説明

接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物からセルロース及びリグニンを回収する方法

【課題】ベニヤ、集成材等の接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物から、リグニンとセルロースを容易に回収する方法の提供。
【解決手段】接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物を破砕機にて破砕し、その最大径を10cm以下の破砕物となした後、その破砕物を水に浸漬させ、その後その水浸漬破砕物をアルカリ溶液中に浸漬させ、かつ超音波の照射を行ってその超音波による微細な振動(キャビテーション効果)により、前記破砕物を細破砕してセルロースの分離回収とリグニン溶出回収を行うことによりセルロース及びリグニンを回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は従来困難な処理とされている産業廃棄物・一般廃棄物に含まれる接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物、例えば合板(ベニヤ板)の廃棄物(廃合板)から、リグニンとセルロースを回収する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は戦後大量に製造された合板類が家屋やビルの解体に伴い大量に廃棄物として排出されているが、廃合板は、かさばりかつ平板であるため風にあおられやすく、汚れており、燃えにくく、燃やすと黒煙や悪臭を発し、処理が困難である。
合板は木材が原料であり、木材はセルロースとリグニンにて構成されているのでリグニンを除去すればセルロースが残り、パルプ原料となるためリサイクルが強く要望されている。
昨今では、前記合板のほかに、集成材等の接着剤により木片が接合された木質複合材が、建材として使用されており、それらの使用済み廃棄物や端切れ材のリサイクルが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来廃合板の処理には、下記のような方法があった。
〈1〉廃合板を焼却炉で焼却処理する方法。
〈2〉廃合板を破砕し、セメント会社に持ち込み、セメント製造時の熱エネルギー源として利用する方法。
〈3〉廃合板を破砕し、管理型処分場に搬入し、埋立処分する方法。
【0004】
しかしながら上記〈1〉の方法においては、民間の産廃の焼却施設は、住民の反対から許可を受け稼動してる焼却施設が全国的に僅かであり、排出量に対し処理能力がかなり不足している。
〈2〉については、セメント会社にとって、破砕された廃合板を焼却処理し、熱エネルギーとして利用することは良い方法の一つであるが、廃合板の熱カロリーは低く、また燃えにくく、さらにセメント会社には多くの他の焼却適合ごみが搬入されるので現在、廃合板をセメント会社にて焼却する方法はセメント会社より受入の制限又は拒否される場合が多い。
【0005】
〈3〉については現在、全国的に民間の最終処分場が不足しており、また埋立処分場にあっては、各都道府県は事前協議制を採用しており、事前協議を通して処分することは困難になっている。
また、埋立コストも高く廃合板は、埋立後は腐敗し、水質環境を悪化させている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するものであり、下記構成の接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物からセルロース及びリグニンを回収する方法である。
[1]接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物を破砕機にて破砕し、その最大径を10cm以下の破砕物となした後、その破砕物を水に浸漬させ、その後その水浸漬破砕物をアルカリ溶液中に浸漬させ、かつ超音波の照射を行ってその超音波による微細な振動(キャビテーション効果)により、前記破砕物を細破砕してセルロースの分離回収とリグニン溶出回収を行うことを特徴とする接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物からセルロース及びリグニンを回収する方法。
[2] 水浸漬破砕物をアルカリ溶液中に浸漬する際に用いられるアルカリ剤が、カ性ソーダ又はカ性ソーダと硫化ソーダの混合物であることを特徴とするとする前項[1]記載の接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物からセルロース及びリグニンを回収する方法。
【0007】
[3](1)水にアルカリを添加混合して得られたアルカリ水を槽(以下アルカリ槽という)の中に入れる工程、
(2)同アルカリ槽の中に、接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物の最大径10cm以下の破砕物をカゴ(プラスチック製かステンレス製)に入れたまま埋没させる工程、
(3)同アルカリ槽の(2)のカゴ内の破砕物に対して超音波照射を行う工程、
(4)(3)工程と同時に同槽の中のアルカリ水を循環させるため同アルカリ槽の底部からアルカリ水を引き抜く工程、
(5)(4)工程で得られたアルカリ水をフィルターに通して濾液を得る工程、
(6)同濾液に酸を添加して中和し、凝集沈澱処理し、静置分離槽にて接着剤とリグニンの一部を除去する工程、
(7)(6)工程で得られた上水液を貯水槽に導きアルカリ調整を行い、再びアルカリ溶液として(1)へ供給する工程、
(8)(3)工程を施したカゴをアルカリ含有の熱湯槽(熱湯が入っている槽)へ移動し浸漬する工程、
(9)前記(8)の熱湯槽の底部から、前記破砕物から抽出されたリグニン含有の熱湯水を引き抜く工程、
(10)(9)で引き抜かれたリグニン含有熱湯水を撹拌槽へ供給する工程、
(11)撹拌槽に酸を添加して中和し、凝集剤を添加して、リグニンを沈降する工程、
(12)(11)で撹拌処理されたリグニン含有液を静置分離槽へ供給する工程、
(13)(12)の静置分離槽で沈降分離されたリグニン残渣を脱水してリグニンケーキを得る工程、
(14)(8)工程を終えたカゴからセルロースを取り出す工程、からなることを特徴とする前項[1]又は[2]記載の接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物からセルロース及びリグニンを回収する方法。
【0008】
[4]前項[3]記載の方法において、(8)工程を終えたカゴをオゾン漂白槽へ移送し、オゾンを供給して漂白処理する工程、を含むことを特徴とする接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物からセルロース及びリグニンを回収する方法。
[5]超音波照射処理により細破砕された破砕物をアルカリ水にて水洗し、再びアルカリ水溶液を槽の中に入れ加温させて100℃迄高め、セルロースからリグニンを除去する効果を促進させるために超音波を照射することを特徴とする前項[1]〜[4]のいずれか1項に記載の接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物からセルロース及びリグニンを回収する方法。
なお、上記においては、アルカリ水のpHは11〜14が好ましく、特にpH12〜13が好ましく、また超音波の周波数は20〜50KHzが好ましく、特に25〜35KHzで、2分間以上照射することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来困難な処理とされているベニヤや集成材等の接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物から、容易にリグニンとセルロースを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例である廃合板からリグニンとセルロースを回収するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、図1に示すフローチャート図により説明する。
本発明においては、ベニヤ板等の接着剤により複合化された木質複合材の使用済み材料あるいは端切れ材料である廃棄物からセルロース及びリグニンを回収する方法であり、まず廃合板等の廃棄物を破砕機にて最大径10cm以下に細破砕し、その細破砕物をカゴに入れ、アルカリ水に浸漬させ、超音波を照射させて、廃棄物中の接着剤と木質部とを剥がして分離する。
超音波の振動力により、接着剤による木質部同士の接着力は急速に弱まり、接着剤と木質部に分離される。
また、アルカリ水溶液を循環させ、細破砕物に水流を衝突させることにより剥離を促進させる。
アルカリ水溶液を循環させる方法は、アルカリ槽の底部からアルカリ水溶液を抜取り、フィルター、攪拌槽、静置分離槽を通過させることにより接着剤等固形分を除去し、きれいなアルカリ水溶液として廃合板の剥離を促進させ、再度カゴ内の細破砕物に強い水流を当て、木片同士の剥離を更に効率的にすすめる。
剥離後、廃合板はカゴ毎、別のアルカリ水溶液の槽の中に入れ、更に洗浄し、リグニン除去装置に移行させる。
リグニン除去装置は、熱湯の供給と保温により、100℃位を保つよう管理し、アルカリ水溶液の循環と水流の発生と高い温度の維持によって、リグニンがアルカリ水溶液の中に溶け込み、セルロースがカゴ内に残る。
リグニンの除去を早めるため、リグニン除去槽の底部にたまるリグニンを引き抜きフィルター、攪拌槽、静置分離槽を通過させることによりリグニンの除去を行い、リグニン除去後、アルカリ水溶液を再びリグニン除去槽に戻し、循環使用する。
廃合板のリグニン除去後のセルロースの質を上げるため、セルロースを傷つけない範囲にてオゾン水により漂白を行う。
漂白後のセルロースは、パルプ原料としてリサイクルが可能である。
【0012】
すなわち図1に記載のごとく、まず、ベニヤ等の廃合板を破砕機により最大径10cm以下に破砕する。次いで、具体的には下記工程を実施することにより、接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物からセルロース及びリグニンを回収する。
(1)水にアルカリを添加混合して得られたアルカリ水を槽(以下アルカリ槽という)の中に入れる、
(2)同アルカリ槽の中に、接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物の最大径10cm以下の破砕物をカゴ(プラスチック製かステンレス製)に入れたまま埋没させる、
(3)同アルカリ槽の(2)のカゴ内の破砕物に対して超音波照射を行う、
(4)(3)工程と同時に同槽の中のアルカリ水を循環させるため同アルカリ槽の底部からアルカリ水を引き抜く、
(5)(4)工程で得られたアルカリ水をフィルターに通して濾液を得る、
(6)同濾液に酸を添加して中和し、凝集沈澱処理し、静置分離槽にて接着剤とリグニンの一部を除去する、
(7)(6)工程で得られた上水液を貯水槽に導きアルカリ調整を行い、再びアルカリ溶液として(1)へ供給する、
(8)(3)工程を施したカゴを熱湯槽(熱湯が入っている槽)へ移動し浸漬する、
(9)熱湯槽の底部から、前記破砕物から抽出されたリグニン含有の熱湯水を引き抜く、
(10)(9)で引き抜かれたリグニン含有熱湯水を撹拌槽へ供給する、
(11)撹拌槽に酸を添加して中和し、凝集剤を添加して、リグニンを沈降する、
(12)(11)で撹拌処理されたリグニン含有液を静置分離槽へ供給する、
(13)(12)の静置分離槽で沈降分離されたリグニン残渣を脱水してリグニンケーキを得る、
(14)(8)工程を終えたカゴからセルロースを取り出す。
なお、必要に応じて、前記(8)工程を終えたカゴをオゾン漂白槽へ移送し、オゾンを供給してカゴ内のセルロースを漂白処理することも好ましい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物を破砕機にて破砕し、その最大径を10cm以下の破砕物となした後、その破砕物を水に浸漬させ、その後その水浸漬破砕物をアルカリ溶液中に浸漬させ、かつ超音波の照射を行ってその超音波による微細な振動(キャビテーション効果)により、前記破砕物を細破砕してセルロースの分離回収とリグニン溶出回収を行うことを特徴とする接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物からセルロース及びリグニンを回収する方法。
【請求項2】
水浸漬破砕物をアルカリ溶液中に浸漬する際に用いられるアルカリ剤が、カ性ソーダ又はカ性ソーダと硫化ソーダの混合物であることを特徴とするとする請求項1記載の接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物からセルロース及びリグニンを回収する方法。
【請求項3】
超音波照射処理により細破砕された破砕物をアルカリ水にて水洗し、再びアルカリ水溶液を槽の中に入れ加温させて100℃迄高め、セルロースからリグニンを除去する効果を促進させるために超音波を照射することを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の接着剤により複合化された木質複合材の廃棄物からセルロース及びリグニンを回収する方法。


【図1】
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【公開番号】特開2009−235410(P2009−235410A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119938(P2009−119938)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【分割の表示】特願2003−116285(P2003−116285)の分割
【原出願日】平成15年4月21日(2003.4.21)
【出願人】(599015799)株式会社ケイ・アイシステムエンジニアリング (1)
【出願人】(503147240)株式会社 国連社 (1)
【Fターム(参考)】