説明

接着剤、補強糸を備えたゴムホース及びゴムホースの製造方法

【課題】ポリエステル繊維等のようにゴムとの接着性が乏しい繊維をゴムに接着でき、かつ、製造及び管理が容易である接着剤を提供し、この接着剤を用いてゴムに接着された補強糸を備えたゴムホース及びこのゴムホースの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】エポキシ基と反応する官能基を有する被接着繊維とゴムとを接着する接着剤であって、このゴムの加硫に用いられる加硫剤と反応する不飽和炭素結合及びエポキシ基を有する接着化合物とブロックイソシアネートとを含むことを特徴とする接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維とゴムとを接着する接着剤、この接着剤によりゴムに接着された補強糸を備えたゴムホース及びこのゴムホースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、ブレーキホースやウォータホース等の自動車に用いられるホースには、耐圧性を向上させるとともに、薄肉により軽量化を図るため、糸を編組又は巻回等した補強層を備えたものが用いられている。そして、この糸には、強度が高く、耐熱性及び耐久性に優れることから、ポリエステル繊維からなるものが用いられている。ところが、ポリエステル繊維はゴムとの接着性が乏しいことから、ポリエステル繊維の糸は、分子内に複数のエポキシ基を有するエポキシド等を用いて、表面に水酸基等の活性官能基を多数付与するエポキシ処理を行った後、RFL(レゾルシン−ホルムアルデヒド−ゴムラテックス)を接着剤に用いて、ゴムとの接着が行われている。また、特許文献1、2には、改良したRFLを用いてポリエステル繊維の糸とゴムとを接着する発明が記載されている。
【0003】
しかし、RFLを接着剤に用いたポリエステル繊維の糸とゴムとの接着は、1)エポキシ処理が必要である、2)RFLの製造工程は温度等の管理項目が多く煩雑である、3)RFLの製造に時間がかかる、4)RFLを水溶液中に分散しているRFL水溶液はRFLと水とが分離しやすく攪拌が必要である、5)RFL水溶液中に分散しているRFL粒子は大きく糸への付着ムラが生じやすい、6)溶媒に水を使用していることから乾燥に時間がかかる、7)糸に付着したRFL粒子同士を融合して付着させるため高温(約240℃)での加熱処理が必要である等の問題があった。
【0004】
なお、RFLを用いないポリエステル繊維コードとゴムとの接着方法として、グリセロールポリグリシジルエーテルとα,β−ポリブタジエンジカルボン酸又はα,β−ポリブタジエングリコールとの混合物を用いる方法が特許文献3に記載されている。しかし、この方法は、ポリエステル繊維コードに混合物を付着させた後、さらに、グリセロールポリグリシジルエーテルを付着させる必要があった。また、それぞれを付着させた後、高温(210℃及び230℃)による加熱処理が必要であった。そのため、工程が煩雑であり、かつ、ポリエステル繊維コードを劣化させるおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−64878号公報
【特許文献2】特開平8−74180号公報
【特許文献3】特開平1−304168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、ポリエステル繊維等のようにゴムとの接着性が乏しい繊維をゴムに接着でき、かつ、製造及び管理が容易である接着剤を提供し、この接着剤を用いてゴムに接着された補強糸を備えたゴムホース及びこのゴムホースの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の接着剤は、エポキシ基と反応する官能基を有する被接着繊維とゴムとを接着する接着剤であって、前記ゴムの加硫に用いられる加硫剤と反応する不飽和炭素結合及びエポキシ基を有する接着化合物を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明のゴムホースは、エポキシ基と反応する官能基を有する被接着繊維からなる補強糸を備え、該補強糸が上記接着剤によってゴムに接着されてなるものである。
【0009】
本発明のゴムホースの製造方法は、エポキシ基と反応する官能基を有する被接着繊維からなる補強糸を備えたゴムホースの製造方法であって、加硫剤と反応する不飽和炭素結合及びエポキシ基を有する接着化合物を含む接着剤を前記補強糸に結合させる結合工程と、前記結合工程の後、加硫剤を含む未加硫のゴムと前記補強糸とを密接させて加熱することで前記ゴムの加硫を行うとともに前記ゴムと前記接着化合物との共架橋を行う加硫工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明における各要素の態様を以下に例示する。
【0011】
1.被接着繊維
エポキシ基と反応する官能基としては、特に限定はされないが、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基等が例示できる。
また、被接着繊維としては、特に限定はされないが、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維等が例示できる。そして、強度が高く、耐熱性及び耐久性に優れることから、ポリエステル繊維であることが好ましい。
【0012】
2.補強糸
補強糸としては、特に限定はされないが、表面により多くの活性官能基(例えば、ヒドロキシル基等)を付与するため、エポキシ処理等が施されていてもよいし、施されていなくてもよい。
【0013】
3.加硫剤
加硫剤としては、特に限定はされないが、硫黄又は加熱等により硫黄を放出する硫黄含有化合物等の硫黄系加硫剤、有機過酸化物等が例示でき、硫黄系加硫剤であることが好ましい。また、加硫剤は、一種類でもよいし、二種類以上を混合したものでもよい。
硫黄含有化合物としては、特に限定はされないが、4,4’−ジチオジモルホリン、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)等が例示できる。
【0014】
4.ゴム
ゴムとしては、特に限定はされないが、硫黄系加硫剤により加硫できるものであることが好ましい。具体的には、NR(天然ゴム)、IR(イソプレンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体)、IIR(ブチルゴム)、CR(クロロプレンゴム)等が例示できる。
また、ゴムは、加硫剤による加硫を行いやすくするため、加硫促進剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。さらに、補強用充填材、老化防止剤、可塑剤、加硫促進助剤、着色剤等の添加剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0015】
5.接着化合物
接着化合物は、エポキシ基を有することで、エポキシ基が被接着繊維の官能基等と反応して、被接着繊維に結合する。また、接着化合物は、加硫剤と反応する不飽和炭素結合を有することで、ゴムの加硫時に加硫剤によりゴムとの共架橋が行われる。これにより、接着化合物は、被接着繊維とゴムとを接着する。
接着化合物としては、特に限定はされないが、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム等のジエン化合物の重合体のように、一つの分子内に複数の炭素−炭素二重結合を有するものの、その一部の炭素−炭素二重結合に酸素が付加してエポキシドを生成した(エポキシ化した)もの等が例示できる。具体的には、ポリブタジエン分子の一部の炭素−炭素二重結合がエポキシ化され、分子内にエポキシ基を有するようになったエポキシ化ポリブタジエン、ポリイソプレン分子の一部の炭素−炭素二重結合がエポキシ化され、分子内にエポキシ基を有するようになったエポキシ化ポリイソプレン、天然ゴム中のポリイソプレン分子の一部の炭素−炭素二重結合がエポキシ化され、ポリイソプレン分子内にエポキシ基を有するようになったエポキシ化天然ゴム等が例示できる。
また、接着化合物は、繊維及び補強糸への付着ムラが起きにくいことから、分子量が小さい(数平均分子量が50000以下である)ことが好ましく、より好ましくは、数平均分子量が1000〜10000である。
また、接着化合物がエポキシ化ポリブタジエン又はエポキシ化ポリイソプレンの場合には、1,4結合のブタジエン又はイソプレンを含むものであることが好ましい。1,4結合のブタジエン又はイソプレンを含むことにより、ゴム弾性を得やすいからである。そのため、エポキシ化前のポリブタジエン又はポリイソプレンにおいて、1,4結合のブタジエン又はイソプレンが50%を超えていたものであることがより好ましい。
また、接着化合物は、一つの分子内に複数の炭素−炭素二重結合を有することが好ましい。一つの分子内に複数の炭素−炭素二重結合を有することにより、ゴムの加硫時に加硫剤によるゴムとの共架橋が行われやすく、また、ゴムとの架橋点が多くなりやすく、ゴムとの接着が強くなるからである。
また、接着化合物は、一つの分子内に複数のエポキシ基や、イソシアネート基と反応する一若しくは二以上のエポキシ以外の官能基を有することが好ましい。一つの分子内に複数のエポキシ基を有することにより、図1に示すように、被接着繊維の官能基に付加した(詳しくは、被接着繊維の官能基とエポキシ基とが反応した)接着化合物と他の接着化合物との重合や、接着化合物とイソシアネート化合物(含むブロックイソシアネート)との共重合で、より多くの接着化合物を被接着繊維に結合させることができ、接着力を向上させることができるからである。また、一つの分子内にイソシアネート基と反応する一若しくは二以上のエポキシ以外の官能基を有することにより、イソシアネート化合物(含むブロックイソシアネート)との共重合で、より多くの接着化合物を被接着繊維に結合させることができ、接着力を向上させることができるからである。
【0016】
6.他の化合物
接着剤は接着化合物以外の他の化合物を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
他の化合物としては、特に限定はされないが、一つの分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、そのイソシアネート化合物のイソシアネート基にブロック化剤を付加してブロックしたブロックイソシアネート、有機溶剤等が例示できる。
イソシアネート化合物やブロックイソシアネートが接着化合物と共重合することで、より多くの接着化合物を被接着繊維に結合させることができ、接着力が向上することから、イソシアネート化合物やブロックイソシアネートを含むことが好ましく、安定性があり取扱が容易であることから、ブロックイソシアネートを含むことがより好ましい。
被接着繊維及び補強糸への塗布が容易にでき、かつ、乾燥時間を短くできることから、有機溶剤を含んでいることが好ましい。有機溶剤としては、特に限定はされないが、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が例示できる。
【0017】
7.ブロックイソシアネート
ブロックイソシアネートとしては、特に限定はされないが、被接着繊維へのダメージが少ないことから、200℃以下でブロック化剤がイソシアネート基から離脱し、接着化合物と反応するものが好ましく、より好ましくは、120℃〜180℃で接着化合物と反応するものである。
ブロックイソシアネートの配合量としては、特に限定はされないが、接着化合物10質量部に対し、0.1質量部〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは、1質量部〜10質量部である。
【0018】
8.結合工程
結合工程としては、特に限定はされないが、被接着繊維の官能基と接着化合物のエポキシ基とが反応し、かつ、被接着繊維へのダメージが少ない、加熱処理の温度及び時間であることが好ましい。具体的には、加熱処理の温度は、240℃以下が好ましく、より好ましくは、200℃以下である。加熱処理の時間は、加熱処理の温度によって異なり、特に限定はされないが、10分間以下が好ましく、より好ましくは、5分間以下である。
【0019】
9.加硫工程
加硫工程としては、特に限定はされないが、加硫剤により、ゴムと接着化合物との共架橋及びゴムの加硫が行われ、かつ、被接着繊維及びゴムへのダメージが少ない、加熱処理の温度及び時間であることが好ましく、具体的には、加熱処理の温度は170℃以下であり、加熱処理の時間は60分間以下である。
【0020】
10.ゴムホース
ゴムホースとしては、特に限定はされないが、ブレーキホースやウォータホース等の自動車に用いられるホース、圧縮空気等を送る耐圧ホース等が例示できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の接着剤によれば、ポリエステル繊維等のようにゴムとの接着性が乏しい繊維をゴムに接着でき、かつ、製造及び管理を容易に行うことができる。
また、この接着剤を用いてゴムに接着された補強糸を備えたゴムホース製造し、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ポリエチレンテレフタレート繊維に対する本発明の接着剤の結合機構を表す模式図である。
【図2】接着力測定用試験片の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0023】
本発明の実施例として、二種類の接着剤(ブロックイソシアネートの添加の有無)を作成した。そして、この接着剤を用いてポリエチレンテレフタレート繊維の糸とEPDMとを接着したときの接着力を求め、その値及び接着判定(評価)を表1に示す。また、比較例として、RFLの接着剤を用いて、ポリエチレンテレフタレート繊維の糸若しくはポリビニルアルコール繊維の糸とEPDMとを接着したとき、又は接着剤を用いないでポリエチレンテレフタレート繊維の糸とEPDMとを接着したときの接着力を求めた。そして、その値及び接着判定(評価)も表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
実施例の接着剤は次のものであった。
ブロックイソシアネートを含む接着剤は、エポキシ化ポリブタジエンである、ダイセル化学工業社の商品名「エポリードPB3600」(数平均分子量が5900)10質量部に、トルエン50質量部とエタノール50質量部とを加え、さらに、希釈ブロックイソシアネート10質量部を加え攪拌して均一に混合したものであった。なお、希釈ブロックイソシアネートには、ブロックイソシアネートを有機溶剤(キシレン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈した、固形分が60質量%、有効イソシアネート基が8質量%、25℃の粘度が300mPa・sのものを用いた。
ブロックイソシアネートを含まない接着剤は、エポキシ化ポリブタジエンである、ダイセル化学工業社の商品名「エポリードPB3600」10質量部に、トルエン50質量部とエタノール50質量部とを加え攪拌して均一に混合したものであった。
【0026】
比較例に用いたRFLの接着剤は、水酸化ナトリウム水溶液に、レゾルシン(R)とホルマリン(F)と(レゾルシン/ホルマリンのモル比:1/0.5)を加え25℃で約2時間攪拌して熟成させた後、二種類のラテックス(L)〔VPラテックス(スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン共重合体ラテックス)とBRラテックス(ブタジエンゴムラテックス)、VPラテックス/BRラテックスの質量比:75/25〕をレゾルシンとホルマリンとの合計量に対する固形分比率(RF/L)が1/9となるように添加して25℃で約18時間攪拌することで熟成させたものであった。
【0027】
本実施例及び比較例には、次に示す糸及びEPDMゴムを用いた。
糸は、ポリエステル繊維であるポリエチレンテレフタレート(PET)繊維からなる糸に、エポキシ処理を行ったもの若しくは行わなかったもの又はポリビニルアルコール(PVA)繊維からなる糸を用いた。
EPDMゴムは、EPDM100質量部にFEFカーボンブラック100質量部、パラフィンオイル50質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸3質量部、硫黄系加硫剤15質量部及び加硫促進剤4質量部を配合したものを用いた。
【0028】
各実施例について説明する。
実施例1は、エポキシ処理が行われていないポリエチレンテレフタレート繊維の糸を上記のブロックイソシアネートを含む接着剤に浸漬して接着剤を塗布した後、180℃で5分間の加熱処理を行って、糸の質量に対し約2質量%の接着剤の不揮発成分(エポキシ化ポリブタジエン等)を糸に結合(硬化)させた。その後、この糸を厚さ2mmの板状の上記EPDMゴムに密接させて160℃で15分間熱プレスし、EPDMゴムの加硫及びEPDMゴムとエポキシ化ポリブタジエンとの共架橋により糸とEPDMゴムとの接着を行った。
実施例2は、接着剤に上記のブロックイソシアネートを含まない接着剤を用いた以外は、実施例1と同じように行った。
実施例3は、糸にエポキシ処理が行われたポリエチレンテレフタレート繊維の糸を用いた以外は、実施例1と同じように行った。
実施例4は、糸にエポキシ処理が行われたポリエチレンテレフタレート繊維の糸を用いた以外は、実施例2と同じように行った。
【0029】
各比較例について説明する。
比較例1は、エポキシ処理が行われていないポリエチレンテレフタレート繊維の糸を上記のRFLの接着剤に浸漬して接着剤を塗布した後、120℃で2分間の乾燥を行い、その後、240℃で2分間の加熱処理を行って、糸の質量に対し約2質量%の接着剤の不揮発成分(RFL)を糸に付着(硬化)させた。その後、この糸を厚さ2mmの板状の上記EPDMゴムに密接させて160℃で15分間熱プレスし、EPDMゴムの加硫及び糸とEPDMゴムとの接着を行った。
比較例2は、糸にポリビニルアルコール繊維の糸を用いた以外は、比較例1と同じように行った。
比較例3は、糸にエポキシ処理が行われたポリエチレンテレフタレート繊維の糸を用いた以外は、比較例1と同じように行った。
【0030】
比較例4は、エポキシ処理が行われていないポリエチレンテレフタレート繊維の糸を接着剤を塗布せずそのまま厚さ2mmの板状の上記EPDMゴムに密接させて160℃で15分間熱プレスし、EPDMゴムの加硫及び糸とEPDMゴムとの接着を行った。
比較例5は、糸にエポキシ処理が行われたポリエチレンテレフタレート繊維の糸を用いた以外は、比較例4と同じように行った。
【0031】
接着力
各試料の接着力は、次のようにして求めた。
試験体10は、図2に示すように、互いに間を空けて並べた大小二つの板状の未加硫のEPDMゴムのゴム片11、12上に、7本の糸13を互いに平行に並るとともに、マスキングシート14を二つのゴム片11、12の間を跨いでゴム片11、12と糸13との間に挿入した状態で、160℃15分間のプレス加硫を行うことにより作成した。
このように作成した試験体10の大きい方のゴム片11のマスキングシート14により糸13が接着されていない部位11aを試験機の一方の把持部で把持するとともに、小さい方のゴム片12を接着させた糸13ごと試験機の他方の把持部で把持して、この二つの把持部を互いに離反するように移動させ、そのときに大きい方のゴム片11から7本の糸13を剥がすときの力である剥離力を測定し、この値を接着力とした。
また、このようにして求めた接着力が、10Nを超えるものは◎、8N〜10Nのものは○、8N未満のものは×と接着判定をした。
【0032】
エポキシ化ポリブタジエンを含む接着剤を用いてポリエチレンテレフタレート繊維の糸をEPDMに接着した実施例1〜4は、接着力が8.7N以上であり、比較例4、5のように、接着剤を用いない場合より、接着力が高くなった。
特に、実施例1、2のように、ポリエチレンテレフタレート繊維の糸にエポキシ処理を行わなくても、接着力が10.0N以上であり、比較例1のように、RFLを用いた場合より、接着力が高くなった。
また、接着剤としてエポキシ化ポリブタジエンとブロックイソシアネートとを含むものを用いた実施例1、3は、接着力が11.2N以上であった。
【0033】
以上より、本実施例の接着剤によれば、ポリエチレンテレフタレート繊維の糸をEPDMに8.7N以上の接着力となるよう接着することができた。
また、RFLのように約20時間の時間をかけて熟成させる必要がなく、製造途中に化学反応を伴う工程がないことから製造が容易であった。
また、エポキシ化ポリブタジエン等が溶媒中に溶解していることから、RFLのように分離しにくく、管理が容易であった。
また、分子量が比較的小さいエポキシ化ポリブタジエン等が溶媒中に溶解していることから、RFLのように補強糸への付着ムラが生じるおそれがなかった。
また、溶媒に有機溶剤を用いたことにより、接着剤に含浸した糸を乾燥する(溶媒を除去する)時間が短くなった。
また、エポキシ処理等の前処理を行うことなく、ポリエチレンテレフタレート繊維の糸をEPDMに10.0N以上の接着力となるよう接着することができた。
また、接着剤を糸に結合させる結合工程の加熱処理を180℃で行うことができ、熱による糸の劣化を抑制することができた。
また、接着剤を糸に結合させる結合工程の加熱処理を180℃で行うことができ、加熱処理にかかるコストを削減することができた。
また、人体等への影響が懸念されるホルマリンを使用するRFLと違い、ホルマリンを使用しないことから、作業環境の改善が図れた。
本実施例の接着剤を用いることにより、ポリエチレンテレフタレート繊維の糸をEPDMに8.7N以上の接着力となるよう接着することができたことから、ポリエチレンテレフタレート繊維の糸で補強されたゴムホースを製造することができた。
【0034】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基と反応する官能基を有する被接着繊維とゴムとを接着する接着剤であって、
前記ゴムの加硫に用いられる加硫剤と反応する不飽和炭素結合及びエポキシ基を有する接着化合物を含むことを特徴とする接着剤。
【請求項2】
前記接着化合物は、エポキシ化ポリブタジエンである請求項1記載の接着剤。
【請求項3】
前記接着剤は、ブロックイソシアネートを含む請求項1又は2記載の接着剤。
【請求項4】
エポキシ基と反応する官能基を有する被接着繊維からなる補強糸を備え、該補強糸が請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着剤によってゴムに接着されてなるゴムホース。
【請求項5】
エポキシ基と反応する官能基を有する被接着繊維からなる補強糸を備えたゴムホースの製造方法であって、
加硫剤と反応する不飽和炭素結合及びエポキシ基を有する接着化合物を含む接着剤を前記補強糸に結合させる結合工程と、
前記結合工程の後、加硫剤を含む未加硫のゴムと前記補強糸とを密接させて加熱することで前記ゴムの加硫を行うとともに前記ゴムと前記接着化合物との共架橋を行う加硫工程とを備えることを特徴とするゴムホースの製造方法。
【請求項6】
前記接着化合物は、エポキシ化ポリブタジエンである請求項5記載のゴムホースの製造方法。
【請求項7】
前記接着剤は、ブロックイソシアネートを含むものである請求項5又は6記載のゴムホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−111563(P2011−111563A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270532(P2009−270532)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】