説明

接着剤組成物、回路接続材料、回路部材の接続構造及び半導体装置

【課題】
本発明は、低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ、且つ硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、十分に安定した接着強度が得られる接着剤組成物、回路接続材料、回路部材の接続構造及び半導体装置を提供するものである。
【解決手段】
熱可塑性樹脂と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤と、ラジカル重合調節剤と、を含有する、接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、回路接続材料、回路部材の接続構造及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子や液晶表示素子用の接着剤としては、接着性に優れ、特に高温高湿条件下でも優れた接着性を示すエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられている(例えば、特許文献1参照)。斯かる接着剤は、170〜250℃の温度で1〜3時間加熱することにより硬化し接着性が得られる。
【0003】
近年、半導体素子の高集積化、液晶素子の高精細化に伴い、素子間及び配線間ピッチの狭小化が進んでいる。このような半導体素子等に上述した接着剤を用いた場合は、硬化させる時の加熱温度が高く、また硬化する速度も遅いため、所望の接続部のみならず周辺部材まで加熱し、周辺部材の損傷等の影響を及ぼす傾向がある。さらに低コスト化のためには、スループットを向上させる必要があり、低温(100〜170℃)、短時間(1時間以内)、換言すれば「低温速硬化」での接着が要求されている。
【0004】
一方、近年アクリレート誘導体やメタクリレート誘導体とラジカル重合開始剤であるパーオキサイドとを併用したラジカル硬化型接着剤が注目されている。この接着剤は、反応性に優れる反応活性種であるラジカルの重合反応を利用して硬化、接着するものであるため、比較的短時間で硬化が可能である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−113480号公報
【特許文献2】特開2002−203427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ラジカル硬化型接着剤は反応性に優れるため、硬化処理を行う際のプロセスマージンが狭くなる傾向がある。例えば、半導体素子や液晶表示素子を電気的に接続するために上述したラジカル硬化型の接着剤を用いる場合、その硬化物を得る際の温度や時間等のプロセス条件が多少でも変動すると接着強度が安定して得られない傾向にある。
【0007】
そこで本発明は、低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ、且つ硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、十分に安定した接着強度が得られる接着剤組成物、回路接続材料、回路部材の接続構造及び半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の接着剤組成物は、熱可塑性樹脂と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤と、ラジカル重合調節剤と、を含有する。
【0009】
このような接着剤組成物によれば、低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ、且つ硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、十分に安定した接着強度が得られる。
【0010】
上記ラジカル重合調節剤が、下記一般式(A)で表される2価の有機基を有するアミン化合物を含有することが好ましい。
【0011】
すなわち、上記接着剤組成物において、熱可塑性樹脂と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤と、下記一般式(A)で表される2価の有機基を有するアミン化合物と、を含有することが好ましい。
【化1】


ここで、式(A)中、X、X、X及びXは、独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
【0012】
本発明の接着剤組成物は、熱可塑性樹脂と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤と、アミン化合物とを含む、いわゆるラジカル硬化型接着剤組成物である。このようなラジカル重合性化合物を含有する接着剤組成物は反応性に優れるため、低温であっても十分に短時間で硬化させることが可能である。更に、上記一般式(1)に示すアミン化合物を用いることにより、硬化処理を行う際のプロセスマージンを広げることが可能となる。したがって、このような接着剤組成物から得られる硬化物は、その硬化物を得る際のプロセス温度や時間が変動したとしても、接着強度を安定したものとすることができる。また、接着剤組成物の硬化物の経時的な接着強度の低下も抑制することができる。
【0013】
このように本発明の接着剤組成物を用いると硬化処理を短時間で行うことができ、且つプロセスマージンを広げることができるため、半導体素子や液晶素子等の素子間及び配線間ピッチが狭小化したとしても、所望の接続部のみならず周辺部材まで加熱し、周辺部材の損傷等の影響を及ぼすことを防止することができ、スループットを向上させることが可能となる。
【0014】
また、上記ラジカル重合調節剤が、下記一般式(1)で表されるものであることが好ましい。
【化2】


ここで、式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、水酸基、又は1価の有機基を示し、X、X、X及びXは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
【0015】
このようにアミン化合物が上記一般式(1)であると、硬化処理を行う際のプロセスマージンをより広げることが可能となる。
【0016】
更に、Rが、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数2〜20のアルコキシ基、又は下記一般式(2)で表される1価の有機基、であることが好ましい。
【化3】


ここで、式(2)中、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜5のエステル基、ベンジルエステル基、カルボキシル基、又はアリール基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、フェノキシ基、アリール基、炭素数1〜20のカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、又はビニル基を示し、nは1〜20の整数を示す。但し、フェノキシ基、アリール基及びフェニルカルボニルオキシ基は炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよい。
【0017】
このようにRが水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数2〜20のアルコキシ基、又は上記一般式(2)であると、硬化処理を行う際のプロセスマージンを一層広げることが可能となる。
【0018】
ラジカル重合調節剤が、分子内に1つ以上のアミノキシル構造を有することが好ましい。このようなラジカル重合調節剤は、空気中であっても安定なラジカルとして存在するため、保存安定性が向上するというメリットがある。
【0019】
本発明の接着剤組成物において、ラジカル重合性化合物が分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有すると好ましい。このような接着剤組成物を用いると、一層短時間で硬化処理を行うことができるようになる。これは、ラジカル重合性化合物が、反応性に富むラジカル反応性基である(メタ)アクリロイル基を2つ以上有することに起因すると、本発明者らは推測している。
【0020】
更に、このようなラジカル重合性化合物は、反応性基として(メタ)アクリロイル基を用いるため、被着体の材質を選ばず強固な接着性を得ることができる。したがって、このようなラジカル重合性化合物を含む本発明の接着剤組成物は、汎用性に優れ、例えば半導体素子や液晶表示素子に用いた場合にもより安定した接着強度を得ることができる。
【0021】
ラジカル重合開始剤は、1分間半減期温度が90〜175℃であるパーオキシエステル誘導体であることが好ましい。ここで、「1分間半減期温度」とは、半減期が1分となる温度をいい、「半減期」とは、化合物の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間をいう。
【0022】
ラジカル重合開始剤の1分間半減期温度が90〜175℃であると、本発明の接着剤組成物から得られる硬化物は、従来のものに比べて、優れた接続抵抗を備えることが可能となる。また、接着剤組成物の硬化物の経時的な接続抵抗の低下も抑制することができる。
【0023】
さらにラジカル重合開始剤は、分子量が180〜1000であるパーオキシエステル誘導体であることが好ましい。ラジカル重合開始剤がパーオキシエステル誘導体であり、上記数値範囲内の分子量であると、他のラジカル重合性化合物等との相溶性に優れるため、得られる硬化物は、その全体にわたって一層安定した接着強度や接続抵抗等の特性を示すものとなる。
【0024】
また、本発明の接着剤組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、ラジカル重合性化合物を50〜250質量部含有し、ラジカル重合開始剤を0.05〜30質量部含有し、且つラジカル重合調節剤を0.001〜30質量部含有することが好ましい。この本発明の接着剤組成物は、その構成材料を上記の範囲の配合割合とすることによって、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
【0025】
更に、この接着剤組成物には導電性粒子を含有させることが好ましい。このような接着剤組成物は、導電性を有することになる。そうすると、この接着剤組成物は回路電極や半導体等の電気工業や電子工業の分野において導電性接着剤として用いることができるようになる。更に、この場合、接着剤組成物が導電性であるため、硬化後の接続抵抗を低くすることが可能となる。
【0026】
また、この導電性粒子の配合割合については、熱可塑性樹脂100質量部に対して、導電性粒子を0.5〜30質量部含有していることが好ましい。導電性粒子を上記の範囲の配合割合とすることによって、このような接着剤組成物は、導電性粒子の効果を一層発揮することができる。例えば、回路電極の接続に用いた場合、対向する回路電極間で導電しなかったり、あるいは隣接する回路電極間で短絡(ショート)したりすることを防止することができる。更に、導電性粒子を上述の配合割合で含有した接着剤組成物は、電気的な接続の異方性を示すことも可能となり、異方導電性接着剤組成物として用いることができるようになる。
【0027】
そして、本発明の回路接続材料は、対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料であって、回路接続材料が上述した接着剤組成物を含有することを特徴とする。
【0028】
このような回路接続材料は、対向する回路電極同士の接着を低温であっても十分短時間で行うことができ、プロセスマージンを広げることも可能となる。更に、このような回路接続材料から得られる硬化物は、その硬化物を得る際のプロセス温度や時間が変動したとしても、接着強度を安定したものとすることができる。また、回路接続材料の硬化物の経時的な接着強度の低下も抑制することができる。更に、この回路接続材料が導電性粒子を上記の配合割合で含有すれば、電気的な接続の異方性を示すことができ、回路電極用の異方導電性回路接続材料として用いることも可能である。
【0029】
上述した接着剤組成物又は回路接続材料はフィルム状に形成されていることが好ましい。フィルム状とした接着剤組成物又は回路接続材料は取扱性に優れるため、スループットを一層向上させることができる。
【0030】
また、加圧時間10秒、加圧圧力3MPa、及び加熱温度140〜200℃の条件下で対向する回路部材が加熱圧着されたときに、加熱温度のすべての温度領域において、加熱圧着後の回路部材間の接続抵抗値の最大値が、最小値に対して3倍以下であることが好ましい。この場合、プロセスマージンをより広くすることができる。
【0031】
本発明の回路部材の接続構造は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材と、第1の回路基板の主面と第2の回路基板の主面との間に設けられ、第1の回路電極と第2の回路電極とを対向配置させた状態で電気的に接続する回路接続部材と、を備える回路部材の接続構造であって、回路接続部材は、上述した回路接続材料の硬化物であることを特徴とする。
【0032】
このような回路部材の接続構造は、電気的に接続した回路電極を有効に利用することができる。すなわち、第1の回路電極と第2の回路電極とを電気的に接続できるように上述した回路接続材料を用いるため、本発明の接続構造を有する回路部材は、品質のばらつきが少なく、十分に安定した特性を示すことができる。更に、回路接続材料の硬化物が導電性粒子を含む場合は、接続抵抗を低くすることができる。この導電性粒子を配合することによって、対向する回路電極間で導電しなかったり、あるいは隣接する回路電極間で短絡(ショート)したりすることを防止することができる。また、導電性粒子を上記の配合割合で含有すれば、電気的な接続の異方性を示し、異方性回路接続材料とすることも可能である。
【0033】
本発明の半導体装置は、半導体素子と、半導体素子を搭載する基板と、半導体素子及び基板間に設けられ、半導体素子及び基板を電気的に接続する半導体素子接続部材と、を備える半導体装置であって、半導体素子接続部材は、上述した接着剤組成物の硬化物又はフィルム状接着剤であることを特徴とする。
【0034】
このような半導体装置は、半導体素子と基板とを電気的に接続する接着剤組成物の硬化物が上述した接着剤組成物の硬化物であることから、品質のばらつきが少なく、十分に安定した特性を示すことができる。更に、接着剤組成物の硬化物が導電性粒子を含む場合は、接続抵抗を低くすることができる。この導電性粒子を配合することによって、対向する半導体素子及び基板間で導電性を十分に確保できる。また、導電性粒子を上記の配合割合で含有すれば、電気的な接続の異方性を示し、異方性半導体とすることも可能である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ、且つ硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、十分に安定した接着強度が得られる接着剤組成物、回路接続材料、回路部材の接続構造及び半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の回路部材の接続構造の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、場合により添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、同一要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。また以下の説明において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味するものとする。
【0038】
(接着剤組成物)
本発明の接着剤組成物は、熱可塑性樹脂と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤と、ラジカル重合調節剤とを含有するものである。このような接着剤組成物によれば、低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ、且つ硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、十分に安定した接着強度が得られる。
【0039】
以下、各成分について更に詳細に説明する。
【0040】
[ラジカル重合調節剤]
本発明において用いるラジカル重合調節剤としては、加熱硬化時に過酸化物等のラジカル重合開始剤の分解によって発生する開始ラジカルや、開始ラジカルがラジカル重合性化合物に攻撃して生成した成長ラジカルと速やかに反応し、かつ60℃以上の加熱によって、再びラジカルを生成し、前記ラジカル重合性化合物の重合を促進する化合物であれば、特に制限なく公知のものを使用することができる。
【0041】
その中でも下記一般式(A)で表される2価の有機基を有するアミン化合物であることが好ましい。
【化4】


式(A)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。ここで、アルキル基は、直鎖状のアルキル基のみならず、枝分かれしたものや環状のものも含む。
【0042】
上記一般式(A)に示すアミン化合物を用いることにより、硬化処理を行う際のプロセスマージンを広げることが可能となる。したがって、このような接着剤組成物から得られる硬化物は、その硬化物を得る際のプロセス温度や時間が変動したとしても、接着強度を安定したものとすることができる。また、接着剤組成物の硬化物の経時的な接着強度の低下も抑制することができる。
【0043】
このように本発明の接着剤組成物を用いると硬化処理を短時間で行うことができ、且つプロセスマージンを広げることができるため、半導体素子や液晶素子等の素子間及び配線間ピッチが狭小化したとしても、所望の接続部のみならず周辺部材まで加熱し、周辺部材の損傷等の影響を及ぼすことを防止することができ、スループットを向上させることが可能となる。
【0044】
また、アミン化合物が、下記一般式(1)で表されるものであることが好ましい。アミン化合物がこの化合物であると、硬化処理を行う際のプロセスマージンをより広げることが可能となる。
【化5】


式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、水酸基、又は1価の有機基を示し、X、X、X及びXは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。また、有機基とは、炭素を含有する置換基をいい、この置換基のその他の構造は特に限定されない。Rとして用いることができる1価の有機基としては、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数2〜20のアルコキシ基、エーテル基、又はエステル基等が好ましい。また、炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基が挙げられ、炭素数2〜20のアルコキシ基としては、例えばオクトキシ基が挙げられる。なお、上記エステル基は、Rが水酸基である場合に、メタクリル酸、2−メチルヘキサン酸等のモノカルボン酸、セバシン酸等のジカルボン酸、テトラカルボン酸等とのエステル反応によって得ることができる。
【0045】
上記一般式(1)中のRが水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数2〜20のアルコキシ基、又は下記一般式(2)で表される1価の有機基、であることが好ましい。Rがこれらの置換基であると、硬化処理を行う際のプロセスマージンを一層広げることが可能となる。また、炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基が挙げられ、炭素数2〜20のアルコキシ基としては、例えばオクトキシ基が挙げられる。
【化6】

【0046】
式(2)中、Rは水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜5のエステル基、ベンジルエステル基、カルボキシル基、又はアリール基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、フェノキシ基、アリール基、炭素数1〜20のカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、又はビニル基を示し、nは1〜20の整数を示す。但し、フェノキシ基、アリール基及びフェニルカルボニルオキシ基は炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよい。
【0047】
本発明の接着剤組成物を用いると接着強度が十分に安定した硬化物が得られる要因は現在のところ詳細には明らかにされていない。しかしながら、本発明者らは、その要因の一つとして、このようなアミン化合物がラジカル重合反応を安定化させるため、プロセス条件が一定でない場合であっても、比較的安定した硬化物を得ることができるためと推測している。ただし、要因はこれに限定されない。
【0048】
上記アミン化合物としては、具体的には、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン及び2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジンの縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等が挙げられる。この他に、下記化学式(3)〜(11)及び(13)〜(16)で表される化合物や、ポリアミン、ポリエステル、ポリアクリレート等の側鎖に上記一般式(1)で表される置換基が導入されたポリマーが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【化7】


【化8】


【化9】


【化10】


【化11】


【化12】


【化13】


【化14】


【化15】


式(11)中、R10は下記式(12a)又は(12b)で表される基を示す。
【化16】


【化17】


【化18】


式(13)中、mは正の整数を示す。
【化19】


【化20】


【化21】

【0049】
また、本発明において用いるラジカル重合調節剤は、分子内に1つ以上のアミノキシル構造を有することが好ましい。このようなラジカル重合調節剤は、空気中であっても安定なラジカルとして存在するため、保存安定性が向上するというメリットがある。
【0050】
上記アミノキシル構造を有する化合物としては、具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2−ジメチル−6−フェニルピペリジン−1−オキシル、2,2,6−トリメチル−6−フェニルピペリジン−1−オキシル、2,6−ジフェニルピペリジン−1−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、3−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−(2−クロロアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルベンゾエート、4−(2−ヨードアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−イソチオシアナート−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−イソシアナート−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2−ジメチル−6−シクロヘキシルピペリジン−1−オキシル、2,6−ジシクロヘキシルピペリジン−1−オキシル、2,2−ジメチル−6−シクロペンチルピペリジン−1−オキシル、2,6−ジシクロペンチルピペリジン−1−オキシル、2,2,5−トリメチル−4−フェニル−3−アザヘキサン−3−ニトロオキシド、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、2,5−ジフェニルピロリジン−1−オキシル、2,2−ジメチル−5−フェニルピロリジン−1−オキシル、2,2,5−トリメチル−5−フェニルピロリジン−1−オキシル等が挙げられる。
【0051】
また、上記以外にもアミノキシル構造を有する化合物としては、下記一般式(17)及び(18)で表されるラジカルを生成する化合物が挙げられる。
【化22】


式(17)中、Y及びYは、それぞれ独立にイソプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜5のアルキル基、アリール基、炭素数2〜20のアルコキシ基、炭素数5〜10のシクロアルキル基を示す。但し、上記アリール基は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【化23】


式(18)中、Y、Yは、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン鎖を示す。
【0052】
さらに、上記以外にもアミノキシル構造を有する化合物としては、下記一般式(19)〜(21)に示すラジカルを生成する化合物や、ポリアミン、ポリエステル、ポリアクリレート等の側鎖にアミノキシル構造を導入したポリマーが挙げられる。
【化24】


式(19)中、R11は、炭素数1〜5のアルキレン鎖、若しくはフェニレン鎖を示す。
【化25】


式(20)中、R12は、炭素数1〜5のアルキレン鎖、若しくはフェニレン鎖を示す。
【化26】


式(21)中、R13は下記式(12c)で表される基を示す。
【化27】

【0053】
なお、上述したアミノキシル構造を有する化合物は、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0054】
ラジカル重合調節剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~30質量部であることが好ましく、0.001~10質量部であることがより好ましい。ラジカル重合調節剤の添加量が0.001質量部未満であると、添加量が上記範囲にある場合と比較して、添加効果が低下する傾向にあり、ラジカル重合調節剤の添加量が30質量部を超えると、ラジカル重合調節剤の添加量が過剰となるため、硬化性が低下し、接着強度を安定化させる効果が向上し難くなり、他のラジカル重合性化合物等との相溶性も低下する傾向にある。
【0055】
また、プロセスマージンを広くするという観点からは、上記ラジカル重合調節剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~30質量部であることが好ましい。ラジカル重合調節剤の添加量が0.01質量部未満であると、ラジカル重合調節剤の添加量が少ないため、プロセスマージンを広くすることが困難となり、その結果、接着強度を安定化させることが難しくなる傾向にある。なお、上記ラジカル重合調節剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部であることがより好ましく、0.05〜10質量部であることが更に好ましい。
【0056】
[熱可塑性樹脂]
本発明に係る熱可塑性樹脂は、接着する対象物(以下、単に「被着体」という。)同士の接着を強固なものにするために用いられる。
【0057】
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、特に制限なく公知のものを使用することができる。具体的には、ポリアミド、フェノキシ樹脂類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリビニルブチラール類等を用いることができる。これらは単独あるいは2種類以上を混合して用いられ得る。更に、これらの樹脂は分子内にシロキサン結合やフッ素置換基を有していてもよい。これらは混合する樹脂同士が完全に相溶するか、若しくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。
【0058】
また、この熱可塑性樹脂の分子量が大きいほど後述するフィルムを容易に形成することができ、また、接着剤としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定することも可能となる。溶融粘度を広範囲に設定することができれば、半導体素子や液晶素子等の接続に用いた場合、素子間及び配線間ピッチが狭小化したとしても、周辺部材に接着剤が付着することを一層防止することができ、スループットを向上させることが可能となる。ただし、この分子量の値が、150000を超えると他の成分との相溶性が劣る傾向があり、5000未満では後述するフィルムとして使用する場合にフィルム形成が不十分となる傾向がある。よって、この分子量は重量平均分子量として5000〜150000であると好ましく、10000〜80000であるとより好ましい。
【0059】
[ラジカル重合性化合物]
本発明に係るラジカル重合性化合物とは、何らかのエネルギーが付与されることによってラジカルが発生し、そのラジカルが連鎖反応によって重合してポリマーを形成する性能を有する化合物をいう。このラジカル重合反応は一般にカチオン重合やアニオン重合よりも迅速に反応が進行する。よって、ラジカル重合性化合物を用いる本発明においては、比較的短時間での重合が可能となる。
【0060】
本発明で用いるラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイル基やビニル基等、分子内にオレフィンを有する化合物であるか、若しくはスチレン誘導体やマレイミド誘導体のように、ラジカルによって重合する化合物であれば、特に制限なく公知のものを使用することができる。この中でも(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する化合物が、より好ましい。
【0061】
(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物としては、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
このように反応性基として(メタ)アクリロイル基を用いれば、被着体の材質を選ばず強固な接着をすることができる。この被着体としては、プリント配線板やポリイミド等の有機基材をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(indium tin oxide)、窒化珪素(SiN)、二酸化珪素(SiO)等が挙げられる。
【0063】
更に、ラジカル重合性化合物が分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有すると、接着に要する加熱時間をより短くでき、接着に要する加熱温度をより低くできるので好ましい。これは、ラジカル重合性化合物の分子中にラジカル反応性基である(メタ)アクリロイル基をより多く有することに起因すると考えられる。
【0064】
更にこのラジカル重合性化合物の配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、50〜250質量部であることが好ましく、60〜150質量部であることが更に好ましい。ラジカル重合性化合物の配合割合が50質量部未満であると、被着体に付与した接着剤組成物の硬化物の耐熱性が低下する傾向にあり、250質量部を超えると、接着剤組成物を後述するフィルムとして用いる場合にフィルム形成が不十分となる傾向にある。
【0065】
[ラジカル重合開始剤]
本発明の接着剤組成物はラジカル重合開始剤を含む。ラジカル重合性化合物は、一旦ラジカル重合反応を開始すると、連鎖反応が進行し、強固な硬化が可能となるが、最初にラジカルを発生させることが比較的困難であるため、ラジカルを比較的容易に生成可能なラジカル重合開始剤を含有させる。
【0066】
本発明に係るラジカル重合開始剤は、従来から知られている過酸化物やアゾ化合物等公知の化合物を用いることができる。具体的には、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸エステル、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
これらの中でもラジカル重合開始剤の1分間半減期温度が90〜175℃であるパーオキシエステル誘導体であることが好ましい。ラジカル重合開始剤の1分間半減期温度が90〜175℃であると、本発明の接着剤組成物から得られる硬化物は、従来のものに比べて、優れた接続抵抗を備えることが可能となる。また、接着剤組成物の硬化物の経時的な接続抵抗の低下も抑制することができる。
【0068】
さらに分子量が180〜1000であるパーオキシエステル誘導体であることが好ましい。ラジカル重合開始剤がパーオキシエステル誘導体であり、上記数値範囲内の分子量であると、他のラジカル重合性化合物等との相溶性に優れるため、得られる硬化物は、その全体にわたって一層安定した接着強度や接続抵抗等の特性を示すものとなる。
【0069】
また、ラジカル重合開始剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.05〜30質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部であることが更に好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量が0.05質量部未満であると、ラジカル重合が十分に開始されない傾向にあり、ラジカル重合開始剤の添加量が30質量部を超えると、貯蔵安定性が低下する傾向にある。
【0070】
なお、本発明において付与するエネルギーの形態としては特に限定されないが、熱、電子線、ガンマ線、紫外線、赤外線等が挙げられる。
【0071】
本発明の接着剤組成物には導電性粒子を含有させると好ましい。導電性粒子を含有させることによって、その接着剤組成物に導電性を付与することができる。そうすると、回路電極や半導体等の電気工業や電子工業の分野において導電性接着剤として用いることが可能となる。
【0072】
ここで用いられる導電性粒子は、電気的接続を得ることができる導電性を有していれば特に制限はないが、例えばAu、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属やカーボン等が挙げられる。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に上記の金属やカーボンを被覆したものであってもよい。この中でも金属自体が熱溶融性の金属である場合、又はプラスチックを核とし金属若しくはカーボンで被覆したものである場合が好ましい。これらの場合、接着剤組成物の硬化物を加熱や加圧によって変形させることが一層容易となるため、電極同士を電気的に接続する際に、電極と接着剤組成物との接触面積を増加させ、電極間の導電性を向上させることができる。
【0073】
また、この導電性粒子の表面を、更に高分子樹脂で被覆した層状粒子を用いてもよい。層状粒子の状態で導電性粒子を接着剤組成物に添加すると、導電性粒子の配合量を増加させた場合であっても、樹脂で被覆されているので導電性粒子同士の接触によって短絡が生じることを一層抑制し、電極回路間の絶縁性も向上させることができる。なお、これらの導電性粒子や層状粒子は単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0074】
導電性粒子の平均粒径は分散性、導電性の観点から1〜18μmであることが好ましい。導電性粒子の配合割合は、接着剤組成物100体積%に対して0.1〜30体積%であることが好ましく、0.1〜10体積%であることが更に好ましい。この値が、0.1体積%未満であると導電性が十分に得られない傾向があり、30体積%を超えると回路の短絡が起こる傾向がある。なお、導電性粒子の配合割合(体積%)は23℃における接着剤組成物を硬化させる前の各成分の体積をもとに決定されるが、各成分の体積は比重を利用して重量から体積に換算する方法や、その成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたメスシリンダー等の容器にその成分を投入し、増加した体積から算出する方法によって求めることができる。
【0075】
また、本発明の接着剤組成物には、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体に代表されるカップリング剤及び密着向上剤、レベリング剤等の接着助剤を添加することが好ましい。これにより本発明の効果をより顕著に発揮することができ、更に良好な密着性や取扱性を付与することもできるようになる。具体的には、下記一般式(22)で示される化合物を添加することが好ましい。
【化28】


式(22)中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、又はアリール基を示し、Rは水素原子、又はメチル基を示し、pは1〜10の整数を示す。
【0076】
更に、この一般式(22)において、Rが炭素数1〜5のアルキル基又はアリール基であり、R及びRがそれぞれ独立に炭素数2〜3のアルコキシ基であり、pが2〜4であると接着性、及び接続抵抗により優れるため好ましい。なお、一般式(22)で表される化合物は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0077】
また、本発明の接着剤組成物は、この他にも使用目的に応じて別の材料を添加することができる。例えば、接着剤の橋架け率を向上させる接着性向上剤を併用してもよい。これにより接着強度を一層高めることができる。すなわち、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物に加え、アリル基、マレイミド基、ビニル基等のラジカル重合可能な官能基を有する化合物を添加してもよい。具体的には、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N−ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。なお、これらの接着性向上剤は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0078】
また、単官能(メタ)アクリレート等の流動性向上剤を併用してもよい。これにより流動性を向上させることができる。具体的には、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。なお、これらの流動性向上剤は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0079】
更に、接着性を向上させるゴム系の材料を併用してもよい。これにより応力を緩和することもできるようになる。具体的には、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマー末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ−ε−カプロラクトンが挙げられる。
【0080】
なお、ゴム系の材料は、接着性向上の観点から、極性が高い官能基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に含むゴム系の材料であることが好ましく、更に流動性向上の観点から、液状であることがより好ましい。具体的には、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマー末端に含有する液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状カルボキシル化ニトリルゴムが挙げられ、極性基であるアクリロニトリル含有量がこれらのゴム系材料全体の10〜60質量%であることが更に好ましい。なお、これらのゴム系材料は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0081】
更にまた、t−ブチルピロカテコール、t−ブチルフェノール、p-メトキシフェノール等に代表される重合禁止剤などの添加剤を併用してもよい。これにより貯蔵安定性を更に高めることができる。
【0082】
本発明の接着剤組成物は、常温で液状である場合にはペースト状にして使用することができる。常温で固体の場合には、加熱してペースト化する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤組成物と反応せず、且つ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限はないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃未満であると、室温で容易に揮発する傾向があるため、密封した環境下でラジカル重合反応を行わなければならず、使用が制限される傾向にある。また、沸点が150℃を超えると、溶剤を揮発させることが難しく、接着後において十分な接着強度が得られない傾向にある。
【0083】
また、本発明の接着剤組成物はフィルム状にしてから用いることも可能である。このフィルムの製造方法は、接着剤組成物に溶剤を加えた混合液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に混合液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去することによってフィルムを得ることができる。このように接着剤組成物をフィルム状とすると、取扱性に優れ一層便利である。
【0084】
また、本発明の接着剤組成物に導電性粒子を添加してフィルムを作製すると、異方導電性フィルムとすることができる。この異方導電性フィルムは、例えば、基板上の対向する電極間に載置し、加熱加圧することにより両電極を接着することができるとともに、電気的に接続することができる。ここで電極を形成する基板としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機質、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等のこれら複合の各組み合わせが適用できる。
【0085】
更に、本発明の接着剤組成物は加熱及び加圧を併用して接着させることができる。加熱温度は、100〜250℃の温度が好ましく、140〜200℃の温度がより好ましい。圧力は被着体に損傷を与えない範囲であればよく、0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。したがって、本発明の接着剤組成物は、例えば、温度140〜200℃、圧力3MPaとして、10秒間行うことにより、被着体を接着させることが可能である。
【0086】
更にまた、本発明の接着剤組成物は、短時間で反応を行うことができ、接着強度に優れることから、好適に回路接続材料として用いることができる。例えば、第1の回路部材の回路電極と第2の回路部材の回路電極とを電気的に接続する際に、これらの回路部材を対向配置した状態で、本発明の接着剤組成物を一方の回路電極に付与し、他方の回路電極とラジカル重合反応により電気的に接続させることができる。このように接着剤組成物を回路接続材料として用いると、電気的な接続を短時間で行うことができ、接続を行う際のプロセス温度や時間が変動したとしても、接着強度を安定したものとすることができる。また、回路接続材料の硬化物の経時的な接着強度の低下も抑制することができる。更に、この回路接続材料が導電性粒子を含有すれば、電気的な接続の異方性を示すことができ、回路電極用の異方導電性回路接続材料として用いることも可能である。
【0087】
また、加圧時間10秒、加圧圧力3MPa、及び加熱温度140〜200℃の条件下で対向する回路部材が加熱圧着されたときに、加熱温度のすべての温度領域において、加熱圧着後の回路部材間の接続抵抗値の最大値が、最小値に対して3倍以下であることが好ましい。この場合、プロセスマージンをより広くすることができる。
【0088】
この回路接続材料は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の回路接続材料としても使用することができる。具体的には、異方導電性接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として用いることができる。
【0089】
(回路部材の接続構造)
次に、本発明の回路部材の接続構造の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の回路部材の接続構造の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示すように、本実施形態の回路部材の接続構造1は、相互に対向する第1の回路部材20及び第2の回路部材30を備えており、第1の回路部材20と第2の回路部材30との間には、これらを電気的に接続する回路接続部材10が設けられている。第1の回路部材20は、第1の回路基板21と、回路基板21の主面21a上に形成される第1の回路電極22とを備えている。なお、回路基板21の主面21a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0090】
一方、第2の回路部材30は、第2の回路基板31と、第2の回路基板31の主面31a上に形成される第2の回路電極32とを備えている。また、回路基板31の主面31a上にも、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0091】
第1の回路部材20及び第2の回路部材30としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限されない。具体的には、液晶ディスプレイに用いられているITO等で電極が形成されているガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて用いることができる。このように、本実施形態では、プリント配線板やポリイミド等の有機物からなる材質をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(indium tin oxide)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)等の無機材質のように多種多様な表面状態を有する回路部材を用いることができる。
【0092】
回路接続部材10は、絶縁性物質11及び導電性粒子7を含有している。導電性粒子7は、対向する第1の回路電極22と第2の回路電極32との間のみならず、主面21aと31aとの間にも配置されている。本実施形態の回路部材の接続構造1においては、第1の回路電極22と第2の回路電極32とが、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。このため、第1の回路電極22及び第2の回路電極32の間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、第1の回路電極22及び第2の回路電極32の間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。また、この導電性粒子7を上述した配合割合とすることによって電気的な接続の異方性を示すことも可能である。
【0093】
なお、回路接続部材10が導電性粒子7を含有していない場合には、第1の回路電極22及び第2の回路電極32の間に所望の量の電流が流れるように、それらを直接接触させるか若しくは十分に近づけることで電気的に接続される。
【0094】
回路接続部材10は上記接着剤組成物を含む回路接続材料の硬化物により構成されていることから、第1の回路部材20又は第2の回路部材30に対する回路接続部材10の接着強度が十分に高くなり、この状態を長期間にわたって持続させることができる。したがって、第1の回路電極22及び第2の回路電極32間の電気特性の長期信頼性を十分に高めることが可能となる。
【0095】
(半導体装置)
次に、本発明の半導体装置の実施形態について説明する。図2は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。図2に示すように、本実施形態の半導体装置2は、半導体素子50と、半導体の支持部材となる基板60とを備えており、半導体素子50及び基板60の間には、これらを電気的に接続する半導体素子接続部材40が設けられている。また、半導体素子接続部材40は基板60の主面60a上に積層され、半導体素子50は更にその半導体素子接続部材40上に積層されている。
【0096】
基板60は回路パターン61を備えており、回路パターン61は、基板60の主面60a上で半導体接続部材40を介して又は直接に半導体素子50と電気的に接続されている。そして、これらが封止材70により封止され、半導体装置2が形成される。
【0097】
半導体素子50の材料としては特に制限されないが、シリコン、ゲルマニウムの4族の半導体素子、GaAs、InP、GaP、InGaAs、InGaAsP、AlGaAs、InAs、GaInP、AlInP、AlGaInP、GaNAs、GaNP、GaInNAs、GaInNP、GaSb、InSb、GaN、AlN、InGaN、InNAsPなどのIII-V族化合物半導体素子、HgTe、HgCdTe、CdMnTe、CdS、CdSe、MgSe、MgS、ZnSe、ZeTe等のII-VI族化合物半導体素子、そして、CuInSe(ClS)などの種々のものを用いることができる。
【0098】
半導体素子接続部材40は、絶縁性物質11及び導電性粒子7を含有している。導電性粒子7は、半導体素子50と回路パターン61との間のみならず、半導体素子50と主面60aとの間にも配置されている。本実施形態の半導体装置2においては、半導体素子50と回路パターン61とが、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。このため、半導体素子50及び回路パターン61間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、半導体素子50及び回路パターン61間の電流の流れを円滑にすることができ、半導体の有する機能を十分に発揮することができる。また、この導電性粒子7を上述した配合割合とすることによって電気的な接続の異方性を示すことも可能である。
【0099】
なお、半導体素子接続部材40が導電性粒子7を含有していない場合には、半導体素子50と回路パターン61とを所望の量の電流が流れるように直接接触させるか若しくは十分に近づけることで電気的に接続される。
【0100】
半導体素子接続部材40は上記接着剤組成物を含む接着剤組成物の硬化物により構成されていることから、半導体素子50及び基板60に対する半導体素子接続部材40の接着強度が十分に高くなり、この状態を長期間にわたって持続させることができる。したがって、半導体素子50及び基板60間の電気特性の長期信頼性を十分に高めることが可能となる。
【実施例】
【0101】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0102】
(導電性粒子の調整)
ポリスチレン粒子の表面に、厚さ0.2μmになるようにニッケル層を設け、更にこのニッケル層の外側に、厚さ0.02μmになるように金層を設け、平均粒径4μm、比重2.5の導電性粒子を作製した。
【0103】
[実施例1]
フェノキシ樹脂(熱可塑性樹脂、平均分子量45000、ユニオンカーバイト社製、商品名:PKHC)50質量部を、メチルエチルケトン75質量部に溶解して、固形分40質量%の溶液とした。
【0104】
そして、この溶液に、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(ラジカル重合性化合物、東亜合成社製、商品名:M−215)を25質量部、ウレタンアクリレート(共栄社化学社製、商品名:AT−600)を20質量部、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(共栄社化学社製、商品名:ライトエステルP−2M)を5質量部、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(ラジカル重合開始剤、1分間半減期温度132.6℃、日本油脂社製、商品名:パーヘキシルO)を3質量部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(ラジカル重合調節剤、式(9)参照)を1.0質量部配合した。得られた混合液に導電性粒子を1.5体積%となるように配合分散させ、接着剤組成物aを得た。
【0105】
次いで、得られた接着剤組成物aを、片面を表面処理した厚さ80μmのフッ素樹脂フィルムに公知の塗工装置を用いて塗布し、70℃で10分間熱風乾燥を行うことにより、層の厚さが15μmのフィルム状回路接続材Aを得た。
【0106】
[実施例2]
ラジカル重合調節剤としてビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートの代わりにビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートを1質量部配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材Bを得た。
【0107】
[実施例3]
ラジカル重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりにジイソプロピルパーオキシカーボネート(ラジカル重合開始剤、1分間半減期温度88.3℃、日本油脂社製、商品名:パーロイルIPP)を3質量部配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材Cを得た。
【0108】
[比較例1]
ラジカル重合調節剤であるビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートを用いない以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材Dを得た。
【0109】
[実施例4]
フェノキシ樹脂(熱可塑性樹脂、平均分子量45000、ユニオンカーバイト社製、商品名:PKHC)40質量部を、メチルエチルケトン60質量部に溶解して、固形分40質量%の溶液とした。
【0110】
また、ポリブチレンアジペートジオール(平均分子量2000)450質量部と、ポリオキシテトラメチレングリコール(平均分子量2000)450質量部と、1,4−ブチレングリコール100質量部と、をメチルエチルケトン4000質量部中で均一に混合し、更にジフェニルメタンジイソシアネート390質量部を加えて70℃にて反応させ、ウレタン樹脂(重量平均分子量35万)とした。
【0111】
そして、上記溶液35質量部と、ウレタン樹脂15質量部とを混合し、混合液とした。
【0112】
この混合液に、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(ラジカル重合性化合物、東亜合成社製、商品名:M−215)を15質量部、ウレタンアクリレート(ラジカル重合性化合物、共栄社化学社製、商品名:AT−600)を30質量部、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(ラジカル重合性化合物、共栄社化学社製、商品名:ライトエステルP−2M)を5質量部、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(ラジカル重合開始剤、1分間半減期温度132.6℃、日本油脂社製、商品名:パーヘキシルO)を3質量部、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(ラジカル重合調節剤)を0.5質量部配合した。得られた混合液に導電性粒子を1.5体積%となるように配合分散させ、接着剤組成物bを得た。
【0113】
次いで、得られた接着剤組成物bを、片面を表面処理した厚さ80μmのフッ素樹脂フィルムに公知の塗工装置を用いて塗布し、70℃で10分間熱風乾燥を行うことにより、層の厚さが15μmのフィルム状回路接続材Eを得た。
【0114】
[実施例5]
ラジカル重合調節剤として2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルの代わりに4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを0.5質量部配合したこと以外は実施例3と同様にして、フィルム状回路接続材Fを得た。
【0115】
[比較例2]
ラジカル重合調節剤である2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを用いないこと以外は実施例3と同様にして、フィルム状回路接続材Gを得た。
【0116】
(評価方法)
〔接着強度の測定〕
上記製法によって得られたフィルム状回路接続材A〜Dの接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、加熱温度150℃、160℃、170℃での接着強度のばらつきを評価した。ここで、接着強度の測定装置はテンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃、東洋ボールドウィン社製)を使用した。得られた結果を表1に示す。
【0117】
また、フィルム状回路接続材E〜Gについては、加熱温度を140℃、160℃、200℃で評価したこと以外は同様にして接着強度を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0118】
〔接続抵抗の測定〕
上記製法によって得られたフィルム状回路接続材A〜Dを用いて、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚さ18μmの銅回路配線を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム錫(ITO)の薄層を形成したガラス(厚さ1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング社製)により幅2mmにわたり電気的に接続した。この際の加熱加圧の条件は、加熱温度を150℃、160℃、170℃、加圧圧力を3MPa、加熱加圧時間を15秒間とした。この電気的に接続した回路間の接続抵抗を、接着直後、及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に120時間保持した後にマルチメータを用いて測定した。抵抗値は隣接する回路間の抵抗150点の平均(x+3σ)で示した。得られた結果を表1に示す。
【0119】
また、上記製法によって得られたフィルム状回路接続材E〜Gを用いて、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚さ18μmの銅回路配線を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム錫(ITO)の薄層を形成したガラス(厚さ1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング社製)により幅2mmにわたり電気的に接続した。この際の加熱加圧の条件は、加熱温度を140℃、160℃、200℃、加圧圧力を3MPa、加熱加圧時間を10秒間とした。この電気的に接続した回路間の接続抵抗を、接着直後、及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に168時間保持した後にマルチメータを用いて測定した。抵抗値は隣接する回路間の抵抗37点の平均(x+3σ)で示した。得られた結果を表2に示す。
【表1】


【表2】

【0120】
実施例1〜3のフィルム状回路接続材A〜Cは、加熱温度150〜170℃において、接着直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に120時間保持した後の接着強度が、ばらつきの少ない値を示し、広域の加熱温度に対して良好な特性を示すことが分かった。これに対して、本発明によらない比較例1のフィルム状回路接続材Dでは、加熱温度が高くなるにつれて接着強度の比較的顕著な低下が認められた。
【0121】
また、1分間半減期温度が90〜175℃であるラジカル重合開始剤を用いた実施例1及び2のフィルム状回路接続材A及びBは、加熱温度150〜170℃において、接着直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に120時間保持した後の接続抵抗が、ばらつきの少ない値を示し、より好ましい態様であることが分かった。
【0122】
さらに、実施例4,5のフィルム状回路接続材E及びFは、加熱温度140〜200℃において、接着直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に168時間保持した後の接着強度が、ばらつきの少ない値を示し、広域の加熱温度に対して良好な特性を示すことが分かった。一方、本発明のラジカル重合調節剤を使用しない比較例3では、接着直後の接続抵抗値がいずれの温度でも高く、さらに200℃加熱の場合には、急激な接続抵抗の上昇がみられ、さらに85℃、85%RHの高温高湿槽中に168時間保持した後では実施例4、5と比較して接続抵抗の上昇が顕著となった。また、接着強度についても、実施例4、5と比較して低下した。
【0123】
なお、実施例4,5と比較例2とを接着直後の接続抵抗比(最大接続抵抗/最低接続抵抗)で比較すると、実施例4では1.2(1.9(200℃における接続抵抗)/1.6(140℃における接続抵抗))、実施例5では1.6(2.3(200℃における接続抵抗)/1.4(140℃における接続抵抗))であるのに対し、比較例2では3.9(12.5(200℃における接続抵抗)/3.2(160℃における接続抵抗))であった。このことから、本発明のラジカル重合調節剤を用いることで、広い硬化温度マージンと高い信頼性を確保できることが明らかになった。
【0124】
(放置安定性)
実施例1及び4で得られたフィルム状回路接続材A及びEを、真空包装材に収容し、40℃で3日間放置した後、FPC及びITOを上述の加熱圧着装置により160℃、3MPa、10秒間の条件下で加熱圧着を行いフィルムを得た。得られたフィルムについて評価方法1及び2に準じて接着強度と接続抵抗を測定した。その結果を表3に示す。
【表3】

【0125】
表3において、実施例1及び4のフィルム状回路接続材A及びEは、40℃放置前後において、良好な接着強度及び接続抵抗を示し、経時的な安定性に優れることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0126】
以上より、本発明によれば、低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ、且つ硬化処理を行う際のプロセスマージンが広く、十分に安定した接着強度が得られる接着剤組成物、回路接続材料、回路部材の接続構造及び半導体装置を提供できる。
【符号の説明】
【0127】
1…回路部材の接続構造、2…半導体装置、7…導電性粒子、10…回路接続部材、11…絶縁性物質、20…第1の回路部材、21…第1の回路基板、22…第1の回路電極、30…第2の回路部材、31…第2の回路基板、32…第2の回路電極、40…半導体素子接続部材、50…半導体素子、60…基板、61…回路パターン、70…封止材。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤と、ラジカル重合調節剤と、を含有する、接着剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−13661(P2010−13661A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212258(P2009−212258)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2006−514545(P2006−514545)の分割
【原出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】