説明

接触透明性に優れたポリエチレンブレンド

【課題】耐環境応力亀裂性、剛性、接触透明性、光沢に優れ、しかも加工性に優れた、物品製造に適したポリエチレン組成物。
【解決手段】メタロセン−直鎖低密度ポリエチレンと、チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒系を用いて製造したマルチモダルな高密度ポリエチレンとから成るポリエチレン組成物の製造方法および使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形の用途で使用するのに適した優れた光学特性および機械特性を有するポリエチレンブレンドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの用途で、靭性、強度および耐環境応力亀裂性(environmental stress crackingresistance、ESCR)が強化されたポリエチレンは重要である。高分子量ポリエチレンを用いることでこれらの特性を強化することは容易に達成できるが、ポリマーの分子量を増えると、樹脂の加工性が低下してしまう。分子量分布が広いポリマーまたはビモダル(bimodal)MWDのポリマーにすることによって高分子量樹脂に特徴的な所望の特性を維持しながら、加工性、特に押出性を向上させることができる。
【0003】
ビモダルまたは分子量分布の広い樹脂を製造する方法はいくつかあり、溶融混合する方法、反応装置配置を直列にする方法、単一反応装置でデュアルサイトの触媒を使用する方法等が知られている。単一反応装置でデュアルサイトの触媒を使用してビモダルな樹脂を製造することも公知である。
【0004】
ポリオレフィンの製造に用いられるクロム触媒は分子量分布を広げる傾向があり、ビモダルな分子量分布になることもあるが、通常はこの樹脂の低分子量部分には多量のコモノマーが含まれている。ビモダルな分子量分布は、分子量分布が広いことで加工特性が許容できるものになり、特性も優れたものになる。高分子量と低分子量の成分量を調節することで機械特性を調節するのも可能になる。
【0005】
チーグラー・ナッタ触媒の場合には2つの反応装置を直列で用いることでビモダルなポリエチレンが製造できるということは知られている。一般には第1の反応装置でチーグラ・ナッタ触媒の存在下で水素とエチレンとの反応により低分子のホモポリマーが作られる。このプロセスでは水素を過剰に用いることが不可欠なため、生成物を第2反応装置へ移す前に第1反応装置から全ての水素を除去する必要がある。第2反応装置ではエチレンとヘキセンとのコポリマーが作られ、高分子量のポリエチレンが生成する。逆の配置を用いることもできる。
【0006】
ポリオレフィンの製造ではメタロセン触媒も周知である。例えば下記文献にはポリオレフィン、例えばマルチモダルなまたは少なくともビモダルな分子量分布を有するポリエチレンの製造方法が開示されている。
【特許文献1】欧州特許第EP−A−0619325号
【0007】
この特許では少なくとも2種のメタロセンを含む触媒系が用いられる。用いるメタロセンの例はビス(シクロペンタジエニル)二塩化ジルコニウムとエチレンビス(インデニル)二塩化ジルコニウムである。この2種のメタロセン触媒を同じ反応装置内で用いて少なくともビモダルな分子量分布にすることができる。別の例では互いに異なる重合条件下で運転される互いに直列に接続された2つのループ反応装置内で単一のメタロセン触媒成分を用いることができる。例えば、第1ループ反応装置で水素の存在下に低分子量成分を作り、第2ループ反応装置でコモノマーの存在下に高分子量成分を作るか、この逆にする。
【0008】
ブロー成形用途では種々の樹脂または樹脂ブレンドが用いられているが、接触透明性(contact transparency)、光沢 (gloss)、耐衝撃性、加工性、耐環境応力亀裂性(ESCR)および剛性をうまくバランスさせたものはほとんどない。例えば、大部分の高密度ポリエチレン(HDPE)は接触透明性および光沢が足りない。密度が0.940g/cm3以上であるメタロセン−高密度ポリエチレン(mHDPE)はESCRが足りない。密度が0.930〜0.940g/cm3のメタロセン−中密度ポリエチレン(mMDPE)は剛性が足りない。
【0009】
共押出が透明性を損なうということは知られている。従って、PETのような樹脂は容器形状を広範囲に変えることができず、透明なポリプロピレンは耐衝撃性が不足し、加工性が悪い。従って、光学特性と機械特性とのバランスに優れ、しかも、加工性に優れた樹脂に対するニーズがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、接触透明性と光沢とに優れたポリエチレン組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は、高い耐環境応力亀裂性と剛性とを有するポリエチレンブレンドを提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、加工性に優れたポリエチレンブレンドを提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、光沢および接触透明性の光学特性とESCRおよび剛性の機械特性とをバランスさせたポリエチレンブレンドを提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、マルチモダルな分子量分布とクロム触媒をベースにした樹脂と同様な加工性とを有する樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の対象は、下記(i)〜(iii)の段階を有する、マルチモード(multi mode)の分子量分布を有するポリエチレン樹脂組成物の製造方法にある:
(i)密度が0.920〜0.940g/cm3で、メルトインデックスMI2が0.1〜10dg/分である10〜60重量%の第1のメタロセン−直鎖低密度(metallocene-produced linear low density) ポリエチレン (mLLDPE)樹脂を用意し、
(ii)密度が0.940〜0.970g/cm3で、メルトインデックスMI2が0.05〜10dg/分であるチーグラー・ナッタまたはメタロセン触媒系で製造した90〜40重量%の第2のビモダルまたはマルチモダルなポリエチレン樹脂を用意し、
(iii)上記第1のポリエチレンと第2のポリエチレンとを物理的に混合して密度が0.935〜0.960g/cm3でMI2が0.2〜0.9dg/分のマルチモダルな分子量分布を有するポリエチレン樹脂を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
メルトインデックスMI2およびHLMI(高荷重メルトインデックス)はASTM D1238規格で、190℃の温度で、それぞれ2.16kgおよび21.6kgの荷重下で測定する。密度はASTM D 1505規格で23℃で測定する。
本発明のブレンドは第1のメタロセン−ポリエチレン樹脂の10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは25〜75重量%と、マルチモダルなポリエチレン樹脂の40〜90重量%、好ましくは50〜80重量%、さらに好ましくは25〜75重量%とを含むのが好ましい。
【0013】
本発明の最も好ましいブレンドは下記のいずれかである:
(1)約50重量%のメタロセン−ポリエチレンと約50重量%のビモダルなチーグラ・ナッタポリエチレン、または
(2)約20重量%の第1メタロセン−ポリエチレンと約80重量%のビモダルなのチーグラ・ナッタポリエチレン。
【0014】
第1のポリエチレン樹脂はメタロセン触媒系を用いて製造されるモノモダル(単一モード)である。第2のポリエチレン樹脂はチーグラ・ナッタ触媒系またはメタロセンベースの触媒系のいずれかを用いて製造できるマルチモダルな分子量分布を有している。この第2のポリエチレン樹脂は単一の反応装置で互いに異なる二種以上の触媒系を用いて製造するか、直列に接続された2つ以上のループ反応装置で単一の触媒系を互いに異なる重合条件下で運転させて製造することができる。第2のポリエチレンはチーグラ・ナッタ触媒系を用いて製造するのが好ましい。
【0015】
最終的に得られるポリエチレン樹脂は第1のポリエチレン樹脂と第2のポリエチレン樹脂とを物理的に混練して製造され、マルチモダルまたは広い分子量分布を有する。
本発明の別の実施例では、最終的に得られるマルチモダルなポリエチレン樹脂が一つのメタロセン触媒系を互いに異なる重合条件下で使用する互いに直列に接続された2つ以上の反応装置で用いて化学ブレンドとして製造される。
【0016】
メタロセン触媒成分を用いると分子量分布が極めて狭い直鎖低密度ポリエチレン成分を製造できる。これによって低密度成分中のコモノマー分布が均一かつ高くなり、その結果、低速および高速の両方での亀裂伝搬特性が良くなる。密度は0.940g/cm3以下、さらに好ましくは最大で0.935g/cm3であるのが好ましく、これはチーグラ・ナッタ触媒またはクロムをベースにした触媒をスラリーループプロセスで用いたときに得られる低密度成分よりやや低い。従って、メタロセン触媒を用いることによって樹脂の高分子量成分の分子量分布および密度を正確に制御することができ、機械特性が良くなる。メルトインデックスMI2は0.5〜5dg/分であるのが好ましい。優れた光学特性を得るためにはメタロセン−ポリエチレン成分のメルトインデックスはビモダルなポリエチレン成分のメルトインデックスよりも広いのが好ましい。
【0017】
分子量分布は重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割ったMw/Mn比である多分散指数Dで定義される。
第2のポリエチレン樹脂はチーグラ・ナッタ触媒系および/またはメタロセンベースの触媒系の存在下でエチレンの単一重合および/または共重合で製造され、ビモダルまたはマルチモダルな分子量分布を有する。第2のポリエチレン樹脂はチーグラ・ナッタ触媒をベースにしたビモダルな分子量分布を有するポリエチレン樹脂であるのが好ましい。
【0018】
最終的に得られる樹脂の密度は0.940〜0.950g/cm3、さらに好ましくは0.945g/cm3であるのが好ましく、メルトインデックスMI2は0.4〜0.7dg/分、さらに好ましくは約0.5dg/分であるのが好ましい。この樹脂は高分子量成分だけでなく低分子量成分も含み、樹脂全体として広い分子量分布を有し、マルチモダルでる。このマルチモダルな分布にすることによって加工性を損なわずに樹脂の機械特性を改良でき、しかも、優れた光沢および接触透明性の光学特性が得られる。
【0019】
別々に製造された樹脂である第1のポリエチレン樹脂と第2のポリエチレン樹脂とを物理的に混合してマルチモダルな分子量分布を有する複合ポリエチレン樹脂を作る。この複合ポリエチレン樹脂中の低分子量成分を含むポリエチレンの製造条件を制御して樹脂に所望の加工特性を付けるようにすることができる。この複合ポリエチレン樹脂の低分子量成分中の分岐を少なくし(理想的には分岐ゼロにし)かつ高分子量成分中のコモノマーし比率を多くすることで耐低速亀裂成長性および耐衝撃強度の樹脂特性を大幅に改良できるということがわかっている。さらに、本発明の好ましい実施例で得られるブレンドの加工特性はクロムベースのポリエチレン樹脂の加工特性と同程度に優れている。剛性、垂れ(sag)、メルトフラクチャーはチーグラ・ナッタ樹脂の存在によって改良され、光学特性はメタロセン触媒をベースにした樹脂の存在によって改良される。しかし、膨れ(スウェル)と垂れの特性はブレンド中に含まれるチーグラ・ナッタ樹脂の量と線型の関係にはないということは分っている。
【0020】
低密度ポリエチレン樹脂製造用のメタロセン成分
本発明で用いるメタロセン触媒成分は下記一般式(I)のビス(テトラヒドロインデニル)メタロセン成分であるのが好ましい:
R''(THI)2MQ2 (I)
(ここで、THIはテトラヒドロインデニルで、シクロペンタジエニル環、シクロヘキセニル環およびエチレンブリッジ中の一つまたは複数の位置で互いに同一または異なる置換がされていてもよく、R''は2つのシクロペンタジエニル環の間に立体剛性を与えるブリッジであり、Mは周期律表(Handbook of Chemistry、第76版)の第4族金属であり、各Qは1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビルまたはヒドロカルボキシ基またはハロゲンで、互いに同一でも異なっていてもよい)
【0021】
テトラヒドロインデニル上の各置換基は式:XRv(ここで、XはIVA族、酸素および窒素の中から選択され、各Rは水素または1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビルの中から選択され、互いに同一でも異なっていてもよく、v+1がXの原子価である)の置換基の中から互いに独立して選択できる。Xは炭素Cであるが好ましい。置換されたシクロペンタジエニル環の場合、その置換基はオレフィンモノマーの金属Mへの配位に影響を及ぼすような大きなものであってはならない。シクロペンタジエニル環上の置換基はRとして水素またはCH3を有するのが好ましい。好ましくは少なくとも一方のシクロペンタジエニル環、さらに好ましくは両方のシクロペンタジエニル環が非置換であるのが好ましい。特に好ましい実施例では、両方のインデニルが非置換である。
【0022】
ブリッジR''は置換または非置換のメチレンまたはエチレンブリッジであるのが好ましい。
金属Mはジルコニウム、ハフニウムまたはチタンであるのが好ましく、ジルコニウムであるのが最も好ましい。
Qに適したヒドロカルビルとしてはアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリールまたはアリールアルキルが挙げられる。各Qはハロゲンであるのが好ましい。
【0023】
エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)二塩化ジルコニウムは本発明の特に好ましいビステトラヒドロインデニル化合物である。
本発明で使用するのに適した別のメタロセン触媒成分は下記式(II)のビス−シクロペンタジエニルである:
ビス(n−ブチル−Cp)MQ2 (II)
(ここで、MおよびQは上記定義のものである)
【0024】
好ましいメタロセン成分はテトラヒドロインデニルである。
本発明で用いるメタロセン触媒成分は公知の任意の方法で調製できる。テトラヒドロインデニル成分の好ましい製造方法は下記文献に記載されている。
【非特許文献1】J.Org.Chem.288,63-67(1985)
【0025】
メタロセン触媒成分の活性化に用いる活性化剤はこの目的で知られている電離作用を有する任意の活性化剤、例えばアルミニウム含有または硼素含有成分にすることができる。アルミニウム含有成分にはアルモキサン(alumoxane)、アルキルアルミニウムおよび/またはルイス酸が含まれる。
アルモキサンは周知で、下記式で表されるオリゴマー状直鎖アルモキサンおよび/または環状アルキルアルモキサンであるのが好ましい:
【0026】
【化1】

【0027】
(ここで、nは1〜40、好ましくは10〜20であり、mは3〜40、好ましくは3〜20であり、RはC1〜C8のアルキル基、好ましくはメチルである)
適した硼素含有共触媒は例えば下記特許文献2に記載のボロン酸トリフェニルカルベニウム、テトラキス−ペンタフルオロフェニル−ボラト−トリフェニルカルベニウムまたは下記特許文献3(第6頁第30行目〜第7頁第7行目)に記載の一般式[L’−H]+[B Ar1Ar234]−の硼素含有共触媒にすることができる。
【特許文献2】欧州特許第EP−A−0427696号
【特許文献3】欧州特許第EP−A−0277004号
【0028】
メタロセン触媒系は均一な溶液重合プロセスまたは不均一なスラリープロセスで用いることができる。溶液重合プロセスで一般的な溶媒には4〜7個の炭素原子を有する炭化水素、例えばヘプタン、トルエンまたはシクロヘキサンが含まれる。スラリープロセスでは触媒系を不活性担体、特に多孔性固体担体、例えばタルク、無機酸化物および樹脂材料、例えばポリオレフィン上に固定する必要がある。担体材料は微粉状の無機酸化物であるのが好ましい。
【0029】
本発明に適した無機酸化材料には第2a、3a、4aまたは4b族の金属の酸化物、例えばシリカ、アルミナおよびこれらの混合物が含まれる。単独あるいはシリカまたはアルミナと組み合わせて使用可能な他の無機酸化物はマグネシア、チタニア、ジルコニア等である。しかし、その他の担体材料、例えば微粉化した官能化ポリオレフィン、例えばポリエチレンの微粉を用いることもできる。担体は表面積が200〜900m2/gで、細孔容積が0.5〜4cm3/gであるシリカにするのが好ましい。
【0030】
活性触媒系の調製で通常用いる活性化剤とメタロセンの量は広範囲に変えることができる。アルミニウムまたは硼素の遷移金属に対するモル比は1:1〜100:1、好ましくは5:1〜50:1であるのが好ましい。
重合反応をスラリー中で行う場合の反応温度は70〜110℃にすることができる。反応を溶液中で行う場合は選択した溶媒に応じて150〜300℃の反応温度を用いることができる。反応を適切に担持された触媒を用いて気相で行うこともできる。
【0031】
反応装置に導入する水素の量は所望する樹脂の最終メルトインデックスとメタロセン触媒成分の種類とに依存する。
本発明に従って作られた低密度ポリエチレン樹脂のMI2は一般に0.1〜20dg/分、好ましくは0.5〜5dg/分内にある。密度は一般に0.920〜0.940g/mlであり、多分散指数Dは2〜4.5、好ましくは約3である。さらに、加工を容易にするために樹脂は長鎖分岐を部分的に有するのが好ましい。
【0032】
ビモダルなポリエチレン樹脂製造用チーグラ・ナッタ触媒系
チーグラ・ナッタ触媒は有機マグネシウム化合物とチタン化合物との反応生成物である遷移金属成分(化合物A)と、有機アルミニウム成分(化合物B)とで構成されるのが好ましい。
【0033】
化合物Aは下記下記から調製できる:
(1)上記チタン化合物は四価のハロゲン化チタン化合物、好ましくは一般式:TiXn(OR)4-n(ここで、nは1〜4、Xは塩素または臭素、各Rは同一または異なる炭化水素基、特に1〜18、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基)のチタン化合物の中から選択でき、
(2)上記有機マグネシウム化合物はマグネシウムアルコラート、好ましくは一般式:Mg(OR)2(ここで、各Rは同一または異なる炭化水素基、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基)のマグネシウムアルコラートの中から選択でき、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有するマグネシウムアルコラートが好ましい。
好ましいチタン化合物はTiCl4である。
【0034】
この反応は0〜200℃の温度で行うのが有利であり、温度の上限は用いる四価ハロゲン化チタン化合物の分解温度で決まり、60〜120℃の温度で行うのが有利である。
反応後、炭化水素に不溶なマグネシウムアルコラートと四価ハロゲン化チタン化合物との反応生成物を、使用したチタン−(IV)−化合物を容易に溶かす上記不活性希釈液の一つを用いて数回洗浄して、未反応のチタン化合物から除去する。
【0035】
化合物Aのチタン含有率は化合物Aの1g当たり0.05〜10mg−原子にすることができる。化合物Aのチタン含有率は反応時間、反応温度および用いる四価ハロゲン化チタン化合物の濃度によって制御することができる。
マグネシウム化合物に固定されたチタン化合物の濃度は、分散剤または反応装置容積1リットル当たり0.005〜1.5mmol、好ましくは0.03〜0.8mmolであるのが有利である。一般には、さらに高い濃度も可能である。
【0036】
有機アルミニウム化合物Bはアルミニウムトリアルキルまたはアルミニウムジアルキル水素化物と1〜16個の炭素原子を有する炭化水素基との反応生成物にすることができる。他の適した有機アルミニウム化合物は塩素化有機アルミニウム化合物、例えば式:R2AlClの塩化ジアルキルアルミニウムまたは式:R3Al2Cl3のセスキ塩化アルキルアルミニウム(ここで、各Rは同一または異なる炭化水素基、好ましくは1〜16個の炭素原子を有するアルキル基)の中から選択することができる。
【0037】
有機アルミニウムは反応装置容積1リットル当たり0.5〜10mmolの濃度で用いることができる。
必要に応じてさらに、トリエチルアルミニウム(TEAL)のような共触媒を反応装置内で用いる。
ビモダルまたはマルチモダルな分子量分布を有する樹脂を製造するために、重合反応は互いに異なる条件下で運転される互いに直列に接続された2つ以上の反応装置で行うのが好ましい。
一つのメタロセン触媒系を2つ以上の反応装置で用いてマルチモダルなの分子量分布を有する高密度樹脂を製造することができる。
【0038】
本発明の一実施例では、各ポリエチレン樹脂を別々の反応装置、好ましくはループ反応装置でそれぞれ個別に製造し、それらポリエチレン樹脂を例えば押出しまたは溶融混合して物理的に混合する。
最終的に得られる樹脂は優れた耐環境応力亀裂性(ESCR)と、極めて高い剛性および耐衝撃性とを有しかつ極めて優れた接触透明性および光沢を有する。さらに、最終的に得られる樹脂はクロム触媒をベースにしたポリエチレン樹脂と同様な加工性を有する。最終的に得られる樹脂がこれら全ての特性のバランスが非常に良いという点はさらに重要である。
【0039】
さらに、本発明ブレンドで用いる第1の低密度ポリエチレン成分は広いメルトインデックスを有し、分子量はあまり高くなく、従って、優れた接触透明性を有するボトルを超高速度で製造することが可能になる。本発明ポリエチレンブレンドを用いると最大で10,000ボトル/時でボトルを製造することができる。
本発明のポリエチレンブレンドはブロー成形、射出成形、射出吹込み成形の用途およびチューブ押出で用いられる。
本発明のポリエチレンブレンドは1mL〜10リットル、好ましくは50mL〜3リットルの容量を有する物品の製造で用いられるのが好ましい。
本発明の樹脂は光学的特性が良いため、化粧品または家庭用品の包装材料に適している。
【実施例】
【0040】
下記(1)と(2)から複数のポリエチレンブレンドを製造した:
(1)ATOFINA Research社から商品名フィナセン(Finacene、登録商標)M3509で市販のメタロセン樹脂R1
(2)ATOFINA Research社から商品名フィナセン(Finacene、登録商標)BM593で市販のビモダルなのチーグラ・ナッタ樹脂R2
出発材料の樹脂の特性は[表1]にまとめてある。
【表1】

【0041】
各ブレンドはそれぞれ10、25、50、75、90重量%のビモダルなチーグラ・ナッタ樹脂R2と残部のメタロセン−ポリエチレン樹脂R1とを溶融混合し、トルネ(Thoret)押出機でペレット化した。次いで、ドライブレンドされたペレットを用いてKrpp Kautex KEB 5−430ブロー成形機で下記寸法のボトルを製造した:
重量=20g、
容量=430mL、
肉厚=0.5〜7mm。
【0042】
ブロー成形条件は下記の通り:
スクリュー径=40mm、
ツール=13/12mm、
11の帯域を有するスクリュー=温度は180℃(帯域1)から190℃(帯域3)に変わり、190℃に維持される(帯域3〜帯域11)、
スクリューヘッド温度=190℃、
樹脂温度=180℃、
圧力=232バール、
押出速度=40rpm、
流量=10kg/時、
カップル=30amp
【0043】
次にボトルの接触透明性、光沢、ヘーズ、ESCRおよび動的圧縮を試験した。
「光沢」はASTM規格試験D 2457−90の方法に従って測定した。
「ヘーズ」はASTM規格試験D 1003−2000の方法に従って測定した。
「ESCR」は100%antarox(ESCR100)を用いてASTM規格試験D 1693−70条件Bの方法に従って測定した。
「動的圧縮(dymamic compression)」はASTM規格試験D 2659−95の方法に従って測定した。
【0044】
[図1]で接触透明性を見ることができる。[図1]はビモダルな樹脂R2を用いて調製したボトルの接触透明性が不十分であること、さらに、メタロセン樹脂R1を用いて調製したボトルの良好な接触透明性はビモダルな樹脂R2を添加しても変わらないことを明らかに示している。
[図2]はゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定した出発材料の樹脂と最終的に得られる各樹脂の分子量分布を示している。
[図3]は最終的に得られる樹脂のメルトフローインデックスMI2をビモダルなポリエチレン成分のパーセンテージの関数で示している。この図からビモダルな樹脂の量が増加するにつれてメルトインデックスが徐々に低下することがわかる。
【0045】
[図4]は出発材料の樹脂および複数のブレンドの粘度を示している。ビモダルな樹脂の量が増加するにつれて低周波数では粘度が徐々に高くなることがわかる。
[図5]は光沢の結果を示す。ビモダルなポリエチレン樹脂の添加量が80重量%になるまで優れた光沢特性(この優れた光沢特性は一般にメタロセン−ポリエチレン樹脂に起因する)が維持されることを示している。
さらに興味深いのは、[図6]に示すように、ビモダルなポリエチレン樹脂の添加量を50重量%にするとヘーズ値(メタロセン−ポリエチレン樹脂では優れていることは公知である)が著しく向上し、ビモダルなポリエチレン樹脂の添加量を最80重量%までにしてもメタロセン−樹脂に等しいヘーズ値を維持する。
[図7]からわかるように、動的圧縮はビモダルなポリエチレン樹脂の量を90重量%まで増加するまで増大する。
【0046】
「比較例」としては、ATOFINA社から市販のクロム触媒ベースの樹脂ラクテナ(Lacqtene、登録商標)2002 TH40(樹脂R3)を用いた。密度は0.940g/cm3で、25重量%の樹脂R1と75重量%の樹脂R2とのブレンドの密度に等しい。このクロム触媒ベースの樹脂の光沢値は約10%、そのヘーズ値は約75%である。これに対して上記ブレンドの光沢値とヘーズ値はそれぞれ約90%と約45%である。
【0047】
ATOFINA Research社から商品名フィナセン(Finacene、登録商標)ER2263で市販の密度が同じく0.947g/cm3であるメタロセン−ポリエチレン樹脂(樹脂R4)と、50重量%の樹脂R1と50重量%の樹脂R2とを含む密度が0.947g/cm3の樹脂ブレンドとで、光沢、ヘーズおよびESCRを比較した。
結果は[表2]に示してある。
【表2】

【0048】
この結果から、通常ESCRと光沢特性が優れていることが知られている樹脂は、本発明ブレンドの一般的な密度の0.940g/cm3大きな密度ではその良好な性能を失うことがわかる。
チーグラ・ナッタ樹脂の量が増加すると「スウェル」が増大し、「垂れ」が減少するが、この変化は線型ではないことも分かる。[図8]は樹脂R1と樹脂R2を各種比率にしたブレンドの「直径スウェル」は各樹脂を単独で用いたときのスウェルの範囲から外れることを示す。75重量%の樹脂R2(チーグラ・ナッタ)と25重量%の樹脂R1(メタロセン)とのブレンドはクロム触媒ベースの樹脂(CR)によく似ている。
以上のとおり、本発明ブレンドは「光沢」、「接触透明性」、「ESCR」、「強度」および「加工性」が最もバランスしている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】下記(1)〜(4)を用いて製造した4つのボトルを示す写真:(1)純粋なビモダルなのチーグラ・ナッタポリエチレン樹脂であるFinathene BM593(R2)、(2)25重量%の樹脂R2と75重量%のメタロセン−ポリエチレン樹脂とのブレンドであるFinacene M3509(R1)、(3)50重量%のR2と50重量%のR1とのブレンド、(4)純粋な樹脂R1
【図2】出発材料のメタロセンポリエチレン樹脂、ビモダルなチーグラ−ナッタポリエチレン樹脂およびビモダルな樹脂をそれぞれ25、50、75重量%含む樹脂ブレンドのゲル透過クロマトグラフィで測定した分子量分布を示すグラフ。
【図3】ビモダルなポリエチレン樹脂のパーセンテージ(%表記)を関数として示すメルトフローインデックスMI2(dg/分表記)のグラフ。
【図4】周波数(rad/秒)を関数として示した対数粘度(Pa.s表記)の対数グラフ。
【図5】ビモダルなポリエチレン樹脂の量(%)を関数として示した光沢(%表記)のグラフ。
【図6】ビモダルなポリエチレン樹脂の量(%)を関数として示したヘーズ(%表記)のグラフ。
【図7】ビモダルなポリエチレン樹脂の量(%)を関数として示した動的圧縮(ニュートン表記)のグラフ。
【図8】ダイ径が2.2cmのパリソン長さ(cm)の関数で示した直径スウェル(cm表記)のグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)〜(iii)の段階を有する、マルチモード(multi mode)の分子量分布を有するポリエチレン樹脂組成物の製造方法:
(i)密度が0.920〜0.940g/cm3で、メルトインデックスMI2が0.1〜10dg/分である10〜60重量%の第1のメタロセン−直鎖低密度ポリエチレン(mLLDPE)樹脂を用意し、
(ii)密度が0.940〜0.970g/cm3で、メルトインデックスMI2が0.05〜10dg/分であるチーグラー・ナッタまたはメタロセン触媒系で製造した90〜40重量%の第2のビモダルまたはマルチモダルなポリエチレン樹脂を用意し、
(iii)上記第1のポリエチレンと第2のポリエチレンとを物理的に混合して密度が0.935〜0.960g/cm3でMI2が0.2〜0.9dg/分のマルチモダルな分子量分布を有するポリエチレン樹脂を形成する。
【請求項2】
第1のメタロセン−直鎖低密度ポリエチレン(mLLDPE)樹脂の密度が0.935g/cm3以下である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のメタロセン−直鎖低密度ポリエチレン(mLLDPE)樹脂のメルトフローインデックスMIが0.5〜5dg/分である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第2ポリエチレン樹脂がビモダルな分子量分布を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第2のポリエチレン樹脂がチーグラー・ナッタ触媒系を用いて製造される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1のメタロセン−直鎖低密度ポリエチレン(mLLDPE)樹脂の量が20〜50重量%で、第2のポリエチレン樹脂の量が50〜80重量%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ブレンド中の各ポリエチレン成分の量が約50重量%である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1のメタロセン−直鎖低密度ポリエチレン(mLLDPE)樹脂の調製に用いられるメタロセン触媒成分がエチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)二塩化ジルコニウムである請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法で製造されたポリエチレン組成物のブロー成形、射出成形、射出吹込み成形またはチューブ押出し成形での使用。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法で製造されたポリエチレン樹脂のESCR、剛性、接触透明性および光沢のバランスに優れた物品での使用。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法で製造されたポリエチレン樹脂のボトルの高速生産での使用。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法で製造されたポリエチレン組成物を用いて製造された化粧品または家庭用品の包装材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−530758(P2007−530758A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505546(P2007−505546)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051336
【国際公開番号】WO2005/092973
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】