説明

掘削爪及び掘削工具

【課題】構成刃先が形成され難く、良好な掘削を可能とする掘削爪及び掘削工具を実現する。
【解決手段】地盤を掘削する掘削爪10のチップ保持部121に保持される掘削チップ122の掘削刃122aに流出孔5を設け、その掘削爪10が装着される掘削工具1に、その流出孔5から流出させる所定の流体を供給するための供給路41を設ける構成をとり、掘削爪10が保持された掘削工具1を用いて地盤を掘削する際に、掘削爪10に設けられた流出孔5から所定の流体を流出させて、岩石粉など地盤の削り粉を除去したり、掘削爪10の掘削刃(121a、122a)や、掘削爪10によって削られる地盤面を冷却したりすることによって、掘削爪10に構成刃先が形成され難くすることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を掘削する掘削爪及び掘削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤を掘削して縦穴を形成する掘削装置として、例えば、アースオーガが知られている。
このアースオーガに設けられているオーガスクリューの先端部には、地盤を掘削するオーガヘッドが接続されており、オーガヘッドには掘削爪を備えた掘削工具が接続されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−278253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のような掘削工具を用いて地盤を掘削する場合に、掘削スピード(オーガスクリューの回転速度)が所定速度以上になると、図6(a)、(b)に示すように、掘削爪100の底部である逃げ面に掘削した岩石粉が強固に付着してなる構成刃先Kが形成されてしまうことがある。
掘削爪100に構成刃先Kが形成されてしまうと、掘削爪100が地盤Gに直接当たらなくなることや、掘削爪100と地盤Gの間の逃げ角が小さくなり掘削爪100の地盤Gへの喰い込みが悪くなることに伴って、掘削効率が悪化してしまうという問題があった。
また、掘削爪100の地盤Gへの喰い込みが悪くなると益々構成刃先Kが大きくなりやすく、肥大化してしまった構成刃先Kによって掘削不可能になってしまうことがあるという問題があった。
また、掘削スピードを遅くすると、構成刃先Kは形成され難いが、掘削時間がかかってしまうため、掘削効率が悪化してしまうという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、構成刃先が形成され難く、良好な掘削を可能とする掘削爪及び掘削工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、掘削爪であって、例えば、図1〜図5に示すように、掘削刃(122a)を有する掘削チップ(122)と、
前記掘削チップを保持するチップ保持部(121)と、を備え、地盤を掘削する掘削爪(10)であって、
前記掘削チップと前記チップ保持部の少なくとも一方に、前記地盤に向けて所定の流体を流出するための流出孔(5,6,7)が設けられていることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、地盤を掘削する掘削爪における掘削チップとチップ保持部の少なくとも一方に流出孔が設けられており、その流出孔から地盤に向けて所定の流体を流出することができる。
つまり、掘削爪が地盤や岩盤を掘削する際に、所定の流体を掘削爪の流出孔から流出させて、岩石粉などの地盤の削り粉を除去するように移動させてしまえば、掘削爪に岩石粉などは付着し難くなるので、掘削爪に構成刃先が形成され難くなる。また、掘削爪の流出孔から流出された流体によって、掘削爪の掘削刃や、掘削爪によって削られる地盤面を冷却することによっても、構成刃先の形成を抑制することができる。
よって、地盤に向けて所定の流体を流出する流出孔を有する掘削爪であれば、その掘削爪に構成刃先は形成され難く、良好な掘削を行うことが可能となる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、例えば、図1〜図5に示すように、請求項1に記載の掘削爪を着脱可能に保持する掘削工具(1)であって、
前記掘削爪に設けられた前記流出孔から流出させる所定の流体を供給するための供給路(41)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、掘削爪を保持する掘削工具には、その掘削爪の流出孔から流出させる所定の流体を掘削爪に供給するための供給路が設けられているので、その供給路を通じて掘削爪に所定の流体を供給することによって、掘削爪の流出孔からその流体を流出させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、掘削爪が保持された掘削工具により地盤を掘削する際に、掘削爪に設けられた流出孔から所定の流体を流出させることによって、岩石粉などの地盤の削り粉を除去したり、掘削爪の掘削刃や、掘削爪によって削られる地盤面を冷却したりすることができるので、掘削爪に構成刃先が形成され難くすることができる。
従って、本発明に係る掘削爪を保持する掘削工具であれば、地盤を掘削する際に、掘削爪に構成刃先は形成され難いので、構成刃先に掘削を妨げられることなく、良好な掘削を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る掘削爪及び掘削工具の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は掘削爪を備えた掘削工具の側面図、図2は掘削爪の斜視図、図3は掘削爪が掘削工具に装着された状態の要部を示す拡大図である。
【0011】
図1に示すように、掘削工具1は、図示しないオーガの先端部(下端部)に接続されてオーガの回転に伴い回転する接続部2と、接続部2の外周に対して左右対称に設けられた二枚のプロペラ状の羽根部4、4と、を備え、各羽根部4に複数(本実施形態においては、3つ)の掘削爪10が着脱可能に装着されて構成されている。
【0012】
接続部2は、オーガ(図示省略)の先端部に接続される際に接続軸となる軸部21と、軸部21の下部に固定された先端爪22と、軸部21と先端爪22とを連結する連結部23とを備えている。
【0013】
軸部21は、多角形状を呈する柱状の軸部であり、オーガの下端部に設けられた凹状の嵌合孔に挿入可能な形状に形成されている。なお、接続部2は、オーガの嵌合孔に軸部21を挿入した状態で軸部21の二つの溝部21a、21aにピン等の連結部材を通すことにより、オーガの下端部に固定されるようになっている。
先端爪22は、地盤を削る刃先を有している。
連結部23は、正面視して下方に向かうにつれて細くなるテーパ状に形成されており、この連結部23における接続部2の軸心を挟んで対向する位置に羽根部4、4が設けられている。
【0014】
羽根部4は、所定の厚みを有する略四角形状の部材であって、連結部23から外側に延出するように左右対称に設けられている。
また、羽根部4は、図3に示すように、その内部に掘削爪10の後述する接続軸11が挿入される嵌合孔4aを備えている。この嵌合孔4aは、接続軸11(すなわち、後述する密閉軸部13、抜け止め軸部15、回り止め部14)よりも若干大きめの略同形状に形成された窪みであり、接続軸11が嵌合するようになっている。
具体的には、嵌合孔4aには後述する密閉軸部13の一端側が配置される基端孔部4cと、嵌合孔4aにおいて密閉軸部13に対応する位置にシール材3を配設するための密閉溝部4dと、嵌合孔4aの中央部分において抜け止め軸部15のリテーナ15aが係合する抜け止め溝部4bと、が形成されている。
その密閉溝部4dには、Oリングなどのシール材3が配設されており、そのシール材3が後述する密閉軸部13と密着するようになっている。
また、嵌合孔4aにおける回り止め部14に対応する位置は、後述する回り止め部14の周面の形状に応じた開口形状(例えば、六角形状)を有している。
【0015】
そして、羽根部4の下面側に設けられた嵌合孔4aに掘削爪10が装着されて、羽根部4の長さ方向(延出方向)に沿って3つの掘削爪10が羽根部4に着脱可能に保持されている。
【0016】
図2に示すように、掘削爪10は、羽根部4の嵌合孔4aに挿入される接続軸11と、接続軸11の先端に設けられて地盤に対して接触する掘削部12と、を備えている。
そして、掘削爪10は、掘削工具1の羽根部4に対して着脱自在に備えられて地盤や岩盤を掘削するものである。
【0017】
接続軸11は、羽根部4の嵌合孔4aに嵌合した状態で、嵌合孔4aに対する接続軸11の回転を規制するとともに掘削部12を支持する回り止め部14と、回り止め部14の後方に位置して嵌合孔4aに挿入された接続軸11が羽根部4から抜けるのを防止する抜け止め軸部15と、抜け止め軸部15の後方に位置して嵌合孔4aと密着するように隙間を塞ぐ密閉軸部13と、を備えている。
【0018】
回り止め部14は、その周面が断面視六角形状を呈する軸部であり、嵌合孔4aにおける開口部において軸支されて、掘削爪10が接続軸11を軸心として回転することを防止するようになっている。
【0019】
密閉軸部13は、嵌合孔4aにおける密閉溝部4dに配設されたシール材3と密着するようになっている。具体的には、密閉軸部13の大径部13aがシール材3や嵌合孔4aの内面と密着し、接続軸11と嵌合孔4aの間の隙間を塞いでいる。すなわち、掘削工具1の羽根部4に装着された掘削爪10の接続軸11と、その羽根部4の嵌合孔4aとの間には隙間がなく、羽根部4側から供給される後述する流体が密閉軸部13と嵌合孔4aの間から漏れないようになっている。
【0020】
掘削部12は、側断面視略コ字形状を呈する凹部を有するチップ保持部121と、チップ保持部121の凹部内に埋め込まれる掘削チップ122とから構成されている。なお、掘削チップ122はチップ保持部121に強固に固定されている。
【0021】
掘削チップ122は、掘削刃122aを有しており、また、チップ保持部121は、掘削刃121aを有している。
この掘削チップ122の掘削刃122aと、チップ保持部121の掘削刃121aは、その刃筋(エッヂ)が揃っており、掘削刃122aと掘削刃121aとで一体的な刃先を形成し、地盤を削るようになっている。
【0022】
また、図3(a)、(b)に示すように、掘削爪10の掘削部12であって、掘削チップ122の掘削刃122a部分には、所定の流体を流出するための流出孔5が形成されている。なお、流出孔5は、掘削チップ122における地盤側に向く掘削刃122aに設けられている。
この流出孔5は、掘削チップ122とチップ保持部121とを貫通するように連なって形成されている流路51の一方の開口部であり、流路51の他方の開口部51aは、密閉軸部13の一端に形成されている。
そして、接続軸11の密閉軸部13の一端が位置する嵌合孔4aの基端孔部4cに、掘削工具1に形成されている供給路41が繋がっている。
この供給路41は、図1に示すように、掘削工具1の軸部21、連結部23、羽根部4に亘って連なっており、オーガ(図示省略)側から送給される所定の流体を掘削爪10に供給するための流路として形成されている。すなわち、供給路41は、掘削爪10に設けられた流路孔5から流出させる所定の流体を供給するための流路として設けられている。
また、先端爪22にも供給路41は繋がっており、所定の流体を流出させるための流出孔6が形成されている。
【0023】
このような掘削爪10が装着された掘削工具1を図示しないオーガの先端部であるオーガヘッド(図示省略)に取り付けて、そのオーガヘッドの回転駆動に伴い掘削工具1を回転させて、掘削爪10(掘削工具1)によって地盤を削って掘削する際に、オーガ側から所定の流体を掘削工具1に送給する。
そして、オーガ側から送給された所定の流体を掘削工具1に設けられている供給路41を通じて、掘削爪10の流路51に供給し、掘削爪10に設けられた流出孔5から所定の流体を地盤に向けて流出させることができる。その流体を掘削爪10の流出孔5から噴出させて、岩石粉などの地盤の削り粉を吹き飛ばして除去してしまえば、掘削爪10に岩石粉などは付着し難くなるので、掘削爪10に構成刃先が形成され難くなる。
また、掘削爪10の流出孔5から噴出された所定の流体によって、掘削爪10の掘削刃(122b、121a)や、掘削爪10によって削られる地盤面を冷却することによっても、構成刃先の形成を抑制することができる。
なお、所定の流体としては、空気などの気体や水などの液体を使用することができる。
【0024】
また、掘削工具1における先端爪22の流出孔6からも、その流体を噴出させることができるので、掘削工具1の先端爪22にも構成刃先は形成され難くなっている。
【0025】
このように、本発明に係る掘削爪10を保持する掘削工具1であれば、地盤を掘削する際に、掘削爪10の掘削刃(122b、121a)に構成刃先は形成され難いので、構成刃先に掘削を妨げられることなく、良好な掘削を行うことができる。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
【0027】
例えば、図4(a)、(b)に示すように、掘削爪10aの掘削部12であって、チップ保持部121の掘削刃121a部分に、所定の流体を流出するための流出孔7を形成してもよい。この流出孔7は、チップ保持部121を貫通するように形成されている流路71の一方の開口部であり、その流路71の他方の開口部71aは、密閉軸部13の一端に形成されている。なお、流出孔7は、チップ保持部121における地盤側に向く掘削刃121aに設けられている。
このような掘削爪10aを保持する掘削工具1であっても、掘削爪10aの掘削刃(122b、121a)に構成刃先は形成され難いので、良好な掘削を行うことができる。
【0028】
また、図5(a)、(b)に示すように、掘削爪10bの掘削部12であって、掘削チップ122の掘削刃122a部分に所定の流体を流出するための流出孔5を形成し、チップ保持部121の掘削刃121a部分に所定の流体を流出するための流出孔7を形成してもよい。
流出孔5は、掘削チップ122とチップ保持部121とを貫通するように連なって形成されている流路81の第1開口部であり、流出孔7は、チップ保持部121を貫通するように形成されている流路81の第2開口部であって、その流路81の他方の開口部81aは、密閉軸部13の一端に形成されている。なお、流出孔5は、掘削チップ122における地盤側に向く掘削刃122aに設けられ、流出孔7は、チップ保持部121における地盤側に向く掘削刃121aに設けられている。
このような掘削爪10bを保持する掘削工具1であっても、掘削爪10bの掘削刃(122b、121a)に構成刃先は形成され難いので、良好な掘削を行うことができる。
【0029】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る掘削爪を備えた掘削工具を示す側面図である。
【図2】本発明に係る掘削爪を示す斜視図である。
【図3】掘削爪が羽根部に装着された状態の要部を示す一部断面拡大図(a)と、羽根部に装着された掘削爪を示す下面図(b)である。
【図4】本発明の変形例であって、掘削爪が羽根部に装着された状態の要部を示す一部断面拡大図(a)と、羽根部に装着された掘削爪を示す下面図(b)である。
【図5】本発明の変形例であって、掘削爪が羽根部に装着された状態の要部を示す一部断面拡大図(a)と、羽根部に装着された掘削爪を示す下面図(b)である。
【図6】従来の掘削爪に構成刃先が形成された状態を示す一部断面拡大図(a)と、その掘削爪を示す下面図(b)である。
【符号の説明】
【0031】
1 掘削工具
2 接続部
3 シール材
4 羽根部
4a 嵌合孔
4d 密閉溝部
41 供給路
5、6、7 流出孔
51、71、81 流路
10 掘削爪
11 接続軸
12 掘削部
121 チップ保持部
121a 掘削刃
122 掘削チップ
122a 掘削刃
13 密閉軸部
14 回り止め部
15 抜け止め軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削刃を有する掘削チップと、
前記掘削チップを保持するチップ保持部と、を備え、地盤を掘削する掘削爪であって、
前記掘削チップと前記チップ保持部の少なくとも一方に、前記地盤に向けて所定の流体を流出するための流出孔が設けられていることを特徴とする掘削爪。
【請求項2】
請求項1に記載の掘削爪を着脱可能に保持する掘削工具であって、
前記掘削爪に設けられた前記流出孔から流出させる所定の流体を供給するための供給路が設けられていることを特徴とする掘削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−154526(P2007−154526A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351992(P2005−351992)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000141521)株式会社技研製作所 (83)
【Fターム(参考)】