説明

接着シートの切り込み量評価方法

【課題】 プリカット加工が施された剥離基材からの接着層、粘着層及び基材フィルムの剥離不良を十分に抑制するには接着シートを作製する際、何らかの形でプリカット刃の剥離基材への進入量(切り込み量)を評価し、管理することが必要であり、本発明は、その接着シートに対する剥離基材への切り込み量の評価方法を提供する。
【解決手段】 切り込み部を有する接着シートの、評価方法であり、プッシュプルゲージの治具に接着シートの切り込み部を押しつけ接着シートのフィルムが破断した時の破断強度(破断荷重)により切り込み量を評価する接着シートの切り込み量評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シートの切り込み量評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル関連機器の多機能化及び軽量小型化の要求が急速に高まりつつある。これに伴い、半導体素子の高密度実装に対するニーズは年々強まり、特に半導体素子を積層するスタックドマルチチップパッケージ(以下「スタックドMCP」という)の開発がその中心を担っている。
【0003】
スタックドMCPの技術開発は、パッケージの小型化と多段積載という相反する目標の両立にある。そのため、特に半導体素子に使用されるシリコンウェハの厚さは薄膜化が急速に進み、ウェハ厚さ100μm以下のものが積極的に使用、検討されている。また多段積載は、パッケージ作製工程の複雑化を引き起こすため、パッケージ作製工程の簡素化及び、多段積載によるワイヤーボンディングの熱履歴回数の増加に対応した作製プロセス、材料の提案が求められている。
【0004】
このような状況の中、スタックドMCPの接着部材としては従来からペースト材料が用いられてきた。しかし、ペースト材料では、半導体素子の接着プロセスにおいて樹脂のはみ出しが生じたり、膜厚精度が低いといった問題がある。これらの問題は、ワイヤーボンディング時の不具合発生やペースト剤のボイド発生などの原因となるため、ペースト材料を用いた場合では、上述の要求に対処しきれなくなってきている。
【0005】
こうした問題を改善するために、近年、ペースト材料に代えてフィルム状の接着剤が使用される傾向にある。フィルム状の接着剤はペースト材料と比較して、半導体素子の接着プロセスにおけるはみ出し量を少なく制御することが可能であり、且つ、フィルムの膜厚精度を高めて、膜厚のばらつきを小さくすることが可能であることから、特にスタックドMCPへの適用が積極的に検討されている。
【0006】
このフィルム状接着剤は、通常、接着層が剥離基材上に形成された構成を有しており、その代表的な使用方法の一つにウェハ裏面貼付け方式がある。ウェハ裏面貼り付け方式とは、半導体素子の作製に用いられるシリコンウェハの裏面にフィルム状接着剤を直接貼付ける方法である。この方法では、半導体ウェハに対するフィルム状接着剤の貼付けを行った後、剥離基材を除去し、接着層上にダイシングテープを貼り付ける。その後、ウェハリングに装着させて所望の半導体素子寸法にウェハを接着層ごと切削加工する。ダイシング後の半導体素子は裏面に同じ寸法に切り出された接着層を有する構造となっており、この接着層付きの半導体素子をピックアップして搭載されるべき基板に熱圧着等の方法で貼り付ける。
【0007】
この裏面貼付け方式に用いられるダイシングテープは、通常、粘着層が基材フィルム上に形成された構成を有しており、感圧型ダイシングテープとUV型ダイシングテープとの2種類に大別される。ダイシングテープに要求される機能としては、ダイシング時には、ウェハ切断に伴う負荷によって半導体素子が飛散しない十分な粘着力が求められ、ダイシングした各半導体素子をピックアップする際には、各素子への粘着剤残りが無く、接着層付きの半導体素子がダイボンダー設備で容易にピックアップできることが求められる。
【0008】
また、パッケージ作製工程の短縮化の要望から、更にプロセス改善の要求が高まっている。従来のウェハ裏面貼付け方式ではウェハへフィルム状接着剤を貼付けた後、ダイシングテープを貼付けるという2つの工程が必要であったことから、このプロセスを簡略化するために、フィルム状接着剤とダイシングテープとの両方の機能を併せ持つ接着シート(ダイボンドダイシングシート)が開発されている。この接着シートとしては、フィルム状接着剤とダイシングテープとを貼り合わせた構造を持つ積層タイプ(例えば、特許文献1〜3参照)や、一つの樹脂層で粘着層と接着層との両方の機能を兼ね備えた単層タイプ(例えば、特許文献4参照)がある。
【0009】
また、このような接着シートを、半導体素子を構成するウェハの形状にあらかじめ加工しておく方法(いわゆるプリカット加工)が知られている(例えば特許文献5、6)。かかるプリカット加工は、使用されるウェハの形状に合わせて樹脂層を打ち抜き、ウェハを貼り付ける部分以外の樹脂層を剥離しておく方法である。
【0010】
かかるプリカット加工を施す場合、積層タイプの接着シートは一般的に、フィルム状接着剤において接着層をウェハ形状に合わせてプリカット加工し、それとダイシングテープとを貼り合わせた後、このダイシングテープに対してウェハリング形状に合わせたプリカット加工を施すか、又は、あらかじめウェハリング形状にプリカット加工したダイシングテープを、プリカット加工したフィルム状接着剤と貼り合わせることによって作製される。
【0011】
また、単層タイプの接着シートは一般的に、剥離基材上に接着層と粘着層の両方の機能を有する樹脂層(以下、「粘接着層」という)を形成し、この粘接着層に対してプリカット加工を行い、樹脂層の不要部分を除去した後に基材フィルムと貼り合わせる等の方法により作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3348923号公報
【特許文献2】特開平10−335271号公報
【特許文献3】特許第2678655号公報
【特許文献4】特公平7−15087号公報
【特許文献5】実公平6−18383号公報
【特許文献6】登録実用新案第3021645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
接着フィルムのプリカット加工は、ロール状に形成された積層タイプの接着シートに対してプリカット加工を行う一連の工程である。まず、剥離基材及び接着層からなるロールになったフィルム状接着剤を、所望形状に応じたプリカット刃を剥離基材と反対の面から剥離基材に達するまで進入させてカット作業を連続的に行い、接着層の不要部分を剥離する。その後、基材フィルム及び粘着層からなるダイシングテープの粘着層面と、カット作業を行った前記フィルム状接着剤の接着面を貼り合わせて接着シートを作製する。
次に、接着層の周囲にある基材フィルムの粘着層に接する側と反対側の面から剥離基材に達するまで切り込みを入れ、基材フィルム及び粘着層を第2の平面形状に切断するとともに、剥離基材に第2の切り込み部を形成する。その後、ダイシングテープの不要部分を剥離することで、プリカット加工を完了する。
しかし、上記のいずれのプリカット加工時においても、プリカット刃が剥離基材に到達していないとカット加工が不十分となり、不要部分の剥離作業時に必要部分も剥離されるといった不具合を生じる。このようなカット不良を回避するために、プリカット刃の進入量は、接着層と剥離基材との界面よりも深く設定されていた。
【0014】
ところが、このようにプリカット刃の進入量を深く設定してプリカット加工を行った接着シートでは、このフィルムを巻き取る際に剥離基材が破断し、巻き取り不良を生じることや、ウェハにラミネートしようとした場合、剥離基材から接着層を剥離する際に、剥離基材が破断して、剥離不良が生じやすくなることがあった。
【0015】
上記の理由からプリカット加工が施されており、剥離基材からの接着層、粘着層及び基材フィルムの剥離不良を十分に抑制することが可能な接着シートを作製する際、何らかの形でプリカット刃の剥離基材への進入量(切り込み量)を管理することが望まれるという課題がある。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、上記のような接着シートに対する剥離基材への切り込み量の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、接着シートの剥離基材への切り込み量の評価方法について鋭意検討し、本発明に達した。
本発明は、[1]切り込み部を有する接着シートの、評価方法であり、プッシュプルゲージの治具に接着シートの切り込み部を押しつけ接着シートのフィルムが破断した時の破断強度(破断荷重)により切り込み量を評価する接着シートの切り込み量評価方法である。
また、本発明は、接着シートが、剥離基材上に接着層を積層する第1の積層工程、前記接着層の前記剥離基材に接する側と反対側の面から前記剥離基材に達するまで該剥離基材平面に対して切り込みをいれ、前記切り込まれた外周部分の接着層を除去し、所定の平面形状の接着層を形成する第1の切断工程、前記所定の平面形状の接着層及び前記剥離基材を覆うように、粘着層及び基材フィルムを粘着層が接着層と接するように積層する第2の積層工程、及び前記粘着層及び基材フィルムの前記剥離基材側と反対側の面から前記剥離基材に達するまで該剥離基材平面に対して切り込みを入れ、前記切り込まれた外周部分の粘着層及び基材フィルムを除去し、前記所定の平面形状の接着層と、該接着層を覆い且つ該接着層の周囲で前記剥離基材に接する粘着層及び基材フィルムとからなる、所定の形状の積層体とを形成する第2の切断工程を含むものである上記[1]に記載の接着シートの切り込み量評価方法である。第2の切断工程での切り込みは、剥離基材平面に対して非垂直方向に切り込むことが好ましい。剥離基材から、接着層とこれに積層された粘着層と基材フィルムを剥がしやすくするためである。また、粘着層と基材フィルムは、基材フィルム表面に粘着剤を形成したものを用いると好ましい。
また、本発明は、[3]接着シートの剥離基材が、ポリエチレンテレフタレートフィルムである上記[2]に記載の接着シートの切り込み量評価方法である。
また、本発明は、[4]接着シートの切り込み部の延長方向に対して、垂直方向に折り目を作り、その折り目の切り込み部を中心として30〜40mm離れた折り目部分を固定し、プッシュプルゲージの治具を切り込み部に押しつける上記[1]〜[3]のいずれかに記載の接着シートの切込み量評価方法である。
また、本発明は、[5]接着シートの切り込み部と接するプッシュプルゲージの冶具の先端が、曲面形状である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の接着シートの切り込み量評価方法である。
また、本発明は、[6]プッシュプルゲージの冶具が、丸フック形状で、接着シートの切り込み部の延長方向に対して、垂直方向に丸フックを押し付ける上記[1]〜[5]のいずれかに記載の接着シートの切り込み量評価方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プリカット加工が施された基材の切り込み量を切り込み部の破断強度(破断荷重)を測定することで切り込みの深さを容易に知ることができ、適正な切り込み深さとなるように調整することができ、剥離基材からの接着層、粘着層及び基材フィルムの剥離不良を十分に抑制することが可能となり、生産性を向上できると共に、より、精密な調整ができるようになる。また、本発明によりプリカット刃の剥離基材への進入量(切り込み量)を接着シートの破断強度(破断荷重)を測定することで管理することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】接着シートとしてダイボンドダイシングシートを用いた場合の試料作製方法を説明する図である。
【図2】本発明の接着シートの切り込み量を評価するための破断強度(破断荷重)測定の模式図であり、接着シート断面とプッシュプルゲージの関係を示す図である。
【図3】プッシュプルゲージの治具先端形状を説明する図で、横方向からそれぞれ90度方向を変えてみた図である。
【図4】接着シートの切り込み量を評価する折り目を説明する図である。
【図5】接着シートの切り込み量を評価するつかみ部を説明する図である。
【図6】本発明で用いる接着シートのダイボンドダイシングシートで、(a)がロール形状での立体図、(b)がZ−Z断面図である。
【図7】本発明で用いる接着シートのダイボンドダイシングシートの製造法を説明する説明図である。
【図8】ダイボンドダイシングシート、及びこれを用いたダイシング工程までの説明図であり、(a)はダイボンドダイシングシートの平面図、(b)は(a)のA−B断面図であり、(b)〜(e)はダイシング工程までを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における接着シートに対する切り込み量の評価方法は、プッシュプルゲージを用いて基材の切り込み部の破断強度(破断荷重)を測定することにより達成される。
【0020】
本発明で用いる接着シートについて図面を用いて説明する。
本発明で用いる接着シートには、ダイボンドシート、ダイシングシート、ダイボンドダイシングシート等が挙げられるが、それ以外の基材上に接着層が形成され、接着層から基材に達するまで切込みを入れた接着シートにも適用されるものである。
以下にダイボンドダイシングシート(ダイボンドダイシングフィルム)を例に説明する。
ダイボンドダイシングシートは、図6に示すように、剥離基材11の片面に、所定平面視形状の接着層(接着剤、ダイボンド材)12と、前記接着層12を覆い、前記接着層12よりも一回り広く大きく、そして前記接着層12とは重なり合わない周縁部(ダイシング用リング載置部となる)を有する粘着層と、前記粘着層に重なり合ってこれを保護する基材フィルムとを、この順に積層したダイボンドダイシングシートである。
【0021】
ダイボンドダイシングシートの幅に制限は無いが、接着層12が半導体ウェハと積層でき、粘着層に重なり合ってこれを保護する基材フィルムはダイシング用リングと積層できるような大きさが好ましい。一例を挙げると使用される半導体ウェハが8インチの場合、半導体ウェハ直径は通常200mm、ダイシング用リングは通常210mm〜300mm程度なので、貼り付け工程などでのフィルムのずれなどを考慮し、接着層12は210mm〜250mm程度が好ましい。さらに粘着層と基材フィルムは接着層12よりも一回り広く大きく、接着層12とは重なり合わない周縁部を有するため、220mm〜300mm程度が好ましい。結果、8インチの半導体ウェハに使用されるダイボンドダイシングシートの幅は剥離基材を含めると220mm〜350mm程度が好ましい。さらに剥離基材(シート)11上の接着層12と、この接着層12よりも一回り広く大きく、そして接着層12とは重なり合わない周縁部を有する粘着層と、その粘着層に重なり合ってこれを保護する基材フィルムとを一組とする「ラベル状」の形態として提供することもでき、また、上記接着層と上記粘着層と上記基材フィルムとを一組として、これらが長尺の剥離基材11の片面に島状に多数配されてロール状に巻かれた「テープ状(又はシート状)」の形態として提供することもできる。
【0022】
また、ダイボンドダイシングシートでは、接着層12の平面視形状は、好ましくは円形、略円形又は半導体ウェハ形状である。
【0023】
また、ダイボンドダイシングシートでは、これに放射線や紫外線等の高エネルギー線を照射すると、粘着層の粘着力が低下し、接着剤と粘着層との界面で剥がれやすくなるものが好ましい。
【0024】
剥離基材11としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルム等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等が好ましく用いられ、紙、不織布、金属箔なども使用できる。また、その剥離面はシリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤などの離型剤で処理することが好ましい。また、剥離基材11の厚みは、作業性を損なわない範囲で適宜に選択できる。通常は1000μm以下、好ましくは1〜100μm、更に好ましくは2〜50μm、特に好ましくは10〜40μmである。
【0025】
接着層12としては、半導体チップの接着(接合)に使用されている公知の種々の熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤、熱可塑性接着剤あるいは酸素反応性接着剤等を用いることができる。これらは、単独で用いても2種類以上を組み合わせてもよい。
【0026】
接着層12の平面視形状は、半導体ウェハ(直径約20cm)の貼付が容易であればよく、円形、略円形、四角形、五角形、六角形、八角形、ウェハ形状(円の外周の一部が直線である形状)等がある。ただ、半導体ウェハ搭載部以外の無駄部分を少なくするためには、円形やウェハ形状が好ましい。
【0027】
接着層の層厚みは、通常は1〜200μm、好ましくは3〜150μm、更に好ましくは10〜100μmである。1μmよりも薄いと十分なダイボンド接着力を確保するのが困難になり、200μmよりも厚いと不経済で特性上の利点もない。
【0028】
粘着層(粘着剤)としては、紫外線や放射線等の高エネルギー線や熱によって硬化する(すなわち、粘着力を低下させる)ものが好ましく、中でも高エネルギー線によって硬化するものが好ましく、更には紫外線によって硬化するものが特に好ましい。
【0029】
そのような高エネルギー線(又は紫外線)によって硬化する粘着層は、従来から種々のタイプが知られている。その中から、高エネルギー線(又は紫外線)の照射によって、その粘着力が接着層12の粘着力よりも低くなるものを適宜選んで用いることができる。
【0030】
なお、粘着層中の含有成分としては、例えば、ジオール基を有する化合物、イソシアネート化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ジアミン化合物、尿素メタクリレート化合物、側鎖にエチレン性不飽和基を有する高エネルギー線重合性共重合体等がある。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
粘着層の平面視形状は、接着層12の平面視形状よりも一回り広く大きくて、接着層12を覆い尽くすことができる形状で、接着層12と重なり合わない周縁部(ダイシング用リング載置部となる)を有する形状であれば、特に制限されない。円形、略円形、四角形、五角形、六角形、八角形、ウェハ形状等がある。ただ、前記した接着層12の好ましい形状(円形やウェハ形状)との関係から、好ましい形状は円形である。
【0032】
粘着層の層厚みは、通常は1〜100μm、好ましくは2〜20μm、更に好ましくは3〜10μmである。1μmよりも薄いと十分な粘着力を確保するのが困難になり、ダイシング時に半導体チップが飛散する恐れがあり、100μmよりも厚いと不経済で特性上の利点もない。
【0033】
粘着層を保護するための基材フィルムとしては、剥離性基材11に用いたフィルムもしくはシートと同様な基材を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルム等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等である。なお、基材フィルムの厚みは、通常10〜500μm、好ましくは50〜200μmである。
【0034】
ダイボンドダイシングシートを用いて半導体装置を製造する場合は、例えば次のようにして行う(図8参照)。
(i)剥離基材11からダイボンドダイシングシートを剥離・除去し、接着層とその周囲の粘着層を露出させる(b、c)。
(ii)ダイシング用リング載置部(帯状円環状の粘着剤)にダイシング用リング15を載置するとともに、露出させた接着層12に半導体ウェハ14を貼り付ける(d)。
(iii)半導体ウェハ14の上方側から、少なくとも接着層12と粘着剤との界面までダイシングする(e)。
(iv)紫外線を照射し、上記接着層12と上記粘着層との間の接着力を低下させる。
(v)各々の半導体チップを接着層12が付いた状態でピックアップし、この接着剤(接着フィルム)付き半導体チップ17をリードフレーム等の支持部材の上に載置し、加熱・接着する。
(vi)ワイヤボンドする。
(vii)封止材を用いて封止して、半導体装置を得る。
【0035】
図6は、ダイボンドダイシングシートである。図6は接着層と粘着層と基材フィルムとを一組のラベルとして、これらが長尺の剥離基材11の片面に島状に多数配されてロール状に巻かれた「テープ状(又はシート状)」の形態である。
【0036】
次に、ダイボンドダイシングシートの製造法について説明する。
【0037】
図7は、ダイボンドダイシングシートの製造法の一例を説明する図である。順に説明する。
(1)剥離基材11の片面に、接着層12を形成させる(I)。
(2)半導体ウェハに合うような形状(図では円形)で接着層12を形成でき、かつ、その他の不要な接着剤を除去可能にする切り込み(細溝)を、金型やカッター16を用いて、接着層12の上方側から、剥離基材11に達する深さに切り込みを形成する(第1の切断工程)(II)。
(3)不要な接着層12を剥離・除去する(IIIb)と、剥離基材11上に所定の平面視形状で突出部を有する略円形の接着層(ダイボンド材)12を島状に多数形成させた接着層(ダイボンド材)付き剥離基材を得る(IIIa)。
【0038】
(4)その上から粘着層付き基材フィルム13(粘着フィルム)を、その粘着層が接着層と接するようにして貼り合わせる(IVa、IVb)(第2の積層工程)。
(5)円形の接着層12を覆う所定形状で、その他の不要な粘着層付き基材フィルム13を除去可能にする切り込み(細溝)を、金型やカッター16を用い、その上方側から、剥離基材11に達するまで剥離基材平面に対して切り込みを粘着層付き基材フィルム13の片側から形成する(第2の切断工程)(Va)。
(6)不要な粘着層付き基材フィルム13を剥離・除去し(Vb)、剥離性基材上に所定形状の接着剤12及び粘着層付き基材フィルム13を多数、島状に形成させたダイボンドダイシングシート(VIa、VIb)を得る。
【0039】
本発明における接着シートの切り込み量評価方法は、プッシュプルゲージを用いて基材の切り込み部の破断強度(破断荷重)を測定するものである。
ここで言う破断強度(破断荷重)とは、基材に形成された切り込み部を含む部分を図1に示したように4等分し、図2に示したように剥離基材をプッシュプルゲージ測定部の治具に押し当て、剥離基材を押し込み基材が破断した際の強度を測定した値を意味する。プッシュプルゲージ測定部の治具を基材に形成された切り込み部に押し付けることで、切り込み部が破断し、破断したときの最大荷重がプッシュプルゲージ測定部に表示される。
フィルムの破断強度と切り込み深さには相関関係があり、蓄積されたデータと比較することで切り込み深さ量を容易に評価できる。切り込み深さが深いほど、破断強度(破断荷重)は、小さく、逆に、切り込み深さが浅いほど、破断強度(破断荷重)は、大きくなる。
【0040】
切り込み量(刃物進入量)の調整方法は、プリカット刃のクリアランスを狭めるとより深く切り込まれ、破断強度(破断荷重)を低くすることができ、逆にプリカット刃のクリアランスを広げると、浅く切り込まれるため、破断強度(破断荷重)を高くすることができる。
【0041】
以下に、本発明のプッシュプルゲージを用いた接着シートの切り込み量評価方法を説明する。
本発明において使用するプッシュプルゲージの治具の先端形状について説明する。プッシュプルゲージの先端には冶具を取り付けるが、治具の先端に尖りがないものを用いることが好ましく、プッシュプルゲージの冶具の先端が、曲面形状であることが好ましい。中でもプッシュプルゲージの治具の先端には丸フック式の冶具(図3)を取り付けることが好ましい。先端が尖っているとわずかな力で基材が破断してしまったり、治具の先端に基材フィルムが引っかかる事から切り込み量を正確に把握することが出来ない。
曲面形状の曲率半径Rは、1〜10mmであることが好ましく、直径3〜20mmの丸棒、角棒の先端に曲面形状が設けられているものが好ましい。入手の容易さからプッシュプルゲージに付属の丸フックを用いるのも好ましい。この丸フックは、例えば、直径3mmの丸棒の内側面の曲率半径が4mmとなるようにクエスチョンマークの形状に曲げ加工したものであり、その寸法は、丸フックを上から見た場合、長い部分が15mmで、短い部分が3mmである。この丸フックを接着シートの切り込み部の延長方向に対して、垂直方向で丸フックに押し付けて基材に設けた切り込み部の破断強度(破断荷重)を測定すると好ましい。すなわち、切り込み線を丸フックの長い部分である曲面の15mmと直交させ、切り込み線があたかも押し広げられるようにして破断させると好ましい。
【0042】
次に接着シートの折り目について説明する。接着シートの剥離基材に入った切り込みに対して垂直(90度)に折り目を入れることが望ましい。折り目を入れることで切り込み測定位置を固定することが出来、安定した測定値を得ることが出来る。(図4)
【0043】
また、プッシュプルゲージの治具に力を加える際、治具の先端が接触する中心からそれぞれ30〜40mm離れた位置(つかみ部)をそれぞれの指でつかむことが好ましい(図5)。
【0044】
また、プッシュプルゲージに力を加える際は、接着シートを真下に押し込むことが好ましい。横向きの力を加えると破断強度の値はばらついてしまう。
【0045】
接着シートの切り込み部の延長方向に対するプッシュプルゲージ先端冶具の位置関係について説明する。先端冶具と折り目は平行であることが好ましい(図5)。すなわち、プッシュプルゲージの冶具が、丸フック形状で、接着シートの切り込み部の延長方向に対して、垂直方向に丸フックを押し付けることが好ましい。
本発明の接着シートの切り込み量評価方法は、接着シートの切込み部が露出するようにシート全体を固定し、その固定した接着シートかプッシュプルゲージの治具の両方又はいずれかを制御して自動で動かし、切り込み量を自動測定し、その破断強度(破断荷重)をコンピュータに取り込み、切り込み量の適否を判断して、プリカット刃の調整にフィードバックするなどしても良い。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:YDCN−703、東都化成株式会社製、エポキシ当量:220)60質量部、及び、硬化剤として低吸水性フェノール樹脂(商品名:XLC−LL、三井化学株式会社製、フェノールキシレングリコールジメチルエーテル縮合物)40質量部に、シクロヘキサノン1500質量部を加えて撹拌混合し、第1のワニスを調製した。次に、この第1のワニスに、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:NUC A−189、日本ユニカー株式会社製)1.5質量部、及び、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(商品名:NUC A−1160、日本ユニカー株式会社製)3質量部を加え、更に無機物フィラーとしてシリカフィラー(商品名:R972V、日本アエロジル株式会社製)32質量部を加えて撹拌混合した後、ビーズミルにより分散処理を行うことで第2のワニスを調製した。次に、この第2のワニスに、エポキシ基含有アクリル系共重合体(商品名:HTR−860P−3、帝国化学産業株式会社製)200質量部、及び、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(商品名:キュアゾール2PZ−CN、四国化成工業株式会社製)0.5質量部を加えて撹拌混合し、接着層形成用ワニスを調整した。
【0048】
この接着層形成用ワニスを、厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テイジンピューレックスA31)上に塗布し、140℃で5分間加熱乾燥を行い、厚さ10μmのBステージ状態の接着層を形成した。これにより、PETフィルム(剥離基材)と接着層とからなる接着フィルムを得た。
【0049】
得られた接着フィルムに対して、刃物の切り込み深さ設定を15μmに調節して、直径220mmの円形プリカット加工(第1のプリカット加工)を行った。その後、接着層の不要部分をカス上げにより除去し、粘着フィルム(日立化成工業株式会社製 SD−3000シリーズ、粘着層を基材フィルム(保護フィルム)の片面に設けた粘着層付基材フィルム)をその粘着層が接着層と接するように、室温(25℃)、線圧1kg/cm、速度5m/分の条件で貼付けた。そして、粘着フィルムを切り込み剥離基材に対して、刃物の切り込み深さ設定を15μmに調節して接着層と同心円状に直径270mmの円形プリカット加工(第2のプリカット加工)を行い、不要部分を剥離し、実施例1の接着シートを作製した。
【0050】
第2のプリカット加工における接着シートの剥離基材の破断強度(破断荷重)を測定した。破断強度(破断荷重)の測定は、プッシュプルゲージ(アイコーエンジニアリング株式会社製 RX−20)を用い、先端には丸フック式治具(図3)を取り付けた。測定サンプルは、図1に示したようにフィルムの進行方向に対し、垂直方向、平行方向の4分割にして作製した。
この接着シートの基材フィルムの切り込みにたいして垂直(90度)に折り目を入れた(図4)。先端治具の丸フックと折り目が平行となるようにし、プッシュプルゲージに力を加える際、先端治具とフィルムの切り込みの接点からそれぞれ30〜40mm離れた折り目をそれぞれの指でつかみ真下にフィルムが破断するまで押し込み、破断した時の強度(破断荷重)を読み取った。
4分割した接着シートの各部位((1)〜(4))に関して破断強度測定を行った。破断強度の測定は、8回行い、その平均値を破断強度平均値とした。
【0051】
[実施例2]
接着シートの切り込みに関して折り目を設けないこと以外は実施例1と同様にして破断強度の測定を行った。
【0052】
実施例1、実施例2の破断強度(破断荷重)の測定結果をまとめて表1に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1、実施例2を比較すると、破断強度平均値[N]は、ほぼ同等であるが、ばらつきの尺度であるσ値(標準偏差)は実施例1の方が低く、折り目を設けることで測定ばらつきを少なくすることが出来る。
【0055】
[実施例3]
冶具の丸フックの方向を折り目と垂直(切り込みと平行)にした以外は実施例1と同様にして破断強度の測定を行った。
【0056】
実施例1と実施例3の測定結果をまとめて表2に示した。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例1と実施例3を比較すると、ばらつきの尺度であるσ値には実施例1の方が低く、測定ばらつきを少なくすることが出来る。折り目に対して丸フックを平行にした実施例1では、切り込みに対して、丸フックが直交し、曲面のR(曲率半径)が大きい。一方、実施例3の折り目に対して丸フックを垂直にした実施例3では、切り込みに対して、丸フックが平行となり、曲面のRが小さい。
【0059】
[実施例4〜6]
プッシュプルゲージ先端の治具を図3に示した治具にそれぞれ変更し、さらに、切り込み深さ設定を15μm及び18μmに調節したそれぞれの試料を作製し、それぞれについて破断強度(破断荷重)の測定を実施例1と同様に行った。
【0060】
実施例1(丸フック)、実施例4(ピン型)、実施例5(端子型)、実施例6(円錐型)の測定結果をまとめて表3に示した。
【0061】
【表3】

【0062】
実施例4のピン型では、クリアランス設定値を変化させても、破断強度平均値にほとんど差が見られなかった。
実施例5の端子型では、破断強度測定値が100[N]を超える結果となった。100[N]という数値は人間が押し込む力としてはかなり強い力を必要とするため、実施例1と比べ劣っていた。
実施例6の円錐型では、破断強度測定値が5[N]という結果になった。力をほとんど加えずとも破断が起きてしまうことから、クリアランス設定値を変化させても破断強度に差が見られなかったため実施例1と比べ劣っていた。
【符号の説明】
【0063】
11 剥離基材
12 接着層(接着剤)
13 粘着層付き基材フィルム
14 半導体ウェハ
15 ダイシング用リング
16 切り込み形成用の金型またはカッター
17 個片化した接着フィルム付き半導体チップ
21 ロール状のダイボンドダイシングシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り込み部を有する接着シートの、評価方法であり、プッシュプルゲージの治具に接着シートの切り込み部を押しつけ接着シートのフィルムが破断した時の破断強度(破断荷重)により切り込み量を評価する接着シートの切り込み量評価方法。
【請求項2】
接着シートが、剥離基材上に接着層を積層する第1の積層工程、前記接着層の前記剥離基材に接する側と反対側の面から前記剥離基材に達するまで該剥離基材平面に対して切り込みをいれ、前記切り込まれた外周部分の接着層を除去し、所定の平面形状の接着層を形成する第1の切断工程、前記所定の平面形状の接着層及び前記剥離基材を覆うように、粘着層及び基材フィルムを粘着層が接着層と接するように積層する第2の積層工程、及び前記粘着層及び基材フィルムの前記剥離基材側と反対側の面から前記剥離基材に達するまで該剥離基材平面に対して切り込みを入れ、前記切り込まれた外周部分の粘着層及び基材フィルムを除去し、前記所定の平面形状の接着層と、該接着層を覆い且つ該接着層の周囲で前記剥離基材に接する粘着層及び基材フィルムとからなる、所定の形状の積層体とを形成する第2の切断工程を含むものである請求項1に記載の接着シートの切り込み量評価方法。
【請求項3】
接着シートの剥離基材が、ポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項2に記載の接着シートの切り込み量評価方法。
【請求項4】
接着シートの切り込み部の延長方向に対して、垂直方向に折り目を作り、その折り目の切り込み部を中心として30〜40mm離れた折り目部分を固定し、プッシュプルゲージの治具を切り込み部に押しつける請求項1〜3のいずれかに記載の接着シートの切込み量評価方法。
【請求項5】
接着シートの切り込み部と接するプッシュプルゲージの冶具の先端が、曲面形状である請求項1〜4のいずれかに記載の接着シートの切り込み量評価方法。
【請求項6】
プッシュプルゲージの冶具が、丸フック形状で、接着シートの切り込み部の延長方向に対して、垂直方向に丸フックを押し付ける請求項1〜5のいずれかに記載の接着シートの切り込み量評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−166277(P2012−166277A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27106(P2011−27106)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】