説明

接合装置及び接合方法

【課題】低い加圧力でも被接合体の横滑りを防止でき,被接合体同士を好適に接合させることができる接合装置及び接合方法を提供する。
【解決手段】第一の被接合体13の上面に載置された第二の被接合体10の上面に,接合部材31を接触させ,接合部材31によって第二の被接合体10を超音波振動させることにより,第一の被接合体13と第二の被接合体10とを接合させる接合装置において,前記接合部材31に,第二の被接合体10に接触する接触部分40,及び,第二の被接合体10を保持する保持部分42を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,超音波振動を利用して被接合体同士を接合させる接合装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体ウェハ上に形成されたIC,LSI等の電子回路の電気的特性の検査は,プローブ装置に装着されたプローブカードを用いて行われている。プローブカードは,通常,回路基板やコンタクタを有している。ウェハに対向するコンタクタの下面には,多数のプローブピンが接続端子を介して支持されており,この多数のプローブピンを,電子回路の各電極に接触させることにより,ウェハの電気的特性の検査を行っている(例えば,特許文献1参照。)。
【0003】
かかるプローブピンと接続端子のような,小型の部品同士を接合させる装置として,超音波接合を行う装置が知られている。この接合装置は,プローブピンに当接させる接合部材,接合部材に超音波振動を与える超音波振動子を備えている。プローブピンと接続端子の接合を行う際は,例えば図12に示すように,コンタクタ91に設けられた接続端子92が上方に向けられた状態で,回路基板93が載置され,接続端子92の上にプローブピン95が載せられ,プローブピン95が接合部材96の先端部によって上方から押さえ付けられる。そして,超音波振動子の発振により接合部材96が超音波振動させられる。すると,接合部材96の超音波振動がプローブピン95に伝達されることにより,プローブピン95と接続端子92が互いに擦り合わされ,プローブピン95と接続端子92との間に摩擦熱が生じる。これにより,プローブピン95を接続端子92に溶着させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−77242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,従来の接合装置にあっては,接合部材96によって振動が与えられた際に,プローブピン95が接合部材96に対して横滑りしやすく,この場合,接合部材96からプローブピン95に効率よく振動を伝達できない。また,プローブピン95が接続端子92に対しても横滑りしやすく,この場合,プローブピン95を適正な位置に接合できない。このため,接合部材96の加圧力を高くする必要があったが,この場合,接続端子92やプローブピン95が変形し損傷するおそれがあった。
【0006】
本発明は,かかる点に鑑みてなされたものであり,低い加圧力でも被接合体の横滑りを防止でき,被接合体同士を好適に接合できる接合装置及び接合方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は,第一の被接合体の上面に載置された第二の被接合体の上面に,接合部材を接触させ,前記接合部材によって前記第二の被接合体を超音波振動させることにより,前記第一の被接合体と前記第二の被接合体とを接合させる接合装置であって,前記接合部材に,前記第二の被接合体に接触する接触部分,及び,前記第二の被接合体を保持する保持部分が設けられていることを特徴とする。
【0008】
前記接合部材には,前記第二の被接合体に設けられた凹凸とかみ合う凹凸を設けてもよく,前記接合部材の凹凸によって,前記接触部分及び前記保持部分を構成してもよい。
【0009】
前記接合部材の凹凸は,前記接合部材の先端部に設けられた平坦面と,前記平坦面から突出した凸部とによって構成してもよく,前記平坦面が前記接触部分であり,前記凸部が前記保持部分であるとしてもよい。前記凸部は,前記平坦面の中央部に設けてもよい。また,前記凸部は複数設けてもよい。
【0010】
前記接合部材の凹凸は,前記接合部材の先端部に設けられた平坦面と,前記平坦面に設けられた凹部とによって構成してもよく,前記平坦面が前記接触部分であり,前記凹部が前記保持部分であるとしてもよい。前記凹部は,前記平坦面の中央部に設けてもよい。また,前記凹部は複数設けてもよい。
【0011】
前記接合部材の凹凸は,前記接合部材の超音波振動の振動方向に沿って交互に並べて設けてもよい。前記第一の被接合体は,被検査体の電気的特性を検査するプローブカードにおいて被検査体と対向させられる面に設けられる電極であり,前記第二の被接合体は,前記被検査体に接触させるためのプローブピンであってもよい。
【0012】
別の観点による本発明は,第一の被接合体と第二の被接合体とを超音波振動により溶着させて接合させる接合方法であって,前記第一の被接合体の上面に第二の被接合体を載置し,接合部材に設けられた保持部分によって前記第二の被接合体の上面を保持しながら,前記接合部材に設けられた接触部分を前記第二の被接合体に押し付け,前記接合部材を超音波振動させることにより,前記第二の被接合体を超音波振動させ,前記第一の被接合体と第二の被接合体とを溶着させることを特徴とする。
【0013】
前記接合部材に設けられた凹凸を,前記第二の被接合体に設けられた凹凸にかみ合わせた状態で,前記接合部材を超音波振動させるようにしてもよい。前記第一の被接合体は,被検査体の電気的特性を検査するプローブカードにおいて被検査体と対向させられる面に設けられた電極であり,前記第二の被接合体は,前記被検査体に接触させるためのプローブピンであるとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,接合部材の保持部分によって第二の被接合体を保持することにより,接合部材を振動させたときに第二の被接合体が接合部材に対して横滑りすることを防止できる。従って,第二の被接合体が第一の被接合体に対して位置ずれすることを防止でき,第一の被接合体に対する接合位置の精度を高めることができる。また,接合部材の接触部分を第二の被接合体に接触させることにより,接合部材の振動を第二の被接合体に確実に伝達させることができる。第一の被接合体や第二の被接合体を損傷させない安全な加圧力で,第二の被接合体の位置ずれを防止し,第二の被接合体と接続端子を効率的に溶着させ,十分な接合力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下,本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は,本発明にかかる接合装置によって接合されるプローブピンと接続端子とを備えたプローブ装置1の構成を示している。
【0016】
プローブ装置1には,例えばプローブカード2と,被検査体としてのウェハWを載置する載置台3が設けられている。プローブカード2は,例えばウェハWの電極に接触させるための複数のプローブピン10と,それらの複数のプローブピン10を下面に支持するコンタクタ11と,ウェハWの電気的特性を検査するためのプリント配線基板(回路基板)12を備えている。コンタクタ11とプリント配線基板12は,例えば略長方形の板状に形成されている。
【0017】
コンタクタ11は,電気的特性の検査の際にウェハWに対向させられる外面(下面)11aと,プリント配線基板12に取り付けられる接続面(上面)11bと,を有している。外面11aには,複数の接続端子(電極)13が設けられており,プローブピン10は,各接続端子13に1つずつ接合されている。接続面11bには,プリント配線基板12に接続される複数の接触端子(電極)14,キャパシタ(コンデンサ)15等が設けられている。プリント配線基板12は,接触端子14を介してコンタクタ11と通電可能に配設されており,プローブピン10に対しコンタクタ11を通じて電気信号を授受できるようになっている。
【0018】
各プローブピン10は,例えばニッケル合金などの金属の導電性材料によって形成されており,図2に示すように,例えば細長い略直方体形状をなす梁部20と,梁部20に対して所定の角度で折り曲げられた先端部21とを有している。
【0019】
図2において梁部20の下面側の平坦な平面20aには,凹部22が設けられている。凹部22は,梁部20の幅方向(長さ方向に直交する方向,図2においては手前側から奥側に向かう方向)に沿って,梁部20の一方(手前側)の側面から他方(奥側)の側面まで延びるように,細長いスリット状に設けられている。凹部22の縦断面形状は,所定の幅(梁部20の長さ方向の幅)b,所定の深さ(平面20aと凹部22の底面との間の段差)hを有する略方形状になっている。かかる凹部22と,梁部20の長さ方向において凹部22の両側に位置する平面20a(即ち,凹部22に対する凸部)とによって,凹凸23が構成されており,梁部20の長さ方向において,凹部22と凸部である平面20aが交互に並べて設けられた形状になっている。なお,凹部22の内側の両側面は,後述する接合装置30によってプローブピン10と接続端子13の接合を行う際に,後述する超音波振動の振動方向D1に対して略垂直に,また,接合部材31の凸部42の両側面にそれぞれ接触するように構成されている。
【0020】
接続端子13は,金属などの導電性材料によって形成されている。プローブピン10は,この接続端子13の下面側の平面13aに対して梁部20の上面側の平坦な平面20bを接合させ,先端部21を下方に向けて傾斜させた状態で支持されている。また,プローブピン10は,接続端子13,コンタクタ11を介して,プリント配線基板12に電気的に接続されている。
【0021】
ウェハW上に形成された電子回路の電気的特性の検査を行う際は,図1に示すように,ウェハWが載置台3上に載置され,載置台3によってコンタクタ11側に上昇させられる。そして,ウェハWの各電極が対応するプローブピン10の先端部21の下端部に接触させられ,プリント配線基板12,接触端子14,コンタクタ11,接続端子13及びプローブピン10を介して,ウェハWとの間で電気信号が授受される。これにより,ウェハW上の電子回路の電気的特性が検査されるようになっている。
【0022】
次に,本実施の形態にかかる接合装置30の構成について説明する。図3は,第一の被接合体としての接続端子13に第二の被接合体としてのプローブピン10を接合させるための接合装置30を示している。図3に示すように,接合装置30は,接合部材(圧着子)31,接合部材31を保持する保持機構32,接合部材31を振動させる超音波振動子33を内蔵した本体34を備えている。さらに,接合部材31の下方においてプリント配線基板12に取り付ける前のコンタクタ11を保持する保持体35,保持体35を載置させる載置台36を備えている。なお,接合装置30によってプローブピン10を接続端子13に接合させる工程は,コンタクタ11をプリント配線基板12に取り付ける前に行われる。
【0023】
保持機構32は,軸方向を振動方向(図3においては左右方向)D1に沿って横向きにした状態で,接合装置30の本体34によって支持されている。接合部材31は,先端部が下方に向けられた状態で,保持機構32の先端部に取り付けられている。超音波振動子33は,保持機構32の基端部側に設けられている。かかる超音波振動子33の加振により,保持機構32は軸方向において超音波振動させられ,接合部材31の先端部が振動方向D1に超音波振動させられるようになっている。
【0024】
図4に示すように,接合部材31の先端部には,略方形状の平坦面40が,略水平に設けられている。振動方向D1において平坦面40の中央部には,凸部42が設けられている。凸部42は,接合部材31の先端部から下方に向かって突出させられている。また,凸部42は,細長い略直方体形状をなしており,幅方向D2(振動方向D1に直交する方向,図4においては手前側から奥側に向かう方向)に沿って,接合部材31先端部の一方(手前側)の縁部から他方(奥側)の縁部まで延びるように設けられている。凸部42の縦断面形状は,所定の幅(振動方向D1における幅)b,所定の段差(平坦面40と凸部42の下面との間の段差)hを有する略方形状になっている。凸部42は,接合部材31の振動方向D1に対してそれぞれ略垂直に向けられた両側面を有しており,プローブピン10と接続端子13との接合を行う際には,前述したプローブピン10に設けられた凹部22の両側面に沿って凸部42の両側面がそれぞれ接触するように構成されている。このようにすると,接合部材31の超音波振動を凸部42の両側面からプローブピン10に対して効率的に伝達させることができる。
【0025】
この凸部42と,凸部42の両側に位置する平坦面40(即ち,凸部42に対する2つの凹部)とによって,凹凸43が構成されている。凹凸43は,振動方向D1に沿って,凹部22と凸部である平面20aが交互に並べて設けられた形状になっている。また,凹凸43は,プローブピン10の凹凸23とかみ合わせることができ,図5に示すように,凸部42を凹部22内に挿入させた状態で,凸部42の両側の平坦面40と,凹部22の両側の平面20aとを,互いに密着させることができる。この場合,凸部42は,主にプローブピン10の保持を安定させるための保持部分として機能し,凸部42の両側の平坦面40は,主に接合部材31の振動をプローブピン10に伝達させるためにプローブピン10に接触させられる接触部分として機能する。即ち,保持部分として機能する部分と接触部分として機能する部分が,個別に設けられた構成になっている。なお,プローブピン10に設けた凹部22は,凸部42によって保持される被保持部分として機能する。また,凹部22の両側の平面20aは,平坦面40に接触させられる被接触部分として機能する。
【0026】
保持体35は略長方形のトレー状をなし,上面には,コンタクタ11の接続面11b側の部分を挿入させることが可能な大きさを有する保持空間51が開口されている。保持空間51は,保持体35の上面から所定の深さまで形成され接触端子14やキャパシタ15等を収納させるための内部空間51aを備え,その内部空間51aの外周囲に沿って,コンタクタ11の接続面11bの周縁部が載せられる段部51bが設けられている。コンタクタ11は,接続面11b側を下面とし,接触端子14やキャパシタ15等が内部空間51aに収納され,接続面11bの周縁部が段部51bの上面に沿って接触させられた状態で,また,外面11aが上面側に向けられ,接続端子13がコンタクタ11の上方に向けられた状態で,保持空間51に挿入されるようになっている。このようにコンタクタ11を保持体35に保持させ,かかる保持体35を載置台36の略水平な上面に載置した状態では,コンタクタ11は略水平に保持される。また,接続端子13の平面13aが略水平になり,さらに,平面13aに載せられたプローブピン10の平面20aも略水平になるように構成されている。接続面11b側の接触端子14やキャパシタ15等は,内部空間51a内に保持体51に対して非接触状態で囲まれることにより保護される。従って,接続面11b側の接触端子14やキャパシタ15等の損傷を防止できる。
【0027】
また,保持体35には,保持空間51に挿入されたコンタクタ11の外面11aの周縁部を押さえる複数の押さえ部材53が取り付けられる。各押さえ部材53は,基端部が保持体35の上面に対して着脱自在に取り付けられ,先端部は保持空間51の上方まで延びるように設けられる。即ち,押さえ部材53の先端部によって外面11aを上方から押さえるようにして保持できるようになっている。また,図示の例では,コンタクタ11の外面11aの周縁部に,コンタクタ11を保持体35に取り付けたときに外面11aの中央部側よりも低くなるように設けられた段部11cが設けられており,押さえ部材53の先端部は段部11cの上面に沿って配置され,押さえ部材53の先端によって外面11aの中央部側の側面が外側から押さえられるようになっている。各押さえ部材53の基端部は,例えばネジ53aによるネジ止めなどによって保持体53の上面に対して固定される。なお,押さえ部材53は,例えばコンタクタ11の外面11aの4つの辺部に対してそれぞれ1つ以上ずつ対応させて設けるようにしても良い。そうすれば,コンタクタ11を確実に保持できる。
【0028】
次に,以上のように構成された接合装置30を用いて,接続端子13にプローブピン10を接合させる方法について説明する。先ず,図3に示すように,コンタクタ11が保持体35の保持空間51に挿入され,押さえ部材53が取り付けられ,コンタクタ11の外面11aが保持される。保持空間51に挿入される際,コンタクタ11の外面11aは上方に向けられ,接続面11bの周縁部は段部51bに載せられ,接触端子14やキャパシタ15等は内部空間51a内に配置される。このようにコンタクタ11を保持した保持体35が載置台36上に固定された後,図5に示すように,コンタクタ11に取り付けられた接続端子13の1つに,プローブピン10が位置決めして載せられる。即ち,接続端子13の上面となっている平面13aに,梁部20の下面となっている平面20bが接触させられた状態で,プローブピン10が載置される。
【0029】
接続端子13に梁部20が載せられると,梁部20の上方から接合部材31が下降させられ,接合部材31の凹凸43が,梁部20の上面となっている平面20aの凹凸23に,上方から接近させられる。このとき,接合部材31の振動方向D1は,梁部20の長さ方向に一致させられ,接合部材31の幅方向D2は,梁部20の幅方向に一致させられた状態にされている。そして,梁部20の凹部22に,接合部材31の凸部42が上方から挿入される。これにより,凹凸23と凹凸43とが互いにかみ合わせられ,凸部42の両側の平坦面40が,凹部22の両側の平面20に沿って,それぞれ密着させられ,梁部20は接合部材31によって上方から押し付けられる。
【0030】
こうして,凹凸23と凹凸43とが互いにかみ合わせられ,接合部材31が梁部20に押し付けられ,梁部20の平面20bと接続端子13の平面13aとが密着させられた状態において,超音波振動子32から超音波振動が発振させられ,接合部材31が振動方向D1に超音波振動させられる。超音波振動子32の超音波振動は,保持機構32,接合部材31を介して梁部20に伝達される。これにより,プローブピン10は振動方向D1において振動させられ,梁部20の平面20bと接続端子13の平面13aとが互いに擦り合わせられる。この摩擦熱により平面20b,13aはそれぞれ融解し,互いに溶着させられる。特に,凸部42の両側面と凹部22の両側面が,互いに密接させられているとともに,振動方向D1に対してそれぞれ略垂直になっていることにより,接合部材31の振動は,凸部42の両側面からプローブピン10に対して効果的に伝達させられる。こうして,接合部材31によって超音波振動が与えられることにより,プローブピン10が接続端子13に接合させられる。その後,接合部材31がプローブピン10から上昇させられ,凸部42が凹部22から退出させられる。以上のようにして,接合装置30による接合が終了する。こうしてプローブピン10が接合されたコンタクタ11は,接合装置30から搬出された後,プリント配線基板12に取り付けられる。これにより,プローブカード2が完成する。
【0031】
以上の実施形態によれば,プローブピン10,接合部材31にそれぞれ設けられた凹凸23,凹凸43が互いにかみ合わせられた状態で,プローブピン10が接合部材31によって押さえられることにより,プローブピン10が確実に保持される。接合部材31,プローブピン10に振動が与えられても,凸部42が凹部22から抜け出ることはなく,凸部42が凹部22を確実に保持し続けるので,プローブピン10が接合部材31から横滑りすることを防止できる。従って,接合部材31や接続端子13に対するプローブピン10の位置ずれを防止でき,接続端子13に対してプローブピン10を正確な位置に精度良く接合させることができる。特に,接合部材31とプローブピン10の振動方向D1に凹部と凸部が並べられていることにより,接合部材31とプローブピン10が振動方向D1において互いにずれることを効果的に防止できる。また,接合部材31がプローブピン10を押さえる加圧力を低くして振動させても,プローブピン10の位置ずれを確実に防止できる。即ち,接合部材31,プローブピン10,接続端子13を損傷させるおそれがない適度な加圧力で,プローブピン10の接合を安全に行うことができる。
【0032】
また,接合部材31に対するプローブピン10の横滑りを防止することで,接合部材31の振動エネルギーがプローブピン10へ確実に伝達させられ,プローブピン10と接続端子13との間の摩擦熱に効率的に変換させられる。従って,超音波振動による接合を効率的に行うことができる。
【0033】
また,凸部42によって凹部22を保持しながらも,凸部42,凹部22の両側において平坦面40が平面20aにそれぞれ押し付けられる構成としたことにより,プローブピン10をより安定させて保持できるとともに,接合部材31の振動がプローブピン10に確実に伝達させられる。さらに,接合部材31とプローブピン10との接触面積(図6参照)が,従来の装置における接合部材とプローブピンとの接触面積(図11参照)よりも広くなり,プローブピン10に対して広い範囲に加圧力が与えられる。この場合,平面20bと平面13aとの間において溶着に必要な摩擦熱が発生する面積が広くなり,溶着により接合される接合面積が広くなる。従って,平面20bと平面13aとの間の接合力が向上し,プローブピン10が接続端子13に対して強固に取り付けられる。
【0034】
以上の実施形態では,第一の被接合体は接続端子13とし,第二の被接合体はプローブピン10としたが,第一の被接合体及び第二の被接合体はかかるものに限定されない。また,本発明は,プローブカードの接続端子にプローブピンを接合させるものに限定されず,様々な電子部品等の接合に適用することができ,例えば,半導体チップのボンディング装置に適用することもできる。即ち,第一の被接合体は半導体チップの接続電極であっても良く,第二の被接合体はボンディングワイヤであっても良い。
【0035】
以上の実施形態においては,接合部材31は横向きの振動方向D1に超音波振動させられるとしたが,本発明は振動方向が縦向きである場合にも,好適に適用できる。即ち,接合部材31によってプローブピン10が上下方向に超音波振動させられる場合も,凸部42が凹部22に挿入された状態で保持されることにより,プローブピン10の位置ずれを確実に防止できる。
【0036】
以上の実施形態では,プローブピン10と接続端子13の接合を行う際,接合部材31の接触部分である平坦面40とプローブピン10の被接触部分である平面20は,互いに接触させられるとしたが,保持部分である凸部42と被保持部分である凹部22は,必ずしも接触させられなくても良い。例えば図7に示すように,平坦面40に対する凸部42の段差h’が,凹部22の深さhより小さく形成されていても良い。この構成においては,凸部42の下面と凹部22の底面との間に隙間が形成された状態で,平坦面40がそれぞれプローブピン10に接触させられるようになっている。このようにすると,平坦面40を確実に平面20aに接触させ,接合部材31の振動を平坦面40から確実に伝達させることができる。また,凹部22や凸部42の加工精度が厳しく要求されないので,加工が容易である。
【0037】
また,凹部22,凸部42等の形状は,以上の実施の形態に示したものには限定されない。例えば凸部42の両側面及び凹部22の両側面は,振動方向D1に対してそれぞれ略垂直な平面であるとしたが,例えば図8に示すように,凸部42,凹部22は,下方に向かうに従い振動方向D1における幅が狭くなる略台形状の縦断面形状を有する形状とし,凸部42の両側面及び凹部22の両側面が,振動方向D1に対して傾斜させられている構成としても良い。この場合は,凸部42を凹部22に対して挿入出させる際に,凸部42の外面と凹部22の内面との間で摩擦が発生することを防止でき,挿入出を円滑に行いやすい利点がある。
【0038】
以上の実施形態では,凹凸43は,1つの凸部42とその両側の平坦面40(即ち,2つの凹部)とによって構成され,凹凸23は,1つの凹部22とその両側の平面20a(即ち,2つの凸部)とによって構成されており,合計で3対の凹部と凸部が互いにかみ合わせられる構成としたが,各凹凸43,23に含まれる凹部や凸部の個数はかかる形態には限定されず,4対以上の凹部と凸部がかみ合わせられる構成にしても良い。例えば,平坦面40に複数の凸部42が振動方向D1に並べて設けられ,これらの凸部42が,平面20aにおいて長さ方向に並べて設けられた複数の凹部22に,それぞれ1つずつ挿入されるようにしても良い。
【0039】
また,以上の実施形態では,接合部材31の平坦面40に凸部42が設けられ,プローブピン10の平面20aに凹部22が設けられた場合を説明したが,例えば図9に示すように,接合部材31の平坦面40の中央部に,平坦面40から上方に向かって陥没させられた凹部61が設けられ,プローブピン10の平面20aに,平面20aから上方に向かって突出させられた凸部62が設けられた構成にしても良い。かかる形態においては,中央部に設けられた凹部61と凹部61の両側に設けられた平坦面40(即ち,凹部61に対する2つの凸部)によって,凹凸63が構成されている。また,中央部に設けられた凸部62と凸部62の両側に設けられた平面20a(即ち,凸部62に対する2つの凹部)によって,凹凸64が構成されている。そして,凹凸63の凹部61が保持部分として機能し,凸部62が被保持部分として機能し,凹部61の両側の平坦面40が接触部分として機能し,凸部62の両側の平面20aが被接触部分として機能するように構成されている。接合を行う際は,凹部61に凸部62が挿入された状態で,凹部61と凸部62の両側の平坦面40と平面20aが,互いに接触させられる。この場合も,凹部61に凸部62が挿入されることにより,接合部材31に対してプローブピン10がずれることを防止でき,プローブピン10を確実に保持できる。
【0040】
凹部61の深さ(凹部61の上面と平坦面40との間の段差)h3と,凸部62の高さ(凸部62の上面と平面20aとの間の段差)h4とは,互いにほぼ同じであっても良いが,図10に示すように,深さh3は高さh4より大きくても良い。即ち,凸部62の上面と凹部61の上面との間に適度な隙間が形成された状態で,平坦面40をプローブピン10に接触させることが可能な構成にしても良い。このようにすると,平坦面40を確実に平面20aに接触させ,接合部材31の振動を平坦面40から確実に伝達させることができる。また,凹部22や凸部42の加工精度が厳しく要求されないので,加工が容易である。
【0041】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0042】
本発明者らは,実施の形態において説明した接合装置30を使用してプローブピン10と接続端子13との接合を行った場合における接合力(平面20bと平面13aとの間の接合力)と,従来の接合装置を使用してプローブピン10と接続端子13との接合を行った場合における接合力とを比較するため,以下のような実験1,2を行った。
【0043】
(実験1)
接合装置30を使用して,図11に示すような細長い略直方体状のプローブピン70と接続端子13とを接合した試作品を46個作成した。これらの試作品に用いたプローブピン70は,基端側に梁部20と同様の凹凸23を備えている。プローブピン70の先端側は,基端側を接続端子13の平面13aに接合した状態では,接続端子13の外側に延設された状態になる。かかる試作品を,接続端子13の上方にプローブピン70が向けられた状態で載置し,プローブピン70の先端を上方から押し,プローブピン70にたわみを与えた。このプローブピン70の押圧は,プローブピン70の先端下部がその下方に位置するコンタクタ11の外面11aに接触するまで(図11において二点鎖線で示した状態),または,プローブピン70の基端側が接続端子13から剥離するまで行った。こうして,各試作品について,プローブピン70が接続端子13から剥離するか否かを確認し,プローブピン70と接続端子13との間の接合力を比較した。その実験結果を表1に示す。なお,表1において,接合力の大きさは,ある基準値を1としたときの基準値に対する比率として示している(後述する表2においても同様)。表1に示されているように,46個の試作品中,3個の試作品において,プローブピン70と接続端子13との剥離が発生した。即ち,剥離の発生率は約6.5[%]であった。また,46個の試作品の接合力について,最小値(Min)は13,最大値(Max)は21,平均値(Ave)は約19.8,3σ(σ:標準偏差)は約4.1であった。
【0044】
【表1】

【0045】
(実験2)
従来の接合装置を使用して,プローブピン70と接続端子13とを接合した試作品を46個作成した。そして,各試作品に対し,実験1と同様に,接続端子13の上方にプローブピン70が向けられた状態で,プローブピン70の先端を押し,接合力を調べる試験を行った。その実験結果を表2に示す。表2に示されているように,46個の試作品中,43個の試作品において,プローブピン70の剥離が発生した。即ち,剥離の発生率は約93.5[%]であった。また,46個の試作品に対して加えられた最高荷重について,最小値(Min)は約0,最大値(Max)は19,平均値(Ave)は約9.5,3σは約15.0であった。
【0046】
【表2】

【0047】
以上の実験1,2の結果より,実施の形態にかかる接合装置30を使用して接合を行うことで,従来の接合装置を使用して接合を行う場合よりも,接続端子13からプローブピン70が剥離しにくくすることができ,また,プローブピン70の先端部に力が加えられても,より大きな力に抗して接合された状態を維持できることが確認された。従って,接合装置30を用いることで接合力を向上できることが確認された。
【0048】
また,本発明者らは,実施の形態において説明した接合装置30を使用してプローブピン10と接続端子13との接合を行った場合における位置精度(接続端子13に対するプローブピン10の接合位置の位置ずれの大きさ)と,従来の接合装置を使用してプローブピン10と接続端子13との接合を行った場合における位置精度とを比較するため,以下のような実験3,4を行った。
【0049】
(実験3)
接合装置30を使用して,プローブピン10と接続端子13とを接合した試作品を48個作成した。そして,各試作品について,接続端子13に対するプローブピン10の正規の位置からのずれ(位置ずれ)を,プローブピン10の幅方向(X軸方向)と長さ方向(Y軸方向)において計測した。位置ずれの計測は,画像認識技術を応用して行った。その結果を表3に示す。なお,表3において,位置ずれの大きさは,ある基準値を1としたときの基準値に対する比率として示している(後述する表4においても同様)。表3に示されているように,X軸方向における位置ずれの平均値(Ave)は約4.6,Y軸方向における位置ずれの平均値は約48.9であった。また,X軸方向における位置ずれの3σは約7.4,Y軸方向における位置ずれの3σは約31.1であった。
【0050】
【表3】

【0051】
(実験4)
従来の接合装置を使用して,プローブピン10と接続端子13とを接合した試作品を48個作成した。そして,各試作品について,実験3と同様に,接続端子13に対するプローブピン10の位置ずれをX軸方向とY軸方向において計測した。位置ずれの計測は,画像認識技術を応用して行った。その結果を表4に示す。表4に示されているように,X軸方向における位置ずれの平均値は約8.3,Y軸方向における位置ずれの平均値は約51.3であった。また,X軸方向における位置ずれの3σは約27.7,Y軸方向における位置ずれの3σは約146.8であった。
【0052】
【表4】

【0053】
以上の実験3,4の結果より,接合装置30を使用して接合を行うと,従来の接合装置を使用して接合を行う場合よりも,位置ずれの大きさが小さくなり,3σについては,X軸方向及びY軸方向においてそれぞれ約1/3以下になり,位置ずれのばらつきが小さくなることがわかった。従って,接合装置30を用いることで,接合の位置精度が効果的に改善されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は,電子部品等の接合装置及び接合方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】プローブ装置の構成の概略を示す側面図である。
【図2】プローブピンと接続端子の構成を拡大して示す斜視図である。
【図3】接合装置の構成の概略を示す側面図である。
【図4】接合部材の先端部を示す斜視図である。
【図5】プローブピンを接続端子に接合する状態を示す説明図である。
【図6】接触面積及び接合面積を示す説明図である。
【図7】接合部材に設けた凸部の段差をプローブピンに設けた凹部の深さより小さくした実施形態にかかる説明図である。
【図8】接合部材に設けた凸部の断面形状を略台形にした実施形態にかかる説明図である。
【図9】接合部材に保持部分としての凹部を設け,プローブピンに被保持部分としての凸部を設けた実施形態にかかる説明図である。
【図10】接合部材に設けた凹部の深さをプローブピンに設けた凸部の段差より大きくした実施形態にかかる説明図である。
【図11】実験1,2における接続端子及びプローブピンの位置関係,及び,プローブピンを変形させる状態を説明する説明図である。
【図12】従来の接合部材によってプローブピンを接続端子に接合する状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 プローブ装置
10 プローブピン
13 接続端子
20 梁部
20a 平面
22 凹部
23 凹凸
30 接合装置
31 接合部材
40 平坦面
42 凸部
43 凹凸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の被接合体の上面に載置された第二の被接合体の上面に,接合部材を接触させ,前記接合部材によって前記第二の被接合体を超音波振動させることにより,前記第一の被接合体と前記第二の被接合体とを接合させる接合装置であって,
前記接合部材に,前記第二の被接合体に接触する接触部分,及び,前記第二の被接合体を保持する保持部分が設けられていることを特徴とする,接合装置。
【請求項2】
前記接合部材に,前記第二の被接合体に設けられた凹凸とかみ合う凹凸が設けられ,
前記接合部材の凹凸によって,前記接触部分及び前記保持部分が構成されていることを特徴とする,請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記接合部材の凹凸は,前記接合部材の先端部に設けられた平坦面と,前記平坦面から突出した凸部とによって構成され,
前記平坦面が前記接触部分であり,
前記凸部が前記保持部分であることを特徴とする,請求項2に記載の接合装置。
【請求項4】
前記凸部は,前記平坦面の中央部に設けられていることを特徴とする,請求項3に記載の接合装置。
【請求項5】
前記凸部は複数設けられていることを特徴とする,請求項3に記載の接合装置。
【請求項6】
前記接合部材の凹凸は,前記接合部材の先端部に設けられた平坦面と,前記平坦面に設けられた凹部とによって構成され,
前記平坦面が前記接触部分であり,
前記凹部が前記保持部分であることを特徴とする,請求項2に記載の接合装置。
【請求項7】
前記凹部は,前記平坦面の中央部に設けられていることを特徴とする,請求項6に記載の接合装置。
【請求項8】
前記凹部は複数設けられていることを特徴とする,請求項6に記載の接合装置。
【請求項9】
前記接合部材の凹凸は,前記接合部材の超音波振動の振動方向に沿って交互に並べて設けられていることを特徴とする,請求項2〜8のいずれかに記載の接合装置。
【請求項10】
前記第一の被接合体は,被検査体の電気的特性を検査するプローブカードにおいて被検査体と対向させられる面に設けられる電極であり,
前記第二の被接合体は,前記被検査体に接触させるためのプローブピンであることを特徴とする,請求項1〜9のいずれかに記載の接合装置。
【請求項11】
第一の被接合体と第二の被接合体とを超音波振動により溶着させて接合させる接合方法であって,
前記第一の被接合体の上面に第二の被接合体を載置し,
接合部材に設けられた保持部分によって前記第二の被接合体の上面を保持しながら,前記接合部材に設けられた接触部分を前記第二の被接合体に押し付け,
前記接合部材を超音波振動させることにより,前記第二の被接合体を超音波振動させ,前記第一の被接合体と第二の被接合体とを溶着させることを特徴とする,接合方法。
【請求項12】
前記接合部材に設けられた凹凸を,前記第二の被接合体に設けられた凹凸にかみ合わせた状態で,前記接合部材を超音波振動させることを特徴とする,請求項11に記載の接合方法。
【請求項13】
前記第一の被接合体は,被検査体の電気的特性を検査するプローブカードにおいて被検査体と対向させられる面に設けられた電極であり,
前記第二の被接合体は,前記被検査体に接触させるためのプローブピンであることを特徴とする,請求項11又は12に記載の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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