説明

排泄物回収具

【課題】被介護者への装着作業や排便回収作業が容易な排泄物回収具を提供する。
【解決手段】孔の周囲に突縁が形成された便通過孔を有し、この便通過孔が肛門に対向するように使用者の尻部に装着される装着具10と、排泄された便を収納する回収パック30と、装着具10の便通過孔の内側に配置される筒状部を有し、この筒状部の収縮性を有する一端が便通過孔の突縁に着脱可能に被着され、筒状部の他端に回収パック30が固定される回収パックアダプター20とを具備し、回収パックアダプター20の筒状部の一端に薄葉状のティッシュ部23が配置され、装着具10を尻に装着したとき、ティッシュ部23が肛門の周囲に接する。この器具では、回収パック30と回収パックアダプター20とが便と共に廃棄され、装着具10は再使用される。回収パック30回収時に回収パック30に通じる開口が閉じて排泄物の逆流を防ぎ、ティッシュ部23で肛門付近が拭かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体の弱った老人や病人、幼児等の大便を処理するための排泄物回収具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者人口の増加に伴い、排尿や排便の意思表示を介護者に伝えることができない重度要介護者の数が年毎に増えている。
こうした重度要介護者の排泄物の処理は、通常、オムツを使って行われる。介護用オムツには、吸収性に優れた素材が用いられており、オムツの装着者が複数回にわたって排尿しても、それを吸収し、ムレたりせずにサラサラ感を保つことができるパッド類が開発されている。
しかし、排泄された大便は、装着者の体圧で臀部とオムツとの間に広がり、装着者に不快感を与え、また、肌のただれや痒みの原因となる。そのため、重度要介護者をケアする介護施設では、排便・排尿の有無に係らず、一日に7回程度、定期的に重度要介護者のオムツの交換が実施される場合もある。
ただ、在宅介護においては、介護者に対して介護施設と同等の排泄物の処理を求めることは難しい。
【0003】
下記特許文献1には、こうした事情を考慮して開発された「介護用使い捨て便器」が開示されている。この便器は、重度要介護者の排便を収容するためにオムツのように重度要介護者に予め装着される。
この便器は、空気や水を封入した棒状の弾性袋から成り、中心に便通過孔を有する肛門当接部材と、肛門当接部材と同位置に便通過孔を有し、肛門当接部材を下から支持する可撓性シート状のパッドと、パッドの便通過孔の周りに上端縁が固定された便収納用袋体とを備えており、パッドには、体に結び付ける4本の紐の端部が固定されている。
この便器は、パッドの紐を重度要介護者の腰や足に結び付けて、肛門当接部材が尻部の溝に嵌まり、且つ、肛門が肛門当接部材の便通過孔の位置に来るように装着される。装着者の肛門から排出された大便は、肛門当接部材及びパッドの便通過孔を通り、便収納用袋体に収納される。
【特許文献1】特開2004-159948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の介護用使い捨て便器は、オムツと同様に、排泄物と共に全体を廃棄しなければならないため、紙やプラスチックの廃棄量の増大を招来し、環境にとって好ましくない面があった。
また、従来の介護用使い捨て便器は、便通過孔を閉じることができないため、交換の操作中に、排泄物が便収納用袋体から逆流して肛門当接部材の便通過孔からこぼれ出る虞があった。
また、従来の介護用使い捨て便器では、交換時に、被介護者の肛門付近に付着した汚物を拭き取る作業が必要であった。
【0005】
本発明は、このような問題点の解決を図るものであり、被介護者への装着作業や排便回収時の交換作業が容易であり、また、廃棄資源の削減を図ることができる排泄物回収具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排泄物回収具は、使用者の尻部に装着される装着具と、肛門から排泄された便を収納する回収パックと、前記回収パックを固定した状態で前記装着具に保持され、使用者に接する部位に薄葉状のティッシュ部を有する回収パックアダプターとを備えることを特徴としている。
この排泄物回収具では、回収パックの回収時に肛門付近の汚れをティッシュ部で拭き取ることができる。
【0007】
また、本発明の排泄物回収具は、孔の周囲に突縁が形成された便通過孔を有し、この便通過孔が肛門に対向するように使用者の尻部に装着される装着具と、肛門から排泄された便を収納する回収パックと、前記装着具の便通過孔の内側に配置される筒状部を有し、この筒状部の収縮性を有する一端が便通過孔の突縁に着脱可能に被着され、筒状部の他端に回収パックが固定される回収パックアダプターと、を備え、回収パックアダプターの筒状部の一端に薄葉状のティッシュ部が配置され、回収パックアダプターを結合した装着具を使用者の尻部に装着したとき、ティッシュ部が肛門の周囲に接することを特徴としている。
この排泄物回収具では、回収パックと回収パックアダプターとが便と共に廃棄され、装着具は再使用される。
【0008】
また、本発明の排泄物回収具では、回収パックアダプターを装着具から引き抜いて回収パックを回収するとき、回収パックアダプターの筒状部の一端が収縮して筒状部の開口が閉鎖され、且つ、ティッシュ部により肛門付近が拭われる。
そのため、回収パックの回収時に、回収パックに通じる開口が閉じ、同時に肛門付近の汚れが拭き取られる。
【0009】
また、本発明の排泄物回収具では、前記回収パックアダプターが、さらに、回収パックの内側を拡げて便の入り込むスペースを確保する拡開部材を備えるように構成しても良い。
こうすることで、排泄された便が回収パックに入り易くなる。
【0010】
また、本発明の排泄物回収具では、前記装着具を、柔軟性を有する素材で成形し、前記便通過孔の内側に、該便通過孔の潰れを防止する、剛性を有する孔形状保持部材を備えるように構成することもできる。
こうすることで、装着具を身体への当たりが柔らかい柔軟素材で成形した場合でも、便通過孔が潰れて便の通過が阻害される事態を防止できる。
【0011】
また、本発明の排泄物回収具では、前記孔形状保持部材が、前記便通過孔の肛門に対向しない側の端部から突出して把持が可能な操作部を有し、前記回収パックアダプターの筒状部が、前記孔形状保持部材の内側に配置されて、前記孔形状保持部材との間で前記回収パックを挟持し、前記回収パックアダプターを前記装着具から引き抜くとき、前記孔形状保持部材の操作部が把持されて、当該孔形状保持部材と前記回収パックアダプターとが共に前記装着具から引き抜かれるように構成することもできる。
こうすることで、回収パックアダプター及び回収パックを装着具に装着するときは、回収パックアダプター及び回収パックを孔形状保持部材内にセットして、この孔形状保持部材を装着具の便通過孔内に装着し、また、それらの回収時には、孔形状保持部材を便通過孔から引き抜くことによって、回収パックアダプター及び回収パックを取り出すことができるから、操作性が向上する。
【0012】
また、本発明の排泄物回収具は、前記装着具が、前記便通過孔に連なる後方部材と前方部材とを備え、前記後方部材が、人体の尻部の形状に沿った断面形状を有し、前記前方部材が、先端に紐状体を挿通する溝を有している。
この後方部材及び前方部材の各先端に、身体への固定手段が設けられる。
【0013】
また、本発明の排泄物回収具は、前記後方部材の先端が、二つの分岐部に分岐して、前記後方部材が全体としてY字形状を有し、前記分岐部の各々が左右の臀部に当接するように構成することもできる。
使用者が仰向けに寝たときに、後方部材や、それに取付けたベルト等が背骨の下に来ると、使用者は苦痛を覚える。後方部材をY字形状とすることにより、こうした苦痛を回避できる。
【0014】
また、本発明の排泄物回収具は、さらに、便の排泄を検知する検知手段と、前記検知手段で検知された情報を無線信号により送信する無線通信モジュールとを具備し、前記装着具の前方部材に、前記無線通信モジュールを収納するための孔を設けることとしても良い。
この排泄物回収具は、便が排泄されたとき、それを検知手段及び無線通信モジュールを通じて、介護者に知らせることができ、便の速やかな回収が可能になる。そのため、悪臭の拡散を防止できる。
【0015】
また、本発明の排泄物回収具では、前記検知手段を、前記装着具の便通過孔に臨む位置に配置することが可能である。
この場合、検知手段として、温度センサ、においセンサ、静電容量センサ、超音波センサ等を用いることができる。
【0016】
また、本発明の排泄物回収具では、前記検知手段を、前記回収パックアダプターの筒状部の内部に配置し、前記検知手段の検知情報を読み取る手段を前記装着具の便通過孔に臨む位置に配置するようにしてもよい。
この場合、湿度センサ等を接続したRFIDタグを回収パックアダプターの内部に配置し、そのセンサの検知情報を読み取って無線通信モジュールから送信することになる。
【0017】
また、本発明の排泄物回収具は、前記装着具の後方部材の先端が、取付部材を介して、使用者の胴に回したベルトに結合され、前記前方部材の溝に通した紐状体が前記ベルトに係止されて、前記装着具が使用者の尻部に装着されるように構成することができる。
こうした場合、使用者の寝返り等の動きで装着具がずれることが少なくなる。また、ベルトに対する紐状体の係止位置や取付部材の係止位置を調節すれば、どのような体形の人でも、この排泄物回収具を装着することができる。
【0018】
また、本発明の排泄物回収具は、前記回収パックアダプターが、一端に前記回収パックが結合され、他端に伸縮性を有する前記ティッシュ部が設けられた筒状体で構成され、前記装着具が、前記回収パックアダプターが内側に配置される便通過孔と、前記回収パックアダプターの前記ティッシュ部が押し広げられ、反転されて係合される突縁と、当該装着具をおむつに設けられた孔に固定するための固定手段と、を有し、前記おむつを穿いた使用者の尻部に前記装着具の前記突縁が当接して前記ティシュ部が肛門の周囲に接触し、前記回収パックが、前記おむつの外部に露出するように構成することができる。
この排泄物回収具は、使用者におむつを穿かせたときに、使用者の肛門の位置に装着具が来る。また、便通過孔の大きさを制限する要因がないため、便通過孔を十分に拡げることができる。
【0019】
また、本発明のおむつに固定する排泄物回収具は、前記装着具を、前記おむつの内側に配置される内在部材と、前記おむつの外側から当該おむつの前記孔に挿入されて前記内在部材に係合する挿入部材とで構成し、前記内在部材は、前記挿入部材が挿入される第一筒状部と、前記第一筒状部の尻部側に設けられた尻部当接用の皿状部と、前記第一筒状部の反対側に設けられた前記固定手段を構成する第一鍔部と、を有し、前記挿入部材は、前記便通過孔を備えると共に一端に前記突縁を備えた第二筒状部と、前記第二筒状部の他端に設けられた前記固定手段を構成する第二鍔部と、を有し、前記内在部材の第一筒状部の内面と前記挿入部材の第二筒状部の外面との接触により前記挿入部材が前記内在部材に係合し、前記内在部材の第一鍔部と前記挿入部材の第二鍔部とが前記おむつの前記孔の周辺を挟み込むことで前記装着具が前記おむつの孔に固定されるように構成することができる。
この排泄物回収具では、回収パックを固定した回収パックアダプターを、挿入部材の便通過孔に挿通し、押し広げたティッシュ部を反転させて挿入部材の突縁に係合させることにより、挿入部材に回収パックアダプター及び回収パックを固定する。次いで、この挿入部材をおむつの孔から挿入し、内在部材に係合させる。
【0020】
また、本発明のおむつに固定する排泄物回収具では、前記内在部材の皿状部に、使用者の身体の前側に対応する前方部分に切除部を形成し、使用者の身体の後ろ側に対応する後方部分に切溝を形成し、前記皿状部が前記切除部及び切溝により左右に分離されるように構成することができる。
この皿状部は、万一、排泄された便が便通過孔の外に流れ出た場合でも、周囲に広がるのを防いでいる。皿状部の切除部は、小便の排泄を妨げないために設けられている。また、皿状部は、切除部と切溝とで左右に二分され、それぞれの部分が自由に変形できるため、尻の形状にフィットする。
【0021】
また、本発明のおむつに固定する排泄物回収具は、前記装着具を、前記便通過孔を備えると共に一端に前記突縁を備えた第三筒状部と、前記第三筒状部の他端に設けられた前記固定手段を構成する固定板と、前記固定板に固着された面ファスナーと、で構成し、前記第三筒状部を前記おむつの外側から当該おむつの前記孔に挿入し、前記固定板を前記面ファスナーで前記おむつの外面に結合して、前記装着具を前記おむつの孔に固定するように構成することができる。
この排泄物回収具は、使用者がおむつを穿いたままの状態でセットすることができる。
【0022】
また、本発明のおむつに固定する排泄物回収具では、前記挿入部材の前記突縁を備えた端部、または、前記第三筒状部の前記突縁を備えた端部において、使用者の身体の前側に対応する前方部分、及び、使用者の身体の後ろ側に対応する後方部分を、山型に成形するようにしても良い。
こうした成形により、挿入部材または第三筒状部の端部が肛門付近の体形にフィットするため、排泄された便が装着具の外に流れ出るのを防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の排泄物回収具は、使用後に全体を廃棄する従来の介護用使い捨て便器や紙オムツと異なり、装着具を繰り返し使用することができるため、廃棄資源の削減や、消耗品のコストの低減を図ることができる。
また、回収パックの回収時には、回収パックに通じる開口が閉じて排泄物の逆流が防止され、また、回収と同時に使用者の肛門付近がティッシュ部で拭き取られるため、回収作業が容易である。
【0024】
本発明のおむつに固定する排泄物回収具は、おむつを穿くことで、肛門への正確な位置合わせが可能である。また、便通過孔を大きく設定することが可能であるため、肛門と装着具との位置ずれを回避でき、また、排泄された便を速やかに回収パックに送ることができる。
また、この排泄物回収具の装着具は、使用者の尻の部分にだけ接触し、使用者の腰周りや背中には、ソフトに構成されたおむつ以外の部材が接触しない。そのため、長時間装着しても、使用者に身体的な苦痛が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
本発明の排泄物回収具の第1の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、この排泄物回収具の断面図であり、図7は、この排泄物回収具を使用者に装着した状態を示す図である。図7(a)は断面図、図7(b)は背面図、また、図7(c)は前面図である。また、図11(a)(b)は、この排泄物回収具を装着した使用者(幼児)が寝ている状態を模式的に表した図である。また、図2、図3、図4、図5、図6は、この排泄物回収具の各部品を個別に示す図であり、図8、図9、図10は、部品の変形例を示す図である。
この排泄物回収具は、使用者に装着する装着具10と、便収納用の回収パック30と、回収パック30を装着具10に取り付けるための回収パックアダプター20とを有している。
【0026】
図2は、装着具10の形状を示している。図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のA−A’における断面図、また、図2(c)は図2(b)のB−B’における断面図である。
この装着具10は、長円形状の便通過孔11と、使用者50の背側51(図7)に装着される後方部材14と、先端が使用者50の前側52(図7)に導出される前方部材15とを有している。便通過孔11の使用者に接触する側の周縁には、突縁12が形成されている。突縁12は、滑らかな曲面から成る表面を有し、突縁12の外周の根元には、くびれ13が形成されている。また、便通過孔11の内周下方には、後述する孔形状保持部材40(図3)を係止する溝18が形成されている。
後方部材14は、尻の割れ目に嵌まるように、尻と接触する側に凸を成す山形の断面形状を有している(図2(c))。また、後方部材14の先端の外側には、メカニカルファスナーなどの面ファスナー17が固定されている。この面ファスナー17は、図7に示すように、後方部材14の先端を、後部取付ベルト62を介して、使用者50の胴に回したベルト60に結合するために使われる。
【0027】
面ファスナーは、よく知られているように、ループ面のループとフック面のフックとが引っ掛かって両面の結合が行われる。そのため、例えば、後方部材14及び胴ベルト60には面ファスナーのループ面を固定し、後部取付ベルト62には面ファスナーのフック面を固定することにより、後部取付ベルト62を介して、後方部材14の先端を胴ベルト60に結合することができる。
【0028】
一方、前方部材15の先端には、紐状の前部取付ベルト61(図7)を通す溝16が形成されており、溝16を通した前部取付ベルト61の左右の先端が胴ベルト60に固定される。
なお、この場合にも、面ファスナーを使って前部取付ベルト61及び胴ベルト60の結合が行われる。例えば、左右の前部取付ベルト61の先端には所定長さの面ファスナーのフック面を固定し、他方の胴ベルト60にはループ面を固定して、前部取付ベルト61の左右の先端を胴ベルト60に固定する。このようにすると、その固定位置を、面ファスナーのフック面の長さの範囲内で調節することができる。
【0029】
装着具10は、柔軟性を持つポリエチレン等の合成樹脂で一体成形されており、変形可能である。そのため、後方部材14は、使用者の尻の割れ目に密着させて使用者の体の上方に導出することができ、前方部材15は、使用者の股に沿わせて前方に引き出すことができる。また、後方部材14の先端17を、後部取付ベルト62を介して胴ベルト60に結合し、且つ、前方部材15の溝16に通した前部取付ベルト61の左右を弛まないように胴ベルト60に固定すると(図7)、便通過孔11の突縁12が肛門54の周囲に密着する。なお、後述するように、この排泄物回収具の使用時には、回収パックアダプター20の可撓性筒状部22が、便通過孔11の突縁12を覆うように装着具10に装着される(図1)。そのため使用時には、可撓性筒状部22が肛門54の周囲に密着することになる。
【0030】
また、この装着具10は、軟質な素材で形成されているため、前方部材15及び後方部材14に引張り力が作用すると、便通過孔11が変形して、孔の面積が小さくなる可能性がある。図3は、便通過孔11の変形を防ぐための孔形状保持部材40を示している。図3(a)は断面図、図3(b)は図3(a)の下方から見た底面図である。孔形状保持部材40は、剛性を持つプラスチック等で成形された、断面が長円の筒状体であり、下方が僅かに拡がり、下縁に係合用の鍔41を有している。この孔形状保持部材40は、便通過孔11の内側に挿入して、鍔41を便通過孔11の溝18に係止することによって便通過孔11内に装着される。
【0031】
なお、この孔形状保持部材40は、図8(b)の変形例に示すように、筒の中央に括れを持ち、下縁に鍔41を持つ形状の筒状体とすることもできる。この場合、装着具10の便通過孔11には、図8(a)に示すように、孔形状保持部材40の筒形状に合わせて、孔の中央に膨らみを持たせる。図8(c)は、軟質素材で形成された装着具10の便通過孔11を変形させながら、便通過孔11に孔形状保持部材40を挿入し、装着した状態を示している。孔形状保持部材40は、筒中央の括れが便通過孔11の膨らみに係合し、また、鍔41が便通過孔11の下端に当接することによって、便通過孔11内に安定的に位置決めされる。この構成では、便通過孔11に孔形状保持部材40を係止するための溝18を設ける必要がない。
また、孔形状保持部材40を用いる代わりに、装着具10の一体成形時に、便通過孔11の内周に硬質樹脂を二層成形することにより、便通過孔11の剛性を確保するようにしても良い。
【0032】
この排泄物回収具では、装着具10の全長を約160mm、便通過孔11の短軸方向の内径を28mm、長軸方向の内径を54mm、孔の深さを34mmに設定している。このように便通過孔11の形状を長円にすれば、使用者の体形が異なる場合でも、便通過孔11を肛門に対向させることができる。
【0033】
図4は、装着具10から取り外した状態の回収パックアダプター20の断面図を示している。この回収パックアダプター20は、装着具10から取り外しても筒形状を維持する筒体部21と、装着具10から取り外すと筒形状が維持できない可撓性筒状部22と、可撓性筒状部22の端部に結合されたティッシュ部23と、回収パック30の内側を拡げるための拡開部材26とを備えている。なお、特許請求の範囲で言う「筒状部」は、筒体部21と可撓性筒状部22とを併せたものを指している。
【0034】
筒体部21は、圧縮して剛性を付与した厚紙等で成形されている。筒の断面は装着具10の便通過孔11と同様の長円形であり、筒の長さは便通過孔11の深さよりも長い。そのため、回収パックアダプター20を装着具10に装着した状態において、筒体部21の下部は、便通過孔11から突出する(図1)。この筒体部21の下部の外側には、回収パック30を固定するための係止部25が設けられており、また、下部の内側には拡開部材26の端部が固定されている。
一方、可撓性筒状部22は、伸縮性を持たせるために複数本の細いゴム糸等を平行に縫い込んだ軟質紙によって形成されており、筒の径方向に伸縮性を有し、径を拡げる力が作用していない状態では、筒孔が閉じている。
可撓性筒状部22の一端は、筒体部21の外周に接着等で固着され、また、他端の周縁には、ちり紙等から成るティッシュ部23が接着または縫着されている。このティッシュ部23を設けた側の可撓性筒状部22の筒孔は、図4に示すように、回収パックアダプター20を装着具10から取り外した状態で、可撓性筒上部22の伸縮性のために閉じている。
【0035】
図5は、筒体部21の下端に結合された拡開部材26を示している。図5(a)は断面図、図5(b)は正面図である。拡開部材26は、緩やかなカーブを描く舌片形状が維持できるように、圧縮して剛性を付与した厚紙等で形成され、回収パック30を傷つけないように、角が丸められている。
図6は、回収パック30を示している。この回収パック30は、紙で形成されており、袋状の便収納部31と、便収納部31への入口32とを具備している。回収パック30の入口32を回収パックアダプター20の筒体部21の係止部25に係止すると、筒体部21に固定された拡開部材26が便収納部31の内部に入り込む。
【0036】
次に、この排泄物回収具の組立方法について説明する。
先ず、回収パック30を回収パックアダプター20に装着する。そのために、回収パック30の入口32から拡開部材26及び筒体部21の下端を挿入し、紐や接着剤を用いて係止部25の位置で回収パック30の入口32を筒体部21に固定する。
次いで、回収パックアダプター20の筒体部21の下部を掴み、予め孔形状保持部材40が装着された装着具10の便通過孔11に、その下側から可撓性筒状部22の側を挿し込む。可撓性筒状部22の先端が便通過孔11の上方から現れると、可撓性筒状部22の先端を拡げて、便通過孔11の周縁に設けられた突縁12に引っ掛ける。この操作により、突縁12は、可撓性筒状部22で覆われ、また、突縁12の周囲がティッシュ部23で囲まれる。また、便通過孔11内の可撓性筒状部22が筒状に開口し、筒体部21と共同して、回収パック30への便通過路を便通過孔11の内部に形成する。
図1は、こうして組立てられた排泄物回収具を示している。
【0037】
次に、この排泄物回収具の使用方法について説明する。
図7に示すように、使用者50の腰に胴ベルト60を巻き付ける。次に、装着具10の後方部材14が使用者50の背側51に、前方部材15が腹側52に来るように排泄物回収具を使用者50の股にあてがい、装着具10の便通過孔11が肛門54と対向するように装着具10の位置を調整する。
次に、装着具10の後方部材14を尻の割れ目に沿わせて背中の方向に引き出し、後方部材14の先端に固定された面ファスナー17のループ面と後部取付ベルト62のフック面とを結合し、また、後部取付ベルト62のフック面と胴ベルト60のループ面とを結合して、後方部材14の先端を、後部取付ベルト62を介して胴ベルト60に固定する。
【0038】
また、装着具10の前方部材15の溝16に前部取付ベルト61を通し、この前部取付ベルト61の左右の先端に取り付けた面ファスナーのフック面を、前部取付ベルト61に弛みが生じないように胴ベルト60のループ面に固定する(図7)。
この操作で、装着具10の便通過孔11を囲む突縁12が、この突縁12に被着された回収パックアダプター20の可撓性筒状部22を介して肛門54の周囲に密着し、ティッシュ部23が肛門54の周囲に接触する。
こうして、大便回収の準備が整う。図11に示すように、このように排泄物回収具を装着した上から、排尿を吸収するためのオムツ63を使用者50に装着する。
【0039】
使用者50が排泄した便は、回収パックアダプター20の可撓性筒状部22及び筒体部21の筒内を通り、最終的に、拡開部材26によってスペースが確保された回収パック30の中に収納される。
排泄物の回収は、装着具10の便通過孔11から突出した回収パックアダプター20の筒体部21の下部を掴み、回収パックアダプター20を装着具10から引き抜くことによって実行する。この操作により、便通過孔11周縁の突縁12に引っ掛かっていた可撓性筒状部22の先端が外れて収縮し、可撓性筒状部22の開口が閉じる。同時に、突縁12の周囲を囲んでいたティッシュ部23が、可撓性筒状部22の収縮によって引き寄せられ、その過程で肛門54の周りの汚れを拭き取る。
装着具10から抜き取った回収パックアダプター20及び回収パック30は、排泄物とともに廃棄する。
【0040】
このように、この排泄物回収具では、装着具10の便通過孔11を囲む突縁12が、回収パックアダプター20の可撓性筒状部22を介して、肛門54の周囲に密着するため、排泄された便が回収パックアダプター20の筒体の外に散逸しない。そのため、肌への便の付着による不快感や、肌のただれ、痒み等が回避できる。
また、この突縁12を覆う可撓性筒状部22は、柔軟性を持つ素材で構成され、この可撓性筒状部22が肌に密着するため、使用者に違和感や不快感を与えない。
また、便通過孔11の形状を長円形あるいは楕円形に設定しているため、装着具10の装着位置が前後に多少ずれても、便通過孔11は、肛門に対向することができる。
また、この排泄物回収具では、回収パック30と回収パックアダプター20とが排泄された便と共に廃棄されるが、装着具10は、繰り返し使用される。そのため、廃棄資源を減らすことができ、また、消耗品のコストを引き下げることができる。
【0041】
また、回収パック30の回収時に、回収パック30に通じる開口が閉じるため、回収作業中に排泄物がこぼれ出る虞が無い。また、回収パック30の回収時に、肛門付近の汚れがティッシュ部23で拭き取られる。そのため、回収作業が容易であり、回収時の作業負担が軽減される。
回収パック30及び回収パックアダプター20は、紙を素材としているため、排泄物と共にトイレに流して処理することができる。
また、この排泄物回収具では、装着具10の後方部材14が人体の尻の割れ目に嵌まる断面形状を有しているため、装着具10の装着位置が正しく設定される。また、使用者が装着中に寝返り等で体を動かした場合でも、装着位置がずれ難い。
【0042】
また、この排泄物回収具は、装着具10の後方部材14の側を胴ベルト60に取り付ける後部取付ベルト62や、前方部材15の側を胴ベルト60に取り付ける前部取付ベルト61の胴ベルト60への結合位置を調節すれば、どのような体形の人でも装着することが可能である。
また、この排泄物回収具の拡開部材26は、回収パック30内の空間を拡げ、回収パック30への排泄物の円滑な収納を可能にしている。また、回収パック30の空間を維持することで、排泄物の逆流防止にも貢献している。
また、この排泄物回収具の孔形状保持部材40は、必要な断面積の便通過路を確保するために貢献している。
【0043】
なお、前述した排泄物回収具の構造、寸法、素材等は、全て例示であって、本発明は、それだけに限定されるものではない。
回収パックアダプター20の可撓性筒状部22の伸縮性は、図9に示すように、可撓性筒状部22の端部に輪ゴム24を取り付けることによって実現しても良い。この場合、図10に示すように、回収パックアダプター20を装着具10に装着する際に、輪ゴム24を拡げて、便通過孔11の周縁に設けられた突縁12のくびれ13に引っ掛ける。
【0044】
また、輪ゴム24の代わりに、糸を用いて可撓性筒状部22の開口を収縮させることもできる。この場合、可撓性筒状部22の開口の周りに糸を廻らし、この糸を、投げ縄のように、糸の一端を引いたときに糸の輪が絞まるように形成する。そして、その糸の一端を便通過孔11と回収パックアダプター20との隙間を通して装着具10の下側から引き出し、回収パックアダプター20を装着具10に装着する時には、可撓性筒状部22を便通過孔11の突縁12に被せた状態で糸の一端を引き、糸の輪を絞る。また、回収時には、回収パックアダプター20を装着具10から引き外した後、糸の一端を引き、可撓性筒状部22の開口を締める。
【0045】
また、前部取付ベルト61に代えて紐を使用し、左右の紐の先を胴ベルト60に結んだり、胴ベルト60に挟みこんだりして、装着具10の前方部材15の側を体に固定することもできる。
また、面ファスナーの代わりに接着テープ等を用いて後部取付ベルトや前部取付ベルトの結合を行うことも可能である。
また、回収パックアダプター20の筒体部21は、ポリエチレン等の防水性樹脂フィルムに不織布を重ね合わせた、形状維持性を持つ複合素材で形成し、形状維持性を有しない可撓性筒状部22は、ポリエチレン等の柔軟な防水性樹脂フィルムだけで形成するようにしても良い。
また、回収パック30は、介護用オムツと同様に、不織布から成る透水性シートと吸水材とポリエチレン等の防水性樹脂フィルムとを積層した複合素材で形成し、あるいは、ビニールやポリエチレン等だけで形成することも可能である。
また、拡開部材26は、植物を原料とし、微生物によって分解される乳酸プラスチック等で形成しても良い。
また、ティッシュ部23は、柔らかい布や多孔性ビニール等を用いて形成しても良い。
【0046】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る排泄物回収具は、回収パック及び回収パックアダプターの装着具への装着や回収を、孔形状保持部材とともに行うように構成している。
図12は、この孔形状保持部材を示す図であり、図12(a)は、先端側の平面図、図12(b)は断面図、図12(c)は、後端側の平面図である。図13は、回収パックアダプターの筒体部を示す図であり、図13(a)は、先端側の平面図、図13(b)は断面図、図13c(c)は、後端側の平面図である。図14は、回収パック及び回収パックアダプターの装着具への装着手順を示す図である。
なお、装着具の構成は、第1の実施形態と変わりがない。
【0047】
孔形状保持部材400は、図12に示すように、装着具10の便通過孔11(図2)に下方から挿入できるように、先端側に便通過孔11の内面形状に倣うテーパ状外面401を有し、後端側に凹凸が形成された外面402を有している。この外面402は、孔形状保持部材400が便通過孔11に装着された状態で、便通過孔11から突出する(図14(c)(d))。この外面402は、孔形状保持部材400を便通過孔11に挿入したり抜き取ったりするときの操作部402として設けられており、指との接触抵抗を大きくして操作がし易いように表面に凹凸が形成されている。
また、孔形状保持部材400の内部には、中ほどに円環状の突出部403が設けられている。この突出部403より先端側にはテーバ状の内面があり、先細になっている。
この孔形状保持部材400は、第1の実施形態と同様に、剛性を持つプラスチック等で成形される。
【0048】
回収パックアダプターの筒体部210は、図13に示すように、紙を圧縮して、径の異なる3つの筒状部211、212、213の連続する形状に成形されている。筒状部211の外径は、孔形状保持部材400の先端の内径よりやや小さい。筒状部212の外径は、孔形状保持部材400の突出部403の内径より小さく、孔形状保持部材400の先端の内径よりやや大きい。筒状部213の外径は、孔形状保持部材400の後端側の内径よりやや小さく、前記突出部403の内径より大きい。
この筒体部210は、孔形状保持部材400の操作部402の方向から筒状部211を先頭に挿入され、筒状部213が孔形状保持部材400の突出部403に当接するまで差し込まれる。筒状部213が突出部403に当接したとき、筒体部210の先頭の筒状部211は、孔形状保持部材400から突き出ている。
【0049】
この排泄物回収具の回収パック300は、図14の手順で装着具10に装着される。
図14(a)に示すように、筒体部210の筒状部211には、可撓性筒状部220が予め固着されている。可撓性筒状部220の構成は、第1の実施形態の可撓性筒状部22と変わりがない。この筒体部210の筒状部213を回収パック300に差し込む(図14(a))。
次に、図14(b)に示すように、可撓性筒状部220が固着された筒体部210と回収パック300とを孔形状保持部材400に挿入する。
筒体部210の筒状部213が孔形状保持部材400の突出部403に当接するまで筒体部210を孔形状保持部材400に挿入すると、回収パック300は、筒状部213と孔形状保持部材400との間で圧縮、挟持され、また、筒状部212が孔形状保持部材400のテーパ状の内面に摺接する。そのため、孔形状保持部材400、筒体部210及び回収パック300は、図14(b)の状態に一体化される。
【0050】
次に、図14(c)に示すように、孔形状保持部材400の操作部402を掴み、筒体部210及び回収パック300と一体化した孔形状保持部材400を装着具10の便通過孔11に挿入する。孔形状保持部材400は、テーパ状外面401が便通過孔11の内面に摺接するまで、便通過孔11内に挿入される。このとき、可撓性筒状部220の先端が便通過孔11の上方から現れるので、第1の実施形態と同様に、可撓性筒状部220の先端を拡げて、便通過孔11の周縁に設けられた突縁12に引っ掛ける(図14(d))。この操作で、孔形状保持部材400は、筒体部210及び回収パック300とともに、装着具10に係止される。
【0051】
一方、筒体部210及び回収パック300を装着具10から回収するときは、孔形状保持部材400の操作部402を掴んで、孔形状保持部材400を便通過孔11から引き出す。このとき、筒体部210は、孔形状保持部材400の突出部403に筒状部213が押されて、孔形状保持部材400とともに引き出され、それに伴い、可撓性筒状部22が引っ張られる。そのため、便通過孔11周縁の突縁12に引っ掛かっていた可撓性筒状部22の先端が外れて、筒体部210及び回収パック300が孔形状保持部材400とともに装着具10から引き出される。
なお、このとき、第1の実施形態と同様に、可撓性筒状部22の開口が閉じた状態となり、また、ティッシュ部23が肛門の周りの汚れを拭き取る。
【0052】
次いで、図14(b)から図14(a)の順序で孔形状保持部材400を外した後、筒体部210と回収パック300とを分離して、それらを適切な廃棄先に廃棄する。また、孔形状保持部材400は、新たな筒体部210及び回収パック300を装着具に装着するために使用する。
このように、この排泄物回収具は、機械的強度が高い孔形状保持部材400を掴んで筒体部210及び回収パック300の装着や回収操作ができるため、操作が安定化し、第1の実施形態に比べて、良好な操作性を得ることができる。
【0053】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る排泄物回収具は、装着具の後方部材をY字形状に成形している。
図15(a)は、この装着具の断面図(図15(b)のA−A断面図)、図15(b)は、正面図である。また、図16は、この排泄物回収具を装着した使用者の背中側を示している。
なお、この排泄物回収具の後方部材以外の構成は、第1の実施形態や第2の実施形態と変わりがない。
【0054】
この装着具は、ウレタン樹脂等の柔軟性を持つ合成樹脂で一体成形されており、図15に示すように、後方部材140は、その先端が二つに分岐して、全体としてY字形状を成している。Y字形状に分岐した分岐部141の各々は、図16に示すように、左右の臀部に当接し、各分岐部141の先端は、後部取付ベルト620を介して胴ベルト60に固定される。
【0055】
このように後方部材140をY字形状に成形したのは、仰向けに寝た状態の使用者の苦痛を軽減するためである。
人間の背骨は、側面から見ると、S字状に湾曲しており、仰向けに寝た状態で、胴部分の背骨は、床面との間に多少の隙間を有しているが、尻に近い側の背骨は床面に接している。そのため、この部分の背骨が、後方部材140の延長部分や後部取付ベルト620の上に乗り上げると、激しい痛みに見舞われる場合がある。
この排泄物回収具では、後方部材140をY字形状に成形し、尻に近い背骨が、後方部材140の延長部分や後部取付ベルト620と重ならないようにしているため、こうした使用者の苦痛を回避することができる。
【0056】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態は、便の排泄を介護者に知らせることができる排泄物回収具に関する。
この排泄物回収具は、図17(a)に示すように、装着具10の前方部材15に孔70が設けられており、図17(b)に示すように、この孔70に無線通信モジュール71が収容されている。また、装着具10の便通過孔11の内壁に溝79が設けられており、この溝79に臨んで温度センサ等のセンサ72が配置され、装着具10に埋め込まれた導線73がセンサ72と無線通信モジュール71とを接続している。その他の構造は、第1の実施形態と変わりがない。
【0057】
無線通信モジュール71は、図18に示すように、アンテナ717を通じて無線信号を送受信する無線回路711と、送受信信号を変復調するためのデジタル信号処理を行うデジタル処理部712と、センサ72の検知信号から便の排泄を識別するマイコン713と、センサ72の検知信号をマイコン713に伝える信号インタフェース714と、所定の周波数で発振する発振器715と、ボタン電池から成る電源716とを具備しており、無線回路711、デジタル処理部712、マイコン713及び信号インタフェース714が1チップのLSIに収められ、それにアンテナ717、発振器715及び電源716が外付けされて、全体で1円玉程度の大きさに構成されている。
【0058】
センサ72は、図19(a)に模式的に示すように、長円形状を有する便通過孔11の無線通信モジュール71に近い側に配置されている。
無線通信モジュール71のマイコン713は、所定時間間隔(例えば3秒間隔)でセンサ72の検知情報を取得する。例えば、センサ72が温度センサである場合、排泄された便が回収パックアダプター20の筒体部21を通過する際に、温度センサは、温度の上昇を検知する。マイコン713は、温度センサによって検知された温度の変化から便の排泄を識別すると、介護者の手元に置かれた無線通信装置80に検出信号を送信する。この信号を受信した無線通信装置80は、音や光、振動等でそれを介護者に伝える。
そのため、介護者は、排泄された便を直ぐに回収することができる。
【0059】
センサ72には、“におい”を感知する“においセンサ”等を用いることもできる。また、図19(b)に示すように、長円形状の便通過孔11の短軸方向に一対の電極74、75を配置し、電極74、75間の静電容量の変化に基づいて、回収パックアダプター20の筒体部21での便の通過を検出することもできる。また、電極74、75の位置に超音波の送受信機を配し、一方の送信機74から超音波を発振して他方の受信機75で受信し、その受信信号の変化から、便の通過を検出するようにしても良い。
【0060】
また、図20(b)に示すように、センサ77に接続したRFIDタグ76を使い捨ての回収パックアダプター20の内部に配置し、RFIDタグ76への給電やRFIDタグ76からの情報の読み取りを行う非接触通信アンテナ78を装着具10便通過孔11の側に配置し、マイコン713が、非接触通信アンテナ78で読み取った情報に基づいて便の排泄を識別するようにしても良い。
電池を持たないパッシブ形のRFIDタグ76は、アンテナ762とICチップ761とを具備し、非接触通信アンテナ78からの電波から電力を生成して起動する。電波は所定時間間隔で発信し、電力を節約しても良い。
起動したICチップ761は、センサ77の検知信号をデジタルデータに変換してアンテナ762から送信する。この検知信号は、非接触通信アンテナ78で受信されてマイコン713に送られ、マイコン713は、その検知信号の変化から便の排泄を識別すると、検出信号を無線通信装置80に送信する。
【0061】
この場合、センサ77には、便の温度を検知する温度センサや、便に含まれた水分を検知する湿度センサ、アンモニアを検知する“においセンサ”等を用いることができる。
このように、この排泄物回収具は、装着者(被介護者)が便を排泄すると、それを介護者に知らせることができるため、速やかな便の回収が可能になり、悪臭の拡散を回避することができる。
【0062】
(第5の実施形態)
第1〜4の実施形態の排泄物回収具の試作品を試してみると、次のような改良すべき点が見出された。
この排泄物回収具は、装着具に便通過孔を設けて、そこに筒状の回収パックアダプターを挿入しているが、この便通過孔の孔面積や回収パックアダプターの筒の断面積が小さいと、肛門が便通過孔から外れる虞があり、また、排泄された便が速やかに回収パックに到達しない虞がある。そのため、便通過孔の孔面積は、できるだけ広く設定する必要があるが、装着具を股に装着する構造では、便通過孔を大きくするために装着具の横幅を拡げると、装着具が股を圧迫し、長時間使用したときに苦痛が伴う。
また、肛門の位置が確認し難いため、肛門と便通過孔とを一致させて装着具を装着することが難しい。
また、装着具の先端に結びつけた紐や後端の延長部分を使用者の胴に回したベルトに結合する構成では、使用者が頻繁に寝返りを打ったときに装着具の位置がずれる虞がある。
また、装着具の後端の延長部分が身体の下敷きになっている状態が長時間続くと、この延長部分による局所的な圧迫により背中や腰に痛みが発生する。
【0063】
第5の実施形態の排泄物回収具は、こうした点の改善を図っている。
図21は、パンツ型おむつに固定した本発明の第1の実施形態に係る排泄物回収具の断面図であり、図22は、この排泄物回収具の装着具を示す図、図23は、この排泄物回収具をパンツ型おむつにセットする手順を示す図、図24は、装着具の内在部材がパンツ型おむつに配置された状態を示す図、図25は、回収パック及び回収パックアダプターが装着された挿入部材をパンツ型おむつに挿入するときの状態を示す図である。また、図26、図27、図28は、この排泄物回収具で用いる回収パック及び回収パックアダプターを示す図である。
【0064】
まず、回収パック及び回収パックアダプターについて説明する。
図26に示すように、回収パック830は、折畳み可能な紙などで形成され、この回収パック830の口の部分に、厚い紙で成形された口形状保持部材821が接着される。回収パックアダプター820は、口形状保持部材821に被せる筒状部分と、伸縮性を有するティッシュ部823とを具備し、筒状部分が口形状保持部材821に接着される。ティッシュ部823は、柔軟性を有する紙などを重ね合わせて形成され、伸縮性を持たせるためにゴム糸などがリング状に縫い込まれている。
図27(a)は、回収パックアダプター820に結合された回収パック830を示し、図27(b)は、この回収パック830を広げた状態を示している。また、図28は、回収パックアダプター820と結合した回収パック830の断面図を示している。
【0065】
この排泄物回収具の装着具は、図22に示すように、パンツ型おむつの内側に配置される内在部材810と、パンツ型おむつの外側からパンツ型おむつの孔に挿入されて内在部材810に係合する挿入部材840とを有し、また、パンツ型おむつの孔を縁取る縁部材850がパンツ型おむつに固定される。この内在部材810及び挿入部材840は、軟質なゴム素材で成形され、縁部材850は硬質な合成樹脂で成形される。
内在部材810は、挿入部材840が挿入される筒状部814と、筒状部814の一方に設けられた皿状部813と、筒状部814の反対側に設けられた鍔部815とを有している。筒状部814の内面には、挿入部材840の外面と係合するリング状の凹凸襞(ひだ)が形成されている。皿状部813は、使用者の尻に当接して、排泄された大便が脇に漏れるのを防いでいる。皿状部813の前方部分には、小便の排泄を妨げないように切除部816が形成され、また、後方部分には切溝817が形成されている。そのため、皿状部813は、右側部分と左側部分とが独立して弾性変形し、使用者の尻に密着することができる。
【0066】
挿入部材840は、筒状部841と、鍔部842とを有している。筒状部841の内側は、便通過孔845となる。筒状部841の外面には、内在部材810の内面の凹凸襞と係合するリング状の凹凸襞が形成されている。筒状部841の端縁(突縁)843には、後述するように、回収パックアダプター820のティッシュ部823が係合され、突縁843は、その状態で肛門の周囲に当接する。この突縁843の前方部分及び後方部分には、山型844が形成されているが、これは、突縁843を肛門の周囲の体形にフィットさせるために設けられている。
また、縁部材850は、外周にパンツ型おむつが入り込む凹溝851を有しており、図21に示すように、パンツ型おむつの孔の周縁部材が凹溝851内に固定され、縁部材850で縁取られた孔が、パンツ型おむつに予め形成される。
図23に示すように、装着具の内在部材810は、パンツ型おむつ860の内側からパンツ型おむつ860に設けられた孔862の位置に装着される(a)(b)(c)。
【0067】
パンツ型おむつ860は、図24、図25に示すように、内側に体液を吸収するための吸収体(尿パッド)861が配置された市販の製品であり、ただ、肛門に対応する位置に孔862が設けられている点だけが相違している。
内在部材810は、鍔部815がパンツ型おむつ860の孔862を縁取る縁部材850に接するまで挿入される(図23(c))。図24には、内在部材810が装着された状態のパンツ型おむつ860の内側を図示している。
【0068】
図23(a)(b)に示すように、回収パック830と一体化された回収パックアダプター820は、挿入部材840に差し込まれ、図23(b)に示すように、伸縮性を持つティッシュ部823が挿入部材840の先端から突出すると、このティッシュ部823を押し広げ、反転させて挿入部材840の突縁843に引っ掛ける(図23(c))。こうして、回収パック830、回収パックアダプター820及び挿入部材840が一体化される。
なお、この状態において、回収パックアダプター820の一部は、挿入部材840の下方から露出しており、後述するように、回収パックの回収が、この露出した部分を掴んで行われる。
次に、図23(d)に示すように、挿入部材840がパンツ型おむつ860の孔862から挿入され、挿入部材840の鍔部842がパンツ型おむつ860の孔862を縁取る縁部材850に接するまで、内在部材810の筒状部814に差し込まれる。図25は、回収パック830及び回収パックアダプター820と一体化された挿入部材840がパンツ型おむつ860の孔862に挿入されるときの様子を示している。
【0069】
このとき、挿入部材840の外面の凹凸襞が内在部材810の内面の凹凸襞に係合し、挿入部材840は、内在部材810の内側に係止される。また、挿入部材840の鍔部842と内在部材810の鍔部815とが、パンツ型おむつ860の孔862に固定された縁部材850を挟みつけることにより、内在部材810及び挿入部材840から成る装着具が、パンツ型おむつ860に固定される。
このパンツ型おむつ860を使用者に穿かせた後、図23(e)に示すように、回収パック830が広げられる。
【0070】
図21は、使用者の尻850の位置に装着された排泄物回収具の断面を示している。肛門の周囲には、挿入部材840の突縁843が回収パックアダプター820のティッシュ部823を介して接触し、さらに、その周りに、内在部材810の皿状部813が接触する。そのため、排泄された便が、万一、挿入部材840の外側に流れ出た場合でも、皿状部813により、それ以上の拡散が抑えられる。
排泄された便は、回収パックアダプター820を通過して、回収パック830に収納される。
排泄物の回収は、挿入部材840から露出した回収パックアダプター820の部分を掴み、引き抜くことによって行われる。この操作により、挿入部材840の突縁843に引っ掛かっていたティッシュ部823が外れて収縮し、回収パックアダプター820の開口が閉じられる。また、ティッシュ部823は、収縮する過程で肛門の周りの汚れを拭き取る。
【0071】
抜き取られた回収パックアダプター820及び回収パック830は、排泄物とともに廃棄される。
また、挿入部材840は、内在部材810から引き出され、新しい回収パックアダプター820及び回収パック830が装着された後に、再び、パンツ型おむつ860の孔862から挿入され、内在部材810に係止される。
【0072】
このように、この排泄物回収具は、パンツ型おむつに固定されるため、使用者がパンツ型おむつを正しく穿くことにより、肛門に対向する適切な位置に装着される。
また、この排泄物回収具は、便通過孔を大きく設定することができるから、肛門と便通過孔との位置ずれが回避でき、また、排泄された便の回収パックへの円滑な移動が可能になる。
また、この排泄物回収具では、肛門の周囲にだけ装着具が接触し、使用者の腰や背中には、ソフトに構成されたパンツ型おむつ以外の異物が接触しないため、長時間装着した場合でも、使用者に身体的な苦痛が生じない。
【0073】
また、この排泄物回収具は、便通過孔のさらに外側に皿状部を有しているため、排泄された便が、万一、便通過孔の外側に流れ出た場合でも、皿状部により、それ以上の拡散が抑えられる。
また、この排泄物回収具では、回収パックの回収時に、回収パックに通じる開口が、伸縮性を有するティッシュ部により閉じられるため、回収作業中に排泄物がこぼれ出る虞が無い。また、このとき、肛門付近の汚れがティッシュ部で拭き取られるため、回収作業が容易であり、回収時の作業負担が軽減される。
なお、前述した排泄物回収具の構造や素材等は、全て例示であって、本発明は、それだけに限定されるものではない。
【0074】
(第6の実施形態)
図29は、パンツ型おむつに固定した本発明の第6の実施形態に係る排泄物回収具の断面図であり、図30は、この排泄物回収具の装着具を示す図である。
この排泄物回収具の装着具は、第1の実施形態の挿入部材840に相当する部材のみで構成され、パンツ型おむつへの固定が面ファスナーを使って行われる。なお、回収パック及び回収パックアダプターの構成は、第1の実施形態(図26、図27、図28)と同じであり、また、パンツ型おむつの構成も第1の実施形態と変わりがない。
【0075】
図30に示すように、この装着具900は、便通過孔を有する筒状部901と、この筒状部901の端縁(突縁)903の反対側に設けられた固定板902と、固定板902に固着された面ファスナー904とを有している。
この装着具900には、回収パックと一体化された回収パックアダプターが、第1の実施形態の挿入部材840に対する場合と同様の手順で、装着される(図23)。
回収パック及び回収パックアダプターが装着された装着具900は、パンツ型おむつ860の孔から、固定板902が孔を縁取る縁部材850に接するまで挿入され、図29に示すように、固定板902の面ファスナー904をパンツ型おむつ860の外面にくっ付けて、パンツ型おむつ860に固定される。
【0076】
排泄物の回収は、装着具900から露出した回収パックアダプター820の部分を掴み、引き抜くことによって行われる。このとき、装着具900の突縁903に引っ掛かっていた回収パックアダプター820のティッシュ部823が外れて収縮し、回収パックアダプター820の開口が閉じられるとともに、ティッシュ部823により肛門の周りの汚れが拭き取られる。
抜き取られた回収パックアダプター820及び回収パック830は、排泄物とともに廃棄される。
また、装着具900は、面ファスナー904をパンツ型おむつ860から外して、パンツ型おむつ860から引き出され、新しい回収パックアダプター820及び回収パック830が装着された後に、再び、パンツ型おむつ860の孔から挿入され、パンツ型おむつ860に面ファスナー904で固定される。
このように、この排泄物回収具は、使用者がおむつを穿いたままの状態でセットすることができる。
なお、第5及び第6の実施形態では、パンツ型おむつを使用する場合について説明したが、本発明は、それに限らず、パンツ型おむつを展開してテープなどで再係止できるようにした型式のおむつや、おむつカバーを使用するオープンタイプのおむつなど、各種のおむつに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の排泄物回収具は、老人や病人、あるいは幼児等の被介護者における排泄物処理を、被介護者の不快を減らし、介護者の負担を減らし、且つ、資源の無駄を排して実行することができるものであり、多くの被介護者の利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施形態における排泄物回収具の断面図
【図2】本発明の第1の実施形態における排泄物回収具の装着具の形状を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態における排泄物回収具の孔形状保持部材の形状を示す図
【図4】本発明の第1の実施形態における排泄物回収具の回収パックアダプターの形状を示す図
【図5】本発明の第1の実施形態における排泄物回収具の拡開部材の形状を示す図
【図6】本発明の第1の実施形態における排泄物回収具の回収パックの形状を示す図
【図7】本発明の第1の実施形態における排泄物回収具の装着状態を示す図
【図8】本発明の第1の実施形態における排泄物回収具の装着具及び孔形状保持部材の他の形状を示す図
【図9】本発明の第1の実施形態における排泄物回収具の回収パックアダプターの他の形状を示す図
【図10】図9の回収パックアダプターの装着具への装着状態を示す図
【図11】本発明の第1の実施形態における排泄物回収具の装着者が寝ている状態を示す図
【図12】本発明の第2の実施形態における排泄物回収具の孔形状保持部材を示す図
【図13】本発明の第2の実施形態における排泄物回収具の筒体部を示す図
【図14】本発明の第2の実施形態における排泄物回収具の回収パック及び回収パックアダプターの装着具への装着手順を示す図
【図15】本発明の第3の実施形態における排泄物回収具の装着具の断面図(a)と正面図(b)
【図16】図15の排泄物回収具の装着状態を示す図
【図17】本発明の第4の実施形態における排泄物回収具の平面図(a)と断面図(b)
【図18】図17の無線通信モジュールの構造を示す図
【図19】本発明の第4の実施形態における排泄物回収具のセンサの位置を示す図
【図20】本発明の第4の実施形態における排泄物回収具に用いるRFIDタグと非接触通信アンテナとの位置を示す図
【図21】本発明の第5の実施形態における排泄物回収具の断面図
【図22】図21の排泄物回収具の装着具を示す図
【図23】図21の排泄物回収具をパンツ型おむつにセットする手順を示す図
【図24】図21の排泄物回収具の内在部材がパンツ型おむつに配置された状態を示す図
【図25】図21の排泄物回収具の挿入部材をパンツ型おむつに挿入するときの状態を示す図
【図26】図21の排泄物回収具で用いる回収パック及び回収パックアダプターの分解図
【図27】図26の回収パックの畳んだ状態(a)と広げた状態(b)を示す図
【図28】図27の回収パックの断面図
【図29】本発明の第6の実施形態における排泄物回収具の断面図
【図30】図29の排泄物回収具の装着具を示す図
【符号の説明】
【0079】
10 装着具
11 便通過孔
12 突縁
13 くびれ
14 後方部材
15 前方部材
16 溝
17 面ファスナー
18 溝
20 回収パックアダプター
21 筒体部
22 可撓性筒状部
23 ティッシュ部
24 輪ゴム
25 係止部
26 拡開部材
30 回収パック
31 便収納部
32 入口
40 孔形状保持部材
41 鍔
50 使用者
51 背側
52 前側
54 肛門
60 胴ベルト
61 前部取付ベルト
62 後部取付ベルト
63 オムツ
70 孔
71 無線通信モジュール
72 センサ
73 導線
74 電極または超音波送信機
75 電極または超音波受信機
76 RFIDタグ
77 センサ
78 非接触通信アンテナ
79 溝
80 無線通信装置
140 後方部材
141 分岐部
210 筒体部
211 筒状部
212 筒状部
213 筒状部
220 可撓性筒状部
300 回収パック
400 孔形状保持部材
401 テーパ状外面
402 操作部
403 突出部
620 後部取付ベルト
711 無線回路
712 デジタル処理部
713 マイコン
714 信号インタフェース
715 発振器
716 電源
717 アンテナ
761 ICチップ
762 アンテナ
810 内在部材
813 皿状部
814 筒状部
815 鍔部
816 切除部
817 切溝
820 回収パックアダプター
821 口形状保持部材
823 ティッシュ部
830 回収パック
840 挿入部材
841 筒状部
842 鍔部
843 突縁
844 山型
845 便通過孔
850 縁部材
851 凹溝
860 パンツ型おむつ
861 尿パッド
862 孔
900 装着具
901 筒状部
902 固定板
903 突縁
904 面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の尻部に装着される装着具と、
肛門から排泄された便を収納する回収パックと、
前記回収パックを固定した状態で前記装着具に保持され、使用者に接する部位に薄葉状のティッシュ部を有する回収パックアダプターと、
を備えることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項2】
孔の周囲に突縁が形成された便通過孔を有し、前記便通過孔が肛門に対向するように使用者の尻部に装着される装着具と、
前記肛門から排泄された便を収納する回収パックと、
前記装着具の便通過孔の内側に配置される筒状部を有し、前記筒状部の収縮性を有する一端が前記便通過孔の突縁に着脱可能に被着され、前記筒状部の他端に前記回収パックが固定される回収パックアダプターと、
を備え、前記回収パックアダプターの筒状部の前記一端に薄葉状のティッシュ部が配置され、前記回収パックアダプターを結合した前記装着具を使用者の尻部に装着したとき、前記ティッシュ部が肛門の周囲に接することを特徴とする排泄物回収具。
【請求項3】
請求項2に記載の排泄物回収具であって、前記回収パックアダプターを前記装着具から引き抜いて前記回収パックを回収するとき、前記回収パックアダプターの筒状部の前記一端が収縮して前記筒状部の開口が閉鎖され、且つ、前記ティッシュ部により肛門付近が拭われることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項4】
請求項2または3に記載の排泄物回収具であって、前記回収パックアダプターが、さらに、前記回収パックの内側を拡げて便の入り込むスペースを確保する拡開部材を備えることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載の排泄物回収具であって、前記装着具が、柔軟性を有する素材で成形され、前記便通過孔の内側に、該便通過孔の潰れを防止する、剛性を有する孔形状保持部材を備えることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項6】
請求項5に記載の排泄物回収具であって、前記孔形状保持部材は、前記便通過孔の肛門に対向しない側の端部から突出して把持が可能な操作部を有し、前記回収パックアダプターの筒状部は、前記孔形状保持部材の内側に配置されて、前記孔形状保持部材との間で前記回収パックを挟持し、前記回収パックアダプターを前記装着具から引き抜くとき、前記孔形状保持部材の操作部が把持されて、当該孔形状保持部材と前記回収パックアダプターとが共に前記装着具から引き抜かれることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項7】
請求項2から6のいずれかに記載の排泄物回収具であって、前記装着具が、前記便通過孔に連なる後方部材と前方部材とを備え、前記後方部材が、人体の尻部の形状に沿った断面形状を有し、前記前方部材が、先端に紐状体を挿通する溝を有していることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項8】
請求項7に記載の排泄物回収具であって、前記後方部材の先端が、二つの分岐部に分岐して、前記後方部材が全体としてY字形状を有し、前記分岐部の各々が左右の臀部に当接することを特徴とする排泄物回収具。
【請求項9】
請求項7に記載の排泄物回収具であって、さらに、便の排泄を検知する検知手段と、前記検知手段で検知された情報を無線信号により送信する無線通信モジュールとを具備し、前記装着具の前方部材に、前記無線通信モジュールを収納するための孔が設けられていることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項10】
請求項9に記載の排泄物回収具であって、前記検知手段が、前記装着具の便通過孔に臨む位置に配置されていることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項11】
請求項9に記載の排泄物回収具であって、前記検知手段が、前記回収パックアダプターの筒状部の内部に配置され、前記検知手段の検知情報を読み取る手段が前記装着具の便通過孔に臨む位置に配置されていることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項12】
請求項7から11のいずれかに記載の排泄物回収具であって、前記装着具の後方部材の先端が、取付部材を介して、使用者の胴に回したベルトに結合され、前記前方部材の溝に通した紐状体が前記ベルトに係止されて、前記装着具が使用者の尻部に装着されることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項13】
請求項1に記載の排泄物回収具であって、
前記回収パックアダプターは、一端に前記回収パックが結合され、他端に伸縮性を有する前記ティッシュ部が設けられた筒状体で構成され、
前記装着具は、前記回収パックアダプターが内側に配置される便通過孔と、前記回収パックアダプターの前記ティッシュ部が押し広げられ、反転されて係合される突縁と、当該装着具をおむつに設けられた孔に固定するための固定手段と、を有し、
前記おむつを穿いた使用者の尻部に前記装着具の前記突縁が当接して前記ティシュ部が肛門の周囲に接触し、前記回収パックが、前記おむつの外部に露出することを特徴とする排泄物回収具。
【請求項14】
請求項13に記載の排泄物回収具であって、前記装着具は、前記おむつの内側に配置される内在部材と、前記おむつの外側から当該おむつの前記孔に挿入されて前記内在部材に係合する挿入部材とを有し、
前記内在部材は、前記挿入部材が挿入される第一筒状部と、前記第一筒状部の尻部側に設けられた尻部当接用の皿状部と、前記第一筒状部の反対側に設けられた前記固定手段を構成する第一鍔部と、を有し、
前記挿入部材は、前記便通過孔を備えると共に一端に前記突縁を備えた第二筒状部と、前記第二筒状部の他端に設けられた前記固定手段を構成する第二鍔部と、を有し、
前記内在部材の第一筒状部の内面と前記挿入部材の第二筒状部の外面との接触により前記挿入部材が前記内在部材に係合し、前記内在部材の第一鍔部と前記挿入部材の第二鍔部とが前記おむつの前記孔の周辺を挟み込むことで前記装着具が前記おむつの孔に固定されることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項15】
請求項14に記載の排泄物回収具であって、前記内在部材の皿状部には、使用者の身体の前側に対応する前方部分に切除部が形成され、使用者の身体の後ろ側に対応する後方部分に切溝が形成され、前記皿状部が前記切除部及び切溝により左右に分離されていることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項16】
請求項15に記載の排泄物回収具であって、前記挿入部材の前記突縁を備えた端部は、使用者の身体の前側に対応する前方部分、及び、使用者の身体の後ろ側に対応する後方部分が山型に成形されていることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項17】
請求項13に記載の排泄物回収具であって、前記装着具が、前記便通過孔を備えると共に一端に前記突縁を備えた第三筒状部と、前記第三筒状部の他端に設けられた前記固定手段を構成する固定板と、前記固定板に固着された面ファスナーと、を有し、
前記第三筒状部が前記おむつの外側から当該おむつの前記孔に挿入され、前記固定板が前記面ファスナーで前記おむつの外面に結合されて、前記装着具が前記おむつの孔に固定されることを特徴とする排泄物回収具。
【請求項18】
請求項17に記載の排泄物回収具であって、前記第三筒状部の前記突縁を備えた端部は、使用者の身体の前側に対応する前方部分、及び、使用者の身体の後ろ側に対応する後方部分が山型に成形されていることを特徴とする排泄物回収具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図11】
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【図16】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−56285(P2009−56285A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58850(P2008−58850)
【出願日】平成20年3月8日(2008.3.8)
【出願人】(000141303)株式会社丸菱バイオエンジ (3)
【出願人】(390041346)新光電子株式会社 (38)
【出願人】(596160746)株式会社コクサン (4)
【出願人】(506402528)株式会社 清水理化学機器製作所 (2)
【出願人】(596102562)▲高▼崎科学器械株式会社 (2)
【出願人】(506402399)古江サイエンス株式会社 (2)
【出願人】(506402780)株式会社 離合社 (2)
【Fターム(参考)】