説明

接着剤用共重合体ラテックス

【課題】熱処理によるゴム補強用繊維の強度低下を抑制しながら、ゴムとゴム補強用繊維との接着力を向上させることができる接着剤用共重合体ラテックスを提供すること。
【解決手段】ゴムとゴム補強用繊維とを接着するための接着剤用共重合体ラテックスに、ブタジエン系単量体35〜75重量%、ビニルピリジン系単量体10〜30重量%およびスチレン系単量体10〜55重量%を含む単量体組成物(a)を乳化重合して得られる共重合体ラテックス(A)50〜90重量%(固形分換算)と、ブタジエン系単量体3〜25重量%、ビニルピリジン系単量体0〜5重量%、スチレン系単量体55〜97重量%、および、共重合可能な他の単量体0〜20重量%を含み、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含まない単量体組成物(b)を乳化重合して得られる共重合体ラテックス(B)10〜50重量%(固形分換算)とを含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤用共重合体ラテックスに関し、詳しくは、ゴムと繊維とを接着する接着剤用共重合体ラテックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤ、ベルト、ホースなどのゴム製品を補強するゴム補強用繊維として、ナイロン、ポリエステル、アラミドなどの繊維が用いられている。
【0003】
これらゴム補強用繊維は、通常、ゴム製品に対して、それらの接着性を確保すべく、接着剤用共重合体ラテックス(一般に、ブタジエン−ビニルピリジン系共重合体ラテックス、または、ブタジエン−ビニルピリジン系共重合体ラテックスと他のゴムラテックスとの混合物)と、レゾルシン−ホルマリン樹脂(以下、RFレジンとする。)とを含有する接着剤組成物(以下、RFLとする。)を用いて接着処理されている。
【0004】
この接着処理では、ゴム補強用繊維をRFLに浸漬して、乾燥した後、ナイロン繊維では170℃以上、ポリエステル繊維やアラミド繊維では220℃以上の高温で、熱処理がなされる。
【0005】
このようなRFLに用いられる接着剤用共重合体ラテックスとして、例えば、特定単量体組成のブタジエン−ビニルピリジン系共重合体ラテックスが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0006】
また、例えば、特定単量体組成のブタジエン−ビニルピリジン系共重合体ラテックスと特定単量体組成のSBRからなる共重合体ラテックスが提案されている(例えば、特許文献3、4、5参照)。
【0007】
また、例えば、特定構造を有する共重合体粒子からなる共重合体ラテックスが提案されている(例えば、特許文献6参照。)。
【0008】
また、例えば、2種類の特定単量体組成のブタジエン−ビニルピリジン系共重合体ラテックスからなる共重合体ラテックスが提案されている(例えば、特許文献7参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平7−78207号公報
【特許文献2】特公平8−32864号公報
【特許文献3】特公平6−74401号公報
【特許文献4】特公平7−5871号公報
【特許文献5】特開2007−154126号公報
【特許文献6】特許第3986654号公報
【特許文献7】特開平11−158289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかるに、上記した接着処理では、熱処理によって、ゴム補強用繊維の強度が低下するという不具合がある。
【0011】
一方、ゴム補強用繊維の強度低下を抑制するために、上記温度よりも低温で熱処理することが検討されるが、熱処理の温度が低いと、ゴムとゴム補強用繊維との接着力が低下するという不具合がある。
【0012】
また、上記した特許文献1〜7に記載の接着剤用共重合体ラテックスを使用したとしても、熱処理によるゴム補強用繊維の強度低下を抑制しながら、ゴムとゴム補強用繊維との接着力を向上させることが困難である。
【0013】
そこで、本発明の目的は、熱処理によるゴム補強用繊維の強度低下を抑制しながら、ゴムとゴム補強用繊維との接着力を向上させることができる接着剤用共重合体ラテックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するため、本発明の接着剤用共重合体ラテックスは、ブタジエン系単量体35〜75重量%、ビニルピリジン系単量体10〜30重量%およびスチレン系単量体10〜55重量%を含む単量体組成物(a)を乳化重合して得られる共重合体ラテックス(A)50〜90重量%(固形分換算)と、ブタジエン系単量体3〜25重量%、ビニルピリジン系単量体0〜5重量%、スチレン系単量体55〜97重量%、および、共重合可能な他の単量体0〜20重量%を含み、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含まない単量体組成物(b)を乳化重合して得られる共重合体ラテックス(B)10〜50重量%(固形分換算)とを含有することを特徴としている。
【0015】
また、本発明の接着剤用共重合体ラテックスは、前記単量体組成物(b)は、ビニルピリジン系単量体を、0〜3重量%、含んでいることが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の接着剤用共重合体ラテックスによれば、熱処理によるゴム補強用繊維の強度低下を抑制しながら、ゴムとゴム補強用繊維との接着力を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の接着剤用共重合体ラテックスは、共重合体ラテックス(A)と共重合体ラテックス(B)とを含有している。
【0018】
共重合体ラテックス(A)は、ブタジエン系単量体、ビニルピリジン系単量体およびスチレン系単量体を含む単量体組成物(a)を乳化重合して得られる。
【0019】
ブタジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられ、好ましくは、1,3−ブタジエンが挙げられる。これらブタジエン系単量体は、1種または2種以上使用することができる。
【0020】
ビニルピリジン系単量体としては、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジンなどが挙げられ、好ましくは、2−ビニルピリジンが挙げられる。これらビニルピリジン系単量体は、1種または2種以上使用することができる。
【0021】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレンなどが挙げられ、好ましくは、スチレンが挙げられる。これらスチレン系単量体は、1種または2種以上使用することができる。
【0022】
単量体組成物(a)は、ブタジエン系単量体を、35〜75重量%、好ましくは、40〜70重量%、ビニルピリジン系単量体を、10〜30重量%、好ましくは、13〜25重量%、および、スチレン系単量体を、10〜55重量%、好ましくは、15〜50重量%を含有している。
【0023】
ブタジエン系単量体の配合割合が、35重量%未満では、初期接着力が低下し、75重量%を超えると、コード強度および耐熱接着力が低下する。
【0024】
ビニルピリジン系単量体の配合割合が、10重量%未満では、初期接着力および耐熱接着力が低下し、30重量%を超えると、初期接着力が低下する。
【0025】
スチレン系単量体の配合割合が、10重量%未満では、耐熱接着力が低下し、55重量%を超えると、初期接着力および耐熱接着力が低下する。
【0026】
なお、単量体組成物(a)は、含有される単量体(ブタジエン系単量体、ビニルピリジン系単量体およびスチレン系単量体)の一部を、後述する単量体組成物(b)において例示される共重合可能な他の単量体に置き換えることもできる。
【0027】
単量体組成物(a)は、好ましくは、ブタジエン系単量体、ビニルピリジン系単量体およびスチレン系単量体からなる。
【0028】
そして、単量体組成物(a)を乳化重合することにより、共重合体ラテックス(A)を得る。
【0029】
単量体組成物(a)を乳化重合するには、単量体組成物(a)に乳化剤および重合開始剤を添加する。
【0030】
乳化剤としては、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型などのノニオン性界面活性剤、例えば、ロジン酸塩、脂肪酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、ノニオン性界面活性剤の硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物などのアニオン性界面活性剤が挙げられ、好ましくは、アニオン性界面活性剤が挙げられ、より好ましくは、ロジン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物が挙げられる。乳化剤は、1種または2種以上使用することができる。
【0031】
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であって、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性重合開始剤、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどの油溶性重合開始剤が挙げられる。好ましくは、水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムが挙げられ、油溶性重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0032】
また、単量体組成物(a)を乳化重合するには、必要により、還元剤、連鎖移動剤を添加することができる。
【0033】
還元剤としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩、例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類およびその塩、例えば、デキストロース、サッカロースなどの還元糖類、例えば、ジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。好ましくは、カルボン酸類およびその塩が挙げられ、より好ましくは、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸が挙げられる。
【0034】
連鎖移動剤としては、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、例えば、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム化合物、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノールなどのフェノール化合物、例えば、アリルアルコールなどのアリル化合物、例えば、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素化合物、例えば、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミドなどのビニルエーテル、例えば、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられ、好ましくは、アルキルメルカプタンが挙げられ、より好ましくは、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンが挙げられる。連鎖移動剤は、1種または2種以上使用することができる。
【0035】
連鎖移動剤は、例えば、単量体組成物(a)100重量部に対して、例えば、0〜10重量部、好ましくは、0.05〜7重量部の割合で添加される。
【0036】
また、乳化重合において、必要により、炭化水素系溶剤を添加することができる。炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどの飽和炭化水素、例えば、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセンなどの不飽和炭化水素などが挙げられ、好ましくは、シクロヘキセンが挙げられる。シクロへキセンは、低沸点で重合終了後に水蒸気蒸留などによって回収、再利用しやすく、環境負荷の観点から好適である。
【0037】
また、その他の添加剤として、必要により、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの電解質、ハイドロキノンなどの重合禁止剤、重合促進剤、キレート剤などを添加することができる。
【0038】
また、重合方法としては、特に限定されず、バッチ重合、セミバッチ重合、シード重合などを用いることができる。
【0039】
また、各種成分の添加方法についても特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード法などを用いることができる。
【0040】
共重合体ラテックス(A)の乳化重合では、好ましくは、分割添加方法が用いられる。
【0041】
詳しくは、共重合体ラテックス(A)の乳化重合では、単量体組成物(a)を、1段目単量体組成物(a−1)と、2段目単量体組成物(a−2)とに分割し、まず、1段目単量体組成物(a−1)を乳化重合して、プレ共重合体を得た後、プレ共重合体の存在下に、2段目単量体組成物(a−2)を乳化重合することにより、共重合体ラテックス(A)を得る。
【0042】
1段目単量体組成物(a−1)は、ブタジエン系単量体を、例えば、10〜60重量%、好ましくは、20〜55重量%、ビニルピリジン系単量体を、例えば、10〜40重量%、好ましくは、12〜35重量%、および、スチレン系単量体を、例えば、30〜70重量%、好ましくは、30〜60重量%、含有する。
【0043】
ブタジエン系単量体の配合割合が10重量%未満であると、初期接着力が低下する傾向があり、60重量%を超えると、繊維強度および耐熱接着力が低下する傾向がある。
【0044】
ビニルピリジン系単量体の配合割合が、10重量%未満であると、初期接着力および耐熱接着力が低下する傾向があり、40重量%を超えると、初期接着力が低下する傾向がある。
【0045】
スチレン系単量体の配合割合が30重量%未満であると、コード強度が低下する傾向があり、70重量%を超えると、初期接着力が低下する傾向がある。
【0046】
また、1段目単量体組成物(a−1)は、単量体組成物(a)100重量部のうち、例えば、30〜70重量部、好ましくは、40〜60重量部である。
【0047】
2段目単量体組成物(a−2)は、ブタジエン系単量体を、例えば、40〜90重量%、好ましくは、50〜80重量%、ビニルピリジン系単量体を、例えば、5〜30重量%、好ましくは、10〜25重量%、スチレン系単量体を、例えば、5〜30重量%、好ましくは、10〜25重量%、含有する。
【0048】
ブタジエン系単量体の配合割合が40重量%未満であると、初期接着力が低下する傾向があり、90重量%を超えると、繊維強度および耐熱接着力が低下する傾向がある。
【0049】
ビニルピリジン系単量体の配合割合が5重量%未満であると、初期接着力および耐熱接着力が低下する傾向があり、30重量%を超えると、初期接着力が低下する傾向がある。
【0050】
スチレン系単量体の配合割合が5重量%未満であると、繊維強度が低下する傾向があり、30重量%を超えると、初期接着力が低下する傾向がある。
【0051】
2段目単量体組成物(a−2)は、単量体組成物(a)100重量部のうち、例えば、30〜70重量部、好ましくは、40〜60重量部である。
【0052】
また、2段目単量体組成物(a−2)は、好ましくは、1段目単量体組成物(a−1)の重合転化率が60〜90%になった時点で、添加される。
【0053】
また、共重合体ラテックス(B)は、ブタジエン系単量体、ビニルピリジン系単量体、スチレン系単量体、および、共重合可能な他の単量体を含み、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含まない単量体組成物(b)を乳化重合して得られる。
【0054】
ブタジエン系単量体、ビニルピリジン系単量体およびスチレン系単量体としては、それぞれ、共重合体ラテックス(A)において例示された単量体と同一の単量体を例示することができる。なお、好ましい単量体についても同様である。
【0055】
共重合可能な他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、例えば、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、例えば、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのエチレン系不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系単量体等が挙げられ、それぞれ1種または2種以上使用することができる。
【0056】
つまり、単量体組成物(b)は、ブタジエン系単量体、ビニルピリジン系単量体、スチレン系単量体、および、共重合可能な他の単量体(ただし、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を除く)からなる。
【0057】
単量体組成物(b)は、ブタジエン系単量体を、3〜25重量%、好ましくは、4〜20重量%、ビニルピリジン系単量体を、0〜5重量%(つまり、ビニルピリジン系単量体は、含有されていても含有されていなくてもよく、含有されている場合には、5重量%以下である。)、好ましくは、0〜4.5重量%、より好ましくは、0〜3重量%、スチレン系単量体を、55〜97重量%、好ましくは、60〜93重量%、および、共重合可能な他の単量体を、0〜20重量%(つまり、共重合可能な他の単量体は、含有されていても含有されていなくてもよく、含有されている場合には、20重量%以下である。)、好ましくは、0〜15重量%含有している。
【0058】
ブタジエン系単量体が3重量%未満では初期接着力が低下し、25重量%を超えるとコード強度および耐熱接着力が低下する。
【0059】
ビニルピリジン系単量体が5重量%を超えると、初期接着力が低下する。
【0060】
スチレン系単量体が55重量%未満では、コード強度および耐熱接着力が低下し、97重量%を超えると、初期接着力および耐熱接着力が低下する。
【0061】
また、重合方法としては、特に限定されず、バッチ重合、セミバッチ重合、シード重合などを用いることができる。
【0062】
また、各種成分の添加方法についても特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード法などを用いることができる。
【0063】
共重合体ラテックス(B)の乳化重合では、好ましくは、一括添加方法が用いられる。
【0064】
得られた共重合体ラテックス(B)のガラス転移温度は、例えば、36〜90℃であり、好ましくは、40〜85℃である。共重合体ラテックス(B)のガラス転移温度が36℃未満であると、耐熱接着力が低下する傾向があり、90℃を超えると、初期接着力が低下する傾向がある。
【0065】
そして、本発明の接着剤用共重合体ラテックスを得るには、共重合体ラテックス(A)を、50〜90重量%、好ましくは、50〜80重量%と、共重合体ラテックス(B)を、10〜50重量%、好ましくは、20〜50重合%とを配合し、混合する。
【0066】
共重合体ラテックス(A)と共重合体ラテックス(B)との配合割合がこの範囲外であると、繊維強度および耐熱接着力が低下する傾向にある。
【0067】
これにより、本発明の接着剤用共重合体ラテックスが調製される。
【0068】
そして、接着剤用共重合体ラテックスは、好ましくは、ゴムとゴム補強繊維とを接着するための接着剤組成物に配合される。
【0069】
ゴムとしては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、SBR、NBR、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、それらの各種変性ゴムなどが挙げられる。また、ゴムには、例えば、充填剤、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤などの公知の添加剤を配合することができる。
【0070】
ゴム補強繊維としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維などが挙げられる。また、これらの繊維の形態としては、特に限定されず、例えば、コード、ケーブル、織物、帆布、短繊維などが挙げられる。
【0071】
接着剤組成物は、接着剤用共重合体ラテックスとレゾルシン−ホルマリン樹脂とを配合し、混合することにより得られる。
【0072】
接着剤組成物を調製するには、接着剤用共重合体ラテックスとレゾルシン−ホルマリン樹脂とは、特に限定されないが、接着剤用共重合体ラテックス100重量部(固形分)に対して、レゾルシン−ホルマリン樹脂を、例えば、5〜100重量部、好ましくは、5〜90重量部、配合する。
【0073】
また、接着剤組成物には、必要に応じて、イソシアネート、ブロックドイソシアネート、エチレン尿素、2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニルメチル)−4−クロロフェノール、一塩化イオウとレゾルシンの縮合物およびレゾルシン−ホルマリン縮合物との混合物などの変性レゾルシン−ホルマリン樹脂、ポリエポキシド、変性ポリ塩化ビニル、カーボンブラックなどの接着助剤、充填剤、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤などを配合することができる。
【0074】
そして、ゴムとゴム補強繊維とを接着するには、まず、接着剤組成物をゴム補強繊維に処理する。
【0075】
接着剤組成物をゴム補強繊維に処理するには、例えば、ディッピングマシンなどを用いて、接着剤組成物にゴム補強繊維を浸漬させる。その後、例えば、100〜150℃、好ましくは、110〜130℃で、例えば、80〜200秒、好ましくは、100〜150秒乾燥させ、その後、例えば、180〜300℃、好ましくは、200〜260℃で、例えば、30〜100秒、好ましくは、50〜80秒加熱して焼き付けする。
【0076】
そして、上記処理の後、接着剤組成物が処理されたゴム補強繊維に、ゴムを接触させて、ゴムとゴム補強繊維とを加熱および加圧すると、ゴムとゴム補強繊維とが接着される。
【0077】
そして、本発明の接着剤用共重合体ラテックスを用いて接着剤組成物を調整すれば、熱処理によるゴム補強用繊維の強度低下を抑制しながら、ゴムとゴム補強用繊維との接着力を向上させることができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、配合割合を示す部および%は重量基準によるものである。
1.接着剤用共重合体ラテックス(A)の合成
(1)合成例1、2
攪拌機付きオートクレーブに、水135部、ナフタレンスルホン酸ナトリウム・ホルマリン縮合物1部、水酸化ナトリウム0.5部とロジン酸カリウム5.0部を加え溶解させた。
【0079】
次いで、表−1に示した1段目単量体組成物(a−1)とt−ドデシルメルカプタン0.3部を加えて乳化させた。
【0080】
次いで、過硫酸カリウム0.5部を加え、内温を55℃に保ち、1段目単量体組成物(a−1)を重合した。
【0081】
1段目単量体組成物(a−1)の重合転化率が82%に達した時点で、表1に示した2段目単量体組成物(a−2)とt−ドデシルメルカプタン0.25部とを連続的に添加して、引き続き重合した。
【0082】
重合転化率が93%に達した時点で、ハイドロキノン0.1部を加え、重合を停止させ、その後、減圧蒸留により未反応単量体を除去して、共重合体ラテックス(A)を得た。
(2)合成例3および比較合成例1、2
攪拌機付きオートクレーブに、水130部、ナフタレンスルホン酸ナトリウム・ホルマリン縮合物1部、水酸化ナトリウム0.5部とロジン酸カリウム4部を加え溶解させた。
【0083】
次いで、表1に示した単量体組成物(a)とt−ドデシルメルカプタン0.55部とを加えて乳化させた。
【0084】
次いで、過硫酸カリウム0.5部を加え、内温を50℃に保ち、単量体組成物を重合した。
【0085】
重合転化率が93%に達した時点で、ハイドロキノン0.1部を加え、重合を停止させ、その後、減圧蒸留により未反応単量体を除去して、共重合体ラテックス(A)を得た。
2.接着剤用共重合体ラテックス(B)の合成
(1)合成例4〜7および比較合成例3〜5
攪拌機付きオートクレーブに水125部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部、炭酸ナトリウム0.2部、過硫酸カリウム0.7部を仕込み、十分攪拌した。
【0086】
次いで、t−ドデシルメルカプタン0.1部、表2に示す各単量体組成物(b)、および、シクロヘキセンを加えて、内温を65℃に保って重合し、重合転化率が98%に達した時点で重合を終了した。
【0087】
次いで、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH8に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体等を除去して、共重合体ラテックス(B)を得た。
(2)共重合体ラテックス(B)のガラス転移温度の測定
得られた各共重合体ラテックス(B)を、ガラス板に0.5g程度塗り、70℃で4時間乾燥してフィルムを作成した。乾燥後のフィルムをDSC試験用のアルミニウムパンにセットし、再度加熱によりサンプルを均一化し、その後、測定温度を−100〜150℃まで速度10℃/分で昇温して、相変化の吸熱の開始点を読み取って各共重合体ラテックス(B)のガラス転移温度(℃)とした。
3.接着剤用共重合体ラテックスの調製
共重合体ラテックス(A)と共重合体ラテックス(B)とを表3に示した配合割合(固形分)で配合して混合し、各実施例および各比較例の接着剤用共重合体ラテックスを得た。
4.接着剤組成物の調製
水260部に10%水酸化ナトリウム4部を添加して攪拌した後、レゾルシン7.9部、および、37%ホルマリン8.6部を加えて攪拌混合し、30℃にて6時間熟成し、レゾルシン−ホルマリン樹脂を合成した。
【0088】
次いで、各実施例および各比較例の接着剤用共重合体ラテックス100部に、接着剤組成物の固形分濃度が16.5%になるように水を添加して攪拌した後、レゾルシン−ホルマリン樹脂を全量と、28%アンモニア水11.4部とを添加して攪拌混合した。
【0089】
その後、27%ブロックドイソシアネート分散液(明成化学工業(株)製SU−125F)46.3部添加して、30℃にて48時間熟成させ、接着剤組成物を得た。
4.評価
(1)タイヤコード浸漬処理
試験用シングルコードディッピングマシンを用いて、得られた接着剤組成物に、前処理されたポリエステル・タイヤコード(1500D/2)を浸漬し、120℃で120秒間乾燥した後、240℃で60秒間、焼き付けた。
(2)ゴム
下記の配合処方によりゴムを準備した。
<ゴム処方>
天然ゴム 70部
SBRゴム 30部
FEFカーボン 40部
プロセスオイル 4部
アンチゲンRD(*1) 2部
ステアリン酸 1.5部
亜鉛華 5部
加硫促進剤DM(*2) 0.9部
硫黄 2.7部
*1:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物(住友化学(株)社製)
*2:ジベンゾチアジルジスルフィド
(3)繊維強度の測定
各実施例および各比較例の接着剤組成物で処理されたポリエステル・タイヤコードの繊維強度を、JIS−L1017に準じて測定した。結果を表3に示す。
(4)接着力の測定
各実施例および各比較例の接着剤組成物で処理されたポリエステル・タイヤコードをゴムではさみ、160℃で20分(初期接着力評価条件)、または、170℃で50分(耐熱接着力評価条件)の条件で加硫プレスした。
【0090】
ゴムとゴム補強繊維との初期接着力および耐熱接着力を、ASTM D2138−67(H Pull Test)に準じて測定した。結果を表3に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタジエン系単量体35〜75重量%、ビニルピリジン系単量体10〜30重量%およびスチレン系単量体10〜55重量%を含む単量体組成物(a)を乳化重合して得られる共重合体ラテックス(A)50〜90重量%(固形分換算)と、
ブタジエン系単量体3〜25重量%、ビニルピリジン系単量体0〜5重量%、スチレン系単量体55〜97重量%、および、共重合可能な他の単量体0〜20重量%を含み、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含まない単量体組成物(b)を乳化重合して得られる共重合体ラテックス(B)10〜50重量%(固形分換算)とを
含有することを特徴とする、接着剤用共重合体ラテックス。
【請求項2】
前記単量体組成物(b)は、ビニルピリジン系単量体を、0〜3重量%、含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤用共重合体ラテックス。

【公開番号】特開2011−168720(P2011−168720A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35180(P2010−35180)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】