説明

掘削方法及び掘削装置

【課題】連続溝の始点やコーナー部を含めて、また狭隘地や軟弱地盤等の現場条件を問わず、高品質の縦穴を低コストで能率良く掘削する。
【解決手段】連続溝Gのコーナー部に次の辺に移行するための縦穴を掘削する方法として、掘削地点の地盤表層部に四角筒状のガイド部材20を埋設する一方、連続溝掘削機のリーダから取外した掘削装置本体14をクレーン等の吊り装置19で吊持してガイド部材20に挿入し、このガイド部材20によってガイドしながら回転させて地中に縦穴を掘削するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続溝の掘削始点またはコーナー部等において縦穴を掘削する掘削方法及び掘削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に連続溝を掘削する連続溝掘削機として、図7,8示すように自走機能を持ったベースマシン(たとえばクローラクレーンのベースマシン)1に門形の支持フレーム2を取付けるとともに、この支持フレーム2にリーダ3を介してチェーンカッター式の掘削装置4を上下移動可能に取付け、この掘削装置4を地中に建て込んで回転させながらベースマシン1を横移動させることによって連続溝Gを掘削するものが公知である(特許文献1参照)。
【0003】
掘削装置4は、カッターポスト5の上下両側に設けられた転輪6,7間に掘削刃付きのチェーン8を上下方向に回転自在に架け渡して構成され、駆動側である上部転輪6が図示しない油圧モータによって回転駆動される。
【0004】
なお、通常、支持フレーム2とリーダ3との間に図示しない横行シリンダ(油圧シリンダ)が取付けられ、ベースマシン1の自走機能と、この横行シリンダによるリーダ水平移動機能とを併用して掘削装置4を横移動させる構成がとられる。
【0005】
この連続溝掘削機を用いる掘削方法によると、直線状の連続溝を効率良く掘削することができるという利点を有するが、たとえば四角形領域の外周に連続溝を掘削する場合に、コーナー部(一辺の終点であって他辺の始点)での処理が問題となっていた。
【0006】
図8は掘削機が連続溝Gの一辺の終点に達した状態を示し、この状態から次の一辺に移行する場合、従来は、
(i) 掘削装置4をクレーンにより地中から引き抜いてリーダ3から取外した上でベースマシン1をコーナー部から退避させ、
(ii) 入れ替わりに、アースオーガ等の縦穴掘削機をコーナー部に導入して縦穴を掘削し、
(iii) 縦穴掘削機と入れ替わりに連続溝掘削機をそれまでと90°異なる向きでコーナー部に再導入し、
(iv) 再び掘削装置4をリーダ3に装着して縦穴に建て込み、連続溝の掘削を再開する
という手順をとっていた。
【0007】
一方、ベースマシン1としてクレーンのベースマシンのような旋回機能を持ったものを用いる場合に、上部旋回体の旋回運動を利用してコーナー部を円弧状に掘削する方法も公知である(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−280043号公報
【特許文献2】特開平6−158663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記のようにコーナー部で掘削機を連続溝掘削機からアースオーガ等の縦穴掘削機に入れ替えて縦穴を掘削する方法によると、一つの現場で二種類の掘削機を使い分けなければならないため、コスト高となるとともに、掘削機の入れ替えが大掛かりとなることから作業能率が著しく低下するという欠点があった。
【0009】
一方、円弧状に掘削する方法によると、掘削機は連続溝掘削機の一台ですみ、かつ、掘削機の入れ替えが不要であるため作業能率は良い利点を有する反面、コーナー部の直線性(直角度)が失われることから、施工上、認められない場合がある等、実用性に難点があった。
【0010】
また、コーナー部に限らず、連続溝の始点となる縦穴を掘削する場合にも縦穴掘削機が必要となるため、コーナー部と同様の問題が生じていた。
【0011】
さらに、縦穴掘削そのものの問題点として、アースオーガのようにベースマシンに掘削装置を装着して成る縦穴掘削機を用いる従来の方法では、大型・大重量の掘削機が進入できない狭隘地や軟弱地盤では使用できないという問題があった。
【0012】
ところで、図7,8に示す連続溝掘削機から掘削装置4を取外し、この掘削装置4をクレーン等の吊り装置で吊持することにより、単独で縦穴掘削機として使用することが考えられる。
【0013】
しかし、この方法では、掘削抵抗によって掘削装置4の位置(縦穴の位置)と向き(掘削方向)が不安定となるため、品質及び作業能率の点で到底実用には適さなかった。
【0014】
そこで本発明は、連続溝の始点やコーナー部を含めて、また狭隘地や軟弱地盤等の現場条件を問わず、高品質の縦穴を低コストで能率良く掘削することができる掘削方法及び掘削装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明(掘削方法)は、カッターポストの上下両側に設けられた転輪間に、掘削刃付きのチェーンを、上下方向に回転して地中に縦穴を掘削する状態で架け渡して掘削装置本体を構成し、この掘削装置本体を、吊り装置によって吊持した状態で、地盤表層部に埋設した筒状のガイド部材によりガイドしながら地中に縦穴を掘削するものである。
【0016】
請求項2の発明(掘削方法)は、請求項1記載の掘削装置本体を、ベースマシンに支持フレームを介して取付けられたリーダに装着して連続溝掘削機を構成し、掘削装置本体を請求項1記載の掘削方法によって掘削された縦穴に建て込んで横行移動させることにより、上記縦穴を掘削始点またはコーナー部での新たな一辺への始点として地中に連続溝を掘削するものである。
【0017】
請求項3の発明(掘削装置)は、カッターポストの上下両側に設けられた転輪間に掘削刃付きのチェーンを上下方向に回転して地中に縦穴を掘削する状態で架け渡して成る掘削装置本体と、同本体を吊持する吊り装置と、地盤表層部に埋設されて上記掘削装置本体を掘削ガイドする筒状のガイド部材とによって構成されたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の掘削方法(請求項1,2)及び掘削装置(請求項3)によると、チェーンカッター式の掘削装置本体(従来の連続溝掘削機の掘削装置に相当)を、吊り装置によって吊持した状態で、地盤表層部に埋設した筒状のガイド部材によってガイドしながら地中に縦穴を掘削するため、連続溝の始点やコーナー部を含めて、位置及び方向に狂いのない高品質の縦穴を低コストで能率良く掘削することができる。
【0019】
とくに、請求項2の発明のように連続溝の始点やコーナー部での縦穴掘削に適用すれば、連続溝掘削機のみにより一貫して掘削することが可能となるため、連続溝掘削作業の能率を大幅にアップさせることができる。
【0020】
また本発明によると、掘削装置本体を吊り装置で吊って掘削するため、大型・大重量の掘削機が進入困難な狭隘地や軟弱地盤でも、吊り装置の作業範囲(クレーンの場合の作業半径)であれば縦穴の掘削が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1〜図3にこの方法による掘削手順を示す。ここでは、連続溝のコーナー部において次の辺に移行するための縦穴を掘削する場合を例にとっている。
【0022】
また、図4〜図6に実施形態にかかる掘削装置の構成を示す。
【0023】
この方法に使用される掘削機は、図1,3に示すように、従来の連続溝掘削機と同様に、自走機能を持ったベースマシン(たとえばクローラクレーンのベースマシン)11に門形の支持フレーム12を取付けるとともに、この支持フレーム12にリーダ13を介してチェーンカッター式の掘削装置本体(従来機の掘削装置に相当)14を上下移動可能に取付け、この掘削装置本体14を地中に建て込んで回転させながらベースマシン11を横移動させることによって連続溝Gを掘削するように構成されている。
【0024】
掘削装置本体14の構成は、図7,8に示す掘削装置4と基本的に同じで、カッターポスト15の上下両側に設けられた転輪16,17間に掘削刃付きのチェーン18を上下方向に回転自在に架け渡して構成され、駆動側である上部転輪16が図示しない油圧モータによって回転駆動される。
【0025】
この掘削装置本体14は、その上部がリーダ13に対して着脱自在に装着され、適時、吊り装置(図1,2に吊りフック部分のみを示す)19により吊り上げられてリーダ13に対して着脱される。
【0026】
なお、吊り装置19としては、通常、連続溝掘削作業の現場で荷役作業に使用されるクレーンが用いられる。
【0027】
掘削装置は、掘削装置本体(以下、単に本体という場合がある)14と、吊り装置19と、掘削地点の地盤表層部に埋設されるガイド部材20(図4〜図6参照)とによって構成される。
【0028】
ガイド部材20は、内部に本体14が挿入され、かつ、挿入状態で本体14の前後左右の動き(傾きを含む)を規制し得るサイズを持った四角筒状に形成されている。
【0029】
このガイド部材20には、内側各コーナー部にほぼ全長に亘って防護部材21が設けられ、本体14(とくにチェーン18の掘削刃)との接触によるガイド部材内壁の摩耗や損傷がこの防護部材21…によって防止される。
【0030】
この防護部材21…は、摩耗、損傷に応じて取り替えられる。また、防護部材21…の上下両端部に、掘削刃の出入りをガイドするための傾斜したガイド部21a…(図6参照)が形成されている。
【0031】
ガイド部材20を設置するときは、縦穴掘削点にショベル等で穴A(図4,6参照)を掘ってガイド部材20を埋入し、この位置から動かないように保持する。
【0032】
この場合、穴Aの外周隙間を埋め戻せば、土圧によってガイド部材20をほぼ固定できるが、これに加えて次のような保持手段をとることができる。
【0033】
連続溝の掘削に当たっては、通常、掘削予定線の両側において地盤表面に定規と呼ばれるH型鋼等の芯材保持枠22,22が設置され、掘削後の固化剤投入時にこの両側芯材保持枠22,22間に芯材吊りバーが一定間隔置きに架け渡されて芯材が吊持される。
【0034】
そこで、図示のようにガイド部材20の前後両側面の上端部に止め具23,23を図示しないクランプ等によって取付け、ガイド部材20を穴Aに埋入して止め具23,23を芯材保持枠22,22の上面に掛け止めるとともに、このガイド部材20を左右両側から挟み込む状態で芯材保持枠22,22間にストッパ(芯材吊りバーを転用することができる)24,24を架け渡す。
【0035】
これにより、ガイド部材20を前後左右に位置規制した状態で地盤表層部に埋設することができる。
【0036】
あるいは、芯材保持枠22,22が設置されない場合等には、井桁状に組んだ保持部材を掘削地点に設置し、これにガイド部材20を保持させるようにしてもよい。
【0037】
次に、掘削手順を説明する。
【0038】
図1(イ)は連続溝掘削機によって連続溝Gを一辺の終点まで掘削し終えた状態を示す。
【0039】
この状態から同(ロ)に示すように掘削装置本体14を吊り装置19で吊ってベースマシン11のリーダ13から切り離し、ベースマシン11はこの後の縦穴掘削の邪魔にならない位置に退避させる。
【0040】
この状態で同(ハ)に示すようにコーナー部の地盤表層部に穴Aを掘ってガイド部材20を埋設する。
【0041】
次いで、図2(イ)に示すように吊り装置19で吊った掘削装置本体14をガイド部材20の真上にセットし、同(ロ)に示すようにガイド部材20内に挿入して縦穴掘削を開始する。
【0042】
同(ハ)は縦穴Hの掘削が進行した状態を示し、所定の深度までの縦穴掘削が終了すると、掘削装置本体14を縦穴Hから引き抜くとともにガイド部材20を取り出す。
【0043】
この後、図3に示すように、退避させていたベースマシン11を、90°転換した向きで再びコーナー部にセットするとともに、掘削装置本体14をリーダ13に装着して連続溝掘削機を再構成し、本体14を再び縦穴Hに建て込んで次辺の連続溝掘削に移行する。
【0044】
なお、本体14の引き抜き及びリーダ13への再装着は、本体14が短尺の場合等は吊り装置19により全体を一体として一度に行ってもよいし、長尺の場合等は、連続溝掘削時における建て込み、引き抜き時と同様に、本体14を複数のセクションに分けて、逐次、分離/連結しながら行ってもよい。
【0045】
このように、連続溝Gのコーナー部において、掘削装置本体14を、吊り装置19によって吊持した状態で、地盤表層部に埋設した筒状のガイド部材20によってガイドしながら地中に縦穴Hを掘削するため、掘削反力による本体14の位置及び掘削方向のずれを確実に防止することができる。
【0046】
すなわち、位置、サイズ、鉛直度の各点で高品質の縦穴Hを効率良く掘削することができる。
【0047】
また、連続溝掘削機のみにより一貫して掘削することが可能となり、連続溝掘削機と縦穴掘削機の二種類の掘削機を使い分ける必要がなくなるため、施工コストが格段に安くなるとともに、連続溝掘削作業の能率を大幅にアップさせることができる。
【0048】
ところで、上記実施形態では連続溝のコーナー部に次辺の始点となる縦穴を掘削する場合を例にとったが、連続溝の最初の掘削地点でも足がかりとなる縦穴を掘削する必要があるため、本発明はこの掘削始点での縦穴掘削にも適用することができる。
【0049】
また、連続溝の始点やコーナー部に限らず、従来のアースオーガ等のドリル式の縦穴掘削機を用いる方法に代わる縦穴掘削方法として広く適用することができる。
【0050】
この場合、この掘削方法によると、掘削装置本体14を吊り装置19で吊った状態で掘削するため、掘削機全体はサイズまたは重量の点で進入が困難な狭隘地や軟弱地盤でも、吊り装置19の作業範囲(クレーンの場合の作業半径)内であれば縦穴の掘削が可能となる。
【0051】
また、上記実施形態では、掘削装置本体14を吊りフックで吊持する場合を例にとったが、たとえば同本体14をクレーンブームの先端に取付けて吊持するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(イ)(ロ)(ハ)は本発明の実施形態にかかる掘削方法による掘削手順を示す概略正面図である。
【図2】(イ)(ロ)(ハ)は図1に続く掘削手順を示す概略正面図である。
【図3】図2に続く掘削手順を示す概略平面図である。
【図4】図2(イ)の状態の一部拡大図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図4のVI−VI線断面図である。
【図7】従来の連続溝掘削機の構成と作用を説明するための概略正面図である。
【図8】同概略平面図である。
【符号の説明】
【0053】
11 掘削機のベースマシン
12 同支持フレーム
13 同リーダ
14 掘削装置本体
15 同本体を構成するカッターポスト
16,17 同転輪
18 同チェーン
19 吊り装置
20 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターポストの上下両側に設けられた転輪間に、掘削刃付きのチェーンを、上下方向に回転して地中に縦穴を掘削する状態で架け渡して掘削装置本体を構成し、この掘削装置本体を、吊り装置によって吊持した状態で、地盤表層部に埋設した筒状のガイド部材によりガイドしながら地中に縦穴を掘削することを特徴とする掘削方法。
【請求項2】
請求項1記載の掘削装置本体を、ベースマシンに支持フレームを介して取付けられたリーダに装着して連続溝掘削機を構成し、掘削装置本体を請求項1記載の掘削方法によって掘削された縦穴に建て込んで横行移動させることにより、上記縦穴を掘削始点またはコーナー部での新たな一辺への始点として地中に連続溝を掘削することを特徴とする掘削方法。
【請求項3】
カッターポストの上下両側に設けられた転輪間に掘削刃付きのチェーンを上下方向に回転して地中に縦穴を掘削する状態で架け渡して成る掘削装置本体と、同本体を吊持する吊り装置と、地盤表層部に埋設されて上記掘削装置本体を掘削ガイドする筒状のガイド部材とによって構成されたことを特徴とする掘削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−170121(P2007−170121A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372109(P2005−372109)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】