説明

接続先LNSの接続状況に基づき、LNSに対する接続要求を振り分けるLAC装置及びその接続先選択方法

【課題】
LNSの接続状況を考慮していない接続方式では、接続先LNSが接続過多であったとしてもRADIUSのしていもしくはLACの状況によっては当該の接続過多なLNSを選択する。結果としてセッション数超過もしくはリソース不足等により選択したLNSが接続要求を拒否した場合、再度接続先LNSを選択し接続要求をやり直さなければならない。
【解決手段】
上記の解決手段として、LNSの接続状況を管理し、最も接続が少ないと予測できるLNSに対して接続要求を出すLAC装置、および、その接続方式を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L2TPを利用したインターネット接続サービスに適したLAC装置およびその接続先選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のL2TPを利用したインターネット接続サービスシステムは、接続するユーザの加入するISPを基準に、複数の接続先LNS候補からLACが接続先を選択して接続を行う構成となっている。
【0003】
接続先LNS候補は、ユーザから接続要求が行われる度にRADIUSから通知が行われる。LACは通知された接続先LNSの候補から1つを選択して接続する。選択においてはRADIUSから指定される優先順位に従う、候補内のLNSを無作為に選択する、候補内のLNSを上位から順に選択する(ラウンドロビン)、候補内のLNSのうち最も接続数の少ないものを選択する(最小セッションLNS)等の方式がある。これらの選択方式は、RADIUSからの指定に従うものもしくはLACの動作状況に依存するものであり、LNSの接続状況を考慮するものではない。
【0004】
特許文献1のように、LACとLNSをグループ化して、管理することにより、接続先LNSの選択を最適化するための技術も考案されているが、やはり現在のLNSの接続状況を考慮するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−271138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、従来のLACによる接続先LNS候補選択はLNSの接続状況を考慮していない。そのため、接続先LNSが接続過多であったとしてもRADIUSの指定もしくはLACの状況によっては当該の接続過多なLNSを選択する。結果としてセッション数超過もしくはリソース不足等により選択したLNSが接続要求を拒否した場合、再度接続先LNSを選択し接続要求をやり直さなければならない。
【0007】
また、接続できた場合でも接続数の多いLNSはその分高負荷である可能性が高い。これらは最終的に接続に要する時間の増化、インターネット接続後の帯域の劣化としてユーザに影響を与え、サービスに対する満足度を悪化させる要因となる。
【0008】
これらの悪影響を避けるため、従来のシステムにおいても上述の通りいくつかの接続先LNSの分散を考慮した接続先選択方式が取られているが、それらは接続先LNSの接続状況を考慮していないため効果に限りがある。そのため、接続先LNSの分散をより均一化する接続先選択方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は接続先LNSがLAC装置を経由してユーザに払い出すIPアドレスを記憶し、IPアドレス単位に使用中、未使用を管理することで利用状況を推測し、推測した利用状況を元に最も閑散なLNSを接続先LNSとして選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、接続先LNSの払い出しているIPアドレスの利用状況を元に接続先を判断しているため、接続先LNSの接続状況をLACの接続先LNS選択に反映することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のインターネット接続システムの一実施例を示すブロック図の一例
【図2】本発明の最適な接続先LNSを選択するインターネット接続システムの一実施例を示すブロック図の一例
【図3】最適な接続先LNSを選択するインターネット接続システムにおける切断時の一実施例を示すブロック図の一例
【図4】IPアドレスの利用状況リストの遷移を示す遷移図の一例
【図5】IPアドレスの利用状況の推移に伴うLACの接続先LNS選択リストを示す遷移図の一例
【図6】ユーザ接続時の接続先LNSの選択論理を示すフローチャートの一例
【図7】ユーザ接続・切断時のIPアドレスの利用状況の管理動作を示すフローチャートの一例
【図8】予めLACに接続先LNSを登録し選択するインターネット接続システムの一実施例を示すブロック図の一例
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1に従来システムでの実施例を示す。システムは、ユーザ101と、LAC102と、RADIUS103と、接続先LNS候補群104とから構成されている。接続先LNS候補群104は、LNS−A105と、LNS−B106と、LNS−C107とから構成されている。
【0014】
動作概要として、ユーザ101はLAC102と、いずれかのLNSを介してネットワークに接続される。LAC102はLNSの情報をRADIUS103から取得し、接続先LNSを決定する。LAC102と接続先LNS候補群104との間ではL2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)というプロトコルを利用する。
【0015】
ユーザ101は、L2TPクライアントとしてLAC102に対する発呼機能を有するものである。
【0016】
LAC102は、ユーザ101からの発呼を受け、呼が接続要求であった場合RADIUS103に接続先LNS候補の問い合わせを行い、応答される接続先LNS候補群104に含まれるLNSを選択し接続要求を送信し、LNSから接続許可を受け、接続許可をユーザ101に送信する機能を有するものである。RADIUS103は、LAC102から接続先LNS候補の問い合わせを受け、自身に予め登録されている接続先LNS候補群を応答する機能を有するものである。
【0017】
接続先LNS候補群104は、LNS−A105、LNS−B106およびLNS−C107からなり、ユーザ101の所属するISPによって予めRADIUS103に登録される接続先LNSの候補である。
【0018】
今回の例ではLNS−C107は、接続先LNS候補群104の内利用状況が最も閑散な接続先LNSとする。LNS−A105およびLNS−B106は、接続先LNS候補群104の内利用状況がLNS−C107に比べ繁忙な接続先LNSである。
【0019】
ユーザ101がインターネット接続を行う場合、まずLAC102に接続要求を送信する。接続要求を受けたLAC102は、接続を一意に特定するセッションIDを決定した上でRADIUS103に対しユーザ101の接続先LNS候補群を問い合わせる。問い合わせを受けたRADIUS103は、LAC102に対し接続先LNS候補群104を送信する。接続先LNS候補群104には接続先LNS候補群104のそれぞれのIPアドレス(以下、接続先IPアドレス)、LAC−LNS間の認証に必要なパスワード、LNSを選択する順を示す選択優先度が含まれる。選択優先度は静的に決められており通常は変更されない。
【0020】
今回の例では、選択優先度はLNS−A105、LNS−B106、LNS−C107の順に高いとする。
【0021】
接続先LNS候補群104を受信したLAC102は、選択優先度を基に、接続先LNS候補群104から最も優先度が高いLNS−A105を接続先LNSとして選択し接続要求を送信する。接続要求を受信したLNS−A105は繁忙を理由に接続拒否を送信する。
【0022】
接続拒否を受信したLAC102は、接続先LNS候補群104から2番目に優先度の高いLNS−B106を選択し接続要求を送信する。接続要求を受信したLNS−B106は繁忙を理由に接続拒否を送信する。接続拒否を受信したLAC102は、接続先LNS候補群104から3番目の優先度のLNS−C107に対し接続要求を送信する。接続要求を受けたLNS−C107は、ユーザ101の正当性を確認の後LAC102に対し接続許可およびユーザ101の使用するIPアドレスを送信する。接続許可およびユーザ101の使用するIPアドレスを受信したLAC102は、ユーザ101に接続許可およびIPアドレスを送信する。
【0023】
今回の例では、LNS−C107が最も閑散であるにもかかわらず、LAC102は全てのLNSに対して接続要求を送信しており、非常に無駄の多い処理となっている。これは、必ずしも同じ事業者がLACとLNSの両方を運営しないこともあり、LACがLNSの情報(主に現状どれだけの接続があるか)を有していないためである。次にこの課題を解決するための構成を説明する。
【0024】
図2は本実施例の最適な接続先LNSを選択するインターネット接続システムの一実施例を示すブロック構成図である。システムは、ユーザ201(PC等の端末)と、LAC202と、RADIUS203と、接続先LNS候補群204とから構成されている。接続先LNS候補群204は、LNS−A205と、LNS−B206と、LNS−C207とから構成されている。
【0025】
LAC202は、ユーザ201からの発呼を受け、呼が接続要求であった場合RADIUS203に接続先LNS候補の問い合わせを行う。また、LAC202は接続先LNS候補群204内の接続先LNSの利用状況を記憶しており、RADIUS203から応答される接続先LNS候補群204から接続先LNSの利用状況に応じて最適な接続先LNSを選択する。詳細は選択方法は後述する。
【0026】
例えば、接続先としてLNS−C207に接続要求を送信し、LNS−C207から接続許可を受けIPアドレス利用状況リストを編集し、接続許可をユーザ201に送信する機能を有するものである。
【0027】
RADIUS203は、LAC202から接続先LNS候補の問い合わせを受け、自身に予め登録されている接続先LNS候補群を応答する機能を有するものである。
【0028】
接続先LNS候補群204は、LNS−A205、LNS−B206およびLNS−C207からなり、ユーザ201の所属するISPによって予めRADIUS203に登録される接続先LNSの候補である。
【0029】
今回の例ではLNS−C207は、接続先LNS候補群204の内利用状況が最も閑散な接続先LNSである。LNS−A205およびLNS−B206は、接続先LNS候補群204の内利用状況がLNS−C207に比べ繁忙な接続先LNSである。
【0030】
ユーザ201がインターネット接続を行う場合、まずLAC202に接続要求を送信する。接続要求を受けたLAC202は、接続を一意に特定するセッションIDを決定した上でRADIUS203に対しユーザ201の接続先LNS候補群を問い合わせる。問い合わせを受けたRADIUS203は、LAC202に対し接続先LNS候補群204を送信する。接続先LNS候補群204を受信したLAC202は、接続先LNS候補群204の内利用状況が最も閑散な接続先LNSであるLNS−C207に対し接続要求を送信する。
【0031】
接続要求を受けたLNS−C207は、ユーザ201の正当性を確認の後LAC202に対し接続許可およびユーザ201の使用するIPアドレスを送信する。接続許可およびユーザ201の使用するIPアドレスを受信したLAC202は、LNS−CのIPアドレス利用状況リストにセッションIDおよび受信したIPアドレスを登録し、ユーザ201に接続許可およびIPアドレスを送信する。
【0032】
図1の従来例と比較して、LNS−A205、LNS−B206への無駄な接続要求を抑制できていることがわかる。これはLAC202が接続先LNS候補群204内の接続先LNSの利用状況を記憶しており、最適なLNSを選択できるためである。
【0033】
次に、図3−7を用いてLAC202が接続先LNSの利用状況の取得、更新をどのように行うかを説明する。
【0034】
図3は本発明の最適な接続先LNSを選択するインターネット接続システムにおける切断時の一実施例を示すブロック構成図である。システムは、ユーザ301と、LAC302と、LNS−C303とから構成されている。
【0035】
ユーザ301は、L2TPクライアントとしてLAC302に対する発呼機能を有するものである。LAC302は、ユーザ301からの発呼を受け、呼が切断要求であった場合ユーザ301の接続先LNSであるLNS−C303に切断要求を送信し、LNS−C303から切断応答を受けIPアドレス利用状況リストを編集し、切断応答をユーザ301に送信する機能を有するものである。LNS−C303は、ユーザ301の接続時にLAC302が選択した接続先LNSである。
【0036】
ユーザ301がインターネット接続の切断を行う場合、まずLAC302に切断要求を送信する。切断要求を受けたLAC302は、接続先LNSであるLNS−C303に対し切断要求を送信する。切断要求を受けたLNS−C303は、LAC302に対し切断応答を送信する。切断応答を受信したLAC302は、LNS−CのIPアドレス利用状況リストから切断する接続のセッションIDを検索し、該当のエントリからセッションIDを削除し、IPアドレスの利用状況を「未使用」に変更し、ユーザ301に切断応答を送信する。
【0037】
図4はLAC202が管理する接続先LNSの払い出すIPアドレスの利用状況リストであり、図3の動作を基に遷移する。最初に図4のテーブルの構成を説明し、次にどのようにデータが更新されていくのかの動作を説明する。
【0038】
LAC202は401―405のようなテーブルをLNSごとに保有する。テーブル中のIPアドレスとはLNSが払いだすIPアドレスのことである。LNSはユーザ201と接続する場合、ユーザ201に対しIPアドレスを払い出す。例えば、LNS−A205が最大5台までのユーザ201と接続できるとして、払いだせるIPアドレスの範囲が「Address_A〜Address_E」である場合、これらのいずれかの値が入る。
【0039】
セッションIDとはユーザ201と接続が確立した場合に発生するセッションIDの値を格納する。
【0040】
利用状況には、上記した払いだせるIPアドレスが利用されているかを示す情報が格納される。データの形式はどのようなものでもよく、使用、未使用が分かればよい。
【0041】
テーブル402の例だと、IPアドレスの「Address_A」とセッションIDの「X」と利用状況「使用中」が対応している。これは、このテーブルのLNSはAddress_Aを払い出しており、現状セッションID「X」として現在利用されていることを示す。
【0042】
尚、401―405のテーブルにLNSの識別子(LNSのIPアドレスなど)の列を追加し、全てのLNSの情報を1つのテーブルに併せてもよい。
【0043】
次に、図4のテーブルの遷移について説明する。LAC202はRADIUS203から接続先LNS候補群のリストを受信するため、初回通信時にLNSごとに空のテーブルを作成する(401)。また、2回目以降で接続先LNS候補群のリストを受信した際に、接続先LNS候補群が変更されていれば、新規なLNSのテーブルを作成し、無くなったLNSのテーブルを削除する。
【0044】
次に、ユーザがIPアドレス「Address_A」で接続された場合、IPアドレス「Address_A」をユーザとの通信で発生したセッションID「X」とともにエントリし、利用状況を「使用中」にする(402)。
【0045】
さらに別のユーザがIPアドレス「Address_B」で接続された場合、IPアドレス「Address_B」をセッションID「Y」とともにエントリし、利用状況を「使用中」にする(403)。
【0046】
セッションID「X」のユーザが切断された場合、IPアドレス「Address_A」のエントリを削除せず、セッションIDを空に、利用状況を「未使用」にする(404)。
【0047】
さらに別のユーザがIPアドレス「Address_A」で接続された場合、新たなエントリは生成せずIPアドレス「Address_A」のエントリに新たなセッションID「Z」を登録し、利用状況を「使用中」にする(405)。
【0048】
上記401−405までのテーブルの遷移を見ると、新しくユーザ201に発行されたIPアドレスを追加して行き、一度追加されたアドレスが再度ユーザ201に発行された場合は、セッションIDと利用状況のみを変化させていることがわかる。
【0049】
従来のLAC102は、上記したように必ずしもLNSの情報を有さないため、LNSの払いだせるIPアドレスの値と数、および、それらが使用されているかの情報を有さない。そのため、常に静的な順序でLNSを選択することとなる。
【0050】
そこで、本実施例のLAC202は、LNSと通信が発生するごとに、払いだされるIPアドレスを収集し、同時に各IPアドレスが使用されているかを確認することにより、各LNSごとに記録した払い出しIPアドレスに空きがあるかの情報を保有し、LNSの選択を動的に切り替えている。
【0051】
図5はIPアドレスの利用状況の推移に伴うLACの接続先LNS選択リストの遷移を示す図である。ここではあるISPがRADIUSに3台の接続先LNS候補LNS−A、LNS−B、LNS−Cを登録済みであり、各接続先LNS候補の優先度は等しく、IPアドレスの最大同時払い出し可能数はLNS−Aが3個、LNS−Bが10個、LNS−Cが5個であるとする。また、説明を簡単にするために、各LNSは今まで払い出したことのないIPアドレスを優先的に払い出すものとする。尚、各接続先LNS候補の優先度を予め定めておいても良い。
【0052】
図5のLACの接続先LNS選択リストのテーブルの構成について説明する。テーブル501の接続先LNSには各LNSのIPアドレスが入る。利用状況には、図4のテーブルの払い出しIPアドレスの利用状況が入る。例えば、テーブル403だと、IPアドレスが1つ払い出されており、両方とも使用されている。よって、利用状況は「2/2」になる。テーブル404だと、IPアドレスが1つ払い出されており、未使用である。よって、利用状況は「0/1」となる。利用率は利用状況を%で表したものである。
【0053】
図5のテーブルは図4のテーブルを基に作成される。そのため、図4のテーブルが更新されれば、図5のテーブルも更新される。LAC202は、この図5のテーブルを用いて、最も利用率の低い接続先LNSを選択する。
【0054】
次に動作について説明する。装置起動時、接続先LNS候補のIPアドレス利用状況リストはRADIUSから情報を得ていないためエントリが全くない状態である(501)。
【0055】
この状態でユーザ1人が接続を行う場合、LNS−A、LNS−B、LNS−Cの接続先LNS候補のRADIUSからの通知を受けてIPアドレス利用状況リストを3つの接続先LNS候補に対して空の状態で作成する。この時点では3つの接続先LNS候補は全て利用率0%であり、無作為に1つのLNSを選択する(優先度が定められている場合は、その優先度に従う)。続けてさらに2人のユーザが接続を行う場合、先に選択しなかった2つの接続先LNS候補を順に選択する。結果として、3人のユーザは3つの接続先LNS候補に1人ずつ接続される。いずれも新しいIPアドレスが払い出されている。このとき、IPアドレス利用状況リストは使用中のエントリが1つとなり、使用率は100%になる。尚、図4のテーブルも更新されているが省略している。(502)。
【0056】
続けてさらに1人のユーザが接続を行う場合、全接続先LNS候補の利用率が100%のため無作為に1つのLNSを選択する。ここではLNS−Aを選択したものとする。新しいIPアドレスが払い出され、かつ両方が使われているので、LNS−AのIPアドレス利用状況リストは使用中のエントリが2つとなり、使用率は100%となる(503)。
【0057】
続けて接続中の4人のユーザが全てセッションを切断し、別の3人のユーザが接続を行う場合、4人のユーザがセッションを切断した時点で3つの接続先LNS候補は全て利用率が0%となるため、3人のユーザは新しいIPアドレスで3つの接続先LNS候補に1人ずつ接続される。このとき、IPアドレス利用状況リストはLNS−Aが使用中のエントリ1つと未使用のエントリ2つ、LNS−BとLNS−Cが使用中のエントリ1つと未使用のエントリ1つになる(504)。
【0058】
続けて1人のユーザが接続を行う場合、LNS−Aの利用率33%が最も低くなるため優先的に選択する。この時点でLNS−Aは3つのIPアドレスを1度払い出しておりエントリされているため、LNS−AのIPアドレス利用状況リストに新規のエントリは追加されず、使用中のエントリ2つと未使用のエントリ1つとなり利用率は67%となる(505)。
【0059】
続けてさらに5人のユーザが接続する場合、先に接続する2人は利用率が50%であるLNS−BとLNS−Cを選択する。LNS−BとLNS−Cはまだ新しいIPアドレスが払い出される。この時点で3つの接続先LNS候補の利用率は67%となるため、残る3人は3つの接続先LNS候補に1人ずつ接続される。このとき、IPアドレス利用状況リストはLNS−Aが使用中のエントリ3つ、LNS−BとLNS−Cが使用中のエントリ3つと未使用のエントリ1つになる(506)。
【0060】
続けて接続中の9人のユーザが全てセッションを切断し、別の3人のユーザが接続を行う場合、9人のユーザがセッションを切断した時点で3つの接続先LNS候補は全て利用率が0%となるため、3人のユーザは3つの接続先LNS候補に1人ずつ接続される。LNS−BとLNS−Cはまだ新しいIPアドレスが払い出される。このとき、IPアドレス利用状況リストはLNS−Aが使用中のエントリ1つと未使用のエントリ2つ、LNS−BとLNS−Cが使用中のエントリ1つと未使用のエントリ4つになる(507)。
【0061】
続けてさらに2人のユーザが接続する場合、利用率が20%であるLNS−BとLNS−Cを選択する。このとき、IPアドレス利用状況リストはLNS−Aが使用中のエントリ1つと未使用のエントリ2つ、LNS−Bが使用中のエントリ2つと未使用のエントリ4つになる。LNS−Cは5つのIPアドレスを1度払い出しておりエントリされているため、LNS−CのIPアドレス利用状況リストに新規のエントリは追加されず、使用中のエントリ2つと未使用のエントリ3つとなり利用率は40%となる(508)。
【0062】
続けてさらに2人のユーザが接続する場合、利用率が33%であるLNS−AとLNS−Bを選択する。このとき、IPアドレス利用状況リストはLNS−Aが使用中のエントリ2つと未使用のエントリ1つ、LNS−Bが使用中のエントリ3つと未使用のエントリ4つになる。(509)。
【0063】
上記図5の推移から、本発明の効果によって、接続先LNS選択は起動直後からIPアドレス利用状況リストに新規のIPアドレスが追加されていく段階においては、LACの保持するIPアドレスの利用率はLACが接続するセッション数と強い相関を持ち、セッション数が等しくなるよう接続先LNSを選択する傾向を持つ。
【0064】
時間経過により一定数のユーザの接続・切断が行われると、LACの保持するIPアドレスの利用率が接続先LNS候補のIPアドレスの最大同時払い出し可能数に対する利用率と相関するようになり、各接続先LNS候補のIPアドレスの利用率が等しくなるように接続先LNSを選択する傾向を持つ。結果として、各接続先LNSの分散が均一化され、ユーザの接続に要する時間が短縮化され、接続先LNSの負荷軽減に伴う接続後の帯域改善効果が得られる。
【0065】
図6に接続先LNS候補群から最適なLNSを選択するフローチャートを示す。LACは接続先LNS候補群をRADIUSから受け取った後(601)、候補群の中で未選択かつ最も優先度の高い接続先LNS候補を検索する。(602)。検索結果が存在する場合、検索結果が単数か複数かを確認する(603)。複数とは同一の優先度で候補が複数ある場合を示す。結果が単数であった場合、そのまま接続先LNSとして検索結果を採用し接続要求を送信する(605)。
【0066】
結果が複数であった場合、検索結果の全接続先LNS候補の利用状況を確認する(604)。接続先LNS候補に利用状況が100%でないものが含まれる場合、最も利用状況の閑散な接続先LNS候補を選択し接続要求を送信する(606)。全ての接続先LNS候補の利用状況が100%であった場合、検索結果から無作為に1つの接続先LNSを選択し接続要求を送信する、利用状況が同率の場合の優先度が予め定められている場合はその優先度に従う(607)。接続要求を送信した接続先LNSからの応答が接続許可であった場合、接続先LNS候補の選択を終了しIPアドレス利用状況の編集に移行する。
【0067】
接続拒否であった場合、再度接続先LNS候補群から未選択かつ最も優先度の高い接続先LNS候補を検索する(602)。接続拒否応答が続く場合、未選択の接続先LNS候補がなくなるまで選択を繰り返し、存在しなくなったらユーザに接続不可を送信する(609)。
【0068】
図7にIPアドレスの利用状況リスト編集のフローチャートを示す。LACは接続先LNSとして選択したLNSから応答を受信する(701)。受信後、応答の内容が接続要求であるか切断許可であるかを確認する(702)。接続許可であった場合、さらにその接続許可に含まれるIPアドレスが過去にその接続先LNSから払いだされたことがあり、図4のテーブルに登録済みであるかを確認する(703)。
【0069】
登録済みである場合、該当のIPアドレスの利用状況を「使用中」に変更し、セッションIDを登録する(705)。未登録の場合、該当のIPアドレスをリストに新規に登録した上で利用状況を「使用中」とし、セッションIDを登録する(706)。受信した応答が切断許可である場合、そのセッションは過去に利用状況リストに登録済みなので該当のセッションIDからIPアドレスを特定し利用状況を「未使用」に変更した上でセッションIDを削除する、同時に図5のテーブルも更新する(704)。
【実施例2】
【0070】
図8は接続先LNS候補群を予めLACに登録しておき、ユーザからの接続要求受信時に選択するインターネット接続システムの一実施例を示すブロック構成図である。システムは、ユーザ801と、LAC802と、接続先LNS候補群803とから構成されている。接続先LNS候補群803は、LNS−A804と、LNS−B805と、LNS−C806とから構成されている。
【0071】
ユーザ801は、L2TPクライアントとしてLAC802に対する発呼機能を有するものである。LAC802は、ユーザ801からの発呼を受け、呼が接続要求であった場合予め登録する接続先LNS候補群から接続先LNSの利用状況に応じて最適な接続先LNSを選択しLNS−C806に接続要求を送信し、LNS−C806から接続許可を受けIPアドレス利用状況リストを編集し、接続許可をユーザ801に送信する機能を有するものである。
【0072】
接続先LNS候補群803は、LNS−A804、LNS−B805およびLNS−C806からなり、ユーザ801の所属するISPによって予めLAC802に登録される接続先LNSの候補である。LNS−C806は、接続先LNS候補群803の内利用状況が最も閑散な接続先LNSである。LNS−A804およびLNS−B805は、接続先LNS候補群803の内利用状況がLNS−C806に比べ繁忙な接続先LNSである。
【0073】
ユーザ801がインターネット接続を行う場合、まずLAC802に接続要求を送信する。接続要求を受けたLAC802は、接続を一意に特定するセッションIDを決定した上で予め登録する接続先LNS候補群803の内利用状況が最も閑散な接続先LNSであるLNS−C806に対し接続要求を送信する。接続要求を受けたLNS−C806は、ユーザ801の正当性を確認の後LAC802に対し接続許可およびユーザ801の使用するIPアドレスを送信する。接続許可およびユーザ801の使用するIPアドレスを受信したLAC802は、LNS−CのIPアドレス利用状況リストにセッションIDおよび受信したIPアドレスを登録し、ユーザ801に接続許可およびIPアドレスを送信する。
【0074】
本実施例によれば、現在の接続先LNS選択方式に比べて接続先LNSの分散がより均一化され、ユーザの接続に要する時間が短縮化され、接続先LNSの負荷軽減に伴う接続後の帯域が改善されたインターネット接続サービスを提供することができる。
【0075】
特に本実施例が高い効果を発揮するのは、LACに通知される接続先LNS候補のユーザ収容能力または通信転送能力に有意な差が存在する場合である。また、本実施例による接続先LNSの接続状況の推測の精度が高まるのは、接続先LNSの払い出すIPアドレスのレンジが接続先LNS毎に独立である場合である。この条件は、現在のインターネット接続システムにおいて一般的である。
【符号の説明】
【0076】
101 ユーザ
102 LAC
103 RADIUS
104 接続先LNS候補群
105 LNS−A
106 LNS−B
107 LNS−C
201 ユーザ
202 LAC
203 RADIUS
204 接続先LNS候補群
205 LNS−A
206 LNS−B
207 LNS−C
401−405 IPアドレス利用状況リスト
501−509 接続先LNS選択リスト
801 ユーザ
802 LAC
803 接続先LNS候補群
804 LNS−A
805 LNS−B
806 LNS−C

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLNS装置の識別子とIPアドレスの払い出し状況を管理する記憶部と、
ユーザ端末からの接続要求を受信する第1の送受信部と、
前記LNS装置のIPアドレスの払い出し状況を基に、前記接続要求の転送先となる前記LNS装置を選択する制御部と、
前記接続要求を前記複数のLNS装置の何れかに転送する第2の送受信部とを有し、
前記制御部は前記接続要求を転送したLNS装置から接続許可を受信すると、前記記憶部内の当該接続許可を送信したLNS装置のIPアドレスの払い出し状況を更新することを特徴とするLAC装置。
【請求項2】
請求項1記載のLAC装置であって、
前記記憶部内の前記識別子は、認証サーバから取得するLNS装置情報に基づいて更新され、
前記記憶部内の前記IPアドレスの払い出し状況は、前記接続許可に含まれるIPアドレスに基づいて更新されることを特徴とするLAC装置。
【請求項3】
請求項2記載のLAC装置であって、
前記記憶部内には前記識別子と当該識別子が示すLNS装置が払い出したIPアドレスおよび当該IPアドレスの利用フラグを登録する第1のテーブルと、前記識別子と、前記登録されたIPアドレスの利用率を記憶する第2のテーブルを有し、
前記IPアドレスの利用率を前記IPアドレスの払い出し状況として管理することを特徴とするLAC装置。
【請求項4】
請求項3記載のLAC装置であって、
前記制御部は、
第1のLNS装置から第1の接続許可を受信すると、
前記第1の接続許可に含まれる第1のIPアドレスが前記第1のテーブルに登録されていない場合は新たに登録し、かつ、前記第1のIPアドレスの利用フラグを利用を示す値にし、既に登録されている場合は前記第1のIPアドレスの利用フラグを利用を示す値にし、
前記第1のテーブルに登録した前記第1のLNS装置の識別子を含むレコードを基に前記第2のテーブルの前記第1のLNS装置の識別子と対応付けられたIPアドレスの利用率を更新することを特徴とするLAC装置。
【請求項5】
請求項4記載のLAC装置であって、
前記制御部は、
前記IPアドレスの利用率が最も低いLNS装置が1台の場合は、当該LNS装置を前記接続要求の転送先として選択し、
前記IPアドレスの利用率が最も低いLNS装置が複数ある場合は、予め定められた選択方法に基づいて前記接続要求の転送先となるLNS装置を選択することを特徴とするLAC装置。
【請求項6】
複数のLNS装置の識別子とIPアドレスの払い出し状況を管理し、
ユーザ端末からの接続要求を受信し、
前記LNS装置のIPアドレスの払い出し状況を基に、前記接続要求の転送先となる前記LNS装置を選択し、
前記接続要求を前記複数のLNS装置の何れかに転送し、
前記接続要求を転送したLNS装置から接続許可を受信すると、当該接続許可を送信したLNS装置のIPアドレスの払い出し状況を更新することを特徴とするLAC装置における通信方法。
【請求項7】
請求項6記載のLAC装置における通信方法であって、
前記識別子は、認証サーバから取得するLNS装置情報に基づいて更新され、
前記IPアドレスの払い出し状況は、前記接続許可に含まれるIPアドレスに基づいて更新されることを特徴とするLAC装置における通信方法。
【請求項8】
請求項7記載のLAC装置における通信方法であって、
前記識別子と当該識別子が示すLNSサーバが払い出したIPアドレスおよび当該IPアドレスの利用フラグを登録し、
前記識別子と、前記登録されたIPアドレスの利用率を記憶し、
前記IPアドレスの利用率を前記IPアドレスの払い出し状況として管理することを特徴とするLAC装置における通信方法。
【請求項9】
請求項8記載のLAC装置における通信方法であって、
第1のLNS装置から第1の接続許可を受信すると、
前記第1の接続許可に含まれる第1のIPアドレスが前記LAC装置に登録されていない場合は新たに登録し、かつ、前記第1のIPアドレスの利用フラグを利用を示す値にし、前記LAC装置に既に登録されている場合は前記第1のIPアドレスの利用フラグを利用を示す値にし、
前記登録した前記第1のLNS装置の識別子を基に前記第1のLNS装置の識別子と対応付けられたIPアドレスの利用率を更新することを特徴とするLAC装置における通信方法。
【請求項10】
請求項9記載のLAC装置における通信方法であって、
前記IPアドレスの利用率が最も低いLNS装置が1台の場合は、当該LNS装置を前記接続要求の転送先として選択し、
前記IPアドレスの利用率が最も低いLNS装置が複数ある場合は、予め定められた選択方法に基づいて前記接続要求の転送先となるLNS装置を選択することを特徴とするLAC装置における通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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