説明

接着特性を有するポリマー組成物

本発明は、(1)少なくとも1種のフルオロポリマー(A)であって、前記ポリマーに接着特性を付与することができる少なくとも1つの官能基(f1)を含有する少なくとも1種の化合物(a)によりグラフト化されたフルオロポリマー(A)と、(2)少なくとも1種のポリオレフィン(B)であって、ポリオレフィン(B)の重量に対して最大で4重量%の、任意により少なくとも1種の中和剤により部分的にまたは完全に中和されている、酸および無水物基から選択される少なくとも1つの官能基(f2)を含有する少なくとも1種の化合物(b)によりグラフト化されたポリオレフィン(B)と、(3)少なくとも1種のオレフィンコポリマー(C)であって、その繰り返し単位の少なくとも5重量%が、上記の化合物(a)中に含有される官能基(f1)と反応することができる少なくとも1種の官能性モノマー(f3)に由来するオレフィンコポリマー(C)とを含む接着特性を有するポリマー組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着特性を有するポリマー組成物に関する。本発明はまた、これらの組成物を製造する方法に関する。本発明は、その層の1つが接着特性を有するポリマー組成物から構成されている多層構造にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
特に高密度ポリエチレンといったポリオレフィンが、特に油および燃料といった液体炭化水素の輸送および保管用のパイプおよびタンクの製造に用いられていることが知られている。しかしながら、これらの炭化水素に対するこれらのポリマーの耐薬品性および不透過性が、意図されるすべての用途について常に十分であるわけではない。この欠点を克服するために、他のポリマー製のバリア層が、輸送されまたは保管されるべき炭化水素とポリオレフィンとの間に介在される。この目的のために頻繁に用いられる、化学的に耐性であると共に不透過性であるポリマーは、フルオロポリマー、特にフッ化ビニルとフッ化ビニリデンとのホモポリマーおよびコポリマーである。
【0003】
これらのフルオロポリマーは一方で、ポリオレフィンに良好に接着しないという他の欠点を有する。従って、フルオロポリマーの接着特性を改善させる観点から、組成物の開発が行われてきている。
【0004】
それ故、その内容が参照により本明細書に援用される(特許文献1)には、そのフッ素含有炭化水素ベースの主鎖が接着特性を有する反応性官能基または極性官能基を含む化合物によりグラフトされている、接着特性を有するポリマーが記載されている。これらの官能基は、カルボキシル基、カルボン酸無水物残渣、エポキシ基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、エステル基、アミド基、アミノ基ならびに、シリルまたはシアノ基を含有する加水分解性基であり得る。しかしながら、これらのポリマーはポリオレフィンに十分には接着しない。
【0005】
1998年8月4日に公開されている、積水化学工業株式会社(Sekisui Chem Co)の名義による(特許文献2)には、ポリエチレンの層とポリフッ化ビニリデン(PVDF)の層とを互いに接着することができる組成物が開示されている。この組成物は、35〜65重量部のメチルメタクリレート−グラフトポリエチレンと90〜10重量部のポリメチルメタクリレートとのブレンドを含む。ブレンドの構成成分の各々の比率を注意深く制御しなければならず、そうでなければ、PVDF層の層剥離をもたらす恐れがある。しかも、この組成物は不快臭を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0650987A号明細書
【特許文献2】特開平10−202804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリオレフィンをフルオロポリマーに接着することを可能とする、これらの欠点を有さない組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、
(1)少なくとも1種のフルオロポリマー(A)であって、前記ポリマーに接着特性を付与することができる少なくとも1つの官能基(f1)を含有する少なくとも1種の化合物(a)によりグラフト化されたフルオロポリマー(A)と、
(2)少なくとも1種のポリオレフィン(B)であって、ポリオレフィン(B)の重量に対して最大で4重量%の、任意により少なくとも1種の中和剤により完全にまたは部分的に中和されている、酸および無水物基から選択される少なくとも1つの官能基(f2)を含有する少なくとも1種の化合物(b)によりグラフト化されたポリオレフィン(B)と、
(3)少なくとも1種のオレフィンコポリマー(C)であって、その繰り返し単位の少なくとも5重量%が、化合物(a)中に含有される官能基(f1)と反応することができる少なくとも1種の官能性モノマー(f3)に由来するオレフィンコポリマー(C)と
を含む、接着特性を有するポリマー組成物に主に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によるポリマー組成物は、少なくとも1種のフルオロポリマー(A)を含む。「フルオロポリマー」という用語は、繰り返し単位の50重量%超が少なくとも1種のフルオロモノマーに由来するポリマーを意味すると理解される。フルオロポリマーはホモポリマーであり得;これはまた、数々のフルオロモノマー同士により形成されるコポリマー、または、1種以上のフルオロモノマーと1種以上の非フッ素化モノマーとにより形成されるコポリマーであり得る。これらのコポリマーは、特に、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであり得る。
【0010】
「フルオロモノマー」という用語は、少なくとも1つのフッ素原子を含むいずれかのモノマーを意味すると理解され;通例、これは、少なくとも1つのエチレン性不飽和を含む。フルオロモノマーの例としては、フッ素化ビニルモノマー、4−フルオロスチレンなどのフッ素化スチレンモノマー、トリフルオロエチルアクリレートなどのフッ素化(メタ)アクリルモノマーおよび2−フルオロブタジエンなどのフッ素化共役ジエンが挙げられ得る。フルオロモノマーは、好ましくは、フッ素化ビニルモノマーである。「フッ素化ビニルモノマー」という表記は、脂肪族であると共に、1つ以上の塩素原子、および、任意により、さらに、唯一のヘテロ原子として、1つ以上の塩素原子を有するモノエチレン性不飽和フッ素化モノマーを表すとして理解される。フッ素化ビニルモノマーの例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンなどの水素原子を含まないビニルモノマー、ならびにフッ化ビニル、トリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロペンなどの部分水素化フッ素化ビニルモノマーが挙げられ得、フッ化ビニリデンが特に挙げられ得る。
【0011】
「非フッ素化モノマー」という表記は、フッ素原子を含まないいずれかのモノマーを意味すると理解され;これは、通例、少なくとも1つのエチレン性不飽和を含む。非フッ素化モノマーの例は:例えばエチレンおよびプロピレンなどのα−モノオレフィン;スチレンおよび非フッ素化スチレン誘導体;例えば塩化ビニルおよび塩化ビニリデンなどの非フッ素化クロロモノマー;非フッ素化ビニルエーテル;例えばビニルアセテートなどの非フッ素化ビニルエステル;非フッ素化(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリルおよびアクリルアミドなどのニトリルおよびアミドである。
【0012】
フルオロポリマーの例としては、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンのホモポリマー、および上に定義されているとおり、これらのフルオロモノマーが互いに形成するコポリマー、またはこれらのフルオロモノマーが少なくとも1種の他のフルオロモノマー(テトラフルオロエチレンまたはヘキサフルオロプロピレンなどの水素原子を含有しないフルオロモノマーを含む)と形成するコポリマーが特に挙げられ得る。このようなコポリマーおよびターポリマーの例としては、フッ化ビニリデンのコポリマーおよびターポリマー、ならびに、上に定義されているとおり、クロロトリフルオロエチレンと少なくとも1種の他のフルオロモノマー(テトラフルオロエチレンまたはヘキサフルオロプロピレンなどの水素原子を含有しないフルオロモノマーを含む)とのコポリマーおよびターポリマーが挙げられ得る。上述の少なくとも1種のフルオロモノマーと少なくとも1種の非フッ素化モノマーとのコポリマーおよびターポリマーもまた挙げられ得る。
【0013】
本発明による組成物中に存在するフルオロポリマー(A)は、好ましくは、フッ化ビニリデンポリマーから選択される。
【0014】
本発明の目的のために、フッ化ビニリデンポリマーは、フッ化ビニリデンに由来の繰り返し単位を含むフルオロポリマー(すなわち、繰り返し単位の50重量%超が少なくとも1種のフルオロモノマーに由来するポリマー)である。
【0015】
フッ化ビニリデンポリマーの例としては、特に、フッ化ビニリデンのホモポリマー、ならびに、フッ素化(他のエチレン性不飽和フルオロモノマーの例は、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンである)、または非フッ素化(エチレン性不飽和非フッ素化モノマーの例は、エチレンおよびプロピレンなどのα−モノオレフィン;スチレンおよび非フッ素化スチレン誘導体;塩化ビニルおよび塩化ビニリデンなどの非フッ素化クロロモノマー;非フッ素化ビニルエーテル;ビニルアセテートなどの非フッ素化ビニルエステル;非フッ素化(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミドおよびアクリロニトリルなどのニトリルおよびアミドである)の他のエチレン性不飽和モノマーとのそのコポリマーが挙げられ得る。
【0016】
フッ化ビニリデンポリマーは、好ましくは、フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位を50重量%超で含有する。
【0017】
特に好ましいフッ化ビニリデンポリマーは、フッ化ビニリデンホモポリマーならびに、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンから選択される少なくとも1種のフッ素化コモノマーを10〜20重量%で含有するフッ化ビニリデンのランダムコポリマーである。
【0018】
本発明によれば、フルオロポリマー(A)は、前記ポリマーに接着特性を付与することができる少なくとも1つの官能基(f1)を含有する少なくとも1種の化合物(a)(以下に詳細に定義されると共に説明される)によってグラフト化される。
【0019】
官能基(f1)は、フルオロポリマーが、このポリマーに通常は接着することは不可能である材料に対しても、接着力を発揮することが可能であるよう反応性または極性を有するいずれかの基であり得る。官能基(f1)は、一般に、ラジカル機構に関与しない少なくとも1つの反応性官能基を有するものから選択される。これは、通常、以下から選択される。
(f1.1)本明細書中以下においてより簡潔に「酸基」としても知られるカルボン酸に由来する基;これらの基が由来するカルボン酸はモノカルボン酸またはジカルボン酸であり得る;
(f1.2)同一の分子中の2つのカルボン酸基の縮合からもたらされ、本明細書中以下においてより簡潔に「無水物基」としても知られるカルボン酸無水物に由来する基;これらの基を有するカルボン酸無水物は、それら自体がモノカルボン酸またはジカルボン酸に由来していてもよい;
(f1.3)本明細書中以下においてより簡潔に「エステル基」としても知られるカルボン酸エステルに由来する基;
(f1.4)本明細書中以下においてより簡潔に「アミド基」としても知られるカルボン酸アミドに由来する基;
(f1.5)環式エーテル官能基を有する化合物に由来するエポキシ基;
(f1.6)本明細書中以下においてより簡潔に「アルコール基」としても知られるアルコールに由来する水酸化基;これらの基が由来するアルコールはモノアルコールまたはポリオールであり得る;
(f1.7)カルボニル基;
(f1.8)シリル基を含有する加水分解性基。
【0020】
すべてのこれらの基のうち、エポキシ基(f1.5)、アルコール基(f1.6)およびカルボニル基(f1.7)が好ましい。特に、ジオールから誘導されたエポキシ基およびアルコール基が好ましい。エポキシ基が最良の結果をもたらす。
【0021】
フルオロポリマー(A)にグラフト化される化合物(a)に含有される官能基(f1)は、ポリオレフィン(B)にグラフト化される化合物(b)に含有される官能基(f2)と反応することが可能であることが好ましい。エポキシ基(f1.5)、アルコール基(f1.6)およびカルボニル基(f1.7)は、化合物(b)中に含有される官能基(f2)と反応することが可能である官能基(f1)の例である。
【0022】
上述のとおり、フルオロポリマー(A)は、少なくとも1つの官能基(f1)を含有する少なくとも1種の化合物(a)によりグラフト化される。本発明によれば、化合物(a)中に含有される官能基(f1)は、同一の族または異なる族に属し得る。それ故、エポキシ基を含有する第1の化合物(a)および1つ以上のアルコール基を含有する第2の化合物(a)の両方の使用が除外されることはなく;同様に、エステル基と、例えばエポキシ基またはアルコール基といった他の基との両方を含有する化合物(a)の使用が除外されることもない。
【0023】
フルオロポリマー(A)にグラフト化されることが可能であるよう、化合物(a)は、通例、前記化合物(a)のこのポリマーへのグラフト化を可能とさせる少なくとも1種の基(g)を含有する。この基(g)は、一般に:
−ラジカルの付加または会合などのラジカル機構に関与することができる飽和または不飽和炭化水素ベースの基;
−求核反応に関与することができるアミノ基またはフェノール基;
−ペルオキシ基およびアゾ基などのフリーラジカルを容易に形成することができる基
から選択される。
【0024】
好ましくは、基(g)は、少なくとも1つの炭素−炭素不飽和結合を有する有機基から、アミノ基から、およびペルオキシ基から選択される。例えば、ビニル、アリル、アクリロイルオキシアルキルおよびメタクリロイルオキシアルキル基などの少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する有機基が特に好ましい。ビニル基およびアリル基が最良の結果をもたらす。
【0025】
少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する少なくとも1つの有機基を基(g)として含有すると共に、酸および無水物基から選択される少なくとも1つの基を官能基(f1)として含有する化合物(a)の例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5,6−ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水クロトン酸および無水シトラコン酸などの不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸である。特に入手容易性の理由のために無水マレイン酸が一般に好ましい。
【0026】
本発明の一変形によれば、化合物(a)中に含有され得る酸基および/または無水物基は、少なくとも1種の中和剤により完全にまたは部分的に中和されている。中和剤は、水酸化物(例えば水酸化ナトリウムといったアルカリ金属水酸化物など)、無機塩、有機塩、または有機塩と無機塩との混合物であり得る。
【0027】
無機塩は、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩またはリン酸一水素塩であることが好ましい。炭酸ナトリウムが特に好ましい。
【0028】
有機塩は、特にアルカリ金属、アルカリ土類金属、元素周期律表の第IIIa族からの金属または遷移金属であり得る金属の、カルボン酸塩またはモノヒドロキシカルボン酸塩またはポリヒドロキシカルボン酸塩であることが好ましい。特に好ましくは、有機塩は、遷移金属のカルボン酸塩または、アルカリ金属のモノヒドロキシカルボン酸塩あるいはポリヒドロキシカルボン酸塩である。最も好ましくは、この有機塩は、ナトリウム乳酸塩および酢酸亜鉛から選択される。
【0029】
中和剤は、化合物(a)中に含有されている酸基および/または無水物基(f1)の数に対して、好ましくは0.5モル当量を超える量で用いられる。しかも、中和剤は、これらの官能基(f1)の数に対して、好ましくは3モル当量未満の量で用いられる。
【0030】
少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する少なくとも1つの有機基を基(g)として含有すると共に少なくとも1つのエステル基を官能基(f1)として含有する化合物(a)の例は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ジエチルフマレート、イタコン酸ジメチルおよびジエチルシトラコネートである。
【0031】
少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する少なくとも1つの有機基を基(g)として含有すると共に少なくとも1つのアミド基を官能基(f1)として含有する化合物(a)の例はアクリルアミドおよびメタクリルアミドである。
【0032】
少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する少なくとも1つの有機基を基(g)として含有すると共に少なくとも1つのエポキシ基を官能基(f1)として含有する化合物(a)の例はアリルグリシジルエーテルである。
【0033】
少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する少なくとも1つの有機基を基(g)として含有すると共に少なくとも1つのアルコール基を官能基(f1)として含有する化合物(a)の例は、アリルアルコールおよび3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールである。
【0034】
少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する少なくとも1つの有機基を基(g)として含有すると共に少なくとも1つのカルボニル基を官能基(f1)として含有する化合物(a)の例はヘテロ原子に結合しているビニル基またはアリル基を含有すると共に、その複素環がカルボニル結合を有する、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムなどの有機複素環化合物である。
【0035】
少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する少なくとも1つの有機基を基(g)として含有すると共にシリル基を含有する少なくとも1つの加水分解性基を官能基(f1)として含有する化合物(a)の例は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよびビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランである。
【0036】
少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する少なくとも1つの有機基を基(g)として含有すると共に異なる性質の少なくとも2つの官能基(f1)を含有する化合物(a)の例は:グリシジルアクリレートおよびメタクリレート(官能基(f1)としてのエステル基およびエポキシ基);ヒドロキシエチルアクリレートおよびメタクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレートおよびメタクリレート(官能基(f1)としてのエステル基およびアルコール基);N−メチロールメタクリルアミド(官能基(f1)としてのアルコール基およびアミド基)である。
【0037】
すべての化合物(a)のうち、エポキシ基、アルコール基およびカルボニル基から選択される少なくとも1つの官能基(f1)、特にジオールから誘導されるエポキシ基およびアルコール基から選択される少なくとも1つの官能基(f1)を含有する化合物が好ましい。最も好ましい化合物(a)は、アリルグリシジルエーテル、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムである。最良の結果はアリルグリシジルエーテルで得られた。
【0038】
化合物(a)のフルオロポリマー(A)へのグラフト化は、この目的のために公知であるいずれかの方法によって実施され得る。化合物(a)の化学的特性および物理的状態に応じて、このグラフト化は、固体状態で、溶液中に、懸濁液中に、水性媒体中にまたは有機溶剤中に実施され得る。このグラフト化はまた、例えば電子ビームまたはガンマ線による照射によっても実施され得る。
【0039】
化合物(a)のフルオロポリマー(A)へのグラフト化は、より一般に、化合物とポリマーとの溶融ブレンドで実施される。これは、ニーダにおいてバッチモードで、または押出し機において連続的に行うことが可能である。
【0040】
化合物(a)をフルオロポリマー(A)にグラフト化させる反応は、少なくとも、化合物(a)の基(g)それ自体が、フリーラジカルを容易に形成することができるペルオキシ基およびアゾ基などの基ではない場合には、通常は、ラジカル発生剤により促進され、および開始される。ラジカル発生剤として、一般に、120〜350℃の分解温度を有すると共に、この温度帯における半減期が約1分である化合物が使用される。ラジカル発生剤は好ましくは有機過酸化物であり、特に過酸化アルキルまたは過酸化アリールである。これらのうち、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、ジクミルペルオキシド、ジ(t−ブチル)ペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ジ(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンが挙げられ得る。2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンおよびジクミルペルオキシドが特に好ましい。
【0041】
化合物(a)のフルオロポリマー(A)へのグラフト化が押出し機において連続的に実施される場合、ラジカル発生剤および化合物(a)は、経時的に連続的に導入されると共に溶融物質中に良好に分散される限りにおいて、いずれの様式で導入されてもよい。ラジカル発生剤および化合物(a)は、溶融塊への例えば噴霧タイプの噴射器またはアトマイザーによる吹付け、あるいは注入により導入され得る。粉末フルオロポリマー(A)とのマスターバッチまたは充填材とのマスターバッチを介したラジカル発生剤および化合物(a)の導入もまた想定することが可能である。
【0042】
特に好ましい一実施形態によれば、化合物(a)はラジカル発生剤の前に導入される。
【0043】
「溶融塊における反応」という表記は、本発明の目的については、溶剤または希釈剤の実質的な不存在下での、フルオロポリマー(A)の融点に少なくとも等しい温度でのいずれかの反応を意味すると理解される。
【0044】
「押出し機」という用語は、少なくとも1つの供給ゾーンと、その吐出口での圧縮ゾーンに続く排出ゾーンとを含むいずれかの連続的な装置を意味すると理解され、圧縮ゾーンは、溶融塊を排出ゾーンを強制的に通過させる。さらに、造粒装置または押出された材料をその最終形状とする装置が排出ゾーンに続いてもよい。有利には、一軸スクリューまたは二軸スクリューの作動に基づく公知の押出し機が使用され、これは、共回転または逆回転様式(同一方向の回転または逆方向の回転)で協働し得る。
【0045】
好ましくは、本発明により用いられる押出し機は、1つの供給ゾーン、1つの材料溶融ゾーン、1つの均質化ゾーン、1つの反応ゾーン、任意により添加剤を導入する1つのゾーン、および1つの脱気ゾーンに続く1つの圧縮−排出ゾーンを連続的に含むよう配置される。これらのゾーンの各々はきわめて特定的な機能を有すると共に、きわめて特定的な温度である。
【0046】
供給ゾーンは、フルオロポリマー(A)を供給する役割を果たす。これは、通例、50℃以下の温度である。
【0047】
材料溶融ゾーンは材料を溶融する役割を果たす。
【0048】
均質化ゾーンは、溶融材料を均質化させる役割を果たす。
【0049】
反応ゾーンは、反応を実施する役割を果たす。
【0050】
溶融ゾーンおよび材料を均質化させるゾーンにおける温度は、通例、フルオロポリマー(A)の融点以上である。
【0051】
反応ゾーンにおける温度は、通例、ラジカル発生剤の半減期がこのゾーン中の材料の残留時間未満となる温度以上である。
【0052】
添加剤を導入するゾーンは、添加剤が押出し機に添加されるときに添加剤を導入する役割を果たす。このゾーンの温度は、一般に、材料の粘度および添加される添加剤の性質に応じる。
【0053】
圧縮−排出ゾーンは、材料を圧縮すると共に、材料を排出する役割を果たす。圧縮−排出ゾーンにおける温度は、一般に、排出されるべき材料の粘度に応じる。
【0054】
化合物(a)は、好ましくは、均質化ゾーンより前で押出し機に導入される。
【0055】
ラジカル発生剤は、好ましくは、押出し機の反応ゾーンに導入される。
【0056】
いずれのグラフト化法が用いられる場合でも、化合物(a)の量として表記されるフルオロポリマー(A)にグラフト化される化合物(a)の量は、フルオロポリマー(A)の重量に対して、有利には、0.01重量%超、好ましくは0.05重量%または、より良くは0.1重量%である。しかも、この量は、有利には、5.0重量%以下、好ましくは3.0%およびより良くは2.0重量%である。計量は、通例、化学的経路(滴定)により実施される。
【0057】
本発明によるポリマー組成物は、少なくとも1種のポリオレフィン(B)を含む。本明細書において、「ポリオレフィン」という用語は、繰り返し単位の50重量%超、好ましくは繰り返し単位の70重量%超、最も特定的には繰り返し単位の90重量%超が、少なくとも1種の直鎖オレフィンに由来するポリマーを意味すると理解される。
【0058】
直鎖オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセンおよび1−ドデセンなどの、2〜12個の炭素原子を含有する直鎖α−モノオレフィンが挙げられ得る。
【0059】
ポリオレフィン(B)は、特に、前述のオレフィンのホモポリマー、および特にプロピレンと1種以上のコモノマーとのコポリマーといったこれらのオレフィンのコポリマーから選択され得、ならびにこのようなポリマーのブレンドからも選択され得る。これらのコモノマーは、特に、上述の直鎖オレフィンから、スチレンおよびα−メチルスチレンなどのスチレンモノマーから、ならびにアルカジエンから選択され得るが;しかしながら、ポリオレフィン(B)は、アルカジエンに由来する繰り返し単位を含まないことが好ましい。ポリオレフィンにおけるコモノマーから形成された単位の重量含有量は、有利には、30%未満であり、好ましくは10重量%未満である。
【0060】
ポリオレフィン(B)は、好ましくは、オレフィンコポリマー(C)に含有されているものなどの官能性モノマー(f3)に由来する繰り返し単位を含まず;それにもかかわらず、ポリオレフィン(B)がこのような繰り返し単位を含有する場合には、これらの量は、通常、ポリオレフィン(B)の繰り返し単位のすべての4重量%以下、および度々2重量%以下に相当する。
【0061】
「ポリオレフィン」という用語は、上述されたとおりの個別のポリマー、およびそのブレンドを同様に十分に意味すると理解される。
【0062】
優れた結果は、エチレンおよびプロピレンから誘導されるホモポリマーおよびコポリマー、最も特定的には、プロピレンから誘導される結晶性ポリマー、ならびに10重量%未満、好ましくは5重量%未満のエチレンを含有するプロピレンのコポリマーから選択されるポリオレフィン(B)を用いることで得られる。
【0063】
本発明によれば、ポリオレフィン(B)は、酸および無水物基から選択される少なくとも1つの官能基(f2)を含有する少なくとも1種の化合物(b)によってグラフト化される。官能基(f2)およびこれに対応する化合物(b)は、一般に、基(f1.1)および(f1.2)ならびに上述のこれらに対応する化合物(a)にそれぞれ適用されるものと同一の定義および制限を満たす。
【0064】
従って、官能基(f2)は、通例、不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸、ならびに、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水クロトン酸および無水シトラコン酸などの不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸の無水物から選択される、化合物(b)に含有される。無水マレイン酸が最も特定的に好ましい。
【0065】
本発明の一定の変形によれば、化合物(b)中に含有される官能基(f2)は中和されておらず;この官能基(f2)は、次いで、酸および無水物基(そのままで)から選択される。特に、入手容易性の理由から、ポリオレフィン(B)としては、本変形によるポリオレフィンを用いることが度々好ましい。
【0066】
本発明の他の変形によれば、化合物(b)中に含有されている官能基(f2)は、少なくとも1種の中和剤により完全にまたは部分的に中和されている。
【0067】
中和剤は、水酸化物(例えば水酸化ナトリウムといったアルカリ金属水酸化物など)、無機塩、有機塩、または有機塩と無機塩との混合物であり得る。
【0068】
無機塩は、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、アルカリ金属のリン酸塩またはリン酸一水素塩であることが好ましい。炭酸ナトリウムが特に好ましい。
【0069】
有機塩は、特にアルカリ金属、アルカリ土類金属、元素周期律表の第IIIa族からの金属または遷移金属であり得る金属の、カルボン酸塩またはモノヒドロキシカルボン酸塩またはポリヒドロキシカルボン酸塩であることが好ましい。特に好ましくは、有機塩は、遷移金属のカルボン酸塩または、アルカリ金属のモノヒドロキシカルボン酸塩あるいはポリヒドロキシカルボン酸塩である。最も好ましくは、この有機塩は、ナトリウム乳酸塩および酢酸亜鉛から選択される。
【0070】
中和剤は、化合物(b)中に存在する酸基および/または無水物基の数に対して、好ましくは0.5モル当量を超える量で用いられる。しかも、中和剤は、これらの基の数に対して、好ましくは3モル当量未満の量で用いられる。
【0071】
化合物(a)のフルオロポリマー(A)へのグラフト化に関するすべての定義、コメントおよび制限は、化合物(b)のポリオレフィン(B)へのグラフト化に準用され、ポリオレフィン(B)の重量に対してグラフト化される化合物(b)の量が一般に4重量%を超えないよう、前記グラフト化を実施することが好ましいことが理解される。好ましくは、グラフト化される化合物(b)の量は、ポリオレフィン(B)の重量に対して3重量%以下、最も特定的には2重量%以下である。しかも、グラフト化される化合物(b)の量は、一般に、ポリオレフィン(B)の重量に対して0.01重量%超、好ましくは0.03重量%超、またはより良くは0.1重量%超である。
【0072】
本発明によるポリマー組成物は、少なくとも1種のオレフィンコポリマー(C)を含む。オレフィンコポリマー(C)は、通常は、ポリオレフィン(B)とは異なるポリマーである。
【0073】
本明細書において、「オレフィンコポリマー」という表記は、繰り返し単位の50重量%超が少なくとも1種の直鎖オレフィンに由来するコポリマー(すなわち、繰り返し単位が少なくとも2種の異なるモノマーに由来するポリマー)を意味すると理解される。
【0074】
好ましくは、オレフィンコポリマー(C)は、少なくとも1種の直鎖オレフィンに由来する繰り返し単位を少なくとも60重量%、より特定的には少なくとも75重量%で含有する。直鎖オレフィンは、一般に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセンおよび1−ドデセンなどの2〜12個の炭素原子を含有する直鎖α−モノオレフィンから選択される。好ましくは、直鎖オレフィンはエチレンである。
【0075】
オレフィンコポリマー(C)の繰り返し単位の少なくとも5重量%は、化合物(a)中に含有される官能基(f1)と反応することができる少なくとも1種の官能性モノマー(f3)に由来する。好ましくは、オレフィンコポリマー(C)は、官能性モノマー(f3)に由来する繰り返し単位を少なくとも8重量%、より特定的には少なくとも10重量%で含有する。オレフィンコポリマー(C)は、官能性モノマー(f3)に由来する繰り返し単位を、一般に、40重量%以下、好ましくは25重量%以下で含有する。官能性モノマー(f3)は、一般には上に定義した化合物(a)とは異なるが、それにもかかわらず、これと同一の族に属し得、これは、しかしながら、一方で、オレフィンコポリマー(C)の繰り返し単位が由来する直鎖オレフィンと共重合性でなければならず、他方で、化合物(a)に含有される基(f1)と反応することができなければならないことが理解される。これらの制限を考慮すると、官能性モノマー(f3)は、以下から選択されることが好ましい:
(f3.1)少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する少なくとも1つの有機基ならびに、例えば、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸およびビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5,6−ジカルボン酸などの不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸といった少なくとも1つの酸基を含有する官能性モノマー。これらの官能性モノマーのうち、アクリル酸およびメタクリル酸が特に好ましい。
【0076】
官能性モノマー(f3.1)中に存在する酸基は、時々、中和されず;官能性モノマー(f3)は、次いで、少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する少なくとも1つの有機基および少なくとも1つの酸基(そのままで)を含有する官能性モノマーから選択される。
【0077】
しかしながら、官能性モノマー(f3.1)中に存在する酸基は、特に化合物(b)中に含有されている官能基(f2)が中和されていない場合、少なくとも1種の中和剤により完全にまたは部分的に中和されていることが好ましい。
【0078】
官能性モノマー(f3.1)のための中和剤は、水酸化物、無機塩、有機塩、これらの化合物の2種の混合物または3種すべての混合物であり得る。
【0079】
無機塩は、炭酸塩、炭酸水素塩、アルカリ金属のリン酸塩またはリン酸一水素塩であり得る。炭酸ナトリウムが好ましい。
【0080】
有機塩は、特にアルカリ金属、アルカリ土類金属、元素周期律表の第IIIa族からの金属または遷移金属であり得る金属の、カルボン酸塩またはモノヒドロキシカルボン酸塩またはポリヒドロキシカルボン酸塩であり得る。好ましくは、この有機塩は、ナトリウム乳酸塩および酢酸亜鉛から選択される。
【0081】
官能性モノマー(f3.1)のための中和剤は、好ましくは水酸化物、特に好ましくはアルカリ金属水酸化物および最も好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0082】
官能性モノマー(f3.1)のための中和剤は、官能性モノマー(f3.1)中に存在する酸基の数に対して、好ましくは0.5モル当量を超える量で用いられる。しかも、中和剤は、これらの基の数に対して、好ましくは3モル当量未満の量で用いられる:
(f3.2)例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ジエチルフマレート、イタコン酸ジメチルおよびジエチルシトラコネートなどの少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する少なくとも1つの有機基および少なくとも1つのエステル基を含有する官能性モノマーであり;これらの官能性モノマー(f3.2)のうち、メチルアクリレートおよびメタクリレートが特に好ましい;
(f3.3)例えば、アクリルアミドおよびメタクリルアミドなどの少なくとも1つの末端α,β−炭素−炭素不飽和結合を有する少なくとも1つの有機基および少なくとも1つのアミド基を含有する官能性モノマー。
【0083】
例えば例としてエチルビニルエーテルおよびブチルビニルエーテルといったビニルエーテルなどの、または、例えば例としてN−メチルメタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミドおよびN−ジアルキルアクリルアミドといった他のアミドなどの他の官能性モノマーもまた、オレフィンコポリマー(C)の繰り返し単位が由来する直鎖オレフィンと共重合し得る。
【0084】
オレフィンコポリマー(C)の繰り返し単位が由来する官能性モノマー(f3)は、ポリオレフィン(B)にグラフト化される化合物(b)中に含有される官能基(f2)と、反応し、および/またはイオン相互作用(例えば、酸素原子とナトリウムなどのアルカリ金属原子との間の相互作用)を展開し、および/または水素架橋結合を形成することができることが好ましい。
【0085】
オレフィンコポリマー(C)の繰り返し単位が由来する官能性モノマー(f3)は、ポリオレフィン(B)にグラフト化される化合物(b)中に含有される官能基(f2)と反応し、および/またはイオン相互作用を展開することが特に好ましい。
【0086】
オレフィンコポリマー(C)の繰り返し単位が由来する官能性モノマー(f3)は、ポリオレフィン(B)にグラフト化される化合物(b)中に含有される官能基(f2)とイオン相互作用を展開することができることが最も好ましい。
【0087】
少なくとも1種の中和剤により完全にまたは部分的に中和される官能性モノマー(f3.1)は、ポリオレフィン(B)にグラフト化される化合物(b)中に含有される官能基(f2)とイオン相互作用することができる官能性モノマー(f3)の例である。
【0088】
オレフィンコポリマー(C)は、少なくとも2つの異なる族に属する官能性モノマー(f3)に由来する繰り返し単位を含有し得る。それ故、オレフィンコポリマー(C)は、少なくとも2つの官能性モノマー(f3)に由来する繰り返し単位を含有し得、少なくとも1種の官能性モノマー(f3)は、任意により少なくとも1種の中和剤により完全にまたは部分的に中和される官能性モノマー(f3.1)から選択され、ならびに少なくとも1種の他の官能性モノマー(f3)は、官能性モノマー(f3.2)から選択される。これらは、その結果、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ナトリウムおよびナトリウムメタクリレートから選択される少なくとも1種の官能性モノマーと、メチル、n−ブチルおよびイソブチルアクリレートおよびメタクリレートから選択される少なくとも1種の官能性モノマーとの混合物であり得る。
【0089】
本発明による組成物に含有されるオレフィンコポリマー(C)がまた、上述の化合物(a)または化合物(b)が属する族から選択される化合物によりグラフト化されることは除外されない。しかしながら、オレフィンコポリマー(C)は、一般に、上述の化合物(b)が属する族から選択されるグラフト化された化合物を含まず、ならびに、きわめて頻繁に、オレフィンコポリマー(C)は、いずれのグラフト化された化合物も含まない。
【0090】
オレフィンコポリマー(C)としては、繰り返し単位の95〜85重量%がエチレンに由来すると共に、繰り返し単位の5〜15重量%が、その酸官能基がナトリウムイオンによって完全にまたは部分的に中和されるメタクリル酸に由来するコポリマーが最も好ましい。
【0091】
そのグラフト化形態でのフルオロポリマー(A)と、そのグラフト化形態でのポリオレフィン(B)とが本発明による組成物中に存在するそれぞれの比率は、特に、前記フルオロポリマーおよび前記ポリオレフィンにグラフト化された化合物(a)および化合物(b)のそれぞれの量に応じて、大きく異なり得る。普通、これらは、フルオロポリマー(A)対ポリオレフィン(B)の重量比[(A)/(B)]が、95/5〜5/95であるような比率である。好ましくは、比[(A)/(B)]は60/40〜40/60である。最良の結果は、比[(A)/(B)]が55/45に近似する場合に得られた。
【0092】
この理論的説明によって本発明の範囲が決して限定されることはないが、本出願の権利者は、オレフィンコポリマー(C)は、その化学的性質により、フルオロポリマー(A)およびポリオレフィン(B)に対するある種の「適合性の接合面」または「バインダ」として役立つことができると考える。これらの条件下では、本発明によるポリマー組成物中に存在するオレフィンコポリマー(C)の量は、フルオロポリマー(A)およびポリオレフィン(B)の量より著しく少ない場合がある。普通、オレフィンコポリマー(C)は、本発明によるポリマー組成物中に、この組成物の総重量に対して0.1〜10重量%の量で、好ましくは0.2〜5重量%の量で、最も特定的には0.5〜2.5重量%の量で存在する。
【0093】
一般に好ましい本発明の特定の一実施形態[実施形態(I)]においては、官能性モノマー(f3)[オレフィンコポリマー(C)の繰り返し単位が由来する]の分量の一部が官能基(f1)[フルオロポリマー(A)にグラフト化された化合物(a)に含有されている]の分量の一部と反応し、これにより、オレフィンコポリマー(C)をフルオロポリマー(A)に化学的に結合する。この実施形態(I)によれば、官能性モノマー(f3)[オレフィンコポリマー(C)の繰り返し単位が由来する]の分量の一部が官能基(f2)[ポリオレフィン(B)にグラフト化された化合物(b)に含有されている]と反応し、および/またはイオン相互作用(例えば、酸素原子とナトリウムなどのアルカリ金属原子との間の相互作用)を展開し、および/または水素架橋結合を形成し、これにより、オレフィンコポリマー(C)をポリオレフィン(B)に結合することが好ましく;特に好ましくは、官能性モノマー(f3)の分量の一部が官能基(f2)の分量の一部と反応し、および/またはイオン相互作用を展開し;最も好ましくは、官能性モノマー(f3)の分量の一部が官能基(f2)の分量の一部とイオン相互作用を展開する。さらにこの実施形態(I)によれば、官能基(f2)[ポリオレフィン(B)にグラフト化された化合物(b)に含有されている]の分量の一部が官能基(f1)[フルオロポリマー(A)にグラフト化された化合物(a)に含有されている]の分量の一部と反応し、これにより、ポリオレフィン(B)をフルオロポリマー(A)に化学的に結合することが好ましい。最後に、さらにこの実施形態(I)によれば、官能基(f1)[フルオロポリマー(A)にグラフト化された化合物(a)に含有されている]の分量の一部と官能基(f2)[ポリオレフィン(B)にグラフト化された化合物(b)に含有されている]の分量の一部とが未反応状態で残り、従って、一般に、フルオロポリマー(A)およびポリオレフィン(B)のそれぞれに接着特性を付与することができ;特に好ましくは、官能基(f1)の分量の一部、官能基(f2)の分量の一部および官能性モノマー(f3)[オレフィンコポリマー(C)の繰り返し単位が由来する]の分量の一部が未反応状態で残り、従って、一般に、フルオロポリマー(A)、ポリオレフィン(B)およびオレフィンコポリマー(C)のそれぞれに接着特性を付与することができることが好ましい。
【0094】
本発明の他の実施形態において[実施形態(II)]、官能基(f1)[フルオロポリマー(A)にグラフト化された化合物(a)に含有されている]の全分量、官能基(f2)[ポリオレフィン(B)にグラフト化された化合物(b)に含有されている]の全分量、および官能性モノマー(f3)[オレフィンコポリマー(C)の繰り返し単位が由来する]の全分量が未反応状態である。本発明の後者の実施形態によるポリマー組成物は、上記に詳細に説明されている実施形態(I)による組成物の調製のための前駆体組成物として有利に用いられる。
【0095】
本発明によるポリマー組成物はまた、例えば、酸掃去剤、滑剤、有機または無機着色剤、成核剤、充填材、安定化剤および難燃剤などの熱可塑性ポリマー用の1種以上の慣例的な添加剤を含み得る。
【0096】
本発明によるポリマー組成物は、いずれかの公知の方法により調製され得る。有利には、それらの構成成分(A)、(B)および(C)を確実に混和する方法が選択されることとなる。
【0097】
従って、本発明の他の態様は、上述のとおり、組成物を製造する方法に関し、この方法によれば、フルオロポリマー(A)、ポリオレフィン(B)およびオレフィンコポリマー(C)は溶融塊として混合される。本発明による方法においては、フルオロポリマー(A)、ポリオレフィン(B)およびオレフィンコポリマー(C)を溶融塊として反応させることがさらに好ましい。「構成成分(A)、(B)および(C)を反応させる」という表記は、構成成分(A)、(B)および(C)の少なくとも2つを互いに反応させることを意味すると理解されるべきである。
【0098】
それ故、例えば、本発明による方法において、構成成分(A)、(B)および(C)は、先ず、ドラムミキサなどのこの目的のために好適ないずれかの装置において、必要な比率で乾燥予混合され得る。このように得られた予混合物は、次いで、化合物(a)のフルオロポリマー(A)へのグラフト化に関して、ニーダなどのバッチ装置においてバッチモードで、あるいは上述の押出し機などの連続的装置において溶融される。溶融されることが意図される予混合物はまた、マスターバッチ技術により製造されることが可能である。ニーダまたは押出し機に、乾燥予混合せずに個別に計量された構成成分(A)、(B)および(C)を供給することもまた可能である。一旦構成成分(A)、(B)および(C)が溶融されたら、これらの構成成分の混合が、この目的に好適であるいずれかの装置において、実施されまたは継続される。有利には、これを行うために、すでに溶融作業に用いられたものと同一のバッチ装置(例えばニーダ)または連続的装置(例えば押出し機)が用いられる。最後に、構成成分(A)、(B)および(C)の溶融配合を継続している最中に、またはこれを終了した後に、構成成分(A)、(B)および(C)は、溶融塊として、これらの同一の装置において反応されることが好ましい。
【0099】
当業者は、少数の事前の所定の実験により、混合装置、溶融装置および反応装置の一般的な作業条件を容易に判定し得る。押出し機の場合には、特に、溶融ゾーン、均質化ゾーンおよび反応ゾーンの温度は、一般に、140〜270℃、好ましくは170〜240℃で制御され;ダイ中の圧力は、一般に、200bar未満、好ましくは100bar、およびより好ましくは50barであり;スクリューの回転速度は、一般に、50〜2000rpm、好ましくは200〜1000rpmである。
【0100】
本発明による組成物の接着特性は、本発明の他の主題を構成する、多層構造の製造に良好に用いられ得る。これらは、その層の1つが接着特性を有するポリマー組成物から構成されている多層構造である。これらの構造は、種々の無機材料および有機材料の両方から構成され得る少なくとも1つの他の層を含有する。この他の層の組成物に組み込まれ得る無機材料としては、例えばアルミニウムおよび鋼鉄などの金属および金属合金が挙げられ得る。この他の層の組成物に組み込まれ得る有機材料としては、熱可塑性ポリマーが挙げられ得る。この他の層の組成物に組み込まれ得る熱可塑性ポリマーの例は、フルオロポリマー(A)の族に属するフッ素を含有するポリマーおよびオレフィンポリマー(B)に存在するものと同等の性質のオレフィンを含有するポリマーである。
【0101】
本発明による組成物の接着特性は、本発明の他の主題を構成する、多層構造の製造に良好に用いられ得る。これらは、その層の1つが接着特性を有するポリマー組成物から構成されている多層構造である。これらの構造は、種々の無機材料および有機材料の両方から構成され得る少なくとも1つの他の層を含有する。この他の層の組成物に組み込まれ得る無機材料としては、例えばアルミニウムおよび鋼鉄などの金属および金属合金が挙げられ得る。この他の層の組成物に組み込まれ得る有機材料としては、熱可塑性ポリマーが挙げられ得る。この他の層の組成物に組み込まれ得る熱可塑性ポリマーの例は、問題のポリマーが通常はグラフト化されない場合を除き、フルオロポリマー(A)の定義に対応するフルオロポリマーおよびポリオレフィン(B)の定義に対応するポリオレフィンである。
【0102】
本発明の本態様による特定の多層構造は、X/Y/Z構造を有する三層構造体であり、ここで、上に定義されているとおり、中央層Yは本発明の接着特性を有するポリマー組成物から構成され、ならびに、層XおよびZは熱可塑性ポリマーから構成されている。好ましい多層構造は、X/Y/Z構造を有する三層構造体であり、ここで、中央層Yは本発明による接着特性を有するポリマー組成物から構成されており、層Xはポリオレフィン(B)に存在するものと同等の性質のオレフィンに基づくポリマー(通常は未グラフト化)から構成されており、層Zはフルオロポリマー(A)に存在するものと同等の性質のフルオロモノマーに基づくポリマー(通常は未グラフト化)から構成されている。
【0103】
これらの多層構造は、この目的のために公知であると共に各層の構成材料の性質に適合するいずれかのプロセスにより製造され得る。これらの層の組み立ては、例えば、構成層の相互の接着あるいはホットプレス成形により、他の層の構成材料の粉末あるいは溶液での固体層のコーティングにより実施され得;または、特にこれらの層の構成材料が熱可塑性である場合には、共押出しにより、共押出し−ブロー成形により、共射出成形および共射出成形−成形(coinjection moulding−moulding)により実施され得る。
【0104】
共押出しは、X/Y/Z構造を有する多層構造の製造に特に好適であり、ここで、中央層Yは本発明による接着特性を有するポリマー組成物から構成されており、層Xは、特にエチレンおよび/またはプロピレンから誘導されるホモポリマーまたはコポリマーといった、ポリオレフィン(B)に存在するものと同等の性質のポリオレフィン(通常は未グラフト化)から構成され、ならびに層Zは、フッ化ビニリデンから誘導される特にホモポリマーまたはコポリマーといった、フルオロポリマー(A)に存在するものと同等の性質のフルオロポリマー(通常は未グラフト化)から構成されている。この共押出しは、例えば、3台の押出し機、好ましくは3台の一軸押出し機において、供給ブロックを介してシートダイに供給することにより、または、好ましくは三層チューブ押出ダイに供給することにより実施され得る。
【0105】
このように製造される多層構造は、シートおよびフィルムの最終形態で生産され得る。
【0106】
このように製造される多層構造はまた、特にタンクといった中空体、ボトル、コンテナ、チューブおよびパイプの最終形態で生産され得る。そして、層Xは、好ましくは、中空体の外側(凸状)層を構成し、一方、層Zは、中空体の内側(凹状)層を構成する。特にチューブ、導管およびタンクといった中空体は、特に油および燃料といった液体炭化水素の輸送および/または保管のために有利に用いられる。
【0107】
以下の実施例は本発明を例示することを意図するが、しかしながら、その範囲を限定することは意図されない。
【実施例】
【0108】
実施例1
50rpmで回転するブラベンダープラスティコーダ(Brabender Plasticorder)PL 2000ニーダ中に:
(A)メルトフローインデックスMFI2.16kg/230℃(ASTM 1238規格)が8g/10分であると共に、アリルグリシジルエーテル分子によりグラフト化された、85重量%のフッ化ビニリデンおよび15重量%のヘキサフルオロプロピレンを含有するランダムコポリマー(このグラフト化されたコポリマーは、その供給ゾーンを170℃に加熱すると共に押出し成形ダイを220℃に加熱したクレックストラル(Clextral)モデルBC21共回転二軸押出し機において、1kgの押出コポリマー当たり、15gのアリルグリシジルエーテルおよび4gの2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)をラジカル発生剤として用いることにより得た);
(B)従来どおり押出し機において、ラジカル発生剤としてのDHBPの存在下に無水マレイン酸によりグラフト化し、次いで、グラフト化されたその無水物基をナトリウム乳酸塩とカーボネートとの混合物により中和してアイオノマーに転換した、メルトフローインデックスMFI2.16kg/230℃(ASTM 1238規格)が2.3g/10分である、96重量%のプロピレンおよび4重量%のエチレンを含有するランダムコポリマー;
(C)約90重量%のエチレンと約10重量%のメタクリル酸とを含有するコポリマーであって、そのカルボン酸基がナトリウムイオンの形態で完全にまたは部分的に中和され、ならびにメルトフローインデックスMFI2.16kg/230℃(ASTM 1238規格)が4.13g/10分である、デュポン(Du Pont)社製のサーリン(SURLYN)(登録商標)1802の商品名で市販されている製品
を190℃の温度で一緒に混合することによりポリマー組成物を調製した。
【0109】
構成成分(A)は、ブレンドの54.5重量%に相当し、構成成分(B)は44.5重量%に相当し、および構成成分(C)は1重量%に相当する。
【0110】
次いで、中央層の構成成分が上記のブレンドから調製したポリマー組成物である三層フィルムを共押出しにより調製した。外側層の構成成分は、それぞれ:
−下層については、上記(A)に記載のものであるがグラフト化されていないフルオロポリマー;
−上層については、イネオス(Ineos)製のエルテックス(ELTEX)(登録商標)P KS409の商品名で市販されているランダムプロピレン/エチレンコポリマー(メルトフローインデックスMFI2.16kg/230℃(ASTM 1238規格):5g/10分)
であった。
【0111】
共押出しの操作条件が以下の表1に記載されている。
【0112】
【表1】

【0113】
押出し機から出3つの押出層を、70℃の温度にした三本ロール研磨スタック(three−roll polishing stack)により処理した。得られたフィルムはその構成層に剥離することが可能であり、これが中央層の接着特性を証明する。
【0114】
実施例2
ブレンドの構成成分(A)のランダムフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーを10g/kgの3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールでグラフト化したこと以外は、あらゆる点で実施例1を再現した。共押出しの操作条件が以下の表2に記載されている。
【0115】
【表2】

【0116】
押出し機から出た3つの押出層を、70℃の温度にした三本ロール研磨スタックにより処理した。得られたフィルムをその構成層に剥離することは困難であり、これが中央層の接着特性を証明する。
【0117】
実施例3R
この実施例は、比較のために記載されている。
【0118】
共押出フィルムの中央層を製造するために、3種の構成成分(A)、(B)、(C)のブレンドを構成成分(A)単独で置き換えたことを除き実施例1を再現した。共押出しおよびカレンダ加工の操作条件は実施例2からのものである。フィルムの構成層間で接着は観察されなかった。
【0119】
実施例4R
この実施例は、比較のために記載されている。
【0120】
共押出フィルムの中央層を製造するために、3種の構成成分(A)、(B)、(C)のブレンドをメチルメタクリレートによりグラフト化されたプロピレンのコポリマーにより置き換えたことを除き実施例1を再現した。
【0121】
共押出しの操作条件が以下の表3に記載されている。
【0122】
【表3】

【0123】
カレンダ加工の操作条件は実施例1および2に記載のものであった。
【0124】
フィルムの構成層間に接着は観察されなかった。しかも、多層構造は不快臭を有していることが観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくとも1種のフルオロポリマー(A)であって、前記ポリマーに接着特性を付与することができる少なくとも1つの官能基(f1)を含有する少なくとも1種の化合物(a)によりグラフト化されたフルオロポリマー(A)と、
(2)少なくとも1種のポリオレフィン(B)であって、ポリオレフィン(B)の重量に対して最大で4重量%の、任意により少なくとも1種の中和剤により完全にまたは部分的に中和されている、酸および無水物基から選択される少なくとも1つの官能基(f2)を含有する少なくとも1種の化合物(b)によりグラフト化されたポリオレフィン(B)と、
(3)少なくとも1種のオレフィンコポリマー(C)であって、その繰り返し単位の少なくとも5重量%が、化合物(a)中に含有される官能基(f1)と反応することができる少なくとも1種の官能性モノマー(f3)に由来するオレフィンコポリマー(C)と
を含む接着特性を有するポリマー組成物。
【請求項2】
フルオロポリマー(A)がフッ化ビニリデンポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
官能基(f1)が、エポキシ基、アルコール基およびカルボニル基から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
化合物(a)が、アリルグリシジルエーテル、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
ポリオレフィン(B)が、エチレンおよびプロピレンに由来するホモポリマーおよびコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
オレフィンコポリマー(C)が、その繰り返し単位の95〜85重量%がエチレンに由来していると共にその繰り返し単位の5〜15重量%がメタクリル酸に由来し、その酸官能基がナトリウムイオンにより完全にまたは部分的に中和されているコポリマーであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
フルオロポリマー(A)対ポリオレフィン(B)の重量比が95/5〜5/95であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
オレフィンコポリマー(C)が、前記組成物の総重量に対して0.1〜10重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
官能性モノマー(f3)の分量の一部が官能基(f1)の分量の一部と反応し、これにより、オレフィンコポリマー(C)をフルオロポリマー(A)に化学的に結合することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
官能性モノマー(f3)の分量の一部が官能基(f2)の分量の一部と反応し、および/またはイオン相互作用を展開し、これにより、オレフィンコポリマー(C)をポリオレフィン(B)に結合することを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
官能基(f2)の分量の一部が官能基(f1)の分量の一部と反応し、これにより、ポリオレフィン(B)をフルオロポリマー(A)に化学的に結合することを特徴とする、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
官能基(f1)の全分量、官能基(f2)の全分量および官能性モノマー(f3)の全分量が未反応状態であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
フルオロポリマー(A)、ポリオレフィン(B)およびオレフィンコポリマー(C)が、溶融塊として混合される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項14】
フルオロポリマー(A)、オレフィンポリマー(B)およびオレフィンコポリマー(C)が、溶融塊として混合されると共に反応される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項15】
中央層Yが請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリマー組成物から構成され、層Xがポリオレフィンから構成され、および層Zがフルオロポリマーから構成されているX/Y/Z構造を有する多層構造。
【請求項16】
タンク、ボトル、コンテナ、チューブおよびパイプから選択される中空体の最終形態に製造され、層Xが中空体の外側層を構成すると共に層Zが中空体の内側層を構成することを特徴とする、請求項15に記載の多層構造。
【請求項17】
液体炭化水素を輸送および/または保管するための請求項16に記載の多層構造の使用。

【公表番号】特表2009−541557(P2009−541557A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517164(P2009−517164)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056348
【国際公開番号】WO2008/000732
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】