説明

採掘装置

【課題】 水底下の地中に埋蔵されている資源の採掘において、気象条件の影響を受けることなく、陸上から遠方の資源を少ない動力で採掘することができ、また、船舶を用いることなく、資源を陸上に搬送することができる採掘装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 採掘装置1であって、基端部10aが陸上Aに載置され、先端部10bが海底Bに載置されるパイプライン10(外管)と、パイプライン10内に挿通されており、先端部に駆動装置が取り付けられている掘削手段20とを備え、パイプライン10の先端開口部から突出させた掘削手段20の先端部によって、海底B下の地中Cを掘削可能であり、パイプライン内に取り込まれた地中Cのハイドレート(資源)が、パイプライン10内を通じて陸上Aに移送されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底下の地中に埋蔵されている資源を採掘するための採掘装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海底下の地中に埋蔵されているメタンハイドレートを採掘する方法としては、海底に載置した回収装置から掘削手段を地中に掘進させ、この掘削手段を地中のメタンハイドレートまで到達させることにより、掘削穴を通じてメタンハイドレートを回収装置に取り込み、この回収装置からパイプラインを通じてメタンハイドレートを海上構造物に移送した後に、運搬船によって陸上に搬送する採掘方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−193787号公報(段落0007〜0008、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の採掘方法では、海上構造物が波や風の影響を受け易く、台風等の気象条件では、採掘作業を中断することになってしまうという問題がある。
また、海上構造物から陸上にメタンハイドレートを搬送するときに、運搬船を用いる必要があるため、搬送作業が煩雑になってしまうという問題がある。
【0004】
なお、陸上で地中に掘削手段を設置し、この掘削手段を水平方向に掘進させることにより、水底下の地中に埋蔵されている資源に到達させて、地中の資源を採掘する方法があるが、掘削手段を長距離に渡って掘進させるためには、多大な動力が必要となるため、陸上から遠方の資源を採掘することが困難であり、採掘可能な資源が限定されてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、水底下の地中に埋蔵されている資源の採掘において、気象条件の影響を受けることなく、陸上から遠方の資源を少ない動力で採掘することができ、また、搬送手段として船舶を用いることなく、資源を陸上に搬送することができる採掘装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の採掘装置では、基端部が陸上に載置され、先端部が水底に載置される外管と、外管内に挿通されており、先端部に駆動装置が取り付けられている掘削手段とを備え、外管の先端開口部から突出させた掘削手段の先端部によって、水底下の地中を掘削可能であり、外管の先端開口部から外管内に取り込まれた地中の資源が、外管内を通じて陸上に移送されるように構成されている。
【0007】
ここで、地中の資源とは、メタンハイドレート、天然ガス、原油等であり、特に限定されるものではない。
【0008】
このように、本発明の採掘装置では、陸上から水底に渡って外管を載置し、この外管内に挿通させた掘削手段によって、水底下の地中を掘削することができるため、水上に装置を設置する必要がなくなる。これにより、気象条件の影響を受けることなく、水底下の地中を掘削して、地中の資源を採掘することができる。
また、水底下の地中に埋蔵されていた資源は、外管内を通じて陸上に移送することができるため、搬送手段として船舶を用いることなく、資源を陸上に搬送することができ、搬送効率を向上させることができる。
さらに、外管の先端開口部から突出させた掘削手段の先端部によって掘削するように構成されており、掘削手段の先端部に駆動装置が取り付けられている。これにより、駆動装置とカッタ等の切削工具とが近くなっているため、駆動装置のトルクを効果的に切削工具に伝達することができ、掘削効率を向上させることができる。
また、埋蔵されている資源の近傍に外管の先端部を配置することにより、掘削手段の掘削距離が短くなり、掘削量が少なくなるため、陸上から遠方に埋蔵されている資源であっても、少ない動力で採掘することができる。
【0009】
前記した採掘装置において、外管内には複数の内挿管が挿通されており、各内挿管内には掘削手段が各々挿通されていることが望ましい。
【0010】
このように、外管内に複数の内挿管を挿通させ、各内挿管内に掘削手段を各々挿通することにより、各掘削手段は内挿管によって外管内で位置決めされるため、複数の掘削手段を近接させて配置することができ、外管内のスペースを有効に利用することができる。そして、複数の掘削手段を用いることにより、掘削効率を向上させることができる。
【0011】
前記した採掘装置において、掘削手段は、外管に支持されているガイド部材の傾動に伴って屈曲することにより、掘進方向が変化するように構成されていることが望ましい。
【0012】
このように、外管に支持されているガイド部材の傾動に伴って、掘削手段を屈曲させて掘進方向を変化させることにより、水底下の地中に埋蔵されている資源に向けて正確に掘進させることができるため、掘削精度を向上させることができる。
なお、ガイド部材は、外管に直接取り付けられている必要はなく、内挿管を外管内に挿通させた構成では、ガイド部材を内挿管に取り付け、この内挿管を介してガイド部材が外管に支持されているように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の採掘装置では、陸上から水底に渡って外管を載置し、この外管内に掘削手段を挿通させることにより、気象条件の影響を受けることなく、掘削手段によって水底下の地中を掘削して、地中の資源を採掘することができるため、作業効率を向上させることができる。
また、埋蔵されていた資源は、外管内を通じて陸上に移送することができるため、船舶を用いることなく、資源を陸上に搬送することができ、搬送効率を向上させることができる。
さらに、掘削手段の先端部には駆動装置が取り付けられており、駆動装置と切削工具とが近くなっているため、駆動装置のトルクを効果的に切削工具に伝達することができ、掘削効率を向上させることができる。
また、埋蔵されている資源の近傍に外管の先端部を配置することにより、掘削手段の掘削距離が短くなり、掘削量が少なくなるため、陸上から遠方に埋蔵されている資源であっても、少ない動力で採掘することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の採掘装置を示した側面図である。図2は、本実施形態の採掘装置の先端部を示した側断面図である。図3は、本実施形態の採掘装置の中間部を示した軸断面図である。
本実施形態では、海底下の地中に埋蔵されているメタンハイドレートを採掘するための採掘装置を例として説明する。
【0015】
採掘装置1は、図1に示すように、基端部10aが陸上Aに載置され、先端部10bが海底Bに載置されているパイプライン10(特許請求の範囲における「外管」)と、このパイプライン10内に挿通されている複数の掘削手段20・・・とを備えている。
【0016】
パイプライン10は、図2および図3に示すように、円筒状の鋼管であり、海底Bに載置したときに、その水圧に耐えることができる強度を備えており、5本の内挿管30・・・が挿通されている。
内挿管30は、パイプライン10と軸方向の長さが一致している円筒状の鋼管であり、5本の内挿管30・・・がパイプライン10の軸断面における円周線上に配置されており、隣り合う内挿管30,30の外面が接触した状態となっている。
【0017】
掘削手段20は、図2および図3に示すように、内挿管30内に挿通されているケーシング21と、ケーシング21の先端部21aに取り付けられている駆動モータ22と、駆動モータ22の出力軸22aに取り付けられているカッタ23とから構成され、駆動モータ22およびカッタ23は、内挿管30の先端開口部30aおよびパイプライン10の先端開口部10cから突出している。
このように、掘削手段20を内挿管30内に挿通させることにより、パイプライン10内で、内挿管30によって掘削手段20が位置決めされるため、複数の掘削手段20・・・を近接させてパイプライン10内に配置することができ、パイプライン10内のスペースを有効に利用することができる。
【0018】
ケーシング21は、可撓性を有する円筒状の樹脂管であり、軸方向において複数に分割されており、ケーシング21の後端部に対して、樹脂管を継ぎ足すことにより延長可能となっている。ケーシング21の材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂を用いることができるが、可撓性を有し、掘削時の応力に耐えることができるものであれば、その材質は限定されるものではない。
【0019】
また、ケーシング21の外面と内挿管30の内面との隙間には、ケーシング21を内挿管30内で軸方向に移動させたときの摩擦抵抗を低減する摩擦低減材40が設けられている。この摩擦低減材40は、フッ素樹脂等の滑らかな表面を有する部材であり、ケーシング21の周囲の四方に4体づつ設けられており、この4体1組の摩擦低減材40・・・が、内挿管30の軸方向に所定間隔ごとに設けられている。
さらに、内挿管30の先端開口部30aでは、ケーシング21の外面と内挿管30の内面との隙間がシール部材30bによって閉塞されており、内挿管30内への資源や海水の流入が防止されている。
【0020】
駆動モータ22には、ケーシング21の先端部21aの軸線方向に突出している出力軸22aが設けられており、その出力軸22aの先端部には、地中C(図1参照)を掘削可能なカッタ23が取り付けられている。
なお、本実施形態では、電動式の駆動モータ22を用いており、ケーシング21内に挿通させた電源ケーブル24によって駆動モータ22に電力を供給しているが、油圧式の駆動モータを用いてもよく、この構成では、ケーシング21内に油圧ホースを挿通させることにより、駆動モータに作動油を供給することができる。
【0021】
カッタ23は、地中C(図1参照)を掘削する掘削面23aが形成されている円盤状の切削工具であり、掘削面23aには、複数のビット23b・・・が取り付けられている。そして、カッタ23全体が駆動モータ22の出力軸22aの回転に伴って回転することにより、掘削面23aによって地中C(図1参照)を掘削可能となっている。
【0022】
内挿管30の先端開口部30aの下部には、上下左右に傾動自在な板状のガイド部材50が設けられている。このガイド部材50は、内挿管30内に設けられた油圧ポンプ(図示せず)によって傾動するように構成されており、この油圧ポンプは電源ケーブル24からの電力で駆動する電動モータ(図示せず)によって作動するように構成されている。
なお、ガイド部材50は、陸上A(図1参照)からの有線または無線による遠隔操作によって傾動させることができる。また、ガイド部材50に取り付けられている各種センサからの信号によって、その傾動角度を陸上Aで把握することができる。
【0023】
また、ガイド部材50は、ケーシング21を軸方向に移動自在な状態で支持しており、ケーシング21がガイド部材50の傾動に伴って屈曲するように構成されている。具体的な構成としては、例えば、ケーシング21の下部に形成された軸方向の凹溝(図示せず)に、ガイド部材50の上面に形成された凸部(図示せず)をスライド可能に係合した構成があるが、特に限定されるものではない。
【0024】
このように構成された掘削手段20では、ガイド部材50を傾動させ、この傾動に伴ってケーシング21を内挿管30の先端開口部30aで屈曲させることにより、ケーシング21の先端部21aに設けられているカッタ23の掘削面23aを所定の方向に向けることができる。すなわち、ガイド部材50を傾動させることにより、掘削手段20の掘進方向を変化させることができる。
【0025】
なお、ガイド部材50はケーシング21を軸方向に移動自在な状態で支持しており、ケーシング21は可撓性を有しているため、ケーシング21の後端部に樹脂管を継ぎ足して、ケーシング21全体を先端側に押し出すことにより、ケーシング21は内挿管30の先端開口部30aで屈曲しながら、外管10の先端開口部10cから所定の掘進方向に向かって進むことになる。
【0026】
次に、本実施形態の採掘装置1を用いて、海底B下の地中Cに埋蔵されているメタンハイドレートHを採掘する場合について、図1から図3を参照して説明する。
【0027】
まず、パイプライン10の基端部10aを陸上Aに載置するとともに、パイプライン10の先端部10bをメタンハイドレートHの埋蔵位置の上方となる海底Bに載置する。
【0028】
このように陸上Aから海底Bに渡って載置されたパイプライン10の基端部10a側から、パイプライン10内の各内挿管30・・・内に掘削手段20を各々挿通する。そして、ケーシング21の後端部に樹脂管を順次に継ぎ足すことにより、内挿管30の先端開口部30aおよびパイプライン10の先端開口部10cから駆動モータ22およびカッタ23を突出させる。
【0029】
また、各内挿管30・・・のガイド部材50を傾動させて、ケーシング21を内挿管30の先端開口部30aで屈曲させることにより、各掘削手段20・・・の掘進方向を地中CのメタンハイドレートHに向けて正確に定める。
【0030】
続いて、各掘削手段20・・・の駆動モータ22を駆動させ、カッタ23を回転させた状態で、ケーシング21を先端側に押し出すことにより、パイプライン10の先端開口部10cから各掘削手段20・・・を掘進方向に進めて、海底B下の地中Cの掘削を開始する。
このとき、本実施形態の採掘装置1では、5基の掘削手段20・・・が近接して設けられているため、地中Cを効率良く掘削することができる。
また、ケーシング21の先端部21aには、カッタ23を有する駆動モータ22が取り付けられているため、駆動モータ22のトルクをカッタ23に対して効果的に伝達して掘削することができる。
さらに、メタンハイドレートHの埋蔵位置の近傍にパイプライン10の先端部10bが配置されており、メタンハイドレートHまでの掘削距離が短く、掘削量が少なくなっているため、陸上Aから遠方に埋蔵されているメタンハイドレートHを採掘する場合であっても、少ない動力で採掘することができる。
【0031】
そして、各掘削手段20・・・のカッタ23がメタンハイドレートHに到達すると、掘削穴を通じて海底Bに噴出したメタンハイドレートHが、海水と共にパイプライン10内に取り込まれ、パイプライン10内を通じて陸上Aに移送される。これにより、船舶を用いることなく、メタンハイドレートHを陸上Aに搬送することができるため、メタンハイドレートHの搬送効率を向上させることができる。
【0032】
このように、本実施形態の採掘装置1では、陸上Aから海底Bに渡ってパイプライン10を載置し、このパイプライン10内に各掘削手段20・・・を挿通させることにより、海上に装置を設置する必要がなくなるため、気象条件の影響を受けることなく、海底B下の地中Cを掘削して、地中CのメタンハイドレートHを採掘することができ、作業効率を向上させることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、本実施形態では、図1に示すように、パイプライン10の先端部10bを、地中CのメタンハイドレートHの上方となる海底Bに載置しているが、メタンハイドレートHよりも深い場所に埋蔵されている原油等を採掘する場合には、パイプライン10の先端部10bを海底B下の地中Cに進入させることにより、各掘削手段20・・・の掘進距離を短くするとともに、掘削量を少なくすることができる。
【0034】
また、本実施形態では、図3に示すように、パイプライン10内に5基の掘削手段20・・・を設けているが、地中Cを効率良く掘削することができるのであれば、その台数は限定されるものではない。なお、パイプライン10内に設けられた掘削手段20が少ない場合には、隣り合う掘削手段20,20の干渉を防ぐ必要がないため、内挿管30を設けなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態の採掘装置を示した側面図である。
【図2】本実施形態の採掘装置の先端部を示した側断面図である。
【図3】本実施形態の採掘装置の中間部を示した軸断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 採掘装置
10 パイプライン
20 掘削手段
22 駆動モータ
23 カッタ
30 内挿管
50 ガイド部材
H メタンハイドレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部が陸上に載置され、先端部が水底に載置される外管と、
前記外管内に挿通されており、先端部に駆動装置が取り付けられている掘削手段と、を備え、
前記外管の先端開口部から突出させた前記掘削手段の先端部によって、前記水底下の地中を掘削可能であり、
前記外管の先端開口部から前記外管内に取り込まれた前記地中の資源が、前記外管内を通じて前記陸上に移送されるように構成されていることを特徴とする採掘装置。
【請求項2】
前記外管内には複数の内挿管が挿通されており、
前記各内挿管内には、前記掘削手段が各々挿通されていることを特徴とする請求項1に記載の採掘装置。
【請求項3】
前記掘削手段は、前記外管に支持されているガイド部材の傾動に伴って屈曲することにより、掘進方向が変化するように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採掘装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−336227(P2006−336227A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159543(P2005−159543)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(593089046)青木あすなろ建設株式会社 (10)
【出願人】(000149594)株式会社大本組 (40)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(000231198)日本国土開発株式会社 (51)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【出願人】(593024782)住鉱コンサルタント株式会社 (4)
【Fターム(参考)】