説明

掘削ツール機器のための吸出装置

【課題】粉塵の負荷を減らすための掘削ツール機器用の吸出装置を開発するとともに、この吸出装置を備えた掘削ツール機器の摩耗を減少させる。
【解決手段】掘削ツール機器(6)のための吸出装置(11)は、第1端部(12)と第2端部(13)とを備える。吸出装置は、長手方向軸線(14)に沿って延びるとともに、掘削ツール機器のツール(7)を少なくとも領域的に覆うための収容空間(15)を有する。吸出装置は、さらに、固定装置(16)と、長手方向軸線に対して所定の角度(A)だけ傾けて配置された真空源のための連結装置(17)とを備える。第1衝突壁(21)と第2衝突壁(26)とを互いに離間させて吸出装置の内部に設ける。第1衝突壁を連結装置と吸出装置の第1端部との間に配置し、第2衝突壁を第1衝突壁と吸出装置の第1端部との間に配置する。第1衝突壁および第2衝突壁に、それぞれ掘削ツール機器のツールのための貫通開口(22、27)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1前段に示すような、掘削ツール機器のための吸出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱物性の下地(例えば、コンクリート壁またはコンクリート天井)を吸出装置(例えばドリルハンマー、コンビハンマー、またはチゼルハンマー)によって加工する際、削り取られた材料の破片または粉塵が発生する。特に、発生した粉塵粒子が、例えばハウジングの内部空間において、周囲を汚染するとともに、ユーザの作業を阻害する。
【0003】
国際公開第95/20440号パンフレット(特許文献1)には、電動手持ドリル機械のための吸出装置が記載されており、この吸出装置は第1端部とこの第1端部の逆側に配置された第2端部とを有し、この吸出装置は長手方向軸線に沿って延びるとともに、ドリル機械のツールを領域的に覆うための収容空間を有する。吸出装置の第1端部には、吸出装置を掘削ツール機器に固定するための固定装置が設けられる。さらに、吸出装置は弾性部を有し、この弾性部はその長さ方向が吸出装置の長手方向軸線と平行に収縮可能であるとともに、その自由端が吸出装置の第2端部を構成する。加えて、この吸出装置に真空源の吸入管との連結装置として連結ソケットを設け、この連結装置を、吸出装置の長手方向軸線に対して所定の角度だけ傾けて配置する。
【0004】
下地の加工のために、吸出装置の第2端部を下地に当接させるとともに、掘削の際に発生した粉塵および削り取られた材料の破片を例えば産業用集塵機の形で構成した真空源によって吸出する。この弾性部は、ツールを下地に付き差した際に吸出装置が前方移動した場合、および下地に対する垂線から掘削ツール機器の向きが傾いた場合にも、吸出装置の下地に対する当接を維持する。吸出装置の長手方向軸線に対して所定の角度だけ傾けて配置された連結装置により、吸出装置の内部において、発生した粉塵粒子を適切に吸出する吸引気流が生じる。
【0005】
このような既知の解決策には、それにも関わらず、異なるサイズオーダーの多くの粉塵粒子が掘削ツール機器のツールチャックに到達する可能性があり、ここにおいてツールチャックに高い摩耗を生じる欠点がある。さらに、ツールチャックの領域において発生した粉塵の伝播により、ツールのソケットおよびさらには掘削ツール機器の打撃機構に高い摩耗を生じる可能性がある。
【0006】
英国特許第1334366号明細書(特許文献2)には、電動手持ドリル機械のための吸引装置が記載されており、この吸引装置は、手持ドリル機械のツールチャックのための収容空間を備える中間壁と、ツールチャックに配置されたツールのための貫通開口とを有する。
【0007】
このような既知の解決策には、吸出装置において、望ましくない乱流が発生する可能性があり、従って粉塵粒子がツールチャックにまで拡散する可能性がある。これが、中間壁とツールチャックとの間の隙間に入り込み、ここにおいて、特にツールチャックが回転する際に、これに高い摩耗を生じる。
【0008】
【特許文献1】国際公開第95/20440号パンフレット
【特許文献2】英国特許第1334366号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、粉塵負荷を低減する掘削ツール機器用の吸出装置を開発することにあり、同時に、前記吸出装置を備えた掘削ツール機器の摩耗を減少させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、独立請求項に記載の特徴によって解決される。好適な発展態様を従属請求項に示す。
【0011】
本発明によると、第1衝突壁と少なくとも1つの別の衝突壁とを互いに離間させて吸出装置の内部に設ける。第1衝突壁を連結装置と吸出装置の第1端部との間に配置し、少なくとも1つの別の衝突壁を第1衝突壁と吸出装置の第1端部との間に配置する。第1衝突壁および少なくとも1つの別の衝突壁に、それぞれ掘削ツール機器のツールのための貫通開口を設ける。
【0012】
気流の上流の少なくとも2つの互いに離間された衝突壁によって、発生した粉塵粒子の充分な吸引が保証されるとともに、粉塵粒子の掘削ツール機器に対する侵入が防止される。第2衝突壁は、例えば、吸出装置の収容空間に、保持装置または接着装置等によって固定される部材として構成する。衝突壁の貫通開口は、好適には、貫通開口とツールとの間の環状の隙間を画定するため、通常掘削ツール機器と一緒に使用されるツールに合わせて調節する。第1衝突壁の環状の隙間を通って侵入する可能性のある粉塵粒子は、大部分が第1衝突壁と少なくとも1つの別の衝突壁との間の間隙に捕捉される。さらに別の衝突壁を吸出装置に設けた場合には、少なくとも1つの別の衝突壁の環状の隙間を通って到達した粉塵粒子が、別の間隙に捕捉される。個々のごく少数の粉塵粒子が、本発明の吸出装置の構成にもかかわらず掘削ツール機器のツールチャックに到達した場合であっても、その数および大きさは非常に小さく、掘削ツール機器のおよび特にツールチャックの摩耗を無視できる程度に増加させるに過ぎない。
【0013】
衝突壁の数は少なくとも2つであり、吸引装置の最終的な形態に応じて、随意に多くすることができる。好適には、2〜10の衝突壁、特に好適には2〜4の衝突壁を1つの吸引装置に設ける。
【0014】
吸引装置が弾性部を有すると好適であり、この弾性部は、吸出装置が前方移動した場合および掘削ツール機器の向きが傾いた場合にも、吸出装置の下地に対する当接を維持する。
【0015】
固定装置は、好適には吸引装置を掘削ツール機器に脱着可能に固定するように構成するとともに、さらに例えば、吸引装置のハウジング部分に対するまたは掘削ツール機器のツールチャックに対する固定を可能にする締め付け素子を備える。ツールチャックが回転する際、吸引装置を例えばスライド軸受または転がり軸受によって固定できる。
【0016】
少なくとも第1衝突壁を吸出装置の長手方向軸線に対して傾けて配置すると好適であり、これにより、真空源によって発生した吸引気流が適切に迂回し、従って、これによって移送される粉塵粒子が、適切に吸出される。少なくとも第1衝突壁を吸出装置の長手方向軸線に対して20°から70°傾けて配置すると好適である。少なくとも1つの別の衝突壁も、吸出装置の長手方向軸線に対して傾斜させることができ、この場合、これを、例えば第1衝突壁と同一の傾き方向、これに対して平行または逆向きに配置することができる。
【0017】
少なくとも第1衝突壁を連結装置の向きに平行に配置すると好適であり、これによって、真空源によって発生した吸引気流が特に適切に迂回する。
【0018】
少なくとも第1衝突壁がアーチ形であり、第1衝突壁によって形成される凹状の空間が、吸出装置の第2端部と向かい合うと好適である。アーチ形の衝突壁により、吸引装置が内部においてより少ない数の端縁を有するので、吸引装置の内部における望ましくない乱流の数を減少させることができ、従って、真空源によって発生した吸引気流の効率性が高まる。
【0019】
アーチ形の衝突壁の両方の主湾曲軸のうち一方のみの曲率が、ほぼ0(零)または数学的な意味で0(零)に等しいと好適であり、従って、これは直線に相当する。この場合、主湾曲軸とは、対応する衝突壁のアーチ形を画定する互いに直交する方向を向いた両方の主湾曲軸を意味する。アーチ形の衝突壁は、基本的に中空シリンダ状の形状を有し、その外端は、吸出装置の壁部に気密的に結合される。
【0020】
アーチ形の第1衝突壁の略0°の主湾曲軸を、連結装置の向きに対して平行に延在させると好適であり、これにより、吸引装置の内部における望ましくない乱流の数をさらに減少させることができる。
【0021】
少なくとも1つの吸入開口を衝突壁と吸出装置の第1端部との間に設け、これを通って、第1衝突壁と吸出装置の第1端部との間の領域の掃気のため、周囲の空気を真空源によって吸入するようにすると好適である。いわゆるエアカーテンを形成し、これによって、粉塵が掘削ツール機器の方向に衝突壁と掘削ツール機器のツールチャックとの間の環状の隙間を通って伝播するのを、充分に防止する。小さな横断面を有する複数の吸入開口を設け、周囲に存在する汚染物質のうち無視できる程度の割合のみが、第1衝突壁と吸出装置の第1端部との間の領域に吸入されるようにすると好適である。
【0022】
少なくとも1つの吸入開口を少なくとも1つの別の衝突壁と吸出装置の第1端部との間に設けると好適であり、特に掘削ツール機器のツールチャックの前方領域が、真空ポンプを作動させた際、充分に掃気されるとともに、ツールチャックに対する粉塵粒子の侵入が充分に防止される。
【0023】
少なくとも1つの吸入開口を、好適には吸出装置の壁部に設けられた孔とすると好適である。複数の孔を、吸引装置の長手方向軸線に対して横断する方向に延在する平面に、基本的に互いに同程度に離間させて設けると特に好適である。第1衝突壁と吸出装置の第1端部との間の領域の掃気をより良好にするために、吸引装置を好適には密封状態で掘削ツール機器に固定し、これによって、少なくとも1つの吸入開口による吸引効果を向上させる。
【0024】
少なくとも1つの吸入開口を吸出装置の長手方向軸線に対して平行に延在する溝とし、この溝を吸出装置の第1端部の領域に配置すると好適である。例えば、吸出装置を、第1端部の領域において、少なくとも1つの溝を形成するため、掘削ツール機器のハウジングに対して少なくとも領域的に離間させて配置する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下では、本発明の実施例を参照して本発明を詳細に説明する。基本的に、図中における同一の部分には同一の符号が付されている。
【0026】
図示の掘削ツール機器6、例えばハンマドリルのための吸出装置11は、第1端部12と、この第1端部12とは逆側に配置された第2端部13とを有する。吸出装置11は、長手方向軸線14に沿って延在するとともに、掘削ツール機器6のツール7を全体的に覆うための収容空間15を有する。収容空間15は、非弾性の環状部18と弾性部19とによって形成され、非弾性部18は、吸出装置11の第1端部12から吸出装置11の第2端部13の方向に延在する。弾性部19は、非弾性部18に繋がる形で延在し、その自由端は吸出装置11の第2端部を形成する。
【0027】
吸出装置11の第1端部12には、吸出装置11を掘削ツール機器6に固定するために固定装置16を設け、この固定装置16はこの実施例ではクランプとして構成する。吸出装置11は、さらに、真空源のための連結ソケットとして形成された連結装置17を有し、この連結装置17は、吸出装置11の長手方向軸線14に対して45°の角度Aだけ傾けて配置する。
【0028】
第1衝突壁21および第2衝突壁26を吸出装置11の内部で互いに離間して配置し、第1衝突壁21を連結装置17と吸出装置11の第1端部12との間に配置し、第2衝突壁26を第1衝突壁21と吸出装置11の第1端部12との間に配置する。第1衝突壁21および第2衝突壁26は掘削ツール機器6のツール7のための貫通開口22または27をそれぞれ有する。第2衝突壁26と吸出装置11の第1端部12との間では、掘削ツール機器6のツールチャック9が吸出装置11によって覆われる。
【0029】
第1衝突壁21は吸出装置11の長手方向軸線14に対して斜めに、連結装置17の方向に対して平行に配置する。さらに、第1衝突壁21はアーチ形であり、第1衝突壁21によって形成される凹状空間23は、吸出装置11の第2端部13の方を向く。アーチ形の第1衝突壁21の両方の主湾曲軸のうち一方のみが、略0°である、または0°に等しく、連結装置17の方向に対して平行に延びる。第1衝突壁21は、この実施例では吸出装置11の壁部20に結合する中空シリンダの壁部分に相当する。
【0030】
第2衝突壁26と吸出装置11の第1端部12との間に複数の吸入開口41を設け、この吸入開口41は、吸出装置11の非弾性部18の壁部20の内部において放射方向に延在する孔として構成する。さらに、またはあるいは、第1衝突壁21と第2衝突壁26との間の間隙31においても、吸出装置11の壁部20の内部に吸入開口42を設け、この吸入開口42は、好適には同様に放射方向に延在する孔として構成する。
【0031】
吸出装置11は、吸出装置11の第1端部12の領域において、吸出装置11の長手方向軸線14に対して平行に延在する溝44を構成するため掘削ツール機器6のハウジング8に対して領域的に離間させて配置し、これによってさらに別の吸入開口43が構成される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による吸出装置の部分断面図である。
【図2】図1の線II-IIに対応する長手方向軸線に沿った詳細断面図である。
【符号の説明】
【0033】
6 掘削ツール機器
7 ツール
8 ハウジング
9 ツールチャック
11 吸出装置
12 第1端部
13 第2端部
14 長手方向軸線
15 収容空間
16 固定装置
17 連結装置
18 非弾性環状部
19 弾性部
20 壁部
21 第1衝突壁
22 貫通開口
23 凹状空間
26 第2衝突壁
27 貫通開口
31 間隙
41、42、43 吸入開口
44 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部(12)とこの第1端部(12)とは逆側に配置された第2端部(13)とを備える掘削ツール機器(6)のための吸出装置であって、この吸出装置(11)は、長手方向軸線(14)に沿って延びるとともに、前記掘削ツール機器(6)のツール(7)を少なくとも領域的に覆うための収容空間(15)を有し、
前記吸出装置(11)を前記掘削ツール機器(6)に固定するための固定装置(16)を、前記吸出装置(11)の前記第1端部(12)に備え、
前記吸出装置(11)の長手方向軸線(14)に対して所定の角度(A)だけ傾けて配置された、真空源のための連結装置(17)を備える該吸出装置において、
第1衝突壁(21)と少なくとも1つの別の衝突壁(26)とが互いに離間されて前記吸出装置(11)の内部に設けられ、この第1衝突壁(21)が前記連結装置(17)と前記吸出装置(11)の前記第1端部(12)との間に配置されており、この少なくとも1つの別の衝突壁(26)が前記第1衝突壁(21)と前記吸出装置(11)の前記第1端部(12)との間に配置されており、前記第1衝突壁(21)および前記少なくとも1つの別の衝突壁(26)が、前記掘削ツール機器(6)の前記ツール(7)のための貫通開口(22、27)をそれぞれ有することを特徴とする吸出装置。
【請求項2】
少なくとも前記第1衝突壁(21)が、前記吸出装置(11)の前記長手方向軸線(14)に対して斜めに配置されることを特徴とする請求項1に記載の吸出装置。
【請求項3】
少なくとも前記第1衝突壁(21)が、前記連結装置(17)の向きに対して平行に配置されることを特徴とする請求項2に記載の吸出装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1衝突壁(21)がアーチ形であり、前記第1衝突壁(21)によって形成される凹状の空間(23)が、前記吸出装置(11)の前記第2端部(13)と向かい合うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸出装置。
【請求項5】
前記アーチ形の衝突壁(21)の両方の主湾曲軸のうちちょうど一方の曲率が、略0°であることを特徴とする請求項4に記載の吸出装置。
【請求項6】
前記アーチ形の第1衝突壁(21)の略0°の前記主湾曲軸が、前記連結装置(17)の向きに対して平行に延在することを特徴とする請求項5に記載の吸出装置。
【請求項7】
少なくとも1つの吸入開口(41、42、43)が、前記衝突壁(21)と前記吸出装置(11)の前記第1端部(12)との間に設けられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸出装置。
【請求項8】
少なくとも1つの吸入開口(41、43)が、前記少なくとも1つの別の衝突壁(26)と前記吸出装置(11)の前記第1端部(12)との間に設けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸出装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの吸入開口(41、42)が、前記吸出装置(11)の内部の孔であることを特徴とする請求項7または8に記載の吸出装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの吸入開口(43)が、前記吸出装置(11)の前記長軸線(14)に対して平行に延在する溝(44)であり、この溝(44)が、前記吸出装置(11)の前記第1端部(12)の領域に配置されることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の吸出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−303271(P2007−303271A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122718(P2007−122718)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【Fターム(参考)】