説明

接続装置

【課題】 大きさが相違する電子部品が装着されるソケットに対して、同じ構造の接続ボードおよび保護部材を適用できる接続装置を提供する。
【解決手段】 多数の弾性接点を有する接続ボードに保護部材31が重ねられて使用される。保護部材31は、プレス成形された金属板の表面に絶縁コートが形成されている。保護部材31には、電子部品に設けられた突状の電極と弾性接点とを接続させるための貫通穴37が開口している。また、4箇所に設けられた位置決め領域38には、樹脂層が形成されて位置決め凹部が形成されて、電子部品の電極と嵌合して電子部品を位置決めできるようにしている。保護部材31には4箇所に大きな開口部36が形成されている。どのような大きさの電子部品が装着されても、その電子部品の角部を位置決めする当接部を、開口部36の内部に配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICパッケージなどの電子部品に設けられた複数の突状の電極が接続される弾性接点が設けられた接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1と特許文献2には、底部に複数の突状の電極を有するICパッケージを一時的に保持して検査などを行うための検査装置が開示されている。
【0003】
この検査装置は、ICパッケージが装着されるソケットの底部に、中継基板が支持されており、この中継基板の表面に複数のスパイラル状の弾性接点が配列して設けられている。前記中継基板の表面は保護シートで覆われており、この保護シートに、ICパッケージに設けられたそれぞれの電極を弾性接点に接触させるための複数の貫通穴が形成されている。
【0004】
ICパッケージが装着されていないときは、保護シートが中継基板の表面から離れた位置にあり、保護シートによって異物が弾性接点に接触しにくいように保護されている。ソケットにICパッケージが装着され、ICパッケージが押圧部材で中継基板に向けて押されると、ICパッケージによって保護シートが中継基板に押し付けられ、保護シートに形成された貫通穴を介して、電極が弾性接点に接続される。
【0005】
また、特許文献2には、保護シートに形成された貫通穴の一部が位置決め穴となっており、電極が位置決め穴に嵌合してICパッケージと保護シートとが位置決めされ、その結果、全て電極と弾性接点との対向状態を維持できるようにした検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−134373号公報
【特許文献2】特開2007−329133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の検査装置は、中継基板と保護シートが一種類の大きさのICパッケージにのみに対応する構造であった。そのため、大きさの相違するICパッケージが装着される複数種のソケットのそれぞれに対応させて、複数種類の中継基板と保護シートを製造することが必要であった。
【0008】
また、特許文献2に記載された検査装置は、ICパッケージの一部の電極が保護シートの位置決め穴に嵌合して位置決めされるが、ICパッケージを押圧する押圧力が、位置決め穴と外れた位置に作用すると、上方からの押圧力によってICパッケージに必要以上に大きい撓みが作用するおそれがあった。また保護シートや中継基板にも歪を与えやすくなり、電極と弾性接点との接触信頼性が低下する心配があった。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、大きさの異なる複数種類の電子部品であっても、位置決めして接続ボードと導通させることができる接続装置を提供することを目的としている。
【0010】
また、本発明は、押圧部材の押圧力で電子部品を接続ボードに押し付けたときに、電子部品や接続ボードに歪が生じにくくなり、電極と弾性接点との接続の信頼性を高めることができる接続装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、底部に複数の突状の電極を有する電子部品が設置される接続装置において、
表面に前記電極に対向する複数の弾性接点を有する接続ボードと、前記接続ボードの前記表面に接近し離反できるように支持された保護部材と、前記保護部材を前記表面から離す向きに付勢する付勢部材とが設けられており、
前記保護部材に、一部の前記電極が嵌合する位置決め凹部と、他の前記電極を前記弾性接点に接触させる複数の貫通穴と、前記電子部品の側部を位置決めする当接部に対向する複数の開口部と、が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の接続装置は、電子部品を位置決めする当接部と対向する部分で、保護部材に開口部が形成されている。当接部を接続ボードに接近して配置することができあるいは当接部を開口部の内部に延びるように配置することができるため、当接部によって、電子部品を、電極が接続ボードの弾性接点に確実に当たる位置まで案内して位置決めすることが可能になる。
【0013】
本発明は、前記電極および前記弾性接点が、互いに直交する向きに並んで設けられており、前記位置決め凹部は、異なる大きさの電子部品が設置されたときに、それぞれの電子部品の前記電極と嵌合できるように、いずれかの方向に向けて複数並んで設けられている。
【0014】
また、本発明では、前記開口部は、異なる大きさの電子部品のそれぞれの側部に対向する大きさに形成されている。
【0015】
上記接続装置では、大きさが相違する電子部品が装着される接続装置に対して、接続ボードと保護部材を共通の部品として使用することが可能である。
【0016】
本発明は、前記開口部は、前記電子部品の4つの角部のそれぞれに対向する位置に形成されているものが好ましい。
【0017】
この場合、電子部品において角部で交叉する側部を当接部材に当接させて、電子部品を精度良く位置決めすることが可能になる。
【0018】
本発明は、前記位置決め凹部は、前記開口部の縁部に沿って設けられているものが好ましい。
【0019】
例えば、保護部材に合成樹脂を固着させて前記位置決め凹部を形成する構造を採用する場合、位置決め凹部を開口部の縁部に沿って設けることによって、合成樹脂を固着させる工程が容易になる。
【0020】
本発明は、底部に複数の突状の電極を有する電子部品が設置される接続装置において、
表面に前記電極に対向する複数の弾性接点を有する接続ボードと、前記接続ボードの前記表面に接近し離反できるように支持された保護部材と、前記保護部材を前記表面から離す向きに付勢する付勢部材とが設けられ、前記電極および前記弾性接点が、互いに直交する向きに並んでおり、
前記保護部材に、一部の前記電極が嵌合する位置決め凹部を複数有する位置決め領域と、他の前記電極を前記弾性接点に接触させる複数の貫通穴とが設けられており、前記位置決め領域は、前記電極および前記弾性接点が並ぶ第1の方向に向けて細長く形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の接続装置は、位置決め領域を細長く形成しておくことで、異なる大きさの電子部品を同じ位置決め領域で位置決めできるようになり、大きさが相違する電子部品が装着される接続装置に対して、接続ボードと保護部材を共通の部品として使用することが可能となる。
【0022】
本発明は、それぞれの前記位置決め領域で、前記第1の方向に並ぶ前記位置決め凹部の数が、前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ前記位置決め凹部の数よりも多いものとなる。
【0023】
さらに本発明は、前記位置決め領域が、前記第1の方向に間隔を空けて形成されていることが好ましい。
【0024】
上記構成では、大きさの相違する電子部品を、第1の方向に対向する位置決め領域によって、確実に位置決めできるようになる。
【0025】
本発明は、底部に複数の突状の電極を有する電子部品が設置される接続装置において、
表面に前記電極に対向する複数の弾性接点を有する接続ボードと、前記接続ボードの前記表面に接近し離反できるように支持された保護部材と、前記保護部材を前記表面から離す向きに付勢する付勢部材と、前記電子部品を前記接続ボードに押圧する押圧部材とが設けられており、
前記保護部材に、一部の前記電極が嵌合する位置決め凹部と、他の前記電極を前記弾性接点に接触させる複数の貫通穴とが形成されており、前記押圧部材は前記位置決め凹部と対向する位置で前記電子部品を押圧することを特徴とするものである。
【0026】
本発明の接続装置は、押圧部材の押圧力が電極と位置決め凹部との嵌合部に作用するため、一部の電極が位置決め凹部で支持されている電子部品に歪みが生じにくくなり、さらに接続ボードにも歪みが生じにくくなって、複数の電極と複数の弾性接点を個別に接続させやすくなる。
【0027】
この場合も、前記電極および前記弾性接点は、互いに直交する向きに並んで設けられており、前記位置決め凹部は、異なる大きさの電子部品が設置されたときに、それぞれの電子部品の前記電極と嵌合できるように、いずれかの方向に向けて複数並んで形成されており、前記押圧部材は、異なる大きさの電子部品のいずれであっても押圧できる位置に設けられているものが好ましい。
【0028】
本発明は、前記位置決め凹部の底部に、前記位置決め凹部に嵌合した前記電極を、前記弾性接点に接触させる導通穴が形成されているものとして構成できる。
【0029】
上記構成では、位置決め凹部に位置決めされている電極であっても、導通穴を解して弾性接点と接触させることができる。
【0030】
ただし、本発明は、位置決め凹部に導通穴が形成されておらず、位置決め凹部で位置決めされる電極が弾性接点と導通されないものであってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、同じ接続ボードおよび保護シートを、大きさが相違する電子部品が装着される接続装置に使用でき、大きさが相違する電子部品に合わせて複数種の接続ボードおよび保護シートを製造することが不要になる。
【0032】
また、本発明は、押圧部材で電子部品を接続ボードに押し付けたときに、電子部品や保護シートさらには接続ボードに大きな歪みを与えにくくなり、複数の電極と弾性接点との接続を確実に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の接続装置のソケットおよび接続ボードと保護部材を示す斜視図、
【図2】図1に示すソケットを斜め下から見た斜視図、
【図3】接続装置のソケットおよび接続ボードと保護部材を示す断面図、
【図4】接続装置のソケットおよび接続ボードと保護部材ならびにマザーボードを示す部分拡大断面図、
【図5】保護部材の平面図、
【図6】(A)(B)は、保護シートに設けられた位置決め領域と貫通穴を拡大して示す保護部材の部分斜視図、
【図7】電極の位置決め、および電極と弾性接点との接続状態を示す拡大断面図、
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に示す接続装置1は、電子部品であるICパッケージ50が装着されて、ICパッケージの耐環境試験や信頼性試験などを行うものである。図4に示すように、ICパッケージ50は、所定の厚さ寸法で四角形状に形成されたパッケージ本体51を有しており、このパッケージ本体51の内部にICベアチップなどが封入されている。パッケージ本体51は、4つの側部(側面)52を有しており、それぞれの側部52は、4箇所の角部53で交叉している。
【0035】
パッケージ本体51の底部(底面)54には、複数の突状の電極55が設けられており、それぞれの電極がICベアチップ内の回路に接続されている。図7に示すように、それぞれの電極55は球状端子であり、パッケージ本体51の底部54において、第1の方向であるX方向と、前記第1の方向と直交する第2の方向であるY方向へ一定のピッチで配列している。
【0036】
図1と図3に示すように、接続装置1は、ソケット組立体10とボード組立体20とが組み合わされて構成されている。ボード組立体20は、接続ボード21と、接続ボード21の上側に対向する上側保護部材31と、接続ボード21の下側に対向する下側保護部材41とを有している。
【0037】
図1ないし図3に示すように、ソケット組立体10は、ICパッケージ50を保持するソケット本体2と、このソケット本体2に対して上下方向(Z方向)へ摺動自在に支持された可動枠3とを有している。可動枠3は、バネ部材によって、ソケット本体2から離れるように上方へ向けて付勢されている。図1ないし図3は、可動枠3が、バネ部材の弾性力に対抗して、強制的に下降させられた状態を示している。図1ないし図3に示す状態から、可動枠3を下降させている強制力を解除すると、バネ部材の付勢力によって、可動枠3がソケット本体2を摺動して上方へ移動する。
【0038】
図2と図3に示すように、ソケット本体2の底面2aは平面形状であり、その中央部の四角形状の領域に、上方に向けて窪むボード収納凹部4が形成されている。ボード収納凹部4の内底面4aは前記底面2aと平行な平面である。ボード収納凹部4の内部には、前記内底面4aから下向きに規制突起5が一体に形成されている。規制突起5は、四角形状のボード収納凹部4の4つ角部の内側に設けられており、それぞれの規制突起5の底面である規制面5aは、底面2aと平行な平面上に位置している。図3に示すように、3個の規制突起5には、規制面5aからさらに下向きに突出する円柱状の凸部6が一体に形成されている。
【0039】
図2ないし図4に示すように、ボード収納凹部4の内底面4aの中央部には、ソケット本体2を上下に貫通する貫通部4bが形成されている。貫通部4bの4つの角部には、それぞれ当接部7が一体に形成されている。当接部7は、内底面4aよりも下側に突出しており、図3と図4に示すように、当接部7の下端面7bは、規制突起5の底面である規制面5aと同一平面上に位置している。
【0040】
4箇所に設けられたそれぞれの当接部7の内側には、位置決め当接面7aが形成されている。それぞれの当接部7に形成された当接面7aは、直交して上下方向(Z方向)に延びる平面である。当接面7aは、当接部7の内側から内底面4aよりも上方の領域まで連続して形成されている。4箇所の当接部7の当接面7aによって、ICパッケージ50の側部52の形状に対応するパッケージ位置決め部が形成されている。図2ないし図4に示すように、ソケット本体2の内部には、それぞれの当接面7aと連続し、上方に向けてX方向とY方向に徐々に広がる案内テーパ面7cが一体に形成されている。
【0041】
図4に示すように、ICパッケージ50がソケット本体2に対して上方から挿入されると、パッケージ本体51の角部53で交叉する側部52が、前記案内テーパ面7cによって案内されて、角部53で交叉する側部52が、4箇所の当接部7の当接面7aに導かれてX−Y方向に位置決めされる。
【0042】
図1と図3に示すように、ソケット本体2の内部には、一対の押圧アーム11がX方向に間隔を空けて配置されている。押圧アーム11は、その下端部が支持軸12に回動自在に支持されている。支持軸12は、ソケット本体2に短い距離だけ上下できるように支持されている。押圧アーム11には、X方向に延びる長穴11aが形成されており、この長穴11aに付勢軸13が回動自在に挿入されて、付勢軸13は可動枠3に回動自在に支持されている。可動枠3を下降させている強制力が解除され、バネ部材の力で可動枠3が持ち上げられると、支持軸12が少しだけ持ち上げられ、その後、右側の押圧アーム11が反時計方向へ回動させられ、左側の押圧アーム11が時計方向へ回動させられる。
【0043】
それぞれの押圧アーム11には、押圧部材15が支持されている。押圧部材15の上端部は連結軸16に回動自在に支持されており、この連結軸16は、押圧アーム11の上端部に固定されている。それぞれの押圧部材15の下端に、ICパッケージ50を押圧する押圧部15aが形成されている。
【0044】
図3に示すように、それぞれの押圧部材15には、X方向の外側に突出する姿勢制御突部15bが一体に形成されている。ソケット本体2には、解除カム2cが設けられている。図3に示すように、可動枠3が押し下げられているときは、姿勢制御突起15bが解除カム2cに当たり、押圧部材15が、図3において実線で示す押圧解除姿勢にある。
【0045】
可動枠3がバネ部材の付勢力で上昇すると、それぞれの付勢軸13が持ち上げられて、右側の押圧アーム11が反時計方向へ回動させられ、左側の押圧アーム11が時計方向へ回動させられる。このとき、押圧アーム11に設けられた押圧カム11bによって姿勢制御突起15bが押されて、押圧部材15は、図3において鎖線で示す押圧姿勢となる。そして、可動枠3を上向きに付勢するバネ部材の弾性力によって、押圧部材15が当接面7aに位置決めされたICパッケージ50の上面を下向きに押圧する。
【0046】
ソケット組立体10の下部に取り付けられるボード組立体20は接続ボード21を有している。接続ボード21には、基板22が設けられており、この基板22は比較的剛性が高い硬質基板である。図1に示すように、基板22の3つの角部の内側に装着穴22aが開口している。図4に示すように、それぞれの装着穴22aは、ソケット本体2の底面の3箇所から突出している凸部6に挿通されている。装着穴22aは凸部6の外周面にほとんど隙間無く挿通されて、3個の凸部6により、接続ボード21がX方向とY方向に位置決めされている。好ましくは、装着穴22aの内径が凸部6の直径よりもやや小さく形成されて、装着穴22aが凸部6に軽く圧入される。図4に示すように、接続ボード21は、規制突起5の底面である規制面5aと当接部7の下端面7bに当たった位置よりも上方へ移動できないように規制されている。
【0047】
図4に示すように、接続ボード21の基板22の上面には、複数の上側弾性接点23が設けられており、下面には複数の下側弾性接点24が設けられている。図1に示すように、上側弾性接点23は、基板22の上面において、所定面積の四角の領域内でX方向とY方向に一定のピッチで配列しており、その配列ピッチは、図4に示すICパッケージ50の底部54に設けられた複数の突状の電極55の配列ピッチと一致している。
【0048】
図7には、基板22と上側弾性接点23の詳細が示されている。上側弾性接点23は、導電性の弾性材料によって、外側に位置する基端23aから内側に位置する先端23bに向けて螺旋状に形成されている。また、上側弾性接点23は、先端23bが基板22から離れる向きに立体形状に形成されている。それぞれの上側弾性接点23の基端23aは、合成樹脂フィルムで形成された絶縁性の支持シート25に支持されている。支持シート25が、基板22の上面に設置されて、上側弾性接点23の基端23aが、接続層26を介して、基板22の表面に設けられた上側導電層27に導通されて接続されている。接続層26は、導電性接着剤層または半田層である。
【0049】
基板22には上下に貫通するスルーホール22bが形成され、スルーホール22bの内周面に接続導電層28が形成されている。この接続導電層28によって、基板22の上面に設けられた上側導電層27と、基板22の下面に設けられた下側導電層とが導通されている。基板22の下面に設けられている下側弾性接点24は、上側弾性接点23と同じ構造で、上側弾性接点23と上下に対象な向きに配置されている。下側弾性接点は、上側弾性接点23と同様に支持シート25に支持されて、前記下側導電層に接続されている。
【0050】
接続ボード21の上側に配置された上側保護部材31は、薄い金属板でプレス成形されている。上側保護部材31は、所定の形状に打ち抜かれた後にその表面に絶縁性のコーティングが施され、少なくもと表面が絶縁性となっている。
【0051】
図1と図5に示すように、上側保護部材31の3箇所に摺動穴32が形成されている。図1と図3に示すように、接続ボード21の基板22には、上下に延びる摺動ピン33が固定されており、前記摺動穴32が摺動ピン33に摺動自在に挿通されている。摺動穴32と摺動ピン33との摺動により、上側保護部材31が接続ボード21に接近し離反する方向へ摺動自在であるとともに、上側保護部材31が接続ボード21に対してX方向とY方向へ位置ずれしないように位置決めされている。なお、摺動ピン33の上端には抜け止め用のリングが装着されており、保護部材31は、摺動ピン33から外れることがない。
【0052】
図2と図5に示すように、上側保護部材31にはその4辺に沿って付勢長穴34が形成されている。付勢長穴34は6箇所に形成されている。図1と図3に示すように、接続ボード21には、その4辺の内側に付勢部材として上向きに延びる板ばね29aが設けられている。板ばね29aは6箇所に設けられており、それぞれの先部が付勢長穴34に摺動自在に挿入されている。6箇所に設けられた板ばね29aによって、上側保護部材31が接続ボード21に対して常に上向きに付勢されている。
【0053】
3箇所に設けられた前記摺動ピン33および6箇所に設けられた板ばね29aによって、上側保護部材31は、接続ボード21と水平な位置関係を保ちながら、接続ボード21に接近し離反する向きに移動可能であり、また接続ボード21から離れる向きに付勢されている。
【0054】
図1と図5に示すように、上側保護部材31には、3箇所の角部を切り欠いた逃げ凹部35が形成されている。図4に示すように、ボード組立体20がソケット組立体10の下部に装着されたときに、ソケット本体2に設けられた規制突起5が逃げ凹部35の内部に位置し、規制突起5および凸部6が上側保護部材31と当たらないようになっている。
【0055】
図1と図5に示すように、上側保護部材31には、第1の方向であるX方向と第2の方向であるY方向に間隔を空けた4箇所に、表裏に貫通する開口部36が形成されている。図4に示すように、ボード組立体20がソケット組立体10の底部に取り付けられたときに、ソケット本体2の内底面4aから下向きに突出している当接部7が、前記開口部36の内部に位置する。よって、ソケット本体2の貫通部4bに装着されるICパッケージ50は、当接部7に形成された当接面7aによって位置決めされながら、接続ボード21に導通できる位置まで、下向きに案内される。
【0056】
図1に示すように、4箇所に形成されている前記開口部36の開口面積は広く、それぞれの開口部36に、接続ボード21に設けられた多くの上側弾性接点23が対向している。そのため、ボード組立体20は、異なる大きさのICパッケージが装着されるソケット組立体10に対して共通に使用できるようになっている。
【0057】
図5には、大きさが相違する3種類のICパッケージ50の外形が(a)、(b)、(c)で示されている。(a)、(b)、(c)で示されるいずれの大きさのICパッケージ50であっても、パッケージ本体51の4つの角部53が、4箇所の開口部36のそれぞれに対向できる。ソケット本体2は、ICパッケージ50の大きさに応じて当接部7の位置が(a)、(b)、(c)の寸法の角部53に合うように設定されるが、当接部7がどの位置に設けられても、この当接部7を開口部36の内部に配置することが可能である。したがって、ICパッケージの寸法に応じて作成された複数種類のソケット本体2に対して、同じボード組立体20を共通に使用することが可能となる。
【0058】
図1と図5および図6に示すように、保護部材31には表裏を貫通する多数の貫通穴37が設けられている。貫通穴37は、接続ボード21の上面に設けられた多数の上側弾性接点23と同じピッチで、X方向とY方向へ等ピッチで配列している。接続ボード21では、適用されるICパッケージ50のうちの最も大きい外形(a)のICパッケージ50に設けられた全ての電極55に対向できるように、上側弾性接点23が広い領域にわたって設けられている。また、保護部材31に設けられた貫通穴37も、全ての上側弾性接点23に対向できる領域に配置されている。
【0059】
すなわち、接続ボード21の上面に多数設けられた上側弾性接点23は、角部に位置する複数個が、上側保護部材31の開口部36に対向し、他の上側弾性接点23が、全て上側保護部材31の貫通穴37に対向している。
【0060】
図6と図7に示すように、個々の貫通穴37は円形であり、ICパッケージ50の電極55と上側弾性接点23とが接触しているときに、電極55と上側弾性接点23のいずれにも当接しないように十分に大きい直径寸法で形成されている。前述のように、上側保護部材31は金属板で形成されているが、その上下の両表面と貫通穴37の内周面が絶縁コートで覆われており、電極55または上側弾性接点23が上側保護部材31に当たっても、電気的に短絡状態となることはない。
【0061】
図1と図5に示すように、上側保護部材31には4箇所に位置決め領域38が設けられている。位置決め領域38は、第1の方向であるX方向と第2の方向であるY方向のそれぞれの方向に間隔を空けて配置されている。
【0062】
図6(A)に示すように、位置決め領域38を形成する過程では、金属製の上側保護部材31の一部が成形型の内部に保持されて、成形型内に溶融樹脂が射出され、上側保護部材31の上側と下側に樹脂層45が形成される。上側と下側の樹脂層45は、貫通穴37の内部を通じて連続している。この成形の際に、樹脂層45に表側から窪む複数の位置決め凹部46が形成される。位置決め凹部46は、貫通穴37と重なる位置に形成されている。位置決め凹部46は、底面46aとテーパ面46bとを有している。底面46aは正方形であり、テーパ面46bは、X方向とY方向の双方に対向して形成され、その対向間隔が、上側保護部材31から離れるにしたがって広がっている。
【0063】
図6(A)に示すように、位置決め領域38は、それぞれの開口部36の縁部に沿って設けられるため、前記成形型の設計が容易であり、例えば開口部36側の湯口から溶融樹脂を射出することも可能であって、樹脂層45を正確な形状と寸法となるように成形しやすい。
【0064】
前記樹脂層45および位置決め凹部46が形成された後に、図6(B)に示すように、位置決め凹部46の底面46aを貫通する導通穴47が加工される。図7に示すように、導通穴47は、貫通穴37よりも小さい直径の円形の穴である。また、導通穴47の内径は、球状の電極55の直径よりも小さい。一箇所の位置決め領域38では、位置決め凹部46と導通穴47が、X方向へ7個並んでおり、Y方向に2個並んで、合計14個形成されている。
【0065】
図7に示すように、ICパッケージ50が上側保護部材31に押し付けられると、球状の電極55が、位置決め凹部46のテーパ面46bに当たって、上側保護部材31に対してICパッケージ50が位置決めされる。あるいは、球状の電極55が、導通穴47の外周縁が縁部に当たって位置決めされる。互いに位置決めされたICパッケージ50と上側保護部材31が接続ボード21に向けて下降させられると、上側弾性接点23の上部が導通穴47の内部に入り込み、位置決め凹部46または導通穴47で位置決めされた球状の電極55と上側弾性接点23とが接触する。また位置決め領域38以外では、貫通穴37が設けられ部分で、電極55と上側弾性接点23とが接触する。
【0066】
それぞれの位置決め領域38は、第1の方向であるX方向の寸法が、第2の方向であるY方向の寸法よりも長い細長形状の領域である。そのため、ボード組立体20の上に、図5に示すような、(a)、(b)、(c)のどの大きさのICパッケージ50が装着されても、位置決め領域38において、ICパッケージ50の底部の電極55を、位置決め凹部46のテーパ面46bまたは導通穴47で位置決めすることができる。
【0067】
図5には、押圧部材15の下端の押圧部15aによってICパッケージ50が下向きに押圧される押圧領域(i)を鎖線で示している。それぞれの位置決め領域38は、前記押圧領域(i)の真下に位置し、位置決め領域38は、押圧領域(i)よりX方向の両側に向けて長い領域に形成されている。そのため、(a)、(b)、(c)のどの大きさのICパッケージ50が装着されたときでも、位置決め領域38の上側において、押圧部材15でICパッケージ50が下向きに押圧される。
【0068】
図1と図3に示すように、ボード組立体20では、接続ボード21の下側に下側保護部材41が設けられている。下側保護部材41は、上側保護部材31の開口部36と位置決め領域38を無くしたものと同じ構造である。
【0069】
図3に示すように、下側保護部材41は、摺動ピン33に挿通されているとともに、接続ボード21の下面に設けられた6個の板ばね29bによって下向きに付勢されている。
【0070】
図4には、接続装置1が取り付けられるマザーボード60が示されている。マザーボード60の上面には、多数の外部接続端子61が設けられている。外部接続端子61は、接続ボード21の下面に設けられた下側弾性接点24と同じピッチで形成されている。マザーボード60の外部接続端子61は、ICパッケージ50へ電源を供給する電源回路や、所定の動作信号を与える信号生成部、さらにはICパッケージ50の内部回路を検査する検査回路などに通じている。
【0071】
マザーボード60には、ソケット本体2の底面から突出する凸部6が差し込まれる嵌合穴62が形成されている。嵌合穴62は、1つの接続装置1に対して3箇所に形成されている。
【0072】
接続装置1は、ソケット組立体10の底部にボード組立体20が装着されてからマザーボード60に取り付けられる。ボード組立体20がソケット組立体10に組み込まれる前の状態では、図3に示すように、接続ボード21の上方に上側保護部材31が離れて位置し、接続ボード21の下方に下側保護部材41が離れて位置している。そのため、接続ボード21に設けられた上側弾性接点23と下側弾性接点24に直接に物が触れるのを防止しやすい。
【0073】
図4に示すように、ソケット本体2の底部の3箇所から突出している凸部6が、接続ボード21に形成された装着穴22aに挿通されることで、ボード組立体20が、ソケット組立体10の底部に取り付けられる。
【0074】
接続ボード21の基板22は、その上面が、ソケット本体2に形成されている規制突起5の底面の規制面5aおよび当接部7の下端面7bに当たって規制され位置決めされる。凸部6が嵌合穴62に嵌着されると、接続ボード21とマザーボード60とに挟まれた下側保護部材41が板ばね29bの下向きの付勢力に対抗して接続ボード21に押し付けられる。このとき、下側保護部材41に形成された複数の貫通穴を介して、接続ボード21の下側弾性接点24と、マザーボード60の外部接続端子61とが導通させられる。
【0075】
ソケット組立体10およびボード組立体20がマザーボード60の取り付けられると、ICパッケージ50が装着されるまで、図4に示すように、上側保護部材31は接続ボード21よりも上側に離れた位置にある。
【0076】
ソケット組立体10にICパッケージ50を装着するときは、図1ないし図3に示すように、外部からの力で可動枠3を下向きに押す。図3に示すように、可動枠3がソケット本体2に対して下降させられると、右側の押圧アーム11が時計方向へ、左側の押圧アーム11が反時計方向へ回動させられて、押圧部材15,15が、図3に示すように、ソケット本体2の貫通部4bの上に対向しないように側方へ移動して退避姿勢となる。
【0077】
図4に示すように、上方からソケット本体2の内部にICパッケージ50が装着されると、パッケージ本体51の側部52が案内テーパ面7cで案内され、ICパッケージ50の角部53で交叉する側部52が、ソケット本体2の4箇所に設けられた当接部7の内面である当接面7aによって位置決めされる。
【0078】
ICパッケージ50が当接面7aで4箇所で位置決めされた後に、ソケット本体2を押し下げている強制力を解除すると、バネ部材の力で、可動枠3が上昇する。このときの押圧アーム11,11の回動力によって、押圧部材15,15の押圧部15a,15aが、図3において鎖線で示す位置に至り、ICパッケージ50の上面が、押圧部材15,15によって下向きに押される。このときの押圧力は、可動枠3を上昇させる前記バネ部材の付勢力によって発揮される。
【0079】
図5に示すように、押圧部材15,15の押圧部15a,15aによってICパッケージ50が押圧される押圧領域(i)は、位置決め領域38の真上に位置している。図7に示すように、押圧領域(i)の真下において、球状の電極55が、位置決め領域38のテーパ面46bまたは導通穴47の縁部に押し付けられて、それぞれの球状の電極55が位置決めされる。押圧部材15,15の押圧力で、ICパッケージ50と共に上側保護部材31が押し下げられ、位置決め領域38に位置決めされている電極55が導通穴47を介して上側弾性接点23に接触する。位置決め領域38以外では、貫通穴37を介して電極55と上側弾性接点23とが接続される。
【0080】
そして、ICパッケージ50の内部に電力が供給され、また信号が供給されて検査が行われる。
【0081】
押圧部材15,15の押圧力は、図5に示す押圧領域(i)に与えられるため、押圧力がICパッケージ50の電極55から、主に図6に示す樹脂層45に与えられる。押圧力が樹脂層45で受け止められることで、押圧力によってICパッケージ50に過大な曲げ応力が作用したり、上側保護部材31が必要以上に湾曲したり、さらには接続ボード21が湾曲するなどの問題を阻止しやすくなり、全ての電極55と上側弾性接点23との接続信頼性を高めることができる。
【0082】
また、ソケット本体2に設けられた当接部7が、図5に示す(a)、(b)、(c)のどの大きさのICパッケージ50に対応する位置に設けられていたとしても、当接部7を、開口部36に対向させることができ、またどの大きさのICパッケージ50が装着されても、位置決め領域38の樹脂層45に形成された位置決め凹部46によって、電極55を位置決めすることが可能である。よって、異なる大きさのICパッケージ50に合わせて製作される多種のソケット組立体10に対して、同じボード組立体20を装着することができる。
【0083】
なお、上側保護部材31に設けられる位置決め領域38では、図6(A)に示す樹脂層45が形成された後に、図6(B)に示すように、それぞれの位置決め凹部46に導通穴47を開口させているが、導通穴47を形成せず、図6(A)に示す位置決め凹部46によって、電極55を位置決めしてもよい。
【0084】
また、ICパッケージ50の底部に設けられる電極55は、球状に限られず、円錐状などの他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 接続装置
2 ソケット本体
3 可動枠
4 ボード収納凹部
5 規制突起
6 凸部
10 ソケット組立体
11 押圧アーム
15 押圧部材
15a 押圧部
20 ボード組立体
21 接続ボード
22 基板
23 上側弾性接点
24 下側弾性接点
25 支持シート
29a,29b 板ばね
31 上側保護部材
33 摺動ピン
35 逃げ凹部
36 開口部
37 貫通穴
38 位置決め領域
41 下側保護部材
45 樹脂層
46 位置決め凹部
47 導通穴
50 ICパッケージ
51 パッケージ本体
52 側部
53 角部
55 電極
60 マザーボード
61 外部接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に複数の突状の電極を有する電子部品が設置される接続装置において、
表面に前記電極に対向する複数の弾性接点を有する接続ボードと、前記接続ボードの前記表面に接近し離反できるように支持された保護部材と、前記保護部材を前記表面から離す向きに付勢する付勢部材とが設けられており、
前記保護部材に、一部の前記電極が嵌合する位置決め凹部と、他の前記電極を前記弾性接点に接触させる複数の貫通穴と、前記電子部品の側部を位置決めする当接部に対向する複数の開口部と、が形成されていることを特徴とする接続装置。
【請求項2】
前記電極および前記弾性接点が、互いに直交する向きに並んで設けられており、前記位置決め凹部は、異なる大きさの電子部品が設置されたときに、それぞれの電子部品の前記電極と嵌合できるように、いずれかの方向に向けて複数並んで設けられている請求項1記載の接続装置。
【請求項3】
前記開口部は、異なる大きさの電子部品のそれぞれの側部に対向する大きさに形成されている請求項2記載の接続装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記電子部品の4つの角部のそれぞれに対向する位置に形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の接続装置。
【請求項5】
前記位置決め凹部は、前記開口部の縁部に沿って設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載の接続装置。
【請求項6】
底部に複数の突状の電極を有する電子部品が設置される接続装置において、
表面に前記電極に対向する複数の弾性接点を有する接続ボードと、前記接続ボードの前記表面に接近し離反できるように支持された保護部材と、前記保護部材を前記表面から離す向きに付勢する付勢部材とが設けられ、前記電極および前記弾性接点が、互いに直交する向きに並んでおり、
前記保護部材に、一部の前記電極が嵌合する位置決め凹部を複数有する位置決め領域と、他の前記電極を前記弾性接点に接触させる複数の貫通穴とが設けられており、前記位置決め領域は、前記電極および前記弾性接点が並ぶ第1の方向に向けて細長いく形成されていることを特徴とする接続装置。
【請求項7】
それぞれの前記位置決め領域では、前記第1の方向に並ぶ前記位置決め凹部の数が、前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ前記位置決め凹部の数よりも多い請求項6記載の接続装置。
【請求項8】
前記位置決め領域が、前記第1の方向に間隔を空けて形成されている請求項6または7記載の接続装置。
【請求項9】
底部に複数の突状の電極を有する電子部品が設置される接続装置において、
表面に前記電極に対向する複数の弾性接点を有する接続ボードと、前記接続ボードの前記表面に接近し離反できるように支持された保護部材と、前記保護部材を前記表面から離す向きに付勢する付勢部材と、前記電子部品を前記接続ボードに押圧する押圧部材とが設けられており、
前記保護部材に、一部の前記電極が嵌合する位置決め凹部と、他の前記電極を前記弾性接点に接触させる複数の貫通穴とが形成されており、前記押圧部材は前記位置決め凹部と対向する位置で前記電子部品を押圧することを特徴とする接続装置。
【請求項10】
前記電極および前記弾性接点は、互いに直交する向きに並んで設けられており、前記位置決め凹部は、異なる大きさの電子部品が設置されたときに、それぞれの電子部品の前記電極と嵌合できるように、いずれかの方向に向けて複数並んで形成されており、前記押圧部材は、異なる大きさの電子部品のいずれであっても押圧できる位置に設けられている請求項9記載の接続装置。
【請求項11】
前記位置決め凹部の底部に、前記位置決め凹部に嵌合した前記電極を、前記弾性接点に接触させる導通穴が形成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−3423(P2011−3423A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146140(P2009−146140)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】