説明

接合部位の検査方法、及び接合部位の検査装置

【課題】接合部位の超音波による検査を精度良く行え、しかも探触子の配置部位の制約が少ない接合部位の検査方法を提供する。
【解決手段】超音波探傷装置の探触子40から超音波をインサート14の第2のフランジ部14Bと部品12の天板部12Bとの接着面に向けて発射し、接着面で反射した超音波の反射波を受信して1回目の超音波探傷検査を実施して接着面の状態を画像として得る。次に、インサート14に負荷を与えてから負荷を除去し、2回目の超音波探傷検査を実施して接着面の状態を画像として得る。接着不良が有った場合、接着面に対して剥離する方向の負荷を掛けることで、接着不良個所に隙間を生じさせることができ、正しく接着している部位と隙間が生じている部位とで反射波に差異が生じ、画像から接着不良個所を特定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合部位を超音波を用いて検査する接合部位の検査方法、及び接合部位の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FRP構造体に部品を取り付ける場合、ネジ部を持つ金属インサートをFRP構造体内部に接着し、金属インサートにボルトを用いて部品を固定する構造がある。
このような構造では、取付部の強度にとって接着は極めて重要である。
【0003】
その接着状態をFRP構造体を成形後に検査する方法として、超音波探傷法を用いることが考えられている。
超音波探傷法としては、反射波を用いて、その振幅、位相にて判断する方法と、透過波を用いる方法がある。
例えば、特許文献1には、反射波を用いて金属と複合材料との接着界面を検査する方法が開示されている。
また、特許文献2には、透過波を用いて接着部を検査する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平11−201950号公報
【特許文献2】特開平08−278291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、反射波を用いて検査する場合、FRPと金属インサートが剥れているにもかかわらず密着している場合、接着状態は良好である、という間違った判断をしてしまう問題がある。
【0005】
一方、透過波を用いて検査する場合、インサート形状によっては、中間に空隙があると透過波が使えないケースがある。また、透過波を用いて検査する場合、超音波発射用探触子と超音波受信用探触子との間に検査対象を配置しなければならず、検査対象が自動車等の場合、超音波発射用探触子の反対側のスペースの制約のため、超音波受信用探触子を超音波発射用探触子とは反対側の部分に当てられないケースがある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、接合部位の超音波による検査を精度良く行うことのできる接合部位の検査方法、及び接合部位に検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、第1の部材と第2の部材との接合面の接合状態を超音波を用いて検査する接合部位の検査方法であって、前記接合面に対して前記第1の部材と前記第2の部材とが離間する方向の負荷を掛ける負荷工程と、負荷の掛かった前記接合面に向けて超音波を発射し、負荷の掛かった前記接合面で反射した前記超音波の反射波を受信することで前記接合面の接合状態を検査する検査工程と、を備える。
【0008】
次に、請求項1に記載の接合部位の検査方法を説明する。
請求項1に記載の接合部位の検査方法では、先ず、負荷工程で、接合面に対して第1の部材と第2の部材とが離間する方向の負荷を掛ける。
【0009】
次に、検査工程にて、負荷の掛かった接合面に向けて超音波を発射し、負荷の掛かった接合面で反射した超音波の反射波を受信することで接合面の接合状態を検査する。
【0010】
接合面において接合不良個所があった場合には、負荷を掛けることで第1の部材と第2の部材とを接合不良個所で離間させて隙間を生じさせることができ、正しく接合している部位と隙間の形成された接合不良個所とで、反射波の振幅や位相が明確に異なり、超音波の反射波を用いて接合状態を検査するに当たり接合不良個所を確実に特定することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、第1の部材と第2の部材との接合面の接合状態を超音波を用いて検査する接合部位の検査方法であって、負荷の掛かっていない前記接合面に向けて超音波を発射し、前記接合面で反射した前記超音波の反射波を受信することで前記接合面の接合状態を検査する第1の工程と、前記接合面に対して前記第1の部材と前記第2の部材とが離間する方向の負荷を掛け、負荷の掛かった前記接合面に向けて超音波を発射し、負荷の掛かった前記接合面で反射した前記超音波の反射波を受信することで負荷の掛かった前記接合面の接合状態を検査する第2の工程と、前記第1の検査工程の検査結果と前記第2の検査工程の検査結果とを比較する第3の工程と、を備える。
【0012】
次に、請求項3に記載の接合部位の検査方法を説明する。
請求項3に記載の接合部位の検査方法では、先ず、第1の工程で、負荷の掛かっていない接合面に向けて超音波を発射し、接合面で反射した超音波の反射波を受信することで負荷の掛かっていない接合面の接合状態を検査する。
【0013】
次の第2の工程では、接合面に対して第1の部材と第2の部材とが離間する方向の負荷を掛け、負荷の掛かった接合面に向けて超音波を発射し、負荷の掛かった接合面で反射した超音波の反射波を受信することで負荷の掛かった接合面の接合状態を検査する。
【0014】
次の第3の工程では、第1の検査工程の検査結果と前記第2の検査工程の検査結果とを比較する。第1の検査工程の検査結果と第2の検査工程の検査結果との間に差異が生じていれば、差異が生じている部位の接合面は接合不良であると判断できる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、第1の部材と第2の部材との接合面の接合状態を超音波を用いて検査する接合部位の検査方法であって、前記接合面に対して前記第1の部材と前記第2の部材とが離間する方向の負荷を掛ける負荷工程と、負荷を除去した後の前記接合面に向けて超音波を発射し、前記接合面で反射した前記超音波の反射波を受信することで前記接合面の接合状態を検査する検査工程と、を備える。
【0016】
次に、請求項3に記載の接合部位の検査方法を説明する。
請求項3に記載の接合部位の検査方法では、先ず、負荷工程で、接合面に対して第1の部材と第2の部材とが離間する方向の負荷を掛ける。ここで、接合面において第1の部材と第2の部材とが適切に接合されている場合には、第1の部材と第2の部材とが剥離することはないが、例えば、密着しているが、実際には接合していない場合、接合強度が部分的劣っている場合等の接合不良がある場合には、負荷を掛けることで、接合不良個所が離間して隙間が生ずる。部材が弾性変形して元の状態に戻らない場合には、負荷を除去した後も接合不良個所の隙間があいたままとなるので、接合面で反射した超音波の反射波を受信して接合面の接合状態を検査すれば、隙間のあいた部分と正しく接合している部分との差異が生ずるので、差異が生じている部位の接合面は接合不良であると判断できる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の接合部位の検査方法において、前記接合面に対して垂直方向に負荷を掛ける。
【0018】
次に、請求項4に記載の接合部位の検査方法を説明する。
接合面に対して垂直方向に負荷を掛けることで、第1の部材と第2の部材とを接合面に対して垂直方向に離間させて第1の部材と第2の部材との接合不良個所において効率的に隙間を生じさせることができる。なお、接合面に対して平行に負荷を掛けた場合、第1の部材と第2の部材との接合不良個所において、隙間を生じさせることができず、接合不良個所を判断できなくなる場合がある。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の接合部位の検査方法において、前記第1の部材と前記第2の部材とは接着剤で接合され、負荷の大きさは、前記接着剤の単位面積当たりの接着強度と接着面積との積の値よりも小さい、ことを特徴とする。
【0020】
次に、請求項5に記載の接合部位の検査方法を説明する。
請求項5に記載の接合部位の検査方法では、第1の部材と前記第2の部材とを接着剤で接合したものが検査対象となっており、接着面(接合面)に付与する負荷の大きさは、接着剤の単位面積当たりの接着強度と接着面積との積の値よりも小さく設定する。
【0021】
仮に、負荷の大きさが、接着剤の単位面積当たりの接着強度と接着面積との積の値以上になると、負荷を掛けたことで、適正に接着していた部分で剥離が生じ、第1の部材と第2の部材とが分離してしまう虞がある。
【0022】
したがって、接着面に付与する負荷の大きさは、予め実験等を行い、接着剤の単位面積当たりの接着強度と接着面積との積の値よりも小さく設定することが好ましい。
【0023】
請求項6に記載の接合部位の検査装置は、第1の部材と第2の部材とが接合された検査対象に対して、前記第1の部材と前記第2の部材とが離間する方向に負荷を掛ける負荷装置と、前記第1の部材と第2の部材との接合面に向けて超音波を発射し、前記接合面で反射した前記超音波の反射波を受信することで前記接合面の接合状態を検査する超音波探傷装置と、を備えている。
【0024】
次に、請求項6に記載の接合部位の検査装置の作用を説明する。
請求項6に記載の接合部位の検査装置は、負荷装置、及び超音波探傷装置を備えており、負荷装置は、第1の部材と第2の部材とが接合された検査対象に対して、第1の部材と第2の部材とが離間する方向に負荷を掛けることができ、超音波探傷装置は、第1の部材と第2の部材との接合面に向けて超音波を発射し、接合面で反射した超音波の反射波を受信することで接合面の接合状態を検査することができる。
【0025】
したがって、請求項6に記載の接合部位の検査装置は、負荷を掛けていない状態の接合面の接合状態を超音波で検査したり、負荷を掛けた状態の接合面の接合状態を超音波で検査したり、負荷を一旦掛けた後に負荷を取り除いてから接合面の接合状態を超音波で検査すること等ができる。
【0026】
例えば、接合面において第1の部材と第2の部材とが密着しているものの接合(接着)不良を生じている場合には、負荷を掛けることで、接合不良個所において第1の部材と第2の部材とを離間させて隙間を生じさせることができ、正しく接合している部位と隙間の形成された接合不良個所とで、反射波の振幅や位相が明確に異なり、超音波の反射波を用いて接合状態を検査するに当たり、接合不良個所を確実に特定することができるようになる。
【0027】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の接合部位の検査装置において、前記負荷装置は、接合面に対して垂直方向に負荷を掛ける。
【0028】
次に、請求項7に記載の接合部位の検査装置の作用を説明する。
負荷装置は、接合面に対して垂直方向に負荷を掛けることができ、接合面において接合不良個所があった場合には、第1の部材と第2の部材とが接合面に対して垂直方向に離間させて効率的に隙間を生じさせることができる。なお、接合面に対して平行に負荷を掛ける場合、第1の部材と第2の部材との接合不良個所において、隙間を生じさせることができず、接合不良個所を判断できなくなる場合がある。
【0029】
請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載の接合部位の検査装置において、前記負荷装置は、前記負荷の大きさが調整可能とされている。
【0030】
次に、請求項8に記載の接合部位の検査装置の作用を説明する。
負荷装置の調整によって、接合面に作用させる負荷の大きさを調整することができる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、請求項6〜請求項8の何れか1項に記載の接合部位の検査装置において、前記負荷装置によって負荷を掛けながら、前記超音波探傷装置によって前記接合面の状態を検査する。
【0032】
次に、請求項9に記載の接合部位の検査装置の作用を説明する。
請求項9に記載の接合部位の検査装置では、負荷装置と超音波探傷装置を同時に作動させることができ、これにより、負荷装置によって負荷を掛けながら、超音波探傷装置によって接合面の状態を検査することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように本発明の接合部位の検査装置によれば、接合部位の超音波による検査を精度良く行え、しかも探触子の配置部位の制約が少ない。
【0034】
また、本発明の接合部位の検査方法によれば、接合部位の超音波による検査を精度良く行え、しかも探触子の配置部位の制約が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(検査対象)
図1には、接合部位の検査方法を行うための検査対象としての構造体10が断面図にて示されている。
図1に示すように、本実施形態の構造体10は、角パイプ状に形成された部品12の内部に、インサート14が配置されているものである。
【0036】
本実施形態では、部品12の材質が例えばCFRPであり、インサート14の材質が例えばアルミニューム合金等の金属である。なお、部品12、及びインサート14の材質は、上記以外の材質の場合もある。
【0037】
インサート14は、断面円形の柱状に形成され、軸方向中央部分が略一定径に形成され、下側には部品12の底板部12Aの内面に接触する第1のフランジ部14A、上側には天板部12Bの内面に接触する第2のフランジ部14B、また、第2のフランジ部14Bの中央には天板部12Bに形成された孔16を貫通する突起部18が形成され、軸心には、突起部側から第1のフランジ部14Aに向けてネジ孔20が形成されている。
【0038】
第1のフランジ部14Aと底板部12A、及び第2のフランジ部14Bと天板部12Bとは各々接着剤19で接着されている。
【0039】
(接合部位検査装置)
次に、図2〜図4にしたがって、接合部位の検査を行うための接合部位検査装置22の概略構成を説明する。
接合部位検査装置22は、検査対象を搭載する基台24と、検査対象に負荷を与える負荷装置26、超音波探傷装置28等から構成されている。
【0040】
本実施形態の負荷装置26は、基台24の上面に取り付けられる1対のレール30、レール30に対して移動可能に支持されるベース32、ベース32に立設される支柱34、支柱34の上部に鉛直方向に取り付けられるエアシリンダー36、エアシリンダー36に圧縮空気を供給するエア供給装置38を含んで構成されている。なお、エア供給装置38は、エアコンプレッサー、圧力調整弁、圧力計等から構成されている。
【0041】
検査対象に負荷を与える場合には、エア供給装置38で所望の圧力に調整された圧縮空気をエアシリンダー36に供給する。なお、検査対象に与える負荷の大きさは、エアシリンダー36のピストンの面積とピストンが受ける圧力とから決まる。
【0042】
超音波探傷装置28は、超音波の送受信を行う探触子40、モニタ42、超音波の反射波(エコー)の波形信号を解析して検査部位の画像をモニタ42に表示させる超音波探傷装置本体43、探触子40を3次元に移動可能な探触子移動装置44等を備えており、超音波検査に一般的に用いられている公知の構成のものであり、例えば、超音波探傷反射波画像(反射波の振幅、位相の相対関係を色で表した画像)、即ち検査対象部位がカラーで表示され、適正に接着している部位と、接着されていない部位(隙間が形成されている)部位との色が異なって表示できる様に構成されているものである。
【0043】
探触子移動装置44は、基台24の両端側に配置される1対のフレーム46、フレーム46の上端に配置される第1のレール48、第1のレール48に沿って移動可能に支持されたサブフレーム50、サブフレーム50に内蔵されサブフレーム50を移動させる駆動装置(図示せず)、サブフレーム50の上部に配置され、前記第1のレール48とは直交する方向に延びる第2のレール52、第2のレール52に沿って移動可能に支持される移動ベース54、移動ベース54に内蔵され移動ベース54を移動させる駆動装置(図示せず)、移動ベース54に取り付けられて探触子40を上下方向に移動する昇降装置56、昇降装置56及び駆動装置を制御する制御装置58等を備えている。
【0044】
このため、制御装置58に予め探触子40の移動軌跡を記憶させておくことで、制御装置58は昇降装置56及び駆動装置を駆動して探触子40を自動で移動させることができる。
【0045】
(検査方法その1)
次に、検査対象である構造体10の検査方法の一例を以下に説明する。
本実施形態では、第2のフランジ部14Bと天板部12Bとの接着部位を検査する例を説明する。
【0046】
先ず、図1(A)に示すように、基台24の上に、スペーサ60を介して構造体10を載せる。このとき、エアシリンダー36のピストンロッド62の直下に突起部18が位置するように、負荷装置26、及び構造体10を位置決めすると共に、スペーサ60はインサート14から離れるように、構造体10の底板部12Aの両端部直下に位置するように配置する。
【0047】
次に、天板部12Bの上面に超音波探傷装置28の探触子40を当てて周方向に移動させながら、超音波を第2のフランジ部14Bと天板部12Bとの接着面に向けて発射し、接着面で反射した超音波の反射波を受信する。これにより、超音波探傷装置28のモニタ42に第2のフランジ部14Bと天板部12Bとの接着面の状況が画像として写し出される。
【0048】
ここで、第2のフランジ部14Bと天板部12Bとが全面的に密着していれば、接着面のどの部位においても反射波に差異を生じることは無く、モニタ42に映し出された接着部位の画像からは接着不良個所を判断することは出来ない。
【0049】
例えば、モニタ42には、図5の1回目の画像aが示すように、接着個所が一様な色(本願明細書では濃度で図示)となったリング状の接着個所が映し出される。
【0050】
次に、図1(B)に示すように、インサート14のネジ孔20にボルト状の冶具64を取り付け、エアシリンダー36の上部気室36Aに予め設定した圧力の圧縮空気を流入させ、下降させたピストンロッド62を冶具64の上端に当ててインサート14を下方に押圧する。インサート14を下方に押圧することで、構造体10の底板部12Aはインサート14から負荷を受けて下方に湾曲するように撓み(撓みは微小であるため、図1(B)では撓みは図示せず。)、インサート14は底板部12Aの撓みに伴って若干量下方に変位する。一方、インサート14に接着されている天板部12Bは、インサート14の第2のフランジ部14Bが接着されているので、インサート14の変位に伴って第2のフランジ部14Bとインサート14との接着面に、垂直方向の負荷が作用することになる。
【0051】
ここで、第2のフランジ部14Bとインサート14との接着面において、密着しているものの実際には接着していない場合、接着しているものの接着強度が部分的に極端に低下している部位がある場合等の接着不良が有った場合、接着面に対して垂直方向の負荷を掛けることで、接着不良個所において、第2のフランジ部14Bとインサート14とを離間させて隙間(空隙)を生じさせることができる。
【0052】
本実施形態では、このようにして接着面に負荷を掛けた後、負荷をとって無負荷状態とし、1回目と同様に、天板部12Bの上面に超音波探傷装置28の探触子40を当てて第2のフランジ部14Bと天板部12Bとの接着面の超音波探傷検査を行う。
【0053】
再び、モニタ42には、第2のフランジ部14Bと天板部12Bとの接着面の状況が画像として写し出されるが、接着面に接着不良個所があった場合には、前述した様に接着不良個所において隙間が生じるので、正しく接着している部位と隙間が生じている部位とで反射波の振幅や位相に差異が生じ、モニタ42に映し出された画像から接着不良個所を特定することができる。例えば、モニタ42には、図5の2日目の下側の画像bに示すように、リング状の接着個所が映し出されるが、部分的に色が変化しており、色の変化している部位(図において、濃度の濃い部位)が接着不良個所であることが一目瞭然に分かる。
【0054】
一方、負荷を掛けた後、図5cに示すように、接着個所で色の変化が無い場合には、接着個所に隙間は生じておらず、接着不良は無いことが一目瞭然に分かる。
【0055】
なお、負荷の大きさは、構造体10を塑性変形させるような大きな負荷としないことは勿論であり(即ち、弾性限度内の変形のみ許容)、接着剤の単位面積当たりの接着強度と、接着面の接着面積とを掛け合わせた値よりも小さく設定することも勿論である。
【0056】
負荷が大きすぎれば、構造体10が塑性(永久)変形したり、正しく接着されていた部位の接着破壊を生じさせ、構造体10が使用出来なくなる。
【0057】
また、探触子40を移動する際に、超音波探傷装置28と負荷装置26とが干渉する場合には、移動可能に設けている負荷装置26を超音波探傷装置28から離せば良い。
本実施形態では、反射波を用いて接着面の検査を実施する必要があるため、探触子40と接着面との間に、空隙が存在しないように構造体10と探触子40との位置関係を決めて超音波探傷検査を行うようにしなければならないことは言うまでも無い。
【0058】
(検査方法その2)
上記検査方法その1では、1回目の超音波探傷検査と2回目の超音波探傷検査との間に、接着面に対して一旦負荷を掛けてから負荷を取り除いたが、本検査方法その2では、2回目の超音波探傷検査中にも継続して負荷を掛ける。
【0059】
検査方法その1は、例えば、構造体10の形状等により、負荷を掛けた状態では負荷装置26のピストンロッド等が探触子40と干渉する等して、超音波探傷検査が困難な場合に有効であり、検査方法その2では、負荷を掛けて離間していた部分が負荷を取り除くことで再び密着してしまうような場合に有効である。
【0060】
(検査方法その3)
本実施形態では、超音波探傷検査を行う前にインサート14に負荷を掛け、超音波探傷検査を行う際には、負荷と取り、無負荷状態で超音波探傷検査を行う。
【0061】
この方法は、前述した検査方法その1と同様に、構造体10の形状等により、負荷を掛けた状態では負荷装置26のピストンロッド等が探触子40と干渉する等して、超音波探傷検査が困難で、かつ負荷付与前に、無負荷状態の構造体10の超音波探傷検査を行う必要が無い場合に有効である。
【0062】
(検査方法その4)
本実施形態では、構造体10の検査に際し、最初からインサート14に負荷を掛けた状態で超音波探傷検査を行う。本実施形態の検査方法は、無負荷で構造体10の超音波探傷検査を行う必要の無い場合に有効である。
【0063】
[その他の実施形態]
上記検査方法では、インサート14に対して鉛直方向(軸方向)の負荷を掛けて接着面に剥離方向の負荷を付与したが、接着面に対して剥離方向の負荷が付与できれば、例えば、図1(B)の矢印Aで示すように、インサート14に対して水平方向(軸方向とは交差する方向)の負荷を掛ける等、負荷を掛ける方向は前述した実施形態のものに限らない。また、検査対象によっては、負荷として捩りを加えるようにしても良い。
【0064】
上記実施形態では、第2のフランジ部14Bと天板部12Bとの接着部位を検査する方法を説明したが、第1のフランジ部14Aと底板部12Aとの接着部位を検査する場合には、構造体10を上下に反転し、冶具64を下方に移動できるようにピストンロッド62と冶具64を連結すれば良い。下方に向けた冶具64を下方に移動することで、第1のフランジ部14Aと底板部12Aとを剥離する方向の負荷を掛けることができる。
【0065】
上記実施形態では、インサート14に対して探触子40を直接接触させたが、従来知られている様に、水、オイル等の液体を入れた水槽に構造体10を浸漬し、液体を介して超音波を構造体10に向けて発射して超音波探傷検査を行っても良い。
【0066】
上記実施形態では、角パイプ状に形成された部品12の内部にインサート14を接着した構造体10を検査する方法を説明したが、検査対象は、このような構造体10に限るものではなく、また、検査部位は、接着に限らず、2つの部材が接合されている部位であれば良く、例えば、インジェクション成形等において、合成樹脂中に金属部品を埋設し、接着剤を用いずに合成樹脂と金属部品とを一体的に固着させた構成のもの、摩擦熱によって2つの部材を固着(接合面を溶融)させた構成のもの、溶接、ロー付け等によって2つの部材を固着させたもの等であっても検査対象となる。
【0067】
上記実施形態の接合部位検査装置22では、探触子40を自動で移動する探触子移動装置44を設けていたが、探触子移動装置44は無くても良く、探触子移動装置44が無い場合には、作業員が探触子40を手で移動すれば良い。また、探触子40は、超音波をスキャンする電子スキャン方式のものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】(A)〜(C)は、構造体の検査手順を示す断面図である。
【図2】検査装置の平面図である。
【図3】図2に示す検査装置のA−A線断面図である。
【図4】図2に示す検査装置のB−B線断面図である(超音波探傷装置は図示省略) 。
【図5】超音波探傷検査結果を示す画像の一例である。
【符号の説明】
【0069】
10 構造体(検査対象)
12 部品(第1の部材)
14 インサート(第2の部材)
19 接着剤
22 接合部位検査装置
26 負荷装置
28 超音波探傷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材との接合面の接合状態を超音波を用いて検査する接合部位の検査方法であって、
前記接合面に対して前記第1の部材と前記第2の部材とが離間する方向の負荷を掛ける負荷工程と、
負荷の掛かった前記接合面に向けて超音波を発射し、負荷の掛かった前記接合面で反射した前記超音波の反射波を受信することで前記接合面の接合状態を検査する検査工程と、
を備える接合部位の検査方法。
【請求項2】
第1の部材と第2の部材との接合面の接合状態を超音波を用いて検査する接合部位の検査方法であって、
負荷の掛かっていない前記接合面に向けて超音波を発射し、前記接合面で反射した前記超音波の反射波を受信することで前記接合面の接合状態を検査する第1の工程と、
前記接合面に対して前記第1の部材と前記第2の部材とが離間する方向の負荷を掛け、負荷の掛かった前記接合面に向けて超音波を発射し、負荷の掛かった前記接合面で反射した前記超音波の反射波を受信することで負荷の掛かった前記接合面の接合状態を検査する第2の工程と、
前記第1の検査工程の検査結果と前記第2の検査工程の検査結果とを比較する第3の工程と、
を備える接合部位の検査方法。
【請求項3】
第1の部材と第2の部材との接合面の接合状態を超音波を用いて検査する接合部位の検査方法であって、
前記接合面に対して前記第1の部材と前記第2の部材とが離間する方向の負荷を掛ける負荷工程と、
負荷を除去した後の前記接合面に向けて超音波を発射し、前記接合面で反射した前記超音波の反射波を受信することで前記接合面の接合状態を検査する検査工程と、
を備える接合部位の検査方法。
【請求項4】
前記接合面に対して垂直方向に負荷を掛ける、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の接合部位の検査方法。
【請求項5】
前記第1の部材と前記第2の部材とは接着剤で接合され、
負荷の大きさは、前記接着剤の単位面積当たりの接着強度と接着面積との積の値よりも小さい、ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の接合部位の検査方法。
【請求項6】
第1の部材と第2の部材とが接合された検査対象に対して、前記第1の部材と前記第2の部材とが離間する方向に負荷を掛ける負荷装置と、
前記第1の部材と第2の部材との接合面に向けて超音波を発射し、前記接合面で反射した前記超音波の反射波を受信することで前記接合面の接合状態を検査する超音波探傷装置と、
を備えた接合部位の検査装置。
【請求項7】
前記負荷装置は、接合面に対して垂直方向に負荷を掛ける、請求項6に記載の接合部位の検査装置。
【請求項8】
前記負荷装置は、前記負荷の大きさが調整可能とされている、請求項6または請求項7に記載の接合部位の検査装置。
【請求項9】
前記負荷装置によって負荷を掛けながら、前記超音波探傷装置によって前記接合面の状態を検査する請求項6〜請求項8の何れか1項に記載の接合部位の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−117252(P2010−117252A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291053(P2008−291053)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000235532)非破壊検査株式会社 (49)
【Fターム(参考)】