックル下端に連結された羽子板部を挟み込んだ状態で、複数箇所をボルトとナットによって締付ける必要があった。このため、排水竪管に支持バンドを巻き付けた状態で締付ける作業に手間や作業時間を必要としていた。また、スラブ下面の作業性の悪い環境では、ボルトとナットによる締め付けには無理な姿勢による長時間の作業を必要とするという問題もある。
【0004】
加えて、スラブに対する排水竪管の位置が幾らかずれることがあり、予めスラブ下面に連結された吊りボルトと排水竪管に取り付けられる排水管支持バンドの水平方向の位置がずれることがあり、この位置ずれによって取付けが困難になることがあった。
【0005】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであって、その目的は、スラブ下面に対する排水竪管の固定を容易に行うことができて作業性が良く、安価にて製造できる簡素な構成の排水竪管の支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、排水竪管を両側から挟み込む一対の支持体と、この支持体によって排水竪管を挟み込んだ状態で両支持体に係合し前記挟み込み状態を保持するクリップと、スラブ下面に垂下するように取付けられ下部が前記支持体に連結される略棒状の吊し具とを備えることを特徴とする排水竪管の支持構造を提供する。(請求項1)
【0007】
前記排水竪管の支持構造では、両支持体によって排水竪管を挟み込んだ状態でクリップを支持体に取り付けることにより、支持体による挟み込み状態を保持することができるので、支持体を排水竪管に位置ずれすることがないように取り付けることができる。また、支持体はスラブ下面に垂下するように取付けられる吊し具に連結されるので、排水竪管をスラブ下面の所定位置に固定することができる。
【0008】
前記支持体は排水竪管の外周面の半周に当接する半円形状の当接部とこの当接部の両端に延設する平板部とを備え、この平板部に前記吊し具を連結するための連結部を形成することが好ましい。また、支持体は耐腐食性に優れた金属によって形成することが好ましく、例えばステンレスなどの耐腐食性およびおよび剛性に優れた合金からなる。また、排水
竪管との当接部は弾性を備える樹脂からなる緩衝面を備えることが好ましい。
【0009】
前記クリップは支持体と同じあるいは支持体より高い剛性を有する金属からなる板状体を断面略Π字形状に湾曲させたものであり、これを支持体に係合させることにより両支持体を密着させることができるものであることが好ましい。
【0010】
前記吊し具はその上端がスラブ下面の適所に埋設させたインサート金物(埋設雌ねじ部)に螺合連結されるものであり、吊し具によって吊す支持体の高さ位置を調節するためのバックルを備えることが好ましい。
【0011】
前記両支持体はその一端側においてこれらを開閉自在に連結するヒンジ部と、他端側において前記クリップを係合するクリップ係合部とを備える場合(請求項2)には、一つのクリップをクリップ係合部に係合させることによって支持体を挟み込み状態に保持することができるので、この支持体を用いた排水竪管の支持をさらに容易に行うことができる。また、両支持部はヒンジ部によって連結されているので、これらが分離している場合に比べて管理が容易となる。
【0012】
前記両支持体によって排水竪管を挟み込んだ状態で、両支持体の間に前記吊し具を角度を変えて挟み込むことができる長孔が形成される湾曲部を備え、前記吊し具は長孔より大きなフランジ部を有する場合(請求項3)には、吊し具と支持体の連結部が長孔であり、斜め方向に連結する自由度がある。また、フランジ部が長孔よりも大きいので、支持体と吊し具の連結状態は安定する。
【0013】
前記吊し具はスラブ下面に埋設させた雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を備え、支持体と連結する直前に屈曲させた吊りボルトである場合(請求項4)には、吊し具を屈曲させることにより支持体と吊し具が連結した後の螺合部の緩み止めを行う。
【発明の効果】
【0014】
上記構成の排水竪管の支持構造によれば、排水竪管をその両側から挟み込むように支持体を配置し、これらの支持体にクリップを挟み込むことにより、クリップを用いた挟み込みといった極めて簡単な操作によって、支持体を排水竪管の所定位置に固定することができる。このとき同時に吊し具も係合させて支持体の位置を固定することができる。
【0015】
また、支持体の一端側にヒンジ部、他端側にクリップ係合部を備える場合には、クリップ係合部に一つのクリップを係合させるだけの簡単な作業によって、支持体による挟み込み状態を保持できるので、作業性がさらに良い。両支持部はヒンジ部によって連結されているので、部品点数が少なくなり、それだけ管理が容易となる。
【0016】
支持体に長孔が形成される場合には、吊し具と支持体の連結状態に長孔による自由度があり、吊し具と排水竪管の位置ずれに容易に対応することができる。また、長孔は両支持体による挟み込みによって吊し具を挟み込むことができ、フランジ部が長孔よりも大きいので、支持体と吊し具の連結状態を安定させることができる。
【0017】
吊し具が螺合連結する吊りボルトであり、支持体と連結する直前に屈曲させたものである場合には、支持体と吊し具を連結した後は螺合部の緩み止めを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1,2は本発明の第1実施形態にかかる排水竪管の支持構造1の構成を示し、図1は排水竪管の支持構造1の組付状態を示す全体構成図、図2は排水竪管の支持構造1の要部構成を示す図である。
【0019】
図1において、2は排水を流す排水竪管、3はこの排水竪管2を両側から挟み込む一対の支持体、4はこの支持体3によって排水竪管2を挟み込んだ状態で両支持体3に係合し前記挟み込み状態を保持するクリップ、5は排水竪管の支持構造1を取り付けるスラブ、6はスラブ5の下面に垂下するように取付けられ下部が前記支持体3に連結される略棒状の吊し具である。
【0020】
前記排水竪管2は排水横枝管2aと連通連結される継ぎ手2bを備える上部排水竪管2cと、この上部排水竪管2cの下端部に連通連結される下部排水竪管2dを備える。また、下部排水竪管2dの上端部には上部排水竪管2cの下端部を挿入できる拡径部2eを形成している。
【0021】
図2に示すように、前記支持体3は排水竪管2の外周面の半周に当接する半円形状の当接部3aとこの当接部3aの両端に延設する平板部3b,3cとを備え、この平板部3b,3cに前記吊し具6を連結するための連結部3d,3eを形成している。また、支持体3は耐腐食性に優れ機械的強度のあるステンレスなどの金属によって形成する。なお、10は排水竪管2との当接部に取り付けられ、弾性を備えた樹脂からなる一対の緩衝材であり、この緩衝材10によって排水竪管との当接部に緩衝面を形成する。
【0022】
さらに、前記支持体3,3はその一端側においてこれらを開閉自在に連結するヒンジ部3fと、他端側において前記クリップ4を係合するクリップ係合部3gとを備え、かつ、これらの支持体3,3によって排水竪管2を挟み込んだ状態で、両支持体3,3の間に前記吊し具6を角度を変えて挟み込むことができるように前記連結部3d,3eの形状が長孔となるように湾曲させた湾曲部3h,3iを備える。
【0023】
前記クリップ4は弾性を備えた金属から成る略帯状の金属を屈曲させて形成したものであり、前記支持体3,3を閉じた状態における前記クリップ係合部3gの間隔d1よりも狭い間隔d2の開口4aを備え、縦断面略Π字形状に湾曲させたものであり、係合状態において支持体3,3を挟み込み方向に押付ける力を加えられる形状である。また、前記開口4aには先広がりのガイド部4b,4cを形成している。
【0024】
前記スラブ5は前記排水竪管2を貫通し排水竪管2よりも大径の貫通孔5aを形成しており、この貫通孔5aの周囲の互いに対向する位置に一対のインサート金物11を埋設させて前記吊し具6を螺合連結可能に構成された埋設雌ねじ部6aを形成している。また、12は前記貫通孔5a内に排水竪管2を貫通させた状態で貫通孔5aと貫通排水管2の間を埋めるモルタルである。
【0025】
本実施形態の吊し具6は例えばその全長に雄ねじが形成された棒状のボルトであり、その上端部に形成した雄ねじ部6bが前記埋設雌ねじ部6aに螺合連結される。また、吊し具6の下端部にはワッシャ6cおよびナット6dを備え、吊し具6はこのワッシャ6cとナット6dによって下端部分に前記長孔3e,3Fより大きなフランジ部を有する。なお、フランジ部を形成するナット6dのさらに下においてナット6dの回り止めを行って吊り具6に螺合連結される緩め止めナット(図外)を備えることが好ましい。
【0026】
以下、前記構成の排水竪管の支持構造を用いて、排水竪管2の位置を固定する作業工程を説明する。
【0027】
スラブ5に開設された貫通孔5a内に排水竪管2を配置し、排水竪管2と貫通孔5aの隙間にモルタル12を充填させた状態で、前記一対の雌ねじ部6aに一対の吊し具6を螺合連結し、これらの吊し具6,6を、その下端部分の位置が排水竪管2の位置に合わせて
配置されるように、内側に折り曲げる。
【0028】
次いで、屈曲させた吊し具6の下端部を前記連結部3d,3eによって挟み込むと同時に、排水竪管2を湾曲部3によって挟み込むようにし、前記クリップ係合部3gにクリップ4を係合させる。つまり、クリップ係合部3gにクリップ4を係合させるだけの簡単な作業によって吊し具6と支持部3の連結および、支持部3による排水竪管2の挟み込みの両方を一度に行うことができるので、作業効率がよい。また、クリップ4の開口部の間隔d2が前記クリップ係合部3gの間隔d1よりも狭いので、クリップ4によって支持体3を挟み込み方向に付勢することができる。
【0029】
同時に、このとき前記吊し具6が内側に屈曲するので設置後に雌ねじ部6aに対して吊し具6,6が回転することがなく、取付け状態を安定させることができる。また、本実施形態の排水竪管の支持構造1では、吊し具6はその全長に雄ねじが形成された棒状のボルトであるから、吊し具6の下端部からワッシャ6cとナット6dを取り付けることにより、これらの部材6c,6dによって形成されるフランジ部の位置を調節することができ、これによって、支持体3の高さ位置を安定させることができる。
【0030】
なお、ワッシャ6cとナット6dの取付けは支持体3によって排水竪管2を挟み込んだ後に行って、支持体3の高さ位置を前記拡径部2eの直下の位置になるように微調整することができるが、先にワッシャ6cとナット6dを取り付けた後に、支持体3によって排水竪管2を挟み込むようにしてもよい。
【0031】
また、吊し具6は前記長孔に形成された連結部3d,3eに狭持されるものであるから、取付け角度が斜めになっても連結することができるので、自由度がある。したがって、吊し具6の位置と排水竪管2の位置がずれている場合にも排水竪管2をスラブ下面に取り付けることができる。
【0032】
図3は第2実施形態の排水竪管の支持構造1Aの構成を示す図である。図3に示すように、吊し具6’はその下端部に予めフランジ部6eを形成したものであってもよい。この場合、吊し具6’は前記雌ねじ部6aに螺合連結する部分だけ雄ねじ6bを形成したものであればよい。その他の構成については、第1実施形態と同じであるから同じ符号を付すことにより、重複説明を避ける。
【0033】
また、上述した各実施形態では支持体3の一端部にヒンジ部3fを設けたことにより、支持体3の他端部の一箇所に形成されたクリップ係合部3gに一本のクリップ4を取り付けるだけで支持体3による排水竪管2の挟み込みを行うことができるが、支持体3はその一端側においてもクリップ係合部を形成し、当接部3aを挟む両端側においてそれぞれクリップ4を係合するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる排水竪管の支持構造の全体を示す図である。
【図2】前記排水竪管の支持構造の要部構成を示す図である。
【図3】第2実施形態にかかる排水竪管の支持構造を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1,1A 排水竪管の支持構造
2 排水竪管
3 支持体
3f ヒンジ部
3g クリップ係合部
3d,3e 長孔
3h,3i 湾曲部
4 クリップ
5 スラブ
6,6’ 吊し具
6a 雌ねじ部
6b 雄ねじ部
6c〜6e フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水竪管を両側から挟み込む一対の支持体と、この支持体によって排水竪管を挟み込んだ状態で両支持体に係合し前記挟み込み状態を保持するクリップと、スラブ下面に垂下するように取付けられ下部が前記支持体に連結される略棒状の吊し具とを備えることを特徴とする排水竪管の支持構造。
【請求項2】
前記両支持体はその一端側においてこれらを開閉自在に連結するヒンジ部と、他端側において前記クリップを係合するクリップ係合部とを備える請求項1に記載の排水竪管の支持構造。
【請求項3】
前記両支持体によって排水竪管を挟み込んだ状態で、両支持体の間に前記吊し具を角度を変えて挟み込むことができる長孔が形成される湾曲部を備え、前記吊し具は長孔より大きなフランジ部を有する請求項1または請求項2に記載の排水竪管の支持構造。
【請求項4】
前記吊し具はスラブ下面に埋設させた雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を備え、支持体と連結する直前に屈曲させた吊りボルトである請求項1〜請求項3の何れかに記載の排水竪管の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−84498(P2010−84498A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258062(P2008−258062)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【Fターム(参考)】