接着物品
転写テープ及びラベルを包含する接着物品について記載している。接着物品は、高摩擦係数の剥離面を有するミクロ構造化剥離ライナーの上に低弾性率の接着剤を包含する。ダイカット品質及びレザースリット加工された縁部の品質の向上が示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写テープ及びラベルを包含する接着物品に関する。接着物品は、高摩擦係数の剥離面を有するミクロ構造化剥離ライナー上に低弾性率の接着剤を包含している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
簡潔に言えば、一態様において本開示は、ミクロ構造化剥離層とその剥離層に接触している第1主表面を有する接着剤とを備える剥離ライナーを含む接着物品であって、剥離層の非構造化摩擦係数が少なくとも0.4である、接着物品を提供する。幾つかの実施形態では、接着剤は、20℃での弾性率が50キロパスカル以下である。幾つかの実施形態では、接着剤は、50℃での弾性率が20キロパスカル以下である。
【0003】
幾つかの実施形態では、剥離層は、シリコーン、例えば白金触媒系シリコーンを含む。幾つかの実施形態では、剥離層は、フルオロケミカル、フルオロシリコーン及び/又はポリオレフィンを含む。
【0004】
幾つかの実施形態では、接着剤は、アクリルコポリマーを含む。幾つかの実施形態では、接着剤は、ゴムを含む。幾つかの実施形態では、接着剤は、シリコーンを含む。
【0005】
幾つかの実施形態では、ミクロ構造化剥離層は、ピッチが500マイクロメートル未満のミクロ構造を含む。幾つかの実施形態では、ミクロ構造化剥離層は、深さ25マイクロメートル未満のミクロ構造を含む。
【0006】
幾つかの実施形態では、接着物品は更に、接着剤の第2主表面に接触している基材を含む。
【0007】
本開示の上記「課題を解決するための手段」は、本発明の各実施形態を説明することを目的とするものではない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の記述にも説明されている。本発明の他の特徴、目的及び利点は、以下の記述及び請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本開示の幾つかの実施形態による剥離ライナーのミクロ構造化剥離面。
【図2】図1の代表的な剥離ライナーの横断面図。
【図3】比較例4の切断線の顕微鏡写真。
【図4】実施例4の切断線の顕微鏡写真。
【図5】比較例8の切断線の顕微鏡写真。
【図6】実施例8の切断線の顕微鏡写真。
【図7】比較例4のロールのスリット縁部の顕微鏡写真。
【図8】比較例8のロールのスリット縁部の顕微鏡写真。
【図9】実施例8のロールのスリット縁部の顕微鏡写真。
【図10】実施例9のロールのスリット縁部の写真。
【図11】比較例11のロールのスリット縁部の写真。
【発明を実施するための形態】
【0009】
感圧接着(PSA)物品は、多種多様な用途で役立っている。一般に、接着物品には2つの広義のカテゴリーがある。第1カテゴリーのPSA物品は、接着転写テープ(ATT)を包含するものであって、典型的には、少なくとも1枚の剥離ライナーで支持された低接着性フィルムを含んでいる。幾つかの実施形態では、第2剥離ライナーが、接着性フィルムの反対側に存在する場合がある。幾つかの実施形態では、支持体層(例えば、フィルム、布、又はスクリム)が、接着性フィルム内に内蔵されている場合がある。例えば、幾つかの実施形態では、支持体層は両面に同一又は異なる接着剤がコーティングされていてよい。第2カテゴリーのPSA物品は、テープ及びラベルを包含するものであって、典型的には、接着性フィルムの片面に恒久的に接合された基材と、接着剤の第2表面に一時的に接着された剥離ライナーと、を含んでいる。一般的な基材としては、紙、高分子フィルム、箔などが挙げられる。
【0010】
形成される形状に関わらず、接着物品は切断されることが多い。代表的な切断操作には、所望の幅の物品を得るためのスリッティング(例えば、レザースリット)、所望の長さの物品を得るためのクロスカット(例えば、ギロチン裁断)、及び所望の形状の物品を得るためのダイカット(例えば、平盤ダイカット及びロータリー・ダイカット)が挙げられる。その他の切断操作としては、例えば、穿孔や押し抜きが挙げられる。
【0011】
一部の加工操作では、剥離ライナーを包含する接着物品の層すべてを切断する場合がある。それ以外の操作、例えば、一部のダイカット・モードでは、ダイの切断(又は破砕)縁部は、接着剤には貫通するが、剥離ライナーには通常貫通しない。このモードは、深さ制御ダイカット又はキスカットと呼ばれることが多い。この方法は、ラベルストックを加工するのに用いられることが多く、切断作用によって、恒久的に接合された基材(一般には支持体と呼ばれる)とPSA層とが切断されるが、剥離ライナーは切断されない。
【0012】
切断操作の間、接着剤層は切断線に沿って、例えば、スリット中はレザーの軌道に沿って又はダイカット中はダイの外辺部の周りで分離される。PSAの粘弾性特性は、切断の容易さと質とを制限することが多い。例えば、ダイカットは比較的遅い変形速度を伴い、その際に、接着剤が切断部の側面へ押される。PSAの弾性が増加するにつれて、接着剤はこの変形から回復して切断線の方へ逆流し易くなり、その結果、望ましくない接着剤の「滲出」が生じる可能性がある。
【0013】
接着剤の滲出を制御しようとするこれまでの試みは、接着剤自体の化学的性質を変えることに集中していた。(例えば、米国特許第5,154,974号(ノーマン(Norman)ら)、同第5,663,228号(ササキ(Sasaki)ら)、同第6,841,257号(ササキら)及び同第7,288,590号(レヒャト(Lechat)ら)を参照のこと。)しかしながら、このような方法は、本来の目的のために滲出軽減と適切な接着性との両方を付与するように接着剤の特性のバランスを取るよう、接着剤配合者に求める場合がある。残念なことに、接着剤の同様の粘弾性特性は、切断中に望ましくない滲出を生じさせる傾向があり、接着し難い基材、例えば、低表面エネルギー物質と接合するときには、有効な改良を付与することが必要な場合がある。
【0014】
接着剤の滲出範囲はまた、接着剤層と剥離ライナーの剥離面との間の相互作用にも影響される。例えば、同様の接着剤を用いると、高摩擦係数(COF)の剥離面を用いた場合、低COFの剥離面と比べて、スリット加工後とダイカット後の両方で滲出がかなり増大することが分かった。また一方で、剥離力はまた、剥離面のCOFによっても影響される可能性があり、接着剤と剥離化学物質との幾つかの組み合わせと同様に、高いCOFが低い剥離力と相関していることが分かった。実際に、高COFの剥離面は、一層軟質の(つまり、高弾性の)接着剤を用いた場合、低剥離力を満足いくように達成しなければならないため、このような構造では接着剤の滲出問題が悪化する可能性がある。
【0015】
本開示の接着物品は、剥離ライナーのエンボス加工された高摩擦係数の剥離面と接触している接着剤を包含する。本発明者らは、剥離面がミクロ構造化されていれば、低弾性率の接着剤と高COFの剥離面とを組み合わせた場合でも、よりきれいな切断(例えば、スリット加工及びダイカット)が実現可能であることを見出した。
【0016】
一般に剥離ライナーは、ベースと剥離面とを包含している。幾つかの実施形態では、剥離面は、ベースに一体成形されてもよい。例えば、低分子量オレフィンフィルムは、一部の接着剤と共に剥離ライナーを使用でき、剥離コーティングをそれ以上必要としない場合がある。また一方で、典型的な剥離ライナーとしては、ベースの少なくとも1つの面に接着された剥離層が挙げられる。
【0017】
ベースの組成物は制限されず、あらゆる既知の材料が利用できる。代表的なベース材料としては、紙、ポリコート紙、及び高分子フィルムが挙げられる。典型的には、エンボス加工パターンを受け入れられる材料を用いることで、本開示の一部の接着物品の形成に伴うプロセスを簡略化することができる。
【0018】
一般には、平坦な表面にコーティングした場合、高摩擦係数の表面をもたらすあらゆる既知の剥離化学物質を利用することができる。このような表面は、その表面にわたって指を引きずり寄せると「ゴムのような」感じがする場合が多い。対照的に、低COFの剥離面は、「つるつるした」感じがする傾向がある。一般に、剥離面のCOFは、特定の剥離化学物質と硬化プロセスとによって決まる。適用方法及び剥離層の厚さのような他の要因もまた、COFに影響を及ぼす可能性がある。
【0019】
代表的な剥離化学物質としては、シリコーン類、フルオロシリコーン類、フルオロケミカル類、及び非シリコーン、非フッ素系化学物質類(例えば、ポリオレフィン類)が挙げられる。これら及びその他の剥離配合物を、溶液(例えば、溶媒)コーティング、100%固体コーティング、及びホットメルト押出成形を含む既知の手段を用いてベースに適用してもよい。
【0020】
一般に、高い架橋密度を有する剥離層は、COFが高い傾向がある。溶媒送達を目的とした配合物において、主要なシリコーン成分は、通常、比較的少数の官能基を含有する分子量100,000超のポリマーを含んでいる。これらの系の硬化コーティングは、架橋結合間に比較的高い分子量を有し、ポリジメチルシロキサンのこれらの長い非拘束鎖長のセグメント可動性及び可撓性は、これらのコーティングの低摩擦係数に大きく関与すると考えられる。例えば、溶媒コーティングされたスズ触媒系シリコーン類は、低い架橋密度とそれに応じて低いCOFを有する傾向がある。
【0021】
対照的に、無溶媒系は、通常、分子量2,000〜30,000の比較的高度に官能化されたシリコーンポリマーをベースとしている。これら配合物は、一般に、溶媒送達型シリコーン系と比較すると、高度に架橋された高摩擦係数(ゴムのような感触)のコーティングをもたらす。例えば、無溶媒の白金触媒系シリコーン類は一般に、溶媒送達型の系と比べると、高い架橋密度とそれに応じて高いCOFとを有している。
【0022】
幾つかの実施形態では、ミクロ構造化する前の剥離層のCOF(つまり、「非構造化COF」)は、少なくとも0.4であり、幾つかの実施形態では、少なくとも0.5、少なくとも0.6、又は更に少なくとも0.8である。剥離面の測定非構造化COFは、一般に、構造化剥離面の測定COFよりも大きい。しかしながら、COF測定に利用する試験法は、試験装置とエンボス加工された剥離面との間の接触表面積を小さくする原因とはならない。したがって、接着剤によって得られる実際のCOFは、エンボス加工されたライナーの表面全体で弛緩及び滲出し易いので、非構造化COFとより密接に関係していると考えられる。
【0023】
一般には、あらゆる接着剤化学物質を使用してよい。代表的な接着剤化学物質としては、アクリル樹脂、ゴム類(例えば、天然ゴム、及びブロックコポリマー(例えば、SIS、SBS及びSEBS)のような合成ゴム)、シリコーン類などが挙げられる。
【0024】
用途、例えば、低表面エネルギー物質(例としては、ポリエチレン又はポリプロピレン)との接合を要する用途では、より柔軟で一層強力な接着剤が望ましい場合がある。一般に、このような接着剤は、低弾性率を有するという特徴がある。幾つかの実施形態では、20℃での弾性率(G’)が50キロパスカル(kPa)以下の接着剤が望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、20℃での弾性率は40kPa以下、又は更に30kPa以下であってよい。幾つかの実施形態では、50℃での弾性率は、20kPa以下、15kPa以下、又は更に10kPa以下であってよい。
【実施例】
【0025】
【表1】
【0026】
ミクロ構造化ライナーは、様々な剥離化学物質をコーティングしたポリコート紙上にパターンをエンボス加工することによって作製した。ライナー類を表1に記載する。報告されたシリコーン被覆重量は、ポリコート紙上のシリコーン剥離コーティングで較正したオックスフォードLabX−3000(OXFORD LabX-3000)X線蛍光測定器を用いて測定した。ライナーは、両面にポリエチレン層の付いた坪量26.3kg(58ポンド)のクラフト紙(すなわち、ポリコート・クラフト紙(PCK))であった。一部のライナーは両面に高密度ポリエチレン(HD)を有していた(HD/HD)が、それ以外は、片面に低密度ポリエチレン(LD)を有していた(LD/HD)。
【0027】
ライナー上にミクロ構造をエンボス加工した。ピッチ(P)は、あるミクロ構造から、それと隣接するミクロ構造上の同点までの距離である。幾つかの実施形態では、1000マイクロメートル未満、例えば500マイクロメートル未満、又は更に300マイクロメートル未満のピッチが望ましい場合がある。深さ(D)は、ミクロ構造の最大陥凹部である。幾つかの実施形態では、少なくとも5マイクロメートル、例えば少なくとも10マイクロメートルの深さが望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、50マイクロメートル以下、例えば35マイクロメートル以下、又は更に30マイクロメートル以下の深さが望ましい場合がある。
【0028】
3つのミクロ構造パターンを使用した。「パターン1」及び「パターン2」は、図1及び2に例示するように、角錐状ミクロ構造で構成されていた。角錐状ミクロ構造10は、剥離ライナー20の剥離面22に存在する。ミクロ構造10のピッチ(P)と深さ(D)は、図2に示す横断面図で説明されている。「パターン1」のピッチは、197マイクロメートル及び深さは13マイクロメートルであった。「パターン2」のピッチは、292マイクロメートル及び深さは25マイクロメートルであった。「パターン3」は、ピッチ1270マイクロメートルの交差している溝のクロスハッチから構成されていた。
【0029】
ウォバシュ(WABASH)プラテン・プレス機を用いて、ミクロ構造化ライナーのサンプルを作成した。次の積み重ね体は、エンボス加工しようとする基材とエンボス加工に使用される用具とを用いて作成された。36cm×36cm(14インチ×14インチ)の厚紙片/30cm×30cm(12インチ×12インチ)のクロームめっきした研磨鋼板/50マイクロメートル(2.0ミル)厚のポリエステル系シリコーン剥離ライナー/ニッケルめっきしたエンボス加工用具(エンボス加工面が上向き))/エンボス加工しようとする基材(剥離面がエンボス加工面と接触している)/50マイクロメートル(2.0ミル))厚のポリエステル系シリコーン剥離ライナー/30cm×30cm(12インチ×12インチ)のクロームめっきした研磨鋼板/36cm×36cm(14インチ×14インチ)の厚紙片。エンボス加工用具のエンボス加工面と基材の剥離面との間の接触部分は、25cm×25cm(10インチ×10インチ)であって、625平方センチメートル(100平方インチ)の接触面積をもたらした。
【0030】
プレス機を、PCKライナーの剥離層とその下にある低密度ポリエチレン(LD)層とをエンボス加工するために100℃の温度まで予熱し、又はPCKライナーの剥離層とその下にある高密度ポリエチレン(HD)層とをエンボス加工するために110℃まで予熱した。積み重ね体を上部プラテンと下部プラテンとの間に配置し、プラテンを引き寄せて、積み重ね体を0.34メガパスカル(MPa)(50psi)で3分間プリプレスした。その後、圧力を、LD面をエンボス加工するために2MPa(300psi)まで、及びHD面をエンボス加工するために5.5MPa(800psi)まで増強させた。積み重ね体を高圧下で3分間保持した後、試料をプレス機から取り出すまで高圧を維持しながら、プレス温度よりも少なくとも20℃低い温度まで冷却した。
【0031】
別の方法としては、加熱ゴムロールとエンボス加工ロールとの間にライナーを通過させることで、ロールツーロール法でライナーにミクロ構造を形成した。ゴムロールは、110℃まで加熱した。剥離ライナーのポリコート面もまた、110℃まで加熱してからゴムロールとエンボス加工ロールとの間のニップ部に挿入した。ライナーは、エンボス加工ロールの約半分まで移動させてから冷却缶へ移動させて、ライナーを冷却した。得られたミクロ構造化ライナーは、キーエンス(KEYENCE)共焦点顕微鏡を用いて観察して、エンボス加工品質を確かめた。
【0032】
転写テープ試料は、感圧接着剤を公称厚さ100マイクロメートル(4ミル)でミクロ構造化ライナー上に湿式流延加工し、そして紫外線で硬化することによって作製した。これにより、ミクロ構造化剥離面と接触しかつそれと適合した第1表面と、実質的に平坦な第2露出面と、を有する接着層が得られた。
【0033】
第1接着剤(ADH−1)は、イソオクチルアクリレートとアクリル酸との架橋アクリルコポリマーを含有する強力接着剤であった。ADH−2は、軟質接着剤であって、イソオクチルアクリレートとイソボルニルアクリレートとアクリル酸との架橋アクリルコポリマーを含有していた。ADH−2は、リーガルレッツ(REGALREZ)6108で粘着力を高めた。これら接着剤それぞれについて、ガラス転移温度(Tg)、20℃及び50℃での弾性率(G’)、並びに弾性率に関する損失率比(tanδ)を測定した。
【0034】
これらの機械的特性は、直径16mmの平板を周波数1ラジアン/秒及び最大歪み10%で使用する平行平板レオメーター(RDA II、ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway)のレオメトリックス社(Rheometrics, Inc))において動的機械分析(DMA)を用いて測定する一方で、試料を室温から200℃まで2℃/分の速度で加熱した。結果を表2に記す。
【0035】
【表2】
【0036】
得られた試料を、剥離面の摩擦係数及び接着剥離力について評価した。試料を更に加工して(例えば、スリット及びダイカット)、接着剤の滲出程度を包含する切断部の品質を定性評価した。
【0037】
摩擦係数。剥離面のCOFは、マサチューセッツ州アコード(Accord)(ヒンガム(Hingham))のアイマス社(IMASS, Inc.)(「IMASS」)から取引標記「モデルSP−102B−3M90」及び「モデルSP−2000」として市販されているスリップ/ピール・テスター(Slip/Peel Tester)を用い、ASTM D 1894−63、副手順Aに基づく手順に従って求めた。剥離ライナーの約25×15cm(10×6インチ)部分を、スリップ/ピール・テスターの台に、剥離層が露出するように付着させた。剥離層には、触らず、汚染せず、平坦にし、そして皺が寄らないのを保つように注意した。剥離層と摩擦スレッド(3.2mm厚の中密度発泡ゴムで覆われた、取引標記「モデルSP−101038」としてIMASSから市販されているもの)の両方に圧縮空気を吹き付けて、浮遊しているくずを取り除いた。摩擦スレッドを剥離層の上に配置して、スレッドに付属された鎖をスリップ/ピール・テスターの力変換器に取り付けた。スリップ/ピール・テスターの台を15cm/分(6インチ/分)の速度で動かすことにより、摩擦スレッドを剥離層表面の端から端まで移動させた。機器によって、静止摩擦力を除く平均動摩擦力を計算して記録した。動摩擦力を摩擦スレッドの重量で割ることにより、動摩擦係数が得られた。
【0038】
ダイカット。試料は、38マイクロメートル(1.5ミル)厚のPETフィルムを接着剤の露出(実質的に平坦な)面に積層することによって調製した。積層体は、マーク・アンディ(MARK ANDY)モデル830プレス機で制限深度ダイカットを行った。ロータリー・ダイのツーリングにより、積層体の幅に対して3枚のラベルが作成された。各ラベルは、幅3.2cm(1.25インチ)、長さ5.7cm(2.25インチ)であった。ラベル周囲のマトリックスを剥がし、ラベルの列を剥離ライナーに接着したままにした。
【0039】
ダイカット試料を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。各切断部は、5を最高とする1〜5段階で評価した。評価は、切断縁部の観察と接着剤の滲出程度とに基づいて付与した。切断線から確実に後退しているものには評価5を付与する一方で、評価1は、かなりの接着剤が切断線にまで広がっていることを示していた。報告した結果は、幾つかの観測結果の平均である。
【0040】
試料は、2つの異なる高COFライナーと2つのミクロ構造化パターンと2つの接着剤とを用いて調製した。結果を表3にまとめる。ライナーとミクロ構造パターンと接着剤との各組み合わせでは、非構造化比較例と比べてダイカット品質が改善された。
【0041】
構造化ライナーと非構造化ライナーとを用いて得られた切断線の例を、図3〜6に示す。図3は、比較例4の高COFの剥離面においてダイカット線に沿って観察した接着剤の滲出を表しており、ダイカット品質評価1を得た。図4は、同様のライナーをミクロ構造化する場合に、実施例4で観察される改善を表している。実施例4は、ダイカット品質評価3.5を得た。同様に、図5は、比較例8の低COFの剥離面において観察された接着剤の滲出を表しており、ダイカット品質評価2.5を得た。図6は、同様のライナーをミクロ構造化する場合に、実施例8で観察される改善点を表している。実施例8は、ダイカット品質評価4.5を得た。
【0042】
【表3】
【0043】
幾つかの異なる低COFライナーを用いて、追加試料を調製した。表4に示すように、LIN−4を用いて調製された試料であって、ピッチが1270マイクロメートルのパターン3を使用したものを除いて、非構造化比較例と比べてミクロ構造化試料ではダイカット品質が改善された。
【0044】
【表4】
【0045】
ロール試作品にレザースリットを施して、縁部から切断した積み重ね体を、SEMを用いて観察した。各試料には、ADH−2軟質接着剤を使用した。比較試料は、無溶媒の白金硬化型シリコーン剥離系を使用した非構造化ライナー(LIN−2)及び低COFの溶媒系シリコーン剥離系をコーティングした非構造化ライナー(LIN−3)を用いて調製した。ロールを、ブレード角90°を用いてレザースリット加工した。大きなブレード角は、より大量の接着剤の採取につながる可能性があることが一般に知られている。そのため、この大きなブレード角を用いて、様々な試料の切断縁部の品質を区別するのに役立てた。
【0046】
図7(比較例3)及び図8(比較例8)に示すように、どちらの比較試料でも顕著な接着剤の滲出があり、縁部の品質は悪かった。更に、スリット加工された縁部は、触ると非常にべたっとしていた。本開示の幾つかの実施形態による実施例は、ミクロ構造化ライナー(実施例8)上に同様の接着剤(ADH−2)をコーティングすることで調製した。図9に示すように、ミクロ構造化ライナーを使用した結果、平坦なライナーに比べて、縁部の品質の著しい向上と接着剤の滲出の大幅な軽減が生じた。
【0047】
追加のロール試作品をレザースリット加工して、縁部を観察した。各試料には、ADH−2軟質接着剤と、無溶媒の白金硬化型シリコーン剥離層を有するLIN−5とを使用した。比較例11は、パターン無しのLIN−5を用いて調製したが、実施例9は、パターン2を有するLIN−5を用いて調製した。ロールを、ブレード角90°を用いてレザースリット加工した。図10(実施例9、構造化ライナー)と図11(比較例11、非構造化ライナー)とを比較すると、ミクロ構造化ライナーを用いて調製された試料は、縁部の品質に顕著な改善を示した。
【0048】
その他の高COF剥離コーティング上でのミクロ構造の効果を評価した。ライナーは、フルオロシリコーン剥離の被覆重量が0.917グラム/平方メートルであり、非構造化COFが1.06であった。フルオロシリコーンは、ロパレックス(Loparex)から入手したHD/HD PCK基材上にコーティングした。ライナーは、パターン2を用いてミクロ構造化した結果、構造化COFが0.70となった。ADH−2を適用して、試料をダイカット加工した。非構造化試料のダイカット品質評価は、3.5であった。ミクロ構造の付加により、ダイカット品質評価が4まで向上した。
【0049】
剥離特性に対する剥離面のミクロ構造化効果は、次の剥離試験を用いて評価した。25マイクロメートル(1ミル)厚のポリエステル(PET)シートを、接着剤の露出(実質的に平坦な)面、つまり剥離ライナーとは反対側の接着剤の表面に積層した。積層試料を調整した後、2つ又は3つの試料を試験して、剥離ライナーの剥離面からPET/接着剤積層体を除去するのに要する力(すなわち、「剥離力」)を求めた。剥離力は、毎分230cm(毎分90インチ)の速度において180度で剥離するIMASS試験機を用いて測定した。表5に示すように、ミクロ構造は、剥離力にほとんど悪影響を及ぼさなかった。
【0050】
【表5】
【0051】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な修正及び変更が、当業者には自明であろう。
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写テープ及びラベルを包含する接着物品に関する。接着物品は、高摩擦係数の剥離面を有するミクロ構造化剥離ライナー上に低弾性率の接着剤を包含している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
簡潔に言えば、一態様において本開示は、ミクロ構造化剥離層とその剥離層に接触している第1主表面を有する接着剤とを備える剥離ライナーを含む接着物品であって、剥離層の非構造化摩擦係数が少なくとも0.4である、接着物品を提供する。幾つかの実施形態では、接着剤は、20℃での弾性率が50キロパスカル以下である。幾つかの実施形態では、接着剤は、50℃での弾性率が20キロパスカル以下である。
【0003】
幾つかの実施形態では、剥離層は、シリコーン、例えば白金触媒系シリコーンを含む。幾つかの実施形態では、剥離層は、フルオロケミカル、フルオロシリコーン及び/又はポリオレフィンを含む。
【0004】
幾つかの実施形態では、接着剤は、アクリルコポリマーを含む。幾つかの実施形態では、接着剤は、ゴムを含む。幾つかの実施形態では、接着剤は、シリコーンを含む。
【0005】
幾つかの実施形態では、ミクロ構造化剥離層は、ピッチが500マイクロメートル未満のミクロ構造を含む。幾つかの実施形態では、ミクロ構造化剥離層は、深さ25マイクロメートル未満のミクロ構造を含む。
【0006】
幾つかの実施形態では、接着物品は更に、接着剤の第2主表面に接触している基材を含む。
【0007】
本開示の上記「課題を解決するための手段」は、本発明の各実施形態を説明することを目的とするものではない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の記述にも説明されている。本発明の他の特徴、目的及び利点は、以下の記述及び請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本開示の幾つかの実施形態による剥離ライナーのミクロ構造化剥離面。
【図2】図1の代表的な剥離ライナーの横断面図。
【図3】比較例4の切断線の顕微鏡写真。
【図4】実施例4の切断線の顕微鏡写真。
【図5】比較例8の切断線の顕微鏡写真。
【図6】実施例8の切断線の顕微鏡写真。
【図7】比較例4のロールのスリット縁部の顕微鏡写真。
【図8】比較例8のロールのスリット縁部の顕微鏡写真。
【図9】実施例8のロールのスリット縁部の顕微鏡写真。
【図10】実施例9のロールのスリット縁部の写真。
【図11】比較例11のロールのスリット縁部の写真。
【発明を実施するための形態】
【0009】
感圧接着(PSA)物品は、多種多様な用途で役立っている。一般に、接着物品には2つの広義のカテゴリーがある。第1カテゴリーのPSA物品は、接着転写テープ(ATT)を包含するものであって、典型的には、少なくとも1枚の剥離ライナーで支持された低接着性フィルムを含んでいる。幾つかの実施形態では、第2剥離ライナーが、接着性フィルムの反対側に存在する場合がある。幾つかの実施形態では、支持体層(例えば、フィルム、布、又はスクリム)が、接着性フィルム内に内蔵されている場合がある。例えば、幾つかの実施形態では、支持体層は両面に同一又は異なる接着剤がコーティングされていてよい。第2カテゴリーのPSA物品は、テープ及びラベルを包含するものであって、典型的には、接着性フィルムの片面に恒久的に接合された基材と、接着剤の第2表面に一時的に接着された剥離ライナーと、を含んでいる。一般的な基材としては、紙、高分子フィルム、箔などが挙げられる。
【0010】
形成される形状に関わらず、接着物品は切断されることが多い。代表的な切断操作には、所望の幅の物品を得るためのスリッティング(例えば、レザースリット)、所望の長さの物品を得るためのクロスカット(例えば、ギロチン裁断)、及び所望の形状の物品を得るためのダイカット(例えば、平盤ダイカット及びロータリー・ダイカット)が挙げられる。その他の切断操作としては、例えば、穿孔や押し抜きが挙げられる。
【0011】
一部の加工操作では、剥離ライナーを包含する接着物品の層すべてを切断する場合がある。それ以外の操作、例えば、一部のダイカット・モードでは、ダイの切断(又は破砕)縁部は、接着剤には貫通するが、剥離ライナーには通常貫通しない。このモードは、深さ制御ダイカット又はキスカットと呼ばれることが多い。この方法は、ラベルストックを加工するのに用いられることが多く、切断作用によって、恒久的に接合された基材(一般には支持体と呼ばれる)とPSA層とが切断されるが、剥離ライナーは切断されない。
【0012】
切断操作の間、接着剤層は切断線に沿って、例えば、スリット中はレザーの軌道に沿って又はダイカット中はダイの外辺部の周りで分離される。PSAの粘弾性特性は、切断の容易さと質とを制限することが多い。例えば、ダイカットは比較的遅い変形速度を伴い、その際に、接着剤が切断部の側面へ押される。PSAの弾性が増加するにつれて、接着剤はこの変形から回復して切断線の方へ逆流し易くなり、その結果、望ましくない接着剤の「滲出」が生じる可能性がある。
【0013】
接着剤の滲出を制御しようとするこれまでの試みは、接着剤自体の化学的性質を変えることに集中していた。(例えば、米国特許第5,154,974号(ノーマン(Norman)ら)、同第5,663,228号(ササキ(Sasaki)ら)、同第6,841,257号(ササキら)及び同第7,288,590号(レヒャト(Lechat)ら)を参照のこと。)しかしながら、このような方法は、本来の目的のために滲出軽減と適切な接着性との両方を付与するように接着剤の特性のバランスを取るよう、接着剤配合者に求める場合がある。残念なことに、接着剤の同様の粘弾性特性は、切断中に望ましくない滲出を生じさせる傾向があり、接着し難い基材、例えば、低表面エネルギー物質と接合するときには、有効な改良を付与することが必要な場合がある。
【0014】
接着剤の滲出範囲はまた、接着剤層と剥離ライナーの剥離面との間の相互作用にも影響される。例えば、同様の接着剤を用いると、高摩擦係数(COF)の剥離面を用いた場合、低COFの剥離面と比べて、スリット加工後とダイカット後の両方で滲出がかなり増大することが分かった。また一方で、剥離力はまた、剥離面のCOFによっても影響される可能性があり、接着剤と剥離化学物質との幾つかの組み合わせと同様に、高いCOFが低い剥離力と相関していることが分かった。実際に、高COFの剥離面は、一層軟質の(つまり、高弾性の)接着剤を用いた場合、低剥離力を満足いくように達成しなければならないため、このような構造では接着剤の滲出問題が悪化する可能性がある。
【0015】
本開示の接着物品は、剥離ライナーのエンボス加工された高摩擦係数の剥離面と接触している接着剤を包含する。本発明者らは、剥離面がミクロ構造化されていれば、低弾性率の接着剤と高COFの剥離面とを組み合わせた場合でも、よりきれいな切断(例えば、スリット加工及びダイカット)が実現可能であることを見出した。
【0016】
一般に剥離ライナーは、ベースと剥離面とを包含している。幾つかの実施形態では、剥離面は、ベースに一体成形されてもよい。例えば、低分子量オレフィンフィルムは、一部の接着剤と共に剥離ライナーを使用でき、剥離コーティングをそれ以上必要としない場合がある。また一方で、典型的な剥離ライナーとしては、ベースの少なくとも1つの面に接着された剥離層が挙げられる。
【0017】
ベースの組成物は制限されず、あらゆる既知の材料が利用できる。代表的なベース材料としては、紙、ポリコート紙、及び高分子フィルムが挙げられる。典型的には、エンボス加工パターンを受け入れられる材料を用いることで、本開示の一部の接着物品の形成に伴うプロセスを簡略化することができる。
【0018】
一般には、平坦な表面にコーティングした場合、高摩擦係数の表面をもたらすあらゆる既知の剥離化学物質を利用することができる。このような表面は、その表面にわたって指を引きずり寄せると「ゴムのような」感じがする場合が多い。対照的に、低COFの剥離面は、「つるつるした」感じがする傾向がある。一般に、剥離面のCOFは、特定の剥離化学物質と硬化プロセスとによって決まる。適用方法及び剥離層の厚さのような他の要因もまた、COFに影響を及ぼす可能性がある。
【0019】
代表的な剥離化学物質としては、シリコーン類、フルオロシリコーン類、フルオロケミカル類、及び非シリコーン、非フッ素系化学物質類(例えば、ポリオレフィン類)が挙げられる。これら及びその他の剥離配合物を、溶液(例えば、溶媒)コーティング、100%固体コーティング、及びホットメルト押出成形を含む既知の手段を用いてベースに適用してもよい。
【0020】
一般に、高い架橋密度を有する剥離層は、COFが高い傾向がある。溶媒送達を目的とした配合物において、主要なシリコーン成分は、通常、比較的少数の官能基を含有する分子量100,000超のポリマーを含んでいる。これらの系の硬化コーティングは、架橋結合間に比較的高い分子量を有し、ポリジメチルシロキサンのこれらの長い非拘束鎖長のセグメント可動性及び可撓性は、これらのコーティングの低摩擦係数に大きく関与すると考えられる。例えば、溶媒コーティングされたスズ触媒系シリコーン類は、低い架橋密度とそれに応じて低いCOFを有する傾向がある。
【0021】
対照的に、無溶媒系は、通常、分子量2,000〜30,000の比較的高度に官能化されたシリコーンポリマーをベースとしている。これら配合物は、一般に、溶媒送達型シリコーン系と比較すると、高度に架橋された高摩擦係数(ゴムのような感触)のコーティングをもたらす。例えば、無溶媒の白金触媒系シリコーン類は一般に、溶媒送達型の系と比べると、高い架橋密度とそれに応じて高いCOFとを有している。
【0022】
幾つかの実施形態では、ミクロ構造化する前の剥離層のCOF(つまり、「非構造化COF」)は、少なくとも0.4であり、幾つかの実施形態では、少なくとも0.5、少なくとも0.6、又は更に少なくとも0.8である。剥離面の測定非構造化COFは、一般に、構造化剥離面の測定COFよりも大きい。しかしながら、COF測定に利用する試験法は、試験装置とエンボス加工された剥離面との間の接触表面積を小さくする原因とはならない。したがって、接着剤によって得られる実際のCOFは、エンボス加工されたライナーの表面全体で弛緩及び滲出し易いので、非構造化COFとより密接に関係していると考えられる。
【0023】
一般には、あらゆる接着剤化学物質を使用してよい。代表的な接着剤化学物質としては、アクリル樹脂、ゴム類(例えば、天然ゴム、及びブロックコポリマー(例えば、SIS、SBS及びSEBS)のような合成ゴム)、シリコーン類などが挙げられる。
【0024】
用途、例えば、低表面エネルギー物質(例としては、ポリエチレン又はポリプロピレン)との接合を要する用途では、より柔軟で一層強力な接着剤が望ましい場合がある。一般に、このような接着剤は、低弾性率を有するという特徴がある。幾つかの実施形態では、20℃での弾性率(G’)が50キロパスカル(kPa)以下の接着剤が望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、20℃での弾性率は40kPa以下、又は更に30kPa以下であってよい。幾つかの実施形態では、50℃での弾性率は、20kPa以下、15kPa以下、又は更に10kPa以下であってよい。
【実施例】
【0025】
【表1】
【0026】
ミクロ構造化ライナーは、様々な剥離化学物質をコーティングしたポリコート紙上にパターンをエンボス加工することによって作製した。ライナー類を表1に記載する。報告されたシリコーン被覆重量は、ポリコート紙上のシリコーン剥離コーティングで較正したオックスフォードLabX−3000(OXFORD LabX-3000)X線蛍光測定器を用いて測定した。ライナーは、両面にポリエチレン層の付いた坪量26.3kg(58ポンド)のクラフト紙(すなわち、ポリコート・クラフト紙(PCK))であった。一部のライナーは両面に高密度ポリエチレン(HD)を有していた(HD/HD)が、それ以外は、片面に低密度ポリエチレン(LD)を有していた(LD/HD)。
【0027】
ライナー上にミクロ構造をエンボス加工した。ピッチ(P)は、あるミクロ構造から、それと隣接するミクロ構造上の同点までの距離である。幾つかの実施形態では、1000マイクロメートル未満、例えば500マイクロメートル未満、又は更に300マイクロメートル未満のピッチが望ましい場合がある。深さ(D)は、ミクロ構造の最大陥凹部である。幾つかの実施形態では、少なくとも5マイクロメートル、例えば少なくとも10マイクロメートルの深さが望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、50マイクロメートル以下、例えば35マイクロメートル以下、又は更に30マイクロメートル以下の深さが望ましい場合がある。
【0028】
3つのミクロ構造パターンを使用した。「パターン1」及び「パターン2」は、図1及び2に例示するように、角錐状ミクロ構造で構成されていた。角錐状ミクロ構造10は、剥離ライナー20の剥離面22に存在する。ミクロ構造10のピッチ(P)と深さ(D)は、図2に示す横断面図で説明されている。「パターン1」のピッチは、197マイクロメートル及び深さは13マイクロメートルであった。「パターン2」のピッチは、292マイクロメートル及び深さは25マイクロメートルであった。「パターン3」は、ピッチ1270マイクロメートルの交差している溝のクロスハッチから構成されていた。
【0029】
ウォバシュ(WABASH)プラテン・プレス機を用いて、ミクロ構造化ライナーのサンプルを作成した。次の積み重ね体は、エンボス加工しようとする基材とエンボス加工に使用される用具とを用いて作成された。36cm×36cm(14インチ×14インチ)の厚紙片/30cm×30cm(12インチ×12インチ)のクロームめっきした研磨鋼板/50マイクロメートル(2.0ミル)厚のポリエステル系シリコーン剥離ライナー/ニッケルめっきしたエンボス加工用具(エンボス加工面が上向き))/エンボス加工しようとする基材(剥離面がエンボス加工面と接触している)/50マイクロメートル(2.0ミル))厚のポリエステル系シリコーン剥離ライナー/30cm×30cm(12インチ×12インチ)のクロームめっきした研磨鋼板/36cm×36cm(14インチ×14インチ)の厚紙片。エンボス加工用具のエンボス加工面と基材の剥離面との間の接触部分は、25cm×25cm(10インチ×10インチ)であって、625平方センチメートル(100平方インチ)の接触面積をもたらした。
【0030】
プレス機を、PCKライナーの剥離層とその下にある低密度ポリエチレン(LD)層とをエンボス加工するために100℃の温度まで予熱し、又はPCKライナーの剥離層とその下にある高密度ポリエチレン(HD)層とをエンボス加工するために110℃まで予熱した。積み重ね体を上部プラテンと下部プラテンとの間に配置し、プラテンを引き寄せて、積み重ね体を0.34メガパスカル(MPa)(50psi)で3分間プリプレスした。その後、圧力を、LD面をエンボス加工するために2MPa(300psi)まで、及びHD面をエンボス加工するために5.5MPa(800psi)まで増強させた。積み重ね体を高圧下で3分間保持した後、試料をプレス機から取り出すまで高圧を維持しながら、プレス温度よりも少なくとも20℃低い温度まで冷却した。
【0031】
別の方法としては、加熱ゴムロールとエンボス加工ロールとの間にライナーを通過させることで、ロールツーロール法でライナーにミクロ構造を形成した。ゴムロールは、110℃まで加熱した。剥離ライナーのポリコート面もまた、110℃まで加熱してからゴムロールとエンボス加工ロールとの間のニップ部に挿入した。ライナーは、エンボス加工ロールの約半分まで移動させてから冷却缶へ移動させて、ライナーを冷却した。得られたミクロ構造化ライナーは、キーエンス(KEYENCE)共焦点顕微鏡を用いて観察して、エンボス加工品質を確かめた。
【0032】
転写テープ試料は、感圧接着剤を公称厚さ100マイクロメートル(4ミル)でミクロ構造化ライナー上に湿式流延加工し、そして紫外線で硬化することによって作製した。これにより、ミクロ構造化剥離面と接触しかつそれと適合した第1表面と、実質的に平坦な第2露出面と、を有する接着層が得られた。
【0033】
第1接着剤(ADH−1)は、イソオクチルアクリレートとアクリル酸との架橋アクリルコポリマーを含有する強力接着剤であった。ADH−2は、軟質接着剤であって、イソオクチルアクリレートとイソボルニルアクリレートとアクリル酸との架橋アクリルコポリマーを含有していた。ADH−2は、リーガルレッツ(REGALREZ)6108で粘着力を高めた。これら接着剤それぞれについて、ガラス転移温度(Tg)、20℃及び50℃での弾性率(G’)、並びに弾性率に関する損失率比(tanδ)を測定した。
【0034】
これらの機械的特性は、直径16mmの平板を周波数1ラジアン/秒及び最大歪み10%で使用する平行平板レオメーター(RDA II、ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway)のレオメトリックス社(Rheometrics, Inc))において動的機械分析(DMA)を用いて測定する一方で、試料を室温から200℃まで2℃/分の速度で加熱した。結果を表2に記す。
【0035】
【表2】
【0036】
得られた試料を、剥離面の摩擦係数及び接着剥離力について評価した。試料を更に加工して(例えば、スリット及びダイカット)、接着剤の滲出程度を包含する切断部の品質を定性評価した。
【0037】
摩擦係数。剥離面のCOFは、マサチューセッツ州アコード(Accord)(ヒンガム(Hingham))のアイマス社(IMASS, Inc.)(「IMASS」)から取引標記「モデルSP−102B−3M90」及び「モデルSP−2000」として市販されているスリップ/ピール・テスター(Slip/Peel Tester)を用い、ASTM D 1894−63、副手順Aに基づく手順に従って求めた。剥離ライナーの約25×15cm(10×6インチ)部分を、スリップ/ピール・テスターの台に、剥離層が露出するように付着させた。剥離層には、触らず、汚染せず、平坦にし、そして皺が寄らないのを保つように注意した。剥離層と摩擦スレッド(3.2mm厚の中密度発泡ゴムで覆われた、取引標記「モデルSP−101038」としてIMASSから市販されているもの)の両方に圧縮空気を吹き付けて、浮遊しているくずを取り除いた。摩擦スレッドを剥離層の上に配置して、スレッドに付属された鎖をスリップ/ピール・テスターの力変換器に取り付けた。スリップ/ピール・テスターの台を15cm/分(6インチ/分)の速度で動かすことにより、摩擦スレッドを剥離層表面の端から端まで移動させた。機器によって、静止摩擦力を除く平均動摩擦力を計算して記録した。動摩擦力を摩擦スレッドの重量で割ることにより、動摩擦係数が得られた。
【0038】
ダイカット。試料は、38マイクロメートル(1.5ミル)厚のPETフィルムを接着剤の露出(実質的に平坦な)面に積層することによって調製した。積層体は、マーク・アンディ(MARK ANDY)モデル830プレス機で制限深度ダイカットを行った。ロータリー・ダイのツーリングにより、積層体の幅に対して3枚のラベルが作成された。各ラベルは、幅3.2cm(1.25インチ)、長さ5.7cm(2.25インチ)であった。ラベル周囲のマトリックスを剥がし、ラベルの列を剥離ライナーに接着したままにした。
【0039】
ダイカット試料を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。各切断部は、5を最高とする1〜5段階で評価した。評価は、切断縁部の観察と接着剤の滲出程度とに基づいて付与した。切断線から確実に後退しているものには評価5を付与する一方で、評価1は、かなりの接着剤が切断線にまで広がっていることを示していた。報告した結果は、幾つかの観測結果の平均である。
【0040】
試料は、2つの異なる高COFライナーと2つのミクロ構造化パターンと2つの接着剤とを用いて調製した。結果を表3にまとめる。ライナーとミクロ構造パターンと接着剤との各組み合わせでは、非構造化比較例と比べてダイカット品質が改善された。
【0041】
構造化ライナーと非構造化ライナーとを用いて得られた切断線の例を、図3〜6に示す。図3は、比較例4の高COFの剥離面においてダイカット線に沿って観察した接着剤の滲出を表しており、ダイカット品質評価1を得た。図4は、同様のライナーをミクロ構造化する場合に、実施例4で観察される改善を表している。実施例4は、ダイカット品質評価3.5を得た。同様に、図5は、比較例8の低COFの剥離面において観察された接着剤の滲出を表しており、ダイカット品質評価2.5を得た。図6は、同様のライナーをミクロ構造化する場合に、実施例8で観察される改善点を表している。実施例8は、ダイカット品質評価4.5を得た。
【0042】
【表3】
【0043】
幾つかの異なる低COFライナーを用いて、追加試料を調製した。表4に示すように、LIN−4を用いて調製された試料であって、ピッチが1270マイクロメートルのパターン3を使用したものを除いて、非構造化比較例と比べてミクロ構造化試料ではダイカット品質が改善された。
【0044】
【表4】
【0045】
ロール試作品にレザースリットを施して、縁部から切断した積み重ね体を、SEMを用いて観察した。各試料には、ADH−2軟質接着剤を使用した。比較試料は、無溶媒の白金硬化型シリコーン剥離系を使用した非構造化ライナー(LIN−2)及び低COFの溶媒系シリコーン剥離系をコーティングした非構造化ライナー(LIN−3)を用いて調製した。ロールを、ブレード角90°を用いてレザースリット加工した。大きなブレード角は、より大量の接着剤の採取につながる可能性があることが一般に知られている。そのため、この大きなブレード角を用いて、様々な試料の切断縁部の品質を区別するのに役立てた。
【0046】
図7(比較例3)及び図8(比較例8)に示すように、どちらの比較試料でも顕著な接着剤の滲出があり、縁部の品質は悪かった。更に、スリット加工された縁部は、触ると非常にべたっとしていた。本開示の幾つかの実施形態による実施例は、ミクロ構造化ライナー(実施例8)上に同様の接着剤(ADH−2)をコーティングすることで調製した。図9に示すように、ミクロ構造化ライナーを使用した結果、平坦なライナーに比べて、縁部の品質の著しい向上と接着剤の滲出の大幅な軽減が生じた。
【0047】
追加のロール試作品をレザースリット加工して、縁部を観察した。各試料には、ADH−2軟質接着剤と、無溶媒の白金硬化型シリコーン剥離層を有するLIN−5とを使用した。比較例11は、パターン無しのLIN−5を用いて調製したが、実施例9は、パターン2を有するLIN−5を用いて調製した。ロールを、ブレード角90°を用いてレザースリット加工した。図10(実施例9、構造化ライナー)と図11(比較例11、非構造化ライナー)とを比較すると、ミクロ構造化ライナーを用いて調製された試料は、縁部の品質に顕著な改善を示した。
【0048】
その他の高COF剥離コーティング上でのミクロ構造の効果を評価した。ライナーは、フルオロシリコーン剥離の被覆重量が0.917グラム/平方メートルであり、非構造化COFが1.06であった。フルオロシリコーンは、ロパレックス(Loparex)から入手したHD/HD PCK基材上にコーティングした。ライナーは、パターン2を用いてミクロ構造化した結果、構造化COFが0.70となった。ADH−2を適用して、試料をダイカット加工した。非構造化試料のダイカット品質評価は、3.5であった。ミクロ構造の付加により、ダイカット品質評価が4まで向上した。
【0049】
剥離特性に対する剥離面のミクロ構造化効果は、次の剥離試験を用いて評価した。25マイクロメートル(1ミル)厚のポリエステル(PET)シートを、接着剤の露出(実質的に平坦な)面、つまり剥離ライナーとは反対側の接着剤の表面に積層した。積層試料を調整した後、2つ又は3つの試料を試験して、剥離ライナーの剥離面からPET/接着剤積層体を除去するのに要する力(すなわち、「剥離力」)を求めた。剥離力は、毎分230cm(毎分90インチ)の速度において180度で剥離するIMASS試験機を用いて測定した。表5に示すように、ミクロ構造は、剥離力にほとんど悪影響を及ぼさなかった。
【0050】
【表5】
【0051】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な修正及び変更が、当業者には自明であろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロ構造化剥離層と前記剥離層に接触している第1主表面を有する接着剤とを備える剥離ライナーを含む接着物品であって、前記剥離層の非構造化摩擦係数が少なくとも0.4である、接着物品。
【請求項2】
前記接着剤の20℃での弾性率が50キロパスカル以下である、請求項1に記載の接着物品。
【請求項3】
前記剥離層の非構造化摩擦係数が少なくとも0.6である、請求項2に記載の接着物品。
【請求項4】
前記剥離層の非構造化摩擦係数が少なくとも0.8である、請求項3に記載の接着物品。
【請求項5】
前記接着剤の20℃での弾性率が40キロパスカル以下である、請求項2に記載の接着物品。
【請求項6】
前記剥離層の非構造化摩擦係数が少なくとも0.6である、請求項5に記載の接着物品。
【請求項7】
前記接着剤の50℃での弾性率が20キロパスカル以下である、請求項6に記載の接着物品。
【請求項8】
前記剥離層がシリコーンを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項9】
前記剥離層が、白金触媒系シリコーンを含む、請求項8に記載の接着物品。
【請求項10】
前記剥離層が、フルオロケミカルを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項11】
前記剥離層が、フルオロシリコーンを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項12】
前記剥離層が、ポリオレフィンを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項13】
前記接着剤が、アクリルコポリマーを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項14】
前記接着剤がゴムを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項15】
前記接着剤がシリコーンを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項16】
前記ミクロ構造化剥離層が、500マイクロメートル未満のピッチを有するミクロ構造を含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項17】
前記ミクロ構造化剥離層が、25マイクロメートル未満の深さを有するミクロ構造を含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項18】
前記剥離層が、白金触媒系シリコーンを含みかつ非構造化摩擦係数が少なくとも0.6であり、前記接着剤が、架橋アクリルコポリマーを含みかつ20℃での弾性率が40キロパスカル以下である、請求項2に記載の接着物品。
【請求項19】
前記ミクロ構造化剥離層が、500マイクロメートル未満のピッチと25マイクロメートル未満の深さとを有するミクロ構造を含む、請求項18に記載の接着物品。
【請求項20】
前記接着剤の第2主表面と接触している基材を更に含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項1】
ミクロ構造化剥離層と前記剥離層に接触している第1主表面を有する接着剤とを備える剥離ライナーを含む接着物品であって、前記剥離層の非構造化摩擦係数が少なくとも0.4である、接着物品。
【請求項2】
前記接着剤の20℃での弾性率が50キロパスカル以下である、請求項1に記載の接着物品。
【請求項3】
前記剥離層の非構造化摩擦係数が少なくとも0.6である、請求項2に記載の接着物品。
【請求項4】
前記剥離層の非構造化摩擦係数が少なくとも0.8である、請求項3に記載の接着物品。
【請求項5】
前記接着剤の20℃での弾性率が40キロパスカル以下である、請求項2に記載の接着物品。
【請求項6】
前記剥離層の非構造化摩擦係数が少なくとも0.6である、請求項5に記載の接着物品。
【請求項7】
前記接着剤の50℃での弾性率が20キロパスカル以下である、請求項6に記載の接着物品。
【請求項8】
前記剥離層がシリコーンを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項9】
前記剥離層が、白金触媒系シリコーンを含む、請求項8に記載の接着物品。
【請求項10】
前記剥離層が、フルオロケミカルを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項11】
前記剥離層が、フルオロシリコーンを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項12】
前記剥離層が、ポリオレフィンを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項13】
前記接着剤が、アクリルコポリマーを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項14】
前記接着剤がゴムを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項15】
前記接着剤がシリコーンを含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項16】
前記ミクロ構造化剥離層が、500マイクロメートル未満のピッチを有するミクロ構造を含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項17】
前記ミクロ構造化剥離層が、25マイクロメートル未満の深さを有するミクロ構造を含む、請求項2に記載の接着物品。
【請求項18】
前記剥離層が、白金触媒系シリコーンを含みかつ非構造化摩擦係数が少なくとも0.6であり、前記接着剤が、架橋アクリルコポリマーを含みかつ20℃での弾性率が40キロパスカル以下である、請求項2に記載の接着物品。
【請求項19】
前記ミクロ構造化剥離層が、500マイクロメートル未満のピッチと25マイクロメートル未満の深さとを有するミクロ構造を含む、請求項18に記載の接着物品。
【請求項20】
前記接着剤の第2主表面と接触している基材を更に含む、請求項2に記載の接着物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−518063(P2011−518063A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506329(P2011−506329)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/038478
【国際公開番号】WO2009/131792
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/038478
【国際公開番号】WO2009/131792
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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