説明

接着シート、接着構造体および接着剤

【課題】透過X線により被接合部材の接着面を観察する場合にX線強度のむらが生じにくい接着シート、接着構造体および接着剤を提供する。
【解決手段】パワーモジュールMpは、被接合面1aを有するパワートランジスタ1と、被接合面2aを有する放熱部材2と、パワートランジスタ1の被接合面1aと放熱部材2の被接合面2aとの間に密着して介在される接着シート3と、を備えている。接着シート3は、樹脂材料と粒子とを有し、粒子は、接着シート3の両側に配置されるパワートランジスタ1および放熱部材2よりもX線吸収係数の大きな材料からなり、粒子の表面には有機分子が化学結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シート、接着構造体および接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器等において部品を積層した構成とする場合において、積層する各部品を接合する接合部材として、はんだ、ろう、樹脂系接着剤が用いられている。
接合の信頼性を確保する上で接合部の濡れ不良やボイドが問題となる。これらを検出するために超音波探傷や透過X線などの非破壊検査法が用いられている。
【0003】
部品を樹脂系接着剤により接合した電子機器においては、透過X線では感度が低いため、通常、超音波探傷が用いられる。
特許文献1には、高温高圧水を反応場とすることで、金属酸化物微粒子の表面と有機物との間で強結合せしめて有機修飾金属酸化物微粒子を得ることができ、得られた有機修飾金属酸化物微粒子は、優れた性状・特性・機能を発揮する旨が記載されている。また、特許文献2には、ポリマー化合物に高原子番号金属またはその化合物を含む粉末充填剤を混合することにより、放射線不透過性ポリマー化合物中の空隙を非破壊的高エネルギー放射線検査により検知できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−194148号公報
【特許文献2】特開平3−72583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では微粒子の表面に炭化水素を強結合せしめる点が開示されているが、透過X線による非破壊検査についての記述はない。また、特許文献2では樹脂に対する粒子の分散について考慮されておらず、透過X線による非破壊検査をした場合に、粒子の配合密度の偏りに起因するX線強度のむらが生じる。
【0006】
本発明の目的は、透過X線により被接合部材の接着面を観察する場合にX線強度のむらが生じにくい接着シート、接着構造体および接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、樹脂材料と粒子とからなる接着シートにおいて、前記粒子は、前記接着シートの両側に配置される被接合部材よりもX線吸収係数の大きな材料とを有し、前記粒子の表面には有機分子が化学結合されたことを要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、樹脂材料中に粒子を凝集させずに配合でき、粒子を均一に充填しやすいため、透過X線により接着シートと被接合部材との接着面を観察する場合にX線強度のむらが生じにくい。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の接着シートにおいて、前記樹脂材料に対して前記粒子が体積比で10%以上配合されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明によれば、接着シートに粒子が高密度に配合されるため、透過X線検査をする場合にX線コントラストを向上しやすく透過X線による非破壊検査がしやすい。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の接着シートにおいて、前記粒子は熱伝導率が50W/mK以上であることを要旨とする。
請求項3に記載の発明によれば、接着シートの熱伝導率を高くしやすい。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着シートにおいて、前記粒子はCr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Sn、Pt、Auのいずれか1種以上の元素を含むことを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、接着シートの熱伝導率を高くしやすい。
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着シートにおいて、前記接着シートの厚みは100μm以下であることを要旨とする。
【0013】
なお、接着シートの厚みとは、接着シートが被接合部材と接合して用いられる場合においては、被接合部材との接合前の厚みを指す。
請求項5に記載の発明によれば、樹脂材料および粒子の量を少なくできる。
【0014】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の接着シートにおいて、前記粒子の粒径は500nm以下であることを要旨とする。
請求項6に記載の発明によれば、厚みが100μm以下である接着シートに粒子を高濃度に配合するのに好適である。
【0015】
請求項7に記載のように、請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着シートにおいて、前記粒子は無機粒子であってもよい。
請求項8に記載の発明では、被接合面を有する第1の被接合部材と、被接合面を有する第2の被接合部材と、前記第1の被接合部材の被接合面と前記第2の被接合部材の被接合面との間に密着して介在される請求項1〜7のいずれか1項に記載の接着シートと、を備えたことを要旨とする。
【0016】
請求項8に記載の発明によれば、樹脂材料中に粒子を凝集させずに配合でき、粒子を均一に充填しやすいため、透過X線により接着シートと被接合部材との接着面を観察する場合にX線強度のむらが生じにくい接着構造体が得られる。
【0017】
請求項9に記載の発明では、被接合面を有する第1の被接合部材と、被接合面を有する第2の被接合部材と、前記第1の被接合部材の被接合面と前記第2の被接合部材の被接合面との間に密着して介在され、樹脂材料と、表面に有機分子が化学結合され前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材よりもX線吸収係数の大きな材料からなる粒子とを有する接着シートと、を備えたことを要旨とする。
【0018】
請求項9に記載の発明によれば、樹脂材料中に粒子を凝集させずに配合でき、粒子を均一に充填しやすいため、透過X線により接着シートと被接合部材との接着面を観察する場合にX線強度のむらが生じにくい接着構造体が得られる。
【0019】
請求項10に記載の発明は、樹脂材料と粒子とからなる接着剤において、前記粒子は、前記接着剤の両側に配置される被接合部材よりもX線吸収係数の大きな材料とを有し、前記粒子の表面には有機分子が化学結合されたことを要旨とする。
【0020】
請求項10に記載の発明によれば、樹脂材料中に粒子を凝集させずに配合でき、粒子を均一に充填しやすいため、透過X線により接着剤と被接合部材との接着面を観察する場合にX線強度のむらが生じにくい接着剤が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、透過X線により被接合部材の接着面を観察する場合にX線強度のむらが生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本実施形態におけるパワーモジュールMpを概念的に示す平面図、(b)はパワーモジュールを概念的に示す正面図。
【図2】パワーモジュールMpの透過X線像を示す図。
【図3】別例のパワーモジュール20を概念的に示す正面図。
【図4】他の別例のパワーモジュール30を概念的に示す正面図。
【図5】(a)は比較のためのパワーモジュール90を概念的に示す平面図、(b)はパワーモジュール90を概念的に示す正面図。
【図6】比較のための透過X線像を示す図。
【図7】比較のための超音波探傷像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1には本実施形態における接着構造体としてのパワーモジュールMpを示し、(a)はパワーモジュールMpの平面図、(b)はパワーモジュールMpの正面図である。
【0024】
パワーモジュールMpは、第1の被接合部材としてのパワートランジスタ1と第2の被接合部材としての放熱部材2と接着シート3を備えている。パワーモジュールMpはパワートランジスタ1の上に放熱部材2を積層して構成され、積層するパワートランジスタ1と放熱部材2とは樹脂材料と粒子とからなる接着シート3にて接着されている。なお、本実施形態では粒子としてNiからなる粒子を用いた。なお、本実施形態では粒子の粒径は500nm以下であり、粒子の50%以上において粒径は100nm以下であった。
【0025】
なお、本実施形態では樹脂材料としてエポキシ樹脂を用いている。
パワートランジスタ1は、立方体をなし、上面が平坦面となっている。パワートランジスタ1の上面の平坦面が被接合面1aとなっている。
【0026】
放熱部材2はAlよりなり、上面に凹凸部を有している。つまり、突条2fが一定の間隔をおいて並設されている。放熱部材2の下面は平坦面となっている。放熱部材2の下面の平坦面が被接合面2aとなっている。
【0027】
接着シート3は、パワートランジスタ1の被接合面1aと放熱部材2の被接合面2aとの間に密着して介在され、パワートランジスタ1と放熱部材2の間の熱伝導路となる。なお、本実施形態のパワートランジスタ1はSiを主成分としCを含有する。接着シート3は、透過X線検査によりボイド等の不良を検知可能である。つまり、接着シート3は樹脂材料にパワートランジスタ1と放熱部材2よりもX線吸収係数の大きな材料からなる材料の粒子を分散させている。
【0028】
詳しく説明する。接着シート3は樹脂材料と粒子とからなり、樹脂材料に粒子を分散させている。接着シート3における粒子は、接着シート3の両側に配置されるパワートランジスタ1および放熱部材2よりもX線吸収係数の大きな材料からなり、粒子の表面全体には有機分子が化学結合されている。つまり、接着シート3は、パワートランジスタ1の被接合面1aと放熱部材2の被接合面2aとの間に密着して介在され、樹脂材料と、表面に有機分子が化学結合されパワートランジスタ1と放熱部材2よりもX線吸収係数の大きな材料からなる粒子とからなる。なお、本実施形態では有機分子としてカルボン酸であるデカン酸を用いた。カルボン酸としては、例えばモノカルボン酸が挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば2−エチルヘキサン酸、n−オクタン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸等が挙げられる。
【0029】
なお、接着シート3とパワートランジスタ1または放熱部材2との接合は、加圧および加熱により行われる。その際に接着シート3が圧縮されるため、接合の前後で接着シート3の厚みが減少する場合がある。
【0030】
ここで、パワートランジスタ1のX線吸収係数については、SiのX線吸収係数、CのX線吸収係数等についての重量平均値を用い、放熱部材2のX線吸収係数についてはAlのX線吸収係数を用いる。なお、パワートランジスタ1を構成する元素はSi、C等に限らず、パワートランジスタ1のX線吸収係数はパワートランジスタ1を構成する元素のX線吸収係数の重量平均値を用いればよい。そして、粒子については、パワートランジスタ1のX線吸収係数、および、放熱部材2のX線吸収係数よりもX線吸収係数の大きな材料からなる。粒子は無機粒子であり、具体的にはCr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Sn、Pt、Auのいずれか1種以上の元素を含む。
【0031】
また、樹脂材料に対して粒子が体積比で10%以上配合されている。粒子は熱伝導率が50W/mK以上であり、好ましくは、粒子は熱伝導率が70W/mK以上である。接着シート3の厚みt1は100μm以下であり、より具体的には10数μmである。粒子の粒径は500nm以下であり、好ましくは、粒子の粒径が100nm以下である。
【0032】
製造の際には、硬化前の接着シート3を用意し、接着シート3をパワートランジスタ1の被接合面1aと放熱部材2の被接合面2aとの間に配置し、加熱により母材となる樹脂材料を硬化させる。これにより、パワートランジスタ1と放熱部材2とが接着される。
【0033】
そして、このように製造した後において、パワーモジュールMpは透過X線検査装置で接着シート3の良否判定が行われる。図1においては、接着シート3にボイド5が発生した場合を示している。
【0034】
ここで、接着シート3に使用される接着剤は、樹脂材料と粒子とからなり、粒子は、接着剤の両側に配置されるパワートランジスタ1および放熱部材2よりもX線吸収係数の大きな材料からなるので、X線を透過させにくくして透過X線検査を行うことができる。また、粒子の表面には有機分子が化学結合されているので、粒子を凝集させることなく樹脂材料中に分散させることができる。
【0035】
特に、本実施形態において粒子への有機分子の化学結合は、公知である超臨界水熱合成反応を用いて行われる。本反応によると、通常粒子の全表面に有機分子が化学結合される。このように、粒子の全表面に有機分子が結合されている。粒径が500nmのようなナノサイズの粒子は非常に活性が高い。そのため、粒子の表面に何も修飾されていない状態で樹脂材料に粒子を含有させた場合、粒子の凝集が進行する。粒子の一部分のみに有機分子が化学結合された場合には、有機分子が化学結合されていない部位同士が結合されることで粒子の凝集が進行しやすい。粒子の全表面に有機分子が化学結合されていることにより、樹脂材料に対して粒子の分散性を向上させやすい。また、粒子の凝集を抑制する効果を高くできる。
【0036】
図2には本実施形態のパワーモジュールMpについての透過X線像を示す。
図2の透過X線像において、図2中ハッチングを付して示した高濃度領域A1と図1中ハッチングを付さずに示した低濃度領域A2とが現れている。低濃度領域A2がボイドの発生箇所であり、高濃度領域A1はボイドの発生箇所以外の箇所である。このようにコントラストがついており(濃淡の差が出ており)、ボイドの発生の有無やボイド発生面積を検知可能であり、これにより接着シート3の良否判定を行うことができる。
【0037】
図5には比較のためのパワーモジュール90を示し、(a)はパワーモジュール90の平面図、(b)はパワーモジュール90の正面図である。
比較のためのパワーモジュール90において接着シート100は樹脂材料のみからなっている。図5において接着シート100にボイド101が発生した場合を示している。
【0038】
図6には、比較のためのパワーモジュール90についての透過X線像を示す。また、図7には比較のためのパワーモジュールについての超音波探傷像を示す。
図6の透過X線像において、ボイドの発生箇所とそれ以外の箇所においてコントラストがついておらず(濃淡の差が出ておらず)、良否判定をすることができない。
【0039】
図7の超音波探傷像において、放熱部材2の突条2fに対応する部位には図7中ハッチングを付して示した高濃度領域A10が現れるとともに、放熱部材2において突条2fの無い領域に対応する部位には図7中ハッチングを付さずに示した低濃度領域A11が現れる。突条2fが無い領域に対応する部位であれば、ボイドの発生箇所とそれ以外の箇所においてコントラストがつく(濃淡の差が出る)ため良否判定をすることができる。しかし、突条2fに対応する部位では、突条2fにより超音波が減衰するため、ボイドの発生箇所とそれ以外の箇所においてコントラストがついておらず(濃淡の差が出ておらず)、良否判定をすることができない。
【0040】
このように、樹脂系接着剤で2つの部品を接合する場合、図1の放熱部材2のように接着する部品の表面に凹凸が形成されている場合や接着する2つの部品が厚い場合においては超音波探傷ではフォーカスの問題により樹脂系接着シートの検査を行うことができなかった。
【0041】
これに対し、本実施形態の接着シート3は、樹脂材料に分散させる粒子はパワートランジスタ1および放熱部材2よりもX線吸収係数の大きな材料からなる。これにより、放熱部材2のように表面が超音波探傷で検査できない形状であっても透過X線検査を使うことができる。また、検査に特別な装置は必要なく、一般的な透過X線検査装置をそのまま使用することができる。
【0042】
ここで、本実施形態の接着シート3では樹脂材料に対して粒子が体積比で10%以上配合されており、接着シート3に粒子が高密度に配合され、透過X線検査におけるX線コントラストを向上させることができる。詳しくは、接着シート3にボイドが存在する部分と存在しない部分では、透過強度に差が出る(ボイドが存在する部分の方が透過強度が大きくなる)。どの程度の差まで検出できるかは、装置に依存するが、一般的な検出装置でこの強度差を検出するためには粒子を樹脂材料に対して体積比で10%程度配合する必要がある。
【0043】
検査後においてパワーモジュールMpが使用される。パワートランジスタ1は駆動により発熱する。このパワートランジスタ1の熱は接着シート3を介してパワーモジュールMpの放熱部材2に伝わる。放熱部材2に伝わった熱は放熱される。このとき、強制循環させた冷媒と熱交換してもよい。
【0044】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)パワーモジュールMpは、被接合面1aを有するパワートランジスタ1と、被接合面2aを有する放熱部材2と、パワートランジスタ1の被接合面1aと放熱部材2の被接合面2aとの間に密着して介在される接着シート3と、を備えている。接着シート3は、樹脂材料と粒子とを有し、粒子は、接着シート3の両側に配置されるパワートランジスタ1および放熱部材2よりもX線吸収係数の大きな材料からなり、粒子の表面には有機分子が化学結合されている。これにより、樹脂材料中に粒子を凝集させずに配合でき、粒子を均一に充填しやすいため、透過X線により接着シート3と被接合部材との接着面を観察する場合にX線強度のむらが生じにくい。
【0045】
(2)樹脂材料に対して粒子が体積比で10%以上配合されているので、接着シート3に粒子が高密度に配合されるため、透過X線検査をする場合にX線コントラストを向上しやすく透過X線による非破壊検査がしやすい。
【0046】
(3)粒子は熱伝導率が50W/mK以上であるので、接着シート3の熱伝導率を高くしやすい。
(4)粒子はCr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Sn、Pt、Auのいずれか1種以上の元素を含むので、接着シート3の熱伝導率を高くしやすい。
【0047】
(5)接着シート3の厚みt1は100μm以下であるので、樹脂材料および粒子の量を少なくできる。また、接着シート3の厚みが薄いことにより熱伝導度が向上する。
(6)粒子の粒径は500nm以下であるので、厚みが100μm以下である接着シート3に粒子を高濃度に配合するのに好適である。
【0048】
(7)粒子の全表面に有機分子が化学結合されているので、樹脂材料に対して粒子の分散性を向上させやすい。また、粒子の凝集を抑制する効果を高くできる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0049】
・図1におけるAl製放熱部材2に代わりセラミック製放熱部材を用いてもよい。セラミック製放熱部材として、AlN、BN、Al2 O3 を挙げることができる。ここで、AlNのセラミック製放熱部材のX線吸収係数については、AlのX線吸収係数、NのX線吸収係数等についての重量平均値を用いる。また、BNのセラミック製放熱部材のX線吸収係数については、BのX線吸収係数、NのX線吸収係数等についての重量平均値を用いる。さらに、Al2 O3のセラミック製放熱部材のX線吸収係数については、AlのX線吸収係数、OのX線吸収係数等についての重量平均値を用いる。そして、接着シートの粒子については、接着シートの両側に配置されるパワートランジスタ1およびセラミック製放熱部材よりもX線吸収係数の大きな材料からなり、粒子の表面には有機分子が化学結合されている。
【0050】
・図3に示すパワーモジュール20としてもよい。図3において、パワートランジスタ1の上面にセラミック板4が固定され、このセラミック板4の上面4aにおいて接着シート3により放熱部材2の下面と接着した構成としてもよい。セラミック板4として、AlN、BN、Al2 O3を挙げることができる。そして、セラミック板4の被接合面としての上面4aと、放熱部材2の被接合面としての被接合面(下面)2aとの間に接着シート3が配置されている。接着シート3は、樹脂材料と粒子とからなり、粒子は、接着シートの両側に配置されるセラミック板4および放熱部材2よりもX線吸収係数の大きな材料からなり、粒子の表面には有機分子が化学結合されている。
【0051】
・図4に示すパワーモジュール30としてもよい。図4において、銅板10の上面にパワートランジスタ11が配置されるとともに銅板10の上面に半導体素子12が配置され、パワートランジスタ11と半導体素子12とが銅板10により電気的に接続されている。銅板10の上面でのパワートランジスタ11の配置箇所における銅板10の下面にはAl製の放熱部材13が接着シート14により接着されている。この場合、銅板10の被接合面としての下面10aと、放熱部材13の被接合面としての上面13aとの間に接着シート14が配置されている。接着シート14は、樹脂材料と粒子とからなり、粒子は、接着シートの両側に配置される被接合部材としての銅板10および放熱部材13よりもX線吸収係数の大きな材料からなり、粒子の表面には有機分子が化学結合されている。その他の構成についても上述の接着シート3と同様である。
【0052】
・接着シート(接着剤)の樹脂材料についてはエポキシ樹脂に限らず、その種類等については限定されない。
・有機分子は、その種類等については限定されない。なお、カルボン酸などのカルボキシル基を有する有機分子は、エポキシ樹脂との相性がよく、このように、樹脂材料に適した種類の有機分子を適宜用いればよい。また、有機分子の分子鎖(主鎖)の長さが長いと有機分子が粒子を高密度に分散されるのを阻害する虞があり、また、有機分子の分子鎖(主鎖)の長さが短いと、粒子の分散性の悪化や粒子の凝集を招きやすいという点を考慮する必要がある。
【0053】
・図1では被接合部材としての放熱部材2は被接合面2aとは反対の面において凹凸を形成した形状をなしていたが、被接合部材の厚さが厚い場合に適用してもよい。
・パワーモジュールに適用したが、他の電子機器に適用してもよい。また、電子機器以外にも使用することができる。
【0054】
・粒子の全表面に有機分子が化学結合されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…パワートランジスタ、1a…被接合面、2…放熱部材、2a…被接合面、3…接着シート、4…セラミック板、4a…上面、10…銅板、10a…下面、13…放熱部材、13a…上面、14…接着シート、t1…厚み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料と粒子とからなる接着シートにおいて、
前記粒子は、前記接着シートの両側に配置される被接合部材よりもX線吸収係数の大きな材料とを有し、
前記粒子の表面には有機分子が化学結合されたことを特徴とする接着シート。
【請求項2】
前記樹脂材料に対して前記粒子が体積比で10%以上配合されていることを特徴とする請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
前記粒子は熱伝導率が50W/mK以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の接着シート。
【請求項4】
前記粒子はCr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Sn、Pt、Auのいずれか1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着シート。
【請求項5】
前記接着シートの厚みは100μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着シート。
【請求項6】
前記粒子の粒径は500nm以下であることを特徴とする請求項5に記載の接着シート。
【請求項7】
前記粒子は無機粒子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着シート。
【請求項8】
被接合面を有する第1の被接合部材と、
被接合面を有する第2の被接合部材と、
前記第1の被接合部材の被接合面と前記第2の被接合部材の被接合面との間に密着して介在される請求項1〜7のいずれか1項に記載の接着シートと、
を備えたことを特徴とする接着構造体。
【請求項9】
被接合面を有する第1の被接合部材と、
被接合面を有する第2の被接合部材と、
前記第1の被接合部材の被接合面と前記第2の被接合部材の被接合面との間に密着して介在され、樹脂材料と、表面に有機分子が化学結合され前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材よりもX線吸収係数の大きな材料からなる粒子とを有する接着シートと、
を備えたことを特徴とする接着構造体。
【請求項10】
樹脂材料と粒子とからなる接着剤において、
前記粒子は、前記接着剤の両側に配置される被接合部材よりもX線吸収係数の大きな材料とを有し、
前記粒子の表面には有機分子が化学結合されたことを特徴とする接着剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−87268(P2012−87268A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237490(P2010−237490)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】