説明

接合用セラミック部材の製造方法、接合用セラミック部材、真空スイッチ、及び真空容器

【課題】 低温での焼成でも十分なメタライズの接合強度が得られる接合用セラミック部材の製造方法、接合用セラミック部材、接合体、真空スイッチ、及び真空容器を提供すること。
【解決手段】 金属部材3との接合に用いられるメタライズ層11を備えた接合用セラミック部材1の製造方法であって、W及び/又はMoの高融点金属粉末;70〜97重量%、Ni粉末;1〜10重量%、Mn粉末;5〜10重量%、Ti及び/又はTiH2粉末;0.5〜2重量%、SiO2粉末;2〜15重量%を含有する混合物を、有機バインダと混合してペーストとしてメタライズインクを製造し、該メタライズインクをセラミック焼成体であるセラミック基材9に塗布して焼き付けてメタライズ層11を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金属とセラミックを接合する場合のように、接合強度、気密性等が要求される部材などに関し、接合用セラミック部材の製造方法、接合用セラミック部材、接合体、真空スイッチ、及び真空容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セラミック基材の表面にメタライズを施す方法として、モリブデン−マンガン法(Mo−Mn法;テレフンケン法)が知られている。
【0003】
このMo−Mn法は、WやMo等の高融点金属の粉末に、Mn粉末、Ti粉末、ガラス成分(SiO2)等の接合助剤を添加し、有機バインダと混合してペーストとしたメタライズインクを、セラミック基材上に塗布し焼き付ける方法(焼成方法)である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、メタライズの焼き付け温度は、1300〜1500℃の高温であり、炉の構造、光熱費、耐熱消耗材等、焼成費用が大きくかかるという問題があった。
また、高温の焼き付けにより、セラミック自体の変形も生じ、寸法精度を満足しない製品が発生するという問題もあった。
【0005】
この対策として、従来の組成のメタライズインクを、1300℃未満の低温で焼き付けることが考えられるが、この場合は、十分な接合強度が得られないという問題があり、その改善が求められていた。
【0006】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、低温での焼成でも十分なメタライズの接合強度が得られる接合用セラミック部材の製造方法、接合用セラミック部材、接合体、真空スイッチ、及び真空容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来のメタライズ方法では、主に二つの作用により、金属がセラミックと接合する。即ち、高融点金属粒子同士の焼結と、同粒子間の空隙へのガラス成分の拡散浸透である。
この従来方法において、メタライズ焼成温度が十分に高いと、高融点金属の焼結が進み、メタライズ層自体の強度が向上し、なおかつ、セラミック内又はインク成分のガラス質(SiO2等)が、高融点金属粒子間に浸透し、投錨効果として機械的に接合強度が向上する。しかし、これらの効果が得られる十分な反応には、1300℃以上の温度が必要であった。
【0008】
それに対して、本発明では、Niが高融点金属と反応して焼結を促進させることにより、低温で焼結することができる。また、インク内にSiO2を含む場合には、SiO2によってメタライズ層内にガラス質が十分に満たされ、例えば1100〜1250℃(好ましくは1100〜1200℃)の低温での焼き付けが可能となる。
【0009】
本発明は、上述した知見により得られたものである。以下各請求項毎に説明する。
(1)前記目的を達成するための請求項1の発明は、
W及び/又はMoの高融点金属粉末と、Ni粉末とを含有する混合物を、有機バインダと混合してペーストとしてメタライズインクを製造し、該メタライズインクをセラミック焼成体であるセラミック基材に塗布して焼き付けてメタライズ層を形成することを特徴とする接合用セラミック部材の製造方法を要旨とする。
【0010】
本発明では、メタライズインク中に、Niを含むので、上述したように、Niが高融点金属と反応し、メタライズ層における焼結を促進する。これにより、例えば1100〜1250℃の低温でも十分に焼結が可能である。
【0011】
その結果、従来と比べて、炉の構造、光熱費、耐熱消耗材等に関する焼成費用を小さくすることができる。また、低温での焼き付けにより、セラミック自体の変形も生じにくく、高い寸法精度が得られるという顕著な効果を奏する。更に、低温でも十分に焼結ができるので、高い接合強度を確保できるという利点がある。
【0012】
(2)請求項2の発明は、
前記混合物として、前記W及び/又はMoの高融点金属粉末を70〜97重量%と、前記Ni粉末を1〜10重量%とを含有する混合物を用いることを特徴とする接合用セラミック部材の製造方法を要旨とする。
【0013】
本発明では、メタライズインク中に、Niを1〜10重量%含むので、上述したように、Niが高融点金属と反応し、メタライズ層における焼結を促進する。これにより、例えば1100〜1250℃の低温でも十分に焼結が可能である。
その結果、前記請求項1と同様の効果を奏する。
【0014】
(3)請求項3の発明は、
前記請求項1又は2に記載のメタライズインクに、更に、Mn粉末;5〜10重量%、Ti及び/又はTiH2粉末;0.5〜2重量%、SiO2粉末;2〜15重量%のうち、少なくとも一種を含むことを特徴とする接合用セラミック部材の製造方法を要旨とする。
【0015】
ここで、Mn成分は、接合助剤であり、焼成雰囲気中の水分により酸化され、ガラス成分の濡れ性、流動性を向上させる。
Ti成分は、接合助剤であり、非常に活性なため、セラミック基材との化学的接合に寄与する。
【0016】
また、SiO2は、ガラス質であり、このSiO2が高融点金属粒子間に浸透することにより、投錨効果として機械的に接合強度が向上する。特に、低温での焼成の場合には、接合用セラミック部材からSiO2が供給されにくいが、予めメタライズインク中にSiO2を添加することにより、低温でも高い接合強度が得られる。
【0017】
(4)請求項4の発明は、
セラミック焼成体であるセラミック基材に、W及び/又はMoの高融点金属とNi粉末とを含有するメタライズ層を備えたことを特徴とする接合用セラミック部材を要旨とする。
【0018】
前記請求項1の発明の項にて説明した様に、メタライズ層中に、Niを含むので、メタライズにおける焼成の際に、このNiが高融点金属と反応し、十分に焼結が進んだメタライズ層となる。例えば1100〜1250℃の低温でも十分に焼結が進んだメタライズ層となる。
【0019】
その結果、従来と比べて、炉の構造、光熱費、耐熱消耗材等に関する焼成費用が少なくなる。また、低温での焼き付けにより、セラミック自体の変形が少ないので、この接合用セラミック部材は高い寸法精度を有する。更に、低温で焼成した場合でも、高い接合強度を確保できる。
【0020】
(5)請求項5の発明は、
前記メタライズ層は、W及び/又はMoの高融点金属を70〜85重量%と、Niを0.5〜8.5重量%とを含むことを特徴とする前記請求項4に記載の接合用セラミック部材を要旨とする。
【0021】
前記請求項4の発明の項にて説明した様に、メタライズ層中に、Niを1〜10重量%含むので、メタライズにおける焼成の際に、このNiが高融点金属と反応し、十分に焼結が進んだメタライズ層となる。例えば1100〜1250℃の低温でも十分に焼結が進んだメタライズ層となる。その結果、前記請求項4と同様な効果を奏する。
【0022】
(6)請求項6の発明は、
前記請求項5に記載のメタライズ層に、更に、Mn;1〜3重量%、Ti;0.05〜2.5重量%、酸化物換算したSiO2;8〜20重量%のうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする接合用セラミック部材を要旨とする。
【0023】
前記請求項3の発明の項にて説明した様に、Mn成分及びTi成分は、接合助剤として機能する。
また、Si成分は、ガラス質のSiO2として機能し、このSiO2が高融点金属粒子間に浸透することにより、投錨効果として機械的に接合強度が向上する。特に、低温でも高い接合強度が得られる。
【0024】
(7)請求項7の発明は、
前記請求項4〜6のいずれかに記載の接合用セラミック部材に、前記メタライズ層を介して金属部材を接合したことを特徴とする接合体を要旨とする。
【0025】
本発明は、接合用セラミック部材と金属部材とを、上述したNi等を含むメタライズ層にて接合したものである。
従って、上述した様に、この接合用セラミック部材と金属部材とが接合した接合体を製造する際には、その製造コストが低減し、また、接合体においては、高い接合強度及び寸法精度が得られる。
【0026】
(8)請求項8の発明は、
前記請求項4〜6のいずれかに記載の接合用セラミック部材に、前記メタライズ層を介して他の接合用セラミック部材を接合したことを特徴とする接合体を要旨とする。
【0027】
本発明は、接合用セラミック部材と他の接合用セラミック部材とを、上述したNi等を含むメタライズ層にて接合したものである。尚、接合の際には、このメタライズ層上の接合面にメッキを施すことが好ましい。また、接合方法としてはろう付け接合が好適である。
【0028】
従って、上述した様に、この接合用セラミック部材同士が接合した接合体を製造する際には、その製造コストが低減し、また、接合体においては、高い接合強度及び寸法精度が得られる。
【0029】
(9)請求項9の発明は、
前記請求項7又は8の接合体を備えたことを特徴とする真空スイッチを要旨とする。
本発明は、上述した接合体を用いた真空スイッチである。この真空スイッチとは、例えばセラミック製の絶縁バルブを用いた電気回路開閉器であり、特に高電圧、大電流の開閉に好適なものである。
【0030】
(10)請求項10の発明は、
前記請求項7又は8の接合体を備えたことを特徴とする真空容器を要旨とする。
本発明は、上述した真空スイッチなどに用いられる真空容器(例えば絶縁バルブ)であり、この真空容器内に電極などを配置することにより、真空スイッチ(電気回路開閉器)を形成することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上詳述した様に、請求項1の発明の接合用セラミック部材の製造方法により、メタライズの低温での十分な焼結が可能であるので、従来と比べて、炉の構造、光熱費、耐熱消耗材等に関する焼成費用を小さくすることができる。また、高い寸法精度及び高い接合強度を実現できる。
【0032】
また、請求項4の発明の接合用セラミック部材は、低温でも十分に焼結が進んだメタライズ層を有するので、前記請求項1と同様に、焼成費用を低減でき、高い寸法精度及び高い接合強度を有する。
【0033】
更に、請求項7及び請求項8の接合体は、上述した接合用セラミック部材を有するので、前記と同様に、コストの低減や高い接合強度及び高い寸法精度という利点がある。
その上、請求項9の発明の真空スイッチ及び請求項10の発明の真空容器は、上述した接合用セラミック部材を備えた接合体を有するので、前記と同様に、コストの低減や高い接合強度及び高い寸法精度という利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の、接合用セラミック部材の製造方法、接合用セラミック部材、接合体、真空スイッチ、及び真空容器の実施の形態の例(実施例)を、図面を参照して説明する。
(実施例1)
ここでは、接合用セラミック部材と金属部材の接合体を例に挙げる。
【0035】
a)図1に模式的に示す様に、本実施例では、接合用セラミック部材1と金属部材3とがロー材5により接合されて接合体7が形成されている。
詳しくは、接合用セラミック部材1は、セラミック基材9上にメタライズ層11が形成されたものであり、このメタライズ層11上にメッキ層13が形成され、メッキ層13と金属部材3とがロー材5により接合され、これにより接合用セラミック部材1と金属部材3とが接合一体化されている。
【0036】
b)次に、この接合体の1例として円形のテストピースの製造方法を、接合用セラミック部材の製造方法とともに説明する。
1)まず、下記表1に示すメタライズインク成分の粉末(例えば87重量%)を、粉砕混合し、エトセル等の有機バインダ(例えば13重量%)と混合してペーストとし、メタライズインクを製造した。
【0037】
2)次に、前記メタライズインクを、セラミック焼成体であるアルミナ製(例えばアルミナ92重量%)のセラミック基材9(例えば厚み5mm×外径φ30mm×内径φ8.5mmの円筒形のテストピース)の表面に、厚み10〜20μm程度塗布した。
【0038】
3)次に、前記メタライズインクを塗布したセラミック基材9を炉中に入れ、ウエッター温度50℃のH2/N2(1:1)のフォーミングガス雰囲気にて、下記表2に示す1150〜1350℃の温度範囲の温度にて焼成した(メタライズした)。これにより、セラミック基材9の表面にメタライズ層11を備えた接合用セラミック部材1が得られた。
【0039】
4)次に、メタライズ層11の表面(メタライズ面)に、電解メッキによりNiメッキを施してメッキ層13を形成した。その後、H2雰囲気中、温度830℃にて、メッキ層13を焼成(シンタリング)した。
【0040】
5)次に、接合用セラミック部材1とコバール製(Fe−Ni−Co)の金属部材3をロー付けした。
【0041】
具体的には、メッキ層13と金属部材3(例えば厚み1mm×外径φ16mmのコバール円板)との間に、銀ロー材(BAg−8)5の箔を配置して、所定のロー付け温度にて加熱して冷却することにより、接合用セラミック部材1と金属部材3とをロー付け接合して接合体7を完成した。
【0042】
つまり、上述した1)〜5)の製造工程によって、下記表1に示す様に、メタライズインクの成分を違えて、図2に示す様に、実験に供する接合体7としてNo.2〜17の円形のテストピース(試料)を作成した。尚、メタライズインクの組成を違えた(即ちNiを含まない)比較例のNo.1の試料も作成した。
【0043】
【表1】

【0044】
また、上述した製造工程の際に、製造された接合用セラミック部材1のメタライズ層11の成分の定量分析を行った。詳しくは、電子プローブマイクロアナライザー(加速電圧;20kV、スポット径;5μm)により定量分析を行った。その結果を、下記表2に記す。
【0045】
尚、分析は、偏析の影響を少なくするために、各試料とも5箇所行い、その平均値を求めた。また、Si、Al、Ca、Mgの重量%は、酸化物換算した値である。
【0046】
【表2】

【0047】
但し、試料No.10は、Moに代えてWを使用。
c)次に、前記の製造方法にて製造した接合体の各試料の接合強度を調べた。
具体的には、図3に示す様に、接合体7を金属部材3を下向きにして配置するとともに、セラミック基材9の外周の下端を円筒形の鉄製の受け台21で支える。この状態で、セラミック基台9の中央の貫通孔23に、上方より円柱形のステンレス製の打ち抜き棒25を配置し、打ち抜き棒25を荷重速度0.5mm/minで図の下方に移動させる。
【0048】
そして、この際の金属部材3が剥がれる時の強度(破壊強度)を、打ち抜き棒25の上方に配置した荷重計(図示せず)によって測定し、これをロー付け強度とした。このロー付け強度を、各試料の焼成温度別に下記表3に記す。
【0049】
【表3】

【0050】
尚、前記表3の評価は、1150〜1250℃において、○は17MPa以上のピーク有りを示し、△は11〜17MPaのピーク有りを示し、×は10MPa以上のピーク無しを示している。
【0051】
この表3から明らかな様に、本発明の範囲のNo.2〜17の試料は、低温での焼成にもかかわらず、メタライズ層は十分に焼結するので、高いロー付け強度が得られ好適である。例えば1150℃の焼成では、6.9MPa以上の強度を有する。また、低温での焼結が可能であるので、焼結のためのコストが少なくて済むという利点がある。更に、低温での十分な焼結が可能であるので、高温での焼結に比べて、接合用セラミック部材の寸法精度が高いという効果がある。
【0052】
それに対して、比較例のNo.1の試料は、低温で焼成した場合には、メタライズ層は十分に焼結せず、よってロー付け強度が低く好ましくない。
(実施例2)
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な箇所の説明は省略する。
【0053】
ここでは、接合用セラミック部材同士を接合した接合体を例に挙げる。
a)図4に模式的に示す様に、本実施例では、アルミナ製の第1の接合用セラミック部材31と同様なアルミナ製の第2の接合用セラミック部材33とがロー材35により接合されて接合体37が形成されている。
【0054】
詳しくは、第1の接合用セラミック部材31は、第1のセラミック基材39上に第1のメタライズ層41が形成されたものであり、この第1のメタライズ層41上にはNiメッキにより第1のメッキ層43が形成されている。一方、第2の接合用セラミック部材33は、第2のセラミック基材45上に第2のメタライズ層47が形成されたものであり、この第2のメタライズ層47上にはNiメッキにより第2のメッキ層49が形成されている。そして、第1メッキ層43と第2のメッキ層49とがロー材35により接合されることにより、第1の接合用セラミック部材31と第2の接合用セラミック部材33とが接合されて一体となっている。
【0055】
b)次に、この接合体の1例として円形のテストピースの製造方法を、接合用セラミック部材の製造方法とともに説明する。
1)前記実施例1にて説明した様に(以下省略した内容は前記実施例1と同様である)、前記表1に示すメタライズインク成分の粉末を使用して、各試料のメタライズインクを製造した。
【0056】
2)次に、前記メタライズインクを、第1のセラミック基材39と第2のセラミック基材45の表面に塗布した。
【0057】
3)次に、前記メタライズインクを塗布した第1、2のセラミック基材39、45を、それぞれ炉中に入れ、1150〜1350℃の温度にて焼成し、第1、2の接合用セラミック部材31、33を得た。
【0058】
4)次に、第1,2のメタライズ層41、47の表面に、Niメッキを施して第1、2のメッキ層43,49を形成した。
【0059】
5)次に、両メッキ層43、49の間に、銀ロー材35を配置してロー付け接合し、両接合用セラミック部材31、33を接合して一体化して接合体37を完成した。
【0060】
c)次に、前記の製造方法にて製造した接合体の各試料(試料No.1〜17のテストピース)の接合強度を、前記実施例1と同様な方法で調べた。
その結果を、下記表4に記す。
【0061】
【表4】

【0062】
尚、前記表4の評価は、1150〜1250℃において、○は60MPa以上のピーク有りを示し、△は40〜60MPaのピーク有りを示し、×は40MPa以上のピーク無しを示している。
【0063】
この表4から明らかな様に、本発明の範囲のNo.2〜17 の試料は、低温での焼成にもかかわらず、メタライズ層は十分に焼結しており、高いロー付け強度が得られ好適である。また、低温での焼結が可能であるので、焼結のためのコストが少なくて済むという利点がある。更に、低温での焼結が可能であるので、高温での焼結に比べて、接合用セラミック部材の寸法精度が高いという効果がある。
【0064】
それに対して、比較例のNo.1の試料は、低温で焼成した場合には、メタライズ層は十分に焼結しておらず、ロー付け強度が低く好ましくない。
(実施例3)
次に、実施例3について説明するが、前記実施例1、2と同様な箇所の説明は省略する。
【0065】
本実施例は、前記実施例1のような接合用セラミック部材と金属部材からなる接合体を真空スイッチに用いた例である。
即ち、本実施例の真空スイッチは、真空容器内に電極等を内蔵し、高電圧、大電流の開閉に適した高負荷開閉器である。
【0066】
詳しくは、図5に示す様に、真空負荷開閉器100は、絶縁バルブ101と、絶縁バルブ101の端部を塞いで取り付けられた第1及び第2の端蓋102、103と、第1の端蓋102に取り付けられ絶縁バルブ101内に突出された固定電極104と、第2の端蓋103に摺動自在に配置された可動電極105とを備え、固定電極104と可動電極105により接点106を構成している。
【0067】
前記絶縁バルブ101は、アルミナ92重量%のセラミック焼成体で形成され、内径80mm×肉厚5mm程度×長さ100mmの略円筒形である。また、絶縁バルブ101は、内径が一定の直胴部110及び内周壁111の中間にて内側に突出して周設される凸状部112を有している。更に、絶縁バルブ101の外周面には、釉薬層115を備えている。
【0068】
前記第1、2端蓋102,103は、円板状のコバール(Fe−Ni−Co)板で形成され、各中央部に固定電極104、ガイド131を固着するための穴121、132が設けられている。このガイド131は、可動電極105の可動軸151が摺動し易いように設けられている。
【0069】
前記固定電極104は、先端が穴121に固着される固定軸141となり、先端が絶縁バルブ101内に突出される円環状の電極142となっている。
前記可動電極105は、後端がガイド131内を摺動する可動軸151となり、先端が固定電極104側の電極142に接触する電極152となっている。この可動電極105は、電極152付近の可動軸151と第2の端蓋103との間に設けられる蛇腹状の金属べローズ153により、真空保持状態で開閉動作を可能とされている。
【0070】
前記金属ベローズ153は、ベローズカバー154で囲まれ、電流開閉時に、電極142,152(即ちその先端の接触子143、155)から発生する金属蒸気が直接触れるのを防いでいる。
【0071】
前記接点106は、電極142,152の接触が行われる接触子143、155に、高融点のタングステン系の焼結金属を用い、発生する真空アークにより溶着し難い構造となっている。
【0072】
また、接点106を囲んでアークシールド161が配置されている。このアークシールド161は、前述の金属蒸気が絶縁バルブ101の内周壁111に付着して絶縁が低下するのを防止するために、絶縁バルブ101の凸状部112にロー付けにより接合されている。
【0073】
つまり、本実施例の高負荷開閉器100では、前記実施例1の接合体と同様に、接合用セラミック部材である絶縁バルブ101の凸状部112に、金属部材であるアークシールド161がロー材162によるロー付けにより接合されている。
【0074】
詳しくは、図6に要部を模式的に示す様に、絶縁バルブ101の凸状部112の先端には、前記実施例1に示した様に、低温でのメタライズにより、メタライズ層171が形成され、このメタライズ層171上にNiメッキによりメッキ層173が形成され、このメッキ層173とアークシールド161とがロー材162によるロー付けによって接合されているのである。
【0075】
これにより、アークシールド161を備えた絶縁バルブ101(従って高負荷開閉器100)を、低コストで製造でき、また、高い寸法精度及び高い接合強度を実現することができる。
(実施例4)
次に、実施例4について説明するが、前記実施例3と同様な箇所の説明は省略する。
【0076】
本実施例は、前記実施例3の様に、接合用セラミック部材と金属部材からなる接合体を真空スイッチに用いた例であるが、アークシールドと絶縁バルブの構造が異なる。
図7に要部を模式的に示す様に、本実施例の真空スイッチ(高負荷開閉器)200は、上絶縁バルブ201と下絶縁バルブ203との間に、無酸素銅からなる金属製の接続部材205がロー付けされ、その接続部材205の先端側に、アークシールド207がロー付け接合されている。
【0077】
特に、前記上絶縁バルブ201及び下絶縁バルブ203と接続部材205とが固定される部分(固定部209)には、前記実施例1と同様な方法で、それぞれメタライズ層211、213が形成され、各メタライズ層211、213上にはそれぞれNiメッキによりメッキ層215、217が形成されている。
【0078】
そして、このメッキ層215、217と接続部材205とが、それぞれロー材219、221により接合されることにより、両絶縁バルブ201、203と接続部材205とが接合一体化されている。
【0079】
尚、両絶縁バルブ201、203の外周面には 前記実施例3と同様の釉薬層223、225がそれぞれ形成されている。
本実施例によっても、前記実施例3と同様な効果を奏する。
【0080】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施例1の接合体の要部を破断して示す説明図である。
【図2】実施例1の接合体を示す斜視図である。
【図3】実施例1の接合体の接合強度の測定方法を示す説明図である。
【図4】実施例2の接合体の要部を破断して示す説明図である。
【図5】実施例3の真空スイッチを破断して示す説明図である。
【図6】実施例3の真空スイッチの要部を破断して示す説明図である。
【図7】実施例4の真空スイッチの要部を破断して示す説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1…接合用セラミック部材
3…金属部材
5、35、162,219,221…ロー材
7、37…接合体
9…セラミック基材
11…メタライズ層
13…メッキ層
31…第1の接合用セラミック部材
33…第2の接合用セラミック部材
39…第1のセラミック基材
41…第1のメタライズ層
45…第2のセラミック基材
47…第2のメタライズ層
161、207…アークシールド
101…絶縁バルブ
100、200…真空スイッチ(高負荷開閉器)
171、211、213…メタライズ層
201…上絶縁バルブ
203…下絶縁バルブ
205…接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
W及び/又はMoの高融点金属粉末と、Ni粉末とを含有する混合物を、有機バインダと混合してペーストとしてメタライズインクを製造し、該メタライズインクをセラミック焼成体であるセラミック基材に塗布して焼き付けてメタライズ層を形成することを特徴とする接合用セラミック部材の製造方法。
【請求項2】
前記混合物として、前記W及び/又はMoの高融点金属粉末を70〜97重量%と、前記Ni粉末を1〜10重量%とを含有する混合物を用いることを特徴とする接合用セラミック部材の製造方法。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のメタライズインクに、更に、Mn粉末;5〜10重量%、Ti及び/又はTiH2粉末;0.5〜2重量%、SiO2粉末;2〜15重量%のうち、少なくとも一種を含むことを特徴とする接合用セラミック部材の製造方法。
【請求項4】
セラミック焼成体であるセラミック基材に、W及び/又はMoの高融点金属とNi粉末とを含有するメタライズ層を備えたことを特徴とする接合用セラミック部材。
【請求項5】
前記メタライズ層は、W及び/又はMoの高融点金属を70〜85重量%と、Niを0.5〜8.5重量%とを含むことを特徴とする前記請求項4に記載の接合用セラミック部材。
【請求項6】
前記請求項5に記載のメタライズ層に、更に、Mn;1〜3重量%、Ti;0.05〜2.5重量%、酸化物換算したSiO2;8〜20重量%のうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする接合用セラミック部材。
【請求項7】
前記請求項4〜6のいずれかに記載の接合用セラミック部材に、前記メタライズ層を介して金属部材を接合したことを特徴とする接合体。
【請求項8】
前記請求項4〜6のいずれかに記載の接合用セラミック部材に、前記メタライズ層を介して他の接合用セラミック部材を接合したことを特徴とする接合体。
【請求項9】
前記請求項7又は8の接合体を備えたことを特徴とする真空スイッチ。
【請求項10】
前記請求項7又は8の接合体を備えたことを特徴とする真空容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−150285(P2008−150285A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334644(P2007−334644)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【分割の表示】特願2000−17213(P2000−17213)の分割
【原出願日】平成12年1月26日(2000.1.26)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】