説明

採卵鶏用飲料水、それを用いた養鶏方法、及びそれにより生産される鶏卵

【課題】容易な管理及び低コストの条件下での鶏卵の生産性向上及び生産される鶏卵の品質向上を可能にする養鶏方法、並びにそこで用いられる採卵鶏用飲料水を提供する。
【解決手段】
一次被処理水に対する振動流動攪拌下での光触媒活性化処理(S1)により光触媒活性化処理水を得、該光触媒活性化処理水であって塩化ナトリウム0.1重量%〜3重量%を含んでなる二次被処理水に対する振動流動攪拌下での電気分解処理(S2)により得られた電気分解処理水である中性電解水からなる採卵鶏用飲料水を供給しながら採卵鶏を飼育する。中性電解水中の残留塩素濃度は0.5ppm〜500ppmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養鶏技術に関するものであり、特に、採卵鶏に供給される飲料水の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、採卵鶏の養鶏において、鶏卵生産性の向上及び鶏卵品質の向上につき、不断の努力が払われている。
【0003】
鶏卵の生産性向上に関しては、第1に実際に採卵鶏の各個体が産む鶏卵のサイズ(重量)を大きくすること及び産卵周期を短縮することが要請され、第2に実際に採卵鶏個体が産む鶏卵のうち商品化可能なものの比率(良品率)を高めることが要請される。
【0004】
この第2の点に関していえば、良品率を低下させる要因の1つとして、採卵鶏個体を収容して飼育するケージから回収される鶏卵を洗浄するために実施される水噴射の噴射水圧により卵殻が破損することで商品化不能になることが挙げられる。このような卵殻破損は、卵殻強度不足によるものであり、甚だしい場合には破損鶏卵数は回収鶏卵数の25〜30%にも達することがある。従って、卵殻強度不足による卵殻破損を抑制することは、最終的な鶏卵生産性向上の観点から、極めて重要である。
【0005】
卵殻強度不足の解消のために、飼料の改善、養鶏設備の改善及び飼育条件の改善などがなされているが、採卵鶏をケージ飼育することで管理の容易化及び低コスト化を図るという条件下では、十分な成果を得ることは困難であった。
【0006】
鶏卵の品質向上に関しては、主として飼料改善による高品質化がなされている。これに関しては、たとえば、特開2005−73651号公報[特許文献1]及び特開2006−288362号公報[特許文献2]に記載がある。
【0007】
一方、国際公開WO2006/041001号公報[特許文献3]には、振動攪拌下での電気分解により種々の機能性を持つ中性電解水を製造する方法が開示されている。
【0008】
また、国際公開WO2003/037504号公報[特許文献4]には、振動攪拌下での光触媒活性化による滅菌処理方法が開示されており、特開2003−339270号公報[特許文献5]には、そのような振動攪拌下での光触媒活性化による殺菌及び活性化された水を用いて生物を生育する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−73651号公報
【特許文献2】特開2006−288362号公報
【特許文献3】国際公開WO2006/041001号公報
【特許文献4】国際公開WO2003/037504号公報
【特許文献5】特開2003−339270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3には、そこに記載された振動攪拌下での電気分解により得られた中性電解水は殺菌作用を持ち植物の生育用に有用であることが開示されている。特許文献4及び5には、これらに記載された振動攪拌下での光触媒活性化殺菌処理により得られた水は生物の生育用に有用であることが開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献3乃至5には、これらに記載の中性電解水や光触媒活性化殺菌処理水を採卵鶏用の飲料水として利用することの具体的記載はない。
【0012】
本発明の第1の目的は、容易な管理及び低コストの条件下での鶏卵の生産性向上を可能にする養鶏方法、特にそこで用いられる採卵鶏用飲料水、を提供することにある。
【0013】
本発明の第2の目的は、生産される鶏卵の品質向上を可能にする養鶏方法、特にそこで用いられる採卵鶏用飲料水、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
一次被処理水に対する振動流動攪拌下での光触媒活性化処理により光触媒活性化処理水を得、該光触媒活性化処理水であって塩化ナトリウム0.1重量%〜3重量%を含んでなる二次被処理水に対する振動流動攪拌下での電気分解処理により得られた電気分解処理水である中性電解水からなり、
前記光触媒活性化処理は、第1の振動発生手段で発生した振動を、第1の振動棒を介して、該第1の振動棒に取り付けられた第1の振動羽根へと伝達し、該第1の振動羽根を振動させることにより、前記一次被処理水に振動流動攪拌を生じさせるようにしてなる第1の振動攪拌手段を用いて、前記一次被処理水を振動流動攪拌し、ここで前記一次被処理水と接する前記第1の振動羽根その他の部材の表面の少なくとも一部を光触媒活性にしておくことで、なされるものであり、
前記電気分解処理は、第2の振動発生手段で発生した振動を、第2の振動棒を介して、該第2の振動棒に取り付けられた第2の振動羽根へと伝達し、該第2の振動羽根を振動させることにより、前記二次被処理水に振動流動攪拌を生じさせるようにしてなる第2の振動攪拌手段を用いて、前記二次被処理水を振動流動攪拌しながら、なされるものである、
ことを特徴とする採卵鶏用飲料水、
が提供される。
【0015】
本発明の一態様においては、前記二次被処理水中の塩化ナトリウムは、前記一次被処理水中に含有された塩化ナトリウム、及び/または、前記光触媒活性化処理水に添加された塩化ナトリウムに由来するものである。本発明の一態様においては、前記中性電解水中の残留塩素濃度が0.5ppm〜500ppmである。本発明の一態様においては、前記光触媒活性にすることは、前記第1の振動羽根その他の部材の表面にアナターゼ型二酸化チタン被膜を形成することからなる。本発明の一態様においては、前記一次被処理水を振動流動攪拌するに際して前記第1の振動羽根その他の部材の表面の前記光触媒活性にされた部分に光照射する。
【0016】
また、本発明によれば、上記の採卵鶏用飲料水を供給しながら採卵鶏を飼育することを特徴とする養鶏方法が提供され、更に、この養鶏方法により飼育された採卵鶏が生産したことを特徴とする鶏卵が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特定の製法で製造される中性電解水を採卵鶏用飲料水として用い、これを供給しながら採卵鶏を飼育することで、容易な管理及び低コストの条件下であっても鶏卵の生産性向上が可能になり、特に、卵殻強度の向上、これによる鶏卵洗浄のための水噴射の噴射水圧等による卵殻破損発生の低減による鶏卵生産性の向上が可能になる。また、鶏卵サイズの大型化または産卵率の向上による鶏卵生産性の向上が可能になる。
【0018】
さらに、本発明によれば、鶏卵中のビタミン類等の特定の成分の含有率の増加または減少による鶏卵品質の向上が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による採卵鶏用飲料水を製造する方法を説明するための概略工程図である。
【図2】本発明による採卵鶏用飲料水を製造するために用いられる装置の一例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明による採卵鶏用飲料水を製造するために用いられる装置の一例を示す模式的断面図である。
【図4】本発明による採卵鶏用飲料水を製造するために用いられる装置における振動攪拌手段の一例を示す模式的断面図である。
【図5】振動攪拌手段を用いた採卵鶏用飲料水製造に用いられる装置の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明による採卵鶏用飲料水の製造方法を説明するための概略工程図である。一次被処理水は、振動流動攪拌下での光触媒活性化処理の工程S1により光触媒活性化処理水とされる。この該光触媒活性化処理水であって塩化ナトリウム0.1重量%〜3重量%を含んでなる二次被処理水は、振動流動攪拌下での電気分解処理の工程S2により電気分解処理水すなわち中性電解水とされる。
【0022】
光触媒活性化処理工程S1では、一次被処理水に対して上記特許文献4または5に記載の方法により光触媒活性化処理を行って光触媒活性化処理水を得る。特許文献4または5に記載の方法は、上記特許文献4または5に記載の装置を用いて実施することができる。この装置につき、以下、簡単に説明する。
【0023】
図2は、第1の振動攪拌手段16を用いた光触媒活性化処理装置の一例を示す模式的断面図であり、上記特許文献4の図2及び上記特許文献5の図2に記載されているものである。ここでは、12は第1の処理槽であり、該第1の処理槽には一次被処理水(光触媒活性化対象処理液)14が収容されている。一次被処理水14は、第1の処理槽12内にて後述のような光触媒活性化処理を受ける。一次被処理水14は、第1の処理槽12内に所要の量だけ収容された状態でバッチ式にて処理されてもよいし、あるいは第1の処理槽12に付設された不図示の一次被処理水入口から連続的に供給されて連続的に光触媒活性化処理され第1の処理槽12に付設された不図示の被処理水出口から光触媒活性化処理水として連続的に排出されてもよい。この場合、第1の処理槽12と不図示の大型タンクとの間を配管により接続し、これら第1の処理槽12と大型タンクとの間で一次被処理水を循環させながら、光触媒活性化処理することができる。
【0024】
16は第1の振動攪拌装置(第1の振動攪拌手段)である。第1の振動攪拌装置16は、第1の処理槽12に防振ゴムを介して取り付けられた基台16a、該基台に下端を固定された振動吸収部材としてのコイルバネ16b、該コイルバネの上端に固定された振動部材16c、該振動部材に取り付けられた第1の振動発生手段としての振動モータ16d、振動部材16cに上端を取り付けられた振動伝達部材としての第1の振動伝達ロッド(第1の振動棒)16e、該第1の振動伝達ロッドの下半部において一次被処理水14に浸漬する位置に取りつけられた第1の振動羽根16fを有する。コイルバネ16b内には、基台16a側に固定された上下方向棒状の下側ガイド部材と振動部材16c側に固定された上下方向棒状の上側ガイド部材とをそれらの間に適宜の間隔をおいて配置することにより、これらをガイド部材として利用して、コイルバネ16bの変形に際しての上下方向に対する曲りの発生を防止して上下方向にのみ伸縮させるようにすることができる。
【0025】
本発明では、第1の振動発生手段として、振動モータ(電気モータの他、マグネットモータやエアーモータ等であってもよい)の他に、電磁マグネットやエアーガン等を使用することも可能である。また、振動モータは、第1の処理槽上に配置される他に、第1の処理槽側壁または硬い床面の上に置かれた架台の上にセットされる。第1の処理槽の厚みが薄く(例えば第1の処理槽がステンレス製の場合には5mm以下)一次被処理水の振動によりタンク側壁や床面に振動が伝わる様な場合には、第1の処理槽外に架台を設置することが好ましい。第1の処理槽の側壁にバンドを締めるようにして補強部材を付設し、そこに第1の振動発生手段を設置することができる。
【0026】
振動モータ16dは、後述の図4に記載されるように、電源(整流器)25からインバータ35を介して電力を供給することで、該インバータ35による制御で10〜200Hz、好ましくは20〜60Hz、更に好ましくは30〜50Hz、とくに30〜45Hzで振動する。振動モータ16dで発生した振動は、振動部材16c及び第1の振動伝達ロッド16eを介して第1の振動羽根16fに伝達される。第1の振動羽根16fは、一次被処理水14中で所要の振動数で先端縁が振動する。この振動は、第1の振動羽根16fが第1の振動伝達ロッド16eへの取り付け部分から先端縁へと「しなる」ように発生する。この振動の振幅及び振動数は、振動モータ16dのものと必ずしも一致するとは限らず、振動伝達経路の機械・力学的特性及び被処理水14との相互作用の特性等に応じて決まり、本発明では、振幅0.01〜15.0mm、例えば0.01〜10mm、特に0.01〜5.0mmで、振動数200〜1000回/分(例えば200〜800回/分)とするのが好ましい。
【0027】
これにより、一次被処理水14中に強力な流動が発生する。このような流動を振動流動と呼び、これにより一次被処理水が強力に攪拌される。すなわち、第1の振動攪拌手段は、第1の振動発生手段(振動モータ16d)で発生した振動を、第1の振動棒16eを介して、該第1の振動棒16eに取り付けられた第1の振動羽根16fへと伝達し、該第1の振動羽根を振動させることにより、一次被処理水14に振動流動攪拌を生じさせる。
【0028】
一次被処理水14としては、水道水、地下水、井戸水、蒸留水、軟水、イオン交換水及び逆浸透膜水などを用いることができる。また、一次被処理水14としては、塩化ナトリウム濃度を適宜調整した上で海水を用いてもよい。
【0029】
第1の振動羽根16fの表面は、光触媒活性にされている。すなわち、第1の振動羽根16fの表面は、光触媒活性の殺菌性材料からなる表面(光触媒活性の殺菌性材料を含む表面をも包含する)を有している。殺菌性材料としては、紫外線照射により活性化されるTiO,SrTiO,ZnO,CdSe,GaAs,CdS,NiO,SnO,NbまたはWOが例示される。中でも、アナターゼ型の二酸化チタン(TiO)が良好な光触媒殺菌活性を示すので、特に好ましい。このアナターゼ型のTiOの被膜(層)はチタン板を陽極酸化処理することで得られる。また、紫外線照射により活性化されるTiO等に感光補助剤を加えて紫外線以外の光の照射により活性化することも可能である。第1の振動羽根16fの表面に形成されるアナターゼ型のTiOからなる表面層の厚さは、特に制限されないが、例えば1〜20μm程度である。このようなアナターゼ型のTiO層はチタン板の陽極酸化処理により形成することができ、且つ得られたアナターゼ型のTiO層の光触媒活性による殺菌性として十分なものが得られる。また、ステンレス板上にアナターゼ型酸化チタンの微粒子を含むNiめっき(固形分散粒子を含むめっき)を行ったり、酸化チタン膜を真空蒸着で付着させたり、蒸着めっきで無機質酸化チタン含有被膜を形成させることができる。WOからなる表面層は、これを含む材料を用いて溶融、蒸着、めっき、無機塗装、化成処理、火焔処理を行って、形成することができる。
【0030】
第1の振動羽根16fは、その表面に光を照射する光照射手段を備えている。該光照射手段は、図2に示されている紫外線源(UV光源:紫外線照射装置)51から発せられ、ライトガイドとしての光ファイババンドル52を通り、可撓性及び防水性のコネクタを介してそれぞれ供給される光を導入する複数の光ファイバを備えている。各光ファイバは、光触媒活性を持つ殺菌性材料からなる表面に沿って、互いに平行に延在するように光触媒活性を持つ殺菌性材料からなる表面に取り付けられて位置が保持されている。光ファイバとしては、たとえば石英系光ファイバが用いられ、その直径は例えば0.1〜5.0mmである。光ファイバは、例えば1.0mm〜100mmの間隔で互いにほぼ平行になるように第1の振動羽根16fの表面に取り付けられている。また、光ファイバは石英系光ファイバに限定されるものではなく、プラスチック系光ファイバや複合ガラス系光ファイバであってもよい。
【0031】
光源51としては、紫外線をも発する昼光蛍光灯を含むが、好ましくは近紫外線や殺菌線を発するものが用いられ、特にJISで規定されている波長315〜400nmのもの(UV−A)、波長280〜315nmのもの(UV−B)、波長100〜280nmのもの(UV−C)を用いることができる。なかでも、UV−Aまたは主波長300〜400nmの近紫外線が、取扱が容易で人体に対する害が低いことから好ましい。アナターゼ型のTiOの活性化のためには、特に光が外部に漏れる場合には、人体に対する害が低いことから、近紫外線が有効である。
【0032】
このような光源51の具体例としては、超高圧水銀ランプを用いた株式会社モリテックス製の紫外線照射装置MUV−250U−L;MUV−351などを使用することができる。但し、人体に対して害が及ばないような対処をすれば、殺菌灯を使用することも可能である。光源51としては、更に、メタルハライドランプ、水銀キセノンランプなどを使用することができる。
【0033】
図3は、第1の振動攪拌手段16を用いた光触媒活性化処理装置の一例を示す模式的断面図であり、上記特許文献4の図37に記載されているものである。ここでは、紫外線などの光を第1の振動羽根16fの光触媒活性の殺菌性材料からなる表面に近接(接近または密着)した位置から照射する手段として、防水型密閉照明灯102を使用している。防水型密閉照明灯102は、コード104を介して電源106に接続されており、第1の振動攪拌手段16とは別の支持手段により支持されている。照明灯と振動羽根との間の距離は、第1の振動羽根の振動の際に該第1の振動羽根が照明灯に衝突しない限りは出来るだけ小さい方が好ましく、例えば1〜20mmであり、好ましくは1〜15mmであり、更に好ましくは1〜10mmであり、特に好ましくは1〜5mmである。尚、照明灯102から発せられる光を所望の方向に光を集中して照射するために、反射カバーを設置することが出来る。
【0034】
本発明においては、光触媒活性にされる部分は、第1の振動羽根16fの表面であることが好ましいが、これに限定されない。光触媒活性にされる部分は、第1の振動発生手段のその他の部材、たとえば、スペーサリング16k、或いは、上記特許文献4または5に記載されるように、第1の振動伝達ロッド16eに取り付けられた補助羽根16f’又は固定部材16jの表面であっても良いし、第1の処理槽12内において振動羽根16fの先端に近接する位置(好ましくは5〜20mm隔てられた位置)に配置された多孔板(網状のものまたは籠状のものの少なくとも一部分)の表面であっても良いし、第1の処理槽12内に配置された板状の槽内配置部材の表面であっても良いし、第1の処理槽12の内面であっても良い。更に、これらを適宜併用してもよい。
【0035】
また、本発明においては、光照射手段は、上記特許文献5に記載されるように、一次被処理水14に浸漬されることなく、処理槽12外に配置されていても良い。
【0036】
以上のような光触媒活性化処理工程S1での光触媒活性化処理により、光触媒活性化処理水が得られる。光触媒活性化処理の時間は、たとえば、10分間〜3時間である。
【0037】
電気分解処理工程S2では、この光触媒活性化処理水であって塩化ナトリウム0.1重量%〜3重量%を含んでなるものを二次被処理水として用いる。ここで、二次被処理水中の塩化ナトリウムは、一次被処理水中に含有された塩化ナトリウムに由来するものであってもよいし、光触媒活性化処理水に添加された塩化ナトリウムに由来するものであってもよい。
【0038】
電気分解処理工程S2では、この二次被処理水に対して上記特許文献3に記載の方法により電気分解処理を行って電気分解処理水を得る。特許文献3に記載の方法は、上記特許文献3に記載の装置を用いて実施することができる。この装置につき、以下、簡単に説明する。
【0039】
図4は、第2の振動攪拌手段16を用いた電気分解処理装置における第2の振動攪拌手段の一例を示す模式的断面図であり、上記特許文献3の図1に記載されているものである。ここでは、基台16aは、振動吸収部材41を介して第2の処理槽(電解槽)10Aの上部に取り付けられた取り付け台40上に固定されている。また、基台16aには、垂直方向に上方へ延びた棒状のガイド部材43が固定され、該ガイド部材43はコイルバネ16b内に位置している。コイルバネ16b上には、ガイド部材43から離隔した振動部材16cが載置されており、該振動部材16c上には第2の振動発生手段を構成する振動モータ16dが固定されている。
【0040】
振動部材16cには、第2の振動棒16eの上端が取り付けられており、該第2の振動棒16eは、取り付け台40に形成された貫通孔を通って、電解槽10A内へと延びている。電解槽10A内には二次被処理水14が収容される。該二次被処理水14に浸漬される第2の振動棒16eの部分には、取付けナット16jにより第2の振動羽根16fが複数段にて取り付けられている。
【0041】
振動モータ16dとそれを駆動するための整流器25との間には、振動モータ16dの振動周波数を制御するためのインバータ35が介在している。
【0042】
第2の振動攪拌手段について更に説明する。上述のインバータ35により振動モータ16dを10〜200Hzとくに30〜45Hzで振動させ、この振動を第2の振動棒16eを介して第2の振動羽根16fに伝達し、該第2の振動羽根16fを振動させる。この第2の振動羽根16fは、しなりを生ずるので、その振動は、先端がはためくようなフラッタリングと呼ばれる形態となる。第2の振動羽根16fの振動は、たとえば、先端の振幅が0.01〜15.0mm、例えば0.01〜10mm、特に0.01〜5.0mmである。
【0043】
これにより、二次被処理水14中に強力な流動が発生する。このような流動を振動流動と呼び、これにより二次被処理水が強力に攪拌される。すなわち、第2の振動攪拌手段は、第2の振動発生手段(振動モータ16d)で発生した振動を、第2の振動棒16eを介して、該第2の振動棒16eに取り付けられた第2の振動羽根16fへと伝達し、該第2の振動羽根を振動させることにより、二次被処理水14に振動流動攪拌を生じさせる。この振動流動攪拌は、上記光触媒活性化処理工程S1で行われる振動流動攪拌と、本質的には同等である。
【0044】
図5は、以上のような第2の振動攪拌手段と実質上同様な機能を有する第2の振動攪拌手段16を用いた電気分解処理装置の一例を示す模式的断面図であり、上記特許文献3の図6に記載されているものである。ここでは、電気分解のための手段を構成する陽極部材83及び陰極部材84は、それぞれ陽極ブスバー80及び陰極ブスバー82に支持され、二次被処理水14中に浸漬されている。陽極部材83と陰極部材84との間には、不図示の電気分解用電源を用いて、直流又はパルス電流により、1〜30V程度の電圧が印加され、5〜300A/dm程度の電流密度で電気分解が行われる。電気分解処理の時間は、たとえば、30分間〜3時間である。
【0045】
尚、光触媒活性化処理装置で得られる光触媒活性化処理水に基づく塩化ナトリウム含有光触媒活性化処理水は、不図示のパイプを介して、二次被処理水14として電気分解処理装置の電解槽10Aへと供給される。
【0046】
第2の振動攪拌手段16において、第2の振動棒16eとして、二次被処理水14の水面より上の位置において絶縁部材16e”を介在させたものが使用されている。これにより、電気分解のための電流が振動モータの方へと流れるのを防止することができる。また、第2の振動棒16e及び第2の振動羽根16fとして導電性を有するものを使用し、これらを通電線127を介して電気分解用電源の一方の電極と接続することで、二次被処理水14に浸漬された第2の振動棒16eの部分及び第2の振動羽根16fを陽極部材または陰極部材として使用することも可能である。
【0047】
通常、水の電気分解ではHやOがガス状で発生する。しかしながら、本発明では、第2の振動攪拌手段が稼動しているため、発生した活性ガスやHやOが水中に分散し溶解し、ガスとして装置外へ出て行くことが少ない。
【0048】
振動流動下で希薄な食塩水たる二次被処理水を電気分解すると、発生したガスはナノ・マイクロバブルとなり、その結果、以上のようにして製造される電気分解処理水すなわち中性電解水の主成分は、次亜塩素酸、亜塩素酸および塩素酸イオンを含有するものとなる。分子構造は明らかではないが、この塩素酸は一般的な塩素酸とは異なり、特定酸化化合物と考えられる。この中性電解水中の残留塩素(有効塩素)濃度は、たとえば、1ppm〜5000ppmであるが、本発明では、とくに残留塩素濃度0.5ppm〜500ppmのものを用いるのが好ましい。中性電解水中の残留塩素濃度は、電気分解を継続するに従って上昇するので、装置の稼働時間を調整することで所要の残留塩素濃度の中性電解水を得ることができる。尚、以上のような装置は、塩濃度、電流密度、電解時間を自由に変更することができ、しかも連続的に中性電解水を製造することができることを特長とする。
【0049】
以上のような中性電解水の水素イオン指数pHは、6.5≦pH≦8.5の範囲内にあることが好ましく、6.5≦pH≦7.5の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0050】
以上のようにして、光触媒活性化処理工程S1及び電気分解処理工程S2を経て製造される電気分解処理水である中性電解水は、採卵鶏用飲料水として優れた特性を持つことが見出された。すなわち、この中性電解水からなる採卵鶏用飲料水を継続して(たとえば1月間以上、好ましくは1.5月間以上)必要量供給しながら養鶏を行うことで、採卵鶏をケージ飼育する容易な管理及び低コストの条件下であっても鶏卵の生産性向上が可能になり、特に、卵殻強度の向上、これによる鶏卵洗浄のための水噴射の噴射水圧等による卵殻破損発生の低減による鶏卵生産性の向上が可能になる。また、鶏卵サイズの大型化または産卵率の向上による鶏卵生産性の向上が可能になる。さらに、鶏卵中のビタミン類(たとえばビタミンE,D3)、ナトリウム、炭水化物等の特定の成分の含有率の増加または脂質等の特定の成分の含有率の減少による鶏卵品質の向上が可能になる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により、本発明を説明する。
【0052】
[実施例1]
{光触媒活性化処理工程S1}
特許文献4に記載の手法に従って、以下のようにして光触媒活性化処理工程S1を実行し、光触媒活性化処理水を得た。
【0053】
すなわち、光触媒活性化処理装置として、特許文献4の実施例1に記載されるように、特許文献4の図2[本願の図2に相当]その他に関して説明した装置(但し、籠40及び駆動回転軸41などの駆動手段のないものであり、且つ、光ファイバ53は複数の光ファイバ素線の集合体からなるものである)を使用した。ここで、振動モータ16dとして250W×200V×3φのものを用い、コイルスプリング16bは8個用い、インバータ35として富士電機(株)製のFVR0.4−E11S−2を用い、振動モータ16dを47Hzで振動させた。第1の処理槽12として1100mm×450mm×500mmH(液位400mm)のものを用いた。
【0054】
第1の振動羽根16fとして厚さ0.5mmで45mm×250mmの寸法のチタン板を陽極酸化処理することによって表面に数μm厚のねずみ色のアナターゼ型酸化チタンの層を形成したものを5枚用いた。光ファイバ53として、コア系200μmの(株)モリテックス製の石英系光ファイバ(光ファイバ素線)MSU200Dの樹脂被覆を剥離しクラッドの表面を粗面化して漏光部を形成したもの10本の束を用いた。光ファイバ53は、各第1の振動羽根16fの上面において互いに平行になるように5本配置し、その固定のためのシート58として幅5mmのテフロン(登録商標)フィルムを用い(接着剤層57は使用していない)、ビス59で止めて固定した。光ファイバロッド53の固定は第1の振動羽根16fの長手方向の両端と中央の3か所で行った。
【0055】
光源51として、(株)モリテックス製の紫外線照射装置MUV−250U−L(超高圧水銀ランプ使用:紫外線強度4000mW/cm[365nm])を用いた。光源51に付設されたライトガイドとして、各第1の振動羽根16fのために途中で5つに分岐し、更に、その各々を各光ファイバ53のために途中で5つに分岐した光ファイババンドルを用いた。第1の振動羽根16fに固定された各光ファイバ53の光入射端と、対応するライトガイドの光出射端とを対向配置し、これらを防水性のチューブ状コネクタ55を用いて接続した。
【0056】
一次被処理水として地下水を用い、光触媒活性化処理を1時間実施し、光触媒活性化処理水を得た。この光触媒活性化処理水に食塩(第1級化学薬品)を溶解し、食塩(NaCl)濃度を5g/L(0.5重量%)とした二次被処理水を調製した。
【0057】
{電気分解処理工程S2}
上記の二次被処理水をパイプを介して電気分解処理装置へと供給し、ここで、特許文献3に記載の手法に従って、以下のようにして電気分解処理工程S2を実行し、電気分解処理水を得た。
【0058】
すなわち、電気分解処理装置として、α−トリノ水製造装置−1型(30L)(日本テクノ株式会社製)を用いた。この装置の特徴は次の通りであった。
【0059】
振動モータ:75W,200V×3φ。第2の振動羽根:スレンレス(SUS304)板4枚。振動棒:ステンレス(SUS304)丸棒2本。電解槽:耐熱プロピレン樹脂を被覆した容器(30L)500×290×305(単位:mm)。陽極部材:チタンラス網(白金めっき被覆)3枚。陰極部材:スレンレス(SUS304)板4枚。電極部材間距離:20mm。陽極部材と陰極部材とを接近して交互に配置。電極部材の面積は、陽極部材3枚が12dm、陰極部材4枚が16dm。整流器(トランジスター型):(株)中央製作所製PEM11−12V−200。インバータ:富士電機製富士インバータFVR−E9S。
【0060】
交流200V×3相を利用し、これを整流器により、電圧12V、電流15Aの直流電流に変換した。インバータにより振動モータの振動数を45Hzに調整し、二次被処理水を1時間にわたって振動流動させつつ電気分解を行って、電気分解処理水すなわち中性電解水を得た。この中性電解水における残留塩素濃度は10ppmであった。また、pHは7.4であった。
【0061】
{中性電解水を飲料水として使用する養鶏}
以上のようにして得られた中性電解水を採卵鶏用飲料水として使用して、これを供給しながら採卵鶏を飼育(養鶏)した。その他の養鶏条件は、次の通りであった。
【0062】
鶏種:ポリスブラウン
飼育鶏数:20羽
場所:鶏舎内(個別飼育)
給餌:全農指定の配合餌
飼育期間:2ケ月間
この方法により飼育された採卵鶏が、上記飼育期間経過直前の1週間で産んだ鶏卵を採取した。得られた鶏卵は、総数で115個であった。この鶏卵を水噴射洗浄機により洗浄した。これにより、4個の鶏卵が卵殻破損し、良品率(すなわち歩留まり)は約97%であった。
【0063】
良品の全鶏卵につき、以下のようにして、測定及び評価を行った。
【0064】
サイズ測定:判定基準は以下の通り:
・SS=1個の重さ40g以上46g未満
・S=1個の重さ46g以上52g未満
・MS=1個の重さ52g以上58g未満
・M=1個の重さ58g以上64g未満
・L=1個の重さ64g以上70g未満
・LL=1個の重さ70g以上76g未満
含有成分量の測定:毎日得られた良品の全鶏卵の内容物を混合攪拌し、以下の成分量をそれぞれの標準的な測定法により測定し、全ての日の測定結果の平均値を採用した。
【0065】
ビタミンE:高速液体クロマトグラフ法により測定
ビタミンD3:高速液体クロマトグラフ法により測定
ナトリウム:原子吸光光度法により測定
炭水化物:計算法により測定
脂質:クロロホルムメタノール混液法により測定
以上の結果を、以下の表1に示す。
【0066】
参考例1:
参考のために、実施例1と同時期に、電気分解処理工程S2を行わないことを除いて実施例1と同様に実施した。すなわち、光触媒活性化処理工程S1で得られた光触媒活性化処理水を採卵鶏用飲料水として供給しながら採卵鶏を飼育(養鶏)し、この方法により飼育された採卵鶏が産んだ鶏卵を採取した。
【0067】
得られた鶏卵は、総数で116個であった。この鶏卵を水噴射洗浄機により洗浄した。これにより、11個の鶏卵が卵殻破損し、良品率は約91%であった。
【0068】
結果を、以下の表1に示す。
【0069】
比較例1:
比較対照のために、実施例1と同時期に、通常の水道水を採卵鶏用飲料水として供給しながら採卵鶏を飼育(養鶏)し、この方法により飼育された採卵鶏が産んだ鶏卵を、実施例1と同様にして、採取した。
【0070】
得られた鶏卵は、総数で105個であった。この鶏卵を水噴射洗浄機により洗浄した。これにより、21個の鶏卵が卵殻破損し、良品率は80%であった。
【0071】
結果を、以下の表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1から分かるように、本発明実施例のものは、生産数、良品率及びサイズにおいて、比較例のものに比べて著しく大きく顕著な改善がみられ、参考例のものに比べても同等か又は優れている。また、ビタミンE、ビタミンD3、ナトリウム及び炭水化物の含有率において、比較例のものに比べて著しく高く顕著な改善がみられ、参考例のものに比べても優れている。更に、脂質の含有率において、比較例のものに比べて著しく低く顕著な改善がみられ、参考例のものに比べても優れている。
【符号の説明】
【0074】
10A:電解槽(第2の処理槽)
12:第1の処理槽
14:被処理水(一次または二次の被処理水)
16:振動攪拌装置(第1または第2の振動攪拌手段)
16a:基台
16b:コイルバネ
16c:振動部材
16d:振動モータ(第1または第2の振動発生手段)
16e:振動伝達ロッド(第1または第2の振動棒)
16e”:絶縁部材
16f:振動羽根(第1または第2の振動羽根)
16j:取付けナット(固定部材)
16k:スペーサリング
25:電源(整流器)
35:インバータ
40:取り付け台
41:振動吸収部材
43:ガイド部材
51:紫外線源(UV光源:紫外線照射装置)
52:光ファイババンドル
80:陽極ブスバー
82:陰極ブスバー
83:陽極部材
84:陰極部材
102:防水型密閉照明灯
104:コード
106:電源
127:通電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次被処理水に対する振動流動攪拌下での光触媒活性化処理により光触媒活性化処理水を得、該光触媒活性化処理水であって塩化ナトリウム0.1重量%〜3重量%を含んでなる二次被処理水に対する振動流動攪拌下での電気分解処理により得られた電気分解処理水である中性電解水からなり、
前記光触媒活性化処理は、第1の振動発生手段で発生した振動を、第1の振動棒を介して、該第1の振動棒に取り付けられた第1の振動羽根へと伝達し、該第1の振動羽根を振動させることにより、前記一次被処理水に振動流動攪拌を生じさせるようにしてなる第1の振動攪拌手段を用いて、前記一次被処理水を振動流動攪拌し、ここで前記一次被処理水と接する前記第1の振動羽根その他の部材の表面の少なくとも一部を光触媒活性にしておくことで、なされるものであり、
前記電気分解処理は、第2の振動発生手段で発生した振動を、第2の振動棒を介して、該第2の振動棒に取り付けられた第2の振動羽根へと伝達し、該第2の振動羽根を振動させることにより、前記二次被処理水に振動流動攪拌を生じさせるようにしてなる第2の振動攪拌手段を用いて、前記二次被処理水を振動流動攪拌しながら、なされるものである、
ことを特徴とする採卵鶏用飲料水。
【請求項2】
前記二次被処理水中の塩化ナトリウムは、前記一次被処理水中に含有された塩化ナトリウム、及び/または、前記光触媒活性化処理水に添加された塩化ナトリウムに由来するものであることを特徴とする、請求項1に記載の採卵鶏用飲料水。
【請求項3】
前記中性電解水中の残留塩素濃度が0.5ppm〜500ppmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の採卵鶏用飲料水。
【請求項4】
前記光触媒活性にすることは、前記第1の振動羽根その他の部材の表面にアナターゼ型二酸化チタン被膜を形成することからなることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の採卵鶏用飲料水。
【請求項5】
前記一次被処理水を振動流動攪拌するに際して前記第1の振動羽根その他の部材の表面の前記光触媒活性にされた部分に光照射することを特徴とする、請求項4に記載の採卵鶏用飲料水。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の採卵鶏用飲料水を供給しながら採卵鶏を飼育することを特徴とする養鶏方法。
【請求項7】
請求項6に記載の養鶏方法により飼育された採卵鶏が生産したことを特徴とする鶏卵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−155861(P2011−155861A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18460(P2010−18460)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(392026224)日本テクノ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】