説明

接着剤組成物

【課題】 優れた接着強度を得ることができ、且つ信頼性試験後においても安定した性能を維持することができるとともに、取扱性に優れた接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 (a)融点が40℃〜80℃である結晶性樹脂と、(b)ラジカル重合性化合物と、(c)ラジカル重合開始剤と、を含む接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子及び液晶表示素子において、素子中の種々の部材を結合させる目的で種々の接着剤組成物が使用されている。接着剤組成物に要求される特性は、接着性をはじめとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等、多岐に渡る。また、接着に使用される被着体としては、プリント配線板やポリイミド等の有機基材をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO、SiN、SiO等の多種多様な表面状態を有する基材が用いられる。そのため、接着剤組成物は、各被着体にあわせた分子設計が必要である。
【0003】
従来、半導体素子や液晶表示素子用の接着剤組成物としては、高接着性でかつ高信頼性を示すエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。このような接着剤組成物の構成成分としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する熱潜在性触媒が一般に用いられている。熱潜在性触媒は硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、室温での貯蔵安定性と加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられてきた。実際の工程では、170〜250℃の温度で1〜3時間硬化させることにより、所望の接着を得ている。
【0004】
しかしながら、最近の半導体素子の高集積化、液晶素子の高精細化に伴い、素子間及び配線間ピッチが狭小化し、硬化時の加熱によって、周辺部材に悪影響を及ぼすおそれが出てきた。
【0005】
さらに低コスト化のためには、スループットを向上させる必要性があり、より低温で、かつ短時間で硬化する接着剤組成物、換言すれば「低温速硬化」の接着剤組成物が要求されている。接着剤組成物の低温速硬化を達成するために、例えば、活性化エネルギーの低い熱潜在性触媒が使用されることもあるが、その場合、室温付近での貯蔵安定性を兼備することが非常に難しいことが知られている。
【0006】
また、低温速硬化の要求に応える接着剤組成物として、最近、アクリレート誘導体やメタアクリレート誘導体等のラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤である過酸化物を併用した、ラジカル硬化型接着剤が注目されている。このような接着剤組成物は、反応活性種であるラジカルが反応性に富むため、短時間硬化が可能である(例えば、特許文献2参照)。一方、ラジカル硬化系の接着剤は、硬化反応が速いために、一般的に、接着強度が劣る。これに対して、接着剤に液状ゴムを添加することで、濡れ性を向上させ、接着強度を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−113480号公報
【特許文献2】国際公開第98/44067号パンフレット
【特許文献3】国際公開第04/50779号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年、半導体素子に更に高い性能が求められるようになってきているため、特許文献3に記載された液状ゴムを添加する方法で得られる接着剤組成物は、硬化後の弾性率やガラス転移温度等の接着剤物性を更に向上させることが求められる。すなわち、信頼性試験(例えば、85℃/85%RH放置)後の、接着力や接続抵抗等の特性向上が求められる。また、液状ゴムを用いた場合の粘着性が増加に起因する取扱性の低下、リペア性の低下及びブロッキングの発生などに改善の余地があった。
【0009】
本発明は、優れた接着強度を得ることができ、且つ信頼性試験後においても安定した性能を維持することができるとともに、取扱性に優れた接着剤組成物、及びそれを用いた回路部材の接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の接着剤組成物は、(a)融点が40℃〜80℃である結晶性樹脂と、(b)ラジカル重合性化合物と、(c)ラジカル重合開始剤と、を含むものである。
【0011】
本発明の接着剤組成物は、上述の構成を有することにより、優れた接着強度を得ることができ、且つ信頼性試験(例えば、高温高湿試験)後においても安定した性能(接着強度や接続抵抗など)を維持することができる。また、(a)結晶性樹脂の融点が40℃〜80℃であることで、接着剤組成物の室温域(例えば25〜30℃)における表面タック力が低くなることから、取扱性に優れる。さらに、当該樹脂は、一般的に、融点以上に加熱し液状状態にした際に、被着体に対して良好な濡れ性を有する。これにより、当該樹脂を含む接着剤組成物は優れた接着強度を発揮する。
【0012】
本発明の接着剤組成物において、(a)結晶性樹脂の融点は、40℃〜75℃であることが好ましい。(a)結晶性樹脂の融点が、40℃〜75℃であることで、上記の効果がより顕著に発揮される。
【0013】
本発明の接着剤組成物において、(a)結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。(a)結晶性樹脂がポリエステル樹脂を含むことで、凝集力が向上し、優れた接着強度を得ることができる。
【0014】
上記結晶性ポリエステル樹脂は、カーボネート基又はエーテル基を有する結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。このような結晶性ポリエステル樹脂を含むことで、結晶性を維持しつつ、適度な可とう性を有し、優れた接着強度を有する接着剤組成物を得ることができる。
【0015】
本発明の接着剤組成物は、(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物を更に含むことが好ましい。このような化合物を含有することで、基板、特に金属基板に対して優れた接着強度を得ることができる。
【0016】
本発明の接着剤組成物は、(e)フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂を更に含むことが好ましい。このような非晶性樹脂を含むことで、耐熱性、接着性が向上し、優れた接着強度を得ることができるとともに、硬化物の耐熱性の向上により、信頼性試験(高温高湿試験)後においても優れた特性を維持することができる。
【0017】
本発明の接着剤組成物は、(f)導電性粒子を更に含むことが好ましい。これにより、接着剤組成物に良好な導電性又は異方導電性を付与することができる。したがって、接着剤組成物を、接続端子(回路電極)を有する回路部材同士の接着剤用途等に特に好適に使用することが可能となる。また、上記接着剤組成物を介して電気的に接続した接続端子間の接続抵抗を十分に低減することができる。
【0018】
本発明は、さらに、第一の回路基板の主面上に第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の接続端子を有する第二の回路部材と、第一及び第二の接続端子を対抗させた状態で前記第一及び第二の回路部材間に設けられ、第一及び第二の接続端子間を電気的に接続する回路接合部材と、を備える接合体であって、上記回路接合部材は、上述した接着剤組成物又はこの硬化物からなり、第一及び第二の接続端子間は電気的に接合されている接合体を提供する。
【0019】
このような構造の接合体は、2つの回路部材を接続端子が対向するようにして上記回路接合部材により接合して電気的導通を図ったものであるが、回路接合部材として上記本発明の接着剤組成物又はその硬化物を適用できるため、回路部材間の接着強度を十分に高くすることができるとともに、信頼性試験後(例えば85℃/85%RH放置)後にも安定した性能(接着強度や接続抵抗)を維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた接着強度を得ることができ、且つ信頼性試験後においても安定した性能を維持することができるとともに、取扱性に優れた接着剤組成物、それを用いた回路部材の接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ウレタン変性ポリエステル樹脂(UR−1400)の示差走査熱量測定曲線(DSC曲線)を示す図である。
【図2】実施例で使用したポリ(カプロラクトン)の示差走査熱量測定曲線(DSC曲線)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。また、本発明において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(以下、場合によって「DSC」という。)により得られた示差走査熱量測定曲線が、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。さらに、結晶性樹脂の融点とは、上記吸熱ピークにおける、ピークトップの温度を意味する。
【0023】
なお、本発明おいて、示差走査熱量測定は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、Pyris DSC7)を用いた。測定条件は、空気を流量10mL/minで流入し、25℃に保持した後、10℃/minで120℃まで昇温させる条件とすることができる。
【0024】
一方、非晶性樹脂とは、DSCにより得られた示差走査熱量測定曲線が、明確な吸熱ピークを示さない樹脂を意味する。
【0025】
また、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸を示し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタアクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はメタアクリロイル基を意味する。
【0026】
本発明の接着剤組成物は、(a)融点が40℃〜80℃である結晶性樹脂と、(b)ラジカル重合性化合物と、(c)ラジカル重合開始剤とを含むものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0027】
本発明で用いる(a)融点が40℃〜80℃である結晶性樹脂は、上述のDSCによって測定された融点が40℃以上、かつ、80℃以下であり、結晶性を有するものである。当該結晶性樹脂は、(b)ラジカル重合性化合物及び(c)ラジカル重合開始剤と共に用いて、液状又は固形状の接着剤組成物とするための必須成分であり、フィルム状接着剤として用いる際にはフィルム形成能を発揮する。(a)融点が40℃〜80℃である結晶性樹脂は、(b)ラジカル重合性化合物と相溶し(又は混合可能であり)、更に、(c)ラジカル重合開始剤を保持可能であればよく、このような性質を有している限りにおいて、任意の結晶性樹脂が採用できる。
【0028】
上記結晶性樹脂の融点は、40℃〜75℃であることがより好ましく、40℃〜70℃であることが更に好ましく、40℃〜65℃であることが特に好ましい。結晶性樹脂の融点が40℃未満の場合には、硬化前の接着剤組成物の表面タック力が増加して、取扱性が悪化する傾向にある。また、結晶性樹脂の融点が80℃を超すと硬化前の接着剤組成物の流動性が低下する傾向にある。上記結晶性樹脂の分子量には特に制限はないが、一般的には重量平均分子量2000〜100000のものが好ましく、5000〜80000のものがより好ましい。この値が、2000未満ではフィルム形成性が劣る傾向があり、また100000を超えると他の成分との相溶性が悪くなる傾向がある。
【0029】
ここで、結晶性樹脂は、分子の少なくとも一部に規則性のある分子構造の領域を持っており、結晶性は、近傍の高分子との間で分子間力及び親和力が強く働くことによって発現するものである。
【0030】
結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリプロピレン樹脂、結晶性ポリアセタール樹脂、結晶性ポリフェノール樹脂等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種類以上を混合して用いることもできるが、結晶性ポリエステル樹脂を含むことが特に好ましい。
【0031】
結晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、結晶性を有する線状ポリエステル樹脂が用いられる。
【0032】
上記線状ポリエステル樹脂は、例えば、直鎖脂肪族鎖の両末端に水酸基を有するジオール類と、直鎖脂肪族炭化水素鎖の両末端にカルボキシル基を有する2官能カルボン酸とを縮重合させることによって得ることができる。なお、2官能カルボン酸は2官能カルボン酸クロライドのような塩にして用いてもよい。
【0033】
具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタジエングリコール等の直鎖脂肪族鎖の両末端に水酸基を有するジオール類の少なくとも1種と、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、n−ドデシルコハク酸、n−デドセニルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸の無水物又は低級アルキルエステル等の直鎖脂肪族炭化水素鎖の両末端にカルボキシル基を有する2官能カルボン酸の少なくとも1種と、の縮重合などによって得ることができる。
【0034】
線状ポリエステル樹脂はまた、ε−カプロラクトン、エナントラクトン、カプリロラクトン等のオキシカルボン酸またはその無水物やエステル化物を重合させることによっても得ることができる。
【0035】
また、本発明に用いられる結晶性ポリエステル樹脂は、カーボネート基又はエーテル基を含むことが好ましい。このような結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、結晶性ポリエステル樹脂を構成するジオール成分として、エーテル基若しくはカーボネート基を含む、低分子又は高分子ポリオールを、単独又は他のポリオールとともに用いることにより得ることができる。
【0036】
エーテル基を含むポリオールとしては、例えば、エーテルジオールが挙げられ、エーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールトリエチレングリコールが挙げられる。ポリカーボネートジオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、ポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールアジペートが挙げられる。
【0037】
本発明の接着剤組成物において、(a)融点が40℃〜80℃である結晶性樹脂の含有量は、接着剤組成物全量を基準として、1〜60重量%であることが好ましく、3〜50重量%であることがより好ましい。この含有量が1重量%未満であると、接着剤組成物の流動性向上に対する効果が小さくなる傾向にあり、50重量%を超えると、結晶性樹脂自体の流動性が悪化する傾向がある。
【0038】
(b)ラジカル重合性化合物は、(c)ラジカル重合開始剤から発生したラジカルにより重合体を形成する化合物である。(b)ラジカル重合性化合物としては、特に制限無く公知のものを使用することができる。また、(b)ラジカル重合性化合物は、必要に応じて1種を単独で、あるいは複数の種類の化合物を混合して用いることができる。
【0039】
(b)ラジカル重合性化合物としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンアクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンアクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基にエチレングリコールやプロピレングリコールを付加させた化合物に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入した化合物、下記一般式(A)及び(B)で示される化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用する以外に、必要に応じて複数の化合物を混合して用いてもよい。
【0040】
【化1】


[ここで、R及びRは、各々独立に水素またはメチル基を示し、k及びlは各々独立に1〜8の整数を表す。]
【0041】
【化2】


[ここで、R及びRは、各々独立に水素またはメチル基を示し、m及びnは、各々独立に0〜8の整数を表す。]
【0042】
(b)ラジカル重合性化合物としては、また、単独で30℃に静置した場合にワックス状、ろう状、結晶状、ガラス状、粉状等の流動性が無く固体状態を示す化合物を用いてもよい。
【0043】
このような化合物としては、N,N´−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、N−フェニルマレイミド、N−(o−メチルフェニル)マレイミド、N−(m−メチルフェニル)マレイミド、N−(p−メチルフェニル)−マレイミド、N−(o−メトキシフェニル)マレイミド、N−(m−メトキシフェニル)マレイミド、N−(p−メトキシフェニル)−マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、4,4´−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、3,3´−ジメチル−5,5´−ジエチル−4,4´−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N−メタクリロキシマレイミド、N−アクリロキシマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、N−メタクリロイルオキシコハク酸イミド、N−アクリロイルオキシコハク酸イミド、2−ナフチルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、ビニルカプロラクタム、ビニルカルバゾール、2−ポリスチリルエチルメタクリレート、N−フェニル−N´−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、ビス(4−ビニルフェニル)スルホン、2−t−ブトキシ−6−ビニルナフタレン、テトラメチルピペリジルメタクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、ペンタメチルピペリジルアクリレート、オクタデシルアクリレート、N−t−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロシキメチル)アクリルアミド、下記一般式(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(I)、(J)、(K)及び(L)で示される化合物が挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて単独あるいは混合して用いてもよい。
【0044】
【化3】


[ここで、P1は、1〜10の整数を表す。]
【0045】
【化4】

【0046】
【化5】


[ここで、Rは、水素またはメチル基、Rは、水素またはメチル基、pは、15〜30の整数を表す。]
【0047】
【化6】


[ここで、Rは、水素またはメチル基、Rは、水素またはメチル基、qは、15〜30の整数を表す。]
【0048】
【化7】


[ここで、Rは、水素またはメチル基を表す。]
【0049】
【化8】


[ここで、R10は、水素またはメチル基、rは、1〜10の整数を表す。]
【0050】
【化9】


[ここで、R11は、水素または下記式(a)若しくは(b)で示す基、sは、1〜10の整数を表す。]
【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
【化12】


[ここで、R12、は水素または下記式(c)若しくは(d)で示す基、tは、1〜10の整数を表す。]
【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】


[ここで、R13は、水素またはメチル基を表す。]
【0057】
【化16】


[ここで、R14は、水素またはメチル基を表す。]
【0058】
接着剤組成物において、(b)ラジカル重合性化合物の含有量は、(a)融点が40℃〜80℃である結晶性樹脂100重量部に対して、好ましくは40〜2400重量部であり、より好ましくは60〜1500重量部である。この含有量が40重量部未満の場合、硬化後の耐熱性低下する傾向にあり、2400重量部を超える場合には、フィルムとして使用する場合にフィルム形成性が低下する傾向にある。
【0059】
(c)ラジカル重合開始剤は、ラジカルを発生することで、(b)ラジカル重合性化合物の重合反応を開始させる化合物である。(c)ラジカル重合開始剤は、このような性質を有する限りにおいて公知の化合物を用いることができる。(c)ラジカル重合開始剤としては、過酸化物やアゾ化合物等が挙げられるが、安定性、反応性、相溶性の観点から、1分間半減期温度が90〜175℃で、かつ分子量が180〜1000の過酸化物が好ましい。ここで、「1分間半減期温度」とは、半減期が1分となる温度をいい、「半減期」とは、ラジカル重合性化合物の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間をいう。
【0060】
(c)ラジカル重合開始剤として、具体的には、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、2,2´−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1´−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、4,4´−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1´−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0061】
また、(c)ラジカル重合開始剤としては、波長150〜750nmの光照射によってラジカルを発生する化合物を用いることができる。このような化合物としては、特に制限無く、公知の化合物を使用することができるが、例えば、Photoinitiation,Photopolymerization,and Photocuring,J.−P. Fouassier,Hanser Publishers(1995年)、p17〜p35に記載されているα−アセトアミノフェノン誘導体やホスフィンオキサイド誘導体が光照射に対する感度が高いためより好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いる他に、上記過酸化物やアゾ化合物と混合して用いてもよい。
【0062】
接着剤組成物において、(c)ラジカル重合開始剤の含有量は、(a)融点が40℃〜80℃である結晶性樹脂100重量部に対して0.1〜500重量部が好ましく、1〜300重量部がさらに好ましい。この含有量が0.1重量部未満の場合、硬化不足が懸念され、500重量部を超える場合には、放置安定性が低下する恐れがある。
【0063】
接着剤組成物は、(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物を更に含んでもよい。このような化合物を含むことで、接着強度などが向上する。
【0064】
(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物としては、下記一般式(M)、(N)及び(O)で示される化合物が好ましい。このような化合物を用いれば、接着剤組成物の接着強度などを向上することができる。
【0065】
【化17】


[ここで、R15は、(メタ)アクリロイル基を示し、R16は水素原子またはメチル基、u、vは各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R15同士、R16同士、u同士及びv同士はそれぞれ同一でも異なってもよい。]
【0066】
【化18】


[ここで、R17は、(メタ)アクリロイル基を示し、w、xは各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R17同士、w同士及びx同士はそれぞれ同一でも異なってもよい。]
【0067】
【化19】


[ここで、R18は、(メタ)アクリロイル基を示し、R19は、水素原子又はメチル基、y及びzは各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R18同士、R19同士、y同士及びz同士はそれぞれ同一でも異なってもよい。]
【0068】
(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物としては、具体的には、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、2,2´−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、EO変性リン酸ジメタクリレート(エチレンオキサイド変性リン酸ジメタクリレート)、リン酸変性エポキシアクリレート、リン酸ビニル等が挙げられる。
【0069】
接着剤組成物において、(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物の含有量は、(a)融点が40℃〜80℃である結晶性樹脂50重量部に対して、好ましくは0.1〜150重量部であり、より好ましくは0.5〜100重量部である。この含有量が0.1重量部未満の場合、高接着強度が得られにくい傾向にあり、150重量部を超える場合には、硬化後の接着剤組成物の物性低下が生じやすく、信頼性が低下する恐れがある。
【0070】
接着剤組成物は、非晶性樹脂を更に含むことができる。非晶性樹脂を含むことで、接着剤組成物の耐熱性、接着性などが向上する。
【0071】
非晶性樹脂としては、特に制限無く使用することができるが、(e)フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂(好ましくは、ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂。なお、ウレタン変性ポリエステル樹脂は「ポリエステルウレタン樹脂」と称される場合もある。)、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂が好ましい。このような樹脂を使用した場合、耐熱性、接着性がより一層向上する。これらの樹脂は単独あるいは2種類以上を混合して用いることができるが、2種類以上を混合して用いる場合には、混合する樹脂同士が完全に相溶するか、またはミクロ相分離が生じて白濁する状態であることが好ましい。さらに、これらの樹脂中にはシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。
【0072】
また、上述の非晶性樹脂は、その分子量が大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、また接着剤としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる傾向にある。なお、上記分子量は特に制限を受けるものではないが、一般的には、重量平均分子量として5000〜150000が好ましく、10000〜80000がより好ましい。この値が、5000未満ではフィルム形成性が劣る傾向があり、また150000を超えると他の成分との相溶性が悪くなる傾向がある。
【0073】
接着剤組成物において、非晶性樹脂の含有量は、接着剤組成物全量を基準として、10〜80重量%であることが好ましく、15〜70重量%であることがより好ましい。10重量%未満であると高い接着性が得られにくい傾向にあり、80重量%を超えると接着剤組成物の流動性が悪化する傾向がある。
【0074】
接着剤組成物は、導電性又は異方導電性の付与を目的として、(f)導電性粒子を更に含むことができる。
【0075】
(f)導電性粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に前記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものでもよい。(f)導電性粒子が、プラスチックを核とし、この核に前記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものや熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接合時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。
【0076】
また、これらの導電性粒子の表面を、さらに高分子樹脂などで被覆した微粒子は、導電性粒子の配合量を増加した場合の粒子同士の接触による短絡を抑制し、電極回路間の絶縁性が向上できる。導電性粒子の表面を高分子樹脂などで被覆した微粒子は、それぞれ単独で又は他の導電性粒子と混合して用いることができる。
【0077】
(f)導電性粒子の平均粒径は1〜18μmであることが好ましい。このような(f)導電性粒子は良好な分散性及び導電性を発揮する。よって、このような(f)導電性粒子を含有する接着剤組成物は、異方導電性接着剤として好適に用いることができる。
【0078】
接着剤組成物における(f)導電性粒子の含有量は、特に制限されないが、接着剤組成物の全体積を基準として0.1〜30体積%とすることが好ましく、0.1〜10体積%とすることがより好ましい。この値が、0.1体積%未満であると導電性が劣る傾向があり、30体積%を超えると回路の短絡が生じやすくなる傾向にある。なお、(f)導電性粒子の含有量(体積%)は、23℃での硬化前の各成分の体積をもとに決定される。ここで、各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算することができる。また、体積を測定しようとする成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらすことができる適当な溶媒(水、アルコール等)をメスシリンダー等に入れ、そこへ測定対象の成分を投入して増加した体積をその成分の体積として求めることもできる。
【0079】
接着剤組成物は、橋架け率の向上を目的として、必要に応じ、(b)ラジカル重合性化合物及び(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物の他に、アリル基、マレイミド基、ビニル基等の活性ラジカルによって重合する官能基を有する化合物を含んでもよい。当該化合物の具体例としては、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、4,4´−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N−ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリルアミド等が挙げられる。
【0080】
接着剤組成物は、安定化剤を更に含むことができる。安定化剤を含むことで、硬化速度の制御や貯蔵安定性の付与が可能となる、安定化剤には、特に制限はないが、ベンゾキノンやハイドロキノン等のキノン誘導体、4−メトキシフェノールや4−t−ブチルカテコール等のフェノール誘導体、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルや4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のアミノキシル誘導体、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体が好ましい。
【0081】
接着剤組成物における安定化剤の含有量は、接着剤組成物100重量部に対して、好ましくは0.01〜30重量部であり、より好ましくは0.05〜10重量部である。この含有量が0.01重量部未満の場合、安定化効果の低下が懸念され、30重量部を超える場合には、接着剤組成物中の他の成分との相溶性が低下する恐れがある。
【0082】
接着剤組成物は、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体に代表されるカップリング剤及び密着向上剤、レベリング剤などの接着助剤を必要に応じ含んでもよい。具体的には、下記一般式(P)で示される化合物が好ましく、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0083】
【化20】


[ここで、R20、R21、R22は独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、アリール基、R23は(メタ)アクリロイル基、ビニル基、イソシアナート基、イミダゾール基、メルカプト基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、ウレイド基、グリシジル基、Aは1〜10の整数を表す。]
【0084】
接着剤組成物は、ゴム成分を併用してもよい。ゴム成分を併用することで、応力緩和及び接着性向上が容易となる。当該ゴム成分の具体例としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコールが挙げられる。
【0085】
上記ゴム成分としては、高極性基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に含むゴム成分が好ましい。このようなゴム成分を含むことで、より一層接着性が向上する。上記ゴム成分としては、液状ゴムがより好ましい。液状ゴムを用いることで接着剤組成物の流動性をより向上させることができる。ゴム成分として、具体的には、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有する液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状カルボキシル化ニトリルゴムが挙げられる。これらのゴム成分において、極性基であるアクリロニトリル含有量は10〜60重量%であることが好ましい。これらの化合物は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0086】
接着剤組成物は、有機微粒子を併用してもよい。有機微粒子を併用することで、さらなる応力緩和及び接着性向上を図ることができる。有機微粒子としては、具体的には、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール(メタ)アクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル−シリコーン共重合体、シリコーン(メタ)−アクリル共重合体または複合体からなる有機微粒子が挙げられる。これらの有機微粒子は1種を単独で用いる他に、2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
接着剤組成物は、常温(例えば25〜30℃)で液状である場合にはペースト状で使用することができる。常温で固体の場合には、加熱して使用する他、溶剤を用いてペースト化して使用してもよい。ここで、使用できる溶剤としては、接着剤組成物(添加剤も含む)と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限されないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃未満の場合、常温で放置すると揮発する恐れがあり、開放系での使用が制限される。また、沸点が150℃を超えると、溶剤を揮発させることが難しく、接着後の信頼性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0088】
接着剤組成物はフィルム状に形成して用いることもできる。接着剤組成物をフィルム状に形成する場合、接着剤組成物に必要に応じて溶剤等を加えるなどして得られた溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に上記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去することで、フィルム状に形成することができる。本発明の接着剤組成物は、フィルム状に形成して使用すると取扱性等の点から一層便利となる。
【0089】
接着剤組成物は、通常、加熱及び加圧を併用して被着体同士を接着させることができる。加熱温度は特に制限されないが、100〜250℃の温度であることが好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.1〜10MPaであることが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。本発明の接着剤組成物によれば、例えば、140〜200℃、3MPaの条件にて、10秒間の加熱及び加圧でも被着体同士を十分に接着させることが可能である。
【0090】
接着剤組成物は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には、異方導電性接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接合部材(回路接続材料)、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0091】
以下、接着剤組成物及び導電性粒子を使用して作製した異方導電フィルムを用い、回路基板の主面上に接続端子が形成された回路部材同士を接合する場合の一例について説明する。異方導電フィルムを、回路基板上の相対時する接続端子間に配置し、加熱加圧することにより、対抗する接続端子間の電気的接続と回路基板間の接着とを行い、回路部材同士を接合することができる。ここで、接続端子を形成する回路基板としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機質、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等のこれら複合の各組み合わせが適用できる。なお、対抗する接続端子同士を直接接触させるように接合すれば、上記導電性粒子を用いない場合でも、接続端子間を電気的に接続させることができる。
【0092】
上述の方法により、例えば、第一の回路基板の主面上に第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の接続端子を有する第二の回路部材と、第一及び第二の接続端子を対抗させた状態で第一及び第二の回路部材間に設けられ、第一及び第二の接続端子間を電気的に接続する回路接合部材とを備える接合体であって、上記回路接合部材は、本発明の接着剤組成物又はこの硬化物からなり、第一及び第二の接続端子間は、上記回路接合部材により電気的に接合されている接合体を得ることができる。
【0093】
このような接合体は、一対の回路部材の接合する回路接合部材が上記本発明の接着剤組成物の硬化物により構成されているため、回路部材間の接着強度を十分に高くすることができるとともに、信頼性試験後(例えば85℃/85%RH放置)後にも安定した性能を維持することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
[(e)非晶性樹脂溶液の調整]
非晶性樹脂溶液として、フェノキシ樹脂溶液、ウレタン変性ポリエステル樹脂溶液及びポリウレタン溶液を調整した。調整方法は以下に示す。
【0096】
(フェノキシ樹脂溶液の調整)
フェノキシ樹脂(YP−50、東都化成社製商品名)40gを、メチルエチルケトン60gに溶解して、固形分40重量%のフェノキシ樹脂溶液を調整した。
【0097】
(ウレタン変性ポリエステル樹脂溶液の調整)
ウレタン変性ポリエステル樹脂(UR−1400、東洋紡社製商品名)を、メチルエチルケトンとトルエンを1:1(重量)の割合で混合した混合溶媒に溶解し、ウレタン変性ポリエステル樹脂分が30重量%である溶液を調整した。なお、ウレタン変性ポリエステル樹脂(UR−1400)の示差走査熱量測定曲線(DSC曲線)を図1に示す。図1からわかるように、当該樹脂の示差走査熱量測定曲線はピークを有さないものであった。
【0098】
(ポリウレタン溶液の調整)
ポリウレタン樹脂(ミラクトランP22M、軟化点:64℃ 日本ポリウレタン工業株式会社製)15gを、メチルエチルケトン85gに溶解して、固形分15重量%のポリウレタン溶液を調整した。
【0099】
[液状ゴム成分の準備]
液状ゴム成分として液状ニトリルゴム(Nipol 1312日本ゼオン株式会社製商品名)を準備した。
【0100】
[結晶性樹脂(ポリエステル樹脂)溶液の調整]
結晶性樹脂として、ポリ(カプロラクトン)(和光純薬化学工業株式会社製、Mw:40000、mp:53℃)、バイロンGA−6400(Mw:30000、mp:71℃、東洋紡社製商品名)及びバイロンGA−6300(Mw:30000、mp:101℃、東洋紡社製商品名)を準備した。次いで、上述の3種類の結晶性樹脂30gを、それぞれ、トルエン70gに溶解して、固形分30重量%の結晶性樹脂(ポリエステル樹脂)溶液を調整した。なお、使用したポリ(カプロラクトン)の示差走査熱量測定曲線(DSC曲線)を図2に示す。図2からわかるように、当該樹脂の示差走査熱量測定曲線はピークを有するものであった。
【0101】
[(b)ラジカル重合性化合物の準備]
ラジカル重合性化合物として、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(M−215、東亜合成株式会社製商品名)を準備した。また、ラジカル重合性化合物として、ウレタンアクリレート(UA)を合成した。
【0102】
(ウレタンアクリレート(UA)の合成)
攪拌機、温度計、塩化カルシウム乾燥管を備えた還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に数平均分子量860のポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(アルドリッチ社製)860重量部(1.00モル)、ジブチルスズジラウレート(アルドリッチ社製)5.53重量部を投入する。次いで、充分に窒素ガスを導入した後、70〜75℃に加熱し、イソフォロンジイソシアネート(アルドリッチ社製)666重量部(3.00モル)を3時間で均一に滴下し、反応させた。滴下完了後約10時間反応を継続した。ここに2−ヒドロキシエチルアクリレート(アルドリッチ社製)238重量部(2.05モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル(アルドリッチ社製)0.53重量部を投入し、さらに10時間反応させ、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、ウレタンアクリレート(UA)を得た。得られたウレタンアクリレート(UA)の数平均分子量は3700であった。
【0103】
[(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物(以下、場合により「リン酸含有化合物」という。)の準備]
(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物として、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(ライトエステルP−2M、共栄社株式会社製商品名)を準備した。
【0104】
[(c)ラジカル重合開始剤の準備]
ラジカル重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(パーヘキシルO、日本油脂株式会社製商品名)を準備した。
【0105】
[(f)導電性粒子の作製]
ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設け、平均粒径4μm、比重2.5の導電性粒子を作製した。
【0106】
[実施例1〜6、比較例1〜5]
上述の方法により準備した材料を、固形重量比、すなわち溶媒を除いた場合の重量比で表1及び2に示す割合となるように配合し、さらに、導電性粒子を1.5体積%配合し分散させ接着剤組成物溶液を作製した。得られた接着剤組成物溶液を、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で、10分間、熱風乾燥し、厚みが20μmであるフィルム形状の接着剤組成物(以下「フィルム形状接着剤組成物」という。)を得た。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
(接着剤組成物及び接合体の評価)
〔接続抵抗及び接着強度の測定〕
上記製法によって得たフィルム状接着剤組成物を用いて、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて160℃の温度で、3MPaで10秒間の加熱加圧を行って接合し、接合体を作製した。この接合体の隣接回路間の抵抗値を、接着直後と、85℃、85%RHの高温高湿槽中に250時間保持した後にマルチメータで測定し接続抵抗値とした。なお、接続抵抗値は隣接回路間の抵抗37点の平均で示した。また、接続抵抗は低いほど良好である。
【0110】
また、この接合体の接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。ここで、接着強度の測定装置は東洋ボールドウィン株式会社製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。接着強度は高いほど良好である。
【0111】
〔表面タック力の測定〕
上記製法によって得られたフィルム状接着剤組成物を用いて、JIS Z0237−1991に準じてプローブタック試験でフィルム状接着剤組成物の表面タック力を評価した。ここで、表面タック力の測定装置は株式会社レスカ製(プローブ径:Φ5.1mm、接触速さ:2.0mm/s、引き剥がし速さ:10mm/s、接触荷重:100gf/cm、接触時間:1.0s、測定温度:30℃)を使用した。表面タック力が低いほど接着剤組成物の取扱性が優れるといえる。
【0112】
以上の方法により測定した、接合体の接続抵抗、接着強度及び表面タック力の測定結果を表3に示す。
【0113】
【表3】

【0114】
実施例1〜6で得られた接着剤組成物は、加熱温度160℃において、接着直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に250時間保持した後でも、良好な接続抵抗及び接着強度を示し、広域の加熱温度に対して良好な特性を示すことが分かった。さらに、表面タック力も適度に低く、作業性、リペア性が良好であることが分かった。これらに対して、融点が101℃の結晶性樹脂を用いた比較例1では、(a)融点が40℃〜80℃である結晶性樹脂を用いていないため、他の組成物との相容性が悪く、フィルム表面に凝集物が析出し、取扱性が悪化した。また、軟化点が64℃の非晶性樹脂を用いた比較例2、3では十分な流動性が得られず、接合直後及び高温高湿処理後の接続抵抗値が高い。また、液状ゴムを用いた比較例4、5では高温高湿後の接続抵抗の上昇と表面タック力が高く、作業性、すなわち取扱性が悪化することが分かった。
【0115】
以上に示すように、本発明によれば、優れた接着強度を有し、且つ信頼性試験(高温高湿試験)後においても安定した性能(接着強度や接続抵抗)を維持することができるとともに、取扱性にも優れた接着剤組成物及びそれを用いた回路部材の接合体を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明によれば、優れた接着強度を得ることができ、且つ信頼性試験後においても安定した性能を維持することができるとともに、取扱性に優れた接着剤組成物、それを用いた回路部材の接合体を提供することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)融点が40℃〜80℃である結晶性樹脂と、(b)ラジカル重合性化合物と、(c)ラジカル重合開始剤と、を含む接着剤組成物。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−7048(P2013−7048A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194008(P2012−194008)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2009−533204(P2009−533204)の分割
【原出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】