説明

接合膜付き基板及び接合膜付き基板の製造方法

【課題】主成分が二酸化ケイ素(SiO)ではない、或いはSi基を骨格としない基板であっても、それら基板同士を接合する、あるいはその基板と主成分が二酸化ケイ素(SiO)である、或いはSi基を骨格とする基板とを接合する場合に、確実に接合ができる接合膜付き基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
接合膜付き基板は、主成分が二酸化ケイ素ではない、或いはSi基を骨格としないIR吸収ガラス部材2と、IR吸収ガラス部材2の表面に隣接して気相成膜法により設けられた酸化ケイ素膜6と、酸化ケイ素膜6にプラズマ重合法により設けられた接合膜7と、を有し、酸化ケイ素膜6の膜厚は、100nm以上2000nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合膜付き基板及び接合膜付き基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラ等の光学装置に光学ローパスフィルターが利用されている(特許文献1)。この光学ローパスフィルターには、水晶複屈折板、IR(赤外線)吸収ガラス、水晶からなる位相差板(具体的には1/4波長板であり、偏光解消板とも言う)及び水晶複屈折板が積層される構造のものがある。これらの光学部品のうち外側に位置される水晶複屈折板の表面には反射防止膜やUV(紫外線)−IRカットコートが形成されている。
IR吸収ガラスとして、リン酸塩ガラスの母材にCuOを含有して赤外線吸収機能を持たせた基板に赤外線吸収膜を設けた赤外線遮断フィルター(特許文献2)や、石英ガラス等の基板に赤外線吸収膜を設けた赤外線遮断フィルター(特許文献3,4)が知られている。
特許文献2の赤外線遮断フィルターでは、赤外線吸収膜として基板側から順に酸化チタン(TiO)の薄膜と、二酸化ケイ素(SiO)の薄膜とが交互に繰り返し積層されている。特許文献3,4の赤外線遮断フィルターでは、基板に接したTiOやITOの薄膜と酸化ケイ素の薄膜とが交互に積層されている。
【0003】
従来、水晶複屈折板やIR吸収ガラス等、光学ローパスフィルターを構成する光学部材は接着剤で互いに接着されているものが多い。
しかし、反射防止膜やUV−IRカットコートが形成されている水晶複屈折板では圧縮応力や引張り応力に起因した反りが生じるので、水晶複屈折板とIR吸収ガラス又は位相差板とを接着剤で接合すると反りによって接合面内の接着層厚が各部位毎に不均一になり、大きな波面収差が発生してしまう。
そして、光学ローパスフィルターを組立てる工程において、リフローで接着剤が熱によって変質しやすいので、変色や接着不良を生じる。さらに、接着剤を使用すると、高湿環境で光学部材の接着層の外周から枝垂れ模様の欠陥が起こりやすい。
そこで、従来、接合手段として接着剤を用いず、2つの基板を、直接接合により接合する方法が提案されている(特許文献5)。
更に、特許文献6には、2枚以上の複数の基板を積層してなる光学素子において、一方の基板の表面(接合面)に酸化ケイ素膜(SiO膜)を設け、前記一方の基板の接合面と他方の基板の接合面とを原子間結合(Si−O−Si結合又はSi−Si結合)によって直接接合することが提案されている。また、特許文献6には、積層する前記複数枚の基板は、水晶板同士、ガラス板同士、又は水晶板とガラス板とでもよいことが記載されている。
ところが、直接接合の工程において、高温(700〜800℃)で基板に熱処理をしたり、基板の接合面を親水化処理をする過程でHF(フッ酸)等を使用せねばならないので、製造が容易ではないという問題があった。また、製造工程における熱処理時及び高温環境下において、基板の材質及び基板の結晶面での線膨張係数の違いにより剥離する問題もあった。更に、接合面の状態(均一性、クリーン度等)により安定した接合強度が得られないという問題もあった。
【0004】
そこで、接着剤を用いず、また直接接合を用いないで基板同士を接合する方法として、プラズマ重合法等により接合する方法が提案されている(特許文献7、8)。
特許文献7,8の従来例では、基板の一方または両方の接合面にプラズマ重合法により接合膜を形成し、この接合膜を挟んで複数の基板を接合する。
ここで、特許文献7,8に開示される接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含み、結晶化度が45%以下であるSi骨格と、該Si骨格に結合する有機基からなる脱離基とを含む。これにより優れた接着性を発現する積層体が得られる。
特許文献9では、特許文献7,8で開示される接合膜を用いてガラス基板と偏光フィルムとを接合した偏光板が開示されている。
特許文献10では、特許文献7,8で開示される接合膜を用いて2枚の水晶基板同士を接合した積層波長板が開示されている。
特許文献11には、特許文献7,8で開示される接合膜を用いて第1の透光性基板、偏光分離膜、水晶からなる1/2波長板、第2の透光性基板を順に積層した偏光変換素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−248198号公報
【特許文献2】特開2008−70827号公報
【特許文献3】特開2008−70828号公報
【特許文献4】特開2008−70825号公報
【特許文献5】特開平07−30354号公報
【特許文献6】特開2007−41117号公報
【特許文献7】特許第4337935号公報
【特許文献8】特開2009−173949号公報
【特許文献9】特開2009−98465号公報
【特許文献10】特開2009−258404号公報
【特許文献11】特開2009−192868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガラスには、まず、原料として二酸化ケイ素(SiO)を主成分とし、副成分となる種々の金属化合物を粉末として混合してなるものがある。このようなガラスは、高温で溶融して液体状態としたものを急冷することで製造される。主な副成分には、酸化ナトリウム(NaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ホウ素(B)、酸化リン(P)などがある。
一方、主成分が二酸化ケイ素(SiO)ではないが、前記ガラスと同等の構造、すなわちガラス化する物質も存在する。例えば、主成分として、ホウ酸(B)、リン酸(P)などが二酸化ケイ素の代わりに骨格となってガラスを形成する。特許文献2で開示されるように、リン酸塩ガラス又は弗リン酸塩ガラスを母材とし、銅を含有してなる銅含有ガラス基板がその一例である。
しかしながら、特許文献2,特許文献3及び特許文献4で開示される従来例では、赤外線遮断フィルター素子と、水晶複屈折板又は偏光解消板(1/4波長板)等の基板との接合方法について何ら開示されていない。そこで、特許文献2で開示された主成分が二酸化ケイ素ではない、他の物質から構成されるガラス基板と他の基板とを接合するにあたり、特許文献7,8で提案されている前述の如き接合膜を用いて接合することが考えられる。
ここで、特許文献7,8では、接合対象となる基板の種類が多岐に亘って紹介されている。しかし、材料の種類に応じた課題や有効性等についての詳細な検討まではされていない。そこで、本願発明者らが研究した結果、酸化ケイ素系ガラス(石英ガラス)、酸化ケイ素系のアルカリガラス等の例示に対しては高精度に接合することが再現され有効的であった。しかし、例示されていないリン酸系ガラス部材(IR吸収ガラス部材)については以下の如き課題があることが判明した。
すなわち、特許文献1で開示されるリン酸塩ガラスの母材にCuOを含有したIR吸収ガラス部材と、石英ガラス又は水晶等の二酸化ケイ素(SiO)を主成分とした透光性基板との接合において、特許文献7,8で提案されているプラズマ重合法で形成された接合膜を用いて接合を試みたところ、十分な接合強度が得られないことが分った。
【0007】
これは、前述の如きIR吸収ガラス部材はリン酸系ガラス部材であるためSi基を骨格としない。そのため、Si−O−Siのシロキサン結合ができないためと推測される。
更に、特許文献1の赤外線遮断フィルターに用いられるガラス基板は、赤外線の吸収のために、CuO等の不純物がドーピングされているので、石英ガラス等の酸化ケイ素系のガラスと比較して化学的な耐久性が悪い。そのため、高湿環境によって、ガラス基板中の銅イオン等が大気中の水と化学反応を起こし、表面に結晶物となって微小異物を発生させるという問題がある。このような微少異物はプラズマ重合法による接合膜を用いた接合をさらに阻害する要因となることが判明した。
そして、接合した状態から異物の析出が起こると、さらに、接合界面での剥れが起こりやすくなり、また、部位によって接合面が浮き上がることで空隙が発生し、接合膜の密着性が悪くなるという問題があった。
【0008】
一方で本願発明者らの研究等により得られた見識では、線膨張係数の異なる水晶と、前述の如きSi基を有しない、或いは二酸化ケイ素(SiO)が主成分ではないガラス等の透光性基板とを接合してなる光学素子では、これをプロジェクターやデジタルスチルカメラ、光ピックアップ装置などの製品に組み込んで使用すると、次のような問題があった。すなわち、水晶と前記透光性基板とでは、線膨張係数が異なるので、製品の使用温度(動作温度範囲)によって、熱膨張係数の違いに起因して伸縮量が相違して、熱歪みが生じる。そして、水晶と前記透光性基板とを接合する接合膜が前記透光性基板とシロキサン(Si−O−Si)結合を形成できないことにより接合信頼性を確保できない。そのため、温度変化により生じる熱歪みに耐えられず、接合界面からの剥離などが発生し、十分な接合強度が得られないという問題があった。従って、水晶と前記透光性基板とが接合界面で剥がれるなどして、光学素子として十分な光学特性と十分な信頼性とを確保することができないという問題があった。
すなわち、異種材料の基板同士を接合する際、基板の主成分が二酸化ケイ素(SiO)ではない或いは基板がSi基を骨格としない場合、十分な接合強度を得ることが困難であるという問題が判明した。
さらに、プラズマ重合法により設けられた接合膜を用いた接合方法では、基板同士の接合強度を高めるために、接合する膜面の平坦度(反りが小さい)、または重合膜の柔軟性を確保する製造方法が求められる。
【0009】
本発明の目的は、主成分が二酸化ケイ素(SiO)ではない、或いはSi基を骨格としない基板であっても、それら基板同士を接合する、あるいはその基板と主成分が二酸化ケイ素(SiO)である、或いはSi基を骨格とする基板とを接合する場合に、確実に接合ができる接合膜付き基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[適用例1]
本適用例にかかる接合膜付き基板は、主成分が二酸化ケイ素ではない、或いはSi基を骨格としない基板と、当該基板の表面上に隣接して気相成膜法により設けられた酸化ケイ素膜と、プラズマ重合法により設けられた接合膜と、を有し、前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含み、結晶化度が45%以下であるSi骨格と、当該Si骨格に結合する脱離基と、を含み、前記脱離基は、有機基で構成され、前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したとき、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより、前記接合膜の表面の前記領域に、前記基板と被着体との接着性が発現するものであり、前記酸化ケイ素膜の膜厚は、100nm以上2000nm以下であることを特徴とする。
【0011】
この構成の本適用例では、接合膜付き基板に被着体を接合した場合、接合膜付き基板がプラズマ重合法により設けられた接合膜を有するので、接合膜付き基板と被着体との接合がSi−O−Siのシロキサン結合によって互いに強固なものとなる。
また、プラズマ重合法により設けられた接合膜は、流動性がないために、接着剤を用いることの不具合、例えば、部位によって接合厚さが不均一となって波面収差が生じる、等の精度不良を回避することができる。また、接合膜は弾性力を有するので、接合する両部材の線膨張係数が相違しても、対応することができる。また、プラズマ重合法により設けられた接合膜は、耐熱性及び耐高湿環境性を有するので、接合膜付き基板は高温多湿下においても良好に用いられる。
その上、主成分が二酸化ケイ素(SiO)ではない、或いはケイ素(Si)基を骨格としない基板に気相成膜法により酸化ケイ素膜が設けられているので、基板の表面から、例えば、銅イオン、その他の不純物からなる異物が析出することが酸化ケイ素膜でブロックされることになる。そのため、析出異物により接合膜の接合が阻害されることなく、接合部分が剥がれることがなく、高品位で安定的な接合を得ることができる。そして、特に酸化ケイ素分子はアモルファスで充填率が高い膜を得ることができるので、基板の中に微細な酸化ケイ素の分子が入り込み、分子間の距離が小さくなって大きなファンデルワールス力が得られるので、基板と酸化ケイ素膜とは密着性が良好となる。これに対して、特許文献2では、リン酸塩ガラスの母材にCuOを含有した基板に接して酸化チタンの薄膜が形成されている。しかし、この酸化チタン自体が十分なアモルファス構造となっていないので、CuO等の異物が析出し、接合する膜が剥がれる虞がある。また、特許文献2の酸化チタン膜(IRカット部材)は、酸化ケイ素膜と比較して、IR吸収ガラス部材とのファンデルワールス力が小さい。そのため、IR吸収ガラス部材と酸化チタン膜との密着強度が弱い。
しかも、本適用例では、酸化ケイ素膜を形成することによって、接合膜と同様な安定したシロキサン結合ができるため安定した密着性が得られる。なお、基板に酸化ケイ素膜を成膜することで、平板状とした場合に凸状に反ることもある。しかし、弾性力のある接合膜によって、基板に被着体を接合した場合でも、両部材が剥れることがない。また、基板が引っ張られながらも被着体も同時に反るので、酸化ケイ素膜による反りに依存した波面収差が殆ど発生しない。
【0012】
そして、本適用例では、酸化ケイ素膜の膜厚は100nm以上2000nm以下とした。酸化ケイ素膜の膜厚は100nm未満であると、酸化ケイ素膜で銅イオン等の異物が基板の表面からの析出することを抑えることができない。一方、膜厚が2000nmを超えると、基板の反りが大きくなる。また、酸化ケイ素膜を例えば蒸着又はスパッタで成膜した場合、スプラッシュ等の異物が付着するため、表面に突起が発生してしまい、面精度が悪くなり、接合強度が十分ではなくなる。従って、酸化ケイ素膜の膜厚を100nm以上2000nm以下とすることにより、基板と被着体とを強固に接合することができる。
また、接合膜により基板と被着体とを貼り合わせた後、温度変化に伴って基板と被着体とが線膨張係数の相違によって伸縮量が相違してしまう場合でも、接合膜がプラズマ重合法により設けられているので伸縮量の相違による熱歪みを吸収できる。
しかも、接合膜と酸化ケイ素膜とが隣接している場合、同じSi骨格とO骨格とを有するので、非常に強い共有結合を形成できる。従って、熱歪みによって、接合強度が低下することを防止できる。
よって、温度変化があっても、熱歪みを吸収でき、強い接合強度を維持できるので、基板と被着体とが剥がれることを防止でき、良好な光学特性を発揮できる。
以上より、本発明の接合膜付き基板は、被着体の主成分が二酸化ケイ素ではない、或いはSi基を骨格としない場合でも、被着体の主成分が二酸化ケイ素である、或いはSi基を骨格とする場合でも、確実に被着体と接合できる。
なお、本発明の接合膜は、酸化ケイ素膜に連続、又は、不連続に設けられていてもよい。
すなわち、本発明では、基板、酸化ケイ素膜、接合膜がこの順に連続して設けられた構成でもよく、基板、酸化ケイ素膜、光学機能膜、接合膜がこの順に連続して設けられた構成でもよい。この場合、光学機能膜としては、UVカットフィルター膜、IRカットフィルター膜、UV−IRカットフィルター膜、偏光分離膜などが挙げられる。
【0013】
[適用例2]
本適用例にかかる接合膜付き基板は、前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率との合計が、10原子%以上90原子%以下であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、接合膜のSi原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体が強固なものとなる。また、この接合膜は、基板と被着体とに対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
【0014】
[適用例3]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記接合膜中のSi原子とO原子との存在比は、3:7から7:3までであることを特徴とする。
この構成の本適用例では、接合膜の安定性が高くなり、基板と被着体とをより強固に接合できる。
【0015】
[適用例4]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記脱離基は、アルキル基であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、アルキル基は化学的な安定性が高いために、脱離基としてアルキル基を含む接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0016】
[適用例5]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離した後に、未結合手または水酸基からなる活性手を有することを特徴とする。
この構成の本適用例では、接合膜付き基板は、被着体に対して、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
【0017】
[適用例6]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記接合膜は、主材料がポリオルガノシロキサンであり、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものであることを特徴とする。
この構成の本適用例では、オクタメチルトリシロキサンが比較的に柔軟性に富んでいるので、基板と被着体との線膨張係数が異なっていても、両部材の熱膨張に伴う応力を緩和することができる。しかも、ポリオルガノシロキサンは、耐薬品性に優れているため、接合膜付き基板は、薬品等に長期に曝される環境下で効果的に用いることができる。
【0018】
[適用例7]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記基板は、リン酸系ガラス部材であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、酸化ケイ素膜によりリン酸系ガラス部材の表面から銅イオン、その他の不純物からなる異物が析出することを防止することができる。そのため、プラズマ重合法により設けられた接合膜の接合強度を安定させることができる。
【0019】
[適用例8]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記接合膜は、赤外光吸収スペクトルにおけるシロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、メチル基に帰属するピーク強度比が、0.05以上かつ0.15以下であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、メチル基に帰属するピーク強度比が、0.05以上であるので、接合膜の柔軟性を保つことができる。よって、線膨張係数の差によって、基板と被着体とが剥れることを防止できる。
【0020】
[適用例9]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記接合膜は、赤外光吸収スペクトルにおけるシロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−CH結合に帰属するピーク強度比が、0.29以上かつ0.76以下であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、Si−CH結合に帰属するピーク強度比が、0.29以上であるため、接合膜の柔軟性を保つことができる。よって、線膨張係数の差によって、基板と被着体とが剥れることを防止できる。
【0021】
[適用例10]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記接合膜は、プラズマで活性化されたことを特徴とする。
この構成の本適用例では、プラズマにより接合膜を活性化することによって、接合膜の表面またはその近傍のみを活性化できるので、接合膜の内部のメチル基の含有率の変化、すなわち、メチル基の脱離を少なくすることができる。従って、柔軟性を保持した状態で基板と被着体とを接合できる。
一方、例えば、UVによる活性化では、接合膜の内部にもエネルギーを付与するため、内部のメチル基が減少してしまい接合膜が硬質なものとなってしまう。更に、内部のメチル基量のコントロールが困難である。
【0022】
[適用例11]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記基板は、光学ローパスフィルターに用いられることを特徴とする。
この構成の本適用例では、被着体を位相差板とした場合、接合膜と酸化ケイ素膜とで基板と位相差板とを強力に接合できる。従って、熱歪みが生じても、基板と位相差板とが剥がれないので、光学ローパスフィルターに好適に利用できる。
【0023】
[適用例12]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記基板は、偏光分離素子に用いられることを特徴とする。
この構成の本適用例では、被着体を位相差板とした場合、接合膜と酸化ケイ素膜とで、位相差板と基板とを強力に接合できる。従って、熱歪みが生じても、基板と位相差板とが剥がれないので、偏光分離素子に好適に利用できる。
【0024】
[適用例13]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記基板の前記接合膜と対向する部分に偏光分離膜が設けられ、この偏光分離膜は、前記酸化ケイ素膜とフッ化マグネシウムの薄膜を含む複数層から構成され、かつ、前記接合膜に前記酸化ケイ素膜が隣接していることを特徴とする。
この構成の本適用例では、接合膜に酸化ケイ素膜が隣接しているので、接合膜と偏光分離膜とは強力な共有結合を形成できる。従って、基板と偏光分離膜とが剥がれることを防止できる。
【0025】
[適用例14]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記基板は、開口フィルターに用いられることを特徴とする。
この構成の本適用例では、被着体を開口フィルター用波長板とした場合、接合膜と酸化ケイ素膜とで、基板と開口フィルター用波長板とを強力に接合できる。従って、熱歪みが生じても、基板と開口フィルター用波長板とが剥がれないので、開口フィルターに好適に利用できる。
【0026】
[適用例15]
本適用例にかかる接合膜付き基板では、前記基板は、回折格子付き波長板に用いられることを特徴とする。
この構成の本適用例では、被着体として位相差板を採用した場合、接合膜と酸化ケイ素膜とで、基板と位相差板とを強力に接合できる。従って、熱歪みが生じても、基板と位相差板とが剥がれないので、回折格子付き波長板に好適に利用できる。
【0027】
[適用例16]
本適用例にかかる接合膜付き基板の製造方法は、前記基板に前記酸化ケイ素膜を150℃以上350℃以下でスパッタ又は蒸着により形成し、さらに、前記接合膜をプラズマ重合法により40℃以上150℃以下で形成することを特徴とする。
この構成の本適用例では、基板に酸化ケイ素膜を150℃以上350℃以下でスパッタ又は蒸着により形成することによって、基板に形成される酸化ケイ素膜を硬化かつ緻密なものとし、異物が基板の表面から析出することを十分に防止することができる。そして、接合膜を形成するために、40℃以上150℃以下としたので、メチル基の含有率が最適な範囲となり、接合膜を柔軟なものにすることができる。そのため、基板に被着体を接合する場合、両基板の線膨張係数が相違しても、十分に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる接合膜付き基板を備える光学素子を示す概略構成図。
【図2】(A)光学素子の基板に付着した異物の上に酸化ケイ素膜を設けた状態の断面図。(B)光学素子の基板に付着した異物の上に酸化ケイ素膜を設けた状態の平面図。
【図3】光学素子の要部を示す分解断面図。
【図4】本実施形態で使用するプラズマ重合装置の概略図。
【図5】(A)接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図。(B)接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図。
【図6】光学素子の製造方法を説明する図。
【図7】光学素子の製造方法を説明する図。
【図8】光学素子の変形例を示す概略構成図。
【図9】酸化ケイ素膜の膜厚と反りと接合強度との関係を示すグラフ。
【図10】接合膜の成膜温度とメチル(CH)基のピーク強度比との関係を示すグラフ。
【図11】接合膜の成膜温度とSi−CH結合のピーク強度比との関係を示すグラフ。
【図12】(A)本発明の第二実施形態にかかる接合膜付き基板を備える光学素子を示す概略構成図。(B)光学素子の要部を示す拡大断面図。
【図13】接合膜の成形手順を示す概略図。
【図14】接合膜の活性化工程を説明する概略図。
【図15】貼合工程を説明する概略図。
【図16】切断工程を説明する概略図。
【図17】組立工程を説明する概略図。
【図18】(A)本発明の第三実施形態にかかる接合膜付き基板を備える光学素子を示す概略平面図。(B)光学素子を示す概略構成図。
【図19】本発明の第四実施形態にかかる接合膜付き基板を備える光学素子を示す概略構成図。
【図20】本発明にかかる接合膜付き基板の変形例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は第一実施形態にかかる接合膜付き基板を備える光学素子の概略構成が示されている。
図1において、光学素子は、水晶複屈折板1、IR吸収ガラス部材2、位相差板3及び水晶複屈折板4が積層された光学ローパスフィルター10である。
水晶複屈折板1は、水晶から形成された平面矩形状の平板部材であり、その表面には反射防止膜が形成されている。反射防止膜は酸化ケイ素等からなる低屈折層と酸化チタン等からなる高屈折層とを交互に5層配置した構成である。
IR吸収ガラス部材2は赤外線をカットするものであり、Pを主成分としたリン酸系ガラス部材から形成された平面矩形状の平板部材である。IR吸収ガラス部材2は、主成分が二酸化ケイ素(SiO)ではない、即ちSi基を有しない基板である。リン酸系ガラス部材には銅イオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン等の多数の不純物が含有されている。
位相差板3は、IR吸収ガラス部材2の被着体であり、水晶から形成された平面矩形状の平板部材である。
水晶複屈折板4は、水晶から形成された平面矩形状の平板部材であり、その表面にはUV−IRカットコートが形成されている。このUV−IRカットコートは低屈折層と高屈折層とを交互に、例えば39層配置した構成である。
【0030】
IR吸収ガラス部材2と位相差板3とは接合部5を介して互いに接合されている。なお、IR吸収ガラス部材2と接合部5とは、本発明の接合膜付き基板に該当する。
接合部5は、IR吸収ガラス部材2の表面に隣接して気相成膜法により形成された酸化ケイ素膜6と、この酸化ケイ素膜6と位相差板3とを分子接合するプラズマ重合法により設けられた接合膜7とを備える。この接合膜7は、後述する通り、その主材料がポリオルガノシロキサンであることが好ましい。このポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合をもつ高分子化合物の総称であり、このうち、オクタメチルトリシロキサンの重合物が主成分であることが好ましい。
酸化ケイ素膜6は接合膜7と隣接して互いに同様な安定したシロキサン結合ができるため安定した密着力が得られる。シロキサン結合のパターンはSi−O−Si、Si−Si、Si−OH−Siである。
【0031】
接合部5と同様構成の接合部(図示せず)を介して水晶複屈折板1とIR吸収ガラス部材2とが互いに接合されている。位相差板3と水晶複屈折板4とはプラズマ重合法により設けられた接合膜(図示せず)で互いに接合されている。
本実施形態では、水晶複屈折板1と位相差板3とは、ともにIR吸収ガラス部材2との接合対象となる光学部材である。
【0032】
接合膜7は、その平均厚さが10nm以上1000nm以下であり、50nm以上500nm以下が好ましい。接合膜7の平均厚さが10nmを下回ると、接合膜7の弾性的圧縮量が少くなり、位相差板3の面粗さや平坦性によって密着しない部位が発生し、十分な接合強度を得ることができないおそれがある。一方、1000nmを超えると、接合膜7の内部での凝集破壊が発生しやすくなり接合強度が低下する。接合膜7の表面粗さRaは10nm以下である。
また、接合膜7を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率との合計が、10原子%以上90原子%以下であることが好ましい。さらに、接合膜7中のSi原子とO原子との存在比は、3:7から7:3までであることが好ましい。
【0033】
酸化ケイ素膜6は、その膜厚が100nm以上2000nm以下である。酸化ケイ素膜6の膜厚が100nm未満の場合、酸化ケイ素膜6で銅イオン等の異物がIR吸収ガラス部材2の表面から析出することを抑えることができない。一方、膜厚が2000nmを超えると、IR吸収ガラス部材2の反りが大きくなる。また、酸化ケイ素膜6を例えば蒸着又はスパッタで成膜した場合、蒸着時の突沸における異物の付着が起こる可能性が高くなる。そして、この異物の上に酸化ケイ素膜6を積層すると、酸化ケイ素膜6の表面に突起が発生していまい、面精度が悪くなる。例えば、図2(A)、(B)に示すように、IR吸収ガラス部材2の異物9の上に、酸化ケイ素膜6を設け、その酸化ケイ素膜6の上にさらに多層の光学機能膜6Aを形成した場合では、さらに突起6Bが大きくなる。
従って、IR吸収ガラス部材の異物の上に、2000nmを超える酸化ケイ素膜を設けた場合では、突起により、接合強度が十分ではなくなる。
酸化ケイ素膜6は後述するようにIR吸収ガラス部材2の表面に蒸着、スパッタ、CVDなどの気相成膜法で成膜される。
【0034】
図3は光学素子の要部を示す分解断面図である。
図3において、接合膜7は、成膜時は、位相差板3に形成された薄膜部71と、酸化ケイ素膜6に形成された薄膜部72とに分けられる。
この薄膜部71,72は図4で示されるプラズマ重合装置で成形される。
図4は、本実施形態で使用するプラズマ重合装置の概略図である。
図4において、プラズマ重合装置100は、チャンバー101と、このチャンバー101の内部にそれぞれ設けられる第一電極111及び第二電極112と、これらの第一電極111と第二電極112との間に高周波電圧を印加する電源回路120と、チャンバー101の内部にガスを供給するガス供給部140と、チャンバー101の内部のガスを排出する排気ポンプ150を備えた構造である。
第一電極111は、成膜対象である位相差板3と酸化ケイ素膜6が形成されたIR吸収ガラス部材2とを支持する。
【0035】
電源回路120は、マッチングボックス121と高周波電源122とを備える。
ガス供給部140は、液状の膜材料を貯蔵する貯液部141と、液状の膜材料を気化して原料ガスに変化させる気化装置142と、キャリアガスを貯留するガスボンベ143とを備えている。このガスボンベ143に貯留されるキャリアガスは、電界の作用によって放電し、この放電を維持するためにチャンバー101に導入するガス、例えば、アルゴンガスやヘリウムガスである。
これらの貯液部141、気化装置142及びガスボンベ143とチャンバー101とが配管102で接続されており、ガス状の膜材料とキャリアガスとの混合ガスをチャンバー101の内部に供給する。
貯液部141に貯留される膜材料は、プラズマ重合装置100によって位相差板3と酸化ケイ素膜6が形成されたIR吸収ガラス部材2とに、接合膜7の薄膜部71,72を形成するための原材料であり、気化装置142で気化されて原料ガスとなる。
【0036】
この原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサン等のオルガノシロキサン、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、トリメチル亜鉛、トリエチル亜鉛のような有機金属系化合物、各種炭化水素系化合物、各種フッ素系化合物等が挙げられるが、特に、オクタメチルトリシロキサンが好ましい。
このような原料ガスを用いて得られる接合膜7の薄膜部71,72は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、つまり、オクタメチルトリシロキサン等で構成されることになる。
【0037】
ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性を示す。しかし、各種の活性化処理を施すことによって容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化することができる。
撥水性を示すポリオルガノシロキサンで構成された薄膜部71,72は、それ同士を接触させても、有機基によって接着が阻害されることになり、極めて接着し難い。一方、親水性を示すポリオルガノシロキサンで構成された薄膜部71,72は、それ同士を接触させると、特に容易に接着することができる。つまり、撥水性と親水性の制御を容易に行えるという利点は、接着性の制御を容易に行えるという利点につながるため、ポリオルガノシロキサンで構成された薄膜部71,72は、本実施形態では好適に用いられることになる。そして、ポリオルガノシロキサンは比較的柔軟性に富んでいるので、位相差板3と酸化ケイ素膜6が形成されたIR吸収ガラス部材2との線膨張係数が異なっても、両者に生じる熱膨張に伴う応力を緩和することができる。さらに、ポリオルガノシロキサンは耐薬品性に優れているため、薬品類等に長期にわたって曝されるような部材の接合に効果的に用いることができる。
ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜7は接着性に優れていることから、本実施形態の接合方法で好適に用いられる。オクタメチルトリシロキサンの重合物は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取扱が容易である。
【0038】
この接合膜7は、シロキサン結合を含み、結晶化度が45%以下であるSi骨格とこのSi骨格に結合する有機基からなる脱離基とを含む。ここで、脱離基は、有機基で構成され、メチル(CH)基などのアルキル基であることが好ましい。そして、接合膜7は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したとき、接合膜7の表面付近に存在する脱離基がSi骨格から脱離することにより、接合膜7の表面の前記領域に、IR吸収ガラス基板2と位相差板3との接着性が発現するものである。
【0039】
図3において、接合膜7は、成膜時では、位相差板3に形成された薄膜部71と、酸化ケイ素膜6に形成された薄膜部72とに分けられる。ここで、薄膜部71の構造について説明する。なお、薄膜部72も同様である。
薄膜部71は、図5(A)に示される通り、シロキサン(Si−O)結合7Bを含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格7Aと、このSi骨格7Aに結合する脱離基7Cとを有するものである。このような薄膜部71は、シロキサン結合7Bを含みランダムな原子構造を有するSi骨格7Aの影響によって、変形し難い強固な膜となる。これは、Si骨格7Aの結晶性が低くなるので、結晶粒界における転位やズレ等の欠陥が生じ難いためであると考えられる。このため、薄膜部71自体が接合強度、耐薬品性および寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる接合膜7においても、接合強度、耐薬品性および寸法精度が高いものが得られる。
【0040】
このような薄膜部71は、エネルギーが付与されると、脱離基7CがSi骨格7Aから脱離し、図5(B)に示される通り、薄膜部71の表面又は表面近傍のみに未結合手の活性手7Dが生じるものである。なお、活性手としては、水酸基でも良い。そして、これにより、薄膜部71の表面に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、薄膜部71が形成された位相差板3は、薄膜部72が形成されたに酸化ケイ素膜6に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
【0041】
また、このような薄膜部71は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、従来、流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、薄膜部71の厚さや形状がほとんど変化しない。これにより、接合膜7の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
なお、薄膜部71中のSi骨格7Aの結晶化度は、45%以下であり、40%以下であるのがより好ましいので、Si骨格7Aは十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格7Aの特性が顕在化し、薄膜部71の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
また、薄膜部71は、Si骨格7AとO骨格の活性手7Dとを有するので、同一骨格を有する酸化ケイ素膜6とは共有結合を形成して、強力な接合強度を発揮する。
【0042】
次に、第一実施形態の接合膜付き基板を備える光学素子の製造方法について説明する。
[酸化ケイ素膜の成膜工程]
まず、IR吸収ガラス部材2に酸化ケイ素膜6がスパッタ又は蒸着等の気相成膜法により成膜される。スパッタや蒸着のための装置は公知のものを用いる。必要に応じてイオンアシストで成膜してもよい。
そのため、図示しないチャンバーの中にIR吸収ガラス部材2が投入され、このチャンバー内の温度を150℃以上350℃以下にしてIR吸収ガラス部材2に酸化ケイ素膜6が成膜される。
【0043】
[接合膜の成膜工程]
位相差板3の一面とIR吸収ガラス部材2に形成された酸化ケイ素膜6とに接合膜7を構成する薄膜部71,72が分けて成膜される。成膜の温度は40℃以上150℃以下である。ここで、赤外線吸収スペクトル測定において、シロキサン結合(Si−O−Si)に帰属するピーク強度を1にしたとき、接合膜7のメチル(CH)基に帰属するピーク強度比は、0.05以上0.15以下であることが好ましく、又は、Si−CH結合に帰属するピーク強度比が、0.29以上0.76以下であることが好ましい。
以下、薄膜部71,72の成膜手順について説明する。
この重合膜形成工程では、プラズマ重合装置100のチャンバー101の第一電極111で、位相差板3と酸化ケイ素膜6が成膜されたIR吸収ガラス部材2とが保持され、チャンバー101の内部に酸素が導入されるとともに第一電極111と第二電極112との間に電源回路120から高周波電圧が印加されて位相差板3と酸化ケイ素膜6が成膜されたIR吸収ガラス部材2とが活性化される。
その後、ガス供給部140が作動してチャンバー101の内部に原料ガスとキャリアガスとの混合ガスが供給される。混合ガスはチャンバー101の内部に充填され、図6(A)に示される通り、位相差板3の一面とIR吸収ガラス部材2に形成された酸化ケイ素膜6とに混合ガスが露出される。
【0044】
成膜時のチャンバー101の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度である。原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度が好ましい。キャリアガス流量は、5〜750sccm程度が好ましい。処理時間は1〜10分程度であることが好ましい。
第一電極111と第二電極112との間に高周波電圧を印加することにより、これらの電極111,112の間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、図6(B)に示される通り、重合物が位相差板3の一面とIR吸収ガラス部材2に形成された酸化ケイ素膜6とに付着、堆積する。これにより、図6(C)に示される通り、位相差板3の一面とIR吸収ガラス部材2の上の酸化ケイ素膜6とに接合膜7の薄膜部71,72が形成される。
【0045】
[表面活性化工程]
その後、図6(D)に示される通り、薄膜部71,72が活性化されて表面が活性化される。表面活性化工程は、例えば、プラズマを照射する方法、その他の方法等を用いることができる。
この表面活性化工程では、薄膜部71,72の表面を効率よく活性化させるためにプラズマを照射する方法が好ましい。プラズマとしては、例えば、酸素、アルゴン、チッソ、空気、水等を1種又は2種以上混合して用いることができる。これらの中で、酸素を使用することが好ましい。
このようなプラズマを使用することで、薄膜部71,72の表面または表面近傍のみを活性化するため、接合膜内部のメチル(CH)基の脱離を防止することができ、柔軟性を保持した状態で接合することができる。また、広範囲のムラをなくし、より短時間で処理することができる。
このようにして活性化された薄膜部71,72の表面は、一部のメチル(CH)基が離脱し、Si−又はOH基が導入されたSi−OHとなる。
【0046】
[貼合工程]
薄膜部71,72の表面が活性化された位相差板3とIR吸収ガラス部材2に形成された酸化ケイ素膜6とが貼り合わされて一体化される(貼合工程)。
つまり、図7(A)(B)に示される通り、位相差板3とIR吸収ガラス部材2に形成された酸化ケイ素膜6とがそれぞれ接合膜7の薄膜部71,72が対向した状態で互いに押し付けられる。
表面が活性化された薄膜部71,72は、その活性状態が経時的に緩和するので、表面活性化工程の後速やかに貼合工程に移行する。
薄膜部71,72同士を貼り合わせることで、これらの膜同士が結合する。この結合は、次の<1>又は<2>、あるいは、<1>及び<2>のメカニズムに基づくものと推測される。
<1>2つの基板同士、本実施形態では、位相差板3とIR吸収ガラス部材2に形成された酸化ケイ素膜6とが貼り合わされると、各接合膜7の薄膜部71,72の表面にそれぞれ存在するOH基同士が隣接することになる。この隣接したOH基同士は、水素結合によって互いに引き合い、OH基同士の間に引力が発生する。
また、この水素結合によって互いに引き合うOH基同士は温度条件によって脱水縮合を伴って表面から離脱する。その結果、2つの薄膜部71,72同士の接触境界では、脱離したOH基が結合していた結合手同士が結合する。
【0047】
<2>IR吸収ガラス部材2と位相差板3とが貼り合わされると、薄膜部71,72の表面又は表面近傍に生じた終端化されていない結合手(未結合手)同士が再結合する。この再結合は、薄膜部71と薄膜部72との間で、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成される。これにより、薄膜部72が設けられた酸化ケイ素膜6と、薄膜部71が設けられた位相差板3とが直接接合して、各薄膜部71,72同士が一体化する。
【0048】
[加圧工程]
本実施形態では、図7(C)に示される通り、貼合工程の後に、必要に応じて、位相差板3とIR吸収ガラス部材2とを加圧する。加圧されることで2つの薄膜部71と薄膜部72とがより密に接触される。よって、分子間距離が更に短くなり、結合した分子の数が増加すると共に、一部のOH基同士の水素結合がSi−O−Siのシロキサン結合へと変化し、強固で安定した結合が得られる。これにより、図7(D)に示される通り、光学ローパスフィルターの一部が製造される。位相差板3とIR吸収ガラス部材2とが加圧された状態では、薄膜部71,72は一体となって接合膜7が構成される。
加圧工程での加圧圧力は、位相差板3とIR吸収ガラス部材2との厚さ寸法、装置等の条件によって異なるものの、1〜10MPa程度であるのが好ましい。
なお、加圧後に加熱を実施してもよい。
【0049】
以上の工程を、水晶複屈折板1と、位相差板3が接合されたIR吸収ガラス部材2とに対して実施する。つまり、IR吸収ガラス部材2に図示しない酸化ケイ素膜が成膜され、この酸化ケイ素膜と、水晶複屈折板1の一面とに図示しない接合膜を構成する薄膜部が成膜され、これらが接合される。
さらに、位相差板3と水晶複屈折板4とに図示しない接合膜を構成する薄膜部が成膜され、これらが接合される。
以上の工程を実施することで、光学ローパスフィルターが製造される。
なお、本発明の接合膜付き基板は、図8に示すような構成でも良い。図8は、光学素子の変形例を示す概略構成図である。すなわち、接合膜付き基板は、IR吸収ガラス部材2は、水晶複屈折板1側の外面に、赤外線をカットするための赤外線吸収膜8を有していてもよい。この赤外線吸収膜8は、誘電体膜を多層に形成したものであり、公知のものを適用できる。
【0050】
以上の構成の本実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)IR吸収ガラス部材2には酸化ケイ素膜6を形成し、この酸化ケイ素膜6と水晶の位相差板3とは接合膜7で分子接合した。そのため、酸化ケイ素膜6と位相差板3とがSi−O−Siのシロキサン結合によって互いに強固に接合されるため、接着剤が不要とされる。従って、接合厚さが均一となって波面収差が生じることを防止できる。しかも、接合膜7が弾性力を有するので、線膨張係数が相違するIR吸収ガラス部材2と位相差板3とを接合しても、温度変化等に起因して接合部分が剥がれにくくなる。その上、IR吸収ガラス部材2の表面から銅イオン、その他の不純物からなる異物が析出しようとしても、酸化ケイ素膜6でブロックされるので、接合膜7に異物が入り込むことがなく、接合部分が剥がれることがない。
【0051】
(2)接合膜7は、主材料がポリオルガノシロキサンであり、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする。この場合、オクタメチルトリシロキサンが比較的に柔軟性に富んでいるので、IR吸収ガラス部材2と位相差板3との線膨張係数の相違に伴う応力を緩和することができる他、ポリオルガノシロキサン自体が耐薬品性に優れているため、IR吸収ガラス部材2や位相差板3の耐薬品性を向上させることができる。
【0052】
(3)酸化ケイ素膜6の膜厚を100nm以上2000nm以下としたので、銅イオン等の異物の析出を抑えることができるとともに、接合強度を十分なものにすることができる。
【0053】
(4)IR吸収ガラス部材2に酸化ケイ素膜6をスパッタ又は蒸着の気相成膜法で成膜するにあたり、150℃以上350℃以下としたので、酸化ケイ素膜6を硬化かつ緻密なものにして異物がIR吸収ガラス部材2の表面から析出することを十分に防止することができる。そして、接合膜7の成膜にあたり、40℃以上150℃以下としたので、接合膜7の柔軟性を適正なものにできる。なお、成膜温度を40℃以上としたのは成膜装置が基材表面温度を安定して温度制御できる下限として設定したものであり、20℃前後の室温で成膜しても差し障りない。
【0054】
(5)接合膜7を2つの薄膜部71,72に分け、このうち薄膜部72をIR吸収ガラス部材2の酸化ケイ素膜6に成膜し、薄膜部71を位相差板3に成膜したので、加圧接合する部分が同質の膜であるから、より強固に接合することが可能となる。
【0055】
(6)接合膜7において、赤外線吸収スペクトル測定におけるシロキサン結合(Si−O−Si)に帰属するピーク強度を1にしたとき、メチル(CH)基に帰属するピーク強度比を0.05以上0.15以下とする。また、Si−CH結合に帰属するピーク強度比を0.29以上かつ0.76以下とする。この場合、メチル(CH)基に帰属するピーク強度比が0.05以上、又は、Si−CH結合に帰属するピーク強度比が0.29以上であるので接合膜7の柔軟性を保つことができる。なお、接合膜7の成膜温度が高いと、メチル(CH)基に帰属するピーク強度比及びSi−CH結合に帰属するピーク強度比が低下する関係にある。
【0056】
(7)線膨張係数が異なる位相差板3とIR吸収ガラス部材2とを接合膜7で分子接合した。そのため、温度変化により、位相差板3とIR吸収ガラス部材2とに、伸縮量の相違による熱歪みが生じても、接合膜7が熱歪みを吸収できる。
また、接合膜7と酸化ケイ素膜6とを隣接して接合した。そのため、接合膜7と酸化ケイ素膜6とは同じSi骨格とO骨格とを有するので、非常に強い共有結合を形成できる。従って、熱歪みが生じても、接合強度が低下することを防止できるので、位相差板3とIR吸収ガラス部材2とが剥がれることを防止できる。
【0057】
(8)接合膜7を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率との合計を、10原子%以上90原子%以下とすることにより、接合膜7のSi原子とO原子とが強固なネットワークを形成する。これにより、接合膜7自体が強固なものとなる。また、この接合膜7は、IR吸収ガラス部材2および位相差板3に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
(9)接合膜7中のSi原子とO原子との存在比を3:7から7:3までとすることにより、接合膜7の安定性が高くなる。これにより、IR吸収ガラス部材2と位相差板3とをより強固に接合できる。
(10)接合膜7において、脱離基をアルキル基とすることにより、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
(11)接合膜7において、その少なくとも表面付近に存在する脱離基7CがSi骨格から脱離した後に、未結合手または水酸基からなる活性手7Dを有するようにする。これにより、IR吸収ガラス部材2と位相差板3とが化学的結合に基づいて強固に接合する。
(12)リン酸ガラス部材のIR吸収ガラス部材2の表面に酸化ケイ素膜6を設けたので、表面から銅イオン、その他の不純物からなる異物が析出することを防止できる。そのため、接合膜7の接合強度を安定させることができる。
(13)プラズマにより接合膜7を活性化することによって、接合膜7の表面またはその近傍のみを活性化できるので、接合膜7の内部のメチル基の脱離を少なくすることができる。従って、柔軟性を保持した状態でIR吸収ガラス部材2と位相差板3とを接合できる。
【0058】
以上の第一実施形態の効果を実施例に基づいて確認する。
まず、酸化ケイ素膜6の膜厚と反りとの関係並びに酸化ケイ素膜6と接合強度との関係を説明する。
この実施例では、次の条件の下、酸化ケイ素膜6をIR吸収ガラス部材2にイオンアシストを用いて成膜した。
成膜条件
成膜温度:150℃
加速電圧:1000V
加速電流:1200mA
レート:7Å/sec
IR吸収ガラス部材2の条件
厚さ:0.30mm
大きさ:□40mm
【0059】
図9は酸化ケイ素膜の膜厚と反りと接合強度との関係を示すグラフである。なお、反りについては、高精度フラットネステスタ(型番FT―900:株式会社ニデック)で測定し、接合強度については、引っ張り強度試験機(型番AGS−H:株式会社島津製作所)で測定する。
図9において、酸化ケイ素膜の膜厚に正比例して反りが大きくなる。例えば、酸化ケイ素膜が500nmの場合には反りが36.7μであり、1000nmの場合には反りが73.5μであり、2000nmの場合には反りが147.1μであり、3000nmの場合には反りが220.7μであり、4000nmの場合には反りが294.3μである。一方、酸化ケイ素膜が0nm(薄膜無し)の場合には接合強度(引張り接着強さ)が1kgf/cmであり、酸化ケイ素膜が10nmの場合には接合強度が82kgf/cm(kgf/cm=9.80665N/cm)であり、酸化ケイ素膜が20nmの場合には接合強度が144kgf/cmであり、酸化ケイ素膜が50nmの場合には接合強度が153kgf/cmであり、酸化ケイ素膜が100nmの場合には接合強度が164kgf/cmであり、酸化ケイ素膜が200nmの場合には接合強度が178kgf/cmであり、酸化ケイ素膜が500nmの場合には接合強度が163kgf/cmであり、酸化ケイ素膜が1000nmの場合には接合強度が139kgf/cmであり、酸化ケイ素膜が1500nmの場合には接合強度が139kgf/cmであり、酸化ケイ素膜が2000nmの場合には接合強度が102kgf/cmであり、酸化ケイ素膜が2500nmの場合には接合強度が85kgf/cmであり、酸化ケイ素膜が3000nmの場合には接合強度が84kgf/cmであり、酸化ケイ素膜が3500nmの場合には接合強度が60kgf/cmであり、酸化ケイ素膜が4000nmの場合には接合強度が49kgf/cmである。つまり、酸化ケイ素膜が厚くなると、それに比例して反りが大きくなるが、接合強度は膜厚が200nmまでは大きくなるもののそれを過ぎると小さくなる。酸化ケイ素膜6の膜厚が2000nmを超えると酸化ケイ素膜6の応力や表面の粗さ、蒸着時の突沸における異物の付着等によって十分な接合強度が得られなくなってしまう。
ここで、接合強度は実用強度として、引張り接着強さ(JIS K 6848に準拠)で100kgf/cm以上であることが好ましい。そのため、酸化ケイ素膜6の膜厚は20nm以上2000nm以下が好ましい。一方、IR吸収ガラス部材2からの銅イオン等の異物の析出を防止するには、酸化ケイ素膜の膜厚は100nm以上必要となる。その結果、本実施形態では、酸化ケイ素膜の膜厚は100nm以上2000nm以下が最適な値となる。
【0060】
以上の酸化ケイ素膜が成膜されたIR吸収ガラス部材に接合膜を介して位相差板に接合した実施例の透過波面PVを測定したところ、平均で0.8λであった(λ=632.8nm)。これに対して、酸化ケイ素膜が成膜されたIR吸収ガラス部材に接着剤を介して位相差板に接合した比較例の透過波面PVを測定したところ、3.4λであり、波面収差が接合膜を用いた実施例に比べて大きいことがわかった。
【0061】
次に、接合膜の成膜温度と、赤外線吸収スペクトル測定における、シロキサン結合(Si−O−Si)に帰属するピーク強度を1にしたときのメチル(CH)基に帰属するピーク強度比、又はSi−CH結合に帰属するピーク強度比との関係を説明する。
成膜装置で用いられるガスはSi、Ar、Oであり、その流量はSiが30sccm、Arが30sccm、Oが0sccmであり、その圧力は4Paであり、POWER(電力)は250Wである。さらに、成膜前に活性化工程を実施する。その条件として、導入ガスがOであり、その流量が20sccmであり、POWERが50Wであり、圧力が4Paであり、時間が30秒である。
以上の条件において、成膜温度を変化させ、その際のメチル(CH)基に帰属するピーク強度比と、Si−CH結合に帰属するピーク強度比との関係を調べた。
【0062】
図10は成膜温度とメチル(CH)基に帰属するピーク強度比との関係を示すグラフであり、図11は成膜温度とSi−CH結合に帰属するピーク強度比との関係を示すグラフである。これらのグラフでは実験したデータの平均値が記されている。
図10において、成膜温度が高くなるに従ってメチル(CH)基のピーク強度比が低下する。例えば、成膜温度が40℃ではメチル(CH)基のピーク強度比が0.15であり、成膜温度が50℃ではメチル(CH)基のピーク強度比が0.15であり、成膜温度が60℃では、メチル(CH)基のピーク強度比が0.15であり、成膜温度が70℃ではメチル(CH)基のピーク強度比が0.147であり、成膜温度が80℃ではメチル(CH)基のピーク強度比が0.144であり、成膜温度が90℃ではメチル(CH)基のピーク強度比が0.142であり、成膜温度が100℃ではメチル(CH)基のピーク強度比が0.14であり、成膜温度が140℃ではメチル(CH)基のピーク強度比が0.07であり、成膜温度が150℃ではメチル(CH)基のピーク強度比が0.05であり、成膜温度が160℃ではメチル(CH)基のピーク強度比が0.04であり、成膜温度170℃ではメチル(CH)基のピーク強度比が0.033である。
【0063】
図11において、成膜温度が高くなるに従ってSi−CH結合に帰属するピーク強度比が低下する。例えば、成膜温度が40℃ではSi−CH結合に帰属するピーク強度比が0.76であり、成膜温度が50℃ではSi−CH結合に帰属するピーク強度比が0.755であり、成膜温度が60℃ではSi−CH結合に帰属するピーク強度比が0.75であり、成膜温度が70℃ではSi−CH結合に帰属するピーク強度比が0.74であり、成膜温度が80℃ではSi−CH結合に帰属するピーク強度比が0.72であり、成膜温度が90℃ではSi−CH結合に帰属するピーク強度比が0.68であり、成膜温度が100℃ではSi−CH結合に帰属するピーク強度比が0.64であり、成膜温度が140℃ではSi−CH結合に帰属するピーク強度比が0.33であり、成膜温度が150℃ではSi−CH結合に帰属するピーク強度比が0.29であり、成膜温度が160℃ではSi−CH結合に帰属するピーク強度比が0.25であり、成膜温度が170℃ではSi−CH結合に帰属するピーク強度比が0.22である。
【0064】
ここで、成膜温度が高いと、メチル(CH)基及びSi−CH結合が分解してしまうので、接合膜が酸化され、酸化ケイ素の比率が増加するので、接合膜自体が硬いものとなり、柔軟性が不足するので、接合の為に部材同士を加圧する時に不具合が生じる。
そこで、各成膜温度における重合膜の硬度を検証すると、40℃以上150℃以下の成膜温度が接合膜の柔軟性を維持するに十分であるとした。成膜温度が150℃を超えると重合膜が硬くなり過ぎる為、従来技術の直接接合(酸化ケイ素系ガラスの鏡面同士の接合)と同じ接合面になってしまい、接合面の平坦性を高度に向上しないと接合できなくなる。
そのため、成膜温度が40℃以上150℃以下では、メチル(CH)基のピーク強度比が0.05以上0.15以下であり、Si−CH結合のピーク強度比が0.29以上0.76以下となる。換言すれば、メチル(CH)基のピーク強度比が0.05以上の場合又は、Si−CH結合のピーク強度比が0.29以上の場合では、接合膜7が接合にとって適切な値となることがわかる。
【0065】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態を図12から16までに基づいて説明する。図12(A)は、本発明の第二実施形態にかかる接合膜付き基板を備える光学素子を示す概略構成図であり、(B)は、光学素子の要部を示す拡大断面図である。
【0066】
第二実施形態は光学素子としてPS変換素子と称される偏光分離素子20を例示したものである。この偏光分離素子20は、例えば、液晶プロジェクター装置に組み込んで使用されている。
図12(A),(B)において、第二実施形態の偏光分離素子20は、第一ガラス基材23と、偏光分離変換層21又は反射膜24を介して接合された基板としての第二ガラス基材22とが積層されている。なお、第二ガラス基材22は、主成分が二酸化ケイ素ではない、或いはSi基を骨格としないものであり、例えば、リン酸系ガラス部材である。
【0067】
第一ガラス基材23及び第二ガラス基材22は、その光入射側の平面25Aと光出射側の平面25Bとが平行とされ、これらの平面25A,25Bに対して45°の角度をもって反射膜24と偏光分離変換層21とが互いに平行に配置されている。
【0068】
図12(A)に示される通り、偏光分離変換層21は、入射した光束(S偏光光とP偏光光)を、S偏光光とP偏光光とに分離し、S偏光光は反射し、P偏光光はS偏光光として出射させる。
【0069】
偏光分離変換層21は、図12(B)に示される通り、第二ガラス基材22に隣接して接合された偏光分離膜21Aと、第一ガラス基材23に積層された酸化ケイ素膜21Bと、これら偏光分離膜21A及び酸化ケイ素膜21Bに接合された被着体としての1/2波長板21Cとを備える。
偏光分離膜21Aは、第二ガラス基材22の表面上に、高屈折率材料と低屈折率材料とを交互に複数層積層することにより構成されている。
高屈折率材料の種類として、La(ランタン)とTi(チタン)との混合酸化物から成るランタンチタネート膜、LaとAl(アルミニウム)との混合酸化物から成るランタンアルミネート膜、Ta、TiO、Nb、Al、等の各種高屈折率膜を用いることが可能である。
低屈折率材料の種類として、二酸化ケイ素から成るSiO膜、フッ化マグネシウム(MgF)から成るMgF膜、等の各種低屈折率膜を用いることが可能である。
これらの材料から高屈折率材料と低屈折率材料とを適宜選択して複数層積層したとき、偏光分離膜21Aと1/2波長板21Cとの界面側の偏光分離膜21Aの最外層には、図示しないSiO膜による第一実施形態と同様の酸化ケイ素膜が配置されている。また、偏光分離膜21Aと第二ガラス基材22との界面側の偏光分離膜21Aの最外層にも、図示しない第一実施形態と同様の酸化ケイ素膜が配置されている。
これらの最外層の酸化ケイ素膜は、前記高屈折率材料と前記低屈折率材料との交互層の前記低屈折率材料に二酸化ケイ素から成るSiO膜を選択したときは、当該SiO膜が交互層の最外層となるように積層しても良い。
1/2波長板21Cは、偏光分離膜21A及び酸化ケイ素膜21B間に、第一実施形態と同様の接合膜26A,26Bにより接合されている。つまり、偏光分離膜21Aは、第二ガラス基材22の接合膜26Aと対向する部分に設けられている。
【0070】
反射膜24は、図12(A)において、屈折率が異なる誘電体の多層膜であり、例えば、酸化タンタル(TaO)、酸化ケイ素膜とから構成されている。また、反射膜24は、偏光分離変換層21と同様の固着方法により第一ガラス基材23及び第二ガラス基材22に接合されている。そして、反射膜24は、偏光分離膜21Aで反射されたS偏光成分を反射させて進行方向を90°曲げ、光出射側の平面25Bから出射させる。
【0071】
(偏光分離素子の製造方法)
次に、第二実施形態にかかる光学素子の製造方法について図13から17までに基づいて説明する。図13は、接合膜の成形手順を示す概略図である。図14は、接合膜の活性化工程を説明する概略図である。図15は、貼合工程を説明する概略図である。図16は、切断工程を説明する概略図である。図17は、組立工程を説明する概略図である。
【0072】
[光学機能膜形成工程]
第一ガラス基材23を成形するための短冊状光学ブロック23A及び第二ガラス基材22を形成するための短冊状光学ブロック22Aを予め用意する。
そして、短冊状光学ブロック23Aの一面に酸化ケイ素膜21Bが形成された後、図13(A),(B),(C)に示される通り、短冊状光学ブロック23Aに設けられた酸化ケイ素膜21Bに接合膜26Aが形成される(図12参照)。
具体的には、図13(A)に示される通り、短冊状光学ブロック23Aに設けられた酸化ケイ素膜21Bの最上層に混合ガスを露出する。
これにより、図13(B)に示される通り、重合物が酸化ケイ素膜21Bの最上層表面に付着、堆積する。そして、図13(C)に示される通り、酸化ケイ素膜21Bの最上層に薄膜部26B1が形成される。
【0073】
[表面活性化工程]
その後、図14(A)に示される通り、例えば、プラズマ照射により、薄膜部26B1の表面が活性化される。
[貼合工程]
短冊状光学ブロック23Aの酸化ケイ素膜21Bに形成された薄膜部26B1と短冊状光学ブロック22Aとが貼り合わされる。
ここで、図示は省略するが、短冊状光学ブロック22Aには、予め、偏光分離膜21Aに接合膜26Bを介して1/2波長板21Cが積層され、1/2波長板21Cにさらに活性化された薄膜部26B2が形成されている。
そして、図14(B)に示される通り、1/2波長板21Cに形成された薄膜部26B2と、酸化ケイ素膜21Bに形成された薄膜部26B1とが向かい合わされる。そして、図15(A)、(B)に示される通り、短冊状光学ブロック23Aの薄膜部26B1と短冊状光学ブロック22Aの薄膜部26B2とが接合される。そして、接合膜26Bが形成される。
【0074】
なお、本実施形態では、反射膜24は、偏光分離膜21Aが間に設けられた短冊状光学ブロック23A,22Aに形成される。具体的には、短冊状光学ブロック22Aに反射膜24が蒸着等で形成され、その反射膜24の最上層に接するように図示しない接合膜が形成される。この接合膜に短冊状光学ブロック23Aが貼り合わされる。この貼り合わせに際しては、間に偏光分離変換層21が接合された短冊状光学ブロック23A,22Aが、その端部がずらされた状態で行われる(図16(A)参照)。
【0075】
[切断工程]
次に、複数枚が積層された短冊状光学ブロック23A,22Aが所定形状に切断される。
図16(A)で示される通り、短冊状光学ブロック23A,22Aは、それらの端部がずらされた状態で積層されている。そして、図16(B)に示される通り、積層された短冊状光学ブロック23A,22Aが、その平面に対して45°の方向Lに沿って所定間隔毎に切断される。切断された1つのブロック27が図17(A)に示されている。
図17(A)に示される通り、ブロック27は断面が平行四辺形とされる。そして、ブロック27には偏光分離変換層21と反射膜24とが所定間隔毎に配置された構造となる。その後、ブロック27がその平面に対して垂直な方向V1に沿って切断される。
[位相差設置工程]
図17(B)に示される通り、切断されたブロック27が左右に並べて接合されて偏光分離素子20が成形される。
【0076】
以上の構成の第二実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(14)第一ガラス基材23に形成された酸化ケイ素膜21Bと1/2波長板21Cとを接合膜26Bにより接合した。そのため、第一ガラス基材23と1/2波長板21Cとを強力に接合できる。
(15)さらに、最外層に酸化ケイ素膜を有する偏光分離膜21Aと、1/2波長板21Cとも接合膜26Aにより接合したので、偏光分離膜21Aと1/2波長板21Cとを強力に接合できる。
従って、熱歪みが生じても、優れた接合強度を維持できるので、第一ガラス基材23と偏光分離膜21Aと1/2波長板21Cとが剥がれることを防止できる。
【0077】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態を図18に基づいて説明する。図18(A)は、本発明の第三実施形態にかかる接合膜付き基板を備える光学素子を示す概略平面図であり、(B)は、その光学素子を示す概略構成図である。
【0078】
第三実施形態は光学素子として開口フィルター30を例示したものである。この開口フィルター30は、例えば、ピックアップ装置などに組み込んで使用されている。
図18(A),(B)において、第三実施形態の開口フィルター30は、被着体としての水晶の波長板31と、基板としてのガラス基材32とが積層されている。なお、ガラス基材32は、主成分が二酸化ケイ素ではない、或いはSi基を骨格としないものであり、例えば、リン酸系ガラス部材である。
波長板31は、位相調整材311と波長選択材312とを備える。位相調整材311は、互いに波長の異なる複数の光線のうち、全ての波長の光線を透過するものであり、波長選択材312は所定波長の光線の透過を阻止するものである。
波長板31のガラス基材32側の面には、酸化ケイ素膜33が形成されている。また、ガラス基材32の波長板31側の面にも酸化ケイ素膜34が形成されている。これら波長板31の酸化ケイ素膜33とガラス基材32の酸化ケイ素膜34とは、第一実施形態と同様の接合膜35により接合されている。
【0079】
開口フィルター30の製造方法としては、第一実施形態と同様に、蒸着などにより、酸化ケイ素膜33,34が、波長板31とガラス基材32とにそれぞれ積層される。
そして、波長板31の酸化ケイ素膜33と、ガラス基材32の酸化ケイ素膜34との両方に、活性化された薄膜部が形成された後、これら薄膜部が貼り合わされることにより、接合膜35が形成されて、開口フィルター30が製造される。
【0080】
以上の構成の第三実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(16)波長板31と、ガラス基材32とにそれぞれ酸化ケイ素膜33,34を積層し、それら酸化ケイ素膜33,34間に接合膜35を形成した。そのため、さらに接合強度が向上し、熱歪みが生じても、優れた接合強度を維持できるので、波長板31とガラス基材32とが剥がれることを防止できる。
【0081】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態を図19に基づいて説明する。図19は、本発明の第四実施形態にかかる接合膜付き基板を備える光学素子を示す概略平面図である。
【0082】
第四実施形態は光学素子として回折格子付き波長板40(以下、「波長板40」と略記する)を例示したものである。この波長板40は、例えば、ピックアップ装置などに組み込んで使用されている。
【0083】
図19において、第四実施形態の波長板40は、被着体としての水晶からなる位相差板41と、位相差板41に接合された基板としてのガラス基材42と、位相差板41のガラス基材42と反対側に接合された偏光素子43とが積層されている。なお、ガラス基材42は、主成分が二酸化ケイ素ではない、或いはSi基を骨格としないものであり、例えば、リン酸系ガラス部材である。
偏光素子43は、金属にて微細な周期パターンが形成された、いわゆるワイヤグリッドである。
ガラス基材42の外面には、回折格子44が形成されている。これら回折格子44は、ガラス基材42の表面上に所定の間隔で複数形成された凸部により構成されている。
波長板40は、光源50から出射された出射光を、回折格子44によって、3ビームに分離する。
【0084】
位相差板41のガラス基材42側の面には、第一実施形態と同様の酸化ケイ素膜45が形成され、ガラス基材42の位相差板41側の面にも第一実施形態と同様の酸化ケイ素膜46が形成されている。これら位相差板41の酸化ケイ素膜45とガラス基材42の酸化ケイ素膜46とは、第一実施形態と同様の接合膜47により接合されている。
【0085】
波長板40の製造方法では、第三実施形態と同様に、蒸着などにより、酸化ケイ素膜45,46が、位相差板41とガラス基材42とにそれぞれ積層される。
そして、位相差板41の酸化ケイ素膜45と、ガラス基材42の酸化ケイ素膜46との両方に、活性化された薄膜部が形成された後、これら薄膜部が貼り合わされて、接合膜47が形成される。
位相差板41及びガラス基材42を接合した後、位相差板41に偏光素子43が形成され、ガラス基材42に回折格子44が形成されて、波長板40が製造される。なお、偏光素子43としては、例えば、樹脂からなる偏光フィルム又は無機材料で構成された無機偏光板などが挙げられる。
【0086】
以上の構成の第四実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(17)位相差板41と、ガラス基材42とにそれぞれ酸化ケイ素膜45,46を積層し、それら酸化ケイ素膜45,46間に接合膜47を形成した。そのため、熱歪みが生じても、優れた接合強度を発揮できるので、位相差板41とガラス基材42とが剥がれることを防止できる。
【0087】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。図20は、本発明にかかる接合膜付き基板の変形例を示す概略構成図である。
例えば、第一実施形態から第四実施形態まででは、基板をリン酸系ガラス部材としたがこれに限られない。基板は、SiOとBを混合したホウケイ酸ガラスでもよく、YAG(イットリウムアルミニウムガーネット)基板でもよい。YAG基板は、酸化イットリウム(Y)と酸化アルミニウム(Al)との複酸化物であり、無色透明の立方晶系結晶で、ざくろ石構造をとる。また、基板は、ホウ酸(B)を主成分とするホウ酸系ガラス基板でもよい。
そして、第一実施形態では、IR吸収ガラス部材と水晶の光学部材(位相差板3と水晶複屈折板1)とを含む光学素子について説明したが、本発明では、IR吸収ガラス部材と接合される対象は水晶からなるものに限定されるものではなく、酸化ケイ素系ガラスの光学部材であってもよい。ここで、酸化ケイ素系ガラスは、酸化ケイ素を主成分として金属酸化物等を補助成分とするガラスまたは石英ガラスである。
さらに、前記第一実施形態では、水晶複屈折板、IR吸収ガラス部材、位相差板及び水晶複屈折板の4枚を接合したものに適用したが、これに限られない。例えば、本発明では、IR吸収ガラス部材と位相差板との2枚が接合され、他の部材が離隔配置された構成でもよい。さらには、水晶複屈折板、IR吸収ガラス部材及び位相差板の3枚が接合され、水晶複屈折板が離隔配置された構成でもよい。
【0088】
また、第一実施形態から第四実施形態まででは、被着体の一面に接合膜の薄膜部を形成し、基材に酸化ケイ素膜と接合膜の薄膜部とを形成したがこれに限られない。本発明では、基材に酸化ケイ素膜を形成し、この酸化ケイ素膜に接合膜を形成すれば、被着体には何ら成膜することを要しない。この場合、接合膜と被着体との双方に活性化工程を施す。
さらに、例えば、図20に示すように、本発明の接合膜付き基板51は、第一実施形態と同様の基板52と、第一実施形態と同様の接合膜54と、多層膜53とを有してもよい。
多層膜53は、第一実施形態と同様の酸化ケイ素膜53A,53Bと、それらの間に設けられた1又は複数の中間膜53Cとを含む。酸化ケイ素膜53Aは、基板52に隣接する最外層である。一方、酸化ケイ素膜53Bは、接合膜54に隣接する最外層であることが好ましい。
中間膜53Cを形成する材料は、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タンタル(Ta)、酸化チタン(TiO)などが挙げられる。
このような多層膜53はマッチングコートとして機能する。例えば、酸化ケイ素膜53Bと接合膜54との界面における反射をより少なくすることができる。
そして、本発明の接合膜付き基板は、上述した光学ローパスフィルターなどの光学素子以外のものについても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、光学ローパスフィルター、その他の接合膜付き基板が設けられる液晶プロジェクター、ピックアップ装置、その他の光学機器に利用できる。
【符号の説明】
【0090】
1…水晶複屈折板、2…IR吸収ガラス部材(基板)、3…位相差板(被着体)、6…酸化ケイ素膜、7…接合膜、21C…1/2波長板(被着体)、22…第二ガラス基材(基板)、31…波長板(被着体)、32…ガラス基材(基板)、41…位相差板(被着体)、42…ガラス基材(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分が二酸化ケイ素ではない、或いはSi基を骨格としない基板と、
当該基板の表面上に隣接して気相成膜法により設けられた酸化ケイ素膜と、
プラズマ重合法により設けられた接合膜と、を有し、
前記接合膜は、
シロキサン(Si−O)結合を含み、結晶化度が45%以下であるSi骨格と、
当該Si骨格に結合する脱離基と、を含み、
前記脱離基は、有機基で構成され、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したとき、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより、前記接合膜の表面の前記領域に、前記基板と被着体との接着性が発現するものであり、
前記酸化ケイ素膜の膜厚は、100nm以上2000nm以下である
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項2】
請求項1に記載の接合膜付き基板において、
前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率との合計が、10原子%以上90原子%以下である
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接合膜付き基板において、
前記接合膜中のSi原子とO原子との存在比は、3:7から7:3までである
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の接合膜付き基板において、
前記脱離基は、アルキル基である
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の接合膜付き基板において、
前記接合膜は、
その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離した後に、
未結合手または水酸基からなる活性手を有する
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の接合膜付き基板において、
前記接合膜は、
主材料がポリオルガノシロキサンであり、
前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の接合膜付き基板において、
前記基板は、リン酸系ガラス基板である
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の接合膜付き基板において、
前記接合膜は、赤外光吸収スペクトルにおけるシロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、メチル基に帰属するピーク強度比が、0.05以上かつ0.15以下である
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の接合膜付き基板において、
前記接合膜は、赤外光吸収スペクトルにおけるシロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−CH結合に帰属するピーク強度比が、0.29以上かつ0.76以下である
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の接合膜付き基板において、
前記接合膜は、プラズマで活性化された
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の接合膜付き基板において、
前記基板は、光学ローパスフィルターに用いられる
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の接合膜付き基板において、
前記基板は、偏光分離素子に用いられる
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項13】
請求項11に記載の接合膜付き基板において、
前記基板の前記接合膜と対向する部分に偏光分離膜が設けられ、
この偏光分離膜は、前記酸化ケイ素膜とフッ化マグネシウムの薄膜を含む複数層から構成され、かつ、前記接合膜に前記酸化ケイ素膜が隣接している
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項14】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の接合膜付き基板において、
前記基板は、開口フィルターに用いられる
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項15】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の接合膜付き基板において、
前記基板は、回折格子付き波長板に用いられる
ことを特徴とする接合膜付き基板。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか一項に記載された接合膜付き基板の製造方法であって、
前記基板に前記酸化ケイ素膜を150℃以上350℃以下でスパッタ又は蒸着により形成し、さらに、前記接合膜をプラズマ重合法により40℃以上150℃以下で形成する
ことを特徴とする接合膜付き基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−235626(P2011−235626A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259548(P2010−259548)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】