説明

接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜の形成方法。

【課題】Ti,Ni,Cu,Fe,Al,Ta,Zrまたはこれらの合金からなる板、多孔質体、または耐食金属不織布などの耐食金属製基体の表面に接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜の形成方法を提供する。
【解決手段】Ti,Ni,Cu,Fe,Al,Ta,Zrもしくはこれらの合金からなる耐食金属板、独立気泡を有する耐食金属多孔質体、表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔を有する耐食金属多孔質体または耐食金属不織布からなる基体の表面に、Pt,Ir,Ru,Pd,Ti,Ta,Zr,Co,Sn,In,Zn,Reのうちの少なくとも1種を含有する導電性酸化物膜を形成し、次いで、これを非酸化性雰囲気下で熱処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、Ti,Ni,Cu,Fe,Al,Ta,Zrまたはこれらの合金からなる板、独立気泡を有する多孔質体、表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔(以下、連続空孔という)を有する多孔質体または不織布などの耐食金属製基体の表面に接触抵抗、特に初期接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜を形成する方法に関するものであり、この接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜を形成した被覆金属体は、燃料電池(例えば、固体高分子型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池)などの電極部材として使用することができ、これら電極部材とした使用した燃料電池は運転当初から高性能を長期間維持することができるものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池に組み込まれている電極部材は常に酸化しやすい環境下に置かれており、そのために、燃料電池に組み込まれている電極部材は耐食性を有するTi,Ni,Cu,Fe,Al,Ta,Zrまたはこれらの合金で構成されている。しかし、燃料電池に組み込まれている電極部材が耐食性に優れたTi,Ni,Cu,Fe,Al,Ta,Zrまたはこれらの合金で構成されていてもその耐食性には限界があり、さらに燃料電池に組み込まれている電極部材の表面が酸化して電気伝導性に乏しい酸化被膜が成長するようになり、その成長に伴って電極部材相互間の接触抵抗が増加し、そのために燃料電池の性能が低下する。
【0003】
これを防止するために前記耐食金属からなる基体の表面にPt,Ir,Ru,Pd,Ti,Ta,Zr,Co,Ni,Sn,In,Zn,Reのうちの少なくとも1種の元素を含有する導電性酸化物皮膜を形成して電極部材相互間の接触抵抗の増加を阻止し、燃料電池の性能の低下を防止している。前記耐食金属からなる基体の表面にPt,Ir,Ru,Pd,Ti,Ta,Zr,Co,Ni,Sn,In,Zn,Reのうちの少なくとも1種の元素を含有する導電性酸化物皮膜を形成するには、まずPt,Ir,Ru,Pd,Ti,Ta,Zr,Co,Ni,Sn,In,Zn,Reのうちの少なくとも1種の元素を含有するスラリー、ペーストなどの液状混合物を作製し、この液状混合物を電極部材の表面に塗布し、これを大気雰囲気中で乾燥し焼成することにより形成している(特許文献1、2、3参照)。
また、形成された導電性酸化物膜の構造安定化や基材との付着性向上のため、通常の焼成後に、さらに焼成雰囲気(酸化性雰囲気)で長時間保持する、いわゆるポストベーク処理が有効であることも知られている。このようにして形成された導電性酸化物皮膜は、金属酸化物を主体とする皮膜であるが、一部金属を含有している場合もあることも知られている。
さらに、電極部材表面に焼成した導電性酸化物を還元し、白金または白金を含む合金からなる金属膜を表面に形成させる目的から、導電性酸化物形成後に750℃以上の高温真空中で熱処理を行うポストベーク処理も知られている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特表2002−527875号公報
【特許文献2】特表2003−526891号公報
【特許文献3】再公表特許WO2003−26052号公報
【特許文献4】特開平07−051674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記耐食金属からなる基体の表面に導電性酸化物皮膜を形成すると確かに耐食性は向上し、長期間経過しても接触抵抗の増加はある程度阻止することができるものの、前記導電性酸化物皮膜を形成した電極部材は接触抵抗が依然として実用上無視できない程度に大きく、特に初期接触抵抗が大きいために、抵抗損失が大きくなって燃料電池の出力低下が避けられない。そのために、燃料電池への組込初期から長期間使用しても安定して低接触抵抗を発揮できる導電性酸化物皮膜を形成した燃料電池の電極部材の開発が求められていた。
この発明は、初期接触抵抗が低くさらに長期運転しても接触抵抗が増加して燃料電池の出力が低下することの無い導電性酸化物皮膜の形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、耐食金属からなる基体の表面に接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜を形成するべく研究を行った。その結果、Ti,Ni,Cu,Fe,Al,Ta,Zrまたはこれらの合金からなる板、独立気泡を有する多孔質体、連続空孔を有する多孔質体または不織布からなる基体の表面に、Pt,Ir,Ru,Pd,Ti,Ta,Zr,Co,Sn,In,Zn,Reのうちの少なくとも1種を含有する導電性酸化物膜を形成し、この導電性酸化物膜を形成した基体を大気雰囲気中で乾燥・焼成して得られた基体表面に導電性酸化物皮膜を形成したものを、さらに750℃未満の比較的低温の非酸化性雰囲気下で加熱する熱処理を施すと、導電性酸化物皮膜の接触抵抗、特に初期接触抵抗が一層低くなるという知見が得られたのである。
【0006】
この発明は、これら知見に基づいてなされたものであって、
(1)Ti,Ni,Cu,Fe,Al,Ta,Zrもしくはこれらの合金からなる耐食金属板、独立気泡を有する耐食金属多孔質体、表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔を有する耐食金属多孔質体または耐食金属不織布からなる基体の表面に、Pt,Ir,Ru,Pd,Ti,Ta,Zr,Co,Sn,In,Zn,Reのうちの少なくとも1種を含有する導電性酸化物膜を形成し、次いで、これを非酸化性雰囲気下で熱処理する接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜の形成方法、に特長を有するものである。
【0007】
前記従来の導電性酸化物膜の形成は、塗布層を酸化性雰囲気中で乾燥・焼成する通常の方法でなされ、その後、目的に応じて酸化性雰囲気中または真空雰囲気中を選択してポストベーク処理が行なわれる。
この従来の方法でポストベーク処理を行わずに作製した導電性酸化物皮膜を有する部材を燃料電池の電極部材に用いた場合、接触抵抗、特に初期接触抵抗が実用上十分に低いとは言えない。また、酸化性雰囲気中でポストベーク処理を行った部材についても、ポストベーク処理により全体として酸化が促進されるため、ポストベーク処理実施前と比較すると接触抵抗はむしろ増大する。
一方、ポストベーク処理を高温真空雰囲気中で行った部材については、焼成処理により形成された導電性酸化物膜が高温真空中での熱処理によって完全に還元されて金属化するため、接触抵抗はポストベーク処理前と比較すると低下するが、導電性酸化物に比べ、耐食性の点で劣る金属面が露出することにより、燃料電池部材として使用すると非導電性酸化物膜が形成されやすくなり、長期間に亘り低接触抵抗を維持することが困難である。
この発明は、耐食性を維持しつつ接触抵抗を低減する目的で比較的低温の真空あるいは不活性ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気(低酸素分圧雰囲気も含む)中でポストベーク処理を行なうものである。このような条件でポストベーク処理を行うことにより導電性酸化物皮膜が一部還元されて金属化するが、同時に焼成の際に形成された酸化物皮膜と基材との界面に存在する非導電性酸化物中の酸素原子の移動が促進され、導電性酸化物層に酸素原子が供給されるため、高温真空中でポストベーク処理を行った場合とは異なり、導電性酸化物層は完全には還元されずに酸化物単体もしくは酸化物と金属の混合状態が維持される。
以上の結果、導電性酸化物層そのものや導電性酸化物皮膜と基材との界面構造が変化し、接触抵抗、特に初期接触抵抗が著しく低下するものと考えられる。
また、このようにして得られた低接触抵抗を有する導電性酸化物皮膜は、それ自体の高い耐食性に加えて、酸化物と金属が混合した場合には、基材との密着性がより一層改善され、結果として低接触抵抗と耐久性を兼ね備えた皮膜となる。
このように前記酸化性雰囲気中で乾燥、焼成して得られた導電性酸化物膜をさらに750℃未満の比較的低温の非酸化性雰囲気で熱処理する工程はこの発明の特徴の一つであり、従来技術では行なわれていない工程である。前記非酸化性雰囲気は、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気または水素ガス雰囲気などの還元性雰囲気も含まれる。この非酸化性雰囲気中で熱処理する温度は350〜700℃に加熱することにより行なわれる。
【0008】
したがって、この発明は、
(2)前記非酸化性雰囲気は、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気または水素雰囲気である前記(1)記載の接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜の形成方法、
(3)前記不活性ガス雰囲気は、Arガス雰囲気または窒素ガス雰囲気である前記(2)記載の接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜の形成方法、
(4)非酸化性雰囲気下で行なう熱処理の加熱温度は350〜700℃の範囲内の温度である前記(1)記載の接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜の形成方法、に特徴を有するものである。
【0009】
この発明の接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜の形成方法において使用する基体は、Ti,Ni,Cu,Fe,Al,Ta,Zrまたはこれらの合金からなるいかなる耐食金属からなることが好ましく、この耐食金属は、板、独立気泡を有する多孔質体、連続空孔を有する多孔質体または不織布であってもよい。これら基体の成分組成はすでに知られているものである。
これら耐食金属からなる基体の表面に形成するPt,Ir,Ru,Pd,Ti,Ta,Zr,Co,Ni,Sn,In,Zn,Reのうちの少なくとも1種の元素を含有する酸化物は導電性を有することもすでに知られている。また、この発明における基体の表面に前記導電性酸化物膜を形成するには、まず、Pt,Ir,Ru,Pd,Ti,Ta,Zr,Co,Ni,Sn,In,Zn,Reのうちの少なくとも1種の元素を含有する溶液、ペーストなどを用意し、前記基体をこれら溶液、ペーストなどに浸漬するかまたは前記基体に前記溶液、ペーストをスプレー塗布、ブラシ塗布、スクリーン印刷するなどの任意の方法で塗布して基体表面に塗布層を形成し、この塗布層を乾燥したのち焼成することにより形成することができる。この発明において前記導電性酸化物膜の形成は、前記塗布、乾燥および焼成の操作を複数回繰り返し行なうことにより形成することが一層好ましい。このようにして得られたこの発明の基体の表面に形成された前記導電性酸化物膜は、さらに非酸化性雰囲気下で350〜700℃に加熱することにより熱処理される。この非酸化性雰囲気下で熱処理することにより得られた導電性酸化物膜が一層安定化し、さらに温度と雰囲気の効果によって導電性酸化物膜自体の構造と酸化物膜−基体間の界面構造が変化し、導電性が向上することで初期接触抵抗が低下するものと考えられる。
また、この比較的低温の非酸化性雰囲気下で熱処理して得られた導電性酸化物膜は、全て酸化物から構成されるとは限らず、皮膜の組成や熱処理条件によっては一部金属状態で含有していることもあり、かかる状態の導電性酸化物膜であってもこの発明の導電性酸化物膜に含まれる。
【0010】
前記非酸化性雰囲気中での熱処理温度を350〜700℃に規定した理由は、350℃未満で熱処理しても十分な接触抵抗の低下が見られないので好ましくなく、一方、700℃よりも高い温度で熱処理すると、基体の機械的特性の低下が懸念される上、導電性酸化物膜の組成にもよるが、導電性酸化物が完全に還元され金属状態となってしまい、燃料電池部材として必要な耐食性が不足する結果となることもあり好ましくない。したがって、熱処理温度は350〜700℃に定めた。前記非酸化性雰囲気中での熱処理時間は特に限定されるものではないが、10分〜10時間(好ましくは、30分〜5時間)であることが好ましい。
非酸化性雰囲気は、真空雰囲気の場合は100Pa以下の真空であることが好ましく、不活性ガスの場合は純度:99.9%以上のArガスや窒素ガスの雰囲気であることが好ましい。また、基体の材質によっては水素ガスを含む還元雰囲気であっても良く、ステンレス鋼、ニッケル合金、アルミ合金などに対してはArガスや窒素ガスに水素を1〜20体積%混合した混合ガスからなる雰囲気を選択することも可能である。
【発明の効果】
【0011】
この発明の接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜の形成方法は、各種基体の表面に接触抵抗、特に初期接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜を形成することができ、この導電性酸化物皮膜を形成した電極部材を燃料電池の電極部材として使用した場合に、燃料電池の高性能を長期間にわたって維持することができ、燃料電池などの性能の向上に大いに貢献し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
純チタン(JIS・2種)、316Lステンレス鋼、304ステンレス鋼、ニッケル合金(UNS 06022)合金、純銅、純ジルコニウム(ASTM R60702)、チタン合金(Ti−6Al−4V合金)およびアルミ合金(JIS・A5052)製の厚み約3.2mmの冷間圧延板から、100mm角の素板材を切り出し、これら素板材の両面を平面研削により厚み3mmとなるまで削ることにより縦:100mm、横:100mm、厚さ:3mmの寸法を有する各種板を作製した。これら各種板の両面を#600の耐水研磨紙で湿式研磨し、この状態で表面被覆処理を実施した後、それぞれ湿式の精密切断機(ファインカッター)を用いて縦:30mm、横:30mm、厚さ:3mmの寸法を有する板を切り出し、純チタン製板、316Lステンレス鋼製板、304ステンレス鋼製板、ニッケル合金(UNS 06022)製板、純銅製板、純ジルコニウム(ASTM R60702)製板、チタン合金(Ti−6Al−4V合金)製板およびアルミ合金(JIS A5052)製板を作製した。
【0013】
さらに、原料粉末として、平均粒径:10μmの純Ti粉末を用意し、さらに水溶性樹脂結合剤としてメチルセルロース10%水溶液、可塑剤としてエチレングリコール、起泡剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、発泡剤としてネオペンタンを用意し、原料粉末:20質量%、水溶性樹脂結合剤:10質量%、可塑剤:1質量%、起泡剤:1質量%、発泡剤:0.6質量%、残部:イオン交換水となるように配合し、15分間混練し、発泡スラリーを作製した。得られた発泡スラリーをブレードギャップ:0.5mmでドクターブレード法によりPETフィルム上にほぼA4サイズの成形体を作製した。得られた成形体をPETフィルム上にのせたまま恒温恒湿度槽に供給し、そこで温度:35℃、湿度:90%、25分間保持の条件で発泡させた後、温度:80℃、20分間保持の条件の温風乾燥を行い、スポンジ状グリーン成形体を作製した。このスポンジ状グリーン成形体をPETフィルムから剥がし、アルミナ板上に載せ、Ar雰囲気中、温度:550℃、180分保持の条件で脱脂し、続いて真空焼結炉で真空度:5×10−3Pa、温度:1,200℃に1時間保持の条件で真空焼結することにより気孔率90%を有し、厚さ:1.0mmを有するチタン製多孔質発泡金属板を作製した。得られたチタン製多孔質発泡金属板を縦:100mm、横:100mmの寸法となるようにレーザー加工機により切断しチタン製多孔質発泡金属板を製造し用意した。
【0014】
さらに、原料粉末として平均粒径:10μmの316Lステンレス鋼粉末、水溶性樹脂結合剤としてヒドロキシメチルセルロース10%水溶液、可塑剤としてエチレングリコール、起泡剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、発泡剤としてネオペンタンを準備し、原料粉末:20質量%、水溶性樹脂結合剤:10質量%、可塑剤:1質量%、起泡剤:1質量%、発泡剤:1質量%、残部:イオン交換水となるように配合し、15分間混練して発泡スラリーを作製した。得られた発泡スラリーをブレードギャップ:0.9mmでドクターブレード法により、PETフィルム上、ほぼA4サイズの成形体を作製した。
この成形体をPETフィルム上に載せたまま恒温恒湿度槽に移送し、そこで温度:35℃、湿度:95%、25分間保持の条件で発泡させた後、温度:80℃、20分間保持の条件で温風乾燥を行い、スポンジ状グリーン成形体を作製した。
この成形体をPETフィルムから剥がし、アルミナ板上に載せ、Ar雰囲気中で温度:550℃、180分保持の条件で脱脂し、続いて真空度:5×10−3Pa、温度:1,200℃に1時間保持の条件で真空焼結を行うことにより、気孔率:95%、厚さ2mmの316Lステンレス鋼製多孔質発泡金属板を作製した。
得られた316Lステンレス鋼製多孔質発泡金属板から、レーザー加工機によって縦:100mm、横:100mmの寸法となるようにレーザー加工機により切断し、316Lステンレス鋼製多孔質発泡金属板を製造し用意した。
【0015】
さらに、原料粉末として純度:99.9%、平均粒径:10μmの銅粉末、水溶性樹脂結合剤としてヒドロキシメチルセルロース10%水溶液、可塑剤としてエチレングリコール、起泡剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、発泡剤としてネオペンタンを準備し、原料粉末:20質量%、水溶性樹脂結合剤:10質量%、可塑剤:1質量%、起泡剤:1質量%、発泡剤:0.6質量%、残部:イオン交換水となるように配合し、15分間混練して発泡スラリーを作製した。得られた発泡スラリーをブレードギャップ:0.9mmでドクターブレード法により、PETフィルム上、ほぼA4サイズの成形体を作製した。
この成形体をPETフィルム上に載せたまま恒温恒湿度槽に移送し、そこで温度:35℃、湿度:95%、25分間保持の条件で発泡させた後、温度:80℃、20分間保持の条件で温風乾燥を行い、スポンジ状グリーン成形体を作製した。
この成形体をPETフィルムから剥がし、アルミナ板上に載せ、Ar雰囲気中で温度:550℃、180分保持の条件で脱脂し、続いて真空度:5×10−3Pa、温度:1,000℃に1時間保持の条件で真空焼結を行うことにより、気孔率:93%、厚さ1.8mmの銅製多孔質発泡金属板を作製した。
得られた銅製多孔質発泡金属板から、レーザー加工機によって縦:100mm、横:100mmの寸法となるようにレーザー加工機により切断し、銅製多孔質発泡金属板を製造し用意した。
さらに、市販のチタン不織布(商品名:Bekinit 厚さ0.3mm)および市販の多孔質ニッケル板(商品名:セルメット#7)を用意した。これら用意した各種板を使用して、下記の実施例を実施した。
【0016】
実施例1
316Lステンレス鋼製板をメタノール中での超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。さらにイリジウム源として塩化イリジウム試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去した316Lステンレス鋼製板を前記溶液中に浸漬した後、乾燥し、475℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、316Lステンレスの表面に導電性酸化物である酸化イリジウム膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法1を実施した。
この従来法1で得られた316Lステンレス鋼製板の表面に酸化イリジウム膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらに真空雰囲気中、温度:475℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製することにより本発明法1を実施した。
【0017】
実施例2
316Lステンレス鋼製板をメタノール中での超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。さらにルテニウム源として塩化ルテニウム試薬を使用したペーストを用意した。前記表面酸化膜を除去した316Lステンレス鋼製板の両面にスプレー吹付法により塗布した後、乾燥し、450℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、316Lステンレス鋼製板の表面に導電性酸化物である酸化ルテニウム膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法2を実施した。
この従来法2で得られた316Lステンレス鋼製板の表面に酸化ルテニウム膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらにAr雰囲気中、温度:550℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製することにより本発明法2を実施した。
【0018】
実施例3
316Lステンレス鋼製板をメタノール中での超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。さらにスズ源として塩化第一スズ試薬、インジウム源として塩化インジウム試薬を使用したペーストを用意した。このペーストをロール転写法により前記表面酸化膜を除去した316Lステンレス鋼製板の片面に塗布し乾燥しさらに裏返してその裏面に塗布し乾燥したのち、600℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成する操作を2回繰り返すことにより316Lステンレス鋼製板の表面に導電性酸化物であるスズ/インジウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法3を実施した。
この従来法3で得られた316Lステンレス鋼製板の表面にスズ/インジウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらにAr雰囲気中、温度:650℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製することにより本発明法3を実施した。
【0019】
実施例4
316Lステンレス鋼製板をメタノール中での超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。さらに、イリジウム源として塩化イリジウム酸とタンタル源としてブチルタンタレートを使用した溶液を用意した。この溶液をロール転写法により表面酸化膜を除去した316Lステンレス鋼製板の片面に塗布し乾燥しさらに裏返してその裏面に塗布し乾燥したのち、500℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、316Lステンレス鋼製板の表面に導電性酸化物であるイリジウム/タンタル複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法4を実施した。
この従来法4で得られた316Lステンレス鋼製板の表面にイリジウム/タンタル複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらに真空雰囲気中、温度:500℃に4時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法4を実施した。
【0020】
実施例5
304ステンレス鋼製板をメタノール中での超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。。さらにコバルト源として硝酸コバルト試薬、ニッケル源として硝酸ニッケル試薬を使用した溶液を用意した。この溶液中に前記表面酸化膜を除去した304ステンレス鋼製板を浸漬した後、乾燥し、450℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成する操作を2回繰り返すことにより、304ステンレス鋼製板の表面に導電性酸化物であるコバルト/ニッケル複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法5を実施した。
この従来法5で得られた304ステンレス鋼製板の表面にコバルト/ニッケル複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらにAr雰囲気中、温度:500℃に5時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法5を実施した。
【0021】
実施例6
304ステンレス鋼製板をメタノール中での超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。さらに、亜鉛源として塩化亜鉛試薬、白金源として塩化白金試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去した304ステンレス鋼製板を前記溶液中に浸漬し、乾燥し、400℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、304ステンレス鋼製板の表面に導電性酸化物である亜鉛/白金複合酸化物層を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法6を実施した。
この従来法6で得られた304ステンレス鋼製板の表面に亜鉛/白金複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらに窒素雰囲気中、温度:400℃に2時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法6を実施した。
【0022】
実施例7
純チタン製板を沸騰している20%塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらに、ルテニウム源として塩化ルテニウム試薬、チタン源としてブチルチタネート試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去した純チタン製板を前記溶液中に浸漬した後、乾燥し、450℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、純チタン製板の表面に導電性酸化物であるルテニウム/チタン複合酸化物層を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法7を実施した。
この従来法7で得られた純チタン製板の表面にルテニウム/チタン複合酸化物層を形成した導電性酸化物被覆板をさらに真空雰囲気中、温度:450℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法7を実施した。
【0023】
実施例8
純チタン製板を沸騰している20%塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらに、イリジウム源として塩化イリジウム酸試薬を使用したペーストを用意した。このペーストを表面酸化膜を除去した純チタン製板の片面にスプレー吹付法により塗布し乾燥し、裏返して裏面に塗布と乾燥した後、500℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、純チタン製板の表面に導電性酸化物である酸化イリジウム膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法8を実施した。この従来法8で得られた純チタン製板の表面に酸化イリジウムを形成した導電性酸化物被覆板をさらに真空雰囲気中、温度:500℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法8を実施した。
【0024】
実施例9
純チタン製板を沸騰している20%塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらにイリジウム源として塩化イリジウム酸とタンタル源としてブチルタンタレートを使用した溶液を用意した。表面酸化膜を除去した純チタン製板を前記溶液中に浸漬したのち、乾燥し、500℃、大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を4回繰り返すことにより、純チタン製板の表面に導電性酸化物であるイリジウム/タンタル複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法9を実施した。
この従来法9で得られた純チタン製板の表面にイリジウム/タンタル複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらに真空雰囲気中、温度:500℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法9を実施した。
【0025】
実施例10
純チタン製板を沸騰している20% 塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらに、ルテニウム源として塩化ルテニウム試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去した純チタン製板を前記溶液中に浸漬した後、乾燥し、425℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、純チタン製板の表面に導電性酸化物である酸化ルテニウム膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法10を実施した。
この従来法10で得られた純チタン製板の表面に酸化ルテニウム膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらにAr雰囲気中、温度:400℃に6時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法10を実施した。
【0026】
実施例11
純チタン製板を大気中450℃で予備酸化した。さらに、ルテニウム源として塩化ルテニウム酸試薬を使用した溶液を用意した。前記予備酸化した純チタン製板を前記溶液中に浸漬した後、乾燥し、450℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を4回繰り返すことにより、純チタン製板の表面に導電性酸化物であるチタン/ルテニウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法11を実施した。
この従来法11で得られた純チタン製板の表面にチタン/ルテニウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらにAr雰囲気中、温度:450℃に1時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法11を実施した。
【0027】
実施例12
純チタン製板を大気中450℃で予備酸化した。さらに、イリジウム源として塩化イリジウム酸とタンタル源としてブチルタンタレートを使用した溶液を用意した。前記予備酸化した純チタン製板の片面に前記溶液をブラシにより塗布し乾燥しさらに裏返して裏面に塗布し乾燥したのち、450℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、純チタン製板の表面に導電性酸化物であるチタン/イリジウム/タンタル複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法12を実施した。
この従来法12で得られた純チタン製板の表面にチタン/イリジウム/タンタル複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらに真空雰囲気中、温度:550℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法12を実施した。
【0028】
実施例13
チタン合金(Ti−6Al−4V合金)製板を沸騰している20%塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらに、レニウム源として塩化レニウム試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去したチタン合金(Ti−6Al−4V合金)製板を前記溶液中に浸漬した後、乾燥し、500℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、チタン合金製板の表面に導電性酸化物である酸化レニウム膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法13を実施した。
この従来法13で得られたチタン合金製板の表面に酸化レニウムを形成した導電性酸化物被覆板をさらに真空雰囲気中、温度:500℃に0.5時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法13を実施した。
【0029】
実施例14
チタン合金(Ti−6Al−4V合金)製板を沸騰している20% 塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらにイリジウム源として塩化イリジウムを使用した溶液を用意した。この溶液をロール転写法により表面酸化膜を除去したチタン合金(Ti−6Al−4V合金)製板の片面に塗布し乾燥しさらに裏返して裏面に塗布し乾燥したのち、525℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、チタン合金(Ti−6Al−4V合金)製板の表面に導電性酸化物である酸化イリジウム膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法14を実施した。
この従来法14で得られたチタン合金(Ti−6Al−4V合金)製板の表面に酸化イリジウム膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらに真空雰囲気中、温度:500℃に2時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法14を実施した。
【0030】
実施例15
ニッケル合金(UNS 06022)製板を沸騰している20%塩酸溶液中で10分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させて表面酸化膜を除去した。さらに、イリジウム源としての塩化イリジウム酸と白金源としての塩化白金酸を使用したペーストを用意した。ロール転写法により前記ペーストを前記表面酸化膜を除去したニッケル合金(UNS 06022)製板の片面に塗布し乾燥しさらに裏返して裏面に塗布し乾燥したのち、450℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、前記ニッケル合金製板の表面に導電性酸化物である白金/イリジウム複合酸化物膜を形成して導電性酸化物被覆板を作製し、従来法15を実施した。
この従来法15で得られたニッケル合金製板の表面に白金/イリジウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらにAr−10%水素雰囲気中、温度:550℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法15を実施した。
【0031】
実施例16
ニッケル合金(UNS 06022)製板を沸騰している20%塩酸溶液中で10分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらにスズ源として塩化第一スズ試薬、ルテニウム源として塩化ルテニウム試薬を用いた溶液を用意した。この溶液中に前記表面酸化膜を除去したニッケル合金(UNS 06022)製板を浸漬した後、乾燥し、600℃、大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、ニッケル合金(UNS 06022)製板の表面に導電性酸化物であるスズ/ルテニウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法16を実施した。
この従来法16で得られたニッケル合金製板の表面にスズ/ルテニウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらに窒素−10%水素の雰囲気中、温度:460℃に4時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法16を実施した。
【0032】
実施例17
ニッケル合金(UNS 06022)製板を沸騰している20% 塩酸溶液中で10分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらにパラジウム源として塩化パラジウム試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去したニッケル合金(UNS 06022)製板の片面にロール転写法により前記溶液を塗布し乾燥しさらに裏返して裏面に塗布し乾燥したのち、400℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、ニッケル合金(UNS 06022)製板の表面に導電性酸化物である酸化パラジウム膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法17を実施した。
この従来法17で得られたニッケル合金製板の表面に酸化パラジウム膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらにAr雰囲気中、温度:400℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法17を実施した。
【0033】
実施例18
先に用意したアルミ合金(JIS A5052)製板をルテニウム源として塩化ルテニウムとチタン源としてブチルチタネートを使用したペースト中に浸漬し、乾燥し、375℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことによりアルミ合金製板表面に導電性酸化物であるルテニウム/チタン複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法18を実施した。
この従来法18で得られたアルミ合金製板の表面にルテニウム/チタン複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらに真空雰囲気中、温度:375℃に1時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法18を実施した。
【0034】
実施例19
純銅製板を水素雰囲気中500℃で加熱し、表面酸化膜を還元除去した。さらにパラジウム源として塩化パラジウム、ルテニウム源として塩化ルテニウムを使用したペーストを用意した。このペーストを表面酸化膜を還元除去した純銅製板の表面にブラシで塗布した後、乾燥し、裏返して、再度この塗布と乾燥を行った後、450℃、大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、純銅製板表面に導電性酸化物であるパラジウム/ルテニウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法19を実施した。
この従来法19で得られた純銅製板の表面にパラジウム/ルテニウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらにAr雰囲気中、温度:450℃に1時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法19を実施した。
【0035】
実施例20
高純度銅製板を水素雰囲気中500℃で加熱し、表面酸化膜を還元除去した。さらにイリジウム源として塩化イリジウム酸を使用した溶液を用意した。この溶液をブラシで前記表面酸化膜を還元除去した高純度銅製板の表面に塗布した後、乾燥し、これを裏返して表面に塗布した後、乾燥し、500℃、大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、高純度銅製板表面に導電性酸化物である酸化イリジウム膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法20を実施した。
この従来法20で得られた純銅製板の表面に酸化イリジウム膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらにAr雰囲気中、温度:500℃に1時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法20を実施した。
【0036】
実施例21
純ジルコニウム(ASTM R60702)製板を大気中300℃で予備酸化した。さらにイリジウム源として塩化イリジウム酸試薬を使用したペーストを用意した。この予備酸化した純ジルコニウム(ASTM R60702)製板の片面にスプレー吹付法により前記ペーストを塗布し乾燥しさらに裏返して裏面に塗布し乾燥したのち、475℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、ジルコニウム板の表面に導電性酸化物であるジルコニウム/イリジウム複合酸化物膜を形成して導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法21を実施した。
この従来法21で得られた純ジルコニウム(ASTM R60702)製板の表面にジルコニウム/イリジウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらに真空雰囲気中、温度:475℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法21を実施した。
【0037】
実施例22
純ジルコニウム(ASTM R60702)製板を沸騰している20%塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらにジルコニウム源としてオキシ塩化ジルコニウム、ルテニウム源として塩化ルテニウム酸試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去した純ジルコニウム(ASTM R60702)製板の片面に前記溶液をブラシで塗布し乾燥しさらに裏返して裏面に塗布し乾燥したのち、450℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、ジルコニウム板表面に導電性酸化物であるジルコニウム/ルテニウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆板を作製することにより従来法22を実施した。
この従来法22で得られた純ジルコニウム(ASTM R60702)製板の表面にジルコニウム/ルテニウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆板をさらに真空雰囲気中、温度:450℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆板を作製し、本発明法22を実施した。
【0038】
実施例23
316Lステンレス鋼製板をメタノール中での超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。さらに、チタン源としてブチルチタネート、レニウム源として塩化レニウム試薬を使用した溶液を用意した。表面酸化膜を除去した316Lステンレス鋼製発泡金属板を前記溶液中に浸漬し、乾燥し、450℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、ステンレス製発泡金属の骨格表面に導電性酸化物であるチタン/レニウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法23を実施した。
この従来法23で得られた316Lステンレス鋼製発泡金属板の表面にチタン/レニウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆発泡金属板をさらにAr雰囲気中、温度:450℃に1時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆発泡金属板を作製し、本発明法23を実施した。
【0039】
実施例24
316Lステンレス鋼製板をメタノール中での超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。さらにイリジウム源として塩化イリジウム試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去した316Lステンレス鋼製発泡金属板を前記溶液中に浸漬し、乾燥し、500℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、ステンレス製発泡金属の骨格表面に導電性酸化物である酸化イリジウム膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法24を実施した。
この従来法24で得られた316Lステンレス鋼製発泡金属板の表面に酸化イリジウム膜を形成した導電性酸化物被覆発泡金属板をさらにAr−10%水素の雰囲気中、温度:500℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆発泡金属板を作製し、本発明法24を実施した。
【0040】
実施例25
チタン製多孔質発泡金属板をアセトン中で超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。さらに、タンタル源としてブチルタンタレート、イリジウム源として塩化イリジウム試薬を使用した溶液を用意した。前記脱脂し乾燥したチタン製多孔質発泡金属板を前記溶液中に浸漬し、乾燥し、525℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、チタン製多孔質発泡金属板の骨格表面に導電性酸化物であるタンタル/イリジウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法25を実施した。
この従来法25で得られたチタン製多孔質発泡金属板の表面にタンタル/イリジウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆発泡金属板をさらにAr雰囲気中、温度:500℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆発泡金属板を作製し、本発明法25を実施した。
【0041】
実施例26
チタン製多孔質発泡金属板を沸騰している20%塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらにルテニウム源として塩化ルテニウム酸と白金源としてジニトロジアンミン白金を使用したペーストを用意した。ロール転写法によりペーストを前記表面酸化膜を除去したチタン製多孔質発泡金属板の片面に塗布し乾燥しさらに裏返して裏面に塗布し乾燥したのち、450℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、チタン製多孔質発泡金属板の骨格表面に導電性酸化物である白金/ルテニウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法26を実施した。
この従来法26で得られたチタン製多孔質発泡金属板の表面に白金/ルテニウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆発泡金属板をさらにAr雰囲気中、温度:450℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆発泡金属板を作製し、本発明法26を実施した。
【0042】
実施例27
チタン製多孔質発泡金属板を大気中500℃で予備酸化した。さらに、イリジウム源として塩化イリジウム酸試薬を使用した溶液を用意した。予備酸化したチタン製多孔質発泡金属板を前記溶液中に浸漬した後、乾燥し、500℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、チタン製多孔質発泡金属板の骨格表面に導電性酸化物であるチタン/イリジウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法27を実施した。
この従来法27で得られたチタン製多孔質発泡金属板の表面にチタン/イリジウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆発泡金属板をさらに真空雰囲気中、温度:650℃に1時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆発泡金属板を作製し、本発明法27を実施した。
【0043】
実施例28
チタン製多孔質発泡金属板を沸騰している20%塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらに、インジウム源として塩化インジウム試薬、スズ源として塩化第一スズ試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去したチタン製多孔質発泡金属板を溶液中に浸漬し、乾燥し、500℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を4回繰り返すことにより、チタン製多孔質発泡金属板の骨格表面に導電性酸化物であるインジウム/スズ複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法28を実施した。
この従来法28で得られたチタン製多孔質発泡金属板の表面にインジウム/スズ複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆発泡金属板をさらに真空雰囲気中、温度:500℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆発泡金属板を作製し、本発明法28を実施した。
【0044】
実施例29
チタン製多孔質発泡金属板をアセトン中での超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。さらにイリジウム源として塩化イリジウム試薬、コバルト源として塩化コバルト試薬を使用した溶液を用意した。前記脱脂し、乾燥したチタン製多孔質発泡金属板を前記溶液中に浸漬し、乾燥し、550℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、チタン製多孔質発泡金属板の骨格表面に導電性酸化物であるイリジウム/コバルト複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法29を実施した。
この従来法29で得られたチタン製多孔質発泡金属板の表面にイリジウム/コバルト複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆発泡金属板をさらに真空雰囲気中、温度:700℃に1時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆発泡金属板を作製し、本発明法29を実施した。
【0045】
実施例30
チタン製多孔質発泡金属板をアセトン中で超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。さらにチタン源としてブチルチタネート、ルテニウム源として塩化ルテニウム酸を使用した溶液を用意した。前記脱脂し、乾燥したチタン製多孔質発泡金属板を前記溶液中に浸漬し、乾燥し、450℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を4回繰り返すことにより、チタン製多孔質発泡金属板の骨格表面に導電性酸化物であるチタン/ルテニウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法30を実施した。
この従来法30で得られたチタン製多孔質発泡金属板の表面にチタン/ルテニウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆多孔質金属板をさらにAr雰囲気中、温度:450℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆多孔質金属板を作製し、本発明法30を実施した。
【0046】
実施例31
チタン製多孔質発泡金属板を沸騰している20%塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらにチタン源としてブチルチタネート、イリジウム源として塩化イリジウム試薬を使用したペーストを用意した。前記表面酸化膜を除去したチタン製多孔質発泡金属板の片面にスプレー法によりペーストを塗布し乾燥しさらに裏返して裏面に塗布し乾燥したのち、475℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、チタン製多孔質発泡金属板の骨格表面に導電性酸化物であるチタン/イリジウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法31を実施した。
この従来法31で得られたチタン製多孔質発泡金属板の表面にチタン/イリジウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆多孔質金属板をさらに真空雰囲気中、温度:500℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆多孔質金属板を作製し、本発明法31を実施した。
【0047】
実施例32
チタン製多孔質発泡金属板を大気中450℃で予備酸化した。さらに白金源として塩化白金酸を使用した溶液を用意した。前記予備酸化したチタン製多孔質発泡金属板を前記溶液中に浸漬し、乾燥し、450℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、チタン製多孔質発泡金属板の骨格表面に導電性酸化物であるチタン/白金複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法32を実施した。
この従来法32で得られたチタン製多孔質発泡金属板の表面にチタン/白金複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆多孔質金属板をさらにAr雰囲気中、温度:450℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆多孔質金属板を作製し、本発明法32を実施した。
【0048】
実施例33
チタン製多孔質発泡金属板を沸騰している20%塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらにルテニウム源として塩化ルテニウム酸試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去したチタン製多孔質発泡金属板の表面にブラシにより溶液を塗布した後、乾燥し、裏返して塗布した後乾燥し、450℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を3回繰り返し、これを裏返して同様の操作をすることにより、発泡チタンの骨格表面にルテニウム酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法33を実施した。
この従来法33で得られたチタン製多孔質発泡金属板の表面にルテニウム酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆多孔質金属板をさらにAr雰囲気中、温度:400℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆多孔質金属板を作製し、本発明法33を実施した。
【0049】
実施例34
純チタン製不織布(商品名:Bekinit 厚さ0.3mm)を80℃の20%塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらに、タンタル源としてブチルタンタレート、イリジウム源として塩化イリジウム試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去した純チタン製不織布(商品名:Bekinit 厚さ0.3mm)を前記溶液中に浸漬したのち、乾燥し、500℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、純チタン製不織布の骨格表面に導電性酸化物であるタンタル/イリジウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆純チタン製不織布を作製することにより従来法34を実施した。
この従来法34で得られたチタン製不織布の表面にタンタル/イリジウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆不織布をさらに真空雰囲気中、温度:475℃に1時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆不織布を作製し、本発明法34を実施した。
【0050】
実施例35
純チタン製不織布(商品名:Bekinit 厚さ0.3mm)を80℃の20%塩酸溶液中で1分間煮沸し、イオン交換水で洗浄、乾燥させ表面酸化膜を除去した。さらに、ルテニウム源として塩化ルテニウム試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去した純チタン製不織布(商品名:Bekinit 厚さ0.3mm)の片面にスプレー吹付法により塗布し乾燥しさらに裏返して裏面に塗布し乾燥したのち、450℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を4回繰り返すことにより、ルテニウム製不織布の骨格表面に導電性酸化物である酸化ルテニウム膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法35を実施した。
この従来法35で得られたチタン製多孔質発泡金属板の表面に酸化ルテニウム膜を形成した導電性酸化物被覆多孔質金属板をさらにAr雰囲気中、温度:450℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆多孔質金属板を作製し、本発明法35を実施した。
【0051】
実施例36
多孔質ニッケル板(商品名:セルメット#7)をメタノール中での超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。さらに、イリジウム源として塩化イリジウム試薬を使用したペーストを用意した。前記表面酸化膜を除去した多孔質ニッケル板(商品名:セルメット#7)の片面に前記ペーストをブラシで塗布し乾燥しさらに裏返して裏面に塗布し乾燥したのち、550℃大気中で焼成し、この塗布、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、多孔質ニッケル板の表裏面の骨格表面に導電性酸化物であるイリジウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法36を実施した。
この従来法36で得られた多孔質ニッケル板(商品名:セルメット#7)の表面にイリジウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆発泡金属板をさらにAr雰囲気中、温度:550℃に2時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆多孔質金属板を作製し、本発明法36を実施した。
【0052】
実施例37
多孔質ニッケル板(商品名:セルメット#7)をメタノール中での超音波洗浄により脱脂し、乾燥した。さらにチタン源としてブチルチタネート、パラジウム源として塩化パラジウム試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去した多孔質ニッケル板(商品名:セルメット#7)を溶液に浸漬し、乾燥し、450℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を3回繰り返すことにより、多孔質ニッケル板の骨格表面に導電性酸化物であるチタン/パラジウム複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法37を実施した。
この従来法37で得られた多孔質ニッケル板の表面にチタン/パラジウム複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆多孔質金属板をさらに真空雰囲気中、温度:400℃に3時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆多孔質金属板を作製し、本発明法37を実施した。
【0053】
実施例38
銅製多孔質発泡金属板を、水素雰囲気中、700℃で加熱することにより表面酸化膜を除去した。さらに、イリジウム源として塩化イリジウム、チタン源としてブチルチタネート試薬を使用した溶液を用意した。前記表面酸化膜を除去した銅製多孔質発泡金属板を前記溶液中に浸漬し、乾燥した後、500℃大気中で焼成し、この浸漬、乾燥および焼成の操作を2回繰り返すことにより、発泡銅の骨格表面にイリジウム/チタン複合酸化物膜を形成し、導電性酸化物被覆発泡金属板を作製することにより従来法38を実施した。
この従来法38で得られた銅製多孔質発泡金属板の表面にイリジウム/チタン複合酸化物膜を形成した導電性酸化物被覆多孔質金属板をさらにAr−10%水素の雰囲気中、温度:500℃に2時間保持の条件で加熱することにより熱処理して導電性酸化物被覆多孔質金属板を作製し、本発明法38を実施した。
【0054】
従来法1〜22で作製した導電性酸化物被覆板および本発明法1〜22で作製した熱処理した導電性酸化物被覆板並びに従来法23〜38で作製した導電性酸化物被覆多孔質板および本発明法23〜38で作製した熱処理した導電性酸化物被覆多孔質板を、それぞれ縦:60mm、横:60mm、厚さ:30mmの寸法を有する2個の銅製ブロック(上下面平行度調整済、試料接触面は鏡面)間に、銅製ブロックと中心を合わせるようにそれぞれ挟み、油圧プレスを用いて、銅製ブロックの上から、従来法1〜22で作製した導電性酸化物被覆板および本発明法1〜22で作製した熱処理して導電性酸化物被覆板並びに従来法23〜38で作製した導電性酸化物被覆多孔質板および本発明法23〜38で作製した熱処理して導電性酸化物被覆多孔質板に、それぞれ1MPaの負荷をかけ、銅製ブロックに取り付けた電極間の抵抗値を端子直流4端子方式の微小抵抗測定計(HIOKIミリオームハイテスタ3227)により測定し、得られた抵抗値から初期接触抵抗値を算出し、その結果を表1〜2に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表1に示される結果から、従来法1で作製した導電性酸化物被覆板と本発明法1で作製した熱処理して導電性酸化物被覆板を比較すると、本発明法1で作製した熱処理して導電性酸化物被覆板は、従来法1で作製した導電性酸化物被覆板に比べて初期接触抵抗値が低いことが分かる。同様にして表1に示される結果から、従来法2〜22で作製した導電性酸化物被覆板と同じ番号の本発明法2〜22で作製した熱処理して導電性酸化物被覆板をそれぞれ比較すると、本発明法2〜22で作製した熱処理して導電性酸化物被覆板は、従来法2〜22で作製した導電性酸化物被覆板に比べて初期接触抵抗値が低いことが分かる。
さらに、表2に示される結果から、同様にして従来法23〜38で作製した導電性酸化物被覆多孔質板と同じ番号の本発明法23〜38で作製した熱処理して導電性酸化物被覆多孔質板をそれぞれ比較すると、本発明法23〜38で作製した熱処理して導電性酸化物被覆多孔質板は従来法23〜38で作製した導電性酸化物層被覆多孔質板に比べて、初期接触抵抗値が低いことが分かる。
このように従来法1〜38で作製した導電性酸化物層被覆多孔質板に対して、750℃未満の比較的低温の非酸化性雰囲気中での熱処理を施した本発明法1〜38で作製した導電性酸化物被覆多孔質板は顕著に初期接触抵抗が低下していることが確認される。
初期接触抵抗の低下は、当該熱処理の効果によって、導電性酸化物膜自体と酸化膜−基体間の界面構造が変化したことにより導電性が向上したことが原因によると考えられるが、一方で当該熱処理では導電性酸化物が完全な金属状態に還元されることはなく、酸化物単体もしくは酸化物−金属の混合体となっていることから、燃料電池部材として必要な耐食性(長時間耐久性)も同時に有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ti,Ni,Cu,Fe,Al,Ta,Zrもしくはこれらの合金からなる耐食金属板、独立気泡を有する耐食金属多孔質体、表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔を有する耐食金属多孔質体または耐食金属不織布からなる基体の表面に、Pt,Ir,Ru,Pd,Ti,Ta,Zr,Co,Sn,In,Zn,Reのうちの少なくとも1種を含有する導電性酸化物膜を形成し、次いで、これを非酸化性雰囲気下で熱処理することを特徴とする接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜の形成方法。
【請求項2】
前記非酸化性雰囲気は、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気であることを特徴とする請求項1記載の接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜の形成方法。
【請求項3】
前記不活性ガス雰囲気は、アルゴンガス雰囲気または窒素ガス雰囲気であることを特徴とする請求項2記載の接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の非酸化性雰囲気下で行なう熱処理温度は350〜700℃の範囲内の温度であることを特徴とする接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜の形成方法。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の方法で形成した接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜。
【請求項6】
Ti,Ni,Cu,Fe,Al,Ta,Zrもしくはこれらの合金からなる耐食金属板、独立気泡を有する耐食金属多孔質体、表面に開口し内部の空孔に連続している連続空孔を有する耐食金属多孔質体または耐食金属不織布からなる基体の表面に請求項5記載の接触抵抗の低い導電性酸化物皮膜を形成した燃料電池用電極部材。
【請求項7】
請求項6記載の燃料電池は、固体高分子型燃料電池またはダイレクトメタノール型燃料電池であることを特徴とする燃料電池用電極部材。

【公開番号】特開2008−166083(P2008−166083A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353604(P2006−353604)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(000136561)株式会社フルヤ金属 (48)
【Fターム(参考)】