説明

接続端子及びその圧着工具

【課題】 簡易に所定の圧着強度で電線を圧着接続することができる接続端子を得る。
【解決手段】 被覆電線を先端の被覆を剥き、芯線部を芯線圧着部13に挿入し、手動圧着工具31を用いて、芯線圧着部13の断面積が小さくなるように外側からかしめ付けると、圧着部13a、13bは芯線部を堅固に固定し、同時にレバー13dは圧着片13a側に伸びて鉤部13eが溝部13cに噛み込む。この噛み込みは芯線圧着部13の外形が小さくなるほど、鉤部13eは外側の溝部13cにラチェット式に移動してゆき、芯線圧着部13の変形が復元しないように、圧着片13a、13b同士の関係を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の先端に取り付けるための接続端子及びその圧着工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、作業現場において電線に接続端子を圧着するには、専用の接続端子を用いて手動圧着工具により実施している。そのための接続端子1には、図7に示すように前端を接続部2とし後端に電線を圧着するための圧着部を有しており、芯線部を圧着するための両側から圧着片を折曲して眼鏡状に形成した芯線圧着部3と、その後方に電線の被覆部を固定するための両側の圧着片を円形に曲折して一部を重ね合わせた被覆圧着部4が設けられている。
【0003】
この圧着部3、4に、先端の被覆を剥いだ電線5の芯線部と被覆部とを挿入し、手動圧着工具により芯線圧着部3と被覆圧着部4とを、それぞれ芯線部と被覆部にかしめることにより、図8に示すように電線5を接続端子1に固定することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述の現場作業は、専用の機械設備を用いることができないために作業者の経験に頼るところが大きく、個人差があって均一の電気的特性を得ることが困難である。特に、夜間における作業では、十分な照明がない場所での作業となることもあって、その傾向が著しい。
【0005】
また、圧着接続後においても、検査装置により接続状態の電気的な特性の検査をすることが困難なため、圧着規格を満足しているかどうかの判断が十分にできない。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、不慣れな作業者であっても同じように確実な圧着が可能で特性を得ることができ、更には圧着状態を目視により確認し得る接続端子を提供することにある。
【0007】
また本発明の他の目的は、確実な圧着作業をなし得る接続端子用圧着工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る接続端子の技術的特徴は、相手側接続端子と接続する接続部と、電線を固定するための圧着部とを有する接続端子において、前記圧着部において、両側の圧着片を中央に向けて円弧状に弯曲し中央部で付き合わせた形状とし、片側の圧着片の表面には長手方向に複数の溝部を刻設し、他方の圧着片から前記長手方向と直交する方向にアーム部を切り出し、該アーム部の先端に下側を向く鉤部を形成し、該鉤部を前記溝部に係合するようにしたことにある。
【0009】
また、本発明に係る接続端子用圧着工具の技術的特徴は、両側の圧着片をかしめるための開閉自在のアンビルとクリンパとを有する鋏状の工具であり、前記クリンパには前記圧着片の一方から切り出したアーム部を収納する収容部を有し、圧着に際して前記アンビルとクリンパを閉止して前記両側の圧着片をかしめると共に、前記アーム部を相手側圧着片側に伸長し前記アーム部の先端下側に設けた鉤部を前記他方の圧着片に設けた溝部に係止させることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る接続端子及びその圧着工具によれば、不慣れな作業者でも、均一かつ確実に電線を圧着接続することができ、その確認を目視により可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を図1〜図6に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施例における接続端子の斜視図を示しており、接続端子11は導電金属板を打ち抜き、折曲して形成されている。接続端子11の前端部は、相手側接続端子の舌片状の接続端を受け入れる例えば箱体状の接続部12とされ、後端部には電線を接続するための芯線圧着部13と被覆圧着部14が形成されている。
【0012】
芯線圧着部13は図2に示すように、両側の圧着片13a、13bを立ち上げた上で、内側に円弧状に屈曲され先端部同士が合掌状に付き合わされている。そして、一方の圧着片13aの表面には長手方向に複数の溝部13cが形成されている。そして、他方の圧着片13bには切り込みにより設けられたレバー13dが長手方向と直交する水平方向に形成され、このレバー13dの先端には鉤部13eが下向きに形成されており、溝部13cに鉤部13eが噛み込むようにされている。
【0013】
被覆圧着部14においても同様に、両側の圧着片14a、14bが芯線圧着部13と同様に内側に屈曲されて突き合わされ、レバー14dの鉤部14eが圧着片14aに設けられた溝部14cに噛み込むようにされている。
【0014】
電線を接続する際には、図3に示すように従来例と同様に被覆電線21の先端の被覆を剥き、芯線部22を芯線圧着部13に、被覆部23を被覆圧着部14に挿入する。この状態において、図4に示すような手動圧着工具31を用いて、芯線圧着部13及び被覆圧着部14の順に圧着片13a、13b及び14a、14bをかしめて、芯線部22及び被覆部23を圧着固定する。
【0015】
手動圧着工具31は圧着部の大きさなどの関係から、芯線圧着部13用と被覆圧着部14用にそれぞれ別個とされている。例えば、芯線圧着部13用の手動圧着工具31は握持部32を有する鋏み状とされ、先端にアンビル33とクリンパ34を有し、アンビル33とクリンパ34は開閉自在とされている。
【0016】
アンビル33は芯線圧着部13の下面を押さえるための曲率半径の大きな略円弧状とされ、クリンパ34は芯線圧着部13の圧着片13a、13bを上方から押さえるために、2つの円弧を眼鏡状に並列したような形状とされている。また、クリンパ34の内側には横方向に圧着片13bから延出されたレバー13dを変形しないように収納部34aが設けられ、レバー13dは単に上方から押さえ付けるようにされている。
【0017】
この圧着工具31のアンビル33とクリンパ34により、図5に示すように芯線部22を挿し込んだ芯線圧着部13の圧着片13a、13bを押さえ付け、芯線圧着部13の断面積が小さくなるように外側からかしめ付けると、図6に示すように芯線圧着部13は芯線部22を堅固に固定することになる。同時に、レバー13dは圧着片13a側に伸びて鉤部13eが溝部13cに噛み込む。
【0018】
この噛み込みは芯線圧着部13の外形が小さくなるほど、鉤部13eは外側の溝部13cにラチェット式に移動してゆく。そして、この噛み込みは芯線圧着部13の変形が復元しないように、圧着片13a、13b同士の関係を維持すると共に、鉤部13eの溝部13cに対する係合位置によって、芯線圧着部13が正常な締付力により機能しているかどうかを目視で判断することができる。
【0019】
一方、被覆圧着部14においても、同様に圧着を行うことができる。この場合の手動圧着工具の構造は、芯線圧着部13用とほぼ同様の構造であるが、被覆圧着部14の大きさが芯線圧着部13と異なるので、アンビル33、クリンパ34の大きさが異なっている。また、同じ手動圧着工具31において、例えば回動の中心部に芯線圧着部用、先端側に被覆圧着部用を設けることもできる。
【0020】
なお上述の実施例においては、芯線圧着部13、被覆圧着部14も共にレバー13d、14d、溝部13c、14cを有するようにしたが、より重要な芯線圧着部13のみに設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例の接続端子の斜視図である。
【図2】圧着部の断面図である。
【図3】被覆を剥離した状態の電線の斜視図である。
【図4】圧着工具の斜視図である。
【図5】圧着工具により圧着の説明図である。
【図6】圧着部の圧着状態の斜視図である。
【図7】従来の接続端子の斜視図である。
【図8】従来の接続端子に電線を取り付けた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
11 接続端子
12 接続部
13 芯線圧着部
13a、13b、14a、14b 圧着片
13c、14c 溝部
13d、14d レバー
13e、14e 鉤部
21 被覆電線
22 芯線部
23 被覆部
31 手動圧着工具
33 アンビル
34 クリンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側接続端子と接続する接続部と、電線を固定するための圧着部とを有する接続端子において、前記圧着部において、両側の圧着片を中央に向けて円弧状に弯曲し中央部で付き合わせた形状とし、片側の圧着片の表面には長手方向に複数の溝部を刻設し、他方の圧着片から前記長手方向と直交する方向にアーム部を切り出し、該アーム部の先端に下側を向く鉤部を形成し、該鉤部を前記溝部に係合するようにしたことを特徴とする接続端子。
【請求項2】
前記圧着部は前記電線の芯線部を圧着するための芯線圧着部としたことを特徴とする請求項1に記載の接続端子。
【請求項3】
前記芯線圧着部の後方に前記電線の被覆部を圧着するための被覆圧着部を設け、該被覆圧着部は前記芯線圧着部と同じ構成としたことを特徴とする請求項2に記載の接続端子。
【請求項4】
両側の圧着片をかしめるための開閉自在のアンビルとクリンパとを有する鋏状の工具であり、前記クリンパには前記圧着片の一方から切り出したアーム部を収納する収容部を有し、圧着に際して前記アンビルとクリンパを閉止して前記両側の圧着片をかしめると共に、前記アーム部を相手側圧着片側に伸長し前記アーム部の先端下側に設けた鉤部を前記他方の圧着片に設けた溝部に係止させることを特徴とする接続端子用圧着工具。
【請求項5】
前記アンビルとクリンパを前記圧着片の大きさに従って、複数組設けたことを特徴とする請求項4に記載の接続端子用圧着工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−269248(P2006−269248A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85650(P2005−85650)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】