説明

接点接合部の検査方法

【課題】 接点接合部の接合状態を、比較的容易に、かつより精度良く検査することができる接点接合部の検査方法を得る。
【解決手段】 端子板2上に電気接点3を接合した接点接合部4の検査方法であって、電気接点3の他の接点との接触面3a、または端子板2の接点接合部4と反対側となる端子板2の裏面2bを加熱する加熱ステップと、電気接点3または端子板2の温度を測定する温度測定ステップと、を備え、加熱後における電気接点3または端子板2の温度の経時変化に基づいて接点接合部4の接合状態の良否判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉器や遮断器の電気接触子等で端子板上に電気接点を接合する接点接合部の接合状態の良否判定を行う検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉器、遮断器等で用いられる電気接触子は、端子板上に電気接点を接合することで構成される。
【0003】
端子板と電気接点との接合は、典型的には、銀ロー付けか、あるいはダイレクトボンディングによって行われるが、いずれの方法でも、端子板上に接点を重ね合わせ、その当接部を加熱することで、端子板と電気接点とを密着させるようにしている。すなわち、銀ロー付けは、接合部に端子板および電気接点より低融点のロー材を挟み込み、加熱によって当該ロー材を溶融させて接合する方法であり、ダイレクトボンディングは、端子板と電気接点とを重ね合わせて加熱することにより、それらの接合部分の一部を溶融させて接合する方法である。
【0004】
これら接合方法では、加熱量の過不足によって、接合部分に空孔(巣)が生じる場合があり、品質管理上、空孔の有無を検査することは極めて重要である。こうした空孔の検査方法としては、次のようなものがある。
【0005】
(1)超音波探傷による方法 空孔で超音波が反射することを利用し、超音波の反射量を測定することで、空孔の多少を判別する方法である。
【0006】
(2)溶出状態の観察による方法 接合部周辺でのロー材等の溶出状態を観察することで、接合部における空孔の状態を推定する方法である。
【0007】
(3)電気抵抗を測定する方法 空孔が多いと接合部の電気抵抗が高くなることを利用し、接合部の電気抵抗を測定することで、接合部における空孔の多少を判別する方法である(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−89825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の検査方法では、それぞれ、以下のような問題があった。
【0009】
(1)超音波探傷による方法 端子板および電気接点は、数ミリメートル程度の厚みで構成される場合があるが、このように対象物が薄い場合、超音波の入射波と反射波との重なりを防止するために、超音波の周波数を10[MHz]程度以上とする必要がある。しかしながら、そのような周波数の高い超音波は、空気中での減衰が大きくなるため、例えば水中での検査が必要となり、非常に手間がかかることになる。
【0010】
(2)溶出状態の観察による方法 カメラから取り込んだ画像情報を画像処理して、自動判別するなどすれば、短時間のうちに容易に判別することが可能となるが、そもそも、溶出した部分の状態と接合部の状態との相関が低い場合もあり、検査精度が低くなってしまうおそれがある。
【0011】
(3)電気抵抗を測定する方法 端子板と電気接点との接合部の電気抵抗は極めて小さい上、空孔によって電気抵抗が増大したとしても、その増分も極めて小さい値となることから、測定が難しく、検査精度が低くなってしまうおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、接点接合部の接合状態を、比較的容易に、かつより精度良く検査することができる接点接合部の検査方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明にあっては、端子板上に電気接点を接合した接点接合部の検査方法であって、電気接点の他の接点との接触面、または端子板の接点接合部と反対側となる当該端子板の裏面を加熱する加熱ステップと、電気接点または端子板の温度を測定する温度測定ステップと、を備え、加熱後における電気接点または端子板の温度の経時変化に基づいて接点接合部の接合状態の良否判定を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明にあっては、上記加熱ステップでは、端子板の裏面を加熱することを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明にあっては、測定された温度の経時変化を指数関数で近似し、近似した指数関数の係数によって接合状態の良否判定を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明にあっては、上記温度測定ステップでは、略真空雰囲気下で温度の測定を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明にあっては、上記温度測定ステップでは、赤外線の強度を測定することにより温度の測定を行うことを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明にあっては、上記加熱ステップでは、レーザを照射することにより加熱を行うことを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明にあっては、上記加熱ステップでは、誘導加熱により加熱を行うことを特徴とする。
【0020】
請求項8の発明にあっては、上記加熱ステップでは、アーク電極と電気接点または端子板との間でアーク放電を生じさせることにより加熱を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、加熱後の温度の経時変化を測定し、その結果によって良否判定を行うため、従来の方法に比べてより容易にかつより精度良く接合状態の良否判定を行うことができる。
【0022】
請求項2の発明によれば、加熱による電気接点の接触面に対するダメージを抑制することができる。
【0023】
請求項3の発明によれば、より容易にかつより迅速に接合状態の良否判定を行うことができる。また、接合状態に対応するパラメータを数値化できる分、接合状態の程度を把握しやすくなるという利点がある。
【0024】
請求項4の発明によれば、加熱した部分から周囲雰囲気(気体)への熱伝達が抑制される分、当該熱伝達による判定精度の低下を抑制することができる。
【0025】
請求項5の発明によれば、非接触で温度の測定を行うことができるため、熱電対等を電気接点等に直接当接させる測定方式に比べて、電気接点の表面に対するダメージを抑制することができる。また、より容易にかつより迅速に温度の測定を行うことができる。
【0026】
請求項6の発明によれば、非接触で加熱を行うことができるため、ヒータ等を電気接点等に直接当接させる測定方式に比べて、電気接点の表面に対するダメージを抑制することができる。また、極めて短時間で加熱することができる分、検査に要する時間を短縮することができるという利点がある。
【0027】
請求項7の発明によれば、より迅速に加熱することができる上、加熱時のエネルギロスが比較的小さい分、加熱に要するエネルギ消費量を低く抑えることができるという利点がある。
【0028】
請求項8の発明によれば、非接触で加熱を行うことができるため、ヒータ等を電気接点等に直接当接させる測定方式に比べて、電気接点の表面に対するダメージを抑制することができる上、表面等に付着した汚れを除去することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(第1実施形態)図1は、接点接合部の検査方法の検査対象としての電気接触子を示す図であって、(a)は斜視図、また(b)は側面図、図2は、本実施形態にかかる接点接合部の検査方法の各ステップを示す側面図であって、(a)は、加熱前の状態を示す図、(b)は、加熱中の状態を示す図、(c)は、温度測定中の状態を示す図、図3は、測定温度の経時変化を示す図、図4は、加熱後の熱の移動を示す説明図であって、(a)は空孔が少ない場合を示す図、(b)は空孔が多い場合を示す図である。
【0031】
本実施形態にかかる接点接合部4の検査方法は、端子板2上に、当該端子板2より小型で薄い板状の電気接点3を接合してなる電気接触子1について、それらの接合部(接点接合部4)における接合状態を検査するものである。端子板2および電気接点3は、相異なる材質(導電性の金属材料)で、銀ロー付けあるいはダイレクトボンディングによって相互に接合されている。
【0032】
本実施形態では、電気接点3の他の接点との接触面3aを加熱し、当該接触面3aにおける温度の経時変化を測定することで、接点接合部4における接合状態の良否判定を行う。具体的には、例えば、図2の(a)および(b)に示すように、まずは、白金等で構成された加熱ロッド5の先端部を500℃程度に加熱し、電気接点3の接触面3aのほぼ中央部に約50[gf]の力で5秒間押し当てる(加熱ステップ)。次いで、図2の(c)に示すように、加熱ロッド5を接触面3aより離間させ、その替わりに、その直後(例えば0.5秒後)に、先端部に熱電対7を装着したアルミナ等の断熱性の材料からなる温度測定ロッド6を当接させて、当該接触面3aの温度を測定する(温度測定ステップ)。この測定は、所定のタイミングで複数回(少なくとも二回)行うようにし、当該複数回の測定結果から、温度の経時変化を取得する。なお、熱電対7はゼーベック効果を利用して温度を測定するものであり、一例として、アルメル・クロメル熱電対を用いることができるが、これには限定されず、他の種類の熱電対を用いることも可能である。
【0033】
図4の(a)は、接点接合部4に空孔8が一切形成されず、接合状態が非常に良好である場合を示す模式図であり、一方、図4の(b)は、接点接合部4に空孔8が形成されて、接合状態が不良である場合を示す模式図である。接点接合部4において空孔8が形成され、端子板2と電気接点3とが当接する領域が小さくなると、当該接点接合部4における端子板2と電気接点3との間で熱伝達が阻害される。よって、図4の(a)の場合のように空孔8が無い場合には、加熱領域Hから端子板2に熱が伝達されやすくなり、加熱ステップの終了後、電気接点3の接触面3aの温度は比較的速やかに低下するが、図4の(b)の場合のように、空孔が存在する場合には、加熱領域Hから端子板2にの熱が伝達されにくくなり、加熱ステップの終了後、電気接点3の接触面3aの温度は比較的ゆっくり低下することになる。
【0034】
本実施形態にかかる接点接合部の検査方法は、空孔8の有無によって接点接合部4における熱伝達効率が変化する点、ならびに、当該熱伝達効率が電気接触子1の特定箇所の温度の経時変化から評価できる点に着目し、電気接触子1の特定箇所の温度の経時変化に基づいて接点接合部4の接合状態の良否判定を行うものである。したがって、本質的には、電気接触子1において温度測定を行う個所は、接点接合部4の熱伝達効率によって温度変化が影響を受け得る場所であればどこでも良く、加熱を行う箇所は、当該温度測定を行う箇所を適宜に高温状態にすることができる箇所であればどこでも良いが、本実施形態では、加熱および温度測定をいずれも効率良く行うという観点から、一例として、加熱かつ温度測定を行う箇所として、電気接点3の接触面3aを選択している。なお、温度の経時変化は、加熱箇所や温度測定個所のみならず、電気接触子1の材質や形状等によっても異なるため、評価を行うにあたっては、予め別の検査方法(例えば破断して接点接合部の接合状態を視覚的に観察する等)によって、温度の経時変化の度合いと接合状態との相関関係を取得し、検証しておくとともに、各検体に対し、加熱ステップおよび温度測定ステップを全く同一に行うことが重要である。
【0035】
図3は、加熱ステップ後の電気接点3の接触面3aの温度の経時変化の一例を示している。この図3に示すように、電気接点3の接触面3aの温度は、時間が経つにつれ、指数関数的に低下することになる。なお、他の箇所を加熱したり、他の箇所で温度測定を行った場合にも、程度の差こそあれ、同じ傾向を示す。
【0036】
本実施形態では、かかる温度の経時変化を指数関数で近似し、当該近似した指数関数によって接合状態の良否判定を行うようにしている。指数関数への近似処理は、パソコン等の情報処理装置を用いて容易に行うことができる。
【0037】
加熱ステップ終了時点からの経過時間tにおける電気接点3の接触面3aの温度T(t)は、
T(t)=(T(0)−TN)×exp(−t/τ)+TN ・・・(1)
と表すことができる(ここに、τ:時定数、TN:周囲温度)。時定数τは、加熱した部材(本実施形態では電気接点3)の熱容量と、接点接合部4の接合状態と、によって定まるため、同じ材質かつ同じ形状の電気接触子1については、熱容量が一定であるとすれば、接点接合部4の接合状態に応じて変化することになる。
【0038】
この時定数τは、T(t1)−TNとT(0)−TNとの比から得ることができる(ただし、t1≠0)。具体的には、図3に示すように、T(0)−TN=450[℃]であり、かつT(t1)−TN=400[℃]である場合(ここに、t1=0.001)、それらの比としてのC(t)=400/450=0.889となる。ここで、C(0.001)=0.889=exp(−0.001/τ)であるから、τ=0.0085となる。
【0039】
一方、T(0)−TN=450[℃]であり、かつT(t1)−TN=350[℃]である場合(ここに、t1=0.001)、それらの比としてのC(t)=350/450=0.778となる。ここで、C(0.001)=0.778=exp(−0.001/τ)であるから、τ=0.0040となる。
【0040】
時定数τが小さいほど、温度がより速やかに低下することになるから、例えば、こうして求めた時定数τの所定の閾値に対する大小によって、接点接合部4の良否判定を行うことができる。また、時定数τの値により、接合状態に応じたランク分けを行うようなことも可能である。
【0041】
以上のように、温度の経時変化を指数関数で近似することで、接合状態に対応するパラメータを時定数τとして数値化できるようになり、接合状態の程度を把握しやすくなるという利点がある。
【0042】
仮に、時定数τによる評価ではなく、測定温度自体で評価しようとすると、検査を行うたびに初期温度の調整、すなわち加熱量の調整が必要となるが、時定数τで評価する場合には、初期温度すなわち加熱量の調整精度はそれほど影響しない。よって、本実施形態によれば、加熱量の調整精度をより低くすることができる分、より容易にかつより迅速に接合状態の良否判定を行うことができるという利点もある。
【0043】
なお、時定数τは、より多くのタイミングで取得された温度測定結果を用いて取得したり、複数の時間間隔で取得した時定数の平均値を取得したりするなど、上述した例に限らず種々の方式で算出することができる。
【0044】
また、周囲温度TNは、検査前の電気接触子1の温度としてもよいし、検査環境(検査室)の温度としてもよい。そして、当該周囲温度TNは、上記熱電対7を用いて測定してもよいし、別途設置した温度計等で測定してもよい。
【0045】
(第2実施形態)図5は、本実施形態にかかる接点接合部の検査方法における加熱後の熱の移動を示す説明図であって、(a)は空孔が少ない場合を示す図、(b)は空孔が多い場合を示す図である。本実施形態では、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成については、共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0046】
上記第1実施形態では、電気接点3の接触面3aを加熱し、当該接触面3aの温度を測定したのに対し、本実施形態では、端子板2の裏面2bを加熱し、電気接点3の接触面3aの温度を測定するようにしたものである。
【0047】
この場合は、図5に示すように、接点接合部4における空孔8の多少に応じて、加熱領域Hから電気接点3の接触面3a側への熱伝達の程度が変化する。よって、電気接点3の接触面3aの温度の経時変化によって、接点接合部4の接合状態の良否判定を行うことができる。
【0048】
そして、電気接点3の接触面3aの温度は、上記第1実施形態の場合と同様に、指数関数的に変化するため、この場合も、温度の経時変化を指数関数で近似して、時定数τによる良否判定を行うことができる。
【0049】
以上の本実施形態によれば、加熱箇所(端子板2の裏面2b)と温度測定個所(電気接点3の接触面3a)とを異ならせたため、加熱手段(例えば第1実施形態における加熱ロッド5)と温度測定手段(同温度測定ロッド6および熱電対7)との交換の手間が減る分、接点接合部4の検査を、より迅速にかつ容易に行うことができるという利点がある。
【0050】
(第3実施形態)図6は、本実施形態にかかる接点接合部の検査方法の各ステップを示す側面図であって、(a)は、加熱前の状態を示す図、(b)は、加熱中の状態を示す図、(c)は、温度測定中の状態を示す図、図7は、加熱後の熱の移動を示す説明図であって、(a)は空孔が少ない場合を示す図、(b)は空孔が多い場合を示す図である。本実施形態では、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成については、共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0051】
上記第1実施形態では、電気接点3の接触面3aを加熱し、当該接触面3aの温度を測定したのに対し、本実施形態では、端子板2の裏面2bを加熱し、当該端子板2の裏面2bの温度を測定するようにしたものである。
【0052】
この場合は、図7に示すように、接点接合部4における空孔8の多少に応じて、加熱領域Hから電気接点3の接触面3a側への熱伝達の程度が変化する。よって、端子板2の裏面2bの温度の経時変化によって、接点接合部4の接合状態の良否判定を行うことができる。
【0053】
そして、端子板2の裏面2bの温度は、上記第1実施形態の場合と同様に、指数関数的に変化するため、この場合も、温度の経時変化を指数関数で近似して、時定数τによる良否判定を行うことができる。
【0054】
以上の本実施形態によれば、電気接点3の接触面3aを加熱しない分、この電気接点3の機能面としての接触面3aに対する加熱によるダメージを少なくすることができる上、当該接触面3aに加熱ロッド5および熱電対7を当接させない分、接触面3aを損傷するおそれが全く無い上、ダスト等の付着等も抑制できるという利点がある。
【0055】
(第4実施形態)図8は、本実施形態にかかる接点接合部の検査方法における加熱による熱の移動を他の実施形態と比較して示す説明図であって、(a)は加熱中の状態を示す図、(b)は空気中に熱が放散される状態を示す図(他の実施形態)、(c)は略真空雰囲気において周囲に熱が放散されにくくなっている状態を示す図である。本実施形態では、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成については、共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0056】
本実施形態では、エアポンプ(図示せず)等で真空引きしたチャンバ(図示せず)の内部等に略真空雰囲気の環境を構築して、当該略真空雰囲気下(好適には0.05気圧以下)で温度の測定を行うものである。
【0057】
図8の(b)に示すように、空気雰囲気下では、空気中に熱が伝達される分、接点接合部4を通過する熱量が減るため、接点接合部4の接合状態に応じた温度の経時変化の差が生じにくくなる。
【0058】
この点、図8の(c)に示す略真空雰囲気下では、周囲への熱伝達が減り、図8の(b)の空気雰囲気下で検査を行う場合に比べて、接点接合部4を通過する熱量が増大するため、接点接合部4の接合状態に応じた温度の経時変化の差がより顕著に生じやすくなり、その分、判定精度を高めることができる。
【0059】
(第5実施形態)図9は、本実施形態にかかる接点接合部の検査方法の各ステップを示す側面図であって、(a)は、加熱中の状態を示す図、(b)は、温度測定中の状態を示す図である。本実施形態では、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成については、共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0060】
本実施形態は、レーザ照射によって加熱を行うようにしたものである。具体的には、例えば、図9の(a)に示すように、レーザ照射器9を用いてレーザ光10を電気接点3の接触面3aに照射して加熱している。具体的には、例えば、YAGレーザで500[W]の強度で0.01秒間照射すると、加熱領域Hに約1[J]の熱量を与えることができる(ただし、加熱面(本実施形態では接触面3a)での反射率を80%とした仮定した場合)。加熱領域H(電気接点3)が純銀であったとすると、瞬間的に約400[℃]程度まで温度を上昇させることが可能となる。
【0061】
以上の本実施形態によれば、レーザ照射により、非接触で、かつ極めて短時間のうちに加熱することができ、検査に要する時間を短縮することができるという利点がある。
【0062】
なお、端子板2の裏面2bも、これと同様に、レーザ照射によって加熱することができるのは言うまでもない。
【0063】
(第6実施形態)図10は、本実施形態にかかる接点接合部の検査方法の各ステップを示す側面図であって、(a)は、加熱中の状態を示す図、(b)は、温度測定中の状態を示す図である。本実施形態では、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成については、共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0064】
本実施形態は、誘導加熱によって加熱を行うようにしたものである。具体的には、例えば、図10の(a)に示すように、誘導加熱棒11に導線12を巻き付けてなるコイル13を用いて、誘導加熱棒11の一端を加熱面(本実施形態では接触面3a)に近接させ、コイル13に、例えば40〜90[MHz]の高周波電流を通電する。すると、加熱面に対して垂直な方向に磁場14が生じ、当該加熱面において、磁場14を相殺するような電流(渦電流)15が生じる。この渦電流15に対する加熱領域H(電気接点3)の抵抗によってジュール熱が生じ、以て、加熱領域Hを加熱することができる。
【0065】
以上の本実施形態によれば、誘導加熱によって、より迅速に加熱することができる上、加熱時に当該加熱箇所以外でのエネルギロスが小さくなる分、加熱に要するエネルギ消費量を低く抑えることができるという利点がある。
【0066】
なお、端子板2の裏面2bも、これと同様に、誘導加熱によって加熱することができるのは言うまでもない。
【0067】
(第7実施形態)図11は、本実施形態にかかる接点接合部の検査方法の各ステップを示す側面図であって、(a)は、加熱中の状態を示す図、(b)は、温度測定中の状態を示す図である。本実施形態では、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成については、共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0068】
本実施形態は、アーク放電によって加熱を行うようにしたものである。具体的には、例えば、図11の(a)に示すように、タングステン等の高融点材料で構成されたアーク電極17の尖端を加熱面(本実施形態では接触面)に対して例えば1[mm]程度の位置に近接させるとともに、当該アーク電極17と端子板2(または電気接点3)とに高電圧パルス発生装置16を接続して回路を形成し、当該高電圧パルス発生装置16によって数千ボルトのパルス電圧を印加することで、アーク電極17の尖端と電気接点3の接触面3aとの間でアーク放電18を生じさせる。これにより、アーク放電18によって発生した熱によって、加熱領域H(電気接点3)を加熱することができる。
【0069】
以上の本実施形態によれば、非接触で加熱を行うことができるため、ヒータ等を電気接点等に直接当接させる測定方式に比べて、電気接点の表面に対するダメージを抑制することができる上、瞬間的に数千度の高温状態とすることで、表面等に付着したダストや汚れを焼却したり蒸発させたりして除去することができるという利点がある。
【0070】
なお、端子板2の裏面2bも、これと同様に、アーク放電によって加熱することができるのは言うまでもない。
【0071】
(第8実施形態)図12は、本実施形態にかかる接点接合部の検査方法の各ステップを示す側面図であって、(a)は、加熱中の状態を示す図、(b)は、温度測定中の状態を示す図である。本実施形態では、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成については、共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0072】
本実施形態は、赤外線の強度を測定することにより温度の測定を行うようにしたものである。具体的には、例えば、図12の(b)に示すように、加熱領域H(電気接点3)から放射される赤外線21を、レンズ20によって集光し、受光装置19によって受光する。物体からは、波長λの赤外線が放射されており、その放射エネルギEは、波長λと絶対温度Tに依存する。受光装置19内には、特定の波長λの成分のみを透過させるフィルタとフォトダイオード等からなる受光素子とが設けられており、この受光装置19により、波長λの成分のエネルギの大きさを取得することができ、このエネルギの大きさに基づいて、加熱領域Hの温度を取得することができる。
【0073】
以上の本実施形態によれば、非接触で温度の測定を行うことができるため、熱電対等を電気接点3等に直接当接させる測定方式に比べて、電気接点3の接触面3aに対するダメージを抑制することができる。また、熱電対7を当接させるべく、加熱ロッド5を近接させる工程等を実施する必要が無い分、検査に要する時間を短縮することができるという利点がある。
【0074】
なお、端子板2の裏面2bも、これと同様に、赤外線によってその温度を測定することができるのは言うまでもない。また、複数波長の赤外線によって温度を測定してもよいし、所定波長区間において積分した光エネルギから、温度を算出してもよい。後者の場合、例えば、バンドパスフィルタを用いて波長λ1〜λ2(λ1<λ2)の赤外光のエネルギの総量を取得し、当該エネルギの総量から温度を算出することができる。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、端子板や電気接点の形状は、上記実施形態で開示したものには限定されないし、加熱ロッドや温度測定ロッド、その他、加熱ステップや温度測定ステップて用いた種々の器具についても、上記実施形態で開示したものには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態にかかる接点接合部の検査方法の検査対象としての電気接触子を示す図であって、(a)は斜視図、また(b)は側面図。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる接点接合部の検査方法の各ステップを示す側面図であって、(a)は、加熱前の状態を示す図、(b)は、加熱中の状態を示す図、(c)は、温度測定中の状態を示す図。
【図3】本発明の実施形態にかかる接点接合部の検査方法で取得される測定温度の経時変化の一例を示す図。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる接点接合部の検査方法における加熱ステップ後の熱の移動を示す説明図であって、(a)は空孔が少ない場合を示す図、(b)は空孔が多い場合を示す図。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる接点接合部の検査方法における加熱後の熱の移動を示す説明図であって、(a)は空孔が少ない場合を示す図、(b)は空孔が多い場合を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかる接点接合部の検査方法の各ステップを示す側面図であって、(a)は、加熱前の状態を示す図、(b)は、加熱中の状態を示す図、(c)は、温度測定中の状態を示す図。
【図7】本発明の第3実施形態にかかる接点接合部の検査方法における加熱後の熱の移動を示す説明図であって、(a)は空孔が少ない場合を示す図、(b)は空孔が多い場合を示す図。
【図8】本発明の第4実施形態にかかる接点接合部の検査方法における加熱後の熱の移動を他の実施形態と比較して示す説明図であって、(a)は加熱中の状態を示す図、(b)は空気雰囲気中に熱が放散される状態を示す図(他の実施形態)、(c)は略真空雰囲気において周囲に熱が放散されにくくなっている状態を示す図。
【図9】本発明の第5実施形態にかかる接点接合部の検査方法の各ステップを示す側面図であって、(a)は、加熱中の状態を示す図、(b)は、温度測定中の状態を示す図。
【図10】本発明の第6実施形態にかかる接点接合部の検査方法の各ステップを示す側面図であって、(a)は、加熱中の状態を示す図、(b)は、温度測定中の状態を示す図。
【図11】本発明の第7実施形態にかかる接点接合部の検査方法の各ステップを示す側面図であって、(a)は、加熱中の状態を示す図、(b)は、温度測定中の状態を示す図。
【図12】本発明の第8実施形態にかかる接点接合部の検査方法の各ステップを示す側面図であって、(a)は、加熱中の状態を示す図、(b)は、温度測定中の状態を示す図。
【符号の説明】
【0077】
1 電気接触子
2 端子板
2b 裏面
3 電気接点
3a 接触面
4 接点接合部
17 アーク電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子板上に電気接点を接合した接点接合部の検査方法であって、
電気接点の他の接点との接触面、または端子板の接点接合部と反対側となる当該端子板の裏面を加熱する加熱ステップと、
電気接点または端子板の温度を測定する温度測定ステップと、
を備え、
加熱後における電気接点または端子板の温度の経時変化に基づいて接点接合部の接合状態の良否判定を行うことを特徴とする接点接合部の検査方法。
【請求項2】
前記加熱ステップでは、端子板の裏面を加熱することを特徴とする請求項1に記載の接点接合部の検査方法。
【請求項3】
測定された温度の経時変化を指数関数で近似し、近似した指数関数の係数によって接合状態の良否判定を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の接点接合部の検査方法。
【請求項4】
前記温度測定ステップでは、略真空雰囲気下で温度の測定を行うことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つに記載の接点接合部の検査方法。
【請求項5】
前記温度測定ステップでは、赤外線の強度を測定することにより温度の測定を行うことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つに記載の接点接合部の検査方法。
【請求項6】
前記加熱ステップでは、レーザを照射することにより加熱を行うことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一つに記載の接点接合部の検査方法。
【請求項7】
前記加熱ステップでは、誘導加熱により加熱を行うことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一つに記載の接点接合部の検査方法。
【請求項8】
前記加熱ステップでは、アーク電極と電気接点または端子板との間でアーク放電を生じさせることにより加熱を行うことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一つに記載の接点接合部の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−64757(P2007−64757A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249818(P2005−249818)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】