説明

揚げ玉を主材料とする食品

【課題】不活性ガスの充填や酸化防止剤の添加によることなく、揚げ玉の油脂の酸化を抑制して、良好な品質を長期にわたって保つことを可能とする。
【解決手段】この発明にかかる食品は、揚げ玉を主材料とし、のしいかをそのまま油で揚げたもの(のしいか素揚げ)、のしいかに水で溶いた小麦粉を付けて油で揚げたもの(イカ天)、干した小エビを油で揚げたもの(干しエビ素揚げ)のうちの少なくとも1種が揚げ玉に混合されて成る。特に、総重量に対して2.5重量%の割合でイカ天が混合されているサンプルについては、イカ天が未混合のサンプルでは3ヶ月経過時点で過酸化物価が50(meq/kg)に達しているのに対し、6ヶ月経過時点でも過酸化物価が半分の25(meq/kg)程度であり、イカ天が揚げ玉の油脂の酸化防止に極めて有効に機能する結果、かなりの長期間安定して保存することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、料理の添え物などに用いられる揚げ玉を主材料とする食品(以下、「揚げ玉食品」という。)に関し、特にこの発明は、揚げ玉の品質が長期にわたって良好に保たれる揚げ玉食品に関する。
【背景技術】
【0002】
本来、揚げ玉は、天ぷらを揚げるときに副産物として生じる揚げかすのことであり、一般に「天かす」とも呼ばれている。揚げ玉は、サクサクとした歯触りやその風味が好まれ、飲食店や一般家庭において、うどん、そば、お好み焼きなど、種々の料理に用いられており、包装パックされたものが店頭で販売されている。この揚げ玉は、小麦粉を水で溶き、塩、調味料などを加えて油で揚げて玉状としたもので、食用の油脂を多量に含むため、油脂の酸敗による変質を生じ易く、長期間安定して保存できない。
【0003】
油脂の酸化現象は、製造直後から始まり、次第に味が低下して異臭が発生し、遂には食することが困難となる。初期段階の酸敗度合を判定する指標として過酸化物価が広く用いられている。この過酸化物価は、油脂の酸化の始めに生ずるハイドロパーオキシサイドの含量をヨウ素滴定法により測定したもので、単位はmg当量/kg(meq/kg)であり、その数値が大きいほど酸化が進んでいる。
【0004】
油脂の酸化を防止する方法として、包装パックに天かすなどの調理材料を充填した後、開口部を貼着する際に包装パックの内部の空気を窒素や二酸化炭素などの不活性ガスにより置換することが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−145391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、不活性ガスの充填による酸化防止法では、ガス充填設備を必要とするため、設備費用が高くつくだけでなく、不活性ガスと空気との置換が不十分であったり、包装不良があったりすると、所定の酸化防止効果が得られず、製品不良が発生するおそれがある。上記の不活性ガスの充填に代えて、食品中に食品の成分(油脂)の酸化を抑制するための酸化防止剤を添加する方法もあるが、包装パックに酸化防止剤の添加を表示する必要があり、需要者に対して酸化防止剤の人体への影響について不安を抱かせるおそれがある。
【0007】
この発明は、上記した問題に着目してなされたもので、不活性ガスの充填や酸化防止剤の添加によることなく、揚げ玉の油脂の酸化を抑制して、良好な品質を長期にわたって保つことを可能とした揚げ玉食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による揚げ玉食品は、のしいかをそのまま油で揚げたもの(以下、「のしいか素揚げ」という。)、のしいかに水で溶いた小麦粉を付けて油で揚げたもの(以下、「イカ天」という。)、干した小エビを油で揚げたもの(以下、「干しエビ素揚げ」という。)のうちの少なくとも1種が揚げ玉に混合されて成るものである。
ここで、「のしいか」とは、するめをローラーなどで薄く延ばしたものをいい、そののしいかをそのまま油で揚げたものが「のしいか素揚げ」、水で溶いた小麦粉、塩、調味料などを付けて油で揚げたものが「イカ天」である。また、「干した小エビ」とは干した小型のエビ(例えばサクラエビ)のことであり、干した小エビをそのまま油で揚げたものが「干しエビ素揚げ」である。
【0009】
この発明の発明者は、揚げ玉に混合したのしいか素揚げ、イカ天、干しエビ素揚げが揚げ玉の油脂の酸化防止に有効に機能することを見出しのしいか素揚げ、イカ天、干しエビ素揚の少なくとも1種が、揚げ玉に混合されたものが、未混合の揚げ玉と比較して、油脂の酸敗による揚げ玉の変質が生じ難く、揚げ玉を長期間安定して保存できることを確認した。
この発明による揚げ玉食品の保存性は、のしいか素揚げ、イカ天、干しエビ素揚げが混合されていない揚げ玉と比較して、過酸化物価が所定の基準値に達するのに要する期間をどの程度引き延ばせるかによって判断することができる。
【0010】
揚げ玉についての油の酸化に関する法規制は存在しないが、油揚げ麺については、麺に含まれる油脂の酸価(AV)が3を超えるもの、または、過酸化物価(POV)が30を超えるものであってはならない、との法規制が存在し、また、油で処理した菓子(油脂分10%以上)については、菓子に含まれる油脂の酸価が5以下でありかつ過酸化物価が30以下であるか、油脂の酸価が3以下でありかつ過酸化物価が50以下であるかのいずれかでなければならない、との法規制が存在する。
【0011】
揚げ玉については、油脂の酸価は1以下であるのが通常であることから、後述する保存性確認の実験例では、過酸化物価の基準値を例えば「50」と定め、常温下(例えば25℃)において、のしいか素揚げ、イカ天、干しエビ素揚げが混合されていない揚げ玉の過酸化物価が基準値の50meq/kgに達するのに要した期間に対して、過酸化物価が基準値に達するのに要した期間が十分に長いか(例えば2倍以上)、または、のしいか素揚げ、イカ天、干しエビ素揚げが混合されていない揚げ玉の過酸化物価が基準値の50meq/kgに達した時点で、過酸化物価が十分に小さな値(例えば5分の1以下の値)であったとき、その揚げ玉食品は有効かつ良好な保存性を有するものと判断しているが、保存機能の有無並びに保存性の良否の判定はこれに限られるものではない。
【0012】
のしいか素揚げ、イカ天、干しエビ素揚げの混合割合は、揚げ玉の食感や風味を保持するために、多くても、総重量に対して50重量%を超えないことが望ましい。
【0013】
この発明による他の揚げ玉食品は、のしいか素揚げ、イカ天のうちの少なくとも1種が、イカ粉を含有する揚げ玉に混合されて成るものである。
【0014】
この揚げ玉食品によると、揚げ玉が含有するイカ粉によりイカ味が付与されるだけでなく、イカ粉が揚げ玉の油脂の酸化防止に有効に機能するため、イカ粉を含有していない揚げ玉を用いたものと比較して、油脂の酸敗による揚げ玉の変質がより生じ難く、揚げ玉の保存性が一層優れている。
【0015】
揚げ玉にイカ天、のしいか素揚げ、干しエビ素揚げのいずれを混合しても相応の酸化防止の効果が得られるが、好ましい実施態様においては、イカ天は総重量に対して少なくとも2.5重量%の割合で混合されている。
【0016】
この実施態様によると、揚げ玉に混合されたイカ天が揚げ玉の油脂の酸化防止に有効に機能する結果、イカ天が混合されていないものと比較して、油脂の酸敗による揚げ玉の変質が生じ難く、かなりの長期間安定して保存することができる。
【0017】
他の好ましい実施態様においては、のしいか素揚げは総重量に対して少なくとも1重量%の割合で揚げ玉に混合されている。
【0018】
この実施態様によると、揚げ玉に混合されたのしいか素揚げが揚げ玉の油脂の酸化防止に有効に機能する結果、のしいか素揚げが混合されていないものと比較して、油脂の酸敗による揚げ玉の変質が生じ難く、かなりの長期間安定して保存することができる。
【0019】
他の好ましい実施態様においては、干しエビ素揚げは総重量に対して少なくとも1重量%の割合で揚げ玉に混合されている。
【0020】
この実施態様によると、揚げ玉に混合された干しエビ素揚げが揚げ玉の油脂の酸化防止に有効に機能する結果、干しエビ素揚げが混合されていないものと比較して、油脂の酸敗による揚げ玉の変質が生じ難く、かなりの長期間安定して保存することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によると、不活性ガスの充填や酸化防止剤の添加によることなく、揚げ玉の油脂の酸化を抑制して、良好な品質を長期にわたって保つことができる。また、酸化防止の手段として食材を用いるから、揚げ玉のサクサクとした歯触りや風味に加えて、混合する食材の種類に応じた風味を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】レギュラーの揚げ玉にイカ天が混合されたサンプルを常温下で保存したときの過酸化物価の変化を示す説明図である。
【図2】レギュラーの揚げ玉にのしいか素揚げが混合されたサンプルを常温下で保存したときの過酸化物価の変化を示す説明図である。
【図3】レギュラーの揚げ玉に干しエビ素揚げが混合されたサンプルを常温下で保存したときの過酸化物価の変化を示す説明図である。
【図4】レギュラーの揚げ玉にイカ天が混合されたサンプルを常温下で保存したときの過酸化物価の変化を示す説明図である。
【図5】レギュラーの揚げ玉にのしいか素揚げが混合されたサンプルを高温下で保存したときの過酸化物価の変化を示す説明図である。
【図6】レギュラーの揚げ玉に干しエビ素揚げが混合されたサンプルを高温下で保存したときの過酸化物価の変化を示す説明図である。
【図7】イカ味の揚げ玉にイカ天が混合されたサンプルを常温下で保存したときの過酸化物価の変化を示す説明図である。
【図8】イカ味の揚げ玉にのしいか素揚げが混合されたサンプルを常温下で保存したときの過酸化物価の変化を示す説明図である。
【図9】イカ味の揚げ玉にイカ天が混合されたサンプルを高温下で保存したときの過酸化物価の変化を示す説明図である。
【図10】イカ味の揚げ玉にのしいか素揚げが混合されたサンプルを高温下で保存したときの過酸化物価の変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明を実施して得られる食品は、揚げ玉を主材料とし、これに酸化防止の機能を有する食材を、総重量に対して望ましい所定の重量%だけ混合して成るものである。混合する食材として、のしいか素揚げ(のしいかをそのまま油で揚げたもの)、イカ天(のしいかに水で溶いた小麦粉を付けて油で揚げたもの)、干しエビ素揚げ(干した小エビを油で揚げたもの)があり、この3種のうちの少なくとも1種が選択して用いられる。その選択は1種であっても、2種であっても、3種全てであってもよいが、揚げ玉の食感や風味を保持しつつ好ましい味を付与するには、いずれか1種を総重量に対して50重量%を超えない割合で混合するのが望ましい。
【0024】
一般な揚げ玉は、小麦粉を水で溶き、塩、調味料などを加えてキャノーラ油などの食用の油脂で揚げることにより得られるが、混合する食材が、のしいか素揚げやイカ天である場合には、小麦粉にイカ粉を混入することもできる。このイカ粉を含有した揚げ玉を用いれば、揚げ玉にイカ味が付与され、それに加えて、イカ粉が揚げ玉の油脂の酸化防止に有効に機能する。なお、以下の実験例の説明では、イカ粉を含有する揚げ玉のことを「イカ味の揚げ玉」、イカ粉を含有していない通常の揚げ玉のことを「レギュラーの揚げ玉」という。
【0025】
揚げ玉にイカ天を混合する場合、図1に示す実験データによると、総重量に対して少なくとも2.5重量%の割合でイカ天を混合するのが望ましい。図示の実験データは、イカ天が未混合のレギュラーの揚げ玉のみのサンプルと、レギュラーの揚げ玉にイカ天がそれぞれ異なる割合で混合された3種類のサンプル(混合割合が1重量%、2.5重量%、5重量%の各サンプル)について、経過日数に対する過酸化物価の変化を観測したものである。この実験では、各サンプル20gをアルミ蒸着袋にそれぞれ個別に充填し、内部温度が25℃に保持される暗い保管庫に最長7ヶ月保管し、経時的に過酸化物価の測定を行っている。
【0026】
同図の実験データは、イカ天が未混合のサンプルに対して、イカ天を混合したサンプルの方が保存性に優れていることを明らかに示している。特に、総重量に対して2.5重量%以上の割合でイカ天が混合されているサンプルについては、イカ天が未混合のサンプルでは3ヶ月経過時点で過酸化物価が50(meq/kg)に達しているのに対し、その倍の6ヶ月経過時点でも過酸化物価が半分の25(meq/kg)以下であり、イカ天が揚げ玉の油脂の酸化防止に極めて有効に機能する結果、かなりの長期間安定して保存することができる。
【0027】
図2に示す実験データは、のしいか素揚げが未混合のレギュラーの揚げ玉のみのサンプルと、レギュラーの揚げ玉にのしいか素揚げがそれぞれ異なる割合で混合された4種類のサンプル(混合割合が1重量%、2重量%、3重量%、5重量%の各サンプル)について、経過日数に対する過酸化物価の変化を観測したものである。この実験も、図1の実験と同様の条件で実行され、内部温度が25℃に保持される暗い保管庫に最長7ヶ月保管し、経時的に過酸化物価の測定を行っている。
【0028】
同図の実験データは、のしいか素揚げが未混合のサンプルに対して、のしいか素揚げを混合したサンプルの方が保存性にはるかに優れていることを明らかに示している。すなわち、総重量に対して1重量%の以上の割合でのしいか素揚げが混合されていれば、のしいか素揚げが未混合のサンプルでは3ヶ月経過時点で過酸化物価が50(meq/kg)に達しているのに対し、その倍の6ヶ月経過時点でも過酸化物価が10(meq/kg)にも達せず、6ヶ月経過時点でもほぼその値を保持しており、のしいか素揚げが揚げ玉の油脂の酸化防止に極めて有効に機能する結果、かなりの長期間安定して保存することができる。
【0029】
図3に示す実験データは、干しエビ素揚げが未混合のレギュラーの揚げ玉のみのサンプルと、レギュラーの揚げ玉に干しエビ素揚げがそれぞれ異なる割合で混合された2種類のサンプル(混合割合が1重量%、2重量%の各サンプル)について、経過日数に対する過酸化物価の変化を観測したものである。この実験も、図1の実験と同様の条件で実行され、内部温度が25℃に保持される暗い保管庫に最長4ヶ月保管し、経時的に過酸化物価の測定を行っている。
【0030】
同図の実験データは、干しエビ素揚げが未混合のサンプルに対して、干しエビ素揚げを混合したサンプルの方が保存性にはるかに優れていることを明らかに示している。すなわち、総重量に対して1重量%の以上の割合で干しエビ素揚げが混合されていれば、干しエビ素揚げが未混合のサンプルでは3ヶ月経過時点で過酸化物価が50(meq/kg)に達しているのに対し、同じ3ヶ月経過時点では過酸化物価がその5分の1の10(meq/kg)程度であり、干しえエビ素揚げが揚げ玉の油脂の酸化防止に極めて有効に機能する結果、かなりの長期間安定して保存することができる。
【0031】
図4に示す実験データは、イカ天が未混合のレギュラーの揚げ玉のみのサンプルと、レギュラーの揚げ玉にイカ天がそれぞれ異なる割合で混合された6種類のサンプル(混合割合が1重量%、2.5重量%、5重量%、7.5重量%、10重量%、12.5重量%の各サンプル)について、経過日数に対する過酸化物価の変化を観測したものである。この実験では、内部温度が50℃に保持される暗い保管庫に最長120日保管し、経時的に過酸化物価の測定を行っている。
【0032】
同図の実験データは、イカ天が未混合のサンプルに対して、イカ天が混合されたサンプルの方が保存性に優れていること、さらに、イカ天の混合割合が増すに従って一層長期間の保存が可能であることを明らかに示しており、かなりの高温下においても日持ちが期待できる。特に、総重量に対して7.5重量%の以上の割合でイカ天が混合されている各サンプルについては、イカ天が未混合のサンプルでは10〜20日で過酸化物価が50(meq/kg)を超えているのに対し、50日の経過後に過酸化物価が50(meq/kg)に達しており、イカ天が揚げ玉の油脂の酸化防止に極めて有効に機能する結果、高温下においてもかなりの日持ちが期待できる。
【0033】
図5に示す実験データは、のしいか素揚げが未混合のレギュラーの揚げ玉のみのサンプルと、レギュラーの揚げ玉にのしいか素揚げがそれぞれ異なる割合で混合された6種類のサンプル(混合割合が1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%の各サンプル)について、経過日数に対する過酸化物価の変化を観測したものである。この実験では、内部温度が50℃に保持される暗い保管庫に最長90日保管し、経時的に過酸化物価の測定を行っている。
【0034】
同図の実験データは、のしいか素揚げが未混合のサンプルに対して、のしいか素揚げが混合されたサンプルの方が保存性に優れていること、さらに、のしいか素揚げの混合割合が増すに従って一層長期間の保存が可能であることを明らかに示しており、かなりの高温下においても日持ちが期待できる。特に、総重量に対して3重量%の以上の割合でのしいか素揚げが混合されている各サンプルについては、イカ天が未混合のサンプルでは10〜20日で過酸化物価が50(meq/kg)を超えているのに対し、50日経過後に過酸化物価が50(meq/kg)に達しており、のしいか素揚げが揚げ玉の油脂の酸化防止に極めて有効に機能する結果、高温下においてもかなりの日持ちが期待できる。
【0035】
図6に示す実験データは、干しエビ素揚げが未混合のレギュラーの揚げ玉のみのサンプルと、レギュラーの揚げ玉に干しエビ素揚げがそれぞれ異なる割合で混合された6種類のサンプル(混合割合が1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%の各サンプル)について、経過日数に対する過酸化物価の変化を観測したものである。この実験では、内部温度が50℃に保持される暗い保管庫に最長40日保管し、経時的に過酸化物価の測定を行っている。
【0036】
同図の実験データは、干しエビ素揚げが未混合のサンプルに対して、干しエビ素揚げが混合されたサンプルの方が保存性に優れていること、さらに、干しエビ素揚げの混合割合が増すに従って一層長期間の保存が可能であることを明らかに示しており、かなりの高温下においても日持ちが期待できる。特に、総重量に対して4重量%の以上の割合で干しエビ素揚げが混合されている各サンプルについては、干しエビ素揚げが未混合のサンプルではほぼ10日で過酸化物価が50(meq/kg)に達するのに対し、40日経過後であっても過酸化物価が40(meq/kg)であり、干しエビ素揚げが揚げ玉の油脂の酸化防止に極めて有効に機能する結果、高温下においてもかなりの日持ちが期待できる。
【0037】
図7に示す実験データは、イカ天が未混合のイカ味の揚げ玉のみのサンプルと、イカ味の揚げ玉にイカ天がそれぞれ異なる割合で混合された7種類のサンプル(混合割合が1重量%、2.5重量%、5重量%、7.5重量%、10重量%、12.5重量%、15重量%の各サンプル)について、経過日数に対する過酸化物価の変化を観測したものである。この実験も、内部温度が25℃に保持される暗い保管庫に最長8ヶ月保管し、経時的に過酸化物価の測定を行っている。
【0038】
同図の実験データは、イカ天が未混合のサンプルに対して、イカ天が混合されたサンプルの方が保存性にはるかに優れていることを明らかに示しており、加えて、レギュラーの揚げ玉が用いられた図1に示した各サンプルよりイカ粉を含有するイカ味の揚げ玉が用いられたサンプルの方が一層保存性に優れていることを明らかに示している。すなわち、総重量に対して1重量%の以上の割合でイカ天が混合されていれば、イカ天が未混合のサンプルではほぼ4ヶ月経過後に過酸化物価が50(meq/kg)に達しているのに対し、その倍の8ヶ月経過時点でも過酸化物価が10(meq/kg)に達しておらず、イカ天およびイカ粉が揚げ玉の油脂の酸化防止に極めて有効に機能する結果、一層長期間安定して保存することができる。
【0039】
図8に示す実験データは、のしいか素揚げが未混合のイカ味の揚げ玉のみのサンプルと、イカ味の揚げ玉にのしいか素揚げがそれぞれ異なる割合で混合された6種類のサンプル(混合割合が1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%の各サンプル)について、経過日数に対する過酸化物価の変化を観測したものである。この実験も、内部温度が25℃に保持される暗い保管庫に最長8ヶ月保管し、経時的に過酸化物価の測定を行っている。
【0040】
同図の実験データは、のしいか素揚げが未混合のサンプルに対して、のしいか素揚げが混合されたサンプルの方が保存性にはるかに優れていることを明らかに示し、加えて、レギュラーの揚げ玉が用いられた図2に示した各サンプルよりイカ粉を含有するイカ味の揚げ玉が用いられたサンプルの方が一層保存性に優れていることを明らかに示している。すなわち、総重量に対して1重量%以上の割合でのしいか素揚げが混合されていれば、のしいか素揚げが未混合のサンプルではほぼ4ヶ月経過後に過酸化物価が50(meq/kg)に達しているのに対し、その倍の8ヶ月経過時点でも過酸化物価が10(meq/kg)に達するか達しないかの程度であり、のしいか素揚げおよびイカ粉が揚げ玉の油脂の酸化防止に極めて有効に機能する結果、一層長期間安定して保存することができる。
【0041】
図9に示す実験データは、イカ天が未混合のイカ味の揚げ玉のみのサンプルと、イカ味の揚げ玉にイカ天がそれぞれ異なる割合で混合された7種類のサンプル(混合割合が1重量%、2.5重量%、5重量%、7.5重量%、10重量%、12.5重量%、15重量%の各サンプル)について、経過日数に対する過酸化物価の変化を観測したものである。この実験では、内部温度が50℃に保持される暗い保管庫に最長120日保管し、経時的に過酸化物価の測定を行っている。
【0042】
同図の実験データは、イカ天が未混合のサンプルに対して、イカ天が混合されたサンプルの方が保存性に優れていること、イカ天の混合割合が増すに従って一層長期間の保存が可能であることを明らかに示しており、かなりの高温条件下においても日持ちが期待できる。さらに、レギュラーの揚げ玉が用いられた図4に示した各サンプルよりイカ粉を含有するイカ味の揚げ玉が用いられたサンプルの方が一層保存性に優れていることを明らかに示している。特に、総重量に対して7.5重量%の以上の割合でイカ天が混合されている各サンプルについては、イカ天が未混合のサンプルでは10〜20日で過酸化物価が50(meq/kg)を超えているのに対し、50日を経過して漸く過酸化物価が20(meq/kg)に達しており、イカ天が揚げ玉の油脂の酸化防止に極めて有効に機能する結果、高温下においてもかなりの日持ちが期待できる。
【0043】
図10に示す実験データは、のしいか素揚げが未混合のイカ味の揚げ玉のみのサンプルと、イカ味の揚げ玉にのしいか素揚げがそれぞれ異なる割合で混合された6種類のサンプル(混合割合が1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%の各サンプル)について、経過日数に対する過酸化物価の変化を観測したものである。この実験では、内部温度が50℃に保持される暗い保管庫に最長120日保管し、経時的に過酸化物価の測定を行っている。
【0044】
同図の実験データは、のしいか素揚げが未混合のサンプルに対して、のしいか素揚げが混合されたサンプルの方が保存性に優れていること、のしいか素揚げの混合割合が増すに従って、一層長期間の保存が可能であることを明らかにしており、かなりの高温下においても日持ちが期待できる。さらに、レギュラーの揚げ玉が用いられた図5に示した各サンプルよりイカ粉を含有するイカ味の揚げ玉が用いられたサンプルの方が一層保存性に優れていることを明らかに示している。特に、総重量に対して3重量%の以上の割合でのしいか素揚げが混合されている各サンプルについては、のしいか素揚げが未混合のサンプルでは10〜20日で過酸化物価が50(meq/kg)を超えているのに対し、50日の経過時に漸く過酸化物価が10(meq/kg)を超えており、のしいか素揚げが揚げ玉の油脂の酸化防止に極めて有効に機能する結果、高温下においてもかなりの日持ちが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
のしいかをそのまま油で揚げたもの、のしいかに水で溶いた小麦粉を付けて油で揚げたもの、干した小エビを油で揚げたもののうちの少なくとも1種が揚げ玉に混合されて成る揚げ玉を主材料とする食品。
【請求項2】
のしいかをそのまま油で揚げたもの、のしいかに水で溶いた小麦粉を付けて油で揚げたもののうちの少なくとも1種が、イカ粉を含有する揚げ玉に混合されて成る揚げ玉を主材料とする食品。
【請求項3】
のしいかに水で溶いた小麦粉を付けて油で揚げたものは、総重量に対して少なくとも2.5重量%の割合で混合されている請求項1または2に記載された揚げ玉を主材料とする食品。
【請求項4】
のしいかをそのまま油で揚げたものは、総重量に対して少なくとも1重量%の割合で混合されている請求項1または2に記載された揚げ玉を主材料とする食品。
【請求項5】
干した小エビを油で揚げたものは、総重量に対して少なくとも1重量%の割合で混合されている請求項1に記載された揚げ玉を主材料とする食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−143192(P2012−143192A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4132(P2011−4132)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【特許番号】特許第4830049号(P4830049)
【特許公報発行日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(303034953)株式会社ナカガワ (1)
【Fターム(参考)】