説明

採点入力デバイス、及び採点入力システム

【課題】使い慣れたサインペン等の筆記具を用いて採点が可能であり、正答、誤答、部分正答の認識性に優れた採点入力デバイスを提供することを課題とする。
【解決手段】採点入力デバイス1は、採点集計コンピュータ6と接続された信号送出部7と、信号送出部7と本体後端部9とが接続され、全体が流線形状を呈するように形成されたデバイス本体3と、答案の採点に使用するサインペン4を挿入し、包含するように支持する後端支持部14及びペン先12の近傍を側方から挟込むようにして支持する一対の挟持片15a,15b及び挟持片15a,15bの先端同士を連結する連結部16を有するペン先支持部17とを具備する。そして、サインペン4は後端部を軸として縦方向に揺動可能に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採点入力デバイス、及び採点入力システムに関するものであり、特に、小中学校等の教育機関や塾などの受験機関において日常的に実施されるテスト(答案)の採点結果の入力及び集計作業を省力化し、採点者の負担を軽減することが可能な採点入力デバイス、及びそれを用いた採点入力システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、小中学校等の教育機関、或いは学習塾や予備校等の受験機関において、各種のテストが実施されている。ここで、予備校等の多人数の受講者を有する受験機関では、全国規模の模擬試験等を実施することがあり、当該模擬試験の受験者は、所謂「マークシート方式」を採用した選択式の答案用紙に、各自解答を記入(マーク)することを行っている。係るマークシート方式は、マークされた答案用紙を所定のOCR機器でスキャンし、光学的に解答を読み取ることが可能なものであり、短時間で多数の受験者の正誤答を判断し、さらに受験者個別の科目別の成績及び総合点、受験者全体の平均点、及び偏差値等を各種統計データを得ることができるものである。
【0003】
しかしながら、一般に小学校や中学校等の学校単位或いは学級単位で小規模に行われる期末テストや実力テスト、或いは各学習単元毎に生徒の理解度を把握するために行われる確認テストのようなものは、上述のマークシート方式が採用されることはなく、従前から実施されているように教師(採点者)が赤ペンで一枚ずつ手作業で答案の採点を行っている。なお、近年では、これらの採点結果を市販の表計算ソフトに入力し、集計することによって、学級毎の平均点や設問毎の正答率などの統計資料をまとめ、教師の指導の参考として使用することも行われている。
【0004】
したがって、係る教師にとっては、通常の採点作業、及びその後の採点結果を紙に記入したり、表計算ソフトに入力する入力作業が最も時間を要するものであり、日常業務を行いながら、限られた勤務時間内でこれらの採点作業等を完了させることは難しく、残業や休日に係る採点作業等を行うことが多かった。そこで、これらの採点作業等の省力化を図ることを目的としたシステムや装置の開発が行われている。
【0005】
例えば、答案を採点する際の筆記具の動きを検出し、これを判定することによって、正答及び誤答等をコンピュータに入力可能なデータ入力装置の開発がなされている(特許文献1参照)。これによると、採点に使用する筆記具(ペン)の微小な動き(微小変形)を発振周期の変化を利用して検出可能なセンサを装着し、ペンを運筆する際の速度や位置の変化から、正答を示す“○”或いは誤答を示す“×”や“レ”が入力されたことを記号として認識し、これをコンピュータに入力することができる。
【0006】
一方、コンピュータとの組合わせにより、ペン先の位置情報の検出機能を有する採点用のペンを利用し、採点結果を判別する採点システム(特許文献2参照)、或いは特殊な配列の「ドットパターン」が印刷された印刷用紙を答案用紙として使用し、ペン型の入力装置に内蔵されたカメラによって、当該ドットパターンの配列を読取り、手書きした文字の筆跡などを記録するシステムを応用し、答案の採点業務に適用する技術も開示されている(非特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2001−296962号公報
【特許文献2】特開2003−228692号公報
【非特許文献1】入川深雪、外1名、“「ペンと紙」を入り口に、新たな価値を創出 ビジネスを広げる次世代インターフェイス”、[online]、Solutions Dispatch、[平成18年11月1日検索]、インターネット、<URL:http://www.dnp.co.jp/bf/digitalpen/pdf/SolutionsDispatchVol.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記に示すように、採点結果の入力及びその後の採点結果の集計を行う装置等は、下記に掲げるような問題を生じることがあった。すなわち、特許文献1に示される発振周期変化の検出機能を有するデータ入力装置の場合、使用するセンサの感度によって認識(判別)の精度が著しく変化することがあった。すなわち、センサの感度を高めに設定した場合、ペンの運筆に応じた正答及び誤答等の判別に誤認識が発生しやすく、一方、センサの感度を低めに設定した場合、採点動作自体の検知が困難となることがあった。そのため、このデータ入力装置の使用に不慣れな採点者は、誤認識を発生する頻度が多くなり、通常の採点作業よりも反って時間が掛かるなど、余計に非効率となることがあった。
【0009】
また、特に小中学校等のテストにおける答案の採点には、完全に正解している正答及び完全に間違っている誤答に加え、一部正答を認める所謂「部分点」を付与する場合がある。この場合、答案用紙には、“△”などの記号を付けることになり、特にこの“△”は個々の採点者によって独自の筆記の仕方や形状に特徴があるため、上記のデータ入力装置では、確実な認識が不可能であり、誤認識を発生しやすい要因ともなっていた。
【0010】
また、ペン先の位置情報を検知し、採点処理を行うシステムの場合、当該ペン先位置の検出のため、答案用紙の前後左右のいずれか方向に文鎮程度の大きさの位置検知用のスキャナーを配置し、該スキャナーの検知範囲でペン先を動かす必要があった。その結果、一枚の答案を開始するまでに、スキャナーの検知範囲に答案を置くなどのセッティングの時間が多く必要となり、採点作業がより面倒なものとなることがあった。一方、ドットパターンが印刷された答案用紙を利用するものは、日常的に頻繁に確認テスト等を実施する小中学校等では、コストアップが予想されるため、採用に消極的なところが多かった。
【0011】
また、これらの採点に使用される筆記具は、専用のインク等を利用した特殊なものであることが多く、実際の採点作業を行う教師等にとっては使用の際に違和感を覚える人も多かった。ここで、実際の採点作業においては、採点の行い易さや従来からの慣れのために、市販の赤色サインペンを使用することが多く、従来からの感覚が異なることから、上記の装置やシステムの採用を敬遠するところもあった。
【0012】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、特殊な用紙等を使用することなく、使い慣れたサインペン等の筆記具を用いて採点が可能であり、正答、誤答、部分正答の認識性に優れた採点入力デバイス、及び採点入力システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる採点入力デバイスは、「答案の採点に使用する筆記具の後端部を軸として、前記筆記具のペン先側を縦方向に揺動可能にするとともに、前記ペン先側の横方向への揺動を規制して前記筆記具が装着されるデバイス本体と、前記筆記具に対向する前記デバイス本体の一面に取付けられ、前記デバイス本体に装着された前記筆記具を使用した採点動作により、縦方向に揺動した前記筆記具の一部と当接し、押圧される押圧スイッチ部を有する動作検知スイッチと、前記動作検知スイッチと電気的に接続され、前記動作検知スイッチの押圧状態に応じて前記答案の正答及び誤答のいずれか一つの採点結果を示す制御信号を送出可能な信号送出部と」を具備して主に構成されている。
【0014】
ここで、筆記具とは、特に限定されないが、テストの答案を採点する際に、従前から教師等の採点者が一般的に使用している使い慣れたものを使用することが可能である。例えば、ボールペン、赤鉛筆、及びサインペン等を挙げることができる。なお、筆記のしやすさ、及び線の太さなどの点から、市販のサインペンを好んで使用する教師が多い。さらに、個々の筆記具は、軸径やペン軸長さのサイズが多種多用のものが存在するため、全ての筆記具を装着可能なようにすることは困難である。そこで、上述したように、最も一般的に使用されているようなサインペンの軸径の太さを標準として、デバイス本体を形成するものであっても構わない。さらに、デバイス本体と筆記具との間にスペーサを挟み、種々のサイズの筆記具に対応可能とするものであってもよい。
【0015】
さらに、デバイス本体とは、例えば、プラスチック素材によって構成され、筆記具のペン先部分を除いて、ほとんど全体を被覆可能なように形成されたものである。すなわち、デバイス本体の一端から筆記具のペン先が突出するようにして支持するものである。これにより、採点者は通常の筆記具が装着されたデバイス本体を、特に違和感を覚えることなく把持することができ、通常の採点動作を行うことができる。ここで、採点者によって支持される(把持される)デバイス本体の把持部には、採点者の親指、人差し指、及び中指が当接する箇所に、凹凸を設けたり、或いはゴム等を貼着し、採点動作の際の汗によって指が滑ることを防ぐ滑り止め防止手段を有するものであってもよい。なお、筆記具のペン先側が揺動する縦方向とは、デバイス本体とともに筆記具を把持した際の略鉛直方向、換言すれば、デバイス本体を把持した人差し指が位置する方向に相当する上下方向に相当するものであり、一方、ペン先側の揺動が規制される横方向とは、当該縦方向に直交する略水平方向、換言すれば、デバイス本体を側方から把持した親指及び中指を結んだ左右方向に相当するものである。なお、筆記具の揺動方向を縦方向に限定し、横方向の揺動を規制する手段としては、例えば、後端部を支持し、一方向にのみ可動するボールジョイント部等を用いるものが挙げられる。
【0016】
また、動作検知スイッチとは、前述した筆記具の縦方向の揺動を検知し、これにより採点動作を認識するものである。ここで、デバイス本体は、筆記具の後端部が支持され、当該部位を軸として縦方向に揺動する。そのため、デバイス本体に装着された筆記具によって通常の採点動作を行うと、筆記具のペン先と採点する答案の答案用紙とが接し、デバイス本体の長手方向に直交する斜め上方向にペン先を押上げようとする力が作用する。このとき、筆記具に対向するように設けられ、かつ上述の斜め上方向に対向するように動作検知スイッチの押圧スイッチ部を配することにより、押上げられた筆記具の一部と該押圧スイッチ部とが当接し、最終的に押圧スイッチ部の一部が押付けられる、すなわち、スイッチがONになった状態となる。係る状態を電気的に把握することにより、通常の採点動作を筆記具を用いて採点動作を検知することが可能となる。なお、動作検知スイッチには、例えば、中心に押圧スイッチ部が設けられた既存のタクタイルスイッチなどを採用することができる。
【0017】
したがって、本発明の採点入力デバイスによれば、デバイス本体に装着された筆記具を採点動作を行うことにより、後端部を軸として縦方向に揺動する筆記具によって動作検知スイッチの押圧スイッチ部が押圧され、当該スイッチの状態を信号送出部から採点結果を示す制御信号として送出することができる。その結果、通常の採点動作のみで採点結果の入力が可能となる。このとき、デバイス本体は、筆記具を縦方向のみの揺動を可能とし、横方向への揺動を規制している。そのため、上述した動作検知スイッチの押圧スイッチ部を押圧する力が横方向に分散することなく、確実に押圧スイッチ部を押圧することができる。
【0018】
なお、送出する制御信号は、上述した単純な採点動作を検知した場合、予め正答及び誤答のいずれかの採点結果に係る制御信号を送出するかを定義しておけばよく、例えば、答案用紙に通常の“○”を書く動作を行うだけで、正答の採点結果を入力することが可能となる。なお、係る定義は、正答及び誤答の比率のどちらか多くと予測される側を、上記動作検知スイッチにより採点動作を検知した場合の採点結果とするようにすればよく、これにより採点作業の簡略化が図られる。
【0019】
さらに、本発明にかかる採点入力デバイスは、上記構成に加え、「略流線形状に形成された前記デバイス本体の本体上面部に設けられ、採点動作を行う採点者の手指によって操作される操作スイッチ部を有する少なくとも一つ以上の機能付加スイッチをさらに具備し、前記機能付加スイッチは、前記動作検知スイッチによる採点動作の検知とともに、前記操作スイッチ部が押下操作されることにより、電気的に接続された前記信号送出部から誤答に係る採点結果を示す前記制御信号を送出させる誤答入力用スイッチ、及び前記動作検知スイッチによる採点動作の検知とともに、前記操作スイッチ部が押下操作されることにより、電気的に接続された前記信号送出部から部分正答に係る採点結果を示す前記制御信号を送出させる部分正答入力用スイッチの少なくともいずれか一方を含んで構成される」ものであっても構わない。
【0020】
したがって、本発明の採点入力デバイスによれば、誤答入力用スイッチ及び部分正答入力用スイッチを含む機能付加スイッチを備えることにより、上述の採点動作のみによる採点結果の制御信号の送出に加え、さらに多種類の採点結果に係る制御信号の送出も可能となる。すなわち、誤答入力用スイッチの操作スイッチ部を押下操作しながら、採点者が上述の採点動作を行うことにより、誤答の採点結果に係る制御信号が信号送出部から送出され、一方、部分正答入力用スイッチの操作スイッチ部を押下操作しながら、採点者が上述の採点動作を行うことにより、部分正答の採点結果に係る制御信号が信号送出部から送出される。これにより、正答、誤答、及び部分正答の三種類の採点結果をそれぞれ制御信号として信号送出部から送出することができるようになる。
【0021】
ここで、誤答入力用スイッチ及び部分正答入力用スイッチからなる機能付加スイッチは、デバイス本体の本体上面部に設けられている。そのため、デバイス本体を把持した手を離すことなく、指先の移動のみによって両スイッチを操作することができる。また、この機能付加スイッチは、上述した以外のその他機能をさらに付加することができ、例えば、誤答入力用スイッチを単独で二回、連続的に押下操作することにより(マウスのダブルクリック操作に相当)、採点結果の入力を取消す指示を制御信号として送出したり、或いは部分正答入力用スイッチを同様に単独で二回、連続的に押下操作することにより、採点結果に係る結果データの入力される採点結果入力欄(詳細は後述する)にあるカーソル位置を次採点結果入力欄に移動するような指示を制御信号として送出するような機能を付加するものであっても構わない。なお、機能付加スイッチにも、前述の動作検知スイッチと同様にタクタイルスイッチを採用することが可能である。
【0022】
さらに、本発明にかかる採点入力デバイスは、上記構成に加え、「前記デバイス本体に設けられ、前記動作検知スイッチ及び前記機能付加スイッチのそれぞれのスイッチ状態を無線信号によって前記信号送出部まで送信する無線送信部と、前記信号送出部に設けられ、送信された前記無線信号を受信する無線受信部と」を具備するものであっても構わない。
【0023】
したがって、本発明の採点入力デバイスによれば、デバイス本体及び信号送出部が二つに分離して形成され、デバイス本体に設けられた動作検知スイッチ及び機能付加スイッチのスイッチ状態、すなわち、押圧や押下げ状態を無線信号によって送受信することができる。なお、係る技術は、一般的なリモコン等に採用されている赤外線通信技術等の無線通信技術を応用することができる。これにより、デバイス本体と信号送出部とを接続する接続コードが不要となり、採点動作の際に係る接続コードに手などがかかり、採点動作の邪魔となるような問題を解消することができる。これにより、採点者は、通常の筆記具を用いた採点動作と同様の間隔で採点作業を進めることができ、作業の効率化がさらに進められる。
【0024】
さらに、本発明にかかる採点入力デバイスは、上記構成に加え、「前記動作検知スイッチの前記押圧スイッチ部の必要押圧荷重、及び前記機能付加スイッチの前記操作スイッチ部の必要押下操作荷重は、それぞれ異なるように設定されている」ものであっても構わない。
【0025】
したがって、本発明の採点入力デバイスによれば、タクタイルスイッチ等を使用した各スイッチの必要押圧荷重及び必要押下操作荷重がそれぞれ異なるように設定されている。ここで、必要押圧荷重及び必要押下操作荷重とは、それぞれのスイッチ部を押すために必要な力のことであり、スイッチ部の固さに相当する。これにより、動作検知スイッチによる採点動作の検知精度を高くすることができる。例えば、動作検知スイッチの押圧スイッチ部の必要押圧荷重を大きく、すなわち、固めに設定することにより、筆記具が本来の採点動作ではなく、偶発的に当たった場合には採点動作として検知しないようにすることができる。これにより、採点動作のみを正確に検知することができるようになる。
【0026】
機能付加スイッチは、採点者の手指によって操作されるものであり、繊細な感覚を有する人間の指先であれば、仮に操作スイッチ部の必要押下操作荷重を小さく、すなわち、柔らかめに設定しても僅かな力の加減によって操作を行うことができ、誤操作のおそれはない。そのため、個々のスイッチの固さを異にすることにより、採点入力デバイスの操作性及び検知精度が向上することになる。
【0027】
さらに、本発明にかかる採点入力デバイスは、上記構成に加え、「前記デバイス本体は、前記筆記具のペン先側近傍を側方から挟込み、互いの片間隔を前記筆記具の軸径と略一致するように形成された一対の挟持片をさらに有し、一対の前記挟持片によって前記ペン先側の横方向への揺動を規制する」ものであっても構わない。
【0028】
したがって、本発明の採点入力デバイスによれば、筆記具のペン先近傍が一対の挟持片によって挟持され、さらに、該挟持片の間の幅が、筆記具の軸径と略一致するよう設定されている。そのため、筆記具の横方向への移動が規制される。ここで、筆記具の横方向への揺動とは、前述したように、縦方向の揺動に対して直交する方向を示し、デバイス本体とともに筆記具を把持した際に親指と中指が位置する左右方向に相当するものである。これにより、筆記具は後端部を軸として、縦方向のみに揺動することになり、動作検知スイッチの押圧スイッチ部を押圧する動きを確実に行え、採点動作の検知を安定して行うことができる。また、答案用紙に対して実際に採点結果を筆記する際にも、筆記具の横方向へのぶれがないため、筆記の安定性も向上する。
【0029】
一方、本発明に係る採点入力システムは、「上記に記載の採点入力デバイスを利用し、採点集計コンピュータによって答案の採点結果を入力し、集計する採点入力システムであって、前記採点入力デバイスの信号送出部と接続された前記採点集計コンピュータは、採点対象者の属する採点単位毎に形成された複数の採点対象者リストデータ、及び前記答案の設問及び配点に係る情報を含む複数の答案データをそれぞれ予め記憶する集計記憶手段と、前記信号送出部から送出される正答、誤答、及び部分正答のいずれか一つの採点結果を示す制御信号を受付ける制御信号受付手段と、複数の前記採点対象者リストデータ及び前記答案データからそれぞれ一つずつ抽出し、前記答案の採点結果に係る結果データを入力するための採点結果入力欄を含む採点集計データを生成する採点集計データ生成手段と、受付けた前記制御信号から正答、誤答、及び部分正答のいずれか一つの採点結果を判定する結果判定手段と、判定された前記採点結果に係る前記結果データを前記採点集計データの前記採点結果入力欄に入力する結果入力手段と、前記結果データの入力された前記採点集計データに基づいて、前記採点対象者及び前記採点対象者の属する採点単位に対する統計処理を行い、統計データを作成する統計処理手段と」を主に具備して構成されている。
【0030】
したがって、本発明の採点入力システムによれば、上記に記載の採点入力デバイスを使用し、該採点入力デバイスの信号送出部から送出される制御信号を受付け、これに基づいて正答、誤答、及び部分正答の採点結果を判定することができる。さらに、予め記憶された採点対象者リストデータ及び答案データに基づいて生成された採点集計データに、当該採点結果に係る結果データを入力することにより、採点動作と同時に、採点結果の入力が可能となる。そして、最終的に全ての採点対象者に対して採点を完了することによって得られた結果データ入力済みの採点集計データに基づいて各種統計処理を行うことにより、平均点や偏差値等の統計データを得ることができる。すなわち、採点者は、採点入力デバイス及び採点集計コンピュータを利用することにより、採点結果の入力、集計、及び統計的処理の作業を省力化することができ、採点作業を効率的に、かつ短時間で完了させることが可能となる。その結果、採点者の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の効果として、従前から使い慣れているサインペンのような筆記具を使用し、さらに従来と同様の採点動作を行うことにより、採点結果の入力及び集計を簡易に行うことができる。さらに、動作検知スイッチ及び機能付加スイッチの組合わせによって、複数種類の採点結果をデバイス本体から手を離すことなく、手指の操作によってのみ選択し、制御信号として送出することができる。さらに、採点集計コンピュータと組合わせた採点入力システムによれば、採点入力デバイスによる採点の完了と同時に、採点結果の入力及び統計処理の結果を得ることができ、採点者の負担を著しく軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態である採点入力デバイス1、及び採点入力デバイス1を使用した本発明の採点入力システム2について、図1乃至図7に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の採点入力デバイス1の概略構成を示す説明図であり、図2はデバイス本体3の構成を示す正面図であり、図3はデバイス本体3の構成を示す平面図であり、図4はデバイス本体3に装着されたサインペン4の(a)動作検知なし、(b)動作検知有りのデバイス本体3を模式的に示す説明図であり、図5は採点入力システム2における採点集計コンピュータ6の機能的構成を示すブロック図であり、図6及び図7は採点入力デバイス1及び採点集計コンピュータ6の処理の流れを示すフローチャートである。ここで、本実施形態の採点入力システム2は、小学校において実施される各学習単元毎の確認テストの採点をサインペン4を用いて行うものについて例示するものとする。ここで、サインペン4が本発明の筆記具に相当する。
【0033】
本実施形態の採点入力デバイス1は、図1乃至図4に主に示すように、採点集計コンピュータ6とUSB端子を介して接続されたペン立て機能を有する信号送出部7と、信号送出部7と接続コード8aによって本体後端部9とが接続され、本体上面部10及び本体側面部11が全体的に流線形状を呈するように形成されたデバイス本体3と、答案の採点に使用するサインペン4の後端部13が挿入され、該後端部13を包含するようにして支持する後端支持部14と、通常のサインペン4を把持する際のペン先12の近傍を側方から挟込むようにして支持可能な一対の挟持片15a,15b、及び挟持片15a,15bの先端を互いに連結してなる連結部16からなるペン先支持部17と、後端支持部14及びペン先支持部17の間を連結し、サインペン4の長手方向に略一致するように支持する本体基部18とによって主に構成されている。ここで、後端支持部14は、サインペン4の後端部13を挿入し、該後端部13近傍を軸として、サインペン4のペン先12を縦方向(図1、図4(b)における矢印A参照)に揺動可能に支持するために、サインペン4の軸径よりも僅かに大きな径で形成された開口を有する孔部として形成されている。また、ペン先支持部17の互いの挟持片15a,15bの間の幅は、装着するサインペン4の軸径と略一致するように形成されている。さらにペン先支持部17は、一対の挟持片15a,15b及び連結部16、さらに本体基部18とによって囲まれた断面略矩形状の角管構造で構成されている。このとき、本体基部18から連結部16に至るまでの挟持片15a,15bの長さは、サインペン4の軸径よりも大となるように形成されている。
【0034】
さらに、デバイス本体3は、ペン先支持部17の位置にある本体基部18の裏面側にタクタイルスイッチからなる動作検知スイッチ20が取付けられている。この動作検知スイッチ20は、押圧によって変形する押圧スイッチ部21を中央部に有している。この押圧スイッチ部21は、デバイス本体3に装着されたサインペン4の一部と当接するように形成されており、僅かな力で係る押圧スイッチ部21が押圧され、動作検知スイッチ20によって採点動作を検知可能となっている。
【0035】
また、デバイス本体3は、本体基部18の流線形状の本体上面部10の長手方向に沿って並設するように、それぞれ円形状の誤答入力用スイッチ22及び部分正答入力用スイッチ23の二つの機能付加スイッチが取付けられている。この誤答入力用スイッチ22及び部分正答入力用スイッチ23の配置は、サインペン4を装着したデバイス本体3を採点者(図示しない)が把持した場合、人差し指或いは中指によって採点動作中であっても操作可能な位置に設けられている。すなわち、採点動作において手を持ち替える等の作業を要することなく機能付加操作を行うことができる。ここで、誤答入力用スイッチ22及び部分正答入力用スイッチ23が本発明の機能付加スイッチに相当する。
【0036】
なお、前述の動作検知スイッチ20、誤答入力用スイッチ22、及び部分正答入力用スイッチ23は、それぞれ接続コード8aを介して信号送出部7と電気的に接続されている。また、上述したサインペン4によって押圧される動作検知スイッチ20の押圧スイッチ部21の押圧に要する荷重(押圧スイッチ部21の固さ)と、誤答入力用スイッチ22等の操作スイッチ部19の押下操作に要する荷重(操作スイッチ部19の固さ)とが異なるように設定されている。すなわち、採点者の手指によって操作される操作スイッチ部19は、人間の微妙な感覚によって操作することができるため、動作検知スイッチ20よりも要する荷重を小さく、すなわち、柔らかめの設定にすることができる。一方、サインペン4によって押圧される押圧スイッチ部21は、サインペン4のデバイス本体3の装着時にはほぼ近接している。そのため、不用意に加わった衝撃によって押圧スイッチ部21が押圧されると、採点結果の誤入力が頻発することがある。したがって、押圧スイッチ部21を固めの設定とすることにより、上記の誤入力を抑え、採点動作のみを確実に検知することが可能となる。
【0037】
一方、信号送出部7は、図1に示すように、円柱状の円柱体部24及び直方体状の方形部25を組合わせた形状で構成され、円柱体部24の略中央にサインペン4のペン先12側を差込んでペン立てとして機能させるためのペン立て孔部26が設けられている。そして、信号送出部7の一部から延出された接続コード8bによって採点集計コンピュータ6のUSB端子と接続されている。なお、方形部25の上面には、該採点集計コンピュータ6との接続状態を視覚的に確認するための接続確認用ランプ27が設けられている。なお、係る接続状態を信号送出部7で、すなわち、採点入力デバイス1側でON/OFF制御可能とするための切換スイッチ(図示しない)、或いは該信号送出部7を介して他のUSB機器を接続可能とし、USBハブ機能を有するためのUSB端子(図示しない)等の構成を併せて有するものであっても構わない。なお、図示しないが、上述した動作検知スイッチ20、誤答入力用スイッチ22、及び部分正答入力用スイッチ23がそれぞれ押圧等されることによって送出される採点結果に係る制御信号29を視覚を通じて確認できるように、例えば、○=赤色、×=青色、△=黄色のように、発光ダイオード等をそれぞれ点灯させて確認できる装置をデバイス本体3或いは信号送出部7のいずれかに設けるものであっても構わない。
【0038】
次に、採点入力デバイス1による採点動作の検知について具体的に説明する。始めに、採点入力デバイス1の信号送出部7と採点集計コンピュータ6とを接続する。これにより、採点集計コンピュータ6のUSB端子から信号送出部7に電力が供給されることとなり、信号送出部7及びデバイス本体3が稼働状態となる。そして、一般的に採点に使用されるサインペン4をデバイス本体3に装着する。具体的に示すと、サインペン4の後端部13をデバイス本体3の後端支持部14の開口した孔部(図示しない)に挿入し、後端部13が後端支持部14の内底28に当たるまで押込む。このとき、サインペン4は後端支持部14よりも前方(図3における紙面左方向に相当)に位置する略矩形状に開口した角管状のペン先支持部17の管内を挿通した状態となっている。
【0039】
これにより、サインペン4がデバイス本体3に装着された状態となる。このとき、後端支持部14はサインペン4の軸径、特に後端部13の軸径よりも大となるように形成されているため、該後端部131を軸として、ペン先12を前後左右方向に揺動可能となっている。一方、ペン先支持部17は、一対の挟持片15a,15bの間の幅がサインペン4の軸径と略一致するように設計されているため、横方向(図1における矢印B参照)への揺動が規制される。これに対し、挟持片15a,15bの長さは、サインペン4の軸径よりも大となるように設計されているため、ペン先12を縦方向(図1、図4(b)における矢印A参照)への揺動は可能となっている。したがって、デバイス本体3に装着されたサインペン4は後端部11を軸として縦方向の揺動が可能な状態が創出される。ここで、挟持片15a,15bが本発明における横揺動規制手段に相当する。
【0040】
そして、サインペン4が装着されたデバイス本体3を採点者が把持し、通常と同様に答案の採点動作を行う。このとき、サインペン4が縦方向に揺動可能であるため、ペン先12が答案(図示しない)に接すると、後端部13を軸として、答案がペン先12を斜め上方向に押し上げる力が作用する。ここで、本体基部18の裏面側には、動作検知スイッチ20が設けられているため、斜め上方向にサインペン4が押され、サインペン4の一部と押圧スイッチ部21が当接することによって動作検知スイッチ20の押圧スイッチ部21が押圧される(図4(b)参照)。その結果、採点動作が検知されることになる。これにより、動作検知スイッチ20と電気的に接続した信号送出部7から採点動作に応じて予め設定した制御信号29が採点集計コンピュータ6に送出される。なお、本実施形態では、上記の動作検知スイッチ20のみに基づく制御信号29によって“○(正答)”を示すものが送出される。
【0041】
一方、上記のサインペン4による採点動作の検知とともに、採点者よってデバイス本体3の本体上面部10に設けられた誤答入力用スイッチ22が押下操作されている場合、上記の動作検知スイッチ20による採点動作の検知に従って、“×(誤答)”を示す制御信号29が送出される。また、採点者によってデバイス本体3の本体上面部10に設けられた部分正答入力用スイッチ23が押下操作されている場合、上記の動作検知スイッチ20による採点動作の検知に従って、“△(部分正答)”を示す制御信号29が送出される。これにより、採点者は、把持したデバイス本体3から指を離すことなく、三種類の採点結果を採点動作及び手指による操作によって区別して制御信号29として送出することができる。
【0042】
また、誤答入力用スイッチ22を連続して二回押すことによって、一度入力された採点結果に係るデータを採点集計コンピュータ6から削除するクリア機能、及び部分正答入力用スイッチ23を連続して二回押すことによって、採点集計コンピュータ6の画面上に点滅するカーソルを、次の設問に対応する採点結果入力欄に移動させるスキップ機能に係る制御信号29をそれぞれ送出可能となっている。これにより、本実施形態の採点入力デバイス1は、デバイス本体3を把持した手指を離すことなく、正答、誤答、及び部分正答の三種類の採点結果に係る制御信号29を信号送出部7から送出することが可能となる。特に、従来のように運筆によって“○”、“×”、“△”を認識していたものと比べ、三種類のスイッチ20等の押圧や押下操作の組合わせに応じて採点結果を判別することが可能となり、従来のものに比べて、明らかに正誤答等の認識不良を少なくすることができる。そのため、各採点対象者毎の採点を確実に制御信号29として送り、採点及び採点結果の入力に必要な時間を著しく短時間にすることができる。なお、誤答入力用スイッチ22若しくは部分正答入力用スイッチ23を連続して二回押すことによる機能を、点滅するカーソル位置を前の設問に対する採点結果入力欄に移動させる機能を割り当てるものであっても構わない。
【0043】
次に、本発明の採点入力システム2について、主に図1、及び図5乃至図7に基づいて説明する。採点入力システム2は、前出の採点入力デバイス1と、該採点入力デバイス1と接続された採点集計コンピュータ6とによって主に構成されている(図1参照)。なお、採点入力デバイス1を用いた採点結果に係る制御信号29を信号送出部7から送出する処理については既に詳細な説明を行ったため、ここでは主に採点集計コンピュータ6の構成及びその作用効果について説明するものとする。
【0044】
本実施形態の採点入力システム2に使用される採点集計コンピュータ6は、図5に主に示すように、採点対象者(児童・生徒)の属する採点単位(ここでは、「学級単位」)毎に、複数の採点対象者についての氏名及び出席番号の情報とともに、リスト化して形成された採点対象者リストデータ31、及び採点を行う答案の設問、設問順、及び各設問に対する配点に係る情報を含む複数の答案データ32をそれぞれ予め記憶する集計記憶手段33と、採点入力デバイス1の信号送出部7とUSB端子を介して接続され、送出される採点結果または採点集計コンピュータ6に対する指示を含む制御信号29を受付ける制御信号受付手段34と、採点者によって選択され、それぞれ一つずつ抽出された採点対象者リストデータ31及び答案データ32から縦軸に採点対象者の氏名を配し、横軸に設問を識別する符号(例えば、「問1」、「問2」等)を配し、採点対象者及び設問の交差したテーブルを採点結果入力欄(図示しない)とする採点集計データ35を生成する採点集計データ生成手段36と、制御信号受付手段34によって受付けた制御信号29から、正答、誤答、及び部分正答、又は採点集計コンピュータ6に対する指示(以下、単に「指示制御」と称す)のいずれかを判定する結果判定手段37と、判定された採点結果に係る結果データ38を採点集計データ35の採点結果入力欄に入力し、採点集計データ35を更新する結果入力手段39と、全ての採点対象者の全ての採点結果入力欄に結果データ38が入力され、更新された採点集計データ35に基づいて、採点対象者別、採点対象者の属する採点単位(母集団:全国、都道府県単位、校区単位、学年単位、学級単位等)に対する統計処理を行い、採点対象者の成績、及び母集団における平均点、各設問毎の正誤答率、母集団内での採点対象者の順位付け、偏差値等の統計データ40を作成する統計処理手段41と、制御信号29に含まれる指示制御に従って、採点結果入力欄に既入力済みの結果データ38のクリア、及び次採点結果入力欄へのカーソル位置等の指示を行う指示制御手段42とを具備して主に構成されている。なお、採点集計コンピュータ6は、市販のパーソナルコンピュータを利用することが行われている。
【0045】
さらに、採点集計コンピュータ6の集計記憶手段33は、上述した採点対象者リストデータ31及び答案データ32の他に、判定された結果データ38が入力された採点集計データ35、及び統計データ40等の各種データを記憶することができる。また、採点集計コンピュータ6は、その他の機能的構成として、通常のパーソナルコンピュータにおいて利用され、上記の各種データ31等の入力、或いは採点集計コンピュータ6に対して指示・指令を入力するためのキーボード43a及びマウス43b等の操作入力機器43と接続した操作受付手段46と、採点結果に係る結果データ38の採点結果入力欄への入力状況及び統計処理された統計データ40を視覚的に把握するための液晶ディスプレイ等の表示機器44に接続し、主に採点集計データ35の表示制御を行う採点集計データ表示制御手段47とを具備している。また、上述の集計記憶手段33には、採点入力システム2に係る優れた効果を採点集計コンピュータ6に奏させるために、上記各手段として採点集計コンピュータ6を機能させる採点入力プログラム45がソフトウェアとして記憶されている。そして、採点集計コンピュータ6は、係る採点入力プログラム45を読出すことにより、上述した採点入力及び集計の処理を行うことができるようになる。また、採点集計コンピュータ6は、前述したように、市販のパーソナルコンピュータを利用するものであるため、その内部のCPU(中央演算装置)によって、上記各手段を機能させることができ、またグラフィックボード(図示しない)によって表示機器44に画像を表示するための信号制御を行うことができる。さらに、集計記憶手段33には、ハードディスクドライブ或いは半導体メモリを利用することが可能であり、これにより各種データ及びソフトウェアを記憶することができる。
【0046】
次に、本実施形態の採点入力システム2を用いた答案の採点結果の入力及び集計の処理の流れについて、主に図6及び図7のフローチャートに基づいて説明する。ここで、本実施形態の採点入力システム2において、既に説明した採点入力デバイス1が採点集計コンピュータ6と接続された状態となっている(図1参照)。さらに、集計記憶手段33に記憶された採点入力プログラム45が読出され、既に起動した状態となっている。
【0047】
始めに、採点集計コンピュータ6の操作入力機器43を操作し、集計記憶手段33に記憶された複数の答案データ32の中から、採点作業を行う一の答案データ32を採点者の指示に基づいて抽出し(ステップS1)、当該答案データ32に対応する答案について解答した複数の採点対象者の属する採点単位毎に生成された採点対象者リストデータ31を抽出する(ステップS2)。ここで、答案データ32は、小学校等の授業において使用される教科書の内容に準拠し、各学習単元の終了時に、個々の生徒の習熟度を教師(採点対象者)が把握するための確認テスト等の答案を想定している。また、答案データ32及び採点対象者リストデータ31の抽出順は、上記に限られるものではなく、どちらでも先に抽出することができる。
【0048】
そして、採点集計コンピュータ6は、抽出された答案データ32及び採点対象者リストデータ31に基づいて、係る組み合わせによる採点集計用の採点集計データ35の作成をする(ステップS3)。ここで、採点集計データ35について具体的に説明すると、該採点集計データ35は、表示機器44に対して、一般的な表計算ソフトウェアのような画面形式を有して表示することが可能なものであり、縦軸に採点対象者リストデータ31に含まれる複数の採点対象者の氏名をそれぞれ所定の順序(例えば、出席番号順、50音順等)に並べ、さらに横軸に答案の各設問を問1から各項目毎に順次並べてマトリックスとして形成したものである。これにより、採点対象者の縦軸と設問の横軸とが交差した箇所(テーブル)が採点結果入力欄に相当することとなる。なお、作成された採点集計データ35は、採点結果入力欄に後述する結果データ38が未入力の状態で表示機器44に表示出力されている。そして、この表示された採点集計データ35の採点結果入力欄の一つには、結果データ38の入力位置を示す点滅したカーソルが表示されている。なお、このカーソルは、操作入力機器43のキーボードの矢印キーやマウスのポインタの移動及びクリックによって、任意の位置に移動させることができる。
【0049】
その後、採点者は、操作入力機器43を操作し、採点結果を入力する採点対象者及び設問に対応する採点結果入力欄にカーソルを上記操作に移動させ、サインペン4の装着された採点入力デバイス1によって答案の採点を通常と同じように行う。このとき、採点入力デバイス1からの制御信号29と、マウス等の操作入力機器からの操作制御信号(図示しない)との干渉を避けるため、マウスのポインタを表示機器44の所定位置に移動させることにより、操作入力機器からの操作制御信号の入力をキャンセルし、採点入力デバイス1からの制御信号29のみを受付けるようにすることができる。
【0050】
なお、採点入力デバイス1によって制御信号29を送出する機構については、既に説明を行ったため、ここでは説明を省略するが、採点入力システム2において、動作検知スイッチ20、誤答入力用スイッチ22、及び部分正答入力用スイッチ23の制御信号29を受付けると同時に、正答(○)、誤答(×)、部分正答(△)のそれぞれに対応する異なる音をスピーカー等から発生させ、正誤の入力を音で識別する機能を付加してもよい。これにより、前述したデバイス本体3等に設けられた発光ダイオードによる視覚を通じた確認に加え、音による聴覚を通じた確認が行える。そのため、誤って入力した場合の修正を楽に行うことができる。これにより、サインペン4を用いた答案の採点により、答案用紙には、サインペン4で描かれた“○”、“×(レ)”、“△”等の記号が通常と同様に表示され、一方、動作検知スイッチ20及び誤答入力用スイッチ22等の組合わせに応じて信号送出部7から送出された制御信号29を採点集計コンピュータ6の制御信号受付手段34によって受付ける処理を行う(ステップS4)。ここで、前述した信号送出部7から制御信号29の送出が有り、当該制御信号29を検出する場合(ステップS4においてYES)、制御信号29の受付処理を行う(ステップS5)。一方、信号送出部7からの制御信号29の送出が検出されない場合(ステップS4においてNO)、上述のステップS4の処理を継続し、信号送出部7から制御信号29が送出されるのを待機する。
【0051】
その後、受付けた制御信号29に基づいて、係る制御信号29が答案の設問に対する採点結果を含むものであるか、或いは採点集計データ35に対して、カーソル位置の変更等の指示を行う指示制御に係るものであるか否かの判定処理を行う(ステップS6)。ここで、制御信号29が設問に対する採点結果を含む物である場合(ステップS6においてYES)、当該制御信号が三種類の採点結果のタイプのうち、すなわち、動作検知スイッチ20のみからなる正答“○”を表すもの、動作検知スイッチ20及び誤答入力用スイッチ23を組合わせた誤答“×”を表すもの、及び動作検知スイッチ20及び部分正答入力用スイッチ24を組合わせた部分正答“△”を表すもののいずれかであるかを判定する(ステップS7)。なお、この判定は、各スイッチの押圧状態及び押下操作状態の組合わせによって、個々の制御信号29の値を電気的に変更することによって、容易に係る区別を判定することができる。
【0052】
一方、制御信号29が設問に対する採点結果を含むものでない場合(ステップS6においてNO)、すなわち、制御信号29の中には、採点結果入力欄に入力した結果データ38を含むものではなく、一度、入力した結果データ38を採点結果入力欄から削除するもの等の指示制御に係る信号を含む場合、当該指示の通り、採点集計コンピュータ6を制御し、結果データ38の削除等の処理を行う(ステップS8)。その後、ステップS12の処理に移行する。
【0053】
また、制御信号29に採点結果が含まれると判定される場合、設問に対応する採点結果入力欄に判定された採点結果に応じた結果データ38を入力し、採点集計データ35の保存及び更新を行う(ステップS9)。これにより、採点集計データ35に採点対象者の答案に係る結果データ38が蓄積され、採点集計データ35による採点結果の集積が行われる。
【0054】
その後、採点集計コンピュータ6は、当該採点対象者の次設問に対する採点結果入力欄の存在の有無を検出(ステップS10)、係る次採点結果入力欄が存在する場合(ステップS10においてYES)、既に結果データ38の入力された採点結果入力欄から、次採点結果入力欄へカーソル位置を移動させる(ステップS11)。そして、ステップS4の処理に戻り、当該設問に対する採点結果等に係る制御信号29が採点入力デバイス1から送出されるまで待機する。
【0055】
一方、次設問に対する採点結果入力欄が存在しない場合(ステップS10においてNO)、新たな採点対象者についての採点結果の入力処理を継続するか否かについての指示の入力を検出し、これを受付ける(ステップS12)。すなわち、採点対象者に対応する設問の採点結果入力欄が存在しないことは、当該採点対象者に対する全ての設問についての結果データ38の入力が完了したこと、換言すれば、採点が全て終了したことを意味する。そして、新たな採点対象者についての採点結果の入力処理を継続する旨の指示の入力がある場合(ステップS12においてYES)、次の採点対象者(例えば、採点済みの採点対象者の下に位置する採点対象者)の一番最初の設問の採点結果入力欄にカーソル位置を移動し(ステップS13)、ステップS4による処理を継続する。一方、採点結果の入力処理を継続しない旨の入力がある場合(ステップS12においてNO)、採点対象者リストデータ31に含まれる全採点対象者についての採点が完了したものとする。なお、採点対象者に対する全ての設問についての結果データ38の入力が完了したことが確認された場合、答案データ32に含まれる各設問毎の配点に係るデータに基づいて、正答及び部分正答の設問について各配点を付与することにより、答案に対する成績(得点)を計算し、採点集計データ35に入力し、表示機器44において表示するものであっても構わない。また、正答、誤答、部分正答以外の制御については、採点集計コンピュータ6の操作入力機器43のキーボード43a及びマウス43bに割り当て、簡便化を図るものであっても構わない。
【0056】
そして、全採点対象者について採点が完了した場合(ステップS12においてNO)、結果データ38の保存及び更新された採点集計データ45に基づいて、各採点対象者の成績(合計点、科目別成績)、母集団(採点単位等)における設問毎の正誤答率、平均点等を算出する統計処理を行う(ステップS14)。この統計処理の手法及び当該処理を採点集計コンピュータ6に機能させるためのソフトウェアは、周知の表計算ソフトウェアや高度な統計解析処理を可能とする解析用ソフトウェアによって行うことが可能であり、特に、具体的な内容についてはここでは説明を省略する。
【0057】
その後、統計処理の結果作成され、集計記憶手段33に記憶された統計データ40を、表示機器44を介して表示出力する(ステップS15)。その後、システム終了の指示の有無を検出し(ステップS16)、システム終了の指示がある場合(ステップS16においてYES)、システムを終了する(ステップS17)。一方、システム終了の指示がない場合(ステップS16においてNO)、ステップS1の処理に移行し、新たな採点対象者リストデータ31及び答案データ32を抽出し、採点入力処理を継続する。
【0058】
これにより、前述した採点入力デバイス1を用いた本発明の採点入力システム2は、通常の採点動作との間で違和感を覚えることなく、ほぼ同様の動作で答案の採点を行い、さらに採点と同時に各設問についての正誤等の入力及び答案に対する得点の計算を行うことができる。さらに、採点単位での採点入力が完了した場合、平均点や偏差値の算出及び採点単位における各採点対象者の順位等を把握することができる。
【0059】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0060】
すなわち、本実施形態の採点入力デバイス1において、デバイス本体3と信号送出部7との電気的な接続を通常の接続コード8(配線)によって行うものを示したが、これに限定されるものではなく、例えば、デバイス本体3及び信号送出部7の間を無線技術によって接続し、スイッチ20等の押圧状態等をデバイス本体3から信号送出部7に伝達するものであっても構わない。なお、係る無線技術は、既存の赤外線通信技術等を応用することにより、形成することが可能である。その結果、デバイス本体3及び信号送出部7の間の接続コード8aを省略することができ、採点動作の際に係る接続コード8が邪魔になることがない。そのため、一般の採点動作により近づけることができ、さらに違和感なく採点動作を行うことができる。
【0061】
また、本実施形態の採点入力デバイス1において、機能付加スイッチとして、誤答入力用スイッチ22及び部分正答入力用スイッチ23の二種類を設けたものを示したが、これに限定されるものではなく、採点結果をより詳細に入力しようとする場合、或いは採点集計コンピュータ6に対する指示制御をより、複雑なものとしようとする場合などは、機能付加スイッチの数をさらに増加させたものであってもよく、さらにデバイス本体3への取付位置も任意のものとすることができる。しかしながら、機能付加スイッチの数の増加により、操作性が複雑化することも予想されるため、デバイス本体3を把持したまま人差し指や中指で操作可能な本実施形態で示した二つ程度の機能付加スイッチを設けたものが特に好適と思われる。
【0062】
さらに、本実施形態の採点入力デバイス1において、ペン先支持部17の構成として、一対の挟持片15a,15b及びこの挟持片15a,15bの先端を連結する連結部16によって全体として略矩形状を呈する管構造のものを示したが、これに限定されるものではなく、例えば、挟持片15a,15bのそれぞれ先端近傍を互いに対向するように曲折し、鉤状(L字状)に形成したものであっても構わない。これにより、連結部16の構成を省略することができる。
【0063】
さらに、本実施形態の採点入力システム2において、主に図6及び図7に基づいて、採点の入力及び集計等に係る処理の流れを示したが、これに限定されるものではなく、各ステップにおいて適宜変更を行うものであっても構わない。
【0064】
また、本実施形態の採点入力デバイス1及び採点入力システム2において、採点と採点結果の入力をするものを示したが、係る使用方法に限定されるものではない。例えば、通常の採点を筆記具を用いて行ったのち、採点入力デバイス1及び採点入力システム2を利用し、採点後の正答及び誤答等のチェック時に採点結果の集計を行うものであってもよい。さらに具体的に説明すると、採点を終えた後の答案の正答(○)、誤答(×)、部分正答(△)を付けた位置に、キャップをはめたままで本発明の採点入力デバイス1を○、×、△に相当する各操作を行うことによって、自動的に総得点及び各観点別の得点を入力することが可能となる。すなわち、採点のための「チェッカー」としての利用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態の採点入力デバイスの概略構成を示す説明図である。
【図2】デバイス本体の構成を示す正面図である。
【図3】デバイス本体の構成を示す平面図である。
【図4】デバイス本体に装着されたサインペンの(a)動作検知なし、(b)動作検知有りの状態を模式的に示す説明図である。
【図5】採点入力システムにおける採点集計コンピュータの機能的構成を示すブロック図である。
【図6】採点入力デバイス及び採点集計コンピュータの処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】採点入力デバイス及び採点集計コンピュータの処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 採点入力デバイス
2 採点入力システム
3 デバイス本体
4 サインペン(筆記具)
6 採点集計コンピュータ
7 信号送出部
9 本体後端部
10 本体上面部
11 本体側面部
12 ペン先
13 後端部
14 後端支持部
15a,15b 挟持片
16 連結部
17 ペン先支持部
19 操作スイッチ部
20 動作検知スイッチ
21 押圧スイッチ部
22 誤答入力用スイッチ
23 部分正答入力用スイッチ
29 制御信号
31 採点対象者リストデータ
32 答案データ
33 集計記憶手段
34 制御信号受付手段
35 採点集計データ
36 採点集計データ生成手段
37 結果判定手段
38 結果データ
39 結果入力手段
40 統計データ
41 統計処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
答案の採点に使用する筆記具の後端部を軸として、前記筆記具のペン先側を縦方向に揺動可能にするとともに、前記ペン先側の横方向への揺動を規制して前記筆記具が装着されるデバイス本体と、
前記筆記具に対向する前記デバイス本体の一面に取付けられ、前記デバイス本体に装着された前記筆記具を使用した採点動作により、縦方向に揺動した前記筆記具の一部と当接し、押圧される押圧スイッチ部を有する動作検知スイッチと、
前記動作検知スイッチと電気的に接続され、前記動作検知スイッチの押圧状態に応じて前記答案の正答及び誤答のいずれか一つの採点結果を示す制御信号を送出可能な信号送出部と
を具備することを特徴とする採点入力デバイス。
【請求項2】
略流線形状に形成された前記デバイス本体の本体上面部に設けられ、採点動作を行う採点者の手指によって操作される操作スイッチ部を有する少なくとも一つ以上の機能付加スイッチをさらに具備し、
前記機能付加スイッチは、
前記動作検知スイッチによる採点動作の検知とともに、前記操作スイッチ部が押下操作されることにより、電気的に接続された前記信号送出部から誤答に係る採点結果を示す前記制御信号を送出させる誤答入力用スイッチ、及び前記動作検知スイッチによる採点動作の検知とともに、前記操作スイッチ部が押下操作されることにより、電気的に接続された前記信号送出部から部分正答に係る採点結果を示す前記制御信号を送出させる部分正答入力用スイッチの少なくともいずれか一方を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の採点入力デバイス。
【請求項3】
前記デバイス本体に設けられ、前記動作検知スイッチ及び前記機能付加スイッチのそれぞれのスイッチ状態を無線信号によって前記信号送出部まで送信する無線送信部と、
前記信号送出部に設けられ、送信された前記無線信号を受信する無線受信部と
をさらに具備することを特徴とする請求項2に記載の採点入力デバイス。
【請求項4】
前記動作検知スイッチの前記押圧スイッチ部の必要押圧荷重、及び前記機能付加スイッチの前記操作スイッチ部の必要押下操作荷重は、それぞれ異なるように設定されていることを特徴とする請求項2及び請求項3に記載の採点入力デバイス。
【請求項5】
前記デバイス本体は、
前記筆記具のペン先側近傍を側方から挟込み、互いの片間隔を前記筆記具の軸径と略一致するように形成された一対の挟持片をさらに有し、
一対の前記挟持片によって前記ペン先側の横方向への揺動を規制することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の採点入力デバイス。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の採点入力デバイスを利用し、採点集計コンピュータによって答案の採点結果を入力し、集計する採点入力システムであって、
前記採点入力デバイスの信号送出部と接続された前記採点集計コンピュータは、
採点対象者の属する採点単位毎に形成された複数の採点対象者リストデータ、及び前記答案の設問及び配点に係る情報を含む複数の答案データをそれぞれ予め記憶する集計記憶手段と、
前記信号送出部から送出される正答、誤答、及び部分正答のいずれか一つの採点結果を示す制御信号を受付ける制御信号受付手段と、
複数の前記採点対象者リストデータ及び前記答案データからそれぞれ一つずつ抽出し、前記答案の採点結果に係る結果データを入力するための採点結果入力欄を含む採点集計データを生成する採点集計データ生成手段と、
受付けた前記制御信号から正答、誤答、及び部分正答のいずれか一つの採点結果を判定する結果判定手段と、
判定された前記採点結果に係る前記結果データを前記採点集計データの前記採点結果入力欄に入力する結果入力手段と、
前記結果データの入力された前記採点集計データに基づいて、前記採点対象者及び前記採点対象者の属する採点単位に対する統計処理を行い、統計データを作成する統計処理手段と
を具備することを特徴とする採点入力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−134331(P2008−134331A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318883(P2006−318883)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000154613)株式会社文溪堂 (12)
【Fターム(参考)】