説明

接触子およびその製造方法

【課題】半導体デバイスの導通検査を繰返し行なってもへたってしまうことを防止することができるとともに、半導体デバイスに磁場の悪影響を及ぼすことを抑制することができる接触子およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の接触子1Aは、ばね部2Aおよび導電部3Aを備えている。ばね部2Aはプローブカード20の配線基板20aの表面上においてセラミックを用いて形成されている。導電部3Aはバンプと対向するばね部2Aの表面2Aaを少なくとも覆うように薄く形成されている。また、その製造方法の特徴の1つとして、ばね部2Aがエアロゾルデポジション法により室温成膜されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触子およびその製造方法に係り、特に、球状やランド状に形成されたバンプ(突起電極)を有する半導体デバイスと電気的に接続を行うプローブカードのばね型プローブ(接触子)を製造するために好適に利用できる接触子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、IC(Integrated Circuit:集積回路)やLSI(Large Scale Integration:素子の集積度が1000個〜10000個のIC)などの半導体デバイスの製造工程においては、製造された半導体デバイスをプローブカードと称される検査用配線板に接続させることによってその半導体デバイスに対する電気信号の入出力検査を行ない、半導体デバイスの不良品をパッケージに組み込んでしまうという無駄を低減させている。
【0003】
ここで、BGA(Ball Grid Array:ボール状格子電極)方式やLGA(Land Grid Array:ランド状格子電極)方式の半導体デバイスを検査するプローブカードにおいては、数十μmの狭ピッチで多数形成された外径数十μmの球状バンプもしくは数十μm幅のランド状バンプと接触させるため、中央を頂部とする外径数十μmの円錐らせん状の接触子が数十μmの狭ピッチで形成されている。
【0004】
従来の接触子101は、図9に示すような3つの主工程を経て製造される。第1工程においては、図9Aに示すように、平らなレジスト膜をパターンニングして円錐状に形成した凸型条部(以下、「レジスト錐」という。)122の表面上にシード膜104およびレジスト膜123を順に形成する。そして、そのレジスト膜123に円錐らせん状の溝123aをパターンニングすることにより、その円錐らせん状の溝123aからシード膜104を露出させる。
【0005】
第2工程においては、図9Bに示すように、円錐らせん状の溝123aから露出したシード膜104をNi−P合金めっきすることにより、円錐らせん状の溝123aに接触子101の本体となる金属製のばね部102を形成する。良好な導通性を得るため、ばね部102の表面にAu膜やCu膜などの導通部(図示せず)を形成しても良い。
【0006】
そして、第3工程においては、図9Cに示すように、ばね部102の形成後にレジスト膜123、シード膜104およびレジスト錐122を順に除去する(特許文献1を参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−50598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の接触子101においては、図9Cに示すように、ばね部102が金属製であったので半導体デバイス(図示せず)の導通検査の昇温時にばね部102のすべり変形が生じやすく、導通検査を繰返し行なうと接触子101が永久変形してへたってしまうという問題があった。
【0009】
また、ばね部102は磁性材料たるNi−Pを用いて形成されているため、ばね部102の周辺に磁界が形成されてしまうという問題があった。そのため、導通検査により接触子101に接触した半導体デバイスに磁場の悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0010】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、半導体デバイスの導通検査を繰返し行なってもへたってしまうことを防止することができるとともに、半導体デバイスに磁場の悪影響を及ぼすことを抑制することができる接触子およびその製造方法を提供することをその目的としている。
【0011】
また、本発明は、ばね部に用いる材料を変更しても従来から用いられている配線基板を変更せずに利用することができる接触子およびその製造方法を提供することを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、本発明の接触子は、その第1の態様として、プローブカードの配線基板の表面上においてセラミックを用いて形成されているばね部と、少なくともバンプと対向するばね部の表面を覆うように導電材料を用いて形成されているとともに、配線基板に形成された配線に接続されている導電部とを備えていることを特徴としている。なお、導電部とは、ばね部の表面に形成されたものだけでなく、後述するばね部の表面に形成された表面側導電部およびその裏面に形成された裏面側導電部を連続形成したもの含む広義の導電部を含む。
【0013】
第1の態様の接触子によれば、接触子のばね部がセラミック製であるため、金属製のばね部を有する従来の接触子と比較して接触子の永久変形を起こし難くすることができるとともに、Ni−Pなどの磁性材料を用いずにばね部を形成することができる。
【0014】
本発明の第2の態様の接触子は、第1の態様の接触子において、ばね部は、バンプ側に突出した立体らせん状に形成されていることを特徴としている。
【0015】
第2の態様の接触子によれば、ばね部の長さを長くすることができるので、他の形状のばね部を有する他の接触子と比較して接触子の永久変形を起こし難くすることができる。
【0016】
本発明の第3の態様の接触子は、第1または第2の態様の接触子において、ばね部は、エアロゾルデポジション法により形成されていることを特徴としている。
【0017】
第3の態様の接触子によれば、室温下においてセラミック製のばね部を成膜することができるので、ばね部の形成時にプローブカードの配線基板や配線に熱的な悪影響を及ぼしてしまうことを防止することができる。
【0018】
本発明の第4の態様の接触子は、第1から第3のいずれか1の態様の接触子において、セラミックは、ジルコニア系セラミックであることを特徴としている。
【0019】
第4の態様の接触子によれば、強度、靭性、耐摩耗性、繰返変形特性などの機械的特性に優れたばね部を形成することができる。
【0020】
本発明の第5の態様の接触子は、第4の態様の接触子において、ジルコニア系セラミックは、イットリア安定化ジルコニアまたはイットリア部分安定化ジルコニアであることを特徴としている。
【0021】
第5の態様の接触子によれば、イットリア安定化ジルコニアまたはイットリア部分安定化ジルコニアはジルコニアにイットリアを固溶させていることから昇降温によるジルコニアの相転移を抑制することができるため、酸化物無添加のジルコニア系セラミックを用いたばね部と比較して、優れた機械的特性を有するばね部を形成することができる。
【0022】
本発明の第6の態様の接触子は、第1から第5のいずれか1の態様の接触子において、導電部は、ばね部の表面側においてNi−PまたはCuにNi−Pを積層させたCu/Ni−P積層金属を用いてめっき形成されていることを特徴としている。
【0023】
第6の態様の接触子によれば、Ni−Pは耐摩耗性に優れているため、導電部がバンプと繰返し接触して導電部が削り取られてしまうことを防止することができる。また、導電部の膜厚はばね部の膜厚と比較して薄く形成することができるため、接触子が原因となって生じる半導体デバイスの磁場の悪影響を最小限に抑制することができる。さらに、Ni−Pの下層にCu層を設けた場合、導電部の耐摩耗性および導電性を向上させることができる。
【0024】
本発明の第7の態様の接触子は、第6の態様の接触子において、導電部は、Crを下層とし、Cuを上層とするCr/Cu積層構造のシード膜を表面に有するばね部の表面上に形成されていることを特徴としている。
【0025】
第7の態様の接触子によれば、下層のCrはセラミック製のばね部と接着性が良いので、導電部がばね部の表面から剥離することを防止することができる。また、上層のCuは導電性が良いので、導電部のめっき形成を容易にすることができる。
【0026】
本発明の第8の態様の接触子は、第6または第7の態様の接触子において、導電部は、ばね部の表面側から電気的に接続されており、ばね部の裏面側においてCuを用いて形成されていることを特徴としている。
【0027】
第8の態様の接触子によれば、Cuはばね部の表面側に形成される導電部に用いられるNi−Pよりも優れた導電性を有しているため、バンプが接触しない裏面側の導電部の導電性を向上させることができる。
【0028】
本発明の第9の態様の接触子は、第1から第8のいずれか1の態様の接触子において、導電部は、Auを用いて形成されている保護膜を導電部の表面に有していることを特徴としている。
【0029】
第9の態様の接触子によれば、導電部の導電性および耐酸化性を向上させることができる。
【0030】
また、前述した目的を達成するため、本発明の接触子の製造方法は、その第1の態様として、プローブカードの配線基板の表面上に第1レジストを錐体状に形成する工程1aと、錐体状の第1レジストの表面に第2レジストを膜状に形成するとともに、第2レジストに対して立体らせん状の溝をパターンニングする工程1bと、第2レジストを表面に有する錐体状の第1レジストにセラミックを噴出して成膜することにより、第2レジストに形成された溝の内部にセラミック製のばね部を形成する工程1cと、ばね部の形成後に第2レジストおよび第1レジストを除去する工程1dと、第2レジストおよび第1レジストの除去後、ばね部の表面および配線基板の表面にシード膜をスパッタ形成する工程1eと、シード膜の表面および配線基板の表面に第3レジストを膜状に形成し、ばね部の表面およびばね部から配線基板に形成された配線までの間の配線基板の表面に形成されたシード膜を露出させるパターンニングを第3レジストに行なう工程1fと、第3レジストから露出したシード膜の表面に導電部をめっき形成する工程1gと、導電部の形成後に第3レジストを除去するとともに、第3レジストの除去により露出したシード膜を除去する工程1hとを備えていることを特徴としている。
【0031】
第1の態様の接触子の製造方法によれば、セラミックを用いてばね部を形成しているため、金属を用いてばね部を形成していた従来の接触子と比較して永久変形を起こし難い接触子を製造することができるとともに、Ni−Pなどの磁性材料を用いずにばね部を形成することができる。
【0032】
本発明の第2の態様に係る接触子の製造方法は、プローブカードの配線基板の表面上に第1レジストを錐体状に形成する工程2aと、第1レジストの表面および配線基板の表面に裏面側シード膜をスパッタ形成する工程2bと、裏面側シード膜の表面に第2レジストを膜状に形成するとともに、第2レジストに対して立体らせん状の溝をパターンニングする工程2cと、第2レジストの溝から露出した裏面側シード膜に裏面側導電部を膜状に形成する工程2dと、裏面側導電部の表面および第2レジストの表面にセラミックを噴出して成膜することにより、第2レジストの溝から露出した裏面側導電部の表面にセラミック製のばね部を形成する工程2eと、ばね部の形成後に第2レジストを除去する工程2fと、第2レジストの除去により露出した裏面側シード膜を除去する工程2gと、裏面側シード膜の除去後、第1レジストを除去する工程2hと、第1レジストの除去後、裏面側導電部の裏面側に形成された裏面側シード膜に電気的に接続するようにばね部の表面および配線基板の表面に表面側シード膜をスパッタ形成する工程2iと、配線基板の表面上に形成された表面側シード膜に第3レジストを膜状に形成する工程2jと、第3レジストの形成後に露出している表面側シード膜に表面側導電部を形成する工程2kと、表面側導電部の形成後、第3レジストを除去するとともに第3レジストの除去により露出する表面側シード膜を除去する工程2lとを備えていることを特徴としている。
【0033】
第2の態様の接触子の製造方法によれば、セラミックを用いてばね部を形成しているため、金属を用いてばね部を形成していた従来の接触子と比較して永久変形を起こし難い接触子を製造することができるとともに、Ni−Pなどの磁性材料を用いずにばね部を形成することができる。また、表面側導電部に電気的に接続された裏面側導電部によりばね部の裏面においても導通させることができるので、配線基板の配線の表面上にばね部が形成された場合においても接触子を配線に導通させることができる。
【0034】
本発明の第3の態様に係る接触子の製造方法は、プローブカードの配線基板の表面上に第1レジストを錐体状に形成する工程3aと、第1レジストの表面および配線基板の表面に裏面側シード膜をスパッタ形成する工程3bと、裏面側シード膜の表面に第2レジストを膜状に形成するとともに、第2レジストに対して立体らせん状の溝をパターンニングする工程3cと、第2レジストの溝から露出した裏面側シード膜の表面に裏面側導電部を膜状に形成する工程3dと、裏面側導電部の形成後に第2レジストを除去し、第2レジストの除去により露出した裏面側シード膜を除去するとともに、裏面側シード膜の除去後に第1レジストを除去する工程3eと、第2レジストの除去により露出した裏面側導電部の表面にセラミックを噴出して成膜することにより、裏面側導電部の表面にセラミック製のばね部を形成する工程3fと、ばね部の形成後、裏面側導電部の裏面側に形成された裏面側シード膜に電気的に接続するようにばね部の表面および配線基板の表面に表面側シード膜をスパッタ形成する工程3gと、配線基板の表面側に形成された表面側シード膜に第3レジストを膜状に形成する工程3hと、第3レジストの形成後、ばね部の表面に形成された表面側シード膜の表面に表面側導電部を形成する工程3iと、表面側導電部の形成後、第3レジストを除去するとともに、第3レジストの除去により露出した表面側シード膜を除去する工程3jとを備えていることを特徴としている。
【0035】
第3の態様の接触子の製造方法によれば、セラミックを用いてばね部を形成しているため、金属を用いてばね部を形成していた従来の接触子と比較して永久変形を起こし難い接触子を製造することができるとともに、Ni−Pなどの磁性材料を用いずにばね部を形成することができる。また、表面側導電部に電気的に接続された裏面側導電部によりばね部の裏面においても導通させることができるので、配線基板の配線の表面上にばね部が形成された場合においても接触子を配線に導通させることができる。さらに、工程3fにおいては、耐熱性を有しない第1レジストおよび第2レジストを除去してからセラミック製のばね部を形成しているため、ばね部を高温焼結することができる。
【0036】
本発明の第4の態様に係る接触子の製造方法は、第1から第3のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、ばね部は、エアロゾルデポジション法により形成されていることを特徴としている。
【0037】
第4の態様の接触子の製造方法によれば、室温下においてセラミック製のばね部を成膜することができるので、ばね部の形成時にプローブカードの配線基板や配線に熱的な悪影響を及ぼしてしまうことを防止することができる。
【0038】
本発明の第5の態様に係る接触子の製造方法は、第1から第4のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、セラミックは、ジルコニア系セラミックであることを特徴としている。
【0039】
第5の態様の接触子の製造方法によれば、強度、靭性、耐摩耗性、繰返変形特性などの機械的特性に優れたばね部を形成することができる。
【0040】
本発明の第6の態様に係る接触子の製造方法は、第5の態様の接触子の製造方法において、ジルコニア系セラミックは、イットリア安定化ジルコニアまたはイットリア部分安定化ジルコニアであることを特徴としている。
【0041】
第6の態様の接触子の製造方法によれば、イットリア安定化ジルコニアまたはイットリア部分安定化ジルコニアはジルコニアにイットリアを固溶させていることから昇降温によるジルコニアの相転移を抑制することができるため、酸化物無添加のジルコニア系セラミックを用いたばね部と比較して、優れた機械的特性を有するばね部を形成することができる。
【0042】
本発明の第7の態様に係る接触子の製造方法は、第1から第6のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、導電部または表面側導電部は、Ni−PまたはCuにNi−Pを積層させたCu/Ni−P積層金属を用いてめっき形成されていることを特徴としている。
【0043】
第7の態様の接触子の製造方法によれば、Ni−Pは耐摩耗性に優れているため、導電部または表面側導電部がバンプと繰返し接触して導電部または表面側導電部が削り取られてしまうことを防止することができる。また、導電部または表面側導電部の膜厚はばね部の膜厚と比較して薄く形成することができるため、接触子が原因となって生じる半導体デバイスの磁場の悪影響を最小限に抑制することができる。さらに、Ni−Pの下層にCu層を設けた場合、導電部または表面側導電部の耐摩耗性および導電性を向上させることができる。
【0044】
本発明の第8の態様に係る接触子の製造方法は、第1から第7のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、裏面側導電部は、Cuを用いてめっき形成されていることを特徴としている。
【0045】
第8の態様の接触子の製造方法によれば、Cuは優れた導電性を有しているため、表面側導電部および裏面側導電部からなる導電部の全体の導電性を向上させることができる。
【0046】
本発明の第9の態様に係る接触子の製造方法は、第1から第8のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、前記シード膜または前記表面側シード膜は、Crを下層とし、Cuを上層とするCr/Cu積層構造に形成されていることを特徴としている。
【0047】
第9の態様の接触子の製造方法によれば、下層のCrの接着性がセラミック製のばね部に対して良好なので、導電部または表面側導電部がばね部の表面から剥離することを防止することができる。また、上層のCuの導電性が優れているので、導電部または表面側導電部のめっき形成を容易にすることができる。
【0048】
本発明の第10の態様に係る接触子の製造方法は、第1から第9のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、裏面側シード膜は、Tiを下層とし、Cuを上層とするTi/Cu積層構造に形成されていることを特徴としている。
【0049】
第10の態様の接触子の製造方法によれば、下層のTiの接着性はレジストに対して良好なので、第1レジストに均一な膜厚の裏面側シード膜を形成することができる。また、上層のCuの導電性が優れているので、裏面側導電部のめっき形成を容易にすることができる。
【0050】
本発明の第11の態様に係る接触子の製造方法は、第1から第10のいずれか1の態様の接触子において、導電部または表面側導電部は、Auを用いて形成されている保護膜をその表面に有していることを特徴としている。
【0051】
第11の態様の接触子の製造方法によれば、導電部または表面側導電部の導電性および耐酸化性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明の接触子およびその製造方法によれば、ばね部を磁性のないセラミック製にして機械的特性を向上させているので、半導体デバイスの導通検査を繰返し行なってもへたってしまうことを防止することができるとともに、半導体デバイスに磁場の悪影響を及ぼすことを抑制することができるという効果を奏する。
【0053】
また、本発明の接触子およびその製造方法によれば、セラミック製のばね部を常温形成することができるので、従来から用いられている配線基板を変更せずに利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、図1から図9を用いて、本発明の接触子をその第1から第3の実施形態により説明する。
【0055】
はじめに、図1および図2を用いて、第1の実施形態の接触子1Aを説明する。図1は、第1の実施形態の接触子1Aの斜視図を示している。また、図2は、図1の2−2矢視断面図を示している。
【0056】
第1の実施形態の接触子1Aは、図1および図2に示すように、ばね部2Aおよび導電部3Aを備えている。
【0057】
ばね部2Aは、プローブカード20の配線基板20aの表面上においてセラミックを用いて形成されている。このばね部2Aの形状は、コイル状、板ばね状、皿ばねなど垂直方向に対して弾性力を発揮するばね形状であれば様々な形状を選択することができる。第1の実施形態のばね部2Aの形状においては、バンプ側(図2の上方)に突出した凸状の立体らせん形状が選択されている。その場合、このばね部2Aの寸法は、直径200μm程度、高さ100μm程度になっている。
【0058】
また、このばね部2Aは、常温形成することができるエアロゾルデポジション法により形成されている。エアロゾルデポジション法とは、ノズルを有するチャンバ内においてセラミック微粒子を不活性ガスと混合してエアロゾル化させ、チャンバのノズルを通してエアロゾル化したセラミック微粒子を基板に噴射して基板の表面上にセラミック被膜を形成する成膜方法である。ばね部2Aに用いられるセラミックは、アルミナ系セラミック、イットリア系セラミック、ジルコニア系セラミックなどエアロゾルデポジション法を用いて成膜できるセラミックを選択することができる。第1の実施形態においては、強度、靭性、耐摩耗性、繰返変形特性などの機械的特性に優れたジルコニア系セラミックが選択されている。特に、ジルコニア系セラミックとしては、昇降温の相転移に対して安定的なイットリア安定化ジルコニアまたはイットリア部分安定化ジルコニアを選択することが好ましい。
【0059】
導電部3Aは、導電材料を用いてバンプ(図示せず)と対向するばね部2Aの表面2Aaを覆うように形成されている。この導電材料としては、機械的特性に優れたNi−Pや導電性に優れたCuを用いて形成されていても良いし、Ni−PとCuとの積層金属でも良い。積層金属を用いる場合、その下層(図示せず)はCuを用いてばね部2Aの表面2Aaに形成されており、その上層(図示せず)はNi−Pを用いて下層の表面に形成されている。
【0060】
また、この導電部3Aは、配線基板20aに形成された配線に接続されている。この配線は、配線基板20aの表面上に形成された配線パターン(図示せず)でも良いし、図2に示すような配線基板20aから露出するビア20bでも良い。
【0061】
次に、図3および図4を用いて、第1の実施形態に係る接触子1Aの製造方法を説明する。ここで、図3は、第1の実施形態に係る接触子1Aの製造方法をA〜Iの順に示す縦断面図である。また、図4は、エアロゾルデポジション法によりばね部2Aを第1レジスト11の表面に形成する状態を示す概念図である。
【0062】
第1の実施形態の接触子1Aは、工程1a〜工程1hを経て製造される。
【0063】
工程1aは、図3Aに示すように、プローブカード20の配線基板20aの表面上に第1レジスト11を錐体状に形成する。例えば、この第1レジスト11の作成方法としては、配線基板20aの表面に膜厚100μmのレジスト膜(図示せず)を形成し、そのレジスト膜をレジストコートした後に多重露光を行って現像する(以下、レジストコート、露光、現像の一連の工程を「パターンニング」という。)ことにより第1レジスト11が円錐状に形成される。この第1レジスト11の寸法は、直径200μm程度、高さ100μm程度になっている。第1レジスト11に用いられるレジスト材としては、ノボラック系レジスト材が選択されている。
【0064】
工程1bは、図3Aに示す円錐状の第1レジスト11の表面および配線基板20aの表面にレジスト材を塗布して第2レジスト12を膜状に形成する(図3B参照)。この第2レジスト12の膜厚は30μm程度になっている。第2レジスト12の形成後、図3Bに示すように、第2レジスト12に対して立体らせん状の溝12aをパターンニングする。第2レジスト12に用いられるレジスト材としては、第1レジスト11と同様にノボラック系レジスト材が選択されている。
【0065】
工程1cは、図3Cに示すように、第2レジスト12を表面に有する錐体状の第1レジスト11にセラミックを噴出して成膜することにより、第2レジスト12に形成された立体らせん状の溝12aの内部にセラミック製のばね部2Aを形成する。ばね部2Aに用いられるセラミックの噴出法は、エアロゾルデポジション法やスパッタ法などが挙げられるが、第1の実施形態においてはセラミックの常温成膜を可能とするエアロゾルデポジション法を採用している。
【0066】
ここで、図4を用いて、エアロゾルデポジション法によるばね部2Aの形成方法を詳細に説明する。第1の実施形態においては、図4に示すようなノズル30に接続されたエアロゾルチャンバ(図示せず)において、粒径0.3〜1μmのセラミック微粒子がキャリアガスと称するヘリウムガスに混合されることにより、セラミック微粒子がエアロゾル化している。このノズル30の開口部30aにおける先端ギャップ(図示せず)は0.5μm、そのスリット幅(図示せず)は5mm程度に設定されている。また、このノズル30は、数Pa程度まで減圧されたデポジションチャンバ31の内部において、配線基板20aに対して60度程度傾斜させて配設されている。そして、ノズル30の開口部30aを解放することにより、エアロゾルチャンバの内部においてエアロゾル化したセラミック微粒子がノズル30を通って配線基板20aの表面および第1レジスト11の表面に噴出される。
【0067】
配線基板20aは、図4に示すように、XYZステージ32に載置されている。このXYZステージ32は、X方向に10mm/secの速さで往復スライドするとともに、Y方向に5mmでステップ送りされる。ノズル30のスリット幅は5mmであり、配線基板20aまたは第1レジスト11とノズル30との距離は50mm程度に設定されているため、セラミックの成膜時にはエアロゾル化したセラミック微粒子が10mm程度の幅に拡がって成膜される。また、Yステップ量は5mmであるため、Yステップ時にはオーバーラップして成膜される。円錐状の第1レジスト11の傾斜が45度以上の場合は第1レジスト11の表面に形成されるばね部2Aの成膜レートが遅くなったり、正常に成膜されないおそれがあるため、XYZステージ32のX方向の往復動作時に、X軸を基準とした±30°/secの回転も加える。
【0068】
Y方向へのステップ送りが1回完了して配線基板20aの表面の全域にセラミックが成膜された後、通常はZ軸周りに配線基板20aを90度回転させて2回目の成膜作業を行う。配線基板20aの表面の全域に1回だけYステップ送りを完了させてもばね部2Aの膜厚は数μm程度であり、所望の膜厚を得られない。そのため、10〜20μm厚のばね部2Aを得るためにはこれら一連の動作を数回繰り返す。
【0069】
これらXスライドおよびYステップの動作を数回繰り返すことにより、エアロゾル化したセラミック微粒子が配線基板20aの表面および第1レジスト11の表面に常温下で成膜されて所望の厚さ(例えば膜厚30μm程度)のばね部2Aを形成することができる(図3Cを参照)。
【0070】
ばね部2Aに用いるセラミックとしては、アルミナ系セラミック、イットリア系セラミック、ジルコニア系セラミックなどのファインセラミックスが好ましく、そのなかでもジルコニア系セラミックがより好ましい。さらに、このジルコニア系セラミックとしては、イットリア安定化ジルコニアまたはイットリア部分安定化ジルコニアであることが好ましい。第1の実施形態においては、イットリア安定化ジルコニア(イットリア4.9wt%およびアルミナ0.38wt%を含有するジルコニア。例えば、東ソー製ジルコニア粉末(TZ−3Y−E))が選択されている。また、このイットリア安定化ジルコニア微粒子の粒径は0.4μmである。
【0071】
工程1dは、図3Dに示すように、ばね部2Aの形成後に第2レジスト12を除去する。この第2レジスト12の除去により、ばね部2Aの形成時に第2レジスト12の表面に成膜されたセラミックがリフトオフされる。そして、第2レジスト12の除去後、図3Eに示すように、第1レジスト11を除去する。第1レジスト11および第2レジスト12の除去剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(分子式:CNO、商品名:NMP)が用いられる。
【0072】
工程1eは、図3Fに示すように、第2レジスト12および第1レジスト11の除去後、ばね部2Aの表面2Aaおよび配線基板20aの表面にシード膜4をスパッタ形成する。このシード膜4は導電部3Aをめっき形成するための下地膜となるため導電材料を用いて形成されていればよいが、第1の実施形態においてはセラミックと密着性の良いCr膜またはTi膜(図示せず)をばね部2Aの表面2Aaおよび配線基板20aの表面に膜厚15nm程度にスパッタ形成した後に導電性の良いCu膜(図示せず)をCr膜またはTi膜の表面に膜厚100nm程度にスパッタ形成することによりシード膜4が形成されている。
【0073】
工程1fは、シード膜4の表面にレジスト材を塗布して第3レジスト13を膜状に形成する(図3Gを参照)。この第3レジスト13の膜厚は5μm程度になっている。そして、図3Gに示すように、第3レジスト13に対してばね部2Aの表面2Aaおよびばね部2Aから配線基板20aに形成されたビア20bまでの間の配線基板20aの表面に形成されたシード膜4を露出させるパターンニングをする。第3レジスト13に用いられるレジスト材としては、第1レジスト11および第2レジスト12と同様にノボラック系レジスト材が選択されている。
【0074】
工程1gは、図3Hに示すように、第3レジスト13から露出したシード膜4の表面に導電部3Aをめっき形成する。この導電部3Aは導電材料を用いて形成されていればよい。例えば、導電部3Aは、導電性に優れたCuを用いて形成されていてもよいし、耐摩耗性に優れたNi−Pを用いて形成されていてもよい。第1の実施形態においては、Cuを用いてばね部2Aの表面2Aaに形成されている膜厚5μmの下層(図示せず)と、耐摩耗性に優れたNi−Pを用いて下層の表面に形成されている膜厚2μmの上層(図示せず)とにより導電部3Aが形成されている。導電部3Aの表面酸化が起こりやすい雰囲気下において接触子1Aを使用する場合は導電部3Aの表面にAuを用いて保護膜を形成することが好ましい。
【0075】
工程1hは、図3Iに示すように、導電部3Aの形成後に第3レジスト13を除去するとともに、第3レジスト13の除去により露出したシード膜4を除去する。第3レジスト13の除去剤としては、第1レジスト11および第2レジスト12の除去剤と同様、N−メチル−2−ピロリドン(分子式:CNO、商品名:NMP)が用いられる。また、シード膜4の除去にはイオンミリングが用いられる。シード膜4の除去が終了することにより、接触子1Aの製造工程が終了する。
【0076】
次に、図1から図4を用いて、第1の実施形態の接触子1Aおよびその製造方法の作用を説明する。
【0077】
第1の実施形態の接触子1Aは、図1および図2に示すように、セラミック製のばね部2Aおよび導電性を有する導電部3Aを備えている。この接触子1Aはプローブカード20に配設されており、その接触子1Aの凸方向の対向位置に検査対象の半導体デバイスのバンプが配置される。そして、半導体デバイスの導通検査の際、接触子1Aはバンプに押下された状態で高温高電圧雰囲気下にさらされる。
【0078】
ここで、第1の実施形態の接触子1Aにおいては、ばね部2Aがセラミック製であるため、金属製のばね部102を有する従来の接触子101(図9を参照)と比較して接触子1Aの永久変形を起こし難くすることができる。また、Ni−Pなどの磁性材料を用いずにばね部2Aを形成しているので、検査対象の半導体デバイス(図示せず)に悪影響を及ぼさない。
【0079】
通常、セラミックの成膜は焼結により行なわれるが、配線基板20aに耐熱性が無ければセラミックの焼結により配線基板20aが変形したり、破壊したりする。そこで、ばね部2Aはエアロゾルデポジション法により形成されている。エアロゾルデポジション法によれば、セラミック微粒子を形成基板に噴出して衝突させることにより焼結したときと同様に成膜することができる。すなわち、室温下においてセラミック製のばね部2Aを成膜することができるので、ばね部2Aの形成時にプローブカード20の配線基板20aや配線に熱的な悪影響を及ぼしてしまうことを防止することができる。
【0080】
また、ばね部2Aに用いられるセラミックは、ジルコニア系セラミックが選択されている。ジルコニア系セラミックは、Ni−Pなどのばね金属だけでなく、アルミナなどの他のファインセラミックと比較しても強度、靭性、耐摩耗性、繰返変形特性などの機械的特性に優れている。そのため、高温下において接触子1Aを繰返し変形しても永久変形しにくい機械的特性に優れたばね部2Aを形成することができる。特に、ジルコニアにイットリアを固溶させてなるイットリア安定化ジルコニアやイットリア部分安定化ジルコニアなどの安定化ジルコニアを選択すれば、昇降温によるジルコニアの相転移を抑制することができる。そのため、酸化物無添加のジルコニア系セラミックを用いて形成されたばね部2Aと比較して、安定化ジルコニアを用いて形成されたばね部2Aは優れた機械的特性を発揮することができる。
【0081】
なお、イットリア安定化ジルコニアとイットリア部分安定化ジルコニアとの違いはイットリアの含有量の違いであり、それにより酸素イオン伝導性や機械的特性が異なる。ばね部2Aの酸素イオン伝導性を向上させたい場合はイットリア含有量の多いイットリア安定化ジルコニアを選択し、ばね部2Aの機械的特性を向上させたい場合はイットリア含有量の少ないイットリア部分安定化ジルコニアを選択すればよい。
【0082】
さらに、このばね部2Aは、バンプ側に突出した立体らせん状に形成されている。これにより、ばね部2Aの長さを長くすることができるので、他の形状のばね部2Aと比較して接触子1Aの永久変形を起こし難くすることができる。
【0083】
ばね部2Aはセラミック製であるため、ばね部2Aを介して接触子1Aに接触したバンプと配線基板20aのビア20bとを導通させることはできない。そのため、バンプと対向するばね部2Aの表面2Aaに導電部3Aが形成されている。この導電部3Aは配線基板20aの配線に接続されているため、接触子1Aは導電部3Aを介してバンプと配線基板20aの配線とを導通させることができる。
【0084】
この導電部3Aに用いる導電材料としてはいくつかの選択肢がある。例えば、導電部3AにNi−Pを用いて形成した場合、Ni−Pは他の導電材料と比較して耐摩耗性に優れているため、導電部3Aがバンプと繰返し接触することにより、導電部3Aが摩耗して削り取られてしまうことを防止することができる。また、導電部3Aの膜厚はばね部2Aの膜厚と比較して薄く形成することができるため、接触子1Aが原因となって半導体デバイスの磁場に悪影響を及ぼすことを最小限に抑制することができる。また、例えば、導電部3AにCuを用いて形成した場合、Cuは優れた導電性を有しているため、導電部3Aの導電性を向上させることができる。
【0085】
Ni−PおよびCuの優れた特徴を相互に生かすため、第1の実施形態の導電部3Aにおいては、Cuを用いてばね部2Aの表面2Aaに形成されている下層と、Ni−Pを用いて下層の表面に形成されている上層とを有している。下層に用いられるCuは優れた導電性を有しているため、導電部3Aの導電性を向上させることができる。また、上層に用いられるNi−Pは耐摩耗性に優れているため、導電部3Aがバンプと繰返し接触して導電部3Aが削り取られてしまうことを防止することができる。さらに、導電部3Aの上層の膜厚は従来の金属製のばね部の膜厚と比較して薄く形成することができるため、接触子1Aが原因となって生じる半導体デバイスの磁場の悪影響を最小限に抑制することができる。
【0086】
第1の実施形態の接触子1Aはプローブカード20に用いられるため、高温高電圧雰囲気下において接触子1Aが用いられることが多い。そのため、接触子1Aの表面層である導電部3Aは常に酸化の危険性がある。そこで、導電部3Aの表面にはAuを用いて形成されている保護膜を有していることが好ましい。導電部3Aの表面にAuの保護膜を形成しておけば、導電部3Aの耐酸化性を向上させることができるとともに、導電部3Aの導電性もあわせて向上させることができる。
【0087】
このような特徴を有する接触子1Aを得るため、第1の実施形態に係る接触子1Aの製造方法は、図3に示すように、工程1a〜工程1hを備えている。ここで、工程1cにおいては、図3Cに示すように、第2レジスト12を表面に有する錐体状の第1レジスト11にセラミックを噴出して成膜することにより、第2レジスト12に形成された立体らせん状の溝12aの内部にセラミック製のばね部2Aを形成している。そのため、従来の接触子101と比較して永久変形を起こし難い接触子1Aを製造することができるとともに、Ni−Pなどの磁性材料を用いずにばね部2Aを形成することができる。
【0088】
また、工程1cにおいてばね部2Aを形成する際、通常はセラミックの焼結工程が含まれてしまうので、工程1aおよび工程1bにおいて形成された第1レジスト11および第2レジスト12が金属やセラミックなどの高い耐熱性を有する材料でない限り融解するおそれがある。そこで、第1の実施形態においては、ばね部2Aがエアロゾルデポジション法により形成されている。そのため、セラミック製のばね部2Aを室温下において形成することができるので、ばね部2Aの形成時にばね部2Aの型となる第1レジスト11および第2レジスト12が高い耐熱性を有しない場合であっても融解することを防止することができる。もちろん、プローブカード20の配線基板20aやビア20bに熱的な悪影響を及ぼしてしまうことを防止することもできる。
【0089】
なお、使用するセラミックは、前述した通り、ジルコニア系セラミック、特に安定化ジルコニアを選択することが好ましい。
【0090】
また、工程1gにおいては、図3Hに示すように、第3レジスト13から露出したシード膜4の表面に導電部3Aがめっき形成される。これにより、シード膜4を介してばね部2Aの表面2Aaに導電部3Aが形成される。接触子1Aの突出方向には半導体デバイスのバンプが配置されるため、ばね部2Aの表面2Aaに導電部3Aを形成してバンプを接触子1Aに接触させることにより、接触子1Aはバンプと配線基板20aのビア20bとを導通させることができる。また、導通部にCu、Ni−P、Cu/Ni−P積層金属のいずれかを用いることにより、導電性もしくは耐摩耗性または導電性および耐摩耗性に優れた導電部3Aを形成することができる。さらに、Ni−Pの使用量が少ないため、半導体デバイスの磁場の悪影響を最小限に抑制することができる。
【0091】
次に、図5を用いて、第2の実施形態の接触子1Bを説明する。ここで、図5は、第2の実施形態の接触子1Bを示す縦断面図である。なお、第1の実施形態と共通する点については説明を省略または簡略する。
【0092】
第2の実施形態の接触子1Bは、図5に示すように、ばね部2Bおよび導電部3Bを備えている。
【0093】
ばね部2Bは、プローブカード20の配線基板20aの表面上においてセラミックを用いて形成されている。このばね部2Bに関しては第1の実施形態と同様である。
【0094】
導電部3Bは、導電材料を用いてバンプと対向するばね部2Bの表面2Baを覆う表面側導電部7Bとその裏面2Bbを覆う裏面側導電部8Bとを有している。また、これら表面側導電部7Bおよび裏面側導電部8Bは連続して形成されることにより電気的に接続されている。つまり、ばね部2Bの裏面2Bbにも導電部3Bを形成することが第1の実施形態と異なる。表面側導電部7Bおよび裏面側導電部8Bに用いる導電材料はCu、Cr、Au、Ni−Pなどの金属が主として挙げられる。第2の実施形態においては、表面側導電部7BはNi−Pを用いてCr/Cu表面側シード膜30の表面上にめっき形成されており、裏面側導電部8BはCuを用いてTi/Cu裏面側シード膜31の表面上に形成されている。そして、この導電部3B(表面側導電部7Bおよび裏面側導電部8B)ならびに表面側シード膜30および裏面側シード膜31を介して接触子1Bはその根元1Brの下方にあるビア20bに電気的に接続されている。
【0095】
次に、図6を用いて、第2の実施形態の接触子1Bの製造方法を説明する。ここで、図6は第2の実施形態の接触子1Bの製造方法をA〜Lの順に示す縦断面図である。なお、第1の実施形態と共通する点については説明を省略または簡略する。
【0096】
第2の実施形態の接触子1Bは、工程2a〜工程2lを経て製造される。
【0097】
工程2aにおいては、図6Aに示すように、プローブカード20の配線基板20aの表面上に第1レジスト11を錐体状に形成する。また、この第1レジスト11はその周縁にビア20bが配置されるように形成されている。なお、第1レジスト11の寸法およびそのレジスト材については第1の実施形態と同様である。
【0098】
工程2bにおいては、図6Bに示すように、第1レジスト11の表面および配線基板20aの表面に裏面側シード膜31をスパッタ形成する。この裏面側シード膜31に用いる導電材料としては、下層(図示せず)となるTiに上層(図示せず)となるCuを積層させたTi/Cu積層金属が用いられる。このとき、膜厚15nmのTi下層を第1レジスト11の表面および配線基板20aの表面にスパッタ形成した後、Ti下層の表面に膜厚3μmのCu上層をスパッタ形成して裏面側シード膜31を得る。
【0099】
工程2cにおいては、裏面側シード膜31の表面に第2レジスト12を膜状に形成する(図6Cを参照)。その後、図6Cに示すように、第2レジスト12に対して立体らせん状の溝12aをパターンニングする。なお、第2レジスト12のレジスト材は第1の実施形態と同様である。
【0100】
工程2dにおいては、図6Dに示すように、第2レジスト12の溝12aから露出した裏面側シード膜31に裏面側導電部8Bを膜状にめっき形成する。裏面側導電部8Bとしては、導電性に優れたCuや耐摩耗性に優れたNi−P、その他の良導電性金属や機械的特性に優れた金属を選択することができる。第2の実施形態の裏面側導電部8Bとしては、裏面側導電部8Bが裏面側シード膜31およびばね部2Bに覆われることを考慮して、Cuが選択されている。
【0101】
工程2eにおいては、図6Eに示すように、裏面側導電部8Bの表面および第2レジスト12の表面にセラミックを噴出して成膜する。これにより、第2レジスト12の溝から露出した裏面側導電部8Bの表面に厚さ30μmのセラミック製のばね部2Bを形成する。第2の実施形態において、このばね部2Bはエアロゾルデポジション法により形成されている。ばね部2Bに用いるセラミックとしては、ジルコニア系セラミック、特に、イットリア安定化ジルコニアまたはイットリア部分安定化ジルコニアが選択されている。
【0102】
工程2fにおいては、図6Fに示すように、ばね部2Bの形成後に第2レジスト12をレジスト除去剤により除去する。この除去作業により、第2レジスト12の表面に形成されたばね部2Bがリフトオフされる。なお、レジスト除去剤は第1の実施形態と同様である。
【0103】
工程2gにおいては、図6Gに示すように、第2レジスト12の除去により露出した裏面側シード膜31をイオンミリングにより除去する。裏面側シード膜31の除去により、第1レジスト11が露出する。
【0104】
工程2hにおいては、図6Hに示すように、裏面側シード膜31の除去後、第1レジスト11をレジスト除去剤により除去する。これにより、裏面側導電部8Bの裏面側に形成された裏面側シード膜31が裏面側から露出する。なお、レジスト除去剤は第1の実施形態と同様である。
【0105】
工程2iにおいては、図6Iに示すように、第1レジスト11の除去後、ばね部2Bの表面2Baおよび配線基板20aの表面に表面側シード膜30をスパッタ形成する。この表面側シード膜30は裏面側シード膜31に接触して電気的に接続するように裏面側シード膜31に連続形成されている。その際、ばね部2Bの表面2Baから裏面側シード膜31まで表面側シード膜30が回り込むように、スパッタのガス圧を上昇させて表面側シード膜30を成膜する。なお、配線基板20aの表面にはばね部2Bに覆われて表面側シード膜30が形成されない部分が生じるが、配線基板20aの表面に形成された表面側シード膜30は後の工程2lにおいて除去されるため、問題にならない。
【0106】
工程2jにおいては、図6Jに示すように、配線基板20aの表面上に形成された表面側シード膜30に第3レジスト13を膜状に形成する。第3レジスト13の形成の際、ばね部2Bの頂点2Btに焦点を合わせて露光することにより、ばね部2Bに第3レジスト13が形成されないようにする。また、配線基板20aの表面に焦点を合わせずに露光することにより、配線基板20aの表面に第3レジスト13が形成されるようにする。図6Jに示すように、焦点位置や露光具合によりばね部2Bの根元2Brに第3レジスト13が形成されてしまうこともあるが、ばね部2Bの全体に第3レジスト13が形成されない限り、ばね部2Bの一部に第3レジスト13が形成されても問題はない。
【0107】
工程2kにおいては、図6Kに示すように、第3レジスト13の形成後に露出している表面側シード膜30に表面側導電部7Bをめっき形成する。表面側シード膜31は裏面側シード膜31と連続して形成されているため、裏面側シード膜31の裏面側にも表面側導電部7Bが形成されている。ただし、ばね部2Bの裏面側には裏面側導電部8Bが形成されており、ばね部2Bの裏面側の導電性が確保されているため、裏面側シード膜31に表面側導電部7Bが形成される前に表面側導電部7Bのめっき形成を終了しても問題ない。
【0108】
工程2lにおいては、図2Lに示すように、表面側導電部7Bの形成後、第3レジスト13をレジスト除去剤により除去する。また、図2Lに示すように、第3レジスト13の除去後に露出した表面側シード膜30をイオンミリングにより除去する。レジスト除去剤およびイオンミリングについては、第1の実施形態と同様である。
【0109】
以上の工程を経ることにより、第2の実施形態の接触子1Bが製造される。なお、第1の実施形態と同様、導電部3Bの表面にAuの保護膜を形成しても良い。
【0110】
次に、図5および図6を用いて、第2の実施形態の接触子1Bおよびその製造方法の作用を説明する。なお、第1の実施形態と共通する点については説明を省略または簡略する。
【0111】
第2の実施形態の接触子1Bは、図5に示すように、セラミック製のばね部2Bおよび導電性を有する導電部3Bを備えている。第1の実施形態と同様、この接触子1Bはプローブカード20の配線基板20aに配設されており、その接触子1Bの凸方向の対向位置に検査対象の半導体デバイスのバンプが配置される。そして、半導体デバイスの導通検査の際、接触子1Bはバンプに押下された状態で高温高電圧雰囲気下にさらされる。
【0112】
ここで、ばね部2Bは第1の実施形態と同様にセラミック製であり、立体らせん状に形成されているため、接触子1Bの永久変形を起こし難くすることができるとともに、半導体デバイスに磁場の悪影響を及ぼさない。また、このばね部2Bはエアロゾルデポジション法により形成されているので焼結する必要が無く、焼結熱により配線基板20aを破壊することもない。さらに、このセラミックはジルコニア系セラミック、特にイットリア安定化ジルコニアまたはイットリア部分安定化ジルコニアの安定化ジルコニアが選択されているため、繰返変形特性などの機械的特性に優れたばね部2Bを得ることができる。
【0113】
また、図5に示すように、導電部3Bは表面側導電部7Bおよび裏面側導電部8Bを有している。これら表面側導電部7Bおよび裏面側導電部8Bは接触して電気的に接続されている。このことから、接触子1Bは表面側導電部7Bに接触したバンプと裏面側導電部8Bに裏面側シード膜31を介して電気的に接続したビア20bとを導通させることができるので、配線基板20aのビア(配線)20bの表面上に接触子1Bを形成することができる。これにより、プローブカード20に配設される接触子1Bの配設ピッチを小さくすることができる。
【0114】
そして、表面側導電部7BはNi−Pを用いて形成されているために表面側導電部7Bの耐摩耗性を向上させることができる。また、裏面側導電部8BはCuを用いて形成されているために裏面側導電部8Bの導電性をNi−P製の表面側導電部7Bよりも向上させることができる。これにより、導電部3Bの全体の導電性を向上させることができる。なお、第1の実施形態と同様、表面側導電部7Bの膜厚はばね部2Bの膜厚よりも薄くすることができるので、半導体デバイスに対する表面側導電部7Bからの磁場の悪影響を最小限に抑制することができる。
【0115】
このような第2の実施形態の接触子1Bは、工程2a〜工程2lを経て形成される。第1の実施形態と大きく異なる点は、図6Dに示すように、工程2dにおいて裏面側導電部8Bを形成した点にある。これにより、図6Eに示すように、工程2eにおいてセラミック製のばね部2Bを形成したときにその裏面2Bbに裏面側導電部8Bを配置することができる。
【0116】
また、工程iにおいては、図6Iに示すように、表面側シード膜30が裏面側シード膜31に接触して導通するようにスパッタ形成されている。そのため、表面側シード膜31の表面にめっき形成される表面側導電部7Bを、裏面側シード膜31とばね部2Bとの間に介在する裏面側導電部8Bに電気的に接続させることができる。
【0117】
そして、図5に示すように、表面側導電部7Bの下地層となる表面側シード膜30については、下層のCrの接着性がセラミック製のばね部2Bに対して良好なので、表面側導電部7Bがばね部2Bの表面から剥離することを防止することができる。また、表面側シード膜30の上層のCuについては導電性が良いので、表面側導電部7Bのめっき形成を容易にすることができる。同様に、裏面側導電部8Bの下地層となる裏面側シード膜31については、下層のTiの接着性が第1レジスト11に対して良好なので、第1レジスト11に均一な膜厚の裏面側シード膜を形成することができる。また、上層のCuの導電性が優れているので、裏面側導電部8Bのめっき形成を容易にすることができる。
【0118】
その他、工程2a〜工程2jにおいて、ばね部2Bをエアロゾルデポジション法により形成したこと、セラミックにジルコニア系セラミック、特に安定化ジルコニアを用いたこと、表面側導電部7BにNi−Pを用いたこと、裏面側導電部8BにCuを用いたことに関しては、前述した第2の実施形態の接触子1Bの作用と同様である。
【0119】
次に、図7を用いて、第3の実施形態の接触子1Cを説明する。ここで、図7は、第3の実施形態の接触子1Cを示す縦断面図である。なお、第1の実施形態または第2の実施形態と共通する点については説明を省略または簡略する。
【0120】
第3の実施形態の接触子1Cは、図7に示すように、ばね部2Cおよび導電部3Cを備えている。
【0121】
ばね部2Cは、プローブカード20の配線基板20aの表面上においてセラミックを用いて形成されている。このばね部2Cはセラミックをスパッタして焼結することにより形成されている点で第1の実施形態および第2の実施形態と異なる。セラミックとしてはジルコニア系セラミック、特に安定化ジルコニアが選択されており、この点は第1の実施形態および第2の実施形態と同様である。
【0122】
導電部3Cは、バンプと対向するばね部2Cの表面2Caを覆う表面側導電部7Cとその裏面2Cbを覆う裏面側導電部8Cとを有している。また、これら表面側導電部7Cおよび裏面側導電部8Cは接触するように形成されることにより電気的に接続されている。この導電部3Cに関しては第2の実施形態と同様である。
【0123】
次に、図8を用いて、第3の実施形態の接触子1Cの製造方法を説明する。ここで、図8は第3の実施形態の接触子1Cの製造方法をA〜Lの順に示す縦断面図である。なお、第1の実施形態と共通する点については説明を省略または簡略する。
【0124】
第3の実施形態の接触子1Cは、工程3a〜工程3jを経て製造される。
【0125】
工程3aにおいては、図8Aに示すように、プローブカード20の配線基板20aの表面上に第1レジスト11を錐体状に形成する。この工程3aは第1の実施形態の工程1aと同様であり、第1レジスト11の寸法およびレジスト材も第1の実施形態と同様である。
【0126】
工程3bにおいては、図8Bに示すように、第1レジスト11の表面および配線基板20aの表面に裏面側シード膜31を形成する。この裏面側シード膜31としては、膜厚15nmのTi層(図示せず)を第1レジスト11の表面および配線基板20aの表面にスパッタ形成した後、Ti層の表面に膜厚100nmのCu層(図示せず)をスパッタ形成することにより得られる。
【0127】
工程3cにおいては、図8Cに示すように、裏面側シード膜31の表面に第2レジスト12を膜状に形成するとともに、第2レジスト12に対して立体らせん状の溝12aをパターンニングする。この工程3cは第1の実施形態の工程1bと同様であり、第2レジスト12のレジスト材も第1の実施形態と同様である。
【0128】
工程3dにおいては、図8Dに示すように、第2レジスト12のパターンニングにより露出した裏面側シード膜31の表面に裏面側導電部8Cをめっき形成する。この裏面側導電部8Cに用いる導電材料としては、Cu、Au、Ni−Pなどの金属が主として挙げられるが、第3の実施形態の裏面側導電部8CにおいてはCuが用いられる。裏面側導電部8Cの膜厚は5μmとなっている。
【0129】
工程3eにおいては、図8Eに示すように、裏面側導電部8Cを形成後に第2レジスト12をレジスト除去剤により除去する。そして、図8Fに示すように、第2レジスト12の除去により露出した裏面側シード膜31をイオンミリングにより除去する。裏面側シード膜31の除去後、図8Gに示すように、第1レジスト11をレジスト除去剤により除去する。第1レジスト11および第2レジスト12のレジスト除去剤ならびにイオンミリングは第1の実施形態と同様のものを用いる。
【0130】
工程3fにおいては、図8Hに示すように、第2レジスト12の除去により露出した裏面側導電部8Cの表面にセラミックを噴出して成膜することにより、裏面側導電部8Cの表面にセラミック製のばね部2Cを形成する。第3の実施形態のばね部2Cの形成は、第1の実施形態および第2の実施形態と異なり、セラミックスパッタ法により行なう。具体的には、Ar80%、O20%の混合ガス圧0.7Paの雰囲気下、裏面側導電部8Cの表面にセラミック粒子を膜厚10μm程度になるようにスパッタし、700℃で6時間かけてセラミックを焼結させることによりばね部2Cを形成する。ばね部2Cに用いるセラミックとしては、ジルコニア系セラミック、特に、イットリア安定化ジルコニアやイットリア部分安定化ジルコニアの安定化ジルコニアが選択されている。また、ばね部2Cの焼結は高温雰囲気下になるため、配線基板20aには耐熱材料、たとえばセラミックを用いることが好ましい。
【0131】
工程3gにおいては、図8Iに示すように、ばね部2Cの形成後、ばね部2Cの表面2Caおよび配線基板20aの表面に形成されたセラミック層2Ccの表面に表面側シード膜30をスパッタ形成する。その際、後の工程3iにおいて形成される表面側導電部7Cを裏面側導電部8Cに導通させるため、表面側シード膜30を裏面側導電部8Cと接触するようにスパッタ形成する。具体的には、第2の実施形態と同様、ばね部2Cの表面2Caから裏面側シード膜31まで表面側シード膜30が回り込むように、スパッタのガス圧を上昇させて表面側シード膜30を成膜する。この表面側シード膜30としては、膜厚15nmのCr層(図示せず)をばね部2Cの表面2Caおよびセラミック層2Ccの表面にスパッタ形成した後、Cr層の表面に膜厚100nmのCu層(図示せず)をスパッタ形成することにより得られる。
【0132】
工程3hにおいては、図8Jに示すように、配線基板20aの表面に形成された表面側シード膜30のみに第3レジスト13を膜状に形成する。第3レジスト13のレジスト材は第1レジスト11および第2レジスト12のレジスト材と同様である。また、第2の実施形態と同様、ばね部2Cの根元の一部に第3レジスト13が形成されても良い。
【0133】
工程3iにおいては、図8Kに示すように、第3レジスト13の形成後、ばね部2Cの表面2Caに形成された表面側シード膜30の表面に表面側導電部7Cをめっき形成する。表面側導電部7Cに用いる導電材料としてはCu、Au、Ni−Pなどの金属が主として挙げられるが、第3の実施形態の表面側導電部7CにおいてはNi−Pが選択されており、その膜厚は2μmである。
【0134】
工程3jにおいては、図8Lに示すように、表面側導電部7Cの形成後、第3レジスト13をレジスト除去剤により除去する。また、第3レジスト13の除去後、第3レジスト13の除去により露出した表面側シード膜30をイオンミリングにより除去する。第3レジスト13のレジスト除去剤は第1レジスト11および第2レジスト12に用いられるものと同様である。
【0135】
以上の工程を経ることにより、第3の実施形態の接触子1Cが製造される。なお、第1の実施形態や第2の実施形態と同様、耐酸化性を向上させるため、導電部3Cの表面にAu保護膜を形成しても良い。
【0136】
次に、図7および図8を用いて、第3の実施形態の接触子1Cおよびその製造方法の作用を説明する。なお、第1の実施形態または第2の実施形態と共通する点については説明を省略または簡略する。
【0137】
第3の実施形態の接触子1Cは、図7に示すように、セラミック製のばね部2Cおよび導電性を有する導電部3Cを備えている。第1の実施形態および第2の実施形態と同様、この接触子1Cはプローブカード20の配線基板20aに配設されており、その接触子1Cの凸方向の対向位置に検査対象の半導体デバイスのバンプが配置される。そして、半導体デバイスの導通検査の際、接触子1Cはバンプに押下された状態で高温高電圧雰囲気下にさらされる。
【0138】
ここで、ばね部2Cは第1の実施形態および第2の実施形態と同様にセラミック製であり、立体らせん状に形成されているため、接触子1Cの永久変形を起こし難くすることができるとともに、半導体デバイスに磁場の悪影響を及ぼさない。ただし、第1の実施形態および第2の実施形態と異なり、このばね部2Cはスパッタおよび焼結により形成されているので、第3の実施形態の接触子1Cはセラミックなどの耐熱材料を用いた配線基板20aの表面上に形成される。ばね部2Cに用いるセラミックとしては、第1の実施形態および第2の実施形態と同様にジルコニア系セラミック、特にイットリア安定化ジルコニアまたはイットリア部分安定化ジルコニアの安定化ジルコニアが選択されているため、繰返変形特性などの機械的特性に優れたばね部2Cを得ることができる。
【0139】
また、接触子1Cは導電部3Cを備えており、第2の実施形態と同様、導電部3Cは表面側導電部7Cおよび裏面側導電部8Cを有している。この表面側導電部7Cはばね部2Cの表面2Caに形成されているとともに、裏面側導電部8Cはばね部2Cの裏面2Cbに形成されている。そして、これら表面側導電部7Cおよび裏面側導電部8Cは裏面側シード膜31を介して電気的に接続されている。このことから、接触子1Cは表面側導電部7Cに接触したバンプと裏面側シード膜31を介して裏面側導電部8Cに電気的に接続したビア20bとを導通させることができるので、配線基板20aの配線の表面上に接触子1Cを形成することができる。これにより、プローブカード20に配設される接触子1Cの配設ピッチを小さくすることができる。
【0140】
そして、表面側導電部7CはNi−Pを用いて形成されているために耐摩耗性に優れており、裏面側導電部8CはCuを用いて形成されているために導電性に優れている。
【0141】
このような第3の実施形態の接触子1Cは、図8に示す工程3a〜工程3jを経て形成される。第1の実施形態および第2の実施形態と大きく異なる点は、図8Hに示すように、工程3fにおいてばね部2Cをスパッタおよび焼結により形成することである。そのため、図8Eおよび図8Gに示すように、工程3fより前の工程3eまでに耐熱性のない第1レジスト11および第2レジスト12を除去している。これにより、室温下でなくともセラミック製のばね部2Cを形成することができる。そのため、永久変形を起こし難い接触子1Cを製造することができる。また、図8Dに示すように、工程3dにおいてばね部2Cの裏面2Cbに裏面側導電部8Cが配置されるように予め裏面側導電部8Cを形成しているので、配線基板20aの配線の表面上にばね部2Cを形成しても接触子1Cに接触したバンプを配線に導通させることができる。
【0142】
その他、工程3a〜工程3jにおいて、セラミックにジルコニア系セラミック、特に安定化ジルコニアを用いたこと、表面側導電部7CにNi−Pを用いたこと、裏面側導電部8CにCuを用いたこと、表面側シード膜30にCr/Cu積層金属を用いたことおよび裏面側シード膜31にTi/Cu積層金属を用いたことは、前述した第2の実施形態の接触子1Bおよびその製造方法に係る作用と同様である。
【0143】
すなわち、第1から第3の実施形態の接触子1A〜1Cおよびその製造方法によれば、ばね部2A〜2Cを磁性のないセラミック製にして機械的特性を向上させているので、半導体デバイスの導通検査を繰返し行なってもへたってしまうことを防止することができるとともに、半導体デバイスに磁場の悪影響を及ぼすことを抑制することができるという効果を奏する。
【0144】
また、第1および第2の実施形態の接触子1A、1Bおよびその製造方法によれば、セラミック製のばね部2A、2Bを常温形成することができるので、従来から用いられている配線基板20aを変更せずに利用することができる。
【0145】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、第3の実施形態においては、ばね部3Bをエアロゾルデポジション法により形成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】第1の実施形態の接触子を示す斜視図
【図2】図1の2−2矢視断面図
【図3】第1の実施形態に係る接触子の製造方法をA〜Iの順に示す縦断面図
【図4】エアロゾルデポジション法によりばね部を第1レジストの表面に形成する状態を示す概念図
【図5】第2の実施形態の接触子を示す縦断面図
【図6】第2の実施形態の接触子の製造方法をA〜Lの順に示す縦断面図
【図7】第3の実施形態の接触子を示す縦断面図である。
【図8】第3の実施形態の接触子の製造方法をA〜Lの順に示す縦断面図
【図9】従来の接触子の製造方法をA〜Cの順に示す縦断面図
【符号の説明】
【0147】
1A〜1C 接触子
2A〜2C ばね部
3A〜3C 導電部
7B、7C 表面側導電部
8B、8C 裏面側導電部
20 プローブカード
20a 配線基板
30 表面側シード膜
31 裏面側シード膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブカードの配線基板の表面上においてセラミックを用いて形成されているばね部と、
少なくともバンプと対向する前記ばね部の表面を覆うように導電材料を用いて形成されているとともに、前記配線基板に形成された配線に接続されている導電部と
を備えていることを特徴とする接触子。
【請求項2】
前記ばね部は、前記バンプ側に突出した立体らせん状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の接触子。
【請求項3】
前記ばね部は、エアロゾルデポジション法により形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接触子。
【請求項4】
前記セラミックは、ジルコニア系セラミックである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の接触子。
【請求項5】
前記ジルコニア系セラミックは、イットリア安定化ジルコニアまたはイットリア部分安定化ジルコニアである
ことを特徴とする請求項4に記載の接触子。
【請求項6】
前記導電部は、前記ばね部の表面側においてNi−PまたはCuにNi−Pを積層させたCu/Ni−P積層金属を用いてめっき形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の接触子。
【請求項7】
前記導電部は、Crを下層とし、Cuを上層とするCr/Cu積層構造のシード膜を表面に有する前記ばね部の表面上に形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の接触子。
【請求項8】
前記導電部は、前記ばね部の表面側から電気的に接続されており、前記ばね部の裏面側においてCuを用いて形成されている
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の接触子。
【請求項9】
前記導電部は、Auを用いて形成されている保護膜を前記導電部の表面に有している
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の接触子。
【請求項10】
プローブカードの配線基板の表面上に第1レジストを錐体状に形成する工程1aと、
錐体状の前記第1レジストの表面に第2レジストを膜状に形成するとともに、前記第2レジストに対して立体らせん状の溝をパターンニングする工程1bと、
前記第2レジストを表面に有する錐体状の前記第1レジストにセラミックを噴出して成膜することにより、前記第2レジストに形成された溝の内部にセラミック製のばね部を形成する工程1cと、
前記ばね部の形成後に前記第2レジストおよび第1レジストを除去する工程1dと、
前記第2レジストおよび第1レジストの除去後、前記ばね部の表面および前記配線基板の表面にシード膜をスパッタ形成する工程1eと、
前記シード膜の表面および前記配線基板の表面に第3レジストを膜状に形成し、前記ばね部の表面および前記ばね部から前記配線基板に形成された配線までの間の前記配線基板の表面に形成された前記シード膜を露出させるパターンニングを前記第3レジストに行なう工程1fと、
前記第3レジストから露出した前記シード膜の表面に導電部をめっき形成する工程1gと、
前記導電部の形成後に前記第3レジストを除去するとともに、前記第3レジストの除去により露出した前記シード膜を除去する工程1hと
を備えていることを特徴とする接触子の製造方法。
【請求項11】
プローブカードの配線基板の表面上に第1レジストを錐体状に形成する工程2aと、
前記第1レジストの表面および前記配線基板の表面に裏面側シード膜をスパッタ形成する工程2bと、
前記裏面側シード膜の表面に第2レジストを膜状に形成するとともに、前記第2レジストに対して立体らせん状の溝をパターンニングする工程2cと、
前記第2レジストの溝から露出した前記裏面側シード膜に裏面側導電部を膜状に形成する工程2dと、
前記裏面側導電部の表面および前記第2レジストの表面にセラミックを噴出して成膜することにより、前記第2レジストの溝から露出した前記裏面側導電部の表面にセラミック製のばね部を形成する工程2eと、
前記ばね部の形成後に前記第2レジストを除去する工程2fと、
前記第2レジストの除去により露出した前記裏面側シード膜を除去する工程2gと、
前記裏面側シード膜の除去後、前記第1レジストを除去する工程2hと、
前記第1レジストの除去後、前記裏面側導電部の裏面側に形成された前記裏面側シード膜に電気的に接続するように前記ばね部の表面および前記配線基板の表面に表面側シード膜をスパッタ形成する工程2iと、
前記配線基板の表面上に形成された前記表面側シード膜に第3レジストを膜状に形成する工程2jと、
前記第3レジストの形成後に露出している前記表面側シード膜に表面側導電部を形成する工程2kと、
前記表面側導電部の形成後、前記第3レジストを除去するとともに前記第3レジストの除去により露出する前記表面側シード膜を除去する工程2lと
を備えていることを特徴とする接触子の製造方法。
【請求項12】
プローブカードの配線基板の表面上に第1レジストを錐体状に形成する工程3aと、
前記第1レジストの表面および前記配線基板の表面に裏面側シード膜をスパッタ形成する工程3bと、
前記裏面側シード膜の表面に第2レジストを膜状に形成するとともに、前記第2レジストに対して立体らせん状の溝をパターンニングする工程3cと、
前記第2レジストの溝から露出した前記裏面側シード膜の表面に裏面側導電部を膜状に形成する工程3dと、
前記裏面側導電部の形成後に前記第2レジストを除去し、前記第2レジストの除去により露出した前記裏面側シード膜を除去するとともに、前記裏面側シード膜の除去後に前記第1レジストを除去する工程3eと、
前記第2レジストの除去により露出した前記裏面側導電部の表面にセラミックを噴出して成膜することにより、前記裏面側導電部の表面にセラミック製のばね部を形成する工程3fと、
前記ばね部の形成後、前記裏面側導電部の裏面側に形成された前記裏面側シード膜に電気的に接続するように前記ばね部の表面および前記配線基板の表面側に表面側シード膜をスパッタ形成する工程3gと、
前記配線基板の表面側に形成された前記表面側シード膜に第3レジストを膜状に形成する工程3hと、
前記第3レジストの形成後、前記ばね部の表面に形成された前記表面側シード膜の表面に表面側導電部を形成する工程3iと、
前記表面側導電部の形成後、第3レジストを除去するとともに、前記第3レジストの除去により露出した前記表面側シード膜を除去する工程3jと
を備えていることを特徴とする接触子の製造方法。
【請求項13】
前記ばね部は、エアロゾルデポジション法により形成されている
ことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項14】
前記セラミックは、ジルコニア系セラミックである
ことを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項15】
前記ジルコニア系セラミックは、イットリア安定化ジルコニアまたはイットリア部分安定化ジルコニアである
ことを特徴とする請求項14に記載の接触子の製造方法。
【請求項16】
前記導電部または前記表面側導電部は、Ni−PまたはCuにNi−Pを積層させたCu/Ni−P積層金属を用いてめっき形成されている
ことを特徴とする請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項17】
前記裏面側導電部は、Cuを用いてめっき形成されている
ことを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項18】
前記シード膜または前記表面側シード膜は、Crを下層とし、Cuを上層とするCr/Cu積層構造に形成されている
ことを特徴とする請求項10から請求項17のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項19】
前記裏面側シード膜は、Tiを下層とし、Cuを上層とするTi/Cu積層構造に形成されている
ことを特徴とする請求項10から請求項18のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項20】
前記導電部または前記表面側導電部は、Auを用いて形成されている保護膜をその表面に有している
ことを特徴とする請求項10から請求項19のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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