排水管継手
【課題】本発明は、簡易、かつ信頼性の高い構成で、排水管継手に対する排水立て管の脱落防止を図れるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る排水管継手の下端接続部30は、受け口31と、受け口フランジ部32と、押圧フランジ34と、シール材40とを備えており、シール材40は、同軸の状態で軸方向に重ねられた係止リング41とシール本体部43とから構成されて、係止リング41が排水立て管2の上端挿し口2uの外周面に面接触する内周面41eを備え、その排水立て管2と同じ種類の樹脂で形成されて、上端挿し口2uの外周面に接着可能な構成であり、シール本体部43が受け口31の開口周縁に面接触して、その受け口31と排水立て管2の上端挿し口2u間をシール可能に構成されている。
【解決手段】本発明に係る排水管継手の下端接続部30は、受け口31と、受け口フランジ部32と、押圧フランジ34と、シール材40とを備えており、シール材40は、同軸の状態で軸方向に重ねられた係止リング41とシール本体部43とから構成されて、係止リング41が排水立て管2の上端挿し口2uの外周面に面接触する内周面41eを備え、その排水立て管2と同じ種類の樹脂で形成されて、上端挿し口2uの外周面に接着可能な構成であり、シール本体部43が受け口31の開口周縁に面接触して、その受け口31と排水立て管2の上端挿し口2u間をシール可能に構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅の上階に設けられた樹脂製の排水立て管、排水横枝管を下階に設けられた樹脂製の排水立て管に接続するための金属性継手であり、胴部が上階と下階とを仕切るコンクリートスラブを貫通して設置され、前記胴部下端に設けられた下端接続部に前記下階の排水立て管の上端挿し口が挿入接続される構成の排水管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した排水管継手に関連する技術が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載された排水管継手は、火災等に対する延焼防止機能を備えた排水管継手である。前記排水管継手100は、金属製で、図14(A)に示すように、集合住宅の上階に設けられた排水立て管(図示省略)、排水横枝管(図示省略)を下階に設けられた排水立て管101に接続できるように構成されている。排水管継手100は、胴部110が上階と下階とを仕切るコンクリートスラブCSを貫通して設置されており、その胴部110の下端に下階の排水立て管101の上端挿し口101uが挿入接続される下端接続部120が設けられている。
排水管継手100の下端接続部120は、図14(B)に示すように、排水立て管101の上端挿し口101uが挿入される受け口122と、その受け口122の開口周縁に形成された受け口フランジ部122fと、排水立て管101の上端挿し口101uが通される環体で、受け口フランジ部122fに対して同軸に連結される押圧フランジ123と、同じく上端挿し口101uが通された状態で、受け口フランジ部122fと押圧フランジ123間に挟まれるゴム製のシール材125とから構成されている。このため、受け口フランジ部122fに対して押圧フランジ123がボルト締めされることで、ゴム製のシール材125が軸方向両側から押圧されて、半径方向内側に弾性変形し、排水管継手100の下端接続部120の受け口122と排水立て管101の上端挿し口101u間がシールされる。
【0003】
さらに、排水管継手100の下端接続部120の押圧フランジ123には、その押圧フランジ123に通された排水立て管101の上端挿し口101uを半径方向外側から締め付けて脱落防止を図る立て管脱落防止バネ127が取付けられている。
また、前記排水立て管101には、耐火熱膨張性樹脂組成物(ポリ塩化ビニル系樹脂、熱膨張性黒鉛等)からなる耐火樹脂管が使用されている。
上記構成により、例えば、下階で火災が発生すると、火災の熱で排水立て管101が軟化するともにその排水立て管101の熱膨張性黒鉛が膨張して管路を閉塞する。そして、このときに、立て管落下防止バネ127が軟化した排水立て管101に食い込むことで、排水管継手100に対する排水立て管101の脱落防止が図られる。ここで、排水管継手100は金属製であり、その排水管継手100に接続された排水立て管101が膨張して管路を閉塞するため、下階と上階とをつなぐ排水経路が遮断され、下階の火災で発生した炎や有毒ガスが上階に侵入し難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−257572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した排水管継手100は、下端接続部120の押圧フランジ123に設けられた立て管脱落防止バネ127で火災時に排水立て管100の脱落を防止する構成である。このため、排水管継手100の下端接続部120の構成が複雑になるという問題がある。
また、立て管脱落防止バネ127の劣化により、バネ力が経時的に低下して、立て管脱落防止バネ127が火災時に軟化した排水立て管100に十分に食い込まないことも考えられる。このため、火災時に排水立て管101が排水管継手100から脱落するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、簡易、かつ信頼性の高い構成で、排水管継手に対する排水立て管の脱落防止を図れるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、集合住宅の上階に設けられた樹脂製の排水立て管、排水横枝管を下階に設けられた樹脂製の排水立て管に接続するための金属製継手であり、胴部が上階と下階とを仕切るコンクリートスラブを貫通して設置され、前記胴部下端に設けられた下端接続部の受け口に前記下階の排水立て管の上端挿し口が挿入接続される構成の排水管継手であって、前記下端接続部は、前記受け口と、その受け口の開口周縁に形成された受け口フランジ部と、前記排水立て管の上端挿し口が通される環体で、前記受け口フランジ部に対して同軸に連結される押圧フランジと、前記上端挿し口が通された状態で、前記受け口フランジ部と押圧フランジ間に挟まれる環状のシール材とを備えており、前記シール材は、同軸の状態で軸方向に重ねられた係止リングとシール本体部とから構成されて、前記係止リングが前記排水立て管の上端挿し口の外周面に面接触する内周面を備え、その排水立て管と同じ種類の樹脂で形成されて、前記上端挿し口の外周面に接着可能な構成であり、前記シール本体部が前記受け口の開口周縁に面接触して、その受け口と前記排水立て管の上端挿し口間をシール可能に構成されていることを特徴とする。
ここで、前記接着には、接着剤による接着の他、融着や溶着等も含むものとする。
【0008】
本発明によると、排水立て管の上端挿し口とシール材の係止リングとを接着する構成のため、排水立て管の上端挿し口とシール材の係止リングとが接着等により一体化される。ここで、シール材の係止リングは排水管継手の下端接続部の押圧フランジと受け口フランジ部とに挟持されるため、前記下階の排水立て管はシール材の係止リングを介して排水管継手の下端接続部に支持される。
このため、例えば、排水立て管が耐火熱膨張性樹脂組成物を備える耐火樹脂管である場合に、火災等の熱で下階の排水立て管が軟化、膨張して管路を閉塞したときに、その排水立て管が排水管継手の下端接続部から脱落することがなくなる。これにより、下階と上階とをつなぐ排水経路が確実に遮断され、上階への延焼防止が図られるとともに、毒性ガスの流入を防止できるようになる。
また、シール材の一部である係止リングを排水立て管と同じ種類の樹脂により構成することで排水立て管の脱落防止を図れるため、脱落防止のための構成が簡単で経済的である。
【0009】
請求項2の発明によると、シール材の係止リングの外周面は、金属板によって覆われていることを特徴とする。
このため、係止リングを排水立て管と同じく耐火熱膨張性樹脂組成物を備える耐火樹脂で形成した場合に、その係止リングが金属板の働きで半径方向内側、即ち、管路を閉塞する方向に膨張し易くなる。
請求項3の発明によると、シール材の係止リングの軸方向端面には、前記排水立て管の上端挿し口を覆った状態で前記押圧フランジの開口部に通される薄肉円筒部が軸方向に突出するように形成されていることを特徴とする。
このため、係止リングと押圧フランジの軸線を合わせ易くなる。また、シール材の係止リングの内周面と排水立て管の上端受け口の外周面との接着面積を大きく取れるようになる。
請求項4の発明によると、押圧フランジには、シール材の係止リングの外周面を囲む円筒壁部が軸方向に突出するように形成されていることを特徴とする。
このため、係止リングを排水立て管と同じく耐火熱膨張性樹脂組成物を備える耐火樹脂で形成した場合に、その係止リングが押圧フランジの円筒壁部の働きで半径方向内側、即ち、管路を閉塞する方向に膨張し易くなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、簡易、かつ信頼性の高い構成で、排水管継手に対する排水立て管の脱落防止を図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る排水管継手の配管状態を表す側面図である。
【図2】排水管継手の下端接続部と排水立て管との接続状態を表す縦断面図(図1のII矢視拡大縦断面図)である。
【図3】排水管継手の下端接続部の縦断面図である。
【図4】排水管継手の下端接続部のシール材等を表す縦断面図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る排水管継手の下端接続部と排水立て管との接続状態を表す縦断面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る排水管継手の下端接続部の縦断面図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る排水管継手の下端接続部のシール材を表す縦断面図である。
【図8】前記シール材の変更例を表す縦断面図である。
【図9】前記シール材の変更例を表す縦断面図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る排水管継手の下端接続部と排水立て管との接続状態を表す分解縦断面図である。
【図11】本発明の実施形態3に係る排水管継手の下端接続部の縦断面図である。
【図12】本発明の実施形態3に係る排水管継手の下端接続部のシール材を表す縦断面図である。
【図13】本発明の実施形態3に係る排水管継手の下端接続部の押圧フランジを表す縦断面図(A図)、平面図(B)である。
【図14】従来の排水管継手の配管状態を表す側面図(A図)、排水管継手の下端接続部の拡大縦断面図(B図)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[実施形態1]
以下、図1から図4に基づいて本発明の実施形態1に係る排水管継手の説明を行なう。本実施形態の排水管継手は、集合住宅の排水設備に使用される金属性の排水管継手であり、耐火樹脂製の排水立て管と共に使用されることで火災等に対する延焼防止を図れるように構成されている。
<排水設備の概要について>
排水設備1は、図1に示すように、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブCSの貫通孔CHに通された状態で各階に設置されている排水管継手10と、集合住宅の高さ方向に配管される排水立て管2と、各階でコンクリートスラブCS上を横方向に配管される排水横枝管4とから構成されている。前記排水設備1は、下階の排水管継手10(図示省略)の上部受け口22に排水立て管2の下端挿し口(図示省略)を挿入接続し、さらにその排水立て管2の上端挿し口2uを上階の排水管継手10の下端接続部30に挿入接続するように、下から上に順番に積み上げるように施工する。なお、コンクリートスラブCSの貫通孔CHは、排水管継手10が通された後、モルタルMにより埋め戻されて、火災時の延焼防止が図られている。
前記排水設備1では、排水管継手10に金属製(例えば、鋳鉄製)の継手が使用され、排水立て管2には耐火樹脂製の排水立て管が使用される。即ち、排水立て管2は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂に所定の割合で熱膨張性黒鉛を混合させた耐火熱膨張性樹脂組成物から構成されており、燃え難く、かつ火災時の熱で軟化、膨張して管路を閉塞できるように構成されている。
【0013】
<排水管継手10について>
本実施形態に係る排水管継手10は、図1に示すように、上階の排水立て管2、汚水用の第1排水横枝管4及び雑排水用の第2排水横枝管(図示省略)を下階の排水立て管2に接続する管継手であり、前述のように、コンクリートスラブCSの貫通孔CHに通される円筒状の胴部11を備えている。
排水管継手10の胴部11の上端部には、上階の排水立て管2の下端挿し口(図示省略)が挿入接続される上部受け口22が形成されている。上部受け口22の内側には、排水立て管2の下端挿し口と上部受け口22間を水密な状態でシールする略筒状のシール材(図示省略)が嵌め込まれている。また、胴部11の側面には、その胴部11の軸心に対してほぼ直角に汚水用の第1排水横枝管4が挿入接続される第1横枝管受け口24と、雑排水用の第2排水横枝管(図示省略)が挿入接続される第2横枝管受け口25とが形成されている。なお、第1、第2横枝管受け口24,25の内側にも前記シール材が嵌め込まれている。
排水管継手10の胴部11の下部には、排水立て管2と等しい径寸法で形成された下部直管11xが形成されており、その下部直管11xの下端に下階の排水立て管2の上端挿し口2uが挿入接続される下端接続部30が設けられている。
【0014】
<排水管継手10の下端接続部30について>
排水管継手10の下端接続部30は、その排水管継手10と下階の排水立て管2とを水密な状態で接続するとともに、火災時に前記下階の排水立て管2がその排水管継手10から脱落しないように保持する機能を備えている。
排水管継手10の下端接続部30は、図2、図3に示すように、胴部11の下部直管11xの下端に形成されて、排水立て管2の上端挿し口2uが挿入される受け口31と、その受け口31の開口周縁に形成された受け口フランジ部32とを備えている。受け口フランジ32には、押圧フランジ34が円周方向三箇所でボルト&ナット33により連結されるように構成されている。押圧フランジ34は、環状に構成されており、その押圧フランジ34の中央開口34hに排水立て管2の上端挿し口2uが通されるようになっている。さらに、受け口フランジ部32と押圧フランジ34間には、排水立て管2の上端挿し口2uが通される環状のシール材40が同軸状態で挟持されている。
【0015】
シール材40は、同軸の状態で軸方向に重ねられた係止リング41とシール本体部43とから構成されている。
係止リング41は、排水立て管2の上端挿し口2uに接着剤によって接着される部材であり、前記排水立て管2と同じ種類の樹脂、即ち、耐火熱膨張性樹脂組成物により略円筒形に形成されている。係止リング41の内径寸法は、排水立て管2の上端挿し口2uの外径寸法とほぼ等しい値に設定されて、その係止リング41の内周面41eが上端挿し口2uの外周面2rと面接触が可能なように構成されている。そして、係止リング41の内周面41eと上端挿し口2uの外周面2rとが接着剤により接着されるようになっている。また、係止リング41の上端面41uは凸円錐面状に形成されており、その上端面41uにシール本体部43が重ねられるようになっている。さらに、係止リング41の外周面には、高さ方向(軸方向)の略中央位置に円周方向に延びる断面角形の突条41jがリング状に形成されている。そして、係止リング41の突条41jの部分が受け口フランジ部32と押圧フランジ34との隙間部分に配置されている。
また、係止リング41の下端面には、押圧フランジ34の中央開口34hに挿入されて、排水立て管2の上端挿し口2uを覆う薄肉円筒部41xが軸方向に突出するように形成されている。
【0016】
シール材40のシール本体部43は、排水管継手10における下端接続部30の受け口31の開口周縁31uと係止リング41の上端面41uとの間を水密な状態でシールする部材であり、ゴム製の環状体により構成されている。シール本体部43の下端面43dは、図4に示すように、係止リング41の凸円錐面状の上端面41uに面接触した状態で重ねられるように凹円錐面状に形成されており、シール本体部43の上端面43uは、図3に示すように、受け口31の開口周縁31uの形成に合わせて凸円錐面状に形成されている。さらに、シール本体部43の外径寸法は係止リング41の外径寸法と等しい値に設定されており、シール本体部43の内径寸法が係止リング41の内径寸法よりも若干大きい値に設定されている。
上記構成により、シール材40のシール本体部43は、係止リング41と同軸に保持された状態で、軸方向(上下方向)に重ねられるようになる。
【0017】
<排水管継手10の下端接続部30に対する排水立て管2の上端挿し口2uの接続について>
次に、上階の排水管継手10の下端接続部30に対する下階の排水立て管2の上端挿し口2uの接続手順について説明する。
先ず、前記排水管継手10の下端接続部30の挿入深さ寸法に合わせて、図4に示すように、前記排水立て管2の上端挿し口2uに呑込み代標線2sを表示する。次に、係止リング41とシール本体部43とが同軸に重ねられたシール材40を、図3に示すように、排水管継手10の下端接続部30の受け口フランジ部32と押圧フランジ34との間にセットし、周方向三箇所のボルト&ナット33を途中位置まで螺合した状態にする。この状態で、排水管継手10の下端接続部30の受け口31、受け口フランジ部32と、シール材40と、押圧フランジ34とが同軸に保持される。
次に、排水管継手10のシール材40における係止リング41の内周面41eと、下階の排水立て管2の上端挿し口2uの外周面2r(係止リング41に相当する位置)に接着剤を塗布する。そして、接着剤を塗布した後の下階の排水立て管2に対して、上階の排水管継手10を下降させながら、その排水管継手10の下端接続部30に排水立て管2の上端挿し口2uを挿入する。即ち、接着剤を塗布した後の排水立て管2の上端挿し口2uが下端接続部30の押圧フランジ34の中央開口34h、シール材40に通された後、受け口31に挿入される。このとき、上端挿し口2uの呑込み代標線2sが押圧フランジ34の位置に到達するまで挿入を行う。
次に、周方向三箇所のボルト&ナット33を均等に締め付けることで、図2に示すように、シール材40が受け口フランジ部32と押圧フランジ34とによって軸方向両側から押圧される。これにより、シール材40のシール本体部43によって受け口31の開口周縁31uと係止リンク41の上端面41u間がシールされる。ここで、前記係止リング41の内周面41eは排水立て管2の上端挿し口2uの外周面に接着されているため、前記シール材40のシール本体部43が受け口31の開口周縁31uと係止リンク41の上端面41u間をシールすることで、下端接続部30の受け口31と排水立て管2の上端挿し口2u間が間接的にシールされるようになる。この状態で、排水管継手10の下端接続部30に対する排水立て管2の上端挿し口2uの接続が完了する。
【0018】
<本実施形態に係る排水管継手10の働きについて>
本実施形態に係る排水管継手10、及び耐火熱膨張性樹脂組成物からなる排水立て管2を備える排水設備1において火災が発生した場合、火災が発生した階(例えば、図1の下階)では排水立て管2が火災の熱で軟化し、膨張することで管路が閉塞される。なお、排水管継手10は金属製であるため、火災により焼損することはない。前述のように、排水立て管2の上端挿し口2uは、排水管継手10の下端接続部30に装着されるシール材40の係止リング41に接着されてその係止リング41と一体化されている。さらに、シール材40の係止リング41は排水管継手10の下端接続部30の受け口フランジ部32と押圧フランジ34間に挟持されている。このため、係止リング41の働きにより、火災の熱で軟化、膨張した排水立て管2が排水管継手10の下端接続部30から脱落することがなくなる。これにより、下階と上階とをつなぐ排水経路が確実に遮断されるようになり、上階への延焼防止が図られるとともに、毒性ガスの流入を防止できるようになる。
このように、シール材40の一部である係止リング41を排水立て管2と同じ種類の樹脂により構成することで排水立て管2の脱落防止を図れるため、脱落防止のための構成が簡単で経済的である。
また、シール材40の係止リング41の下端面には、排水立て管2の上端挿し口2uを覆った状態で押圧フランジ34の中央開口34hに通される薄肉円筒部41xが軸方向に突出するように形成されている。このため、シール材40の係止リング41の内周面41eと排水立て管2の上端受け口2uの外周面2rとの接着面積を大きく取れるようになる。したがって、係止リング41と排水立て管2との接着強度が高くなる。
【0019】
[実施形態2]
次に、図5から図9に基づいて本発明の実施形態2に係る排水管継手の説明を行なう。本実施形態の排水管継手は、実施形態1に係る排水管継手10のシール材40の係止リング41を改良したものであり、その他の構造は実施形態1の排水管継手10と同様である。このため、実施形態1に係る排水管継手10と同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る排水管継手のシール材40の係止リング41は、図5〜図7に示すように、その外周面が厚み寸法約0.6mmの鋼板45によって覆われている。なお、係止リング41のその他の構造は、実施形態1に係るシール材40の係止リング41と同様である。
このように、本実施形態に係るシール材40は、係止リング41の外周面が鋼板45によって覆われているため、例えば、火災の熱で係止リング41が膨張する際に、その係止リング41が鋼板45にガイドされて半径方向内側に膨張するようになり、管路を効率的に閉塞できるようになる。
即ち、前記鋼板45が本発明の金属板に相当する。
【0020】
<変更例>
ここで、実施形態1、実施形態2の係止リング41の下端面には、排水立て管2の上端挿し口2uを覆った状態で押圧フランジ34の中央開口34hに通される薄肉円筒部41xが形成されている。しかし、図8に示すように、係止リング41の薄肉円筒部41xを省略して、この部分を面取りして傾斜面41fとすることも可能である。これにより、接着剤を塗布した排水立て管2の上端挿し口2uを係止リング41に通す際に、その通し作業が容易になる。
また、実施形態1、実施形態2では、予め係止リング41とシール本体部43とを上下に重ねたシール材40を排水管継手10の下端接続部30の受け口フランジ部32と押圧フランジ34との間にセットする例を示した。しかし、図9に示すように、シール本体部43を先に下端接続部30の受け口31の開口周縁31uにセットし、次に、係止リングを受け口フランジ部32と押圧フランジ34との間にセットする手順でも可能である。
【0021】
[実施形態3]
次に、図10から図13に基づいて本発明の実施形態3に係る排水管継手の説明を行なう。本実施形態の排水管継手は、実施形態1に係る排水管継手10の押圧フランジ34の一部を改良したものであり、その他の構造は実施形態1の排水管継手10と同様である。このため、実施形態1に係る排水管継手10と同一の部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る排水管継手の押圧フランジ34には、図10、図13に示すように、受け口フランジ部32に対向する面(上面)に軸方向に突出する円筒壁部34wが形成されている。そして、押圧フランジ34の円筒壁部34wによってシール材40の係止リング41が半径方向外側から囲まれるように構成されている。これにより、例えば、火災の熱で係止リング41が膨張する際に、その係止リング41が押圧フランジ34の円筒壁部34wにガイドされて半径方向内側に膨張するようになり、管路を効率的に閉塞できるようになる。
【符号の説明】
【0022】
2u・・・・上端挿し口
2r・・・・外周面
2・・・・・排水立て管
10・・・・排水管継手
11・・・・胴部
30・・・・下端接続部
31・・・・受け口
32・・・・受け口フランジ部
34h・・・中央開口(開口部)
34・・・・押圧フランジ
34w・・・円筒壁部
40・・・・シール材
41・・・・係止リング
41e・・・内周面
41x・・・薄肉円筒部
43・・・・シール本体部
45・・・・鋼板(金属板)
CS・・・・コンクリートスラブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅の上階に設けられた樹脂製の排水立て管、排水横枝管を下階に設けられた樹脂製の排水立て管に接続するための金属性継手であり、胴部が上階と下階とを仕切るコンクリートスラブを貫通して設置され、前記胴部下端に設けられた下端接続部に前記下階の排水立て管の上端挿し口が挿入接続される構成の排水管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した排水管継手に関連する技術が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載された排水管継手は、火災等に対する延焼防止機能を備えた排水管継手である。前記排水管継手100は、金属製で、図14(A)に示すように、集合住宅の上階に設けられた排水立て管(図示省略)、排水横枝管(図示省略)を下階に設けられた排水立て管101に接続できるように構成されている。排水管継手100は、胴部110が上階と下階とを仕切るコンクリートスラブCSを貫通して設置されており、その胴部110の下端に下階の排水立て管101の上端挿し口101uが挿入接続される下端接続部120が設けられている。
排水管継手100の下端接続部120は、図14(B)に示すように、排水立て管101の上端挿し口101uが挿入される受け口122と、その受け口122の開口周縁に形成された受け口フランジ部122fと、排水立て管101の上端挿し口101uが通される環体で、受け口フランジ部122fに対して同軸に連結される押圧フランジ123と、同じく上端挿し口101uが通された状態で、受け口フランジ部122fと押圧フランジ123間に挟まれるゴム製のシール材125とから構成されている。このため、受け口フランジ部122fに対して押圧フランジ123がボルト締めされることで、ゴム製のシール材125が軸方向両側から押圧されて、半径方向内側に弾性変形し、排水管継手100の下端接続部120の受け口122と排水立て管101の上端挿し口101u間がシールされる。
【0003】
さらに、排水管継手100の下端接続部120の押圧フランジ123には、その押圧フランジ123に通された排水立て管101の上端挿し口101uを半径方向外側から締め付けて脱落防止を図る立て管脱落防止バネ127が取付けられている。
また、前記排水立て管101には、耐火熱膨張性樹脂組成物(ポリ塩化ビニル系樹脂、熱膨張性黒鉛等)からなる耐火樹脂管が使用されている。
上記構成により、例えば、下階で火災が発生すると、火災の熱で排水立て管101が軟化するともにその排水立て管101の熱膨張性黒鉛が膨張して管路を閉塞する。そして、このときに、立て管落下防止バネ127が軟化した排水立て管101に食い込むことで、排水管継手100に対する排水立て管101の脱落防止が図られる。ここで、排水管継手100は金属製であり、その排水管継手100に接続された排水立て管101が膨張して管路を閉塞するため、下階と上階とをつなぐ排水経路が遮断され、下階の火災で発生した炎や有毒ガスが上階に侵入し難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−257572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した排水管継手100は、下端接続部120の押圧フランジ123に設けられた立て管脱落防止バネ127で火災時に排水立て管100の脱落を防止する構成である。このため、排水管継手100の下端接続部120の構成が複雑になるという問題がある。
また、立て管脱落防止バネ127の劣化により、バネ力が経時的に低下して、立て管脱落防止バネ127が火災時に軟化した排水立て管100に十分に食い込まないことも考えられる。このため、火災時に排水立て管101が排水管継手100から脱落するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、簡易、かつ信頼性の高い構成で、排水管継手に対する排水立て管の脱落防止を図れるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、集合住宅の上階に設けられた樹脂製の排水立て管、排水横枝管を下階に設けられた樹脂製の排水立て管に接続するための金属製継手であり、胴部が上階と下階とを仕切るコンクリートスラブを貫通して設置され、前記胴部下端に設けられた下端接続部の受け口に前記下階の排水立て管の上端挿し口が挿入接続される構成の排水管継手であって、前記下端接続部は、前記受け口と、その受け口の開口周縁に形成された受け口フランジ部と、前記排水立て管の上端挿し口が通される環体で、前記受け口フランジ部に対して同軸に連結される押圧フランジと、前記上端挿し口が通された状態で、前記受け口フランジ部と押圧フランジ間に挟まれる環状のシール材とを備えており、前記シール材は、同軸の状態で軸方向に重ねられた係止リングとシール本体部とから構成されて、前記係止リングが前記排水立て管の上端挿し口の外周面に面接触する内周面を備え、その排水立て管と同じ種類の樹脂で形成されて、前記上端挿し口の外周面に接着可能な構成であり、前記シール本体部が前記受け口の開口周縁に面接触して、その受け口と前記排水立て管の上端挿し口間をシール可能に構成されていることを特徴とする。
ここで、前記接着には、接着剤による接着の他、融着や溶着等も含むものとする。
【0008】
本発明によると、排水立て管の上端挿し口とシール材の係止リングとを接着する構成のため、排水立て管の上端挿し口とシール材の係止リングとが接着等により一体化される。ここで、シール材の係止リングは排水管継手の下端接続部の押圧フランジと受け口フランジ部とに挟持されるため、前記下階の排水立て管はシール材の係止リングを介して排水管継手の下端接続部に支持される。
このため、例えば、排水立て管が耐火熱膨張性樹脂組成物を備える耐火樹脂管である場合に、火災等の熱で下階の排水立て管が軟化、膨張して管路を閉塞したときに、その排水立て管が排水管継手の下端接続部から脱落することがなくなる。これにより、下階と上階とをつなぐ排水経路が確実に遮断され、上階への延焼防止が図られるとともに、毒性ガスの流入を防止できるようになる。
また、シール材の一部である係止リングを排水立て管と同じ種類の樹脂により構成することで排水立て管の脱落防止を図れるため、脱落防止のための構成が簡単で経済的である。
【0009】
請求項2の発明によると、シール材の係止リングの外周面は、金属板によって覆われていることを特徴とする。
このため、係止リングを排水立て管と同じく耐火熱膨張性樹脂組成物を備える耐火樹脂で形成した場合に、その係止リングが金属板の働きで半径方向内側、即ち、管路を閉塞する方向に膨張し易くなる。
請求項3の発明によると、シール材の係止リングの軸方向端面には、前記排水立て管の上端挿し口を覆った状態で前記押圧フランジの開口部に通される薄肉円筒部が軸方向に突出するように形成されていることを特徴とする。
このため、係止リングと押圧フランジの軸線を合わせ易くなる。また、シール材の係止リングの内周面と排水立て管の上端受け口の外周面との接着面積を大きく取れるようになる。
請求項4の発明によると、押圧フランジには、シール材の係止リングの外周面を囲む円筒壁部が軸方向に突出するように形成されていることを特徴とする。
このため、係止リングを排水立て管と同じく耐火熱膨張性樹脂組成物を備える耐火樹脂で形成した場合に、その係止リングが押圧フランジの円筒壁部の働きで半径方向内側、即ち、管路を閉塞する方向に膨張し易くなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、簡易、かつ信頼性の高い構成で、排水管継手に対する排水立て管の脱落防止を図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る排水管継手の配管状態を表す側面図である。
【図2】排水管継手の下端接続部と排水立て管との接続状態を表す縦断面図(図1のII矢視拡大縦断面図)である。
【図3】排水管継手の下端接続部の縦断面図である。
【図4】排水管継手の下端接続部のシール材等を表す縦断面図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る排水管継手の下端接続部と排水立て管との接続状態を表す縦断面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る排水管継手の下端接続部の縦断面図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る排水管継手の下端接続部のシール材を表す縦断面図である。
【図8】前記シール材の変更例を表す縦断面図である。
【図9】前記シール材の変更例を表す縦断面図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る排水管継手の下端接続部と排水立て管との接続状態を表す分解縦断面図である。
【図11】本発明の実施形態3に係る排水管継手の下端接続部の縦断面図である。
【図12】本発明の実施形態3に係る排水管継手の下端接続部のシール材を表す縦断面図である。
【図13】本発明の実施形態3に係る排水管継手の下端接続部の押圧フランジを表す縦断面図(A図)、平面図(B)である。
【図14】従来の排水管継手の配管状態を表す側面図(A図)、排水管継手の下端接続部の拡大縦断面図(B図)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[実施形態1]
以下、図1から図4に基づいて本発明の実施形態1に係る排水管継手の説明を行なう。本実施形態の排水管継手は、集合住宅の排水設備に使用される金属性の排水管継手であり、耐火樹脂製の排水立て管と共に使用されることで火災等に対する延焼防止を図れるように構成されている。
<排水設備の概要について>
排水設備1は、図1に示すように、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブCSの貫通孔CHに通された状態で各階に設置されている排水管継手10と、集合住宅の高さ方向に配管される排水立て管2と、各階でコンクリートスラブCS上を横方向に配管される排水横枝管4とから構成されている。前記排水設備1は、下階の排水管継手10(図示省略)の上部受け口22に排水立て管2の下端挿し口(図示省略)を挿入接続し、さらにその排水立て管2の上端挿し口2uを上階の排水管継手10の下端接続部30に挿入接続するように、下から上に順番に積み上げるように施工する。なお、コンクリートスラブCSの貫通孔CHは、排水管継手10が通された後、モルタルMにより埋め戻されて、火災時の延焼防止が図られている。
前記排水設備1では、排水管継手10に金属製(例えば、鋳鉄製)の継手が使用され、排水立て管2には耐火樹脂製の排水立て管が使用される。即ち、排水立て管2は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂に所定の割合で熱膨張性黒鉛を混合させた耐火熱膨張性樹脂組成物から構成されており、燃え難く、かつ火災時の熱で軟化、膨張して管路を閉塞できるように構成されている。
【0013】
<排水管継手10について>
本実施形態に係る排水管継手10は、図1に示すように、上階の排水立て管2、汚水用の第1排水横枝管4及び雑排水用の第2排水横枝管(図示省略)を下階の排水立て管2に接続する管継手であり、前述のように、コンクリートスラブCSの貫通孔CHに通される円筒状の胴部11を備えている。
排水管継手10の胴部11の上端部には、上階の排水立て管2の下端挿し口(図示省略)が挿入接続される上部受け口22が形成されている。上部受け口22の内側には、排水立て管2の下端挿し口と上部受け口22間を水密な状態でシールする略筒状のシール材(図示省略)が嵌め込まれている。また、胴部11の側面には、その胴部11の軸心に対してほぼ直角に汚水用の第1排水横枝管4が挿入接続される第1横枝管受け口24と、雑排水用の第2排水横枝管(図示省略)が挿入接続される第2横枝管受け口25とが形成されている。なお、第1、第2横枝管受け口24,25の内側にも前記シール材が嵌め込まれている。
排水管継手10の胴部11の下部には、排水立て管2と等しい径寸法で形成された下部直管11xが形成されており、その下部直管11xの下端に下階の排水立て管2の上端挿し口2uが挿入接続される下端接続部30が設けられている。
【0014】
<排水管継手10の下端接続部30について>
排水管継手10の下端接続部30は、その排水管継手10と下階の排水立て管2とを水密な状態で接続するとともに、火災時に前記下階の排水立て管2がその排水管継手10から脱落しないように保持する機能を備えている。
排水管継手10の下端接続部30は、図2、図3に示すように、胴部11の下部直管11xの下端に形成されて、排水立て管2の上端挿し口2uが挿入される受け口31と、その受け口31の開口周縁に形成された受け口フランジ部32とを備えている。受け口フランジ32には、押圧フランジ34が円周方向三箇所でボルト&ナット33により連結されるように構成されている。押圧フランジ34は、環状に構成されており、その押圧フランジ34の中央開口34hに排水立て管2の上端挿し口2uが通されるようになっている。さらに、受け口フランジ部32と押圧フランジ34間には、排水立て管2の上端挿し口2uが通される環状のシール材40が同軸状態で挟持されている。
【0015】
シール材40は、同軸の状態で軸方向に重ねられた係止リング41とシール本体部43とから構成されている。
係止リング41は、排水立て管2の上端挿し口2uに接着剤によって接着される部材であり、前記排水立て管2と同じ種類の樹脂、即ち、耐火熱膨張性樹脂組成物により略円筒形に形成されている。係止リング41の内径寸法は、排水立て管2の上端挿し口2uの外径寸法とほぼ等しい値に設定されて、その係止リング41の内周面41eが上端挿し口2uの外周面2rと面接触が可能なように構成されている。そして、係止リング41の内周面41eと上端挿し口2uの外周面2rとが接着剤により接着されるようになっている。また、係止リング41の上端面41uは凸円錐面状に形成されており、その上端面41uにシール本体部43が重ねられるようになっている。さらに、係止リング41の外周面には、高さ方向(軸方向)の略中央位置に円周方向に延びる断面角形の突条41jがリング状に形成されている。そして、係止リング41の突条41jの部分が受け口フランジ部32と押圧フランジ34との隙間部分に配置されている。
また、係止リング41の下端面には、押圧フランジ34の中央開口34hに挿入されて、排水立て管2の上端挿し口2uを覆う薄肉円筒部41xが軸方向に突出するように形成されている。
【0016】
シール材40のシール本体部43は、排水管継手10における下端接続部30の受け口31の開口周縁31uと係止リング41の上端面41uとの間を水密な状態でシールする部材であり、ゴム製の環状体により構成されている。シール本体部43の下端面43dは、図4に示すように、係止リング41の凸円錐面状の上端面41uに面接触した状態で重ねられるように凹円錐面状に形成されており、シール本体部43の上端面43uは、図3に示すように、受け口31の開口周縁31uの形成に合わせて凸円錐面状に形成されている。さらに、シール本体部43の外径寸法は係止リング41の外径寸法と等しい値に設定されており、シール本体部43の内径寸法が係止リング41の内径寸法よりも若干大きい値に設定されている。
上記構成により、シール材40のシール本体部43は、係止リング41と同軸に保持された状態で、軸方向(上下方向)に重ねられるようになる。
【0017】
<排水管継手10の下端接続部30に対する排水立て管2の上端挿し口2uの接続について>
次に、上階の排水管継手10の下端接続部30に対する下階の排水立て管2の上端挿し口2uの接続手順について説明する。
先ず、前記排水管継手10の下端接続部30の挿入深さ寸法に合わせて、図4に示すように、前記排水立て管2の上端挿し口2uに呑込み代標線2sを表示する。次に、係止リング41とシール本体部43とが同軸に重ねられたシール材40を、図3に示すように、排水管継手10の下端接続部30の受け口フランジ部32と押圧フランジ34との間にセットし、周方向三箇所のボルト&ナット33を途中位置まで螺合した状態にする。この状態で、排水管継手10の下端接続部30の受け口31、受け口フランジ部32と、シール材40と、押圧フランジ34とが同軸に保持される。
次に、排水管継手10のシール材40における係止リング41の内周面41eと、下階の排水立て管2の上端挿し口2uの外周面2r(係止リング41に相当する位置)に接着剤を塗布する。そして、接着剤を塗布した後の下階の排水立て管2に対して、上階の排水管継手10を下降させながら、その排水管継手10の下端接続部30に排水立て管2の上端挿し口2uを挿入する。即ち、接着剤を塗布した後の排水立て管2の上端挿し口2uが下端接続部30の押圧フランジ34の中央開口34h、シール材40に通された後、受け口31に挿入される。このとき、上端挿し口2uの呑込み代標線2sが押圧フランジ34の位置に到達するまで挿入を行う。
次に、周方向三箇所のボルト&ナット33を均等に締め付けることで、図2に示すように、シール材40が受け口フランジ部32と押圧フランジ34とによって軸方向両側から押圧される。これにより、シール材40のシール本体部43によって受け口31の開口周縁31uと係止リンク41の上端面41u間がシールされる。ここで、前記係止リング41の内周面41eは排水立て管2の上端挿し口2uの外周面に接着されているため、前記シール材40のシール本体部43が受け口31の開口周縁31uと係止リンク41の上端面41u間をシールすることで、下端接続部30の受け口31と排水立て管2の上端挿し口2u間が間接的にシールされるようになる。この状態で、排水管継手10の下端接続部30に対する排水立て管2の上端挿し口2uの接続が完了する。
【0018】
<本実施形態に係る排水管継手10の働きについて>
本実施形態に係る排水管継手10、及び耐火熱膨張性樹脂組成物からなる排水立て管2を備える排水設備1において火災が発生した場合、火災が発生した階(例えば、図1の下階)では排水立て管2が火災の熱で軟化し、膨張することで管路が閉塞される。なお、排水管継手10は金属製であるため、火災により焼損することはない。前述のように、排水立て管2の上端挿し口2uは、排水管継手10の下端接続部30に装着されるシール材40の係止リング41に接着されてその係止リング41と一体化されている。さらに、シール材40の係止リング41は排水管継手10の下端接続部30の受け口フランジ部32と押圧フランジ34間に挟持されている。このため、係止リング41の働きにより、火災の熱で軟化、膨張した排水立て管2が排水管継手10の下端接続部30から脱落することがなくなる。これにより、下階と上階とをつなぐ排水経路が確実に遮断されるようになり、上階への延焼防止が図られるとともに、毒性ガスの流入を防止できるようになる。
このように、シール材40の一部である係止リング41を排水立て管2と同じ種類の樹脂により構成することで排水立て管2の脱落防止を図れるため、脱落防止のための構成が簡単で経済的である。
また、シール材40の係止リング41の下端面には、排水立て管2の上端挿し口2uを覆った状態で押圧フランジ34の中央開口34hに通される薄肉円筒部41xが軸方向に突出するように形成されている。このため、シール材40の係止リング41の内周面41eと排水立て管2の上端受け口2uの外周面2rとの接着面積を大きく取れるようになる。したがって、係止リング41と排水立て管2との接着強度が高くなる。
【0019】
[実施形態2]
次に、図5から図9に基づいて本発明の実施形態2に係る排水管継手の説明を行なう。本実施形態の排水管継手は、実施形態1に係る排水管継手10のシール材40の係止リング41を改良したものであり、その他の構造は実施形態1の排水管継手10と同様である。このため、実施形態1に係る排水管継手10と同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る排水管継手のシール材40の係止リング41は、図5〜図7に示すように、その外周面が厚み寸法約0.6mmの鋼板45によって覆われている。なお、係止リング41のその他の構造は、実施形態1に係るシール材40の係止リング41と同様である。
このように、本実施形態に係るシール材40は、係止リング41の外周面が鋼板45によって覆われているため、例えば、火災の熱で係止リング41が膨張する際に、その係止リング41が鋼板45にガイドされて半径方向内側に膨張するようになり、管路を効率的に閉塞できるようになる。
即ち、前記鋼板45が本発明の金属板に相当する。
【0020】
<変更例>
ここで、実施形態1、実施形態2の係止リング41の下端面には、排水立て管2の上端挿し口2uを覆った状態で押圧フランジ34の中央開口34hに通される薄肉円筒部41xが形成されている。しかし、図8に示すように、係止リング41の薄肉円筒部41xを省略して、この部分を面取りして傾斜面41fとすることも可能である。これにより、接着剤を塗布した排水立て管2の上端挿し口2uを係止リング41に通す際に、その通し作業が容易になる。
また、実施形態1、実施形態2では、予め係止リング41とシール本体部43とを上下に重ねたシール材40を排水管継手10の下端接続部30の受け口フランジ部32と押圧フランジ34との間にセットする例を示した。しかし、図9に示すように、シール本体部43を先に下端接続部30の受け口31の開口周縁31uにセットし、次に、係止リングを受け口フランジ部32と押圧フランジ34との間にセットする手順でも可能である。
【0021】
[実施形態3]
次に、図10から図13に基づいて本発明の実施形態3に係る排水管継手の説明を行なう。本実施形態の排水管継手は、実施形態1に係る排水管継手10の押圧フランジ34の一部を改良したものであり、その他の構造は実施形態1の排水管継手10と同様である。このため、実施形態1に係る排水管継手10と同一の部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る排水管継手の押圧フランジ34には、図10、図13に示すように、受け口フランジ部32に対向する面(上面)に軸方向に突出する円筒壁部34wが形成されている。そして、押圧フランジ34の円筒壁部34wによってシール材40の係止リング41が半径方向外側から囲まれるように構成されている。これにより、例えば、火災の熱で係止リング41が膨張する際に、その係止リング41が押圧フランジ34の円筒壁部34wにガイドされて半径方向内側に膨張するようになり、管路を効率的に閉塞できるようになる。
【符号の説明】
【0022】
2u・・・・上端挿し口
2r・・・・外周面
2・・・・・排水立て管
10・・・・排水管継手
11・・・・胴部
30・・・・下端接続部
31・・・・受け口
32・・・・受け口フランジ部
34h・・・中央開口(開口部)
34・・・・押圧フランジ
34w・・・円筒壁部
40・・・・シール材
41・・・・係止リング
41e・・・内周面
41x・・・薄肉円筒部
43・・・・シール本体部
45・・・・鋼板(金属板)
CS・・・・コンクリートスラブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅の上階に設けられた樹脂製の排水立て管、排水横枝管を下階に設けられた樹脂製の排水立て管に接続するための金属製継手であり、胴部が上階と下階とを仕切るコンクリートスラブを貫通して設置され、前記胴部下端に設けられた下端接続部の受け口に前記下階の排水立て管の上端挿し口が挿入接続される構成の排水管継手であって、
前記下端接続部は、前記受け口と、その受け口の開口周縁に形成された受け口フランジ部と、前記排水立て管の上端挿し口が通される環体で、前記受け口フランジ部に対して同軸に連結される押圧フランジと、前記上端挿し口が通された状態で、前記受け口フランジ部と押圧フランジ間に挟まれる環状のシール材とを備えており、
前記シール材は、同軸の状態で軸方向に重ねられた係止リングとシール本体部とから構成されて、
前記係止リングが前記排水立て管の上端挿し口の外周面に面接触する内周面を備え、その排水立て管と同じ種類の樹脂で形成されて、前記上端挿し口の外周面に接着可能な構成であり、
前記シール本体部が前記受け口の開口周縁に面接触して、その受け口と前記排水立て管の上端挿し口間をシール可能に構成されていることを特徴とする排水管継手。
【請求項2】
請求項1に記載された排水管継手であって、
前記シール材の係止リングの外周面は、金属板によって覆われていることを特徴とする排水管継手。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された排水管継手であって、
前記シール材の係止リングの軸方向端面には、前記排水立て管の上端挿し口を覆った状態で前記押圧フランジの開口部に通される薄肉円筒部が軸方向に突出するように形成されていることを特徴とする排水管継手。
【請求項4】
請求項1に記載された排水管継手であって、
前記押圧フランジには、前記シール材の係止リングの外周面を囲む円筒壁部が軸方向に突出するように形成されていることを特徴とする排水管継手。
【請求項1】
集合住宅の上階に設けられた樹脂製の排水立て管、排水横枝管を下階に設けられた樹脂製の排水立て管に接続するための金属製継手であり、胴部が上階と下階とを仕切るコンクリートスラブを貫通して設置され、前記胴部下端に設けられた下端接続部の受け口に前記下階の排水立て管の上端挿し口が挿入接続される構成の排水管継手であって、
前記下端接続部は、前記受け口と、その受け口の開口周縁に形成された受け口フランジ部と、前記排水立て管の上端挿し口が通される環体で、前記受け口フランジ部に対して同軸に連結される押圧フランジと、前記上端挿し口が通された状態で、前記受け口フランジ部と押圧フランジ間に挟まれる環状のシール材とを備えており、
前記シール材は、同軸の状態で軸方向に重ねられた係止リングとシール本体部とから構成されて、
前記係止リングが前記排水立て管の上端挿し口の外周面に面接触する内周面を備え、その排水立て管と同じ種類の樹脂で形成されて、前記上端挿し口の外周面に接着可能な構成であり、
前記シール本体部が前記受け口の開口周縁に面接触して、その受け口と前記排水立て管の上端挿し口間をシール可能に構成されていることを特徴とする排水管継手。
【請求項2】
請求項1に記載された排水管継手であって、
前記シール材の係止リングの外周面は、金属板によって覆われていることを特徴とする排水管継手。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された排水管継手であって、
前記シール材の係止リングの軸方向端面には、前記排水立て管の上端挿し口を覆った状態で前記押圧フランジの開口部に通される薄肉円筒部が軸方向に突出するように形成されていることを特徴とする排水管継手。
【請求項4】
請求項1に記載された排水管継手であって、
前記押圧フランジには、前記シール材の係止リングの外周面を囲む円筒壁部が軸方向に突出するように形成されていることを特徴とする排水管継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−219536(P2012−219536A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87433(P2011−87433)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(390013516)株式会社小島製作所 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(390013516)株式会社小島製作所 (19)
【Fターム(参考)】
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