接着剤供給装置及び接着剤供給方法
【課題】接着剤の流動防止のための線幅を細く維持しつつ、均一で高い貼り合わせ厚を確保できる接着剤供給装置及び接着剤供給方法を提供する。
【解決手段】貼り合わせ対象となるワークS1に対して接着剤R1を供給することにより、充填材である接着剤を供給する領域を規定するための土手部を生成する土手生成部と、ワークS1に対して、接着剤R1の流動を抑制する線状の抑制部Cを生成する抑制部生成部10とを有する。抑制部生成部10は、UVインクIを塗布する塗布部10aと、UVインクIを硬化させる硬化処理部10bとを有する。
【解決手段】貼り合わせ対象となるワークS1に対して接着剤R1を供給することにより、充填材である接着剤を供給する領域を規定するための土手部を生成する土手生成部と、ワークS1に対して、接着剤R1の流動を抑制する線状の抑制部Cを生成する抑制部生成部10とを有する。抑制部生成部10は、UVインクIを塗布する塗布部10aと、UVインクIを硬化させる硬化処理部10bとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、一対のワークを貼り合わせるために、ワークに接着剤を供給する技術に改良を施した接着剤供給装置及び接着剤供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶ディスプレイは、液晶モジュール、操作用のタッチパネル、表面を保護する保護パネル(カバーパネル)等を積層することにより構成されている。これらの液晶モジュール、タッチパネル、保護パネル等(以下、ワークと呼ぶ)は、液晶ディスプレイの筐体に組み込まれる。
【0003】
このようなワーク同士を貼り合わせるためには、接着シートを用いる方法と樹脂の接着剤を用いる方法がある。接着シートは、基体となるシートの両面に粘着剤が塗布され、剥離紙が貼付されたものである。この接着シートは、接着剤に比べて比較的高価である。また、接着シートの使用に当たっては、あらかじめ剥離紙を剥離する等の工程が必要となる。このため、近年のコスト削減の要求などから、比較的安価で工程の簡略化が可能な接着剤を用いた貼り合わせが主流となってきている。
【0004】
また、保護パネルやタッチパネルのようなワークは、液晶の表示面の領域に重なるように積層される。この場合、各ワーク間に空気の層が入ると、外光反射により、表示面の視認性が低下する。これに対処するため、各ワークを貼り合せる際に、接着剤によって各ワークの間(ギャップ)を埋めることにより、接着層を形成することが行われている。かかる接着層は、各ワークの間のスペーサとして、ワークを保護する機能を有する。
【0005】
また、近年では、画面の大型化の要請から、液晶ディスプレイも大型化している。大型の液晶ディスプレイの場合、これを構成するワークも大面積となるので、変形が生じやすい。このため、変形を吸収してワークを保護することを可能にするために、接着層に要求される厚みが増える傾向にある。たとえば、数100μmの厚みが要求されるようになってきている。
【0006】
このように厚みを確保すると、必要な接着剤の量が増える。すると、必要量の接着剤がワークに供給された場合、接着剤が流動して、ワークからはみ出しやすくなる。そこで、接着剤として使用する樹脂(レジン)を、流動の少ない高粘度のものとすることが考えられる。しかし、かかる場合にも、接着剤の塗布位置等、プロセス条件の調整を厳密に行わないと、貼り合わせ時に、接着剤が所定の領域からはみ出してしまう場合がある。
【0007】
これに対処するため、あらかじめ、塗布領域を規定する外周に、樹脂によってシール(以下、土手部とする)を形成するシール方式がある(特許文献1参照)。たとえば、図21に示すように、ワークS1に、樹脂による接着剤R1を枠状に塗布して硬化させることにより、土手部を形成する。その後、土手部の内側に樹脂による接着剤R2を充填して、ワークS2を貼り合わせる。このシール方式では、外周に土手部があるので、この土手部によって、貼り合わせ時の接着剤の流動によるはみ出しを防止できる。
【0008】
なお、光学的乱反射をなくすために、ワーク間に、ワークに屈折率が近い物質(機能材料)を充填する場合もある。この場合、充填される材料(充填材)は、ワークを接着する機能も担っている。
【0009】
また、貼り合わせ方法として、大気中で貼り合わせる方法と真空中で貼り合わせる方法の2種がある。大気中で貼り合わせる方法は、排気設備が不要であり、安価に実現できる。ただし、大気中での貼り合わせは、貼り合わせ面に気泡が残らないようにするために、樹脂を広げて貼り合わせる際の接着剤の塗布パターンと貼り合わせ圧力、圧力のかけ方等のプロセス条件出しが難しく、また、貼り合わせに時間もかかる。一方、真空中で貼り合わせる方法では、周囲に気体がないことから、容易に気泡の少ない貼り合わせを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−66711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記のシール方式によって形成した土手部と、内部に充填した接着剤等の充填材との間には、境界が残る場合がある。たとえば、タッチパネル付きの液晶ディスプレイにおいて、ユーザの視野範囲内に、先に硬化した土手部と、内部の接着剤との境界が入ると、画面の視認性が阻害される。このため、図21に示すように、接着剤R1は、最終製品におけるユーザの視野範囲Wの外にあることが好ましい。
【0012】
この視野範囲については、上記のような画面の大型化の要請から、広い面積を確保することが望まれる。これに対して、装置全体については大型化を抑えることが要請されている。このため、ワークにおける視野範囲とは別の領域において、充填領域を画する土手部用に確保できるスペースは、非常に狭くなる傾向にある。たとえば、表面の保護パネルについては、ユーザの視野範囲が広くなる傾向にあるのに対して、その周囲の化粧枠の領域は、狭められる傾向にある。このため、土手部のための塗布部分の幅は、可能な限り細くする必要がある。目安としては、1mm以下の細線化が望まれる。
【0013】
一方、上記のように、接着層の厚みを確保するという観点からは、土手部を高くする必要がある。しかも、貼り合わせ時のワークの圧力による土手部の圧縮を考えると、土手部形成時における土手部の高さは、最終的な接着層の高さ以上とする必要がある。
【0014】
しかし、一般的に、塗布幅を細くするためには、塗布量を少なくしなければならず、充填空間として十分な高さを確保し難い。塗布量を多くすれば、塗布厚を高くすることはできるが、塗布線幅も広くなってしまうからである。ここで、基板の表面状態が一様である場合、土手部の塗布線高さと塗布線幅は、大きくは塗布量と粘度に支配される。
【0015】
たとえば、図22は、塗布ノズルの径や掃引速度を一定条件として、土手部を塗布した場合で、土手部の塗布量(X軸)と土手部の塗布線高さ(Y軸)との関係(いずれも無次元)を示した一例である。また、図23は、同様に、土手部の塗布量(X軸)と土手部の塗布線幅(Y軸)との関係を示した一例である。
【0016】
これらの実験結果に示すように、塗布量が多くなるにしたがって、塗布線高さは高くなるが、塗布線幅も広くなる。これは、塗布後のレベリング(平滑化、平坦化)により、塗布線幅が拡大するため、塗布量が多くなれば、それだけレベリングが大きくなることによる。
【0017】
このため、貼り合わせ厚が決まった時点で、必要な塗布量が決まる。また、これにより、塗布線幅の値も決まってしまう。したがって、要求される細線化が可能となる貼り合わせ厚には、限界が存在する。たとえば、塗布量が多くなると、レベリングが進んで塗布線幅が広くなってしまう。
【0018】
また、レベリングの状態は接着剤の粘度によっても影響される。粘度が高い場合は、レベリングし難いので、同じ塗布量であっても、図22に示す高さよりも高くなり、図23に示す幅より狭くすることができる。また、粘度が高い場合は、同じ塗布量でありながら、図24に示したような基板接触角であっても、塗布線幅をより狭く維持することができる。これとは逆に、粘度が低い場合は、レベリングし易いので、同じ塗布量であっても高さは低くなり、幅は広がる。したがって、塗布量を増やさずに、細線の高さを高く、幅を細くするには、接着剤の粘度を高くすることが有効ではある。しかし、粘度を高くすると、塗布ノズルから吐き出し難くなるなど、供給量の均一性が保ち難く、供給時の制御性が低下する。
【0019】
特許文献1のように、紫外線硬化型の接着剤の塗布によって土手部を形成し、その後、紫外線照射により硬化させたとしても、レベリングは、接着剤がワークに接した瞬間から起こるため、塗布量が多いと、レベリングの影響を皆無にすることはできず、細線化には限定された効果しか望めない。
【0020】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、充填材の流動防止のための接着剤の線幅を細く維持しつつ、均一で高い貼り合わせ厚を確保できる接着剤供給装置及び接着剤供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するため、本発明は、貼り合わせ対象となるワークに対して接着剤を供給することにより、充填材を供給する領域を規定するための土手部を形成する接着剤供給装置において、以下のような構成を有することを特徴とする。
【0022】
(1) ワークに対して、接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を生成する抑制部生成部
(2) 抑制部に接する位置に、土手部となる接着剤を線状に供給する接着剤供給部
【0023】
なお、抑制部生成部は、以下のような構成を有する態様とすることが可能である。
(A)土手部よりも低い小土手部を形成する小土手部形成部
(B)ワークの表面を改質する改質処理部
(C)ワークの表面の接着剤に対する親和性を変える親和性改変処理部
【0024】
さらに、以下のような態様も構成可能である。
(D)接着剤供給部が、接着剤を線状に複数回重ねて供給可能に設けられている
(E)土手部に規定される領域に、充填材を供給する充填材供給部を有する
【0025】
以上のような発明では、線状の抑制部によって、土手部となる接着剤の流動が抑制されるので、線幅を細く維持しつつ、土手部を高く形成することができる。このため、土手部内に供給される充填材の流動を防止しつつ、ワーク同士の均一で高い貼り合わせ厚を確保することができる。
なお、上記の各態様は、接着剤供給方法の発明としても捉えることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上、説明したように、本発明によれば、充填材の流動防止のための接着剤の線幅を細く維持しつつ、均一で高い貼り合わせ厚を確保できる接着剤供給装置及び接着剤供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態における抑制部の生成とともに行う1回目の接着剤の供給開始(A)及び供給後(B)を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における2回目の接着剤の供給開始(A)及び供給後(B)を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における3回目の接着剤の供給開始(A)及び供給後(B)を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における接着剤の充填開始(A)及び充填後(B)を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるワークの貼り合わせ開始(A)及び貼り合わせ後(B)を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における抑制部の生成と接着剤の供給を示す平面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における複数回の接着剤供給を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態における土手部を示す平面図である。
【図9】接着剤を硬化させずにワークを貼り合わせた場合の接着剤の変形例を示す説明図である。
【図10】本発明の第1の実施形態において、ワークを貼り合わせた場合の接着剤の変形例を示す説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態における抑制部の生成と接着剤の供給を示す平面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における抑制部と接着剤を示す断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態における抑制部の生成と接着剤の供給を示す平面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態における抑制部と接着剤を示す断面図である。
【図15】本発明の第4の実施形態における抑制部の生成と接着剤の供給を示す平面図である。
【図16】本発明の第4の実施形態における抑制部と接着剤を示す断面図である。
【図17】電磁波の一括照射による硬化処理の一例を示す断面図である。
【図18】複数台のユニットの走査の一例を示す平面図である。
【図19】複数台のユニットの走査の一例を示す平面図である。
【図20】特定の領域を回避して土手部を形成した例を示す平面図である。
【図21】シール方式の貼り合わせ例を示す説明図である。
【図22】塗布量に応じた土手部の塗布線高さの例を示す説明図である。
【図23】塗布量に応じた土手部の塗布線幅の例を示す説明図である。
【図24】塗布線幅と基板接触角との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態(以下、実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[1.第1の実施形態]
[概要]
本実施形態は、充填材を供給する領域を規定するために、接着剤により土手部(シール部)を形成する接着剤供給装置である。特に、本実施形態は、土手部の形成経路に沿って、土手部となる接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を形成する。この抑制部は、本実施形態では、土手部よりも高さの低い小土手部とする。
【0029】
なお、図1〜図10において、Cは土手部となる接着剤の流動を抑制する抑制部、Dは充填材を供給する領域を規定する土手部、Fは土手部D内に充填材を充填した充填部、である。なお、本実施形態の抑制部Cは、土手部Dと比べて少なくとも高さの低い小土手部であり、その材料として、たとえば、紫外線硬化型のUVインクを用いる。土手部D及び充填部Fの材料としては、たとえば、紫外線硬化樹脂を用いる。
【0030】
[構成]
本実施形態の構成を説明する。本実施形態は、図1〜図6に示すように、土手形成部1、貼合部2等を有している。貼り合わせの対象となるワークS1は、これらの土手形成部1及び貼合部2との間を、搬送部3によって移動可能に設けられている。なお、図中、抑制部Cを形成するためのUVインクはI、土手部Dを形成するための接着剤はR1、充填部Fを形成するための接着剤はR2とする。
【0031】
[土手形成部]
土手形成部1は、ユニットUを有している。ユニットUは、図6に示すように、抑制部生成部10、土手生成部11等を有している。抑制部生成部10は、抑制部Cである小土手部を生成するための構成部(小土手部形成部)である。この抑制部生成部10は、塗布部10a、硬化処理部10b等を有している。
【0032】
塗布部10aは、たとえば、図示しないタンクに収容されたUVインクIを、ノズルから放出するインクジェットヘッドを有している。このノズルは、UVインクIを2列の線状に塗布(印刷)できるように設けられている。この2列の線の幅は、土手部Dの幅を規定するため、土手部Dの細線化に十分な幅とする。所望の幅を得るため、塗布部10aは、その塗布線幅を調整可能な構成とすることが可能である。
【0033】
硬化処理部10bは、UVインクIを硬化(乾燥)させるための構成部である。たとえば、UV光を、UVインクIに照射する照射部を有している。照射部としては、たとえば、2列のUVインクIをともに照射する幅で、UV光を照射する構造でも、2列のUVインクIのそれぞれに、別々にUV光を照射する構造でもよい。
【0034】
なお、光学特性や材料のコンタミネーション等の観点から、抑制部Cは、視覚的に明確に認識される異物や、製品の品質に影響を与えるような異物とならないことが好ましい。このための対策の一つとして、UVインクIとしては、土手部Dや充填部Fと同種の樹脂の粘度違いのものを用いることが考えられる。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。
【0035】
土手生成部11は、接着剤供給部11a、接着剤硬化処理部11b等を有している。接着剤供給部11aは、ワークS1の面上に接着剤R1、R2を供給するための構成部である(充填材供給部を兼用)。接着剤供給部11aは、たとえば、図示しないタンクに収容された接着剤R1、R2を、配管を介して供給口からワークS1に滴下するディスペンサを備えている。供給口は、ノズルの先端に形成されたものや、単なる開口を含み、その形状は問わない。接着剤硬化処理部11bは、接着剤R1を硬化するための構成部である。接着剤硬化処理部11bは、たとえば、UV光を、接着剤R1に照射する照射部を有している。
【0036】
なお、硬化処理部10bの照射部、接着剤硬化処理部11bの照射部は、照射部自体がUV光源であっても、図示しないUV光源からのUV光を、光ファイバを介して照射する構造であってもよい。また、照射部からの照射光は、放射光でよい。ただし、照射部は、スポット的若しくは狭い範囲に集光させる光学部材(集中部材)を備えてもよい。この光学部材としては、たとえば、集光レンズ、スリット、細線光ファイバ、導光板(たとえば、薄い矩形等に成型されたガラスやプラスチック)、反射ミラー、凹面鏡等が適用可能である。照射口径や照射幅は、かかる光学部材によっても調整可能である。照射強度は、光源の強度調整による他、かかる光学部材によっても調整可能である。
【0037】
本実施形態においては、上記の抑制部生成部10、土手部生成部11は、一つのユニットUに設けられている。このユニットUは、たとえば、走査装置(図示せず)によって移動可能に構成されている。なお、接着剤供給部11aによる供給幅、照射部による照射口径、照射幅、照射強度等は、ユニットUの昇降によっても調整可能である。塗布部10a、硬化処理部10b、接着剤供給部11a及び接着剤硬化処理部11bの少なくとも一つについて、ユニットUとは独立して昇降可能に設けてもよい。
【0038】
さらに、ユニットUは、抑制部の材料の供給に硬化処理部11bが追従し、接着剤の供給に接着剤硬化処理部11bが追従するように、進行する方向に従って角度変更可能に設けられている。抑制部の材料や土手部の接着剤の供給の有無の切り替え及び供給量の調整は、各ノズルや弁の開閉、ポンプの作動等によって実現できる。たとえば、UVインクIを2列に塗布する場合、ユニットUが角度を変える際に、各列のノズルの供給の有無のタイミングを制御することにより、方向が変わっても連続した2列の塗布が可能となる。なお、インクジェットヘッドと照射部との間、ディスペンサと照射部との間には、散乱光でノズル等の接着剤が硬化するのを防止するために、遮光部材、遮光機構等を設けることが望ましい。
【0039】
[貼合部]
貼合部2は、図5に示すように、ワークS1の土手部D及び充填部Fに対して、ワークS2を貼り合わせる貼合装置20を有している。貼合装置20は、たとえば、真空チャンバ21、押圧装置22等を有している。
【0040】
真空チャンバ21は、貼り合わされるワークS1、S2の周囲を覆い、搬送部3との間を密閉することにより、真空室を構成するチャンバである。真空チャンバ21には、真空源(減圧装置)である減圧ポンプ(図示せず)が、配管を介して接続されている。また、真空チャンバ21は、図示しない昇降機構によって、昇降可能に設けられている。
【0041】
押圧装置22は、ワークS2を押圧することにより、ワークS1に対してワークS2を貼り付ける装置である。この押圧装置22は、たとえば、ワークS2を保持する保持部、保持部を昇降させる昇降機構などにより構成されている。
【0042】
[搬送部]
搬送部3は、ワークS1を、土手形成部1から貼合部2へと搬送する搬送装置30を有している。この搬送装置30は、載置部31に載置した状態で、ワークS1を搬送する。搬送装置30としては、たとえば、ターンテーブル、コンベア等及びその駆動機構が考えられる。ただし、上記各部の間でワークを搬送可能な装置であれば、どのような装置であってもよい。
【0043】
なお、上記の各部は、それぞれの走査装置、昇降機構、駆動機構、ポンプ、ノズル、弁、スイッチ、電源、駆動源等が、制御装置によって制御される。この制御装置は、たとえば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって、以下のような手順で、各部を動作させるように構成されている。
【0044】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、図1〜図10を参照して説明する。なお、以下に説明する手順で接着剤供給装置を制御する方法も本発明の一態様である。まず、図1に示すように、搬送装置30は、前工程から載置部31に載置されたワークS1を、土手形成部1に搬送する。土手形成部1においては、図1(A)、図6に示すように、走査装置によって、ユニットUを移動させながら、塗布部10aが、ワークS1に対してUVインクIを塗布するとともに、接着剤供給部11aが、接着剤R1を供給する。
【0045】
UVインクIの塗布は、たとえば、次のように行う。すなわち、塗布部10aが有するインクジェットヘッドのノズルによって、2本の線状(2列)にUVインクIを塗布する。ここでは、走査装置によってユニットUを走査することにより、方形のワークS1に対し、2重の方形の枠状に、UVインクIを塗布していく。これと同時に、硬化処理部10bの照射部によって、UV光をUVインクIに照射していく。なお、2本のUVインクIは、必ずしも同時に塗布しなくてもよい。ユニットUの走査を2回行うことにより、1本のノズル等によって、2回に分けて塗布してもよい。
【0046】
このUVインクIの塗布及び硬化に追従した接着剤R1の供給は、たとえば、次のように行う。すなわち、接着剤供給部11aが有するディスペンサのノズルから、2本のUVインクIの間に、接着剤R1を滴下する。これと同時に、接着剤硬化処理部11bの照射部によって、UV光を接着剤R1に照射していく。UV光の照射条件は、塗布と同じスピードで適度な仮硬化(半硬化)状態が得られる強度に設定することが考えられる。これは、使用する接着剤の種類によって異なる。
【0047】
また、接着剤の種類によっては、大気中等、酸素が存在する雰囲気下では、酸素阻害により硬化の進行が遅くなるため、半硬化となりやすい場合がある。ただし、硬化の程度は自由であり、外縁を本硬化させてもよい。酸素阻害を防ぎたい場合には、排気装置若しくは不活性ガス供給装置を設け、これにより酸素を排除すれば、本硬化となりやすい。なお、本発明では、使用する接着剤の種類は限定されず、酸素阻害を受けるものでも、受けないものでも使用可能である。
【0048】
これにより、図1(B)に示すように、硬化したUVインクIにより2列の抑制部Cが形成され、その間に接着剤R1が線状に塗布される。このとき、抑制部Cによって接着剤R1のレベリングが抑制される。また、接着剤R1はある程度硬化しているので、さらにレベリングの抑制効果がある。そして、抑制部C及び接着剤R1の始端と終端が一致して閉じることにより、1段目の枠部(塗布線部)が形成される。
【0049】
なお、インクジェットにおいては、一部の特殊なヘッドを除き、吐出時の液の粘度を低くする必要がある(たとえば、20cP以下)。このため、塗布時にある程度のレベリングが生じることは避けられない。この対策として、たとえば、微少吐出量のヘッドを用いて、より細い線を描画し、本実施形態のように、塗布直後にUV光により硬化させて安定させることが好ましい。
【0050】
そして、図2(A)に示すように、走査装置によって走査されるユニットUの接着剤供給部11aが、1段目の枠部の上に、重ねて接着剤R1を供給する。これと同時に、接着剤硬化処理部11bの照射部によって、UV光を接着剤R1に照射していく。これにより、重ねて供給された接着剤R1が、ある程度硬化する。さらに、1段目の枠部は、再度UV光の照射を受けるため、硬化が進んで硬くなる。このように接着剤R1を塗布し、始端と終端が一致して閉じることにより、図2(B)に示すように、2段目の枠部(塗布線部)が形成される。
【0051】
さらに、図3(A)に示すように、走査装置によって走査されるユニットUの接着剤供給部11aが、2段目の枠部の上に、重ねて接着剤R1を供給する。これと同時に、接着剤硬化処理部11bの照射部によって、UV光を接着剤R1に照射していく。これにより、重ねて供給された接着剤R1が、ある程度硬化する。さらに、1段目及び2段目の枠部は、再度UV光の照射を受けるため、硬化が進んで硬くなる。このように接着剤R1を塗布し、始端と終端が一致して閉じることにより、図3(B)に示すように、3段目の枠部(塗布線部)が形成される。
【0052】
この3回の塗布による3段の枠部によって、図7、図8に示すように、方形の土手部Dが構成される。なお、3回目の塗布による上層の枠部は、UV光を1回しか浴びていないため、硬化が弱く、クッション性が維持されている。
【0053】
次に、図4(A)に示すように、接着剤供給部11aが、ワークS1の土手部Dの内部に対して、接着剤R2を供給する。たとえば、ディスペンサのノズルから接着剤R2を滴下しながら、走査装置によって走査することによって、土手部D内に、接着剤R2を充填する。これにより、図4(B)に示すように、土手部D内が充填部Fとなる。
【0054】
その後、搬送装置30は、土手部Dと充填部Fが形成されたワークS1を、貼合部2に搬送する。貼合部2においては、押圧装置22にワークS2を保持した真空チャンバ21が下降して、図5(A)に示すように、ワークS1、S2の周囲が密閉される。そして、減圧ポンプが作動することにより、真空チャンバ21内の減圧(排気)が開始する。
【0055】
真空引き完了後は、図5(B)に示すように、押圧装置22が下降することにより、ワークS1に対して、ワークS2が押し付けられる。このとき、3回目の塗布による上層の枠部は、上記のようにクッション性が維持されている。このため、上層の枠部によって、貼り合わせ時の歪み等は吸収される。
【0056】
また、1回目及び2回目の塗布による下層の枠部は、比較的硬化が進んでいる。このため、下層の枠部が、厚みを維持するスペーサの役目を果たして、抑制部Cによるレベリングの抑制効果と相俟って、潰れによる広がりを抑制できる。これにより、貼り合わせ厚の均一性を実現できる。
【0057】
たとえば、抑制部C及び塗布毎のUV光照射がない場合、図9(A)に示すように、接着剤R1における下の枠部の流動は何ら規制されず、上下の枠部の粘度はほぼ同様となっているため、レベリングが進行する。そして、貼り合わせ時には、図9(B)に示すように、潰れる量、広がる面積が大きくなってしまう。
【0058】
一方、本実施形態のように、抑制部Cを形成し、これに沿って土手部Dを形成した場合、図10(A)に示すように、抑制部Cによって、レベリングが抑制される。さらに、土手部Dの下層の硬化が進んでいるので、貼り合わせ時には、図10(B)に示すように、抑制部Cとともに、下層がスペーサ代わりになって、潰れや面積の広がりを抑制する。一方、上層は硬化が進んでいないので、クッションとなって歪みを吸収する。
【0059】
その後、排気路の開放等により真空破壊が行われ、真空チャンバ21が上昇することにより、貼り合わされたワークS1、S2は大気開放される。さらに、搬送装置30が、ワークS1、S2を貼合部2から次工程へと搬出する。たとえば、搬送装置30は、ワークS1、S2を、電磁波の照射により土手部D、充填部Fを硬化させる硬化部へと移動させる。
【0060】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。すなわち、抑制部Cによって接着剤R1のレベリングが抑制されるので、濡れ性と塗布量に左右されることなく、細い線幅による接着剤R1の塗布を実現できる。このため、線幅に対する高さの比の値が大きい高アスペクト比の土手部Dを形成でき、高い貼り合わせ厚の確保と狭い塗布幅の維持が可能となる。したがって、土手部Dのためのスペースが狭い場合であっても、ユーザの視野範囲を阻害せずに接着層を形成できる。
【0061】
また、UVインクI及び接着剤R1の供給と同時にUV光照射を行うので、効率良く抑制部C及び土手部Dを形成することができる。さらに、層を重ねる毎にUV光照射を行うので、下層の硬化が進行して、レベリング抑制効果が高まる。しかも、貼り合わせ時には、上層のクッション性は維持される。
【0062】
[2.第2の実施形態]
[概要]
本実施形態は、充填材を供給する領域を規定するために、接着剤により土手部(シール部)を形成する接着剤供給装置である。特に、本実施形態は、土手部の形成経路に沿って、接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を形成する。この抑制部は、本実施形態では、ワークS1の表面を改質した改質部である。
【0063】
なお、図11及び図12において、Gは接着剤の流動を抑制する抑制部である。この抑制部Gは、たとえば、ワークS1の表面の有機汚染物Hを除去することにより生成される改質部とする。
【0064】
[構成]
本実施形態は、基本的には、図1〜図6に示した実施形態と同様の構成を有している。ただし、本実施形態の土手形成部1におけるユニットUは、図11に示すように、上記の接着剤供給部11a、接着剤硬化処理部11bに加えて、抑制部生成部13を有している。この抑制部生成部13は、抑制部Gである改質部を生成するための構成部である(改質処理部)。抑制部生成部13は、たとえば、ワークS1の表面の有機汚染物Hを、UV洗浄により除去できるように、UV光をワークS1に照射する照射部により洗浄部を構成する。
【0065】
洗浄部としては、たとえば、土手部Dの幅で、線状にUV光を照射できる構造であればよい。洗浄部のUV光の波長としては、オゾンを生成する波長、たとえば、低圧水銀ランプのλ=254nmやエキシマランプのλ=180nmなどが好ましい。ただし、本発明の洗浄部による洗浄は、これには限定されない。たとえば、大気圧プラズマ装置による洗浄等も利用できる。
【0066】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、図11、図12を参照して説明する。なお、装置の基本的な動作(ワークS1の搬送、ユニットUの走査、ワークS1の貼り合わせ等)は、図1〜図6に示した実施形態と同様である。ただし、本実施形態においては、図11に示すように、走査装置によって、ユニットUを移動させながら、抑制部生成部13の洗浄部が、ワークS1に対してUV光をワークS1の面上に照射する。これにより、ワークS1の有機汚染物Hが洗浄された線状の抑制部Gが生成される。
【0067】
これとともに、接着剤供給部11aが有するディスペンサのノズルから、抑制部G上に、接着剤R1を滴下する。これと同時に、接着剤硬化処理部11bの照射部によって、UV光を接着剤R1に照射していく。これにより、図12に示すように、抑制部G上に、接着剤R1が線状に塗布される。抑制部Gは、有機汚染物Hが除去された改質部であり、接着剤R1に対して親液性を有する親液パターンとなる。また、有機汚染物Hは、接着剤R1に対して撥液性を有する。
【0068】
このため、接着剤R1は抑制部G上に留まり、有機汚染物Hからは弾かれるので、レベリングが抑制され、大きな接触角が得られる。また、接着剤R1はある程度硬化しているので、さらにレベリングの抑制効果がある。そして、抑制部C及び接着剤R1の始端と終端が一致して閉じることにより、1段目の枠部(塗布線部)が形成される。その後の接着剤R1の塗布、接着剤R2の充填、ワークS1、S2の貼り合わせは、上記の図1〜図6及びその説明で示した通りである。
【0069】
[効果]
以上のような本実施形態では、ワークS1の有機汚染物Hを線状に除去した改質部に、接着剤R1を塗布することにより、接着剤R1の流動を抑制できるので、上記の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、ワークS1の部分により若しくはワークS1毎に表面の状態が異なっていても、塗布される接着剤R1の状態にばらつきが生じることを防止でき、安定した土手部Dを形成できる。
【0070】
[3.第3の実施形態]
[概要]
本実施形態は、充填材を供給する領域を規定するために、接着剤により土手部(シール部)を形成する接着剤供給装置である。特に、本実施形態は、土手部の形成経路に沿って、接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を形成する。この抑制部は、本実施形態では、接着剤に対する親和性を改変した親和性改変部であり、特に、親液性を有する親液部であるる。
【0071】
なお、図13及び図14において、Eは接着剤の流動を抑制する抑制部である。この抑制部Eは、たとえば、ワークS1の表面に、接着剤に対して親液性の高い材料を線状に塗布した親液部とする。
【0072】
[構成]
本実施形態は、基本的には、図1〜図6に示した実施形態と同様の構成を有している。ただし、本実施形態の土手形成部1におけるユニットUは、図13に示すように、上記の接着剤供給部11a、接着剤硬化処理部11bに加えて、抑制部生成部14を有している。この抑制部生成部14は、抑制部Eである親液部を生成するための構成部である(親和性改変処理部)。抑制部生成部14は、たとえば、ワークS1の面上に、土手部Dの幅で、線状に親液部を形成できるように、ワークS1に親液性のある材料を塗布する供給部を有している(親液材料供給部)。
【0073】
親液性のある材料としては、たとえば、接着剤の密着を補助する材料とすることが考えられる。この材料としては、レジスト塗布等で用いられる密着助剤のように、化学的な付着力を得る薬品を用いることができる。また、接着剤を親液性のある材料として用いることもできる。
【0074】
供給部としては、たとえば、土手部Dの幅で、線状に親液性のある材料を供給できる構造であればよい。たとえば、図示しないタンクに収容された材料を、配管を介してワークS1に滴下するディスペンサを用いることができる。
【0075】
ただし、目標とする線幅を得るためには、一般的なディスペンサでは塗布量が多すぎる場合があると考えられる。そのような場合には、nl(ナノリットル)オーダーでの吐き出しが可能なディスペンサを用いることが望ましい。さらに、インクジェットのノズルのように、微少な液滴を吐き出しできる装置を用いることも好ましい。なお、インクジェットでは、低粘度液(特殊用途でなければ、一般に20cP程度が上限)しか扱えないため、液の流動(レベリング)の影響が大きい。このため、レベリング後、所望の幅の塗布線となるような吐出量のノズルを用いる必要がある。
【0076】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、図13、図14を参照して説明する。なお、装置の基本的な動作(ワークS1の搬送、ユニットUの走査、ワークS1の貼り合わせ等)は、図1〜図6に示した実施形態と同様である。ただし、本実施形態においては、図13に示すように、走査装置によって、ユニットUを移動させながら、ワークS1に対して、抑制部生成部14の供給部が、親液性を有する材料を線状に塗布する。これにより、ワークS1の表面に、親液性を有する線状の抑制部Eが形成される。
【0077】
これとともに、接着剤供給部11aが有するディスペンサのノズルから、抑制部E上に、接着剤R1を滴下する。これと同時に、接着剤硬化処理部11bの照射部によって、UV光を接着剤R1に照射していく。これにより、図14に示すように、抑制部E上に、接着剤R1が線状に塗布される。抑制部Eは、接着剤R1に対して親液性を有する親液パターンとなる。
【0078】
このため、接着剤R1は抑制部E上に留まり、レベリングが抑制されるので、大きな接触角が得られる。また、接着剤R1はある程度硬化しているので、さらにレベリングの抑制効果がある。そして、抑制部E及び接着剤R1の始端と終端が一致して閉じることにより、1段目の枠部(塗布線部)が形成される。その後の接着剤R1の塗布、接着剤R2の充填、ワークS1、S2の貼り合わせは、上記の図1〜図6及びその説明で示した通りである。
【0079】
[効果]
以上のような本実施形態では、ワークS1に親液性の材料を塗布した親液部に、接着剤R1を塗布することにより、接着剤R1の流動を抑制できるので、上記の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、ワークS1の部分により若しくはワークS1毎に表面の状態が異なっていても、接着剤R1が優先的に抑制部Eに付着するので、安定した土手部Dを形成できる。
【0080】
[4.第4の実施形態]
[概要]
本実施形態は、充填材を供給する領域を規定するために、接着剤により土手部(シール部)を形成する接着剤供給装置である。特に、本実施形態は、土手部の形成経路に沿って、接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を形成する。この抑制部は、本実施形態では、接着剤に対する親和性を改変した親和性改変部であり、特に、撥液性を有する撥液部である。
【0081】
なお、図15及び図16において、Jは接着時の流動を抑制する抑制部である。この抑制部Jは、たとえば、ワークS1の表面に、接着剤に対して撥液性の高い材料を塗布した撥液部とする。
【0082】
[構成]
本実施形態は、基本的には、図1〜図6に示した実施形態と同様の構成を有している。ただし、本実施形態の土手形成部1におけるユニットUは、図15に示すように、上記の接着剤供給部11a、接着剤硬化処理部11bに加えて、抑制部生成部15を有している。この抑制部生成部15は、抑制部Jである撥液部を生成するための構成部である(親和性改変処理部)。抑制部生成部15は、たとえば、ワークS1の面上に、土手部Dの幅の間隔で、2本の線状に撥液部を形成できるように、ワークS1に撥液性のある材料を塗布する供給部を有している(撥液材料供給部)。
【0083】
供給部としては、たとえば、土手部Dの幅で、2本の線状に撥液性のある材料を供給できる構造であればよい。たとえば、図示しないタンクに収容された材料を、配管を介してワークS1に滴下するディスペンサを用いることができる。望ましいディスペンサの態様及びインクジェットのノズルも使用可能であることは、上記の実施形態と同様である。
【0084】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、図15、図16を参照して説明する。なお、装置の基本的な動作(ワークS1の搬送、ユニットUの走査、ワークS1の貼り合わせ等)は、図1〜図6に示した実施形態と同様である。ただし、本実施形態においては、図15に示すように、走査装置によって、供給ユニットUを移動させながら、ワークS1に対して、抑制部生成部15の供給部が、撥液性を有する材料を2本の線状に塗布する。これにより、ワークS1の表面に、撥液性を有する2本の線状の抑制部Jが形成される。なお、2本の抑制部Jは、必ずしも同時に形成しなくてもよい。ユニットUの走査を2回行うことにより、1本のノズル等によって、2回に分けて塗布してもよい。
【0085】
これとともに、接着剤供給部11aが有するディスペンサのノズルから、抑制部Jの間に、接着剤R1を滴下する。これと同時に、接着剤硬化処理部11bの照射部によって、UV光を接着剤R1に照射していく。これにより、図16に示すように、抑制部Jの間に、接着剤R1が線状に塗布される。抑制部Jは、接着剤に対して撥液性を有する撥液パターンとなる。
【0086】
このため、抑制部J上の接着剤R1は、2本の抑制部Jに弾かれてその間に留まるので、レベリングが抑制され、大きな接触角が得られる。また、接着剤R1はある程度硬化しているので、さらにレベリングの抑制効果がある。そして、抑制部J及び接着剤R1の始端と終端が一致して閉じることにより、1段目の枠部(塗布線部)が形成される。その後の接着剤R1の塗布、接着剤R2の充填、ワークS1、S2の貼り合わせは、上記の通りである。
【0087】
[効果]
以上のような本実施形態では、ワークS1に撥液性の材料を塗布した2本の撥液部の間に、接着剤R1を塗布することにより、接着剤R1の流動を抑制できるので、上記の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、ワークS1の部分により若しくはワークS1毎に表面の状態が異なっていても、2本の抑制部Jの間が相対的に親液面となり、接着剤R1の流動が抑制されるので、細線化が実現できる。
【0088】
なお、ワークS1の表面に、撥液性の材料を枠状に塗布し、その中央を線状に除去することにより、上記のような2本の撥液部を形成することも可能である。材料の除去には、公知のあらゆる方法が適用可能である。実施形態で例示した洗浄若しくは表面荒らしのための手法を用いることもできる。
【0089】
[5.他の実施形態]
本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではない。たとえば、以下のような形態も、本発明に含まれる。
【0090】
(1)抑制部である小土手部の形成は、UVインクの塗布には限定されない。たとえば、塗布部として、樹脂を供給するディスペンサ、インクジェットヘッドを用いて、樹脂を塗布することにより形成してもよい。樹脂としては、土手部Dや充填部Fと同種の粘度違いとすることが望ましいが、これには限定されない。この場合、硬化処理部としての照射部は、上記と同様でよい。また、塗布部が、一般的な酸化重合型のインキを塗布する構成としてもよい。この場合、硬化処理部としては、送風若しくは加熱を行う乾燥部とすることが考えられる。
【0091】
(2)抑制部である改質部の生成は、加工部によって、ワークS1の表面を荒らすことによっても実現できる。これは、たとえば、加工部をUV光やレーザ光等を照射する照射部として、光の照射により表面を細線状に荒らす方法が考えられる。なお、加工部によって、化学的に表面を細線状に荒らす方法等が考えられる。たとえば、加工部として、大気圧プラズマ、サンドブラスト等の処理装置を用いて、表面を荒らす方法も考えられる。このように形成された抑制部は、アンカー効果による付着力により、上記と同様に、接着剤の流動を抑制することができる。この場合、特別な材料が不要となり、加工処理も早い。
【0092】
(3)抑制部である小土手部、親液部、撥液部の形成については、以下のような方法も適用可能である。
(転写、印刷)
抑制部生成部として、転写装置、印刷装置等を用いることにより、版による転写、レーザ転写、スクリーン印刷などにより、抑制部を形成することも可能である。この転写、印刷は、転写装置、印刷装置を局所的に走査しながら形成する方法がある。ただし、転写装置の備える版による転写、印刷装置によるスクリーン印刷では、ワークS1の全体に一括で形成することも可能である。この一括形成の場合、硬化処理部による硬化処理は、上記のように走査により行ってもよいが、一括で行ってもよい。たとえば、図17に示すように、硬化処理部である照射部16により、ワークS1の全体に電磁波Mを照射することが考えられる。このような一括処理を行うと、効率的に製造できる。たとえば、抑制部の生成若しくは硬化のための時間が大幅に短縮され、この時間に他の工程が拘束されなくなる。
【0093】
(蒸着、スパッタリング)
また、抑制部生成部として蒸着装置やスパッタリング装置を用いて、局所的な蒸着やスパッタリングにより形成することも可能である。かかる場合、たとえば、レーザ蒸着装置が備える蒸着ヘッドを走査することにより形成する方法がある。また、蒸着装置による蒸着時、スパッタリング装置によるスパッタリング時、ワークS1の一部を覆うマスクを用いることにより、一括処理により形成する方法も考えられる。
【0094】
(乾燥)
抑制部の形成に当たって、乾燥を行う乾燥装置(乾燥部)を設けてもよい。たとえば、使用する材料(樹脂、インク等)によっては、硬化処理部として送風若しくは加熱を行う乾燥部を設け、送風若しくは加熱による乾燥を行うことが、形成速度や強度に関して、有効な場合がある(上記(1)参照)。
【0095】
(4)親液材料、撥液材料としては、公知のあらゆる材料を利用可能である。たとえば、親液材料として、光触媒やシリカ微粒子を用いてもよい。撥液材料としては、種々の樹脂、高分子材料等を用いることができる。フッ素系の樹脂、高分子、シランカップリング剤、界面活性剤なども、撥液材料として用いることができる。このように、親液材料、撥液材料によって親液部、撥液部を形成する場合にも、ワークの一部を覆うマスクを用いることにより、一括処理により形成することもできる。
【0096】
(5)なお、大気圧プラズマ装置によって、ワークの表面を荒らしたり、洗浄したりする場合には、ワークの一部を覆うマスクを用いることにより、一括処理により形成することもできる。局所的にプラズマを照射可能な照射部を用いることも可能である。
【0097】
(6)土手部となる接着剤の供給(塗布、滴下等)の回数(形成する層数、枠数等)は、上記で例示した3回には限定されない。たとえば、2回であっても、4回以上であってもよい。必要な高さが得られるのであれば、重ねて塗布しなくても、1回でもよい。本発明では、抑制部が存在するため、1回の塗布であっても、接着剤の量を多くして高さを確保しつつ、細線を維持できる。また、塗布した接着剤に対する仮硬化は、必ずしも行わなくてもよい。接着剤の仮硬化がなくても、抑制部が存在するため、レベリングを抑制できる。接着剤を重ねて塗布する場合には、下の接着剤の薄膜が、親液性の膜となって、レベリングを抑制できる。
【0098】
(7)抑制部となる材料を供給する構成部及びこれを硬化させる硬化処理部、土手部となる材料を供給する構成部及びこれを硬化させる硬化処理部、充填材を供給する供給部、ユニット等の数は、装置の構造及び規模、所望のタクト、コスト等に応じて、最適な数を選択して設計すればよい。また、走査方法等は、自由である。
【0099】
たとえば、図18に示すように、2つのユニットUが、ワークS1の直交する2辺と平行に直交移動することにより、塗布を行ってもよい。この場合、コーナーで角度を変える際に、ユニットUが、軸を中心に回動することにより、塗布に硬化処理が追従するようにする必要がある。
【0100】
また、たとえば、図19に示すように、4つのユニットUが、ワークのそれぞれの辺と平行に直進若しくは往復することにより、塗布を行ってもよい。これにより、硬化処理部を追従させるために、コーナーで角度変更する必要がなくなる。なお、各ユニットUの動作タイミングは、タクト短縮のために、互いに干渉することが無いように設定する。その他、複数の供給部と硬化処理部を組み合わせたユニットを構成することも可能である。多連のディスペンサや照射装置を用いることもできる。
【0101】
また、抑制部は、必ずしも連続している必要はない。接着剤が、表面張力等により流動し難いときは、レベリングが抑制できる範囲で、隙間があってもよい。たとえば、抑制部を、点線状(点状、点と線の組み合わせ等)に形成してもよい。
【0102】
また、抑制部生成部、接着剤供給部、接着剤硬化処理部等のいずれかを、独立に移動可能に設けてもよい。たとえば、抑制部生成部をユニットUとは別体として、走査装置によって別個に走査される構成としてもよい。転写、印刷、蒸着、スパッタリングにより、抑制部を一括で生成する場合、そのための装置は、接着剤供給部、接着剤硬化処理部等とは別体として構成可能となる。抑制部を一括で硬化させる場合、そのための装置も、接着剤供給部、接着剤硬化処理部等とは別体として構成可能となる。硬化処理のための手段(照射部、送風部、加熱部、冷却部等)は、抑制部と土手部に対してそれぞれ別個のものを備えてもよいが、共通のものを備えてもよい。
【0103】
つまり、抑制部生成部は、土手形成部と一体であってもよいし、別個の装置として構成されたものでもよい。抑制部の硬化処理部も、抑制部と一体であってもよいし、別個の装置として構成されたものでもよい。
【0104】
さらに、土手部内への接着剤の供給は、供給部とは別に設けた供給部(充填材供給部)によって行ってもよい。たとえば、土手部を形成するための接着剤と、内部の接着剤との種類を変える若しくは同種でも添加剤等により特性を変える場合等には、供給部を別々とすることが考えられる。この場合、土手部の接着剤は粘度を高く、内部の接着剤は粘度を低くすること、あるいは両者の硬化速度が異なるものを用いること等が考えられる。
【0105】
充填時の供給部の走査方向は、上下、前後左右、回転等、自由に設計可能である。この場合も、多連のディスペンサを用いて効率良く充填させてもよい。その他、ローラによって塗布する装置、スキージによって塗布する装置、スピン塗布する装置等、種々の装置が適用可能である。なお、充填材としては、土手部と同様若しくは異なる接着剤が適用可能であるが、必ずしも接着剤には限定されず、他の機能材料であってもよい。
【0106】
(8)硬化処理部による接着剤の硬化処理は、上記の例のように、接着剤の1回の供給ごとに行ってもよい。つまり、硬化処理部が、1回目に供給した接着剤に硬化を進行させる処理を行い、その後、さらに重ねて接着剤を供給する毎に、接着剤の硬化を進行させる処理を行うようにしてもよい。ただし、最初の1回の供給について硬化処理を行った後は、複数回に1回、硬化処理を行うように設定してもよい。つまり、硬化処理部が、1回目に供給した接着剤に硬化を進行させる処理を行い、その後、さらに重ねて複数回接着剤を供給した後に、硬化を進行させる処理を行うようにしてもよい。
【0107】
また、硬化処理部による硬化処理は、接着剤の供給に追従させる必要はない。接着剤を供給後に、広範に硬化処理を行うようにすることも可能である。たとえば、図17に示すように、接着剤を1回塗布した後に、さらに、その後の塗布毎に若しくは複数回塗布した後に、上方に配置した電磁波の照射部16から、全体に電磁波を照射することも可能である。温度変更装置や送風装置等の場合も、同様に塗布後の接着剤全体に対して硬化処理を行うことが可能である。
【0108】
(9)抑制部、土手部(接着剤)、充填材に使用する樹脂の種類は、紫外線硬化樹脂には限定されない。他の電磁波により硬化する樹脂や熱硬化型樹脂等、あらゆる種類の接着剤が適用できる。この場合、接着剤の種類に応じて、硬化処理部は、電磁波の照射装置(照射部)、温度変更装置(加熱部、冷却部)、送風装置(加熱部、冷却部、乾燥部)等、種々のものを適用することが考えられる。
【0109】
(10)集中部材としては、たとえば、赤外線による加熱により硬化する接着剤の場合、凹面鏡をはじめとする反射器等の光学部材が有効である。温風若しくは冷風を用いる場合には、集中部材としてはノズル等が考えられる。マイクロ波を用いる場合には、磁気レンズ等も有効である。紫外線や赤外線の場合、レーザ光により、細い領域への照射を実現することもできる。
【0110】
(11)土手部を構成する線は、その形状を問わない。方形、円形、楕円形、その他の多角形、曲線円形であってもよい。たとえば、図20に示すように、ワークS1に、接着剤を塗布すべきでない領域Zが存在する場合に、これを回避するように、土手部Dを形成することも可能である。土手部は、少なくとも一方向への接着剤の流動を抑制できればよい。このため、充填部を規定する線は、必ずしも閉じた領域を構成していなくてもよい。直線状、屈曲線状、曲線状であってもよい。したがって、充填材、充填部といっても、供給箇所の周囲が囲まれている必要はない。
【0111】
また、接着剤の供給により土手部を形成する箇所は、接着剤の供給領域の外周を規定する線には限らない。たとえば、円形のディスクの内周円上のように、供給領域の内周を規定する線であってもよい。
【0112】
(12)貼合部、搬送部についても、現在又は将来において利用可能なあらゆる方法、装置が適用可能である。たとえば、貼合部について、ワークを保持する構造も、たとえば、メカチャック、静電チャック、真空チャック等、どのような構造であってもよい。真空貼り合わせを行う空間も、下側の部材が昇降して密閉、開放を行う構造でも、ワークの通路のみが開閉する構造でもよい。さらに、必ずしも真空貼合装置でなくてもよく、大気中で貼り合わせを行う装置でもよい。
【0113】
搬送装置も、たとえば、ターンテーブル、コンベア、送り機構等、どのような構造であってもよい。載置部は、たとえば、サセプタ等が考えられるが、ワークを支持できる支持体として機能するものであれば、どのような材質、形状であってもよい。水平方向に支持するものには限らない。ワークの搬送方法も、載置部に載置される場合には限定されない。移動する台上に直接載置されていてもよい。
【0114】
上記の作業の一部を手動により行う方法も考えられる。たとえば、土手部内への接着剤の供給等を、塗布、滴下等のための用具を用いて、作業者が行うこともできる。ワークの移動についても、作業者が手作業で行ってもよい。
【0115】
(13)貼り合せ対象となるワークは、カバーパネルやタッチパネルと液晶モジュール若しくは液晶モジュールを構成する表示パネルとバックライト等が、典型例である。しかし、本発明の適用対象となる一対のワークは、一対の貼着対象となり得るものであれば、その大きさ、形状、材質等は問わない。たとえば、表示装置を構成する各種の部材、半導体ウェーハ、光ディスク等にも適用可能である。ワークの一方に接着剤を供給する場合のみならず、双方に供給する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0116】
1…土手形成部
2…貼合部
3…搬送部
10,13,14,15…抑制部生成部
10a…塗布部
10b,11b…硬化処理部
11…土手生成部
11a…接着剤供給部
16…照射部
21…真空チャンバ
22…押圧装置
30…搬送装置
31…載置部
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、一対のワークを貼り合わせるために、ワークに接着剤を供給する技術に改良を施した接着剤供給装置及び接着剤供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶ディスプレイは、液晶モジュール、操作用のタッチパネル、表面を保護する保護パネル(カバーパネル)等を積層することにより構成されている。これらの液晶モジュール、タッチパネル、保護パネル等(以下、ワークと呼ぶ)は、液晶ディスプレイの筐体に組み込まれる。
【0003】
このようなワーク同士を貼り合わせるためには、接着シートを用いる方法と樹脂の接着剤を用いる方法がある。接着シートは、基体となるシートの両面に粘着剤が塗布され、剥離紙が貼付されたものである。この接着シートは、接着剤に比べて比較的高価である。また、接着シートの使用に当たっては、あらかじめ剥離紙を剥離する等の工程が必要となる。このため、近年のコスト削減の要求などから、比較的安価で工程の簡略化が可能な接着剤を用いた貼り合わせが主流となってきている。
【0004】
また、保護パネルやタッチパネルのようなワークは、液晶の表示面の領域に重なるように積層される。この場合、各ワーク間に空気の層が入ると、外光反射により、表示面の視認性が低下する。これに対処するため、各ワークを貼り合せる際に、接着剤によって各ワークの間(ギャップ)を埋めることにより、接着層を形成することが行われている。かかる接着層は、各ワークの間のスペーサとして、ワークを保護する機能を有する。
【0005】
また、近年では、画面の大型化の要請から、液晶ディスプレイも大型化している。大型の液晶ディスプレイの場合、これを構成するワークも大面積となるので、変形が生じやすい。このため、変形を吸収してワークを保護することを可能にするために、接着層に要求される厚みが増える傾向にある。たとえば、数100μmの厚みが要求されるようになってきている。
【0006】
このように厚みを確保すると、必要な接着剤の量が増える。すると、必要量の接着剤がワークに供給された場合、接着剤が流動して、ワークからはみ出しやすくなる。そこで、接着剤として使用する樹脂(レジン)を、流動の少ない高粘度のものとすることが考えられる。しかし、かかる場合にも、接着剤の塗布位置等、プロセス条件の調整を厳密に行わないと、貼り合わせ時に、接着剤が所定の領域からはみ出してしまう場合がある。
【0007】
これに対処するため、あらかじめ、塗布領域を規定する外周に、樹脂によってシール(以下、土手部とする)を形成するシール方式がある(特許文献1参照)。たとえば、図21に示すように、ワークS1に、樹脂による接着剤R1を枠状に塗布して硬化させることにより、土手部を形成する。その後、土手部の内側に樹脂による接着剤R2を充填して、ワークS2を貼り合わせる。このシール方式では、外周に土手部があるので、この土手部によって、貼り合わせ時の接着剤の流動によるはみ出しを防止できる。
【0008】
なお、光学的乱反射をなくすために、ワーク間に、ワークに屈折率が近い物質(機能材料)を充填する場合もある。この場合、充填される材料(充填材)は、ワークを接着する機能も担っている。
【0009】
また、貼り合わせ方法として、大気中で貼り合わせる方法と真空中で貼り合わせる方法の2種がある。大気中で貼り合わせる方法は、排気設備が不要であり、安価に実現できる。ただし、大気中での貼り合わせは、貼り合わせ面に気泡が残らないようにするために、樹脂を広げて貼り合わせる際の接着剤の塗布パターンと貼り合わせ圧力、圧力のかけ方等のプロセス条件出しが難しく、また、貼り合わせに時間もかかる。一方、真空中で貼り合わせる方法では、周囲に気体がないことから、容易に気泡の少ない貼り合わせを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−66711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記のシール方式によって形成した土手部と、内部に充填した接着剤等の充填材との間には、境界が残る場合がある。たとえば、タッチパネル付きの液晶ディスプレイにおいて、ユーザの視野範囲内に、先に硬化した土手部と、内部の接着剤との境界が入ると、画面の視認性が阻害される。このため、図21に示すように、接着剤R1は、最終製品におけるユーザの視野範囲Wの外にあることが好ましい。
【0012】
この視野範囲については、上記のような画面の大型化の要請から、広い面積を確保することが望まれる。これに対して、装置全体については大型化を抑えることが要請されている。このため、ワークにおける視野範囲とは別の領域において、充填領域を画する土手部用に確保できるスペースは、非常に狭くなる傾向にある。たとえば、表面の保護パネルについては、ユーザの視野範囲が広くなる傾向にあるのに対して、その周囲の化粧枠の領域は、狭められる傾向にある。このため、土手部のための塗布部分の幅は、可能な限り細くする必要がある。目安としては、1mm以下の細線化が望まれる。
【0013】
一方、上記のように、接着層の厚みを確保するという観点からは、土手部を高くする必要がある。しかも、貼り合わせ時のワークの圧力による土手部の圧縮を考えると、土手部形成時における土手部の高さは、最終的な接着層の高さ以上とする必要がある。
【0014】
しかし、一般的に、塗布幅を細くするためには、塗布量を少なくしなければならず、充填空間として十分な高さを確保し難い。塗布量を多くすれば、塗布厚を高くすることはできるが、塗布線幅も広くなってしまうからである。ここで、基板の表面状態が一様である場合、土手部の塗布線高さと塗布線幅は、大きくは塗布量と粘度に支配される。
【0015】
たとえば、図22は、塗布ノズルの径や掃引速度を一定条件として、土手部を塗布した場合で、土手部の塗布量(X軸)と土手部の塗布線高さ(Y軸)との関係(いずれも無次元)を示した一例である。また、図23は、同様に、土手部の塗布量(X軸)と土手部の塗布線幅(Y軸)との関係を示した一例である。
【0016】
これらの実験結果に示すように、塗布量が多くなるにしたがって、塗布線高さは高くなるが、塗布線幅も広くなる。これは、塗布後のレベリング(平滑化、平坦化)により、塗布線幅が拡大するため、塗布量が多くなれば、それだけレベリングが大きくなることによる。
【0017】
このため、貼り合わせ厚が決まった時点で、必要な塗布量が決まる。また、これにより、塗布線幅の値も決まってしまう。したがって、要求される細線化が可能となる貼り合わせ厚には、限界が存在する。たとえば、塗布量が多くなると、レベリングが進んで塗布線幅が広くなってしまう。
【0018】
また、レベリングの状態は接着剤の粘度によっても影響される。粘度が高い場合は、レベリングし難いので、同じ塗布量であっても、図22に示す高さよりも高くなり、図23に示す幅より狭くすることができる。また、粘度が高い場合は、同じ塗布量でありながら、図24に示したような基板接触角であっても、塗布線幅をより狭く維持することができる。これとは逆に、粘度が低い場合は、レベリングし易いので、同じ塗布量であっても高さは低くなり、幅は広がる。したがって、塗布量を増やさずに、細線の高さを高く、幅を細くするには、接着剤の粘度を高くすることが有効ではある。しかし、粘度を高くすると、塗布ノズルから吐き出し難くなるなど、供給量の均一性が保ち難く、供給時の制御性が低下する。
【0019】
特許文献1のように、紫外線硬化型の接着剤の塗布によって土手部を形成し、その後、紫外線照射により硬化させたとしても、レベリングは、接着剤がワークに接した瞬間から起こるため、塗布量が多いと、レベリングの影響を皆無にすることはできず、細線化には限定された効果しか望めない。
【0020】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、充填材の流動防止のための接着剤の線幅を細く維持しつつ、均一で高い貼り合わせ厚を確保できる接着剤供給装置及び接着剤供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するため、本発明は、貼り合わせ対象となるワークに対して接着剤を供給することにより、充填材を供給する領域を規定するための土手部を形成する接着剤供給装置において、以下のような構成を有することを特徴とする。
【0022】
(1) ワークに対して、接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を生成する抑制部生成部
(2) 抑制部に接する位置に、土手部となる接着剤を線状に供給する接着剤供給部
【0023】
なお、抑制部生成部は、以下のような構成を有する態様とすることが可能である。
(A)土手部よりも低い小土手部を形成する小土手部形成部
(B)ワークの表面を改質する改質処理部
(C)ワークの表面の接着剤に対する親和性を変える親和性改変処理部
【0024】
さらに、以下のような態様も構成可能である。
(D)接着剤供給部が、接着剤を線状に複数回重ねて供給可能に設けられている
(E)土手部に規定される領域に、充填材を供給する充填材供給部を有する
【0025】
以上のような発明では、線状の抑制部によって、土手部となる接着剤の流動が抑制されるので、線幅を細く維持しつつ、土手部を高く形成することができる。このため、土手部内に供給される充填材の流動を防止しつつ、ワーク同士の均一で高い貼り合わせ厚を確保することができる。
なお、上記の各態様は、接着剤供給方法の発明としても捉えることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上、説明したように、本発明によれば、充填材の流動防止のための接着剤の線幅を細く維持しつつ、均一で高い貼り合わせ厚を確保できる接着剤供給装置及び接着剤供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態における抑制部の生成とともに行う1回目の接着剤の供給開始(A)及び供給後(B)を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における2回目の接着剤の供給開始(A)及び供給後(B)を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における3回目の接着剤の供給開始(A)及び供給後(B)を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における接着剤の充填開始(A)及び充填後(B)を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるワークの貼り合わせ開始(A)及び貼り合わせ後(B)を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における抑制部の生成と接着剤の供給を示す平面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における複数回の接着剤供給を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態における土手部を示す平面図である。
【図9】接着剤を硬化させずにワークを貼り合わせた場合の接着剤の変形例を示す説明図である。
【図10】本発明の第1の実施形態において、ワークを貼り合わせた場合の接着剤の変形例を示す説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態における抑制部の生成と接着剤の供給を示す平面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における抑制部と接着剤を示す断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態における抑制部の生成と接着剤の供給を示す平面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態における抑制部と接着剤を示す断面図である。
【図15】本発明の第4の実施形態における抑制部の生成と接着剤の供給を示す平面図である。
【図16】本発明の第4の実施形態における抑制部と接着剤を示す断面図である。
【図17】電磁波の一括照射による硬化処理の一例を示す断面図である。
【図18】複数台のユニットの走査の一例を示す平面図である。
【図19】複数台のユニットの走査の一例を示す平面図である。
【図20】特定の領域を回避して土手部を形成した例を示す平面図である。
【図21】シール方式の貼り合わせ例を示す説明図である。
【図22】塗布量に応じた土手部の塗布線高さの例を示す説明図である。
【図23】塗布量に応じた土手部の塗布線幅の例を示す説明図である。
【図24】塗布線幅と基板接触角との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態(以下、実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[1.第1の実施形態]
[概要]
本実施形態は、充填材を供給する領域を規定するために、接着剤により土手部(シール部)を形成する接着剤供給装置である。特に、本実施形態は、土手部の形成経路に沿って、土手部となる接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を形成する。この抑制部は、本実施形態では、土手部よりも高さの低い小土手部とする。
【0029】
なお、図1〜図10において、Cは土手部となる接着剤の流動を抑制する抑制部、Dは充填材を供給する領域を規定する土手部、Fは土手部D内に充填材を充填した充填部、である。なお、本実施形態の抑制部Cは、土手部Dと比べて少なくとも高さの低い小土手部であり、その材料として、たとえば、紫外線硬化型のUVインクを用いる。土手部D及び充填部Fの材料としては、たとえば、紫外線硬化樹脂を用いる。
【0030】
[構成]
本実施形態の構成を説明する。本実施形態は、図1〜図6に示すように、土手形成部1、貼合部2等を有している。貼り合わせの対象となるワークS1は、これらの土手形成部1及び貼合部2との間を、搬送部3によって移動可能に設けられている。なお、図中、抑制部Cを形成するためのUVインクはI、土手部Dを形成するための接着剤はR1、充填部Fを形成するための接着剤はR2とする。
【0031】
[土手形成部]
土手形成部1は、ユニットUを有している。ユニットUは、図6に示すように、抑制部生成部10、土手生成部11等を有している。抑制部生成部10は、抑制部Cである小土手部を生成するための構成部(小土手部形成部)である。この抑制部生成部10は、塗布部10a、硬化処理部10b等を有している。
【0032】
塗布部10aは、たとえば、図示しないタンクに収容されたUVインクIを、ノズルから放出するインクジェットヘッドを有している。このノズルは、UVインクIを2列の線状に塗布(印刷)できるように設けられている。この2列の線の幅は、土手部Dの幅を規定するため、土手部Dの細線化に十分な幅とする。所望の幅を得るため、塗布部10aは、その塗布線幅を調整可能な構成とすることが可能である。
【0033】
硬化処理部10bは、UVインクIを硬化(乾燥)させるための構成部である。たとえば、UV光を、UVインクIに照射する照射部を有している。照射部としては、たとえば、2列のUVインクIをともに照射する幅で、UV光を照射する構造でも、2列のUVインクIのそれぞれに、別々にUV光を照射する構造でもよい。
【0034】
なお、光学特性や材料のコンタミネーション等の観点から、抑制部Cは、視覚的に明確に認識される異物や、製品の品質に影響を与えるような異物とならないことが好ましい。このための対策の一つとして、UVインクIとしては、土手部Dや充填部Fと同種の樹脂の粘度違いのものを用いることが考えられる。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。
【0035】
土手生成部11は、接着剤供給部11a、接着剤硬化処理部11b等を有している。接着剤供給部11aは、ワークS1の面上に接着剤R1、R2を供給するための構成部である(充填材供給部を兼用)。接着剤供給部11aは、たとえば、図示しないタンクに収容された接着剤R1、R2を、配管を介して供給口からワークS1に滴下するディスペンサを備えている。供給口は、ノズルの先端に形成されたものや、単なる開口を含み、その形状は問わない。接着剤硬化処理部11bは、接着剤R1を硬化するための構成部である。接着剤硬化処理部11bは、たとえば、UV光を、接着剤R1に照射する照射部を有している。
【0036】
なお、硬化処理部10bの照射部、接着剤硬化処理部11bの照射部は、照射部自体がUV光源であっても、図示しないUV光源からのUV光を、光ファイバを介して照射する構造であってもよい。また、照射部からの照射光は、放射光でよい。ただし、照射部は、スポット的若しくは狭い範囲に集光させる光学部材(集中部材)を備えてもよい。この光学部材としては、たとえば、集光レンズ、スリット、細線光ファイバ、導光板(たとえば、薄い矩形等に成型されたガラスやプラスチック)、反射ミラー、凹面鏡等が適用可能である。照射口径や照射幅は、かかる光学部材によっても調整可能である。照射強度は、光源の強度調整による他、かかる光学部材によっても調整可能である。
【0037】
本実施形態においては、上記の抑制部生成部10、土手部生成部11は、一つのユニットUに設けられている。このユニットUは、たとえば、走査装置(図示せず)によって移動可能に構成されている。なお、接着剤供給部11aによる供給幅、照射部による照射口径、照射幅、照射強度等は、ユニットUの昇降によっても調整可能である。塗布部10a、硬化処理部10b、接着剤供給部11a及び接着剤硬化処理部11bの少なくとも一つについて、ユニットUとは独立して昇降可能に設けてもよい。
【0038】
さらに、ユニットUは、抑制部の材料の供給に硬化処理部11bが追従し、接着剤の供給に接着剤硬化処理部11bが追従するように、進行する方向に従って角度変更可能に設けられている。抑制部の材料や土手部の接着剤の供給の有無の切り替え及び供給量の調整は、各ノズルや弁の開閉、ポンプの作動等によって実現できる。たとえば、UVインクIを2列に塗布する場合、ユニットUが角度を変える際に、各列のノズルの供給の有無のタイミングを制御することにより、方向が変わっても連続した2列の塗布が可能となる。なお、インクジェットヘッドと照射部との間、ディスペンサと照射部との間には、散乱光でノズル等の接着剤が硬化するのを防止するために、遮光部材、遮光機構等を設けることが望ましい。
【0039】
[貼合部]
貼合部2は、図5に示すように、ワークS1の土手部D及び充填部Fに対して、ワークS2を貼り合わせる貼合装置20を有している。貼合装置20は、たとえば、真空チャンバ21、押圧装置22等を有している。
【0040】
真空チャンバ21は、貼り合わされるワークS1、S2の周囲を覆い、搬送部3との間を密閉することにより、真空室を構成するチャンバである。真空チャンバ21には、真空源(減圧装置)である減圧ポンプ(図示せず)が、配管を介して接続されている。また、真空チャンバ21は、図示しない昇降機構によって、昇降可能に設けられている。
【0041】
押圧装置22は、ワークS2を押圧することにより、ワークS1に対してワークS2を貼り付ける装置である。この押圧装置22は、たとえば、ワークS2を保持する保持部、保持部を昇降させる昇降機構などにより構成されている。
【0042】
[搬送部]
搬送部3は、ワークS1を、土手形成部1から貼合部2へと搬送する搬送装置30を有している。この搬送装置30は、載置部31に載置した状態で、ワークS1を搬送する。搬送装置30としては、たとえば、ターンテーブル、コンベア等及びその駆動機構が考えられる。ただし、上記各部の間でワークを搬送可能な装置であれば、どのような装置であってもよい。
【0043】
なお、上記の各部は、それぞれの走査装置、昇降機構、駆動機構、ポンプ、ノズル、弁、スイッチ、電源、駆動源等が、制御装置によって制御される。この制御装置は、たとえば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって、以下のような手順で、各部を動作させるように構成されている。
【0044】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、図1〜図10を参照して説明する。なお、以下に説明する手順で接着剤供給装置を制御する方法も本発明の一態様である。まず、図1に示すように、搬送装置30は、前工程から載置部31に載置されたワークS1を、土手形成部1に搬送する。土手形成部1においては、図1(A)、図6に示すように、走査装置によって、ユニットUを移動させながら、塗布部10aが、ワークS1に対してUVインクIを塗布するとともに、接着剤供給部11aが、接着剤R1を供給する。
【0045】
UVインクIの塗布は、たとえば、次のように行う。すなわち、塗布部10aが有するインクジェットヘッドのノズルによって、2本の線状(2列)にUVインクIを塗布する。ここでは、走査装置によってユニットUを走査することにより、方形のワークS1に対し、2重の方形の枠状に、UVインクIを塗布していく。これと同時に、硬化処理部10bの照射部によって、UV光をUVインクIに照射していく。なお、2本のUVインクIは、必ずしも同時に塗布しなくてもよい。ユニットUの走査を2回行うことにより、1本のノズル等によって、2回に分けて塗布してもよい。
【0046】
このUVインクIの塗布及び硬化に追従した接着剤R1の供給は、たとえば、次のように行う。すなわち、接着剤供給部11aが有するディスペンサのノズルから、2本のUVインクIの間に、接着剤R1を滴下する。これと同時に、接着剤硬化処理部11bの照射部によって、UV光を接着剤R1に照射していく。UV光の照射条件は、塗布と同じスピードで適度な仮硬化(半硬化)状態が得られる強度に設定することが考えられる。これは、使用する接着剤の種類によって異なる。
【0047】
また、接着剤の種類によっては、大気中等、酸素が存在する雰囲気下では、酸素阻害により硬化の進行が遅くなるため、半硬化となりやすい場合がある。ただし、硬化の程度は自由であり、外縁を本硬化させてもよい。酸素阻害を防ぎたい場合には、排気装置若しくは不活性ガス供給装置を設け、これにより酸素を排除すれば、本硬化となりやすい。なお、本発明では、使用する接着剤の種類は限定されず、酸素阻害を受けるものでも、受けないものでも使用可能である。
【0048】
これにより、図1(B)に示すように、硬化したUVインクIにより2列の抑制部Cが形成され、その間に接着剤R1が線状に塗布される。このとき、抑制部Cによって接着剤R1のレベリングが抑制される。また、接着剤R1はある程度硬化しているので、さらにレベリングの抑制効果がある。そして、抑制部C及び接着剤R1の始端と終端が一致して閉じることにより、1段目の枠部(塗布線部)が形成される。
【0049】
なお、インクジェットにおいては、一部の特殊なヘッドを除き、吐出時の液の粘度を低くする必要がある(たとえば、20cP以下)。このため、塗布時にある程度のレベリングが生じることは避けられない。この対策として、たとえば、微少吐出量のヘッドを用いて、より細い線を描画し、本実施形態のように、塗布直後にUV光により硬化させて安定させることが好ましい。
【0050】
そして、図2(A)に示すように、走査装置によって走査されるユニットUの接着剤供給部11aが、1段目の枠部の上に、重ねて接着剤R1を供給する。これと同時に、接着剤硬化処理部11bの照射部によって、UV光を接着剤R1に照射していく。これにより、重ねて供給された接着剤R1が、ある程度硬化する。さらに、1段目の枠部は、再度UV光の照射を受けるため、硬化が進んで硬くなる。このように接着剤R1を塗布し、始端と終端が一致して閉じることにより、図2(B)に示すように、2段目の枠部(塗布線部)が形成される。
【0051】
さらに、図3(A)に示すように、走査装置によって走査されるユニットUの接着剤供給部11aが、2段目の枠部の上に、重ねて接着剤R1を供給する。これと同時に、接着剤硬化処理部11bの照射部によって、UV光を接着剤R1に照射していく。これにより、重ねて供給された接着剤R1が、ある程度硬化する。さらに、1段目及び2段目の枠部は、再度UV光の照射を受けるため、硬化が進んで硬くなる。このように接着剤R1を塗布し、始端と終端が一致して閉じることにより、図3(B)に示すように、3段目の枠部(塗布線部)が形成される。
【0052】
この3回の塗布による3段の枠部によって、図7、図8に示すように、方形の土手部Dが構成される。なお、3回目の塗布による上層の枠部は、UV光を1回しか浴びていないため、硬化が弱く、クッション性が維持されている。
【0053】
次に、図4(A)に示すように、接着剤供給部11aが、ワークS1の土手部Dの内部に対して、接着剤R2を供給する。たとえば、ディスペンサのノズルから接着剤R2を滴下しながら、走査装置によって走査することによって、土手部D内に、接着剤R2を充填する。これにより、図4(B)に示すように、土手部D内が充填部Fとなる。
【0054】
その後、搬送装置30は、土手部Dと充填部Fが形成されたワークS1を、貼合部2に搬送する。貼合部2においては、押圧装置22にワークS2を保持した真空チャンバ21が下降して、図5(A)に示すように、ワークS1、S2の周囲が密閉される。そして、減圧ポンプが作動することにより、真空チャンバ21内の減圧(排気)が開始する。
【0055】
真空引き完了後は、図5(B)に示すように、押圧装置22が下降することにより、ワークS1に対して、ワークS2が押し付けられる。このとき、3回目の塗布による上層の枠部は、上記のようにクッション性が維持されている。このため、上層の枠部によって、貼り合わせ時の歪み等は吸収される。
【0056】
また、1回目及び2回目の塗布による下層の枠部は、比較的硬化が進んでいる。このため、下層の枠部が、厚みを維持するスペーサの役目を果たして、抑制部Cによるレベリングの抑制効果と相俟って、潰れによる広がりを抑制できる。これにより、貼り合わせ厚の均一性を実現できる。
【0057】
たとえば、抑制部C及び塗布毎のUV光照射がない場合、図9(A)に示すように、接着剤R1における下の枠部の流動は何ら規制されず、上下の枠部の粘度はほぼ同様となっているため、レベリングが進行する。そして、貼り合わせ時には、図9(B)に示すように、潰れる量、広がる面積が大きくなってしまう。
【0058】
一方、本実施形態のように、抑制部Cを形成し、これに沿って土手部Dを形成した場合、図10(A)に示すように、抑制部Cによって、レベリングが抑制される。さらに、土手部Dの下層の硬化が進んでいるので、貼り合わせ時には、図10(B)に示すように、抑制部Cとともに、下層がスペーサ代わりになって、潰れや面積の広がりを抑制する。一方、上層は硬化が進んでいないので、クッションとなって歪みを吸収する。
【0059】
その後、排気路の開放等により真空破壊が行われ、真空チャンバ21が上昇することにより、貼り合わされたワークS1、S2は大気開放される。さらに、搬送装置30が、ワークS1、S2を貼合部2から次工程へと搬出する。たとえば、搬送装置30は、ワークS1、S2を、電磁波の照射により土手部D、充填部Fを硬化させる硬化部へと移動させる。
【0060】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。すなわち、抑制部Cによって接着剤R1のレベリングが抑制されるので、濡れ性と塗布量に左右されることなく、細い線幅による接着剤R1の塗布を実現できる。このため、線幅に対する高さの比の値が大きい高アスペクト比の土手部Dを形成でき、高い貼り合わせ厚の確保と狭い塗布幅の維持が可能となる。したがって、土手部Dのためのスペースが狭い場合であっても、ユーザの視野範囲を阻害せずに接着層を形成できる。
【0061】
また、UVインクI及び接着剤R1の供給と同時にUV光照射を行うので、効率良く抑制部C及び土手部Dを形成することができる。さらに、層を重ねる毎にUV光照射を行うので、下層の硬化が進行して、レベリング抑制効果が高まる。しかも、貼り合わせ時には、上層のクッション性は維持される。
【0062】
[2.第2の実施形態]
[概要]
本実施形態は、充填材を供給する領域を規定するために、接着剤により土手部(シール部)を形成する接着剤供給装置である。特に、本実施形態は、土手部の形成経路に沿って、接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を形成する。この抑制部は、本実施形態では、ワークS1の表面を改質した改質部である。
【0063】
なお、図11及び図12において、Gは接着剤の流動を抑制する抑制部である。この抑制部Gは、たとえば、ワークS1の表面の有機汚染物Hを除去することにより生成される改質部とする。
【0064】
[構成]
本実施形態は、基本的には、図1〜図6に示した実施形態と同様の構成を有している。ただし、本実施形態の土手形成部1におけるユニットUは、図11に示すように、上記の接着剤供給部11a、接着剤硬化処理部11bに加えて、抑制部生成部13を有している。この抑制部生成部13は、抑制部Gである改質部を生成するための構成部である(改質処理部)。抑制部生成部13は、たとえば、ワークS1の表面の有機汚染物Hを、UV洗浄により除去できるように、UV光をワークS1に照射する照射部により洗浄部を構成する。
【0065】
洗浄部としては、たとえば、土手部Dの幅で、線状にUV光を照射できる構造であればよい。洗浄部のUV光の波長としては、オゾンを生成する波長、たとえば、低圧水銀ランプのλ=254nmやエキシマランプのλ=180nmなどが好ましい。ただし、本発明の洗浄部による洗浄は、これには限定されない。たとえば、大気圧プラズマ装置による洗浄等も利用できる。
【0066】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、図11、図12を参照して説明する。なお、装置の基本的な動作(ワークS1の搬送、ユニットUの走査、ワークS1の貼り合わせ等)は、図1〜図6に示した実施形態と同様である。ただし、本実施形態においては、図11に示すように、走査装置によって、ユニットUを移動させながら、抑制部生成部13の洗浄部が、ワークS1に対してUV光をワークS1の面上に照射する。これにより、ワークS1の有機汚染物Hが洗浄された線状の抑制部Gが生成される。
【0067】
これとともに、接着剤供給部11aが有するディスペンサのノズルから、抑制部G上に、接着剤R1を滴下する。これと同時に、接着剤硬化処理部11bの照射部によって、UV光を接着剤R1に照射していく。これにより、図12に示すように、抑制部G上に、接着剤R1が線状に塗布される。抑制部Gは、有機汚染物Hが除去された改質部であり、接着剤R1に対して親液性を有する親液パターンとなる。また、有機汚染物Hは、接着剤R1に対して撥液性を有する。
【0068】
このため、接着剤R1は抑制部G上に留まり、有機汚染物Hからは弾かれるので、レベリングが抑制され、大きな接触角が得られる。また、接着剤R1はある程度硬化しているので、さらにレベリングの抑制効果がある。そして、抑制部C及び接着剤R1の始端と終端が一致して閉じることにより、1段目の枠部(塗布線部)が形成される。その後の接着剤R1の塗布、接着剤R2の充填、ワークS1、S2の貼り合わせは、上記の図1〜図6及びその説明で示した通りである。
【0069】
[効果]
以上のような本実施形態では、ワークS1の有機汚染物Hを線状に除去した改質部に、接着剤R1を塗布することにより、接着剤R1の流動を抑制できるので、上記の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、ワークS1の部分により若しくはワークS1毎に表面の状態が異なっていても、塗布される接着剤R1の状態にばらつきが生じることを防止でき、安定した土手部Dを形成できる。
【0070】
[3.第3の実施形態]
[概要]
本実施形態は、充填材を供給する領域を規定するために、接着剤により土手部(シール部)を形成する接着剤供給装置である。特に、本実施形態は、土手部の形成経路に沿って、接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を形成する。この抑制部は、本実施形態では、接着剤に対する親和性を改変した親和性改変部であり、特に、親液性を有する親液部であるる。
【0071】
なお、図13及び図14において、Eは接着剤の流動を抑制する抑制部である。この抑制部Eは、たとえば、ワークS1の表面に、接着剤に対して親液性の高い材料を線状に塗布した親液部とする。
【0072】
[構成]
本実施形態は、基本的には、図1〜図6に示した実施形態と同様の構成を有している。ただし、本実施形態の土手形成部1におけるユニットUは、図13に示すように、上記の接着剤供給部11a、接着剤硬化処理部11bに加えて、抑制部生成部14を有している。この抑制部生成部14は、抑制部Eである親液部を生成するための構成部である(親和性改変処理部)。抑制部生成部14は、たとえば、ワークS1の面上に、土手部Dの幅で、線状に親液部を形成できるように、ワークS1に親液性のある材料を塗布する供給部を有している(親液材料供給部)。
【0073】
親液性のある材料としては、たとえば、接着剤の密着を補助する材料とすることが考えられる。この材料としては、レジスト塗布等で用いられる密着助剤のように、化学的な付着力を得る薬品を用いることができる。また、接着剤を親液性のある材料として用いることもできる。
【0074】
供給部としては、たとえば、土手部Dの幅で、線状に親液性のある材料を供給できる構造であればよい。たとえば、図示しないタンクに収容された材料を、配管を介してワークS1に滴下するディスペンサを用いることができる。
【0075】
ただし、目標とする線幅を得るためには、一般的なディスペンサでは塗布量が多すぎる場合があると考えられる。そのような場合には、nl(ナノリットル)オーダーでの吐き出しが可能なディスペンサを用いることが望ましい。さらに、インクジェットのノズルのように、微少な液滴を吐き出しできる装置を用いることも好ましい。なお、インクジェットでは、低粘度液(特殊用途でなければ、一般に20cP程度が上限)しか扱えないため、液の流動(レベリング)の影響が大きい。このため、レベリング後、所望の幅の塗布線となるような吐出量のノズルを用いる必要がある。
【0076】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、図13、図14を参照して説明する。なお、装置の基本的な動作(ワークS1の搬送、ユニットUの走査、ワークS1の貼り合わせ等)は、図1〜図6に示した実施形態と同様である。ただし、本実施形態においては、図13に示すように、走査装置によって、ユニットUを移動させながら、ワークS1に対して、抑制部生成部14の供給部が、親液性を有する材料を線状に塗布する。これにより、ワークS1の表面に、親液性を有する線状の抑制部Eが形成される。
【0077】
これとともに、接着剤供給部11aが有するディスペンサのノズルから、抑制部E上に、接着剤R1を滴下する。これと同時に、接着剤硬化処理部11bの照射部によって、UV光を接着剤R1に照射していく。これにより、図14に示すように、抑制部E上に、接着剤R1が線状に塗布される。抑制部Eは、接着剤R1に対して親液性を有する親液パターンとなる。
【0078】
このため、接着剤R1は抑制部E上に留まり、レベリングが抑制されるので、大きな接触角が得られる。また、接着剤R1はある程度硬化しているので、さらにレベリングの抑制効果がある。そして、抑制部E及び接着剤R1の始端と終端が一致して閉じることにより、1段目の枠部(塗布線部)が形成される。その後の接着剤R1の塗布、接着剤R2の充填、ワークS1、S2の貼り合わせは、上記の図1〜図6及びその説明で示した通りである。
【0079】
[効果]
以上のような本実施形態では、ワークS1に親液性の材料を塗布した親液部に、接着剤R1を塗布することにより、接着剤R1の流動を抑制できるので、上記の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、ワークS1の部分により若しくはワークS1毎に表面の状態が異なっていても、接着剤R1が優先的に抑制部Eに付着するので、安定した土手部Dを形成できる。
【0080】
[4.第4の実施形態]
[概要]
本実施形態は、充填材を供給する領域を規定するために、接着剤により土手部(シール部)を形成する接着剤供給装置である。特に、本実施形態は、土手部の形成経路に沿って、接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を形成する。この抑制部は、本実施形態では、接着剤に対する親和性を改変した親和性改変部であり、特に、撥液性を有する撥液部である。
【0081】
なお、図15及び図16において、Jは接着時の流動を抑制する抑制部である。この抑制部Jは、たとえば、ワークS1の表面に、接着剤に対して撥液性の高い材料を塗布した撥液部とする。
【0082】
[構成]
本実施形態は、基本的には、図1〜図6に示した実施形態と同様の構成を有している。ただし、本実施形態の土手形成部1におけるユニットUは、図15に示すように、上記の接着剤供給部11a、接着剤硬化処理部11bに加えて、抑制部生成部15を有している。この抑制部生成部15は、抑制部Jである撥液部を生成するための構成部である(親和性改変処理部)。抑制部生成部15は、たとえば、ワークS1の面上に、土手部Dの幅の間隔で、2本の線状に撥液部を形成できるように、ワークS1に撥液性のある材料を塗布する供給部を有している(撥液材料供給部)。
【0083】
供給部としては、たとえば、土手部Dの幅で、2本の線状に撥液性のある材料を供給できる構造であればよい。たとえば、図示しないタンクに収容された材料を、配管を介してワークS1に滴下するディスペンサを用いることができる。望ましいディスペンサの態様及びインクジェットのノズルも使用可能であることは、上記の実施形態と同様である。
【0084】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、図15、図16を参照して説明する。なお、装置の基本的な動作(ワークS1の搬送、ユニットUの走査、ワークS1の貼り合わせ等)は、図1〜図6に示した実施形態と同様である。ただし、本実施形態においては、図15に示すように、走査装置によって、供給ユニットUを移動させながら、ワークS1に対して、抑制部生成部15の供給部が、撥液性を有する材料を2本の線状に塗布する。これにより、ワークS1の表面に、撥液性を有する2本の線状の抑制部Jが形成される。なお、2本の抑制部Jは、必ずしも同時に形成しなくてもよい。ユニットUの走査を2回行うことにより、1本のノズル等によって、2回に分けて塗布してもよい。
【0085】
これとともに、接着剤供給部11aが有するディスペンサのノズルから、抑制部Jの間に、接着剤R1を滴下する。これと同時に、接着剤硬化処理部11bの照射部によって、UV光を接着剤R1に照射していく。これにより、図16に示すように、抑制部Jの間に、接着剤R1が線状に塗布される。抑制部Jは、接着剤に対して撥液性を有する撥液パターンとなる。
【0086】
このため、抑制部J上の接着剤R1は、2本の抑制部Jに弾かれてその間に留まるので、レベリングが抑制され、大きな接触角が得られる。また、接着剤R1はある程度硬化しているので、さらにレベリングの抑制効果がある。そして、抑制部J及び接着剤R1の始端と終端が一致して閉じることにより、1段目の枠部(塗布線部)が形成される。その後の接着剤R1の塗布、接着剤R2の充填、ワークS1、S2の貼り合わせは、上記の通りである。
【0087】
[効果]
以上のような本実施形態では、ワークS1に撥液性の材料を塗布した2本の撥液部の間に、接着剤R1を塗布することにより、接着剤R1の流動を抑制できるので、上記の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、ワークS1の部分により若しくはワークS1毎に表面の状態が異なっていても、2本の抑制部Jの間が相対的に親液面となり、接着剤R1の流動が抑制されるので、細線化が実現できる。
【0088】
なお、ワークS1の表面に、撥液性の材料を枠状に塗布し、その中央を線状に除去することにより、上記のような2本の撥液部を形成することも可能である。材料の除去には、公知のあらゆる方法が適用可能である。実施形態で例示した洗浄若しくは表面荒らしのための手法を用いることもできる。
【0089】
[5.他の実施形態]
本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではない。たとえば、以下のような形態も、本発明に含まれる。
【0090】
(1)抑制部である小土手部の形成は、UVインクの塗布には限定されない。たとえば、塗布部として、樹脂を供給するディスペンサ、インクジェットヘッドを用いて、樹脂を塗布することにより形成してもよい。樹脂としては、土手部Dや充填部Fと同種の粘度違いとすることが望ましいが、これには限定されない。この場合、硬化処理部としての照射部は、上記と同様でよい。また、塗布部が、一般的な酸化重合型のインキを塗布する構成としてもよい。この場合、硬化処理部としては、送風若しくは加熱を行う乾燥部とすることが考えられる。
【0091】
(2)抑制部である改質部の生成は、加工部によって、ワークS1の表面を荒らすことによっても実現できる。これは、たとえば、加工部をUV光やレーザ光等を照射する照射部として、光の照射により表面を細線状に荒らす方法が考えられる。なお、加工部によって、化学的に表面を細線状に荒らす方法等が考えられる。たとえば、加工部として、大気圧プラズマ、サンドブラスト等の処理装置を用いて、表面を荒らす方法も考えられる。このように形成された抑制部は、アンカー効果による付着力により、上記と同様に、接着剤の流動を抑制することができる。この場合、特別な材料が不要となり、加工処理も早い。
【0092】
(3)抑制部である小土手部、親液部、撥液部の形成については、以下のような方法も適用可能である。
(転写、印刷)
抑制部生成部として、転写装置、印刷装置等を用いることにより、版による転写、レーザ転写、スクリーン印刷などにより、抑制部を形成することも可能である。この転写、印刷は、転写装置、印刷装置を局所的に走査しながら形成する方法がある。ただし、転写装置の備える版による転写、印刷装置によるスクリーン印刷では、ワークS1の全体に一括で形成することも可能である。この一括形成の場合、硬化処理部による硬化処理は、上記のように走査により行ってもよいが、一括で行ってもよい。たとえば、図17に示すように、硬化処理部である照射部16により、ワークS1の全体に電磁波Mを照射することが考えられる。このような一括処理を行うと、効率的に製造できる。たとえば、抑制部の生成若しくは硬化のための時間が大幅に短縮され、この時間に他の工程が拘束されなくなる。
【0093】
(蒸着、スパッタリング)
また、抑制部生成部として蒸着装置やスパッタリング装置を用いて、局所的な蒸着やスパッタリングにより形成することも可能である。かかる場合、たとえば、レーザ蒸着装置が備える蒸着ヘッドを走査することにより形成する方法がある。また、蒸着装置による蒸着時、スパッタリング装置によるスパッタリング時、ワークS1の一部を覆うマスクを用いることにより、一括処理により形成する方法も考えられる。
【0094】
(乾燥)
抑制部の形成に当たって、乾燥を行う乾燥装置(乾燥部)を設けてもよい。たとえば、使用する材料(樹脂、インク等)によっては、硬化処理部として送風若しくは加熱を行う乾燥部を設け、送風若しくは加熱による乾燥を行うことが、形成速度や強度に関して、有効な場合がある(上記(1)参照)。
【0095】
(4)親液材料、撥液材料としては、公知のあらゆる材料を利用可能である。たとえば、親液材料として、光触媒やシリカ微粒子を用いてもよい。撥液材料としては、種々の樹脂、高分子材料等を用いることができる。フッ素系の樹脂、高分子、シランカップリング剤、界面活性剤なども、撥液材料として用いることができる。このように、親液材料、撥液材料によって親液部、撥液部を形成する場合にも、ワークの一部を覆うマスクを用いることにより、一括処理により形成することもできる。
【0096】
(5)なお、大気圧プラズマ装置によって、ワークの表面を荒らしたり、洗浄したりする場合には、ワークの一部を覆うマスクを用いることにより、一括処理により形成することもできる。局所的にプラズマを照射可能な照射部を用いることも可能である。
【0097】
(6)土手部となる接着剤の供給(塗布、滴下等)の回数(形成する層数、枠数等)は、上記で例示した3回には限定されない。たとえば、2回であっても、4回以上であってもよい。必要な高さが得られるのであれば、重ねて塗布しなくても、1回でもよい。本発明では、抑制部が存在するため、1回の塗布であっても、接着剤の量を多くして高さを確保しつつ、細線を維持できる。また、塗布した接着剤に対する仮硬化は、必ずしも行わなくてもよい。接着剤の仮硬化がなくても、抑制部が存在するため、レベリングを抑制できる。接着剤を重ねて塗布する場合には、下の接着剤の薄膜が、親液性の膜となって、レベリングを抑制できる。
【0098】
(7)抑制部となる材料を供給する構成部及びこれを硬化させる硬化処理部、土手部となる材料を供給する構成部及びこれを硬化させる硬化処理部、充填材を供給する供給部、ユニット等の数は、装置の構造及び規模、所望のタクト、コスト等に応じて、最適な数を選択して設計すればよい。また、走査方法等は、自由である。
【0099】
たとえば、図18に示すように、2つのユニットUが、ワークS1の直交する2辺と平行に直交移動することにより、塗布を行ってもよい。この場合、コーナーで角度を変える際に、ユニットUが、軸を中心に回動することにより、塗布に硬化処理が追従するようにする必要がある。
【0100】
また、たとえば、図19に示すように、4つのユニットUが、ワークのそれぞれの辺と平行に直進若しくは往復することにより、塗布を行ってもよい。これにより、硬化処理部を追従させるために、コーナーで角度変更する必要がなくなる。なお、各ユニットUの動作タイミングは、タクト短縮のために、互いに干渉することが無いように設定する。その他、複数の供給部と硬化処理部を組み合わせたユニットを構成することも可能である。多連のディスペンサや照射装置を用いることもできる。
【0101】
また、抑制部は、必ずしも連続している必要はない。接着剤が、表面張力等により流動し難いときは、レベリングが抑制できる範囲で、隙間があってもよい。たとえば、抑制部を、点線状(点状、点と線の組み合わせ等)に形成してもよい。
【0102】
また、抑制部生成部、接着剤供給部、接着剤硬化処理部等のいずれかを、独立に移動可能に設けてもよい。たとえば、抑制部生成部をユニットUとは別体として、走査装置によって別個に走査される構成としてもよい。転写、印刷、蒸着、スパッタリングにより、抑制部を一括で生成する場合、そのための装置は、接着剤供給部、接着剤硬化処理部等とは別体として構成可能となる。抑制部を一括で硬化させる場合、そのための装置も、接着剤供給部、接着剤硬化処理部等とは別体として構成可能となる。硬化処理のための手段(照射部、送風部、加熱部、冷却部等)は、抑制部と土手部に対してそれぞれ別個のものを備えてもよいが、共通のものを備えてもよい。
【0103】
つまり、抑制部生成部は、土手形成部と一体であってもよいし、別個の装置として構成されたものでもよい。抑制部の硬化処理部も、抑制部と一体であってもよいし、別個の装置として構成されたものでもよい。
【0104】
さらに、土手部内への接着剤の供給は、供給部とは別に設けた供給部(充填材供給部)によって行ってもよい。たとえば、土手部を形成するための接着剤と、内部の接着剤との種類を変える若しくは同種でも添加剤等により特性を変える場合等には、供給部を別々とすることが考えられる。この場合、土手部の接着剤は粘度を高く、内部の接着剤は粘度を低くすること、あるいは両者の硬化速度が異なるものを用いること等が考えられる。
【0105】
充填時の供給部の走査方向は、上下、前後左右、回転等、自由に設計可能である。この場合も、多連のディスペンサを用いて効率良く充填させてもよい。その他、ローラによって塗布する装置、スキージによって塗布する装置、スピン塗布する装置等、種々の装置が適用可能である。なお、充填材としては、土手部と同様若しくは異なる接着剤が適用可能であるが、必ずしも接着剤には限定されず、他の機能材料であってもよい。
【0106】
(8)硬化処理部による接着剤の硬化処理は、上記の例のように、接着剤の1回の供給ごとに行ってもよい。つまり、硬化処理部が、1回目に供給した接着剤に硬化を進行させる処理を行い、その後、さらに重ねて接着剤を供給する毎に、接着剤の硬化を進行させる処理を行うようにしてもよい。ただし、最初の1回の供給について硬化処理を行った後は、複数回に1回、硬化処理を行うように設定してもよい。つまり、硬化処理部が、1回目に供給した接着剤に硬化を進行させる処理を行い、その後、さらに重ねて複数回接着剤を供給した後に、硬化を進行させる処理を行うようにしてもよい。
【0107】
また、硬化処理部による硬化処理は、接着剤の供給に追従させる必要はない。接着剤を供給後に、広範に硬化処理を行うようにすることも可能である。たとえば、図17に示すように、接着剤を1回塗布した後に、さらに、その後の塗布毎に若しくは複数回塗布した後に、上方に配置した電磁波の照射部16から、全体に電磁波を照射することも可能である。温度変更装置や送風装置等の場合も、同様に塗布後の接着剤全体に対して硬化処理を行うことが可能である。
【0108】
(9)抑制部、土手部(接着剤)、充填材に使用する樹脂の種類は、紫外線硬化樹脂には限定されない。他の電磁波により硬化する樹脂や熱硬化型樹脂等、あらゆる種類の接着剤が適用できる。この場合、接着剤の種類に応じて、硬化処理部は、電磁波の照射装置(照射部)、温度変更装置(加熱部、冷却部)、送風装置(加熱部、冷却部、乾燥部)等、種々のものを適用することが考えられる。
【0109】
(10)集中部材としては、たとえば、赤外線による加熱により硬化する接着剤の場合、凹面鏡をはじめとする反射器等の光学部材が有効である。温風若しくは冷風を用いる場合には、集中部材としてはノズル等が考えられる。マイクロ波を用いる場合には、磁気レンズ等も有効である。紫外線や赤外線の場合、レーザ光により、細い領域への照射を実現することもできる。
【0110】
(11)土手部を構成する線は、その形状を問わない。方形、円形、楕円形、その他の多角形、曲線円形であってもよい。たとえば、図20に示すように、ワークS1に、接着剤を塗布すべきでない領域Zが存在する場合に、これを回避するように、土手部Dを形成することも可能である。土手部は、少なくとも一方向への接着剤の流動を抑制できればよい。このため、充填部を規定する線は、必ずしも閉じた領域を構成していなくてもよい。直線状、屈曲線状、曲線状であってもよい。したがって、充填材、充填部といっても、供給箇所の周囲が囲まれている必要はない。
【0111】
また、接着剤の供給により土手部を形成する箇所は、接着剤の供給領域の外周を規定する線には限らない。たとえば、円形のディスクの内周円上のように、供給領域の内周を規定する線であってもよい。
【0112】
(12)貼合部、搬送部についても、現在又は将来において利用可能なあらゆる方法、装置が適用可能である。たとえば、貼合部について、ワークを保持する構造も、たとえば、メカチャック、静電チャック、真空チャック等、どのような構造であってもよい。真空貼り合わせを行う空間も、下側の部材が昇降して密閉、開放を行う構造でも、ワークの通路のみが開閉する構造でもよい。さらに、必ずしも真空貼合装置でなくてもよく、大気中で貼り合わせを行う装置でもよい。
【0113】
搬送装置も、たとえば、ターンテーブル、コンベア、送り機構等、どのような構造であってもよい。載置部は、たとえば、サセプタ等が考えられるが、ワークを支持できる支持体として機能するものであれば、どのような材質、形状であってもよい。水平方向に支持するものには限らない。ワークの搬送方法も、載置部に載置される場合には限定されない。移動する台上に直接載置されていてもよい。
【0114】
上記の作業の一部を手動により行う方法も考えられる。たとえば、土手部内への接着剤の供給等を、塗布、滴下等のための用具を用いて、作業者が行うこともできる。ワークの移動についても、作業者が手作業で行ってもよい。
【0115】
(13)貼り合せ対象となるワークは、カバーパネルやタッチパネルと液晶モジュール若しくは液晶モジュールを構成する表示パネルとバックライト等が、典型例である。しかし、本発明の適用対象となる一対のワークは、一対の貼着対象となり得るものであれば、その大きさ、形状、材質等は問わない。たとえば、表示装置を構成する各種の部材、半導体ウェーハ、光ディスク等にも適用可能である。ワークの一方に接着剤を供給する場合のみならず、双方に供給する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0116】
1…土手形成部
2…貼合部
3…搬送部
10,13,14,15…抑制部生成部
10a…塗布部
10b,11b…硬化処理部
11…土手生成部
11a…接着剤供給部
16…照射部
21…真空チャンバ
22…押圧装置
30…搬送装置
31…載置部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼り合わせ対象となるワークに対して接着剤を供給することにより、充填材を供給する領域を規定するための土手部を形成する接着剤供給装置において、
前記ワークに対して、接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を生成する抑制部生成部と、
前記抑制部に接する位置に、土手部となる接着剤を線状に供給する接着剤供給部と、
を有することを特徴とする接着剤供給装置。
【請求項2】
前記抑制部生成部は、前記ワークに対して、前記土手部よりも低い小土手部を形成する小土手部形成部を有することを特徴とする請求項1記載の接着剤供給装置。
【請求項3】
前記小土手部形成部は、前記ワークに対して、樹脂を含む材料を塗布する塗布部を有することを特徴とする請求項2記載の接着剤供給装置。
【請求項4】
前記抑制部生成部は、前記ワークの表面を改質する改質処理部を有することを特徴とする請求項1記載の接着剤供給装置。
【請求項5】
前記改質処理部は、前記ワークの表面の汚染物を除去する洗浄部を有することを特徴とする請求項4記載の接着剤供給装置。
【請求項6】
前記改質処理部は、前記ワークの表面を荒らす加工部を有することを特徴とする請求項4記載の接着剤供給装置。
【請求項7】
前記抑制部生成部は、前記ワークの表面の接着剤に対する親和性を変える親和性改変処理部を有することを特徴とする請求項1記載の接着剤供給装置。
【請求項8】
前記抑制部生成部は、前記ワークの表面に、接着剤に対する親液性の高い材料を供給する親液材料供給部を有することを特徴とする請求項7記載の接着剤供給装置。
【請求項9】
前記抑制部生成部は、前記ワークの表面に、接着剤に対する撥液性の高い材料を供給する撥液材料供給部を有することを特徴とする請求項7記載の接着剤供給装置。
【請求項10】
前記接着剤供給部は、土手部となる接着剤を線状に複数回重ねて供給可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の接着剤供給装置。
【請求項11】
前記土手部に規定される領域に、充填材を供給する充填材供給部を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の接着剤供給装置。
【請求項12】
貼り合わせ対象となるワークに対して接着剤を供給することにより、充填材を供給する領域を規定するための土手部を形成する接着剤供給方法において、
前記ワークに対して、接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を生成し、
前記抑制部に接する位置に、土手部となる接着剤を線状に供給することを特徴とする接着剤供給方法。
【請求項13】
前記抑制部は、前記土手部よりも低い小土手部であることを特徴とする請求項12記載の接着剤供給方法。
【請求項14】
前記抑制部は、前記ワークの表面が改質された改質部であることを特徴とする請求項12記載の接着剤供給方法。
【請求項15】
前記抑制部は、前記ワークの表面の接着剤に対する親和性を改変した親和性改変部であることを特徴とする請求項12記載の接着剤供給方法。
【請求項1】
貼り合わせ対象となるワークに対して接着剤を供給することにより、充填材を供給する領域を規定するための土手部を形成する接着剤供給装置において、
前記ワークに対して、接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を生成する抑制部生成部と、
前記抑制部に接する位置に、土手部となる接着剤を線状に供給する接着剤供給部と、
を有することを特徴とする接着剤供給装置。
【請求項2】
前記抑制部生成部は、前記ワークに対して、前記土手部よりも低い小土手部を形成する小土手部形成部を有することを特徴とする請求項1記載の接着剤供給装置。
【請求項3】
前記小土手部形成部は、前記ワークに対して、樹脂を含む材料を塗布する塗布部を有することを特徴とする請求項2記載の接着剤供給装置。
【請求項4】
前記抑制部生成部は、前記ワークの表面を改質する改質処理部を有することを特徴とする請求項1記載の接着剤供給装置。
【請求項5】
前記改質処理部は、前記ワークの表面の汚染物を除去する洗浄部を有することを特徴とする請求項4記載の接着剤供給装置。
【請求項6】
前記改質処理部は、前記ワークの表面を荒らす加工部を有することを特徴とする請求項4記載の接着剤供給装置。
【請求項7】
前記抑制部生成部は、前記ワークの表面の接着剤に対する親和性を変える親和性改変処理部を有することを特徴とする請求項1記載の接着剤供給装置。
【請求項8】
前記抑制部生成部は、前記ワークの表面に、接着剤に対する親液性の高い材料を供給する親液材料供給部を有することを特徴とする請求項7記載の接着剤供給装置。
【請求項9】
前記抑制部生成部は、前記ワークの表面に、接着剤に対する撥液性の高い材料を供給する撥液材料供給部を有することを特徴とする請求項7記載の接着剤供給装置。
【請求項10】
前記接着剤供給部は、土手部となる接着剤を線状に複数回重ねて供給可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の接着剤供給装置。
【請求項11】
前記土手部に規定される領域に、充填材を供給する充填材供給部を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の接着剤供給装置。
【請求項12】
貼り合わせ対象となるワークに対して接着剤を供給することにより、充填材を供給する領域を規定するための土手部を形成する接着剤供給方法において、
前記ワークに対して、接着剤の流動を抑制する線状の抑制部を生成し、
前記抑制部に接する位置に、土手部となる接着剤を線状に供給することを特徴とする接着剤供給方法。
【請求項13】
前記抑制部は、前記土手部よりも低い小土手部であることを特徴とする請求項12記載の接着剤供給方法。
【請求項14】
前記抑制部は、前記ワークの表面が改質された改質部であることを特徴とする請求項12記載の接着剤供給方法。
【請求項15】
前記抑制部は、前記ワークの表面の接着剤に対する親和性を改変した親和性改変部であることを特徴とする請求項12記載の接着剤供給方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−15760(P2013−15760A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150036(P2011−150036)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】
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